霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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五月廿二日 於新居浜分所

インフォメーション
題名:5月22日 於新居浜分所 著者:月の家(出口王仁三郎)
ページ:178 目次メモ:
概要: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2018-08-19 19:30:19 OBC :B117500c18
庭の面に嫩葉(わかば)(そよ)ぎて風清く
日光(ひかげ)(かがや)き心地よき朝。
群雀(むらすずめ)庭の面に声清く
千代々々と鳴く朝晴れの空。
若葉もゆる梧桐(ごどう)の窓の文机(ふづくゑ)
(てる)の家宗匠玉鏡見る。
光の家は何感ずらむ吾面を
すかし眺めて微笑()らせり。
宇知麿を出迎への為栗原氏
満月(ともな)ひ立出でにけり。
何神の御魂なるにや白石の
海に浮べる姿尊き。
窓開けて遠く浜辺を見渡せば
青島影に浮ぶ白石。
庭の面に立てる榎の大木に
雀集まり太祝詞()る。
浅緑澄み渡りたる大空を
吾もの顔に鳶の舞ふ見ゆ。
風清く陽はうららかに照る庭に
雀あつまり千代を寿(ことほ)ぐ。
躑躅(つつじ)青葉となりて庭の()
肌へ()めたき初夏の風吹く。
宣伝の旅に出てより今日一日
身をくつろげて休む楽しさ。
(たちばな)の花庭の面に咲き充ちて
風に匂ひを送る(すが)しさ。
黄金の玉を抱へて(だいだい)
(こずゑ)の茂み風に匂へる。
昼も蚊の立舞ふ讃岐(さぬき)に引替へて
夜も蚊帳(かや)の要らぬ新居浜(にゐはま)
海の音かすかに聞えて庭木立
梢揺すりて朝風冷たし。
寝そべりて吾()む歌を記し行く
女の顔の白く輝く。
海国の馳走(ちそう)に飽きて香の物
梅干なぞの欲しくなりけり。
まめ人が心づくしの佳肴(かかう)さへ
日を重ぬれば飽きにけるかな。
麦飯に香肴(かうかう)茶漬さらさらと
日に一二回食ひたくなりけり。
自動車に運ばれ汽車に乗る身さへ
疲れけるかな心の旅路に。
何船の出帆なるか汽笛の音
吾居間までも高く(きこ)ゆる。
青葉もゆる庭の面を翩翻(へんぽん)
袖も軽げに白き蝶舞ふ。
葉桜の梢を(わた)る朝風に
黄蝶飛び交ふ(さま)の淋しも。
宇知麿は一行四名白石氏
やかたに午前十一時入る。
 ○神の国の原稿にもと寸暇(すんか)を利用し数首の道歌を()
国の為命捨てんと口癖に
誇らふ人は贋物なりけり。
空虚なる器物は巨大な音響を
発すと云へる(ことわざ)もあり。
自然愛自己愛の花咲き充ちて
醜の実りの(しげ)き葦原。
愛善の花咲き充つる神の代は
人の心も華やかなるらむ。
我国は徳主法従神の国
理屈(ばか)りで治まらぬ国。
荒風に(なみ)立ち狂ふ海原も
底の心は静なりけり。
日本魂醜の焰火に曇るとも
其の実相は光りなりけり。
開けたる御代の恵を浴び(なが)
生存難に苦しむ諸人。
生活は世の人の為国のため
活きて働く人の業なり。
衣食住外に望みの無き人は
生存競争の(ちまた)彷徨(さまよ)ふ。
日の本の真の道も白浪(しらなみ)
沖に漂ふ葦原国人。
大日本国は更なり地の上の
(すべ)てに道を明かす斯道。
惟神(かむながら)日本大道は世の人を
安きに救ふ真道なりけり。
 かねてより憧憬(どうけい)せる白石御代島の尖端に突出した白い岩石のこと。下記本文参照。を見んとてまめ人と共に川口より船を出だしぬ。
午後の二時沖の白石見んものと
人車にのりて浜辺に走せ行く。
川口ゆ五隻の漁船(やと)ひ入れ
白石さして()ぎ出でにけり。
平穏な波に五隻の船浮けて
海原行けば心(すが)しき。
住友の肥料会社の工場の
煙突高く林立する見ゆ。新居浜は住友グループの城下町として発展した。
(わに)(ごと)姿浮べる御代島(みよしま)御代島はもともとは島だったが昭和初期に埋め立てられ現在は陸続きになっている。
