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霊界物語
如意宝珠(第13~24巻)
第17巻(辰の巻)
序文
凡例
総説歌
第1篇 雪山幽谷
第1章 黄金の衣
第2章 魔の窟
第3章 生死不明
第4章 羽化登仙
第5章 誘惑婆
第6章 瑞の宝座
第2篇 千態万様
第7章 枯尾花
第8章 蚯蚓の囁
第9章 大逆転
第10章 四百種病
第11章 顕幽交通
第3篇 鬼ケ城山
第12章 花と花
第13章 紫姫
第14章 空谷の足音
第15章 敵味方
第16章 城攻
第17章 有終の美
霊の礎(三)
暁山雲(謡曲)
余白歌
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霊界物語
>
如意宝珠(第13~24巻)
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第17巻(辰の巻)
> 第2篇 千態万様 > 第9章 大逆転
<<< 蚯蚓の囁
(B)
(N)
四百種病 >>>
第九章
大逆転
(
だいぎやくてん
)
〔六二〇〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第17巻 如意宝珠 辰の巻
篇:
第2篇 千態万様
よみ(新仮名遣い):
せんたいばんよう
章:
第9章 大逆転
よみ(新仮名遣い):
だいぎゃくてん
通し章番号:
620
口述日:
1922(大正11)年04月22日(旧03月26日)
口述場所:
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年1月10日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
平助親子は家に戻ってきたが、平助は手桶に水を汲んで運ぶ途中にこけて倒れてしまう。お節はあわてて天の数歌を歌い、平助は息を吹き返した。
平助は、美しい神界を旅していたところを、お節の声に呼び戻されたのだという。それより平助は発熱して、半月ほどして帰らぬ人となった。
それよりお節も悲しみのあまり具合が悪くなり、伏せってしまう。お楢は真名井ケ原に参詣して助けを求めようと比治山を登っていくと、黒姫が立ちはだかり、お楢の窮状につけこんで、ウラナイ教の祈祷を承諾させてしまう。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2021-02-14 00:33:03
OBC :
rm1709
愛善世界社版:
136頁
八幡書店版:
第3輯 574頁
修補版:
校定版:
143頁
普及版:
59頁
初版:
ページ備考:
001
比沼
(
ひぬ
)
の
真名井
(
まなゐ
)
ケ
原
(
はら
)
に
現
(
あら
)
はれ
給
(
たま
)
ふ
豊国姫
(
とよくにひめ
)
の
瑞
(
みづ
)
の
宝座
(
ほうざ
)
に
詣
(
まう
)
でたる
平助
(
へいすけ
)
親子
(
おやこ
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は、
002
珍
(
うづ
)
の
聖地
(
せいち
)
を
踏
(
ふ
)
みしめて
心
(
こころ
)
も
勇
(
いさ
)
み、
003
意気
(
いき
)
揚々
(
やうやう
)
と
帰
(
かへ
)
り
来
(
きた
)
る。
004
雪
(
ゆき
)
積
(
つ
)
む
道
(
みち
)
を
苦
(
く
)
にもせず、
005
杖
(
つゑ
)
を
曳
(
ひ
)
きつつ
漸
(
やうや
)
う
荒屋
(
あばらや
)
の
門口
(
かどぐち
)
に
着
(
つ
)
きにけり。
006
平助
(
へいすけ
)
『お
蔭
(
かげ
)
で
無事
(
ぶじ
)
に
下向
(
げかう
)
が
出来
(
でき
)
た。
007
サアサアお
楢
(
なら
)
、
008
早
(
はや
)
うお
湯
(
ゆ
)
を
沸
(
わ
)
かしてくれ、
009
足
(
あし
)
でも
洗
(
あら
)
つて
悠
(
ゆつ
)
くり
休
(
やす
)
まうぢやないか』
010
お
節
(
せつ
)
『イエイエ、
011
お
爺
(
ぢい
)
さま、
012
妾
(
わたし
)
が
湯
(
ゆ
)
を
沸
(
わ
)
かします。
013
お
婆
(
ば
)
アさま、
014
何卒
(
どうぞ
)
お
休
(
やす
)
み
下
(
くだ
)
さいませ』
015
お
楢
(
なら
)
『イヤイヤ、
016
お
前
(
まへ
)
は
永
(
なが
)
らく
彼
(
あ
)
の
様
(
やう
)
な
暗
(
くら
)
い
穴
(
あな
)
の
中
(
なか
)
に
閉
(
と
)
ぢ
籠
(
こ
)
められて
居
(
を
)
つたのだから、
017
火
(
ひ
)
を
焚
(
た
)
いて
目
(
め
)
が
悪
(
わる
)
くなるといかぬ、
018
此
(
この
)
婆
(
ばば
)
が
焚
(
た
)
きますから、
019
サアサア
親爺
(
おやぢ
)
どの、
020
水
(
みづ
)
を
汲
(
く
)
みて
下
(
くだ
)
され』
021
お
節
(
せつ
)
『お
爺
(
ぢい
)
さま、
022
妾
(
わたし
)
が
水
(
みづ
)
を
汲
(
く
)
みます、
023
何卒
(
どうぞ
)
お
