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霊界物語
如意宝珠(第13~24巻)
第17巻(辰の巻)
序文
凡例
総説歌
第1篇 雪山幽谷
第1章 黄金の衣
第2章 魔の窟
第3章 生死不明
第4章 羽化登仙
第5章 誘惑婆
第6章 瑞の宝座
第2篇 千態万様
第7章 枯尾花
第8章 蚯蚓の囁
第9章 大逆転
第10章 四百種病
第11章 顕幽交通
第3篇 鬼ケ城山
第12章 花と花
第13章 紫姫
第14章 空谷の足音
第15章 敵味方
第16章 城攻
第17章 有終の美
霊の礎(三)
暁山雲(謡曲)
余白歌
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(B)
(N)
空谷の足音 >>>
第一三章
紫姫
(
むらさきひめ
)
〔六二四〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第17巻 如意宝珠 辰の巻
篇:
第3篇 鬼ケ城山
よみ(新仮名遣い):
おにがじょうざん
章:
第13章 紫姫
よみ(新仮名遣い):
むらさきひめ
通し章番号:
624
口述日:
1922(大正11)年04月23日(旧03月27日)
口述場所:
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年1月10日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
岩窟に入ると五六人の手下たちがいたが、加米彦の一喝で慌て出す。しかし手下の中の丹州という男が理屈をこねて加米彦に食ってかかる。
しかし丹州は実は自分は玉彦という者で、豊国姫命の命で小鬼となってバラモン教に潜入していた、という。そして、丹州はバラモン教の他の手下らを手なずけて、紫姫の二人の僕かくまっていた。衣に猪の血をつけて荒鷹・鬼鷹の目をごまかしていたのである。
丹州は二人の僕を他の手下に連れてこさせた。そして丹州は一行を鬼ケ城の方へ案内するが、三嶽山の山頂に出たところで一行は突風に煽られてしまう。
丹州が手なずけていた荒鷹・鬼鷹の手下らは、吹き飛ばされてしまった。雲の中から大蛇が舌を出して一行に襲い掛かるが、加米彦の言霊の発射で雲の中に逃げていく。
風はぴたりと止み、一同は天津祝詞と宣伝歌を唱和して、山伝いに鬼ケ城へと進んで行った。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2021-02-14 00:43:55
OBC :
rm1713
愛善世界社版:
201頁
八幡書店版:
第3輯 598頁
修補版:
校定版:
207頁
普及版:
89頁
初版:
ページ備考:
001
細
(
ほそ
)
い
暗
(
くら
)
い
穴
(
あな
)
を
腰
(
こし
)
を
屈
(
かが
)
めて
二三十
(
にさんじつ
)
間
(
けん
)
進
(
すす
)
んで
行
(
ゆ
)
くと、
002
其処
(
そこ
)
に
明
(
あか
)
りのさした
稍
(
やや
)
広
(
ひろ
)
き
隧道
(
すゐだう
)
が
前方
(
ぜんぱう
)
に
貫通
(
くわんつう
)
し
居
(
ゐ
)
たり。
003
紫姫
(
むらさきひめ
)
『サア
之
(
これ
)
から
天井
(
てんじやう
)
も
高
(
たか
)
う
御座
(
ござ
)
います、
004
何卒
(
どうぞ
)
お
腰
(
こし
)
を
伸
(
の
)
ばしてお
歩
(
ある
)
き
下
(
くだ
)
さいませ、
005
此
(
この
)
巌窟
(
がんくつ
)
は
長
(
なが
)
さ
三丁
(
さんちやう
)
許
(
ばか
)
り
縦横
(
たてよこ
)
十文字
(
じふもんじ
)
に
隧道
(
すゐだう
)
が
穿
(
うが
)
たれ、
006
処々
(
ところどころ
)
に
四角
(
しかく
)
い
岩窟
(
いはや
)
の
室
(
ま
)
が
御座
(
ござ
)
います。
007
荒鷹
(
あらたか
)
、
008
鬼鷹
(
おにたか
)
の
居
(
を
)
ります
場所
(
ばしよ
)
は
特
(
とく
)
に
広
(
ひろ
)
く
築
(
きづ
)
いてあります』
009
加米彦
(
かめひこ
)
『ヤア
益々
(
ますます
)
鬼
(
おに
)
の
奴
(
やつ
)
、
010
洒落
(
しやれ
