霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
×
設定
URL:
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
話者名の追加表示 [?]セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。[×閉じる]
表示できる章
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
行間
ルビの表示


アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注[※]用語解説 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

脚注[*]編集用 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

外字の外周色 [?]一般のフォントに存在しない文字は専用の外字フォントを使用しています。目立つようにその文字の外周の色を変えます。[×閉じる]
現在のページには外字は使われていません

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。

第五章 誘惑婆(いうわくばば)〔六一六〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第17巻 如意宝珠 辰の巻 篇:第1篇 雪山幽谷 よみ(新仮名遣い):せつざんゆうこく
章:第5章 誘惑婆 よみ(新仮名遣い):ゆうわくばば 通し章番号:616
口述日:1922(大正11)年04月21日(旧03月25日) 口述場所: 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年1月10日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
平助、お楢、お節は三人連れになって山道を進んで行く。すると、行く手をさえぎる婆があった。
婆は真名井ケ原の豊国姫は悪神だと罵り、自分の話を聞くようにと一行を引き止める。そして素盞嗚尊の悪口を言い出す。これはウラナイ教の黒姫であった。
そこへ向こうから宣伝歌を歌いながら音彦と青彦がやって来た。お節も声を合わせて宣伝歌を歌うと、黒姫は傍らの茂みの中へ逃げてしまった。
二人は黒姫が出現したことをお節から聞いてあきれている。二人は、悦子姫の命で、平助一行を迎えにやってきたのであった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2025-05-07 13:27:39 文字数:3611 OBC :rm1705
愛善世界社版:70頁 八幡書店版:第3輯 549頁 修補版: 校定版:72頁 普及版:31頁 初版: ページ備考:
001 平助(へいすけ)は、002お楢(なら)、003お節(せつ)と共(とも)に崎嶇(きく)たる山路(やまみち)を心細(こころぼそ)げにとぼとぼと進(すす)み行(ゆ)く。004春日(はるひ)に照(て)らされて日向辺(ひなたべり)の坂道(さかみち)は雪(ゆき)解(と)け、005山(やま)の肌(はだ)を現(あら)はして居(ゐ)る。006斯(か)かる処(ところ)へ蓑笠(みのかさ)着(き)た一人(ひとり)の婆(ばば)、007若(わか)い娘(むすめ)を二人(ふたり)伴(ともな)ひ、008行手(ゆくて)に立(た)ち塞(ふさ)がり、
009婆(ばば)(黒姫)『これはこれは、010お爺(ぢい)さま、011お婆(ば)アさま、012青白(あをじろ)い痩(や)せた娘(むすめ)を連(つ)れて何処(どこ)へ行(ゆ)くのぢや』
