霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一〇章 四百種(しひやくしゆ)病(びやう)〔六二一〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第17巻 如意宝珠 辰の巻 篇:第2篇 千態万様 よみ(新仮名遣い):せんたいばんよう
章:第10章 四百種病 よみ(新仮名遣い):しひゃくしゅびょう 通し章番号:621
口述日:1922(大正11)年04月22日(旧03月26日) 口述場所: 筆録者:東尾吉雄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年1月10日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一部の章はAIによって要約を作成しています。[×閉じる]:
お楢が黒姫を案内して自宅に戻ってくると、お節はうなされて青彦の名を呼んでいた。
黒姫は、日の出神の筆先と称して、高姫の神諭を読み聞かせ始めた。そして、侍女二人に、ウラナイ教の宣伝歌を歌わせ舞わせた。
するとお節の容態はますます悪くなり、苦しみ始めた。それを見てお楢は嘆き始める。
黒姫は、神界の御用が急ぐと言い訳をして、その場を立ち去ってしまう。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2021-02-14 00:34:04 文字数:6008 OBC :rm1710
愛善世界社版:147頁 八幡書店版:第3輯 578頁 修補版: 校定版:154頁 普及版:65頁 初版: ページ備考:
001 真名井(まなゐ)ケ原(はら)の珍(うづ)の宝座(ほうざ)に参拝(さんぱい)せむと、002息(いき)せき切(き)つて進(すす)み行(ゆ)きたるお楢(なら)は、003ゆくりなくもウラナイ教(けう)の鍵鑰(けんやく)を握(にぎ)れる女豪傑(をんながうけつ)黒姫(くろひめ)に説(と)き伏(ふ)せられ、004くれりと心機(しんき)一変(いつぺん)し、005手(て)の掌(ひら)足(あし)の裏(うら)を覆(かへ)して、006スタスタと黒姫(くろひめ)一行(いつかう)を伴(ともな)ひ、007漸(やうや)く丹波村(たんばむら)の伏屋(ふせや)に着(つ)きにける。
008お楢(なら)『モシモシ、009ウラナイ教(けう)の大将(たいしやう)様(さま)、010此処(ここ)が私(わたし)の荒屋(あばらや)で御座(ござ)います。011サアサアどうぞお這入(はい)り下(くだ)さいませ。012嘸(さぞ)お疲労(くたびれ)でせう』
013黒姫(くろひめ)『ナニ、014これしきの雪道(ゆきみち)で疲労(くたびれ)るやうな事(こと)で、015三千(さんぜん)世界(せかい)の神界(しんかい)の御用(ごよう)が出来(でき)ますものか、016ウラナイ教(けう)にはソンナ弱虫(よわむし)は居(を)りませぬ、017オホヽヽヽ』
018お楢(なら)『どうぞ気(き)をつけてお這入(はい)り下(くだ)さい、019大江山(おほえやま)の鬼落(おにおと)しが掘(ほ)つて御座(ござ)いますから、020ウカウカ這入(はい)ると大変(たいへん)な事(こと)が出来(しゆつたい)致(いた)します。021サアサア私(わたし)の通(とほ)る処(ところ)を足(あし)をきめて通(とほ)つて下(くだ)され、022一足(ひとあし)でも外(ほか)を歩(ある)くと、023陥穽(おとしあな)へ落(お)ち込(こ)みますから』
024黒姫(くろひめ)『ナント用心(ようじん)の良(よ)い事(こと)だナア、025アヽ感心(かんしん)々々(かんしん)、026何(なん)と云(い)うても比沼(ひぬ)の真名井(まなゐ)に瑞(みづ)の霊(みたま)の悪神(あくがみ)が現(あら)はれる世(よ)の中(なか)ぢやから、027この位(くらゐ)の注意(ちうい)はして置(お)かななりますまい。028サアサア、029照(てる)さま、030清(きよ)さま、031私(わたし)の後(あと)を踏(ふ)みて来(く)るのだよ』
032お楢(なら)『モウ大丈夫(だいぢやうぶ)で御座(ござ)います。033サアサアどうぞお上(あが)り下(くだ)さいませ』
034黒姫(くろひめ)『ハヽア、035平助(へいすけ)どのはこの井戸(ゐど)の水(みづ)を汲(く)みて倒(こ)けたのだな。036ホンニホンニ危(あぶ)なさうな井戸(ゐど)ぢや。037お婆(ば)アさま、038お前(まへ)も随分(ずゐぶん)年(とし)をとつて居(を)るから気(き)を付(つ)けなされよ』