休
(
やす
)
み
下
(
くだ
)
さい』
024
平助
(
へいすけ
)
『イヤイヤお
前
(
まへ
)
は
身体
(
からだ
)
が
弱
(
よわ
)
つてる、
025
此
(
この
)
爺
(
おやぢ
)
が
汲
(
く
)
みてやるから
湯
(
ゆ
)
が
沸
(
わ
)
く
迄
(
まで
)
、
026
マアマアゆつくりして
居
(
ゐ
)
るがよい』
027
爺
(
ぢい
)
は
撥釣瓶
(
はねつるべ
)
を
覚束
(
おぼつか
)
なげに
何回
(
なんくわい
)
も
右左
(
みぎひだり
)
にブリンブリンと
振
(
ふ
)
り
廻
(
まは
)
し
漸
(
やうや
)
う
半分
(
はんぶん
)
ばかり
汲
(
く
)
み
上
(
あ
)
げ、
028
汲
(
く
)
み
上
(
あ
)
げては
手桶
(
てをけ
)
に
移
(
うつ
)
し
又
(
また
)
汲
(
く
)
み
上
(
あ
)
げては
手桶
(
てをけ
)
に
移
(
うつ
)
し、
029
平助
『サアサアお
楢
(
なら
)
、
030
水
(
みづ
)
が
汲
(
く
)
めた、
031
早
(
はや
)
う
沸
(
わ
)
かしてくれ、
032
アーア
年
(
とし
)
が
寄
(
よ
)
ると
水
(
みづ
)
も
碌
(
ろく
)
に
汲
(
く
)
めはせないワ』
033
お
楢
(
なら
)
『
老
(
おい
)
ては
子
(
こ
)
に
従
(
したが
)
へと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
がある、
034
何
(
なん
)
でお
節
(
せつ
)
に
汲
(
く
)
ましなさらぬのぢや、
035
それだからお
前
(
まへ
)
は
何時
(
いつ
)
も
我
(
が
)
が
強
(
つよ
)
いと
言
(
い
)
ふのぢや、
036
若
(
も
)
し
腰
(
こし
)
の
骨
(
ほね
)
でも
折
(
を
)
つたら
如何
(
どう
)
なさる、
037
お
前
(
まへ
)
の
難儀
(
なんぎ
)
許
(
ばか
)
りぢや
無
(
な
)
い、
038
婆
(
ばば
)
もお
節
(
せつ
)
も
総体
(
そうたい
)
の
難儀
(
なんぎ
)
ぢやないか』
039
平助
(
へいすけ
)
『エー
八釜
(
やかま
)
しう
云
(
い
)
ふない、
040
何程
(
なにほど
)
年
(
とし
)
が
寄
(
よ
)
つても
水
(
みづ
)
位
(
くらゐ
)
は
提
(
さ
)
げ
えで
かい』
041
と
手桶
(
てをけ
)
に
一杯
(
いつぱい
)
盛
(
も
)
つた
水
(
みづ
)
を、
042
ヨロヨロと
提
(
ひつさ
)
げ
乍
(
なが
)
ら、
043
庭
(
には
)
の
滑石
(
なめらいし
)
に
滑
(
すべ
)
つてスツテンドウと
仰向
(
あふむけ
)
にひつくり
覆
(
かへ
)
り、
044
平助
『アイタヽ、
045
ウンウン』
046
と
呻
(
うな
)
つたきり
庭
(
には
)
の
真中
(
まんなか
)
に
打
(
ぶ
)
つ
倒
(
たふ
)
れける。
047
お
楢
(
なら
)
、
048
お
節
(
せつ
)
は
驚
(
おどろ
)
き、
049
気
(
き
)
も
狂乱
(
きやうらん
)
し、
050
爺
(
おやぢ
)
の
頭部
(
とうぶ
)
足部
(
そくぶ
)
に
走
(
はし
)
り
寄
(
よ
)
り、
051
お
楢
(
なら
)
『お
爺
(
ぢい
)
さま、
052
オーイオーイ、
053
気
(
き
)
をつけなさいのう』
054
お
節
(
せつ
)
も、
055
お節
『お
爺
(
ぢい
)
さまお
爺
(
ぢい
)
さま』
056
と
泣
(
な
)
き
猛
(
たけ
)
る。
057
お
楢
(
なら
)
『アーア、
058
如何
(
どう
)
しても
此奴
(
こいつ
)
はいかぬ、
059
サアサアお
節
(
せつ
)
、
060
もう
斯
(
こ
)
うなつては
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
をお
願
(
ねがひ
)
するより
仕方
(
しかた
)
がない、
061
お
前
(
まへ
)
は
三五教
(
あななひけう
)
とやらの
歌
(
うた
)
を
知
(
し
)
つてるさうぢや、
062
何卒
(
どうぞ
)
早
(
はや
)
く
歌
(
うた
)
つて
爺
(
おやぢ
)
さまの
息
(
いき
)
を
吹
(
ふ
)
き
返
(
かへ
)
して
下
(
くだ
)
され』
063
お
節
(
せつ
)
『ハイハイ、
064
承知
(
しようち
)
致
(
いた
)
しました、
065
お
婆
(
ばあ
)
さま
早
(
はや
)
くお
爺
(
ぢい
)
さまに
気
(
き
)
を
注
(
つ
)
けて
下
(
くだ
)
さい、
066
一
(
ひと
)
、
067
二
(
ふた
)
、
068
三
(
み
)
、
069
四
(
よ
)
、
070
五
(
いつ
)
、
071
六
(
むゆ
)
、
072
七
(
なな
)
、
073
八
(
や
)
、
074
九
(
ここの
)
、
075
十
(
たり
)
、
076
百
(
もも
)
、
077
千
(
ち
)
、
078
万
(
よろづ