(なみ)の表に静に横たふ。
不動明王(いつ)(まつ)りし石鎚(いしづち)
霊山雲井にそそり立つ見ゆ。
満潮の船出ながらも白石の
姿は遠く浪の()に浮く。
御代島(みよしま)の頭に松の冠きて
浮ける端島(はじま)御代島の別名か?の眺め()きかな。
燐鉱石満載したる七千(トン)
黒船沖に静にかかれり。
宣伝使まめ人一同勇み立ち
船の上にて宣伝歌うたふ。
吾船は白石の側めぐりつつ
汽船の余波を浴びて揺らつく。
御代島を廻りて見れば常磐木(ときはぎ)
松海水に映えて(たへ)なり。
烏賊(いか)(あさ)小舟(ふね)海上に並びつつ
()(さま)の面白きかな。
波煙る沖に浮べる四阪島(しさかじま)四阪島は新居浜沖の5つの島の総称で、いずれも住友金属鉱山の工場になっている。住所は愛媛県今治市(旧・越智郡宮窪町)。
見渡す限り赤土のみなる。
海の上(もや)一文字にたなびきて
瀬戸内ながめ一入(ひとしほ)美はし。
松老うる端島めぐれば面白き
立岩一つ松の傘きる。
桝網(ますあみ)を曳ける海上()を漕ぎて
渡る浅洲(あさす)に船行き悩む。
三時間清遊終へて川口の
乗り場に船は横づけとなる。
犬の曳く人力にのりて白石氏
やかたに安く帰り休らふ。
信徒(まめひと)に面会済めば宇知麿は
斎主となりて夕拝行ふ。
天津神造り玉ひし鏡かと
疑ふばかりの清き瀬戸海。
何時(いつ)までも忘れざるらむ瀬戸内の
白石がりに遊びし今日を。
(まま)ならば瀬戸内海に永久(とこしへ)
船中生活()さんとぞ思ふ。
白石の沖より東を見晴せば
伊予不二(ふじ)の峰雲の上にあり。
 今日の太陽が西海に沈まんとする頃しも、衆議院議員小野寅吉、商工副会長真木宗一郎、銀行支店長宇野忠太郎、歯科医赤尾巌、垂水警部補の諸氏面会を求めたり。沈黙数分時にして去る。別にさしたる用事も無き様子なれば世間話なぞする暇もなく、吾も話しかけず()(まま)にして別れたり。()二名渡(ふたなと)島以来初めての地方有力者との会見なりしなり。夕陽(せきやう)吾居室を照らして凉風面を吹く。
 陰暦四月四日の上弦の月は鍍金(ときん)をかけて海上低う雲間に(かがや)く。
人類愛講演の(ため)女学校
講堂さして(ゆふ)べ出で行く。
宇知麿や栗原岩田の三宣使
獅子吼(ししく)せんとて講堂に向ふ。
聴衆は一千余人盛会と
十時半頃報知ありたり。
白嶺氏長講の為鳴球氏
講演時間そがれしと云ふ。
宇知麿の(とどめ)の講演(あひ)終り
聴衆勇み立ちて帰宅す。
十二時を過ぎて言霊将軍は
悠々白石邸に帰れり。
 身一つにして(おも)四つありと古事記に記されたる二名(ふたな)の島に、今回言霊将軍を率き具して、阿波、讃岐(さぬき)と転戦半月、昨日の夕方いよいよ伊予新居浜(にゐはま)に着きぬ。新居の浜近き海上に遠き神代の昔より深き神秘を包みて清く浮べる白石の零巌、一目参観なさばやと、今日しも(うま)(さが)(ひつじ)の上刻より、宣伝使信徒(まめひと)数十人と(とも)に舟出する事とは成りぬ。
 白石氏館の表門を出づれば、腕車三台梶棒を(おろ)して待てり。この腕車には赤茶色なす毛の生えし狗児(いぬのこ)先曳を為して行く。先曳の勇士は犬なればケン(○○)引力もワン力も又強からんなぞ無駄口を密に叩きつつ、四脚(よつあし)狗力(クリー)に守られて、王仁、宇知麿、八重野子三人浜辺に運ばれて行く。余り遠からぬ道程なれば、人々何れも徒歩(から)にて従ふ。川口の運河には五隻の漁舟準備おさおさ(おこた)りなく、吾等一行の到るを待てり。右手(めて)は砂丘の松原左手(ゆんで)は河岸に添へる人家の建ち並ぶ市街の一部、その中間を流るる川口の運河を、悠々として異口同音に宣伝歌を合唱しながら、満潮時の船足(はや)く海に入りぬ。
 前方に清く浮べる鰐の形せる老松生ふる端島は、名さへ目出度(めでた)き御代島となむ云ふ。左手(ゆんで)に石槌山の霊峯高く雲表に現はれて瀬戸の内海を睥睨(へいげい)し、右手(めて)には群峰を圧して立てる伊予不二伊予富士は石鎚連峰の一部。の秀嶺、海面を瞰下(かんか)せるその雄大なる景色、得も云はれぬ(ばか)りなり。