039お楢(なら)『有難(ありがた)う御座(ござ)います。040娘(むすめ)も嘸(さぞ)喜(よろこ)ぶことで御座(ござ)いませう』
041 お節(せつ)は夢中(むちう)になつて、
042お節『青彦(あをひこ)さま、043青彦(あをひこ)さま』
044と呼(よ)ンで居(ゐ)る。
045黒姫(くろひめ)『ドレドレ、046これから神(かみ)さまへ御(ご)祈念(きねん)をして上(あ)げよう。047それについても一(ひと)つ妾(わたし)の話(はなし)を篤(とつく)りと聞(き)いた上(うへ)の事(こと)だ。048お婆(ば)アさま、049聞(き)きますかな』
050お楢(なら)『有難(ありがた)い神(かみ)さまのお話(はなし)、051どうぞ聞(き)かして下(くだ)さいませ』
052黒姫(くろひめ)『この娘(むすめ)の病気(びやうき)は、053全体(ぜんたい)けつたいな病(やまひ)ぢや。054病気(びやうき)には四百(しひやく)種病(しゆびやう)というて沢山(たくさん)な病(やまひ)がある。055其(その)中(なか)でも百種(ひやくいろ)の病(やまひ)は放(ほ)つて置(お)いても癒(なほ)る。056あとの百種(ひやくいろ)は薬(くすり)と医者(いしや)とで全快(ぜんくわい)する。057又(また)あとの百種(ひやくいろ)は、058神(かみ)さまぢや無(な)いと癒(なほ)らぬのぢや。059そして、060あとの百種(ひやくいろ)は神(かみ)さまでも医者(いしや)でも薬(くすり)でも癒(なほ)りはせぬ。061これを四百(しひやく)種病(しゆびやう)と云(い)ふのだ。062この娘(むすめ)は第三番(だいさんばん)目(め)に言(い)うた神信心(かみしんじん)で無(な)ければ到底(たうてい)癒(なほ)らぬ。063お医者(いしや)さまでも有馬(ありま)の湯(ゆ)でもと云(い)ふ怪体(けつたい)な粋(すゐ)な病気(びやうき)ぢや、064青彦(あをひこ)々々(あをひこ)と云(い)ふのは、065大方(おほかた)妾(わたし)の使(つか)つて居(ゐ)るウラナイ教(けう)の宣伝使(せんでんし)、066今(いま)は三五教(あななひけう)に呆(はう)けて、067この間(あひだ)も音彦(おとひこ)とやらの後(あと)についてウロついて居(ゐ)た男(をとこ)ぢや。068この娘(むすめ)が快(よ)くなつたら青彦(あをひこ)を養子(やうし)に貰(もら)ひ、069娘(むすめ)から青彦(あをひこ)を説(と)きつけて、070又(また)旧(もと)のウラナイ教(けう)に逆戻(ぎやくもど)りさせる神(かみ)様(さま)のお仕組(しぐみ)の病気(びやうき)に違(ちが)ひない。071お婆(ば)アさま、072これを良(よ)く承知(しようち)して居(ゐ)て貰(もら)はぬと癒(なほ)す事(こと)は出来(でき)ぬぞい』
073お楢(なら)『ハイハイ、074ドンナ事(こと)でも生命(いのち)さへ助(たす)けて下(くだ)されば承(うけたま)はります』
075黒姫(くろひめ)『サア、076これから日(ひ)の出神(でのかみ)様(さま)のお筆先(ふでさき)を頂(いただ)くから聞(き)きなされ、077このお節(せつ)の守護神(しゆごじん)にも読(よ)みて聞(き)かして改心(かいしん)致(いた)させねば、078三五教(あななひけう)の悪(あく)守護神(しゆごじん)が憑(つ)いて居(を)るから、079追(お)ひ出(だ)す為(ため)に結構(けつこう)な御(お)筆先(ふでさき)を聞(き)かして上(あ)げよう。080謹(つつし)みて聞(き)きなされや』
081筆先(ふでさき)『変性(へんじやう)男子(なんし)の系統(ひつぽう)の御(おん)身魂(みたま)、082日(ひ)の出(で)の神(かみ)の生宮(いきみや)、083常世姫(とこよひめの)命(みこと)と現(あら)はれて、084高姫(たかひめ)の肉体(にくたい)を藉(か)りて、085三千(さんぜん)世界(せかい)の世(よ)の初(はじ)まりの、086根本(こつぽん)の根本(こつぽん)の、087身魂(みたま)の因縁(いんねん)性来(しやうらい)から、088大先祖(おほせんぞ)がどう成(な)つて居(を)ると云(い)ふ事(こと)を明白(ありやか)に説(と)いて聞(き)かす筆先(ふでさき)であるぞよ。089変性(へんじやう)男子(なんし)は経(たて)の御(おん)役(やく)、090誠(まこと)生粋(きつすゐ)の正真(しやうまつ)の大和(やまと)魂(だましひ)、091一分(いちぶ)一厘(いちりん)違(ちが)へられぬ御(お)役(やく)であるぞよ。