)
た
事
(
こと
)
をやつて
居
(
ゐ
)
よる
哩
(
わい
)
、
011
鬼
(
おに
)
ケ
城
(
じやう
)
へ
行
(
い
)
つて
不在中
(
ふざいちゆう
)
で
安心
(
あんしん
)
な
様
(
やう
)
なものだが、
012
若
(
も
)
しひよつと
愚図
(
ぐづ
)
々々
(
ぐづ
)
して
居
(
ゐ
)
ると
中途
(
ちうと
)
に
帰
(
かへ
)
つて
来
(
き
)
よつて、
013
あの
細
(
ほそ
)
い
入口
(
いりぐち
)
をピツタリ
塞
(
ふさ
)
ぎよるか
但
(
ただし
)
は
青松葉
(
あをまつば
)
でも
燻
(
くす
)
べられたら、
014
それこそ
大変
(
たいへん
)
だ、
015
良
(
い
)
い
加減
(
かげん
)
に
探険
(
たんけん
)
したら
斯様
(
かやう
)
な
危険
(
きけん
)
地帯
(
ちたい
)
は
退却
(
たいきやく
)
するに
限
(
かぎ
)
る、
016
ナア
音彦
(
おとひこ
)
さま』
017
音彦
(
おとひこ
)
『さうだなア、
018
一方口
(
いつぱうぐち
)
を
塞
(
ふさ
)
がれては
袋
(
ふくろ
)
の
鼠
(
ねずみ
)
も
同然
(
どうぜん
)
だ』
019
紫姫
(
むらさきひめ
)
『イエイエ
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
下
(
くだ
)
さいますな、
020
二ケ所
(
にかしよ
)
も
三ケ所
(
さんかしよ
)
も
非常口
(
ひじやうぐち
)
が
開
(
あ
)
いて
居
(
ゐ
)
ます、
021
妾
(
わたし
)
は
能
(
よ
)
く
承知
(
しようち
)
して
居
(
を
)
りますから
御
(
ご
)
安心
(
あんしん
)
して
下
(
くだ
)
さい』
022
加米彦
(
かめひこ
)
『アヽさうですか、
023
それなら
安心
(
あんしん
)
だ』
024
と
紫姫
(
むらさきひめ
)
の
後
(
あと
)
につき
大手
(
おほて
)
を
振
(
ふ
)
つて
大股
(
おほまた
)
にフン
張
(
ば
)
り
行
(
ゆ
)
く。
025
加米彦
(
かめひこ
)
『ヤア
小鬼
(
こおに
)
共
(
ども
)
が
沢山
(
たくさん
)
寝
(
ね
)
て
居
(
ゐ
)
よるワ。
026
オイオイ、
027
小鬼
(
こおに
)
の
奴
(
やつこ
)
、
028
起
(
お
)
きぬかい、
029
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
悦子姫
(
よしこひめ
)
一行
(
いつかう
)
の
御
(
ご
)
臨検
(
りんけん
)
だ、
030
サアサア
之
(
これ
)
から
簡閲
(
かんえつ
)
点呼
(
てんこ
)
の
始
(
はじ
)
まり』
031
五六
(
ごろく
)
人
(
にん
)
の
男
(
をとこ
)
吃驚
(
びつくり
)
して
起
(
お
)
き
上
(
あが
)
り、
032
男
『
何方
(
どなた
)
さまか
知
(
し
)
りませぬが
生憎
(
あいにく
)
御
(
おん
)
大将
(
たいしやう
)
は
御
(
ご
)
不在
(
ふざい
)
、
033
一向
(
いつかう
)
お
構
(
かま
)
ひ
出来
(
でき
)
ませぬ、
034
何卒
(
なにとぞ
)
悠々
(
ゆるゆる
)
とお
休
(
やす
)
み
下
(
くだ
)
さいませ』
035
加米彦
(
かめひこ
)
『
休
(
やす
)
めと
云
(
い
)
はいでも
休
(
やす
)
みてやる、
036
然
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
貴様
(
きさま
)
達
(
たち
)
は
何
(
なん
)
の
為
(
ため
)
に
留守番
(
るすばん
)
を
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
るのぢや、
037
鬼
(
おに
)
の
上前
(
うはまへ
)
を
越
(
こ
)
す
音彦
(
おとひこ
)
や、
038
加米彦
(
かめひこ
)
がノソノソと
奥深
(
おくふか
)
く
進入
(
しんにふ
)
し、
039
此
(
この
)
岩窟
(
いはや