)
』
079
と
三四回
(
さんしくわい
)
繰返
(
くりかへ
)
せば、
080
平助
(
へいすけ
)
は
漸
(
やうや
)
く
呼吸
(
いき
)
を
吹
(
ふ
)
き
返
(
かへ
)
し、
081
平助
『アーア、
082
えらい
事
(
こと
)
ぢやつた、
083
天
(
てん
)
は
青
(
あを
)
く
山
(
やま
)
も
野
(
の
)
も
緑
(
みどり
)
の
色
(
いろ
)
を
帯
(
お
)
び、
084
種々
(
いろいろ
)
の
美
(
うつく
)
しい
花
(
はな
)
は
処
(
ところ
)
狭
(
せ
)
きまで
咲
(
さ
)
き
匂
(
にほ
)
ひ、
085
何
(
なん
)
とも
云
(
い
)
へぬ
美
(
うつく
)
しい
大鳥
(
おほとり
)
小鳥
(
ことり
)
は
涼
(
すず
)
しい
声
(
こゑ
)
を
出
(
だ
)
して、
086
常世
(
とこよ
)
の
春
(
はる
)
を
歌
(
うた
)
ひ、
087
其辺処
(
そこら
)
一面
(
いちめん
)
の
花莚
(
はなむしろ
)
、
088
何
(
なん
)
とも
云
(
い
)
へぬ
綺麗
(
きれい
)
な
綺麗
(
きれい
)
な
田圃道
(
たんぼみち
)
を
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
くと、
089
向
(
むか
)
ふの
方
(
はう
)
に
何
(
なん
)
とも
云
(
い
)
へぬ
立派
(
りつぱ
)
な
三重
(
みへ
)
の
塔
(
たふ
)
が
見
(
み
)
えた。
090
其
(
その
)
塔
(
たふ
)
は
上
(
うへ
)
から
下
(
した
)
まで
黄金作
(
こがねづく
)
り、
091
それに
日輪
(
にちりん
)
様
(
さま
)
がキラキラと
輝
(
かがや
)
いて
何
(
なん
)
とも
云
(
い
)
へぬ
爽快
(
さうくわい
)
な
思
(
おも
)
ひに
充
(
みた
)
され、
092
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
其処
(
そこ
)
へ
行
(
ゆ
)
き
度
(
た
)
い
様
(
やう
)
な
気
(
き
)
がして
杖
(
つゑ
)
を
力
(
ちから
)
に
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
駆出
(
かけだ
)
すと、
093
遠
(
とほ
)
い
遠
(
とほ
)
い
後
(
うしろ
)
の
山
(
やま
)
より
幽
(
かすか
)
に
聞
(
きこ
)
ゆるお
楢
(
なら
)
の
声
(
こゑ
)
、
094
続
(
つづ
)
いて
可愛
(
かあい
)
らしいお
節
(
せつ
)
の
声
(
こゑ
)
がフツと
耳
(
みみ
)
に
這入
(
はい
)
つたので、
095
アヽ
折角
(
せつかく
)
コンナ
綺麗
(
きれい
)
な
処
(
ところ
)
に
来
(
き
)
て
居
(
を
)
るのに
何故
(
なぜ
)
馬鹿娘
(
ばかむすめ
)
が
俺
(
わし
)
を
呼
(
よ
)
び
止
(
と
)
めるのか、
096
アヽ
情
(
なさけ
)
ない
奴
(
やつ
)
ぢや、
097
然
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
久
(
ひさ
)
し
振
(
ぶ
)
りで
会
(
あ
)
うた
娘
(
むすめ
)
、
098
何時
(
いつ
)
もならば
頑張
(
ぐわんば
)
つて
呼
(
よ
)
び
止
(
と
)
めた
位
(
くらゐ
)
に
後戻
(
あともど
)
りする
平助
(
へいすけ
)
ぢやないが、
099
あまり
娘
(
むすめ
)
が
可愛
(
かあい
)
い
声
(
こゑ
)
で
悲
(
かな
)
し
相
(
さう
)
に
呼
(
よ
)
ぶものだから、
100
フツと
立
(
た
)
ち
止
(
と
)
まり
聞
(
き
)
いて
居
(
を
)
れば、
101
誰
(
たれ
)
だか
知
(
し
)
らぬが
俺
(
わし
)
の
年
(
とし
)
を
一
(
ひと
)
つ
二
(
ふた
)
つ
三
(
みつ
)
と
数
(
かぞ
)
へ
出
(
だ
)
し、
102
終
(
しまひ
)
には
百千万
(
ももちよろづ
)
と
呼
(
よ
)
びて
居
(
を
)
る。
103
アヽ
俺
(
わし
)
は
見慣
(
みな
)
れぬ
結構
(
けつこう
)
な
処
(
ところ
)
へ
来
(
き
)
て
居
(
ゐ
)
るが、
104
之
(
これ
)
はヒヨツとしたら
神界
(
しんかい
)
を
旅行
(
りよかう
)
してゐるのではあるまいか、
105
まだまだ
七十
(
しちじふ
)
や、
106
そこいらで
神界
(
しんかい
)
へ
来
(
く
)
るのぢやない、
107
百千万
(
ももちよろづ
)
の
年
(
とし
)
を
現界
(
げんかい
)
で
苦労
(
くらう
)
せなくてはコンナ
結構
(
けつこう
)
な
処
(
ところ
)
へは
来
(
こ
)
られぬのぢやと
思
(
おも
)
ふ
刹那
(
せつな
)
に
気
(
き
)
がつけば、
108
水
(
みづ
)
だらけの
庭
(
には
)
に
打