092毛筋(けすぢ)の横巾(よこはば)も変性(へんじやう)男子(なんし)の系統(ひつぽう)の肉体(にくたい)に憑(うつ)つて書(か)いた事(こと)は間違(まちが)ひは無(な)いぞよ。093三千(さんぜん)世界(せかい)の大立替(おほたてかへ)大立直(おほたてなほ)しの根本(こつぽん)の結構(けつこう)な御(お)筆先(ふでさき)であるぞよ。094変性(へんじやう)女子(によし)の身魂(みたま)は緯(よこ)の御用(ごよう)であるぞよ。095緯(よこ)はサトクが落(お)ちたり、096糸(いと)が切(き)れたり、097色々(いろいろ)と致(いた)すから当(あて)にならぬ悪(あく)のやり方(かた)であるから、098変性(へんじやう)女子(によし)の書(か)いた筆先(ふでさき)も、099申(まを)す事(こと)も、100行状(おこなひ)も真実(まこと)に致(いた)すでないぞよ。101一(ひと)つ一(ひと)つ審神(さには)を致(いた)さねば、102ドエライ目(め)に会(あ)はされるぞよ。103女子(によし)の御(お)役(やく)は悪役(あくやく)で、104気(き)の毒(どく)な御用(ごよう)であるぞよ。105身魂(みたま)の因縁(いんねん)性来(しやうらい)で、106善(ぜん)と思(おも)うて致(いた)す事(こと)が皆(みな)悪(あく)になるぞよ。107善(ぜん)にも強(つよ)い悪(あく)にも強(つよ)い常世姫(とこよひめ)の筆先(ふでさき)、108耳(みみ)を浚(さら)へて確(しつか)り聞(き)いて下(くだ)されよ。109毛筋(けすぢ)も違(ちが)はぬ誠(まこと)一(ひと)つの、110生粋(きつすゐ)の大和(やまと)魂(だましひ)の、111日(ひ)の出神(でのかみ)の生宮(いきみや)の常世姫(とこよひめの)命(みこと)の性来(しやうらい)、112金毛(きんまう)九尾(きうび)の悪神(あくがみ)を、113一旦(いつたん)キユウと腹(はら)に締(し)め込(こ)みて改心(かいしん)させる御(お)役(やく)であるぞよ。114それに就(つ)いても黒姫(くろひめ)の御用(ごよう)、115誠(まこと)に結構(けつこう)な御(おん)役(やく)であるぞよ。116竜宮(りうぐう)の乙姫(おとひめ)さまがお鎮(しづ)まり遊(あそ)ばして御座(ござ)るぞよ。117魔我彦(まがひこ)には日(ひ)の出神(でのかみ)の分霊(わけみたま)、118柔道(じうだう)正宗(まさむね)が守護(しゆご)致(いた)すぞよ。119蠑螈別(いもりわけ)には大広木(おほひろき)正宗(まさむね)の守護(しゆご)であるぞよ。120此(この)神(かみ)一度(いちど)筆先(ふでさき)に出(だ)したら、121何時(いつ)になりても違(ちが)ひは致(いた)さぬぞよ。122違(ちが)ふ様(やう)にあるのはその人(ひと)の心(こころ)が違(ちが)うからだぞよ。123唐(から)と日本(にほん)の戦(たたか)ひが始(はじ)まるぞよ。124日(ひ)の出神(でのかみ)の教(をしへ)は日本(にほん)の教(をしへ)であるぞよ。125変性(へんじやう)女子(によし)の教(をしへ)はカラの教(をしへ)であるぞよ。126変性(へんじやう)男子(なんし)の筆先(ふでさき)と、127日(ひ)の出神(でのかみ)の筆先(ふでさき)とをよつく調(しら)べて見(み)て下(くだ)されよ。128さうしたら変性(へんじやう)女子(によし)の因縁(いんねん)がすつくり判(わか)りて来(き)て、129ドンナ者(もの)でも愛想(あいさう)をつかして逃(に)げて去(い)ぬぞよ。130アフンと致(いた)さなならぬぞよ。131常世姫(とこよひめ)の御魂(みたま)の憑(うつ)るこの肉体(にくたい)は、132昔(むかし)の昔(むかし)のさる昔(むかし)、133またも昔(むかし)のその昔(むかし)、134モ一(ひと)つ昔(むかし)の大昔(おほむかし)から、135此(この)世(よ)の御用(ごよう)さす為(ため)に、136天(てん)の大神(おほかみ)が地(ち)の底(そこ)に八百万(やほよろづ)の神(かみ)に判(わか)らぬ様(やう)に隠(かく)して置(お)かれた誠(まこと)一(ひと)つの結構(けつこう)な生身魂(いきみたま)であるから、137世界(せかい)の人民(じんみん)が疑(うたが)ふのは無理(むり)なき事(こと)であるぞよ。138神(かみ)の奥(おく)には奥(おく)があり、139その又(また)奥(おく)には奥(おく)があるぞよ。140三千(さんぜん)年(ねん)の深(ふか)い仕組(しぐみ)であるから、141人民(じんみん)の智慧(ちゑ)や学(がく)では、142ソウ着々(ちやくちやく)と判(わか)る筈(はず)は無(な)いぞよ。