)
は
最早
(
もはや
)
陥落
(
かんらく
)
より
外
(
ほか
)
に
道
(
みち
)
なき
悲境
(
ひきやう
)
に
立
(
た
)
ち
到
(
いた
)
つて
居
(
を
)
るのに、
040
大将
(
たいしやう
)
の
留守
(
るす
)
を
窺
(
うかが
)
ひ、
041
秘蔵
(
ひざう
)
の
酒
(
さけ
)
に
喰
(
くら
)
ひ
酔
(
よ
)
ひ、
042
鱶
(
ふか
)
の
様
(
やう
)
に
愚助
(
ぐうすけ
)
八兵衛
(
はちべゑ
)
と
前後
(
ぜんご
)
も
知
(
し
)
らず
寝
(
ね
)
て
居
(
を
)
るとは
不届
(
ふとど
)
き
至極
(
しごく
)
な
代物
(
しろもの
)
だ、
043
サア
此
(
この
)
加米彦
(
かめひこ
)
が
目
(
め
)
に
留
(
と
)
まつた
以上
(
いじやう
)
は
容赦
(
ようしや
)
は
致
(
いた
)
さぬ、
044
鬼鷹
(
おにたか
)
、
045
荒鷹
(
あらたか
)
の
両人
(
りやうにん
)
になり
代
(
かは
)
り、
046
今日
(
こんにち
)
只今
(
ただいま
)
より
暇
(
ひま
)
を
遣
(
つか
)
はす、
047
何
(
いづれ
)
へなりと
勝手
(
かつて
)
に
出
(
で
)
て
行
(
ゆ
)
け』
048
小鬼
(
こおに
)
『オイ
丹州
(
たんしう
)
、
049
金州
(
きんしう
)
、
050
源州
(
げんしう
)
、
051
遠州
(
ゑんしう
)
、
052
播州
(
ばんしう
)
、
053
大変
(
たいへん
)
だぞ、
054
只今
(
ただいま
)
限
(
かぎ
)
り
免職
(
めんしよく
)
だとえ』
055
丹州
(
たんしう
)
『それだから
酒
(
さけ
)
は
飲
(
の
)
むな、
056
酒
(
さけ
)
を
飲
(
の
)
んだら
縮尻
(
しくじ
)
ると
何時
(
いつ
)
も
云
(
い
)
うとるのだ、
057
俺
(
おれ
)
もウラナイ
教
(
けう
)
の
黒姫
(
くろひめ
)
の
児分
(
こぶん
)
になつて
二三
(
にさん
)
年
(
ねん
)
随
(
つ
)
いて
廻
(
まは
)
つて
居
(
を
)
つたが、
058
三五教
(
あななひけう
)
には
随分
(
ずゐぶん
)
偉
(
えら
)
い
豪傑
(
がうけつ
)
が
居
(
を
)
つて
神変
(
しんぺん
)
不思議
(
ふしぎ
)
の
術
(
じゆつ
)
を
使
(
つか
)
ひ、
059
ドンナ
処
(
ところ
)
へでも
生命
(
いのち
)
構
(
かま
)
はずに
出
(
で
)
て
来
(
く
)
ると
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
つて
居
(
を
)
つたが、
060
本当
(
ほんたう
)
に
油断
(
ゆだん
)
のならぬ
三五教
(
あななひけう
)
ぢや、
061
三五教
(
あななひけう
)
は
穴
(
あな
)
が
無
(
な
)
いのでコンナ
鬼
(
おに
)
の
穴
(
あな
)
まで
探
(
さが
)
して
取
(
と
)
りに
来
(
く
)
るのだらうなア』
062
加米彦
(
かめひこ
)
『コレコレ
丹州
(
たんしう
)
とやら、
063
何
(
なに
)
を
申
(
まを
)
す、
064
神妙
(
しんめう
)
に
此
(
この
)
方
(
はう
)
の
申
(
まを
)
す
通
(
とほ
)
り
退却
(
たいきやく
)
致
(
いた
)
さぬか』
065
丹州
(
たんしう
)
『お
前
(
まへ
)
は
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
ぢやないか、
066
ドンナ
悪神
(
あくがみ
)
でも
悪人
(
あくにん
)
でも
鬼
(
おに
)
でも
餓鬼
(
がき
)
でも
虫族
(
むしけら
)
までも
助
(
たす
)
けると
云
(
い
)
ふお
役
(
やく
)
だらう、
067
仮令
(
たとへ
)
吾々
(
われわれ
)
は
鬼
(
おに
)
の
乾児
(
こぶん
)
になつて
居
(
を
)
つても、
068
元
(
もと
)
は
天地
(
てんち
)
の
