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開祖伝
はしがき
(歌)
01 誕生
02 幼女の頃
03 子守奉公
04 出口家へ入籍
05 夫政五郎さん
06 八人の子宝
07 浮かれ節
08 病床の夫
09 紙屑買い
10 身だしなみ
11 政五郎さんの帰幽
12 重なる災厄
13 霊夢
14 帰神の発端
15 開祖の自己審神
16 算盤師の占い
17 世人の誤解
18 お筆先の発端
19 お筆先の内容
20 出牢後の宣伝
21 贈られた土塊
22 聖師綾部へ
23 厳瑞二霊
24 冠島開き
25 沓島開き
26 鞍馬山参り
27 元伊勢お水の御用
28 出雲大社お火の御用
29 弥仙山お籠もり
30 沓島における平和祈願
31 二つの性格
32 水洗礼
33 恭倹
34 御日常
35 昇天
36 祈りとまこと
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開祖伝
> 29 弥仙山お籠もり
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(B)
(N)
30 沓島における平和祈願 >>>
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二九
弥仙山
(
みせんざん
)
お籠もり
インフォメーション
題名:
29 弥仙山お籠もり
著者:
愛善苑宣教部・編
ページ:
目次メモ:
概要:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
B100600c29
001
明治三十四年旧九月八日
[
※
新10月19日
]
に開祖様は綾部から西北約三里、
002
於与岐
(
およぎ
)
にある丹波の高峰・
弥仙
(
みせん
)
の
神山
(
しんざん
)
にお登りになり、
003
中のお宮にお籠もりになられたことがありました。
004
この頃、
005
大本へ毎日のように警察から、
006
007
「宗教家でないのに沢山な信者を集めるのは規則違反である。
008
宗教として認可を受けなければ布教を許さない」
009
などとやかましく交渉がありまして、
010
011
「明治二十二年憲法の発布によって信教の自由を許されてから、
012
そんな事はない」
013
と云ってもどうしても承知されず、
014
しまいには巡査を張番させると云ったような訳で信者までがだんだん来ないようになりましたので、
015
聖師様は法人組織に改めようとせられ、
016
静岡の長沢
雄楯
(
かつたて
)
翁のところへ御相談に行かれるお考えでありましたところ、
017
開祖様は、
018
019
「たとえ警察から何と云って来ようと構わぬからそのまま打ち捨てて置くがよい」
020
と云われました。
021
が警察の干渉がますます激しくなる一方ですから打ち捨てて置けず、
022
聖師様は開祖様には内密に木下慶太郎氏を連れて静岡へ行かれたのです。
023
そのお留守中に開祖様はこのことをお聞きになり、
024
前記
弥仙山
(
みせんざん
)
の中腹にある祭神・
彦
(
ひこ
)
火々出
(
ほほで
)
見
(
みの
)
命
(
みこと
)
のお社の中へ岩戸隠れとしてお籠もりになりました。
025
お籠もりになるために後野市太郎氏と中村竹造氏の二人が案内者としてお供申し上げましたが、
026
開祖様は、
027
028
「お籠もり中は誰もそばに居ることはならぬ」
029
と厳命されたので二人とも引き取って帰って参りました。
030
二人の報告により中のお宮は板の間であることが判り、
031
御老体をお案じ申し上げて木下亀吉、
032
森津由松の両氏が早速
藁
(
わら
)
で
菰
(
こも
)
を編み夜中持参して帰って来ました。
033
なお誰も行かぬ約束ではありましたが、
034
お身の上を案じその後は後野氏一人が大石村から通って、
035
内々御様子を伺いに行くことになりました。
036
ところがお籠もりになられた時、
037
不在であった四方平蔵氏が後にこのことを聞き、
038
039
「たとえいかなる事情があろうとも、
040
御老体の開祖様お一人を弥仙山にお置きする訳には行かない。
041
誰も来るなとのいいつけだそうだが、
042
開祖様に叱られても打ち捨てては置けぬ、
043
御面会して来る」
044
と云ってただ一人九月十一日出発し、
045
その日の午後四時頃ようやく弥仙山に辿り着きました。
046
弥仙山はもっとも因縁深いお山でありまして、
047
毎年今日でも年中行事として参拝致しております。
048
今でこそ弥仙山の立木は伐り払われて明るくなっていますが、
049
当時はまだ昼なお暗き霊山で、
050
殊にその日は霧が深くお山が見えぬくらいでしたが、
051
ようやくお社へ登ってみますと、
052
開祖様はただ一人お灯りをつけて静かに端座して居られました。
053
御挨拶を申し上げると、
054
055
「誰も来ないように申し付けて置いたがどうして来たか」
056
と御不興の様子でしたが、
057
特にお許しを得て一夜だけお籠もりすることになりました。