143今迄(いままで)の腹(はら)の中(なか)の塵埃(ごもくた)をすつくりと吐(は)き出(だ)して誠正真(まことしやうまつ)の生粋(きつすゐ)の大和(やまと)魂(だましひ)に成(な)りて下(くだ)さらぬと、144誠(まこと)のお蔭(かげ)を取(と)り外(はづ)すぞよ。145アフンと致(いた)して眩暈(めまひ)が来(く)るぞよ。146何程(なにほど)変性(へんじやう)女子(によし)が鯱(しやち)になりて耐(こば)りても、147誠(まこと)の神(かみ)には叶(かな)はぬぞよ。148此(こ)の肉体(にくたい)は元(もと)を査(ただ)せば、149変性(へんじやう)男子(なんし)の生粋(きつすゐ)の身魂(みたま)から生(うま)れて来(き)た女豪傑(をんながうけつ)、150若(わか)い時分(じぶん)から男子(をとこ)女(をんな)と綽名(あだな)を取(と)つた、151天狗(てんぐ)の鼻(はな)の高姫(たかひめ)であるぞよ。152今(いま)はフサの国(くに)の北山村(きたやまむら)のウラナイ教(けう)の太元(おほもと)の、153神(かみ)の誠(まこと)の柱(はしら)であるぞよ。154此(この)世(よ)を水晶(すゐしやう)に立直(たてなほ)す為(ため)に、155永(なが)い間(あひだ)隠(かく)してありた結構(けつこう)な身魂(みたま)であるぞよ。156世界(せかい)の人民(じんみん)よ、157改心(かいしん)致(いた)されよ。158誠(まこと)程(ほど)結構(けつこう)は無(な)いぞよ。159苦労(くらう)の花(はな)が咲(さ)くのであるぞよ。160苦労(くらう)無(な)しにお蔭(かげ)を取(と)らうと致(いた)して、161変性(へんじやう)男子(なんし)の系統(ひつぽう)を抱(だ)き込(こ)みて、162我(わが)身(み)の我(が)で遣(や)らうと致(いた)したらスコタンを喰(く)うぞよ。163開(あ)いた口(くち)がすぼまらぬ、164牛(うし)の糞(くそ)が天下(てんか)を取(と)るとは、165今度(こんど)の譬(たとへ)であるぞよ。166神(かみ)の申(まを)す事(こと)をきかずに遣(や)つて見(み)よれ、167十万(じふまん)億土(おくど)の地獄(ぢごく)の釜(かま)のドン底(ぞこ)へ落(おと)して了(しま)ふぞよ、168神界(しんかい)、169幽界(いうかい)、170現界(げんかい)の誠(まこと)の救(すく)ひ主(ぬし)は、171変性(へんじやう)男子(なんし)と日(ひ)の出神(でのかみ)の生宮(いきみや)とであるぞよ。172女子(によし)の身魂(みたま)は此(この)世(よ)の紊(みだ)れた遣(や)り方(かた)を見(み)せるお役(やく)、173天(あま)の岩戸(いはと)を閉(し)める御(ご)苦労(くらう)なかけ替(が)への無(な)い身魂(みたま)であるぞよ。174これも身魂(みたま)の因縁(いんねん)性来(しやうらい)で、175昔(むかし)の因縁(いんねん)が廻(まは)つて来(き)たのであるから、176神(かみ)を恨(うら)めて下(くだ)さるなよ。177吾(わが)身(み)の因縁(いんねん)を恨(うら)みて置(お)こうより仕方(しかた)が無(な)いぞよ。178天(てん)にも地(ち)にもかけ替(が)への無(な)い日(ひ)の出神(でのかみ)の生宮(いきみや)が、179三千(さんぜん)世界(せかい)の神(かみ)、180仏事(ぶつじ)、181守護神(しゆごじん)、182人民(じんみん)に気(き)をつけて置(お)くぞよ。183改心(かいしん)さへ出来(でき)て、184この常世姫(とこよひめ)の申(まを)す事(こと)が判(わか)りたら、185如何(どん)な事(こと)でも叶(かな)へてやるぞよ。186病(やまひ)位(くらゐ)は屁(へ)でも無(な)いぞよ。187魂(たましひ)を磨(みが)いて改心(かいしん)なされ。188常世姫(とこよひめ)が気(き)をつけた上(うへ)にも気(き)を付(つ)けるぞよ。189俄信心(にはかしんじん)間(ま)に合(あ)はん。190信心(しんじん)は正勝(まさか)の時(とき)の杖(つゑ)に成(な)るぞよ。191一(いち)時(じ)も早(はや)く身魂(みたま)の洗濯(せんたく)いたして、192神(かみ)に縋(すが)りて下(くだ)されよ。193昔(むかし)は神(かみ)はものは言(い)はなかつたぞよ。194時節(じせつ)来(きた)りて艮(うしとら)の金神(こんじん)世(よ)に現(あら)はれて、195三千(さんぜん)世界(せかい)の立替(たてか)へ立直(たてなほ)しを遊(あそ)ばすについて、196第一番(だいいちばん)に、197御(ご)改心(かいしん)なされたのが竜宮(りうぐう)の乙姫(おとひめ)様(さま)であるぞよ。