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
の
結構
(
けつこう
)
な
御分霊
(
わけみたま
)
、
069
指一本
(
ゆびいつぽん
)
でも
触
(
さ
)
へるなら
触
(
さ
)
へて
見
(
み
)
なさい、
070
天則
(
てんそく
)
違反
(
ゐはん
)
の
大罪
(
だいざい
)
で
根
(
ね
)
の
国
(
くに
)
、
071
底
(
そこ
)
の
国
(
くに
)
へ
真逆
(
まつさか
)
様
(
さま
)
に
落
(
おと
)
されますぞえ』
072
加米彦
(
かめひこ
)
『アハヽヽヽ、
073
此奴
(
こいつ
)
、
074
仲々
(
なかなか
)
理屈
(
りくつ
)
を
云
(
い
)
ひよる
哩
(
わい
)
、
075
オイ
丹州
(
たんしう
)
、
076
貴様
(
きさま
)
は
何処
(
どこ
)
の
出生
(
うまれ
)
ぢや』
077
丹州
(
たんしう
)
『
俺
(
おれ
)
かい、
078
俺
(
おれ
)
は
云
(
い
)
はいでも
定
(
きま
)
つた
事
(
こと
)
ぢや、
079
国
(
くに
)
の
生
(
うま
)
れだよ』
080
加米彦
(
かめひこ
)
『
国
(
くに
)
と
云
(
い
)
つても
沢山
(
たくさん
)
あるぢやないか、
081
何処
(
どこ
)
の
国
(
くに
)
だ』
082
丹州
(
たんしう
)
『エー、
083
頭脳
(
あたま
)
の
悪
(
わる
)
い
男
(
をとこ
)
だなア、
084
ソンナ
事
(
こと
)
で
宣伝使
(
せんでんし
)
が
勤
(
つと
)
まるか、
085
丹波
(
たんば
)
の
国
(
くに
)
に
居
(
ゐ
)
て
国
(
くに
)
の
生
(
うま
)
れと
云
(
い
)
へば
丹波
(
たんば
)
に
定
(
きま
)
つて
居
(
ゐ
)
るではないか』
086
加米彦
(
かめひこ
)
『アハヽヽヽ、
087
そうして
丹波
(
たんば
)
の
何処
(
どこ
)
だ』
088
丹州
(
たんしう
)
『
丹波
(
たんば
)
の
三嶽山
(
みたけやま
)
ぢや』
089
加米彦
(
かめひこ
)
『
三嶽山
(
みたけやま
)
は
定
(
きま
)
つて
居
(
ゐ
)
る、
090
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ふ
村
(
むら
)
の
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ふ
者
(
もの
)
から
生
(
うま
)
れたのだ』
091
丹州
(
たんしう
)
『
生
(
うま
)
れた
処
(
ところ
)
の
村
(
むら
)
が
分
(
わか
)
つたり、
092
親
(
おや
)
が
判
(
わか
)
る
様
(
やう
)
なら
誰
(
たれ
)
がコンナ
鬼
(
おに
)
の
乾児
(
こぶん
)
になつて
居
(
ゐ
)
るものかい、
093
お
前
(
まへ
)
も
余程
(
よつぽど
)
訳
(
わけ
)
の
分
(
わか
)
らぬ
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
ふものぢやな』
094
音彦
(
おとひこ
)
『サアサア
加米彦
(
かめひこ
)
、
095
早
(
はや
)
く
探険
(
たんけん
)
と
出掛
(
でか
)
け
様
(
やう
)
ぢやないか、
096
愚図
(
ぐづ
)
々々
(
ぐづ
)
して
居
(
ゐ
)
ると
大将株
(
たいしやうかぶ
)
が
帰
(
かへ
)
つて
来
(
き
)
よるかも
知
(
し
)
れないぞ』
097
加米彦
(
かめひこ
)
『
大将株
(
たいしやうかぶ
)
の
帰
(
かへ
)
つて
来
(
く
)
るのを
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
るのだ、
098
盗賊
(
たうぞく
)
の
親方
(
おやかた
)
の
居
(
を
)
らぬ
奴
(
やつこ
)
サン
許
(
ばか
)
りの
処
(
ところ
)
へ
出
(
で
)
て
来
(
き
)
て
威張
(
ゐば
)
る
訳
(
わけ
)
にも
往
(
ゆ
)
かぬ、
099
張合
(
はりあひ
)
が
抜
(
ぬ
)
けて
困
(
