霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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五月七日 於高知市足立家

インフォメーション
題名:5月7日 於高知市足立家 著者:月の家(出口王仁三郎)
ページ:12 目次メモ:
概要: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2018-08-19 19:13:31 OBC :B117500c02
 零時三十分船窓より海面を見渡せば、月光を浴びて小さき島影の浮べるあり何といふ名の島なるか知らず。
何島か知らねど月照る海原に
浮べるさまのいとも床しき。
珍らしき平和の海と船客の
(ささや)(なが)煙草(たばこ)吸ふあり。
朝の四時海原見れば室戸(むろと)(ざき)
灯台(とうだい)海を照らしかがやく。
二三(ぞう)右手の海面に(すなど)りの
小舟(をふね)うかびて風波(ふうは)()ぎたり。
鳴球(めいきう)氏吾船室をおとづれて
室戸灯台見ゆと()らせり。
 室戸岬を東に眺め太平洋を航する時、後の島山の頂上より、五月七日の太陽は太洋の(なみ)を照らして静に昇り玉ふ。
室戸(ざき)後にながむる(をり)もあれ
朝日東の山の()(のぞ)けり。
真帆(まほ)片帆(かたほ)(かか)げて波に漂へる
漁船の三つ四つ(てふ)(ごと)見ゆ。
 朝六時浦戸丸は静に浦戸湾に入る。波(たいら)かにして風なく、左右の岸には樹木繁茂(はんも)して、風光絶佳なり。南国の気分漂ふ鏡川の清流を()んで、永遠(とは)の神秘を語る土佐の海いよいよ夏の心地ぞするなり。
 数多(あまた)の宣伝使まめ人等、大本旗を桟橋(さんばし)の上に立ちてひるがへし、宣伝歌を高唱して吾一行を迎ふ。
浦戸湾高知の港に船着けば
宣使まめ人神旗(はた)ふり出迎ふ。
先導は松山分所長案内(あない)にて
材木町材木町は現・高知市はりまや町1丁目12番の辺りにあった。の支部に入りけり。
 本州にては(やうや)籾種(もみだね)苗代(なはしろ)()きて(わず)かに数日を経たるのみなるに、土佐に来て見れば、既に(すで)に稲田は植付け済みて数日を経しと云ふ。()に恵まれたる国と云ふべし。
 (なほ)珍らしきは梅の実の青々としたるもの、桃の実の熟したるもの、小梅の赤く熟したるなぞ、とても本州にては見られざる所なり。
 支部の宣使まめ人等に送られ自動車にて足立邸に入る。鏡川(のき)に清く東に流れ、空気清鮮にして旅心地よし。主人(あるじ)の勧むるに任せ湯殿(ゆどの)に入りて心身の(あか)を洗ふ。
 宣使まめ人続々として足立邸に追ひ来たる。各自に画短冊(たんざく)かきて一枚(づつ)を分与す。
 高知新聞の記者来訪、吾小照を撮りて帰り行く。去る年の冬、琉球大島諸島を巡遊して夜叉者(やしやもん)(ばか)り眼に入りし吾には土佐の奇麗者(きやらもん)婦人の多きに驚きたり。
高知支部神前拝礼(あひ)すみて
直ちに足立氏邸に立ち行く。
鏡川岸に建てたる足立家の
風光()にも天国に似たり。
画短冊数十枚に筆染めて
まめ人(たち)に配りけるかな。
観音や達磨(だるま)半切(はんせつ)画像をば
支部長次長に贈りけるかな。
鷲尾山(わしをやま)雨にけぶりて鏡川
(ひき)しほ時とあせにけるかな。
(へい)ごしに鏡を(のぞ)く老松の
枝おもしろく栄えて()てり。
鏡川(のき)を流るる宇津(うづ)やかた
大王松の水かがみ見つ。
風光のわけて(たへ)なる川ぎしに
漆器の看板あるぞ(いま)はし。
古の牛追橋も星うつり
今は電車の通ひ()となる。
筆山(ひつざん)や鏡の川を見ながらに
ままならぬかな筆の運びも。
筆山のながめもあかぬ風光は
歌におよばず()にさへ()けず。
砂利(じやり)あさる舟もいつきて鏡川
里の(わらべ)小魚(さな)とり遊べる。
浦戸湾そそぐ鏡の川水は
月を流していよいよ清けし。
五台山(ごだいさん)うつしと伝ふ竹林寺
かがみの川に影を落しつ。
鏡川雨にけぶりて五台山
うづの姿もかくれけるかな。
その昔紀貫之(きのつらゆき)平安時代の貴族、歌人。生866年頃、没945年頃。の治めたる
土佐路に入りて歌をよむかな。
土佐日記書きしるさんと筆持てば