198この竜宮(りうぐう)の乙姫(おとひめ)様(さま)は、199黒姫(くろひめ)の肉体(にくたい)にお鎮(しづ)まり遊(あそ)ばして、200日夜(にちや)に神界(しんかい)の御(ご)苦労(くらう)に成(な)りて居(を)るから、201粗末(そまつ)に思(おも)うたら、202神(かみ)の気(き)ざわりに成(な)るぞよ。203高姫(たかひめ)の肉体(にくたい)は元(もと)の性来(しやうらい)が勿体(もつたい)なくも天(てん)の大神(おほかみ)様(さま)の直々(ぢきぢき)の分霊(わけみたま)であるから、204日(ひ)の出神(でのかみ)が引(ひ)つ添(そ)うて、205世(よ)の立替(たてかへ)の地(ぢ)となつて、206千騎(せんき)一騎(いつき)の御(ご)活動(くわつどう)を遊(あそ)ばす御(おん)役(やく)となりたぞよ。207金勝要(きんかつかね)の大神(おほかみ)、208坤金神(ひつじさるのこんじん)も、209一寸(ちよつと)我(が)が強(つよ)いぞよ。210早(はや)く改心(かいしん)なさらぬと、211神界(しんかい)の御用(ごよう)が遅(おく)れるぞよ。212神界(しんかい)の御用(ごよう)が遅(おく)れると、213それ丈(だけ)、214神(かみ)も人民(じんみん)も難儀(なんぎ)を致(いた)すから、215早(はや)く改心(かいしん)致(いた)して、216変性(へんじやう)男子(なんし)と常世姫(とこよひめ)の御魂(みたま)の宿(やど)りて居(を)る日(ひ)の出神(でのかみ)の生宮(いきみや)の申(まを)す事(こと)を聞(き)いて下(くだ)されよ。217きかな聞(き)くやうに致(いた)して改心(かいしん)させるぞよ。218三五教(あななひけう)は神(かみ)の気障(きざわ)りがあるから、219神(かみ)は仕組(しぐみ)を変(か)へて此(こ)の肉体(にくたい)に御用(ごよう)をさして居(を)るぞよ。220神力(しんりき)と智慧(ちゑ)学(がく)との力(ちから)比(くら)べ、221常世姫(とこよひめ)の神力(しんりき)が強(つよ)いか、222変性(へんじやう)女子(によし)の智慧(ちゑ)学(がく)が強(つよ)いか、223神(かみ)と学(がく)との力(ちから)比(くら)べであるぞよ。224神(かみ)の道(みち)には旧道(きうだう)と新道(しんだう)と道(みち)が二筋(ふたすぢ)拵(こしら)へてありて、225何(ど)の道(みち)へ行(ゆ)きよるかと思(おも)うて、226神(かみ)がジツと見(み)て居(を)れば、227新道(しんだう)へ喜(よろこ)びて行(ゆ)きよるが仕舞(しまひ)にはバツタリ行当(ゆきあた)りて了(しま)うて、228又(また)もとの旧道(きうだう)へ復(かへ)つて来(こ)ねば成(な)らぬ様(やう)に成(な)つて了(しま)うぞよ。229大橋(おほはし)越(こ)えて未(ま)だ先(さき)へ、230行方(ゆくへ)判(わか)らぬ後戻(あともど)り、231慢神(まんしん)すると其(その)通(とほ)り、232早(はや)く改心(かいしん)致(いた)さぬと、233青(あを)い顔(かほ)してシヨゲ返(かへ)り白米(しらが)に籾(もみ)が混(まじ)つた様(やう)にして居(を)るのを見(み)るのが、234此(こ)の常世姫(とこよひめ)が辛(つら)いから、235腹(はら)が立(た)つ程(ほど)気(き)を付(つ)けてやるが、236変性(へんじやう)女子(によし)が我(が)が強(つよ)うて、237慢神(まんしん)致(いた)して居(を)るから、238神(かみ)ももう助(たす)けやうが無(な)いぞよ。239もう勘忍袋(かんにんぶくろ)がきれたぞよ。240それにつけては皆(みな)の者(もの)、241変性(へんじやう)女子(によし)の申(まを)すこと、242一々(いちいち)審神(さには)を致(いた)してかからぬと、243アフンと致(いた)す事(こと)が出来(しゆつたい)致(いた)すぞよ。244常世姫(とこよひめ)の憑(うつ)る肉体(にくたい)を侮(あなど)りて居(を)ると、245スコタン喰(く)う事(こと)が出来(でき)るから、246クドウ申(まを)して気(き)をつけて置(お)くぞよ』
247と厳(いづ)の御魂(みたま)の筆先(ふでさき)の抜萃(ばつすい)した高姫(たかひめ)の書(か)いた神諭(しんゆ)を、248声(こゑ)高々(たかだか)と読(よ)み聞(き)かして居(を)る。