こま
)
つて
居
(
を
)
るのだ』
100
丹州
(
たんしう
)
『モシモシ
加米
(
かめ
)
サンとやら、
101
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
なさいますな。
102
最前
(
さいぜん
)
此
(
この
)
丹州
(
たんしう
)
が
鬼
(
おに
)
ケ
城
(
じやう
)
の
方
(
はう
)
へ
向
(
む
)
けて
合図
(
あひづ
)
をして
置
(
お
)
きました、
103
たつた
今
(
いま
)
雲霞
(
うんか
)
の
如
(
ごと
)
き
勇将
(
ゆうしやう
)
猛卒
(
まうそつ
)
を
引率
(
いんそつ
)
し、
104
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
の
御
(
おん
)
大将
(
たいしやう
)
、
105
旗鼓
(
きこ
)
堂々
(
だうだう
)
と
此方
(
こなた
)
に
向
(
むか
)
つて
攻
(
せ
)
めて
来
(
き
)
ますよ、
106
マアお
前
(
まへ
)
さまも
暫時
(
しばらく
)
の
生命
(
いのち
)
だ、
107
ゆつくりと
法螺
(
ほら
)
でも
吹
(
ふ
)
いて
刹那心
(
せつなしん
)
を
楽
(
たの
)
しみなさい』
108
加米彦
(
かめひこ
)
『ハツハヽヽヽ、
109
何
(
なに
)
を
吐
(
ぬか
)
しよるのだい、
110
仮令
(
たとへ
)
悪神
(
あくがみ
)
の
千匹
(
せんびき
)
や
万匹
(
まんびき
)
、
111
やつて
来
(
き
)
た
処
(
ところ
)
で、
112
三五教
(
あななひけう
)
独特
(
どくとく
)
の
神霊
(
しんれい
)
発射
(
はつしや
)
によつて
忽
(
たちま
)
ち
消滅
(
せうめつ
)
さしてやるのだ、
113
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
攻
(
せ
)
め
寄
(
よ
)
せて
来
(
こ
)
ないかいなア、
114
アヽ
待
(
ま
)
ち
遠
(
どほ
)
しいワイ』
115
丹州
(
たんしう
)
『アハヽヽヽ、
116
力
(
ちから
)
は
何
(
ど
)
うだか
知
(
し
)
らぬが
随分
(
ずゐぶん
)
吹
(
ふ
)
きますな』
117
加米彦
(
かめひこ
)
『きまつた
事
(
こと
)
だよ、
118
二百十
(
にひやくとを
)
日
(
か
)
と
綽名
(
あだな
)
を
取
(
と
)
つた
加米彦
(
かめひこ
)
だ、
119
まごまごして
居
(
を
)
ると、
120
俺
(
おれ
)
の
鼻息
(
はないき
)
で
貴様
(
きさま
)
等
(
ら
)
の
木端鬼
(
こつぱおに
)
共
(
ども
)
を
中天
(
ちうてん
)
へ
捲
(
ま
)
き
上
(
あ
)
げるぞ』
121
丹州
(
たんしう
)
『
実
(
じつ
)
の
処
(
ところ
)
私
(
わたくし
)
は
真名井
(
まなゐ
)
ケ
原
(
はら
)
に
現
(
あ
)
れました
玉彦
(
たまひこ
)
と
申
(
まを
)
すもの、
122
あまり
悪神
(
あくがみ
)
が
跋扈
(
ばつこ
)
するので
豊国姫
(
とよくにひめ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
命令
(
めいれい
)
を
受
(
う
)
け、
123
小鬼
(
こおに
)
と
身
(
み
)
を
窶
(
やつ
)
し、
124
此
(
この
)
岩窟
(
がんくつ
)
に
紛
(
まぎ
)
れ
込
(
こ
)
み
悪魔
(
あくま
)
の
状勢
(
じやうせい
)
を
探
(
さぐ
)
つて
居
(
ゐ
)
たもので
御座
(
ござ
)
いますよ、
125
紫姫
(
むらさきひめ
)
様
(
さま
)
のお
伴
(
とも
)
になつた
二人
(
ふたり
)
の
僕
(
しもべ
)
は、
126
私
(
わたくし
)
の
計企
(
はからひ
)
で
或処
(
あるところ
)
に
大切
(
たいせつ
)
にして
隠
(
かく
)
して
置
(
お
)
きました、
127
やがてお
目
(
め
)
に
掛
(
か
)
けませう』
128
紫姫
(
むらさきひめ
)
