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五月八日 於高知市唐人町東足立邸

インフォメーション
題名:5月8日 於高知市唐人町東足立邸 著者:月の家(出口王仁三郎)
ページ:25 目次メモ:
概要: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2018-08-19 19:19:52 OBC :B117500c03
 昨夜は大に疲労を感じ就寝後呻吟(しんぎん)して、足立氏の夜中介抱(かいはう)を受け、四更頃より(やうや)く安眠し、朝七時に眼を()ましたり。玻璃(はり)窓を通して鏡川を打ち見やれば雨潚々(しゆくしゆく)として降り出で、河面(かめん)水茎(みづくき)の文字を描き、足立家の庭の松ケ枝に降る雨の露の玉垂れは、ノレンの如く光りて(うる)はし。
 朝飯も済み浴湯(ゆあみ)も終りて久し振に髪を(くしげず)八幡(はちまん)神社に吾一行を始め宣使信徒(まめひと)と共に雨を冒して車上参拝を為し、社前にて記念の撮影を終り、帰宅せしは(まさ)に午前九時二十分なりき。朝来の雨は(なほ)止まず、室内暗くして風景佳きこの珍座敷も陰気なり。
朝起きて窓開け見れば雨しげく
鏡の川に水茎(みづくき)文字浮く。
朝八時自動車三台(あひ)つらね
八幡(はちまん)神社に(まゐ)(まう)で行く。
老松の空を(おほ)へる大宮の
庭に小鴿(こばと)の群れて遊べり。
 五月八日午後零時、土佐の名勝地浦戸湾内巡覧の為、宣使信徒(まめひと)等一行二十五名船にのるべき所に到る。朝来の雨は(いま)だ止まず。鬱陶(うつとう)しき事限りなし。菜園場(さゑんば)材木町のすぐ東側の菜園場町(さえんばちょう)より川一丸と云ふ屋台船に乗りて出船の時を待つ。岸の上に立ちて知る知らぬ怪し気な眼を開きて吾を見つむる。余りに心よきものにしもあらず。
五月八日午後より
浦戸湾巡覧せんと自動車を
数台並べて菜園場に行く。
菜園場ゆ川一丸に廿(にじふ)五名
乗りて雨降る堀川流る。
又しても雨はらはらと降り続き
船のあそびの(うら)重きかな。
泥水の流れ汚なき堀川を
下れば発動汽船行き交ふ。
五台山ま近くなりて(やや)広き
汽船の数々浮きて止まれり。
大海津見(おほわだつみ)神の(やしろ)の裏山は
老樹茂りて風致いと佳し。
雨けぶる浦戸の湾の巣の島に
数千万の鳥寝るとふ。
右左前も後も波の()
浮ぶ景色の類なきかな。
雨けぶる(この)湾内の島々の
かげ青々と浮ける床しさ。
縁結ぶ神と縁切る神さんと
二つの島の並ぶ湾かな。
(その)昔鬼が(たもと)に入れきたと
伝ふる磯の袂石はも。
今の世の王仁(おに)の袂に入れていぬ
馬鹿力なき我ぞ甲斐なき。
弁天を(まつ)りし佐島(さじま)の風光を
眺むる面に(よだれ)たる見ゆ。
潮干狩(しほひがり)赤きイモジの貝拾ふ
浦戸の湾に浦戸見るかな。
潮干狩乙女の岩戸見えね(ども)
尻の浦戸のイモジ貝あり。
赤ユモジながめて○○やに下り
情緒そそると眼を細めつつ。
長曽我部(ちやうそかべ)城の跡なる島山は
雨にけぶりて海鳥高舞ふ。
大空は細雨ふらし鳴球氏
磯辺に太き雨を降らせり。
天道が小便をこく磯端に
立ちて鳴球バリを放てり。
千松苑森の繁みにふる雨の
緑新らし浦戸の入海。
(みづ)みたま()ぎ行く船の海の()
雨の水玉かがやく今日かな。
千羽鳥ねぐら定むる巣の島の
神の(やしろ)の暗き森かな。
荒磯に貝取る乙女夜に入れば
一円二円で貝を売るらむ。
浦戸湾鏡の如く照る波は
鏡の川の流れのむなり。
赤貝が赤きユモジをひらつかせ
あさり貝とる()の赤きかな。
副守(ふくしゆ)らの(いたづら)歌や(こと)の葉に
始めての人苦笑ひする。
青海原赤白の傘帆にあげて
行き交ふ船の花に似しかな。
骨太の蛇の目の傘を帆にかかげ
浦戸湾()帆傘船(ほがさぶね)かな。
おもかげの忘れられなくて今日も(また)
夢にとびゆく魂は妹の辺。
誰が妹の言のすさびの生一せこ
えにしも結びかねる神ぞや。
誰が妹の船出を忌むか海包む
山けぶたげにぼけてありけり。
吾妹子を家に残せし旅立の
淋しさ(サイ)ダーをぬきて飲みたり。
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