(
ぶ
)
つ
倒
(
たふ
)
れて
居
(
を
)
つたのか、
109
アヽ
情
(
なさけ
)
ない
情
(
なさけ
)
ない、
110
コンナ
事
(
こと
)
なら
後戻
(
あともど
)
りをせなかつた
方
(
はう
)
が
良
(
よ
)
かつたに、
111
又
(
また
)
娑婆
(
しやば
)
で
一息
(
ひといき
)
苦労
(
くらう
)
をせにやならぬかいな』
112
お
楢
(
なら
)
『コレコレ
親爺
(
おやぢ
)
どの、
113
それやお
前
(
まへ
)
何
(
なに
)
を
云
(
い
)
ふのだい、
114
二世
(
にせ
)
も
三世
(
さんぜ
)
も
先
(
さき
)
の
世
(
よ
)
かけても
誓
(
ちか
)
うた
夫婦
(
ふうふ
)
の
仲
(
なか
)
、
115
此
(
この
)
婆
(
ばば
)
一人
(
ひとり
)
を
娑婆
(
しやば
)
に
残
(
のこ
)
して
置
(
お
)
いて、
116
お
前
(
まへ
)
ばつかり
極楽
(
ごくらく
)
へ
行
(
い
)
つて
済
(
す
)
むのかいなア』
117
平助
(
へいすけ
)
『アヽさうだつたな、
118
あまり
結構
(
けつこう
)
な
処
(
ところ
)
でお
前
(
まへ
)
の
事
(
こと
)
は
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
にやら
念頭
(
ねんとう
)
を
去
(
さ
)
つて
居
(
ゐ
)
たよ、
119
然
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
目
(
め
)
をまはして
夢
(
ゆめ
)
を
見
(
み
)
て
居
(
を
)
つたのだ、
120
夢物語
(
ゆめものがたり
)
を
捉
(
つかま
)
へてさう
真剣
(
しんけん
)
に
怒
(
おこ
)
つて
貰
(
もら
)
うては
困
(
こま
)
るぢや
無
(
な
)
いか、
121
ア、
122
お
節
(
せつ
)
か、
123
何卒
(
どうぞ
)
二人
(
ふたり
)
寄
(
よ
)
つて
俺
(
おれ
)
の
身体
(
からだ
)
を
介抱
(
かいほう
)
して
寝床
(
ねどこ
)
を
敷
(
し
)
いて
休
(
やす
)
まして
呉
(
く
)
れ、
124
何
(
なん
)
だか
腰
(
こし
)
の
具合
(
ぐあひ
)
が
変
(
へん
)
だから』
125
お
楢
(
なら
)
、
126
お
節
(
せつ
)
は
涙
(
なみだ
)
乍
(
なが
)
ら
寝床
(
ねどこ
)
を
拵
(
こしら
)
へ
足
(
あし
)
の
掃除
(
さうぢ
)
もそこそこに
平助
(
へいすけ
)
を
抱
(
かか
)
へて
床
(
とこ
)
に
休
(
やす
)
ませたるが、
127
それより
平助
(
へいすけ
)
は
発熱
(
はつねつ
)
し
毎日
(
まいにち
)
日
(
ひ
)
にち
囈言
(
うさごと
)
を
云
(
い
)
ひ
半月
(
はんつき
)
ばかり
経
(
へ
)
て
遂
(
つひ
)
に
帰幽
(
きいう
)
したりける。
128
お
楢
(
なら
)
、
129
お
節
(
せつ
)
は
死骸
(
しがい
)
に
取
(
と
)
り
着
(
つ
)
き
号泣
(
がうきふ
)
し
漸
(
やうや
)
く
野辺
(
のべ
)
の
送
(
おく
)
りも
済
(
す
)
ませ
其
(
その
)
後
(
のち
)
二人
(
ふたり
)
は
日課
(
につくわ
)
の
様
(
やう
)
に
朝
(
あさ
)
昼
(
ひる
)
晩
(
ばん
)
と
三回
(
さんくわい
)
常磐木
(
ときはぎ
)
の
枝
(
えだ
)
を
折
(
お
)
つては
供
(
そな
)
へ
水
(
みづ
)
を
持
(
も
)
ち
搬
(
はこ
)
びて
亡
(
な
)
き
人
(
ひと
)
の
霊
(
れい
)
を
慰
(
なぐさ
)
めて
居
(
ゐ
)
たり。
130
お
楢
(
なら
)
婆
(
ば
)
アは
爺
(
ぢい
)
に
先立
(
さきだ
)
たれ、
131
娘
(
むすめ
)
のお
節
(
せつ
)
を
力
(
ちから
)
に
面白
(
おもしろ
)
からぬ
月日
(
つきひ
)
を
送
(
おく
)
り
居
(
ゐ
)
たりけり。
132
然
(
しか
)
るにお
節
(
せつ
)
は
平助
(
へいすけ
)
の
帰幽
(
きいう
)
した
頃
(
ころ
)
より
身体
(
しんたい
)
益々
(
ますます
)
痩衰
(
やせおとろ
)
へ
又
(
また
)
もや
床
(
とこ
)
にべつたり
着
(
つ
)
き
囈言
(
うさごと
)
さへ
言
(
い
)
ふ
様
(
やう
)
になりければ、
133
婆
(
ばば
)
は
堪
(
た
)
まり
兼
(
か
)
ね
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
真名井
(
まなゐ
)
ケ
原
(
はら
)
に
跣参詣
(
はだしまゐり
)
を
初
(
はじ
)
め
彼
(
か
)
の
比治山
(
ひぢやま
)
峠
(
たうげ
)
を
登
(
のぼ
)
りつめると
例
(
れい
)
の
黒姫
(
くろひめ
)
が
白壁
(
しらかべ
)
の
様
(
やう
)
に
皺苦茶