249 お楢(なら)は畳(たたみ)に頭(あたま)を擦(す)りつけ、250ブルブルと慄(ふる)ひ泣(な)きに泣(な)いて居(ゐ)る。251お節(せつ)は発熱(はつねつ)甚(はなはだ)しく、252益々(ますます)『青彦(あをひこ)青彦(あをひこ)』と夢中(むちう)になつて叫(さけ)びはじめたり。253黒姫(くろひめ)は清子(きよこ)、254照子(てるこ)の二人(ふたり)に向(むか)ひ、
255黒姫『サアサア妾(わたし)が今(いま)お筆先(ふでさき)を拝読(いただ)いたから、256今度(こんど)はお前(まへ)さまがウラナイ教(けう)の宣伝歌(せんでんか)を謡(うた)ふのぢや、257サアサア早(はや)う、258言(い)ひ損(ぞこな)ひの無(な)いやうに謡(うた)ひなされ』
259 二人(ふたり)はハイと答(こた)へて座(ざ)を起(た)ち、260病(やまひ)に苦(くる)しむお節(せつ)の枕辺(まくらべ)に廻(まは)り、261声(こゑ)張上(はりあ)げて、
262清子、照子『朝日(あさひ)は照(て)るとも曇(くも)るとも
263月(つき)は盈(み)つとも虧(か)くるとも
264仮令(たとへ)大地(だいち)は沈(しづ)むとも
265ウラナイ教(けう)は世(よ)を救(すく)ふ
266常世(とこよ)の国(くに)の常世姫(とこよひめ)
267昔(むかし)の神代(かみよ)のそのままの
268大和(やまと)魂(だましひ)の生粋(きつすゐ)で
269日(ひ)の出神(でのかみ)の生宮(いきみや)と
270現(あら)はれ出(い)でたる高姫(たかひめ)の
271身魂(みたま)にかかりて筆(ふで)をとり
272三千(さんぜん)世界(せかい)の梅(うめ)の花(はな)
273一度(いちど)に開(ひら)くことのよし
274委曲(うまら)に詳細(つばら)に説(と)き諭(さと)す
275たとへ大地(だいち)は沈(しづ)むとも
276月日(つきひ)は西(にし)から昇(のぼ)るとも
277日(ひ)の出神(でのかみ)の生宮(いきみや)が
278書(か)いた筆先(ふでさき)言(い)うたこと
279毛筋(けすぢ)の横巾(よこはば)ちがはぬぞ
280違(ちが)うと思(おも)ふは其(その)人(ひと)の
281心(こころ)間違(まちが)ひある故(ゆゑ)ぞ
282昔(むかし)の神代(かみよ)の折(をり)からに
283世界(せかい)のために苦労(くらう)した
284高姫(たかひめ)、黒姫(くろひめ)、魔我彦(まがひこ)や
285高山彦(たかやまひこ)や蠑螈別(いもりわけ)
286いづの身魂(みたま)と現(あら)はれて
287竜宮(りうぐう)さまの御(おん)守護(しゆご)で
288此(この)世(よ)の宝(たから)を掘(ほ)り上(あ)げて
289北山村(きたやまむら)にウラナイの
290神(かみ)の教(をしへ)の射場(いば)を建(た)て
291世界(せかい)の人(ひと)を教(をし)へ行(ゆ)く
292実(げ)にも尊(たふと)き神(かみ)の代(よ)の
293其(そ)の根本(こつぽん)の因縁(いんねん)を
294どこどこ迄(まで)も説(と)き諭(さと)す
295常世(とこよ)の姫(ひめ)のお筆先(ふでさき)
296昔々(むかしむかし)の神代(かみよ)から
297隠(かく)しおいたる生身魂(いくみたま)
298日(ひ)の出神(でのかみ)の生魂(いくたま)で
299唐(から)も日本(やまと)も悉(ことごと)く
300悪(あく)の仕組(しぐみ)をとり調(しら)べ
301四方(よも)の国々(くにぐに)島々(しまじま)に
302漏(も)れなく知(し)らす神(かみ)の道(みち)
303いづの身魂(みたま)の御(おん)教(をしへ)
304変性(へんじやう)男子(なんし)の御(おん)身魂(みたま)
305善(ぜん)の身魂(みたま)の生粋(きつすゐ)ぞ
306変性(へんじやう)女子(によし)の瑞身魂(みづみたま)
307悪(あく)の鏡(かがみ)と定(さだ)まりた
308善(ぜん)は苦労(くらう)が永(なが)けれど
309悪(あく)の苦労(くらう)は短(みじか)いぞ
310悪(あく)の道(みち)行(ゆ)きや歩(ある)きよい
311善(ぜん)の道(みち)程(ほど)険(けは)しいぞ
312険(けは)しい道(みち)を喜(よろこ)びて
313歩(ある)いて行(ゆ)けば末(すゑ)遂(つひ)に
314誠(まこと)も開(ひら)く神(かみ)の国(くに)
315広(ひろ)い道(みち)をば喜(よろこ)びて
316進(すす)みて行(ゆ)けば末(すゑ)つひに
317ハタと詰(つま)つて茨(いばら)むら
318針(はり)に身体(からだ)をひつ掻(か)いて
319逆転倒(さかとんぼり)を皆(みな)うつて