紀貫之の(しの)ばるるかな。
里人(さとびと)がたななし小舟に(さを)さして
かがみの川の浅瀬をのぼる。
見えねども小雨降るらむ川づつみ
から傘さして行く人のあり。
孕山(はらみやま)いつも(のぞ)くやかがみ川。
小山(をやま)をば率ゐて立てり孕山。
烏帽子(ゑぼし)山ふもとの小山(おほ)ひけり。
筆山(ひつざん)を水に描くや鏡川。
筆山をうつして清し鏡川。
鷲尾山大空高く煙りけり。
日の本の大道(おほぢ)を開く真人(まびと)かな。
家の()も見えて大王松茂り。
干潮(ひきしほ)や鏡川原に砂利の船。
土堤(どて)を行く美人をうつす鏡川。
筆山を墨画(すみゑ)にかけば(すずり)かな。
命毛(いのちげ)の筆にも似たり川辺山。
昭和の()牛追橋を電車行き。
一株の躑躅(つつじ)に庭の風情かな。
古びたる灯籠(とうろう)に家の()見えにけり。
庭石の(くぼ)みに雨の溜りけり。
幼児(おさなご)(せな)に負ひつつ里の()
土堤(どて)行く姿の詩的なるかな。
次々に新聞社員たづね来て
尊きタイムぬすみてぞ行く。
庭の()()ふる蘇鉄(そてつ)の株を見て
琉球大島しのばるるかな。
自転車に乗りて土堤行く人見れば
さながら傴僂(そむし)の走るやうなり。
岸の辺のすべての物を水底(みなそこ)
うつして清きかがみ川かな。
短冊(たんざく)数百枚に筆染めて
一々信者に与へけるかな。
高知支部講演会に鳴球氏
午後六時過ぎ立ち出でて行く。
愛善会潮江(うしえ)の支部に講演会
出席のため白嶺氏行く。
鏡川海潮よせつつ見る内に
水深みけり夕暮の空。
神習教日の本教会岩本氏
足立氏邸に吾を(おとな)ひけり。
黄昏(たそが)れて白洋新聞山崎氏
半切(はんせつ)もらひ立ち帰り行く。
どの山も立木豊けき土佐(とさ)の国
神の恵みの深きをぞ知る。
鏡川水のおもてに白々と
家鴨(あひる)の浮きて遊ぶ(すず)しさ。
どんよりと空は曇りて風も無く
心おもたき今日の夕暮。
一輪の(あふひ)の花の紅々(あかあか)
庭の()(しめ)て咲きほこりつつ。
 「土佐は()いとこ南を受けて、薩摩(さつま)嵐をそよそよと」と云ふ俗謡を(かね)てより聞き覚え心に常に描き居たりし憧憬(あこがれ)の土佐へ、今日(やうや)くに安着しぬ。陽気も本州に比べて(はなは)だ敷く暖かく、見るもの一として新ならざるは無し。鏡川の沿岸、風光(こと)(たへ)なる足立卓子氏館に一日の疲れを休めんと南向きの座敷に陣取り筆山(ひつざん)、鷲尾山、孕山(はらみやま)、五台山等眼前に横たはる勝土に歌句をものして、遠く思ひを紀貫之(きのつらゆき)の昔に()せ、文机(ふづくゑ)によれば鏡の川の()(たちま)ち潮高まりて船人(かこ)の勇む声耳をつんざく。牛追橋を自動車、電車、荷車の行き交ふ音も殺風景なれど、一つは旅の(なぐさ)めともなりぬべし。()西山に落つる頃(この)町の実業家たりし深瀬真澄と云へる人足立氏宅に吾を(おとな)ひければ、左の和歌一首を()みて与へける。
そこ深き川瀬の水は真澄(ますみ)にて
大船小船静に浮くなり。
 帝国議会も無事閉会を告げ、田中首相一安心せりと聞きて、
日比谷原蛙の鳴く音静まりて
おもて(すず)しき初夏の風吹く。
民政党矢叫びの声鯨波(とき)の声
沖のカモメと成りにけるかな。
輝ける河岸の電灯水の面に
うつりて清き鏡川かな。
高知紙の社員夕暮訪づれて
幽界(いうかい)談を聞きて帰りぬ。
幾筋の火龍の天に登る(ごと)
灯影(ほかげ)の揺るる鏡川かな。
()みの仏教信者 夜(きた)
宗義(しうぎ)語れと強談(がうだん)して行く。
道知らぬ邪人(まがびと)来り筋違ひ
質問なして這々(はふはふ)()げ行く。
祖師なれば他教の宗祖と同様に
法談なせと怒鳴(どな)りて帰れり。
法談をしよとせまいと吾輩の
自由と云へば眼を()りて行く。
余りにも無礼な奴と思ふまま
謝絶をすれば怒り出したり。
愛善の道は知らぬにあらねども
獣の身魂(みたま)は救ふ(すべ)なし。
礼節を知らぬ獣の質問に
返答せぬのは(あた)り前田よ。
無言にて会はして()れと云つたのに
ものを言つたとほざくけだもの。
無言でと云つた獣が言葉尻
(つか)んで物言ひ()けんとぞする。
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