(
しわくちや
)
顔
(
がほ
)
をコテコテ
塗
(
ぬ
)
り
立
(
た
)
て
花
(
はな
)
を
欺
(
あざむ
)
く
妙齢
(
めうれい
)
の
照子
(
てるこ
)
、
134
清子
(
きよこ
)
の
二人
(
ふたり
)
と
共
(
とも
)
に
前方
(
ぜんぱう
)
に
立
(
た
)
ち
塞
(
ふさ
)
がり、
135
黒姫
(
くろひめ
)
『これこれ、
136
お
婆
(
ば
)
さま、
137
お
前
(
まへ
)
は
此
(
この
)
間
(
あいだ
)
此処
(
ここ
)
を
通
(
とほ
)
つた
親子
(
おやこ
)
三人
(
さんにん
)
連
(
づ
)
れの
婆
(
ばば
)
さまぢやないか。
138
又
(
また
)
しても
又
(
また
)
しても
素盞嗚
(
すさのをの
)
尊
(
みこと
)
の
悪神
(
あくがみ
)
の
教
(
をしへ
)
を
迷信
(
めいしん
)
して
真名井
(
まなゐ
)
山
(
さん
)
へ
詣
(
まゐ
)
るのだな』
139
お
楢
(
なら
)
『ハイハイ
左様
(
さやう
)
で
御座
(
ござ
)
います、
140
力
(
ちから
)
と
頼
(
たの
)
む
親爺
(
おやぢ
)
どのは
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
詣
(
まゐ
)
つて
帰
(
かへ
)
るが
早
(
はや
)
いか
庭
(
には
)
で
打
(
ぶ
)
ち
倒
(
こ
)
けて、
141
それが
原因
(
もと
)
となり
夜昼
(
よるひる
)
苦
(
くる
)
しみた
揚句
(
あげく
)
、
142
到頭
(
たうとう
)
あの
世
(
よ
)
の
人
(
ひと
)
となつて
仕舞
(
しま
)
ひました、
143
オーン、
144
オンオン』
145
と
泣
(
な
)
き
崩
(
くづ
)
れる。
146
黒姫
(
くろひめ
)
はニヤリと
笑
(
わら
)
ひ、
147
黒姫
『さうぢやろさうぢやろ、
148
アンナ
処
(
ところ
)
へ
俺
(
わし
)
の
親切
(
しんせつ
)
を
無
(
む
)
にして
詣
(
まゐ
)
るものだから、
149
瑞
(
みづ
)
の
霊
(
みたま
)
の
悪神
(
あくがみ
)
に
大切
(
たいせつ
)
な
生命
(
いのち
)
をとられて
仕舞
(
しま
)
うたのぢや。
150
ようまアお
前
(
まへ
)
胸
(
むね
)
に
手
(
て
)
を
当
(
あ
)
てて
考
(
かんが
)
へて
見
(
み
)
なさい、
151
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
へ
詣
(
まゐ
)
るのは
倒
(
こ
)
けて
死
(
し
)
ぬのが
目的
(
もくてき
)
ぢやあるまい、
152
千
(
せん
)
年
(
ねん
)
も
万
(
まん
)
年
(
ねん
)
も
長生
(
ながいき
)
して
孫
(
まご
)
から
曾孫
(
ひまご
)
、
153
玄孫
(
つるまご
)
まで
生
(
う
)
みて、
154
百
(
ひやく
)
年
(
ねん
)
も
二百
(
にひやく
)
年
(
ねん
)
も
長生
(
ながいき
)
出来
(
でき
)
る
様
(
やう
)
に
詣
(
まゐ
)
るのぢやないか、
155
それに
何
(
なん
)
の
事
(
こと
)
ぢや、
156
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
詣
(
まゐ
)
つて
帰
(
かへ
)
るなりウンと、
157
畳
(
たたみ
)
の
上
(
うへ
)
ならまだしもだが
庭
(
には
)
の
真
(
ま
)
ン
中
(
なか
)
に
糞蛙
(
くそがへる
)
を
打
(
ぶ
)
つ
付
(
つ
)
けた
様
(
やう
)
にフン
伸
(
の
)
びて、
158
おまけに
水
(
みづ
)
迄
(
まで
)
被
(
かぶ
)
つて
寂滅
(
じやくめつ
)
する
様
(
やう
)
な
信心
(
しんじん
)
が
何
(
なん
)
になるかいな、
159
それぢやから
彼
(
あ
)
れ
程
(
ほど
)
俺
(
わし
)
が
親切
(
しんせつ
)
に
止
(
と
)
めたのぢや、
160
土台
(
どだい
)
お
前
(
まへ
)
の
親爺
(
おやぢ
)
は
屁
(
へ
)
の
様
(
やう
)
な
名
(
な
)
でも
仲々
(
なかなか
)
我
(
が
)
が
強
(
つよ
)
いから
罰
(
ばち
)
は
覿面
(
てきめん
)
ぢや。
161
愚図
(
ぐづ
)
々々
(
ぐづ
)
して
居
(
を
)
るとお
前
(
まへ
)
の
娘
(
むすめ
)
まで
生命
(
いのち
)
をとられ、
162
終
(
しまひ
)
にはお
前
(
まへ
)
も
死
(
し
)
ンで
仕舞
(
しま
)
ふぞや、
163
メソメソと
何程
(
なにほど
)
泣
(
な
)
いたつて
後
(
あと
)
の
後悔
(
こうくわい
)
先
(
さき
)
に
立
(
た
)
たずぢや、
164
エーもう
死
(
し
)
ンだ
爺
(
ぢい
)
は
仕方
(
しかた
)
が
無
(
な
)
いとして、
165
お
前
(
まへ
)
丈
(
だ
)
けなりと
長生
(
ながいき
)