320ヂリヂリ舞(まひ)をしたとても
321あとの祭(まつり)ぢや十日菊(とをかぎく)
322誠(まこと)の神(かみ)の申(まを)すうち
323聞(き)かずに行(や)るならやつて見(み)よ
324善(ぜん)と悪(あく)との立別(たてわ)けの
325千騎(せんき)一騎(いつき)の大峠(おほたうげ)
326変性(へんじやう)女子(によし)をふり捨(す)てて
327常世(とこよ)の姫(ひめ)の生宮(いきみや)と
328現(あら)はれ出(い)でたる高姫(たかひめ)の
329日(ひ)の出神(でのかみ)の御(おん)経綸(しぐみ)
330万劫(まんごふ)末代(まつだい)芳(かん)ばしき
331名(な)を残(のこ)さうと思(おも)ふなら
332ウラナイ教(けう)の神(かみ)の道(みち)
333一日(ひとひ)も早(はや)く片時(かたとき)も
334先(さき)を争(あらそ)ひ歩(あゆ)めかし
335畏(かしこ)き神(かみ)のウラナイの
336誠(まこと)一(ひと)つの根本(こつぽん)の
337毛筋(けすぢ)も違(ちが)はぬこの教(をしへ)
338神(かみ)の奥(おく)には奥(おく)がある
339その又(また)奥(おく)には奥(おく)がある
340大国常立(おほくにとこたち)大神(おほかみ)の
341三千(さんぜん)年(ねん)の御(おん)仕組(しぐみ)
342隅(すみ)から隅(すみ)まで悟(さと)つたる
343あの高姫(たかひめ)の生宮(いきみや)は
344三千(さんぜん)世界(せかい)の宝物(たからもの)
345広(ひろ)い世界(せかい)の人民(じんみん)よ
346今(いま)ぢや早(はや)ぢやと早鐘(はやがね)を
347撞(つ)いて知(し)らする常世姫(とこよひめ)
348暗(やみ)に迷(まよ)うた身魂(みたま)をば
349日(ひ)の出(で)の守護(しゆご)に助(たす)けむと
350朝(あさ)な夕(ゆふ)なに一筋(ひとすぢ)に
351誠(まこと)の教(をしへ)伝(つた)へ行(ゆ)く
352常世(とこよ)の姫(ひめ)の真心(まごころ)は
353善(ぜん)の鑑(かがみ)ぢや世(よ)の鑑(かがみ)
354誠(まこと)の鑑(かがみ)はここにある
355身魂(みたま)を清(きよ)めて出(で)て来(き)たら
356三千(さんぜん)世界(せかい)が見(み)えすくぞ
357鎮魂(ちんこん)帰神(きしん)をせい出(だ)して
358変性(へんじやう)女子(によし)に倣(なら)ふより
359神(かみ)から出(だ)したこの鏡(かがみ)
360一(ひと)つ覗(のぞ)いて見(み)るがよい
361三千(さんぜん)世界(せかい)の有様(ありさま)は
362一目(ひとめ)に見(み)えるこの教(をしへ)
363ウラナイ教(けう)は世(よ)を救(すく)ふ
364誠(まこと)の道(みち)の神(かむ)ばしら
365日(ひ)の出神(でのかみ)の生宮(いきみや)が
366三千(さんぜん)世界(せかい)の太柱(ふとばしら)
367グツと握(にぎ)つて居(を)る程(ほど)に
368世界(せかい)の事(こと)は何(なん)なりと
369常世(とこよ)でなけりや判(わか)りやせぬ
370真名井(まなゐ)の神(かみ)が何(なに)偉(えら)い
371瑞(みづ)の身魂(みたま)が何(なに)怖(こわ)い
372怖(こわ)いと云(い)うたら吾(わが)心(こころ)
373心(こころ)一(ひと)つのウラナイ教(けう)
374心(こころ)も身(み)をも大神(おほかみ)に
375捧(ささ)げて祈(いの)れよく祈(いの)れ
376祈(いの)る誠(まこと)は神心(かみごころ)
377あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
378身魂(みたま)幸倍坐(さちはへま)しませよ』
379と謡(うた)ひ了(をは)れば、380お節(せつ)は益々(ますます)苦(くる)しみ悶(もだ)え、381遂(つひ)にはキヤアキヤアと怪(あや)しき声(こゑ)を振(ふ)り絞(しぼ)り、382冷汗(ひやあせ)は滝(たき)の如(ごと)く流(なが)れ出(い)で、383容態(ようだい)は刻々(こくこく)に危険(きけん)状態(じやうたい)に入(い)りける。
384お楢(なら)『モシモシ皆(みな)さま、385御(ご)親切(しんせつ)に拝(をが)みて下(くだ)さいまして有難(ありがた)う御座(ござ)いますが、386お前(まへ)さまが此処(ここ)へ御座(ござ)つてから、387お節(せつ)の病気(びやうき)は楽(らく)になるかと思(おも)へば、388一息(ひといき)々々(ひといき)、389苦(くる)しさうに成(な)つて来(く)る、390コラマア何(ど)うしたら宜(よろ)しいのだ。391オーンオーンオーン』