013平助(へいすけ)『ハイハイ、014お前(まへ)さまは何処(どこ)のお方(かた)か知(し)らぬが、015私(わたくし)は真名井(まなゐ)ケ原(はら)の、016今度(こんど)現(あら)はれなさつた結構(けつこう)な神(かみ)様(さま)に、017お礼(れい)詣(まゐ)りに行(ゆ)くのぢや、018どうぞ其処(そこ)を退(の)いて下(くだ)され』
019婆(ばば)(黒姫)『お前(まへ)さま、020真名井(まなゐ)ケ原(はら)へ御(お)礼(れい)詣(まゐ)りに行(ゆ)くのぢやと云(い)うたな、021アンナ処(ところ)へ行(い)つて一体(いつたい)何(なに)をするのぢや、022あの神(かみ)は悪神(あくがみ)ぢやぞ』
023平助(へいすけ)『悪神(あくがみ)でも何(なん)でも構(かま)うて下(くだ)さるな、024信仰(しんかう)は自由(じいう)だ、025私(わたくし)の心(こころ)で私(わたくし)が拝(をが)むのぢや、026何処(どこ)の婆(ばば)アか知(し)らぬけれど、027人(ひと)の信仰(しんかう)を落(おと)ささうと思(おも)うて、028コンナ山(やま)の中(なか)へ出(で)しや張(ば)つて、029よい物好(ものず)きもあればあるものぢやワイ』
030婆(ばば)(黒姫)『はてさて困(こま)つた人(ひと)達(たち)だ、031可憐(かわい)さうなものだナア。032良薬(りやうやく)は口(くち)に苦(にが)し、033利益(りえき)になる事(こと)を云(い)へば嫌(きら)はれる世(よ)の中(なか)だ、034お前(まへ)さま、035これから先(さき)に行(ゆ)かうものなら命(いのち)がないぞへ、036命(いのち)を捨(す)てても信神(しんじん)をするのかい』
037平助(へいすけ)『誰人(だれ)が命(いのち)まで放(ほ)かして信神(しんじん)する物好(ものずき)があるものか、038長命(ながいき)がしたさにお参詣(まゐり)するのぢや。039真名井(まなゐ)ケ原(はら)の豊国姫(とよくにひめ)の神(かみ)様(さま)と云(い)つたら、040それはそれは結構(けつこう)な、041命(いのち)の神(かみ)様(さま)ぢや。042お前(まへ)も一(ひと)つ詣(まゐ)つてお蔭(かげ)を頂(いただ)いてはどうだい、043何時(いつ)迄(まで)生(いき)て居(ゐ)ても生満足(いきたんのう)せぬ此(この)世(よ)の中(なか)だ。044サアサア往(ゆ)かう往(ゆ)かう』
045婆(ばば)(黒姫)『マアマアお爺(ぢ)イさま、046一服(いつぷく)しなさい、047此処(ここ)を少(すこ)し横(よこ)へ寄(よ)ると小(ちひ)さい家(いへ)がある、048其処(そこ)が私(わたし)の修業場(しうげふば)ぢや、049お前(まへ)達(たち)のやうな瑞(みづ)の霊(みたま)に呆(とぼ)けて出(で)てくる亡者(まうじや)を済度(さいど)しやうと思(おも)うて、050俄(にはか)に修行場(しうぎやうば)を拵(こしら)へたのだ、051喰(く)はず嫌(ぎら)ひは信用(あて)にならぬものぢや、052マア兎(と)に角(かく)この婆(ばあ)さまに随(つ)いて御(お)出(いで)なさい』
053平助(へいすけ)『オイお楢(なら)、054何(ど)うせう、055この婆(ばあ)さまの云(い)ふ通(とほ)り、056大分(だいぶん)足(あし)も疲(つか)れた。057一寸(ちよつと)一服(いつぷく)して話(はなし)を聞(き)くだけ聞(き)いて見(み)ようかなア』