するやうに
綺麗
(
きれい
)
薩張
(
さつぱり
)
と
改心
(
かいしん
)
して、
166
三五教
(
あななひけう
)
の
神
(
かみ
)
を
河
(
かは
)
へでも
流
(
なが
)
し、
167
結構
(
けつこう
)
な
結構
(
けつこう
)
なウラナイ
教
(
けう
)
の
誠
(
まこと
)
の
艮
(
うしとら
)
の
金神
(
こんじん
)
様
(
さま
)
をお
祭
(
まつ
)
りなされ、
168
何時迄
(
いつまで
)
も
頑張
(
ぐわんば
)
つて
居
(
を
)
るとド
偉
(
えら
)
い
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ますぜ、
169
大方
(
おほかた
)
お
前
(
まへ
)
の
娘
(
むすめ
)
も
青
(
あを
)
い
顔
(
かほ
)
して
居
(
を
)
つたが、
170
今頃
(
いまごろ
)
は
三
(
み
)
つ
児
(
ご
)
が
痺疳
(
ひかん
)
を
病
(
や
)
みた
様
(
やう
)
にヒーヒー
云
(
い
)
うて
朝
(
あさ
)
から
晩
(
ばん
)
まで、
171
ひしつて
居
(
を
)
るだらう』
172
お
楢
(
なら
)
『ハイハイ
仰
(
おつ
)
しやる
通
(
とほ
)
り
爺
(
ぢい
)
さまと
云
(
い
)
ひ、
173
大切
(
たいせつ
)
の
孫娘
(
まごむすめ
)
は
何
(
なん
)
だか
知
(
し
)
らぬが
日
(
ひ
)
に
日
(
ひ
)
に
身体
(
からだ
)
は
痩
(
やせ
)
る、
174
日向
(
ひなた
)
に
氷
(
こほり
)
が
溶
(
と
)
ける
様
(
やう
)
に
息
(
いき
)
の
音
(
ね
)
まで
細
(
ほそ
)
つて
行
(
ゆ
)
きます。
175
私
(
わたし
)
も
親爺
(
おやぢ
)
どのに
先立
(
さきだ
)
たれ、
176
力
(
ちから
)
と
思
(
おも
)
ふ
孫娘
(
まごむすめ
)
は
何時
(
いつ
)
死
(
し
)
ぬやら
分
(
わか
)
らぬ
様
(
やう
)
な
大病
(
たいびやう
)
に
罹
(
かか
)
り、
177
其
(
その
)
上
(
うへ
)
耳
(
みみ
)
は
遠
(
とほ
)
くなり
腰
(
こし
)
は
曲
(
まが
)
り、
178
足
(
あし
)
は
碌
(
ろく
)
に
動
(
うご
)
きませぬ。
179
アヽコンナ
事
(
こと
)
なら
親爺
(
おやぢ
)
どのと
一緒
(
いつしよ
)
に
死
(
し
)
ンだが
まし
ぢやつたと、
180
昨夕
(
ゆうべ
)
も
一人
(
ひとり
)
そつと
墓
(
はか
)
へ
参
(
まゐ
)
り「
親爺
(
おやぢ
)
どの、
181
何卒
(
どうぞ
)
私
(
わたし
)
も
早
(
はや
)
う
呼
(
よ
)
びに
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さい、
182
浮世
(
うきよ
)
が
嫌
(
いや
)
になつた、
183
お
前
(
まへ
)
と
一緒
(
いつしよ
)
にあの
世
(
よ
)
で
暮
(
くら
)
したいから」と
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
頼
(
たの
)
みて
居
(
を
)
りましたら、
184
死
(
し
)
ンでも
正念
(
しやうねん
)
があると
見
(
み
)
えまして、
185
親爺
(
おやぢ
)
の
姿
(
すがた
)
が
墓
(
はか
)
の
中
(
なか
)
からポツと
現
(
あら
)
はれ「お
前
(
まへ
)
は
女房
(
にようばう
)
のお
楢
(
なら
)
か、
186
能
(
よ
)
う
云
(
い
)
うて
呉
(
く
)
れた、
187
ソンナラ
俺
(
おれ
)
が
之
(
これ
)
から
冥途
(
めいど
)
へ
連
(
つ
)
れて
行
(
い
)
つてやらう」と
嫌
(
いや
)
らしい
顔
(
かほ
)
して
云
(
い
)
ひました。
188
私
(
わたし
)
も
俄
(
にはか
)
に
死
(
し
)
ぬのが
嫌
(
いや
)
になり「
今度
(
こんど
)
の
今度
(
こんど
)
の
其
(
その
)
今度
(
こんど
)
、
189
十
(
じふ
)
年
(
ねん
)
二十
(
にじふ
)
年
(
ねん
)
三十
(
さんじふ
)
年
(
ねん
)
、
190
百
(
ひやく
)
年
(
ねん
)
経
(
た
)
つた
其
(
その
)
上
(
うへ
)
に
迎
(
むか
)
ひに
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
され」と
吃驚
(
びつくり
)
して
倒
(
こ
)
けつ
転
(
まろ
)
びつ
吾
(
わが
)
家
(
や
)
へ
帰
(
かへ
)
つて
見
(
み
)
れば、
191
娘
(
むすめ
)
のお
節
(
せつ
)
が
何
(
なん
)
だか
知
(
し
)
らぬが
青彦
(
あをひこ
)
々々
(
あをひこ
)
と
夢中
(
むちう
)
になつて
嫌
(
いや
)
らしい
声
(
こゑ
)
を
出
(
だ
)
して
居
(
を
)
ります。
192
親爺
(