『ホー、
129
其方
(
そなた
)
は
何
(
なん
)
と
仰有
(
おつしや
)
る、
130
あの
僕
(
しもべ
)
を
隠
(
かく
)
して
置
(
お
)
いたとな、
131
ソンナラ
何故
(
なぜ
)
二人
(
ふたり
)
の
着物
(
きもの
)
は
血塗泥
(
ちみどろ
)
になつて
居
(
を
)
つたのですか、
132
其
(
その
)
理由
(
わけ
)
を
聞
(
き
)
かして
下
(
くだ
)
さい』
133
丹州
(
たんしう
)
『アハヽヽヽ、
134
それは
此
(
この
)
丹州
(
たんしう
)
が
計企
(
はからひ
)
に
依
(
よ
)
つて
猪
(
しし
)
を
獲
(
と
)
つた
其
(
その
)
血
(
ち
)
で
着物
(
きもの
)
を
染
(
そ
)
め、
135
荒鷹
(
あらたか
)
、
136
鬼鷹
(
おにたか
)
の
大将
(
たいしやう
)
に「
此
(
この
)
通
(
とほ
)
り
嬲殺
(
なぶりごろ
)
しに
致
(
いた
)
しました」と
云
(
い
)
つて
見
(
み
)
せたのだ、
137
お
疑
(
うたが
)
ひとあらば
今
(
いま
)
お
目
(
め
)
に
掛
(
か
)
けませう』
138
紫姫
(
むらさきひめ
)
『
何卒
(
なにとぞ
)
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
会
(
あ
)
はして
下
(
くだ
)
さい』
139
丹州
(
たんしう
)
『オイ、
140
皆
(
みな
)
の
奴
(
やつ
)
、
141
何時
(
いつ
)
も
俺
(
わし
)
が
云
(
い
)
うて
聞
(
き
)
かしてある
通
(
とほ
)
り、
142
何
(
なに
)
も
彼
(
か
)
も、
143
服従
(
ふくじゆう
)
するだらうなア』
144
甲
(
かふ
)
乙
(
おつ
)
丙
(
へい
)
丁
(
てい
)
、
145
一度
(
いちど
)
に
頭
(
かしら
)
を
下
(
さ
)
げ、
146
甲乙丙丁
『ハイハイ、
147
承知
(
しようち
)
致
(
いた
)
しました』
148
丹州
(
たんしう
)
『ヨシヨシ、
149
それでこそ
俺
(
おれ
)
の
家来
(
けらい
)
だ、
150
サア
金州
(
きんしう
)
、
151
遠州
(
ゑんしう
)
の
両人
(
りやうにん
)
、
152
二人
(
ふたり
)
をこれへ
連
(
つ
)
れて
来
(
こ
)
い』
153
金州、遠州
『
畏
(
かしこ
)
まりました』
154
と
金
(
きん
)
、
155
遠
(
ゑん
)
の
二人
(
ふたり
)
は
急
(
いそ
)
いで
岩窟
(
がんくつ
)
の
彼方
(
あなた
)
に
姿
(
すがた
)
を
隠
(
かく
)
したるが、
156
暫時
(
しばらく
)
ありて
二人
(
ふたり
)
の
男
(
をとこ
)
を
伴
(
ともな
)
ひ
来
(
きた
)
り、
157
金州、遠州
『サア
親方
(
おやかた
)
、
158
二人
(
ふたり
)
のお
客
(
きやく
)
さまを
御
(
ご
)
案内
(
あんない
)
して
参
(
まゐ
)
りました』
159
紫姫
(
むらさきひめ
)
『ヤアお
前
(
まへ
)
は
鹿
(
しか
)
に
馬
(
うま
)
、
160
能
(
よ
)
うマア
無事
(
ぶじ
)
に
居
(
ゐ
)
て
下
(
くだ
)
さつたナア』
161
鹿
(
しか
)
、
162
馬
(
うま
)
一度
(
いちど
)
に
両手
(
りやうて
)
をつき
嬉
(
うれ
)
し
涙
(
なみだ
)
に
暮
(
く
)
れて
居
(
ゐ
)
る。
163
悦子姫
(
よしこひめ
)
『コレコレ
丹州
(
たんしう
)
様
(
さま
)
とやら、
164
其方
(
そなた
)
は
一目
(
ひとめ
)
見
(
み
)
た
時
(
とき
)
から
変
(
かは
)
つたお
方
(
かた
)
ぢやと
思
(
おも
)
つて
居
(
ゐ
)
ましたが、
165
豊国姫
(
とよくにひめ
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
命令
(
めいれい
)
で
御
(
お
)
越
(
こ
)
しになつたとは、
166
それは
真実
(
しんじつ