058お楢(なら)『お爺(ぢ)イさま、059お前(まへ)はそれだから困(こま)ると云(い)ふのぢや、060直(ぢき)に人(ひと)の口車(くちぐるま)に乗(の)つて、061ソンナ事(こと)で信神(しんじん)が出来(でき)るものか、062私(わたし)が何時(いつ)も意見(いけん)すると、063仕様(しやう)のない婆(ばば)アの老婆心(らうばしん)で吐(ぬか)す事(こと)は聞(き)く耳(みみ)持(も)たぬと、064二(ふた)つ目(め)には頑張(ぐわんば)りなさるが、065些(ちつ)とは此(この)婆(ばば)アの云(い)ふ事(こと)も聞(き)きなさい、066お前(まへ)も余(あんま)り老爺心(らうやしん)が勝過(かちす)ぎて居(を)る。067何処(どこ)の婆(ば)アさまか知(し)らぬけれど、068私(わたし)より些(ちつ)と若(わか)いと思(おも)うて早(はや)乗(の)り気(き)になつて御座(ござ)るが、069嫌(いや)ぢや嫌(いや)ぢや、070私(わたし)はどうしても、071ソンナ処(ところ)へは行(ゆ)かぬ、072それよりも早(はや)く真名井(まなゐ)さまに参詣(さんけい)して御(お)礼(れい)を申(まを)さねばなるまい、073サアサアお節(せつ)行(ゆ)かう行(ゆ)かう』
074平助(へいすけ)『婆(ばば)アがさう云(い)うても、075お節(せつ)お前(まへ)はどうだ、076一寸(ちよつと)寄(よ)つて見(み)る気(き)はないか』
077お節(せつ)『お爺(ぢ)イさま、078道草(みちぐさ)を喰(く)はずにトツトと参(まゐ)りませうよ』
079婆(ばば)(黒姫)『これはこれはお婆(ば)アさまと云(い)ひ、080娘(むすめ)さまと云(い)ひ、081何(なん)と云(い)ふ不心得(ふこころえ)な事(こと)だい、082夫(をつと)や親(おや)の言葉(ことば)を背(そむ)くと云(い)ふ事(こと)があるものか、083大方(おほかた)お前(まへ)さまは三五教(あななひけう)の信者(しんじや)であらう』
084お節(せつ)『尤(もつと)も妾(わたし)は三五教(あななひけう)の信者(しんじや)で御座(ござ)います、085お爺(ぢ)イさまお婆(ば)アさまは無宗教(むしうけう)者(しや)、086妾(わらは)は大江山(おほえやま)のバラモン教(けう)の大将(たいしやう)に誘拐(かどはか)され、087巌窟(がんくつ)の中(なか)に閉(と)ぢ込(こ)められ苦(くる)しみ悶(もだ)えて居(を)りました。088其処(そこ)へ有難(ありがた)い三五教(あななひけう)の神(かみ)様(さま)が夢枕(ゆめまくら)に立(た)つて下(くだ)さいまして、089宣伝歌(せんでんか)を教(をし)へて下(くだ)さつた、090其(その)宣伝歌(せんでんか)を唱(とな)へて居(ゐ)ると、091間(ま)もなく悪者(わるもの)が改心(かいしん)を致(いた)しまして、092助(たす)けに来(き)て呉(く)れました。093世(よ)の中(なか)に何(ど)の神(かみ)様(さま)が尊(たふと)いと云(い)うても、094三五教(あななひけう)の神(かみ)様(さま)位(くらゐ)有難(ありがた)い神(かみ)様(さま)はありませぬ、095私(わたし)は三五教(あななひけう)を守護(しゆご)遊(あそ)ばす豊国姫(とよくにひめ)の神(かみ)様(さま)が、096今度(こんど)真名井(まなゐ)ケ原(はら)に御(ご)出現(しゆつげん)になつたので、097お礼(れい)詣(まゐ)りに行(ゆ)く所(ところ)で御座(ござ)います、098どうぞ神詣(かみまゐ)りの途中(とちう)で邪魔(じやま)して下(くだ)さいますな、099お話(はなし)があれば下向(げかう)の途中(とちう)に寛(ゆ)る寛(ゆ)ると承(うけたま)はりませう』
100婆(ばば)(黒姫)『サアそれがいかぬのだよ、101三五教(あななひけう)は今(いま)は高天原(たかあまはら)をおつ放(ぽ)り出(だ)された素盞嗚(すさのをの)尊(みこと)と云(い)ふ奴(やつ)が大将(たいしやう)をして居(を)るのだ、102悪(わる)けれやこそ結構(けつこう)な処(ところ)を逐出(おひだ)されたのぢやないか、103お前(まへ)さま達(たち)もさうぢやらう、104柔順(おとな)しい自分(じぶん)の兄弟(きやうだい)を誰(たれ)が逐出(おひだ)すものか、105親(おや)を泣(な)かし、106兄弟(きやうだい)を泣(な)かし、107ヤンチヤの有(あ)り切(き)りを尽(つく)し、108近所(きんじよ)は申(まを)すに及(およ)ばず、109其辺中(そこらぢう)に迷惑(めいわく)をかける極道(ごくだう)息子(むすこ)は何程(なにほど)可愛(かあい)いと云(い)うても、110世間(せけん)の手前(てまへ)家(うち)に置(お)いておくと云(い)ふ事(こと)は出来(でき)まいがな。