058
四方氏は土足を拭いて新しい
菰
(
こも
)
の上に坐り、
059
水でハッタイ粉をかいて頂戴し、
060
晩の六時頃一緒に礼拝しましたが、
061
礼拝が済むと開祖様は神がかり状態になられて、
062
十時─十一時─十二時になっても依然その状態で居られるので四方氏は平身低頭畏み畏み御拝を続けていました。
063
深山の夜気は森々として社殿内に迫って来る、
064
開祖様の神がかりはお変わりなく、
065
そのおごそかさに身が引き締まる思いでした。
066
夜半二時頃になってウーウーと二声三声叫ばれると、
067
同時に懸られた神様はお静まりになった御様子で、
068
開祖様は、
069
070
「平蔵さん、
071
今夜は大分遅いでしょう。
072
早く休ませて貰いましょう」
073
とのお言葉で四方氏は羽織を着たまま菰の上に横になり寝に就きましたが、
074
朝五時頃まだ夜も明けぬうちに開祖様は起きられて、
075
076
「サアサアこれから不動の滝へ行ってお水を頂いて来ましょう」
077
と云われ、
078
開祖様は目の不自由な四方氏の手を曳かれて、
079
少し下方にある不動の滝で禊を修して帰られ、
080
お灯りをつけてお礼を済まされますと、
081
ようやく夜が明けて遥かに綾部の山々までがボーっと明るく見え出しました。
082
それから清水を汲みハッタイ粉を掻いて居りますと、
083
谷間の方に当ってメラメラ大木を倒すような音響がしたと思うと、
084
俄かに向う山まで地響きがする様な鳴動がしたので、
085
四方氏はびっくりして開祖様をかえり見ますと、
086
開祖様は微笑を浮かべられ
087
「御守護神が大勢で賑やこうてよろしいな」
088
と云われました。
089
その時、
090
四方氏は今さらながら開祖様の大精神に敬服してしまったということです。
091
ハッタイ粉を頂いてしもうと開祖様は
092
「平蔵さん、
093
私はこれから神様の御用があるで早く帰って下さい。
094
そして誰も来ぬように大石の慶太郎さんに云って下さい」
095
とのお言葉でした。
096
四方氏は開祖様の大精神と御決心のほどを拝察し、
097
神々様が御守護して御座るから大丈夫だと考え、
098
御安泰を祈願しつつ帰ってきました。
099
これが御籠もりされてから四日目でありました。
100
その後四日経たお籠もり後八日目開祖様は依然としてお宮の中に籠られ、
101
静かにお筆先を書いて居られましたが、
102
ちょうどこの日村人がお宮掃除に登山して参った物音を聞かれ、
103
ヒョイとお顔を出して見られますと、
104
社殿の中から思いもよらぬ白髪の
媼
(
おうな
)
が突然顔を出したのですから、
105
村人は大変に驚き社内にヒヒザルが入って居ると云いふらして、
106
村中こぞってヒヒザル退治をすることになり、
107
竹槍を担ぎ出すやら、
108
巡査が来るやら大騒ぎになりました。
109
ちょうど一同が中の宮に押し寄せた時、
110
折りよく後野市太郎氏が行き合わせましたために、
111
ヒヒではないということが判りましたが、
112
村人は開祖様を取り囲んで、
113
114
「なぜこんなところへ来て居る」
115
と尋ねますと、
116
開祖様は
117
「世の中が
晦
(
くら
)
がりであるから籠もっている」
118
とお答えになりました。
119
「綾部の天理教の馬鹿奴が、
120
早く出て行け」
121
と一同が罵り迫りましたが、
122
開祖様は落ち着き払って
123
「今日はお籠もりしてちょうど一週間が済んだから、
124
出るなと云っても出る日じゃ」
125
と答えられ、
126
悠々として引き揚げられることになりました。
127
さて静岡へ行かれた聖師様は、
128
長沢翁に相談されて京都までお帰りになり、
129
京都府へ手続きをする必要上、
130
随行した木下慶太郎氏を綾部へ用達しに帰らせ、
131
御自分は京都に留られて、
132
京都附近に沢山ある稲荷下しや交霊術者を訪問して悪霊退治をされましたが、
133
伏見において或る稲荷下げ信者達の迫害を受け危険身に迫られた時、
134
不思議な神様の御守護により難をのがれて綾部へお帰りになりました。
135
その時開祖様は弥仙山にお籠もり中でしたが、
136
前記の通り、
137
村人の騒動により警察が開祖様の御身についてかれこれ問題を起していたので、
138
早速上杉まで行かれ警察の諒解を得て、
139
木下氏の家で二泊された開祖様を迎え無事綾部へお帰りになりました。
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<<< 28 出雲大社お火の御用
(B)
(N)
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開祖伝
> 29 弥仙山お籠もり
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第六歌集『霧の海』
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