)
で
御座
(
ござ
)
いますか』
167
丹州
(
たんしう
)
『ハイハイ、
168
真実
(
しんじつ
)
も
真実
(
しんじつ
)
、
169
ずつと
正真
(
しやうしん
)
正銘
(
しやうめい
)
の
真実
(
しんじつ
)
で
御座
(
ござ
)
います』
170
加米彦
(
かめひこ
)
『
悦子姫
(
よしこひめ
)
さま、
171
音彦
(
おとひこ
)
さま、
172
何
(
なん
)
だか
勢
(
いきほひ
)
込
(
こ
)
ンで
岩窟
(
いはや
)
の
探険
(
たんけん
)
と
出
(
で
)
て
来
(
く
)
るは
来
(
き
)
たものの、
173
暗
(
くら
)
がりで
屁
(
へ
)
を
踏
(
ふ
)
ンだ
様
(
やう
)
な
話
(
はなし
)
ですな。
174
もうコンナ
処
(
ところ
)
は
張合
(
はりあひ
)
がないから
何処
(
どこ
)
か
抜
(
ぬ
)
け
道
(
みち
)
を
教
(
をし
)
へて
貰
(
もら
)
つて、
175
崎嶇
(
きく
)
たる
山道
(
やまみち
)
を
跋渉
(
ばつせふ
)
し
鬼
(
おに
)
ケ
城
(
じやう
)
へ
向
(
むか
)
つたら
何
(
ど
)
うでせう、
176
三五教
(
あななひけう
)
には
退却
(
たいきやく
)
の
二字
(
にじ
)
は
無
(
な
)
いから
元来
(
もとき
)
た
道
(
みち
)
に
引
(
ひ
)
き
返
(
かへ
)
す
事
(
こと
)
もならず、
177
何処
(
どこ
)
の
抜
(
ぬ
)
け
穴
(
あな
)
でも
見付
(
みつ
)
かつたら
脱出
(
だつしゆつ
)
するのですなア』
178
丹州
(
たんしう
)
『
此
(
この
)
岩窟
(
いはや
)
には
三ケ所
(
さんかしよ
)
も
抜
(
ぬ
)
け
穴
(
あな
)
があります、
179
一方
(
いつぱう
)
は
鬼
(
おに
)
ケ
城
(
じやう
)
へ
行
(
ゆ
)
く
道
(
みち
)
、
180
一方
(
いつぱう
)
は
大江山
(
おほえやま
)
へ
行
(
ゆ
)
く
道
(
みち
)
、
181
一方
(
いつぱう
)
は
谷
(
たに
)
へ
水
(
みづ
)
を
汲
(
く
)
みに
行
(
ゆ
)
く
抜
(
ぬ
)
け
穴
(
あな
)
、
182
何方
(
どちら
)
へ
御
(
ご
)
案内
(
あんない
)
を
致
(
いた
)
しませうか』
183
加米彦
(
かめひこ
)
『
同
(
おな
)
じ
事
(
こと
)
なら
鬼
(
おに
)
ケ
城
(
じやう
)
の
方
(
はう
)
へ
案内
(
あんない
)
して
下
(
くだ
)
さい』
184
丹州
(
たんしう
)
『
承知
(
しようち
)
致
(
いた
)
しました』
185
と
先
(
さき
)
に
立
(
た
)
ちドンと
突
(
つ
)
き
当
(
あた
)
つた
岩石
(
がんせき
)
を
片手
(
かたて
)
でグイと
押
(
お
)
す
途端
(
とたん
)
にガラリと
開
(
あ
)
いた。
186
見
(
み
)
れば
三嶽
(
みたけ
)
の
山頂
(
さんちやう
)
、
187
四方
(
しはう
)
八方
(
はつぱう
)
見晴
(
みは
)
らしのよき
場所
(
ばしよ
)
なりける。
188
加米彦
(
かめひこ
)
『サアもう
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
だ、
189
皆
(
みな
)
さま
此
(
この
)
風景
(
ふうけい
)
を
眺
(
なが
)
めて
一休
(
ひとやす
)
み
致
(
いた
)
しませうか、
190
紫姫
(
むらさきひめ
)
さまも
如何
(
どう
)
です、
191
一緒
(
いつしよ
)
にお
伴
(
とも
)
致
(
いた
)
しませう、
192
此
(
この
)
様
(
やう
)
な
岩窟
(
がんくつ
)
に
何時迄
(
いつまで
)
も
蟄居
(
ちつきよ
)
して
居
(
ゐ
)
ても
何
(
なん
)
の
楽
(
たの
)
しみもありますまい、
193
貴女
(
あなた
)
のお
好
(
す
)
きな
音彦
(
おとひこ
)
さまと、
194
ね……』
195
紫姫
(
むらさきひめ
)
『ホヽヽヽ』
196
と
袖
(
そで
)
で
顔