111それと同(おな)じ事(こと)に、112伊邪諾(いざなぎ)の大神(おほかみ)様(さま)や、113姉(あね)の神(かみ)様(さま)が愛想(あいさう)をつかし、114世間(せけん)に済(す)まぬと云(い)うて切(き)つても切(き)れぬ姉弟(きやうだい)の中(なか)を放(ほ)り出(だ)された位(くらゐ)だもの、115酢(す)でも蒟蒻(こんにやく)でも行(い)く代物(しろもの)ぢやない、116その素盞嗚(すさのをの)尊(みこと)が采配(さいはい)を振(ふ)つて居(を)る三五教(あななひけう)へ迷(まよ)ひ込(こ)むとは何(なん)と云(い)ふお前(まへ)達(たち)は没分暁漢(わからずや)ぢやいナア、117三五教(あななひけう)の真実(ほんと)の事(こと)が聞(き)きたけれや、118この婆(ばば)が篤(とつく)りと説明(せつめい)して上(あ)げる、119サアサア何(なん)と云(い)つても連(つ)れて行(ゆ)く、120来(き)なされ来(き)なされ』
121お節(せつ)『仮令(たとへ)お爺(ぢ)イさま、122お婆(ば)アさまが行(ゆ)くと仰有(おつしや)つても妾(わたし)だけはよう参(まゐ)りませぬ』
123婆(ばば)(黒姫)『エヽ分(わか)らぬ娘(こ)じやなア、124これこの通(とほ)り綺麗(きれい)な二人(ふたり)の娘(むすめ)が、125此(この)婆(ばば)の言(い)ふ事(こと)を心(こころ)から納得(なつとく)して、126朝夕(あさゆふ)忠実(ちうじつ)に仕(つか)へて居(を)るのぢや、127新(あたら)しい女(をんな)の流行(はや)る時節(じせつ)にお前(まへ)さまは又(また)何(なん)とした旧(ふる)い頭脳(あたま)ぢや、128それもその筈(はず)一(いち)年(ねん)許(ばか)りも世間(せけん)見(み)ずに、129岩(いは)の穴(あな)へ押込(おしこ)められて居(ゐ)たのだから世間(せけん)の様子(やうす)も分(わか)るまい、130世(よ)の中(なか)は随分(ずゐぶん)進(すす)みて居(を)るぞえ、131些(ちつ)と確(しつか)りして此(この)お婆(ば)アさまの云(い)ふ事(こと)を聞(き)きなされ、132斯(か)う見(み)えてもこの婆(ばば)は、133若(わか)い時(とき)からドンナ事(こと)にも経験(けいけん)を積(つ)みて来(き)た苦労人(くらうにん)の黒姫(くろひめ)ぢや、134苦労(くらう)なしに誠(まこと)の花(はな)は咲(さ)かぬぞえ』
135お節(せつ)『お説(せつ)は御尤(ごもつと)もで御座(ござ)いませうが、136入(い)らぬ御(お)節介(せつかい)、137何(なん)と仰(あふ)せつけられましても、138折角(せつかく)ながら応(おう)じ兼(か)ねます、139入(い)らぬ御(お)節介(せつかい)止(や)めて下(くだ)さいませ』
140黒姫(くろひめ)『エイ我(が)の強(つよ)い女(をんな)ぢやなア。141青瓢箪(あをべうたん)に屁(へ)吸(す)はしたやうな顔(かほ)をしやがつて、142ようまあツベコベと理屈(りくつ)を囀(さへづ)る小娘(こむすめ)だ、143イヤ我羅苦多(がらくた)娘(むすめ)ぢや、144もしもしお爺(ぢ)イさま、145お前(まへ)も年(とし)が寄(よ)つてコンナやんちや娘(むすめ)を持(も)つて居(ゐ)ては末(すゑ)が案(あん)じられる、146もつと真面目(まじめ)な真実(ほんと)の身魂(みたま)になつて、147お前(まへ)さま夫婦(ふうふ)の安心(あんしん)の出来(でき)るやうに教育(けういく)して上(あ)げるから、148サアサアあそこ迄(まで)来(き)て下(くだ)さい、149この通(とほ)り二人(ふたり)の娘(むすめ)さまは淑(しと)やかなものだ、150これも全(まつた)く私(わたし)の教育(けういく)がよいからぢやぞゑ』