392黒姫(くろひめ)『コレコレお婆(ば)アさま、393勿体(もつたい)ない事(こと)を言(い)ひなさるな。394これ程(ほど)結構(けつこう)な日(ひ)の出神(でのかみ)の生宮(いきみや)の御(お)筆先(ふでさき)を読(よ)みて聞(き)かし、395結構(けつこう)な結構(けつこう)な宣伝歌(せんでんか)まで唱(とな)へて、396夫(そ)れで悪(わる)うなつて死(し)ぬ様(やう)な事(こと)があつたら、397神(かみ)さまのお蔭(かげ)やと思(おも)ひなされ。398妾(わたし)ぢやとて何(ど)うして一刻(いつこく)も早(はや)う楽(らく)に仕(し)て上(あ)げたい、399生命(いのち)を助(たす)けて上(あ)げたいと思(おも)へばこそ、400コンナ山路(やまみち)を雪(ゆき)踏(ふ)み分(わ)けて遥々(はるばる)と来(き)たのぢやないか。401コンナ繊弱(かよわ)い妙齢(としごろ)の娘(むすめ)を二人(ふたり)まで連(つ)れて此処(ここ)へ来(き)たのも、402神(かみ)から言(い)へば浅(あさ)からぬ因縁(いんねん)ぢや。403何(ど)うなるも斯(こ)うなるも神(かみ)様(さま)の思召(おぼしめし)、404仮令(たとへ)お節(せつ)さまが国替(くにがへ)なさつた処(ところ)が、405別(べつ)に悔(くや)むにも及(およ)ばぬ、406如才(じよさい)の無(な)い神(かみ)さまが、407結構(けつこう)な処(ところ)へ遣(や)つて下(くだ)さつて、408神界(しんかい)の立派(りつぱ)な御用(ごよう)をさして下(くだ)さるのぢや。409お前(まへ)さまの達者(たつしや)を守(まも)り、410この家(いへ)を守護(しゆご)する守(まも)り神(がみ)として下(くだ)さるのぢや。411勿体(もつたい)ない、412何(なに)を不足(ふそく)さうに、413吠面(ほえづら)をかわくのぢやい、414何(ど)うなつても諦(あきら)めが肝腎(かんじん)ぢやぞへ』
415お楢(なら)『ハイハイ、416有難(ありがた)う御座(ござ)います。417然(しか)し乍(なが)ら妾(わたし)の生命(いのち)を取(と)つて、418どうぞお節(せつ)を助(たす)けて下(くだ)さいませ。419それがお願(ねが)ひで御座(ござ)います』
420黒姫(くろひめ)『ハテサテ判(わか)らぬ方(かた)ぢやなア。421何程(なにほど)偉(えら)い神(かみ)さまぢやとて、422お前(まへ)の生命(いのち)とお節(せつ)さまの生命(いのち)と交換(かうくわん)が出来(でき)るものか。423ソンナ無茶(むちや)な事(こと)を言(い)ひなさるな』
424 お節(せつ)の容態(ようだい)は益々(ますます)危篤(きとく)に成(な)つて来(く)る。425黒姫(くろひめ)は何(なん)とは無(な)しに落(お)ち着(つ)かぬ様子(やうす)にて、
426黒姫『コレコレ照(てる)さま、427清(きよ)さま、428今日(けふ)は神界(しんかい)に大変(たいへん)な御用(ごよう)がある。429サア帰(かへ)りませう。430コレコレお婆(ば)アさま心配(しんぱい)なさるな。431気(き)を確(しつか)り持(も)つて居(ゐ)なさいよ。432私(わし)は神界(しんかい)の御用(ごよう)が急(せ)くから、433今日(けふ)はこれでお暇(いとま)致(いた)します』
434お楢(なら)『モシモシお節(せつ)は助(たす)かりませうか、435助(たす)かりますまいか』
436黒姫(くろひめ)『いづれ楽(らく)になるわいナ。437屹度(きつと)癒(なほ)る、438安心(あんしん)なされ』
439お楢(なら)『楽(らく)に成(な)るとはあの世(よ)へ往(ゆ)く事(こと)ぢやありませぬか、440癒(なほ)ると仰有(おつしや)るのは、441霊壇(れいだん)へ御魂(みたま)に成(な)つて直(なほ)ると云(い)ふ謎(なぞ)ではありますまいか』
442黒姫(くろひめ)『アヽ神界(しんかい)の御用(ごよう)が忙(いそが)しい。443照(てる)さま、444清(きよ)さま、445サアサアお出(い)で』
446と雲(くも)を霞(かすみ)と比治山(ひぢやま)の彼方(あなた)を指(さ)してバラバラと走(は)せ帰(かへ)り行(ゆ)く。447あとにお楢(なら)はワツと許(ばか)り泣(な)き伏(ふ)しぬ。
448(大正一一・四・二二 旧三・二六 東尾吉雄録)
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