おやぢ
)
どのの
墓
(
はか
)
では
青
(
あを
)
い
火
(
ひ
)
に
蒼
(
あを
)
い
面
(
つら
)
を
見
(
み
)
せられ
生命
(
いのち
)
からがら
逃
(
に
)
げて
来
(
く
)
れば、
193
一人
(
ひとり
)
の
娘
(
むすめ
)
は
熱
(
ねつ
)
に
浮
(
う
)
かされて
青彦
(
あをひこ
)
々々
(
あをひこ
)
と
夢中
(
むちう
)
になつて
呻
(
うめ
)
いて
居
(
ゐ
)
る、
194
如何
(
どう
)
して
之
(
これ
)
が
堪
(
たま
)
りませうかいな、
195
アーン、
196
アンアン、
197
ウーン、
198
ウンウン』
199
と
泣
(
な
)
き
崩
(
くづ
)
れ
居
(
ゐ
)
る。
200
黒姫
(
くろひめ
)
『
何
(
なに
)
、
201
お
前
(
まへ
)
の
娘
(
むすめ
)
のお
節
(
せつ
)
が
青彦
(
あをひこ
)
々々
(
あをひこ
)
と
呼
(
よ
)
びて
居
(
を
)
るか、
202
それは
偉
(
えら
)
いものぢや、
203
お
前
(
まへ
)
は
俺
(
わし
)
の
言
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
を
聞
(
き
)
いてウラナイ
教
(
けう
)
になりなさい、
204
そしたら
娘
(
むすめ
)
の
病気
(
びやうき
)
は
千
(
せん
)
に
一
(
いち
)
も
助
(
たす
)
かるかも
知
(
し
)
れませぬよ、
205
お
前
(
まへ
)
も
死
(
し
)
に
度
(
た
)
い
死
(
し
)
に
度
(
た
)
いと
云
(
い
)
つても、
206
サア
今
(
いま
)
となれば
矢張
(
やつぱり
)
死
(
し
)
ぬのが
嫌
(
いや
)
だらう、
207
千
(
せん
)
年
(
ねん
)
も
万
(
まん
)
年
(
ねん
)
も
長生
(
ながいき
)
の
出来
(
でき
)
るウラナイ
教
(
けう
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
を
信心
(
しんじん
)
しなさい、
208
之
(
これ
)
から
俺
(
おれ
)
がお
前
(
まへ
)
の
宅
(
うち
)
へ
行
(
い
)
つて、
209
三五教
(
あななひけう
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
が
祭
(
まつ
)
つてあれば
放
(
ほ
)
り
出
(
だ
)
し、
210
ウラナイ
教
(
けう
)
の
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
を
祭
(
まつ
)
つて
上
(
あ
)
げよう』
211
お
楢
(
なら
)
『イエイエ、
212
まだ
三五教
(
あななひけう
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
は
祭
(
まつ
)
つて
御座
(
ござ
)
いませぬ、
213
娘
(
むすめ
)
のお
節
(
せつ
)
が
助
(
たす
)
けられたと
云
(
い
)
ふので
信心
(
しんじん
)
をして
居
(
を
)
るので
御座
(
ござ
)
います、
214
恰度
(
ちやうど
)
幸
(
さいは
)
ひお
前
(
まへ
)
さまが
来
(
き
)
て
祭
(
まつ
)
つて
下
(
くだ
)
されば
娘
(
むすめ
)
の
病気
(
びやうき
)
は
癒
(
なほ
)
るだらうし、
215
俺
(
わし
)
も
長生
(
ながいき
)
が
出来
(
でき
)
ませうから、
216
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
頼
(
たの
)
みますわいな、
217
ウン、
218
ウン、
219
ウン(
泣声
(
なきごゑ
)
)』
220
黒姫
(
くろひめ
)
『よしよし
祭
(
まつ
)
つては
上
(
あ
)
げるが、
221
さう
軽々
(
かるがる
)
しう
結構
(
けつこう
)
な
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
だから、
222
荷物
(
にもつ
)
を
持
(
も
)
ち
運
(
はこ
)
ぶ
様
(
やう
)
にはいけませぬ、
223
マアお
節
(
せつ
)
どのにも
篤
(
とつく
)
り
云
(
い
)
ひ
聞
(
き
)
かし、
224
三五教
(
あななひけう
)
を
思
(
おも
)
ひ
断
(
き
)
らした
其
(
その
)
上
(
うへ
)
で
祭
(
まつ
)
つて
上
(
あ
)
げ
様
(
やう
)
かい、
225
サアサ
之
(
これ
)
より
早
(
はや
)
く
比沼
(
ひぬ
)
の
真名井
(
まなゐ
)
の
瑞
(
みづ
)
の
宝座
(
ほうざ
)
とやらを
拝
(
をが
)
みて
来
(
き
)
なさい、
226
さうして
又
(
また
)
帰
(
かへ
)
つて
庭
(
には
)
に
大
(
だい
)
の
字
(
じ
)
になつて……オホヽヽヽ』
227
お
楢
(
なら
)
『イエイエ
如何
(
どう
)
して