 浪()ぎ渡り風清く、巨船(おほぶね)小舟行き交ふ海を水夫(かこ)の操る艪の音勇ましく、北へ北へと(すべ)り行く。
 住友家の経営せる肥料の会社煙突は、林の如く浜辺に立ち並び、黒煙を吐く(さま)(あたか)も龍の昇天に似たり。四阪島は沖の彼方に兀々(こつこつ)として横たはり、樹木一本も見えず。可惜(あたら)風光(たへ)なる瀬戸の内海に一点の疵痕(しこん)を印したる思ひするかな。左手(ゆんで)に浮ぶ大船は住友の運送船、約一千五百(トン)の北斗丸にて、貨物を積み込む起重機の音高く耳に響きて心持良からず。右手(めて)の沖合には約七千噸の巨船山の如く泰然(たいぜん)として静に浮べるありて、住友王国の隆盛を(しの)ばしめたり。吾等の乗り来せし五隻の小舟は前に後に、右に左の波の()をうねり(なが)ら、逸早くも音に聞えし白石の零厳近く進み寄る。地底より湧き出でし如き純白無垢(むく)の大理石岩にして、()と珍らしき物にぞありける。
 御代島の尖端又大理石の白厳清く露出して、海水に其姿を移し、臥龍の老松其の上に(こけ)(かぶ)りて()てる(さま)(あたか)も狩野派の山水画にも似て床し。白石との間隔三十間30間は約55メートルにして、海底には白厳並列して、その奇勝(たと)ふるに(ことば)なし。一同の小舟は霊岩を中心に取り巻き(なが)ら、珍らしき風光に憧憬(あこが)れ、感賞(やや)久しき折もあれ、沖を馳せ行く大船の余波、うねりうねりと渦巻き襲ひて、漁舟を木の葉の如く遠慮会釈(ゑしやく)もなく上下左右に翻弄(ほんろう)して去り行く様いとも憎らし。
 船は針路を西北に転じ、御代島に添ひて進めば、昔用ひたりしと云ふ灯台の跡淋しく波打際に建ちあり。全島(ことごと)く苔の()す黒松の林にして、住友王国の所有なり。奇厳所々に立並ぶその中にも秀でて大なる白石の厳、(ここ)にも(また)一個磯辺に浮くあり。(しか)れども余り此の岩のみは人の賞揚せざるぞ不可思議なり。烏賊(いか)(あさ)る小さき舟いくつと無く海面に浮かびて、潮風に焦げたる黒き腕をむき出し乍ら、網()く漁夫の(おもかげ)なぞ見るも仲々面黒し。御代島の西端に吾舟進めば大小三つの松生ひ茂る岩を以て形造られたる端島(はじま)山、瀬戸内の(なみ)を真向に受けて静に浮く。瀬戸の島々伊予の山々、鏡の如く()ぎ渡る海の面に影を浮かべ、一直線にかすめる波の煙に日光映えて、紫の幕を大海原に引きまはすが如く、その美観と其の雄大さ、荘厳さ、思はず手を()つて讃嘆の声ほとばしる。
 端島の四辺は暗礁点綴(てんてつ)して船人の最も注意を要する関所とぞ聞く。船は(やうや)くにして南に廻る。御代島に建てられし火薬庫のあたり、松の(みどり)一入(ひとしほ)濃く(うる)はしく波に映じて風光最も()し。海は漸次浅みつつ、水底に潜む小魚の影さへ眼に入る。(ます)形の網長く広く引きまはされたる間を縫ひつつ東に進めば、浅き瀬ありて水の色まで変れるあり。干潮(ひきしほ)の時には新居浜(にゐはま)より御代島まで徒歩(かち)にて渡り得ると云ふ。時(あたか)も干潮の最中にて潮流激しく船行き悩む。王仁自ら水棹をとり水夫(かこ)に力を添へ、辛ふじてこの難関を突破す。船中には、菓子、果実、弁当、サイダー等の接待ありて、賑はしく歓声湧く。
 ()くて数十分の後舟は川口の運河に入る。両岸干潮の(ため)川底現はれていとも見憎(みにく)し。町の童が三々五々干潟に降りて、ツボと云へる貝を(あさ)れる(さま)風流めきたり。舟は危き古き桟橋に近づき、細き板子をさし渡して陸によぢ登る。待ちかまへたる例のワン車に揺られ、白石氏館に帰る。陽は西海に垂れた、(あかね)の瑞雲天にたなびき、庭の面の樹々の若葉に映えて()とも(うる)はしく、初夏の凉風吾窓を訪ふ。
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