151平助(へいすけ)『エヽ喧(やかま)しいワイ、152娘(むすめ)がお転婆(てんば)にならうと、153何(ど)うならうと貴様(きさま)等(ら)のお世話(せわ)にならぬ哩(わい)、154サアサアお節(せつ)、155コンナ糞婆(くそばば)に係(かか)り合(あ)つて居(を)つたら日(ひ)が暮(く)れる、156サアサア行(ゆ)かう行(ゆ)かう』
157お楢(なら)『モシモシお爺(ぢ)イさま、158さう云(い)つたものぢやない、159一(ひと)つお前(まへ)聞(き)いたらどうぢや、160後生(ごしやう)のためになるかも知(し)れぬぞえ』
161 此(この)時(とき)前方(ぜんぱう)より宣伝歌(せんでんか)を歌(うた)ひながら遣(や)つて来(く)る二人(ふたり)の宣伝使(せんでんし)があつた。162お節(せつ)は此(この)声(こゑ)に力(ちから)を得(え)、163宣伝歌(せんでんか)に合(あは)して、
164お節『朝日(あさひ)は照(て)るとも曇(くも)るとも
165月(つき)は盈(み)つとも虧(か)くるとも
166誠(まこと)の力(ちから)は世(よ)を救(すく)ふ』
167と手(て)を打(う)ち踊(をど)り出(だ)したれば、168黒姫(くろひめ)は前後(ぜんご)の宣伝歌(せんでんか)の板挟(いたばさ)みとなり、
169黒姫(くろひめ)『エイエイ、170折(をり)も折(をり)肝腎(かんじん)の所(ところ)へ又(また)もや我羅苦多(がらくた)宣伝使(せんでんし)奴(め)が来(き)よつて頭(あたま)が痛(いた)い哩(わい)。171亡国(ばうこく)的(てき)の声(こゑ)を出(だ)しよつて、172アヽ胸(むね)が苦(くる)しい、173サアサアお爺(ぢ)イさまにお婆(ば)アさま、174アンナ奴(やつ)に見付(みつ)かつたら大変(たいへん)だ、175其(その)ヤンチヤ娘(むすめ)も早(はや)く私(わたし)の後(あと)へついて来(く)るのだよ』
176お楢(なら)『サアサア平助(へいすけ)さま、177お前(まへ)この方(かた)の後(あと)に随(つ)いて行(ゆ)かう、178怖(こわ)い者(もの)が出(で)て来(く)るさうな』
179平助(へいすけ)『お節(せつ)の話(はなし)を聞(き)いて、180三五教(あななひけう)と云(い)ふのがある事(こと)を聞(き)いたが、181何(なん)だか神(かみ)様(さま)のやうな声(こゑ)だ、182俺(おれ)は此(この)声(こゑ)を聞(き)くと益々(ますます)真名井(まなゐ)ケ原(はら)の神(かみ)様(さま)が有難(ありがた)くなつて来(き)たワイ』
183黒姫(くろひめ)『エイエイ仕方(しかた)のない耄碌(まうろく)許(ばか)りぢやなア、184誠(まこと)一(ひと)つで助(たす)けてやらうと思(おも)へば、185一生(いつしやう)懸命(けんめい)に嫌(いや)がつて滅亡(ほろび)の道(みち)に飛(と)んで行(ゆ)かうとする。186嗚呼(ああ)、187縁(えん)なき衆生(しうじやう)は済度(さいど)し難(がた)しとは、188能(よ)く云(い)うたものだ。189エヽ気分(きぶん)の悪(わる)い、190宣伝歌(せんでんか)が段々(だんだん)近(ちか)づいて来(く)る、191これこれ清(きよ)さま、192照(てる)さま、193早(はや)く早(はや)く』
194と急(せ)き立(た)て、195傍(かたはら)の木(き)の茂(しげ)みに手早(てばや)く姿(すがた)を隠(かく)したり。
196 此(この)場(ば)に現(あら)はれたる二人(ふたり)の宣伝使(せんでんし)は音彦(おとひこ)と青彦(あをひこ)なりける。