如何
(
どう
)
して、
228
貴女
(
あなた
)
のお
話
(
はなし
)
を
聞
(
き
)
いた
上
(
うへ
)
は
誰
(
たれ
)
が
真名井
(
まなゐ
)
等
(
など
)
へ
詣
(
まゐ
)
りませうか、
229
あの
時
(
とき
)
にも
俺
(
わし
)
はお
前
(
まへ
)
さまの
話
(
はなし
)
を
聞
(
き
)
いて
耳
(
みみ
)
を
傾
(
かたむ
)
け
改心
(
かいしん
)
しかけて
居
(
を
)
つたのだが、
230
昔気質
(
むかしかたぎ
)
の
親爺
(
おやぢ
)
どのなり
娘
(
むすめ
)
のお
節
(
せつ
)
が
聞
(
き
)
かぬものだから
仕方
(
しかた
)
なしに
詣
(
まゐ
)
りました、
231
あの
時
(
とき
)
貴女
(
あなた
)
の
仰
(
おつ
)
しやる
通
(
とほ
)
りにして
置
(
お
)
けば
宜
(
よ
)
かつたのに、
232
親爺
(
おやぢ
)
どのも
取
(
と
)
り
返
(
かへ
)
しのならぬ
下手
(
へた
)
をしたものぢやわいな、
233
アーン、
234
アンアン』
235
黒姫
(
くろひめ
)
『サア
婆
(
ばば
)
さま、
236
決心
(
けつしん
)
がきまつたら
仕方
(
しかた
)
がない、
237
俺
(
わし
)
が
特別
(
とくべつ
)
待遇
(
たいぐう
)
で
出張
(
しゆつちやう
)
してあげよう、
238
お
前
(
まへ
)
は
余程
(
よつぽど
)
型
(
かた
)
の
良
(
よ
)
いお
方
(
かた
)
ぢや、
239
俺
(
わし
)
に
直接
(
ちよくせつ
)
来
(
き
)
て
貰
(
もら
)
うと
云
(
い
)
ふ
様
(
やう
)
な
事
(
こと
)
は
滅多
(
めつた
)
に
無
(
な
)
いぞえ』
240
お
楢
(
なら
)
『ハイハイ、
241
お
勿体
(
もつたい
)
ない、
242
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います、
243
お
蔭様
(
かげさま
)
でお
節
(
せつ
)
の
病気
(
びやうき
)
も
本復
(
ほんぷく
)
致
(
いた
)
しませう、
244
何分
(
なにぶん
)
宜
(
よろ
)
しくお
頼
(
たの
)
み
申
(
まを
)
します』
245
黒姫
(
くろひめ
)
『アーア、
246
生神
(
いきがみ
)
様
(
さま
)
になると
忙
(
いそが
)
しいものだ、
247
たつた
一人
(
ひとり
)
の
娘
(
むすめ
)
でも
皆
(
みな
)
天地
(
てんち
)
の
神
(
かみ
)
の
分霊
(
わけみたま
)
に
違
(
ちが
)
ひはない、
248
一視
(
いつし
)
同仁
(
どうじん
)
、
249
至仁至愛
(
みろく
)
の
心
(
こころ
)
を
出
(
だ
)
して
助
(
たす
)
けて
上
(
あ
)
げようかい、
250
サアサア
照
(
てる
)
さま、
251
清
(
きよ
)
さま、
252
お
前
(
まへ
)
も
一緒
(
いつしよ
)
に
跟
(
つ
)
いて
来
(
く
)
るのだよ、
253
これこれお
楢
(
なら
)
さま、
254
嬉
(
うれ
)
しいかい』
255
お
楢
(
なら
)
『ハイハイ、
256
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います、
257
ソンナラ
之
(
これ
)
から
私
(
わたし
)
が
御
(
ご
)
案内
(
あんない
)
致
(
いた
)
しませう』
258
黒姫
(
くろひめ
)
『よしよし
行
(
い
)
つてあげよう、
259
お
前
(
まへ
)
は
余
(
よ
)
つ
程
(
ぽど
)
幸福者
(
しあはせもの
)
ぢや、
260
もう
之
(
これ
)
で
真名井
(
まなゐ
)
山
(
さん
)
を
思
(
おも
)
ひ
切
(
き
)
つたぢやらうな』
261
お
楢
(
なら
)
『ヘイヘイ、
262
誰
(
たれ
)
が
真名井
(
まなゐ
)
山
(
さん
)
なぞへ
参
(
まゐ
)
りますものか』
263
と
先
(
さき
)
に
立
(
た
)
つて
行
(
ゆ
)
く。
264
黒姫
(
くろひめ
)
はしすましたりと
北叟笑
(
ほくそゑ
)
み
乍
(
なが
)
ら
二人
(
ふたり
)
の
娘
(
むすめ
)
を
伴
(
ともな
)
ひ
丹波村
(
たんばむら
)
の
婆
(
ばば
)
が
伏屋
(
ふせや
)
を
指
(
さ
)
して
意気
(
いき
)
揚々
(
やうやう
)
と
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
265
(
大正一一・四・二二
旧三・二六
北村隆光
録)
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(B)
(N)
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【第9章 大逆転|第17巻|如意宝珠|霊界物語|/rm1709】
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