197音彦、青彦『ヤアお前(まへ)さまは丹波村(たんばむら)のお爺(ぢ)イさま、198お婆(ば)アさまに娘(むすめ)さまぢやな、199夜前(やぜん)は岩公(いはこう)や、200勘公(かんこう)、201櫟公(いちこう)が豪(えら)い御(お)世話(せわ)になつたさうですナア。202悦子姫(よしこひめ)様(さま)が大変(たいへん)に御(お)待兼(まちかね)です、203サアサア行(ゆ)きませう』
204平助(へいすけ)『イヽエ、205何(ど)う致(いた)しまして、206誠(まこと)に不都合(ふつがふ)な家(うち)でお礼(れい)を云(い)つて貰(もら)うと却(かへつ)て心苦(こころぐる)しう御座(ござ)います、207神(かみ)様(さま)の御(お)蔭(かげ)で一年振(いちねんぶり)に、208大事(だいじ)な大事(だいじ)なお節(せつ)の顔(かほ)を見(み)る事(こと)が出来(でき)ました。209これこれお楢(なら)、210お節(せつ)、211此(この)方(かた)は神(かみ)様(さま)の御(お)使(つかひ)様(さま)だ、212サアサアちやつと御(お)礼(れい)を申(まを)さぬか』
213お楢(なら)『貴方(あなた)は神(かみ)様(さま)の御(お)使(つかひ)、214何(なに)も申(まをし)ませぬ、215有難(ありがた)う御座(ござ)います』
216と涙(なみだ)ぐむ。
217お節(せつ)『神(かみ)様(さま)の御(お)蔭(かげ)で助(たす)けて貰(もら)ひました、218何分(なにぶん)宜敷(よろし)く御(お)願(ねが)ひ致(いた)します』
219音彦(おとひこ)『今(いま)此処(ここ)に何(なん)だか人影(ひとかげ)が現(あら)はれて、220クサクサと云(い)つて居(ゐ)たやうですが、221何処(どこ)へ行(ゆ)きましたか』
222お節(せつ)『ハイ黒姫(くろひめ)と云(い)ふ婆(ば)アさまが出(で)て来(き)て、223二人(ふたり)の綺麗(きれい)な娘(むすめ)さまと共(とも)に私(わたくし)等(ら)親子(おやこ)の者(もの)に真名井(まなゐ)ケ原(はら)に詣(まゐ)るな、224此方(こつち)へ来(こ)いと云(い)つて道(みち)を塞(ふさ)ぎ困(こま)つて居(ゐ)ました、225其処(そこ)へ貴方(あなた)方(がた)の宣伝歌(せんでんか)が聞(きこ)えましたので、226……とうとう何処(どこ)かへ姿(すがた)を隠(かく)しました、227アヽ良(い)い所(ところ)へ来(き)て下(くだ)さいまして親子(おやこ)三(さん)人(にん)が助(たす)かりました。228これと云(い)ふのも神(かみ)様(さま)の御(お)引合(ひきあは)せで御座(ござ)いませう』
229音彦(おとひこ)『ヤア何(なん)と仰(あふ)せられます、230黒姫(くろひめ)が出(で)て来(き)ましたか、231どこまでも執拗(しつえう)な奴(やつ)ぢやナア、232ハテ何処(どこ)へ行(ゆ)きよつたか知(し)らぬ』
233お節(せつ)『今(いま)此(この)林(はやし)の中(なか)をコソコソと下(くだ)つて行(ゆ)きましたよ』
234音彦(おとひこ)『何(ど)うも仕方(しかた)のない奴(やつ)ぢやなア、235兎(と)も角(かく)も早(はや)く御(お)参詣(まゐり)致(いた)しませう、236悦子姫(よしこひめ)様(さま)が貴方(あなた)のお出(いで)を大変(たいへん)お待(ま)ち兼(か)ねで、237吾々(われわれ)はお迎(むか)ひに参(まゐ)つたのです、238サア行(ゆ)きませう』
239と五(ご)人(にん)は勢(いきほひ)よく西(にし)へ西(にし)へと辿(たど)り行(ゆ)く。
240(大正一一・四・二一 旧三・二五 加藤明子録)
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【メールアドレス】
合言葉「みろく」を入力して下さい→