(
かほ
)
を
隠
(
かく
)
し
俯向
(
うつむ
)
く。
197
一同
(
いちどう
)
は
山上
(
さんじやう
)
の
風景
(
ふうけい
)
佳
(
よ
)
き
処
(
ところ
)
に
腰
(
こし
)
打
(
う
)
ち
下
(
お
)
ろし
四方
(
しはう
)
を
眺
(
なが
)
め
雑談
(
ざつだん
)
に
耽
(
ふけ
)
る。
198
折
(
をり
)
しも
西南
(
せいなん
)
の
天
(
てん
)
に
当
(
あた
)
り
一塊
(
いつくわい
)
の
黒雲
(
くろくも
)
現
(
あら
)
はれ、
199
見
(
み
)
る
見
(
み
)
る
拡大
(
くわくだい
)
して
満天
(
まんてん
)
墨
(
すみ
)
を
流
(
なが
)
せし
如
(
ごと
)
く
四方
(
しはう
)
暗黒
(
あんこく
)
に
包
(
つつ
)
まれ
咫尺
(
しせき
)
を
弁
(
べん
)
ぜざるに
立
(
た
)
ち
至
(
いた
)
りぬ。
200
身
(
み
)
をきる
許
(
ばか
)
りの
寒風
(
かんぷう
)
、
201
岩石
(
がんせき
)
を
飛
(
と
)
ばし、
202
樹木
(
じゆもく
)
も
倒
(
たふ
)
れよと
許
(
ばか
)
り
吹
(
ふ
)
きつけ
来
(
きた
)
る。
203
金州
(
きんしう
)
、
204
源州
(
げんしう
)
、
205
遠州
(
ゑんしう
)
、
206
播州
(
ばんしう
)
の
四
(
よ
)
人
(
にん
)
は『アツ』と
云
(
い
)
つたきり
風
(
かぜ
)
に
吹
(
ふ
)
き
捲
(
ま
)
くられて
暗
(
やみ
)
の
谷底
(
たにそこ
)
へ
姿
(
すがた
)
を
隠
(
かく
)
したり。
207
音彦
(
おとひこ
)
『ヤア
大変
(
たいへん
)
な
事
(
こと
)
になつて
来
(
き
)
たワイ、
208
八岐
(
やまた
)
の
大蛇
(
をろち
)
が
襲来
(
しふらい
)
し
相
(
さう
)
な
形勢
(
けいせい
)
が
現
(
あら
)
はれたぞ。
209
紫姫
(
むらさきひめ
)
さま、
210
私
(
わたくし
)
が
手
(
て
)
を
握
(
にぎ
)
つてあげませう、
211
愚図
(
ぐづ
)
々々
(
ぐづ
)
して
居
(
を
)
ると
吹
(
ふ
)
き
散
(
ち
)
らされて
了
(
しま
)
ひますよ。
212
ヤ、
213
加米彦
(
かめひこ
)
、
214
お
前
(
まへ
)
は
悦子姫
(
よしこひめ
)
さまの
保護
(
ほご
)
の
任
(
にん
)
に
当
(
あた
)
れ、
215
丹州
(
たんしう
)
、
216
お
前
(
まへ
)
は
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
だが
一人
(
ひとり
)
で
随
(
つ
)
いて
来
(
き
)
て
呉
(
く
)
れ』
217
丹州
(
たんしう
)
『ハイハイ、
218
委細
(
ゐさい
)
承知
(
しようち
)
致
(
いた
)
しました、
219
然
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら、
220
もう
暫時
(
しばらく
)
此処
(
ここ
)
に
休息
(
きうそく
)
しなさつたら
如何
(
どう
)
です、
221
之
(
これ
)
から
先
(
さき
)
は
大変
(
たいへん
)
な
断崖
(
だんがい
)
絶壁
(
ぜつぺき
)
、
222
暗
(
くら
)
がりに
踏
(
ふ
)
み
外
(
はづ
)
したら
大変
(
たいへん
)
です』
223
加米彦
(
かめひこ
)
『
何
(
なに
)
、
224
構
(
かま
)
うものかい、
225
何
(
ど
)
うなるも
斯
(
こ
)
うなるも
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
思召
(
おぼしめし
)
だ。
226
之
(
これ
)
ばかしの
風
(
かぜ
)
に
屁古垂
(
へこた
)
れて
宣伝使
(
せんでんし
)
が
勤
(
つと
)
まるか』
227
丹州
(
たんしう
)
『
偉
(
えら
)
い
馬力
(
ばりき
)
ですな、
228
然
(
しか
)
し
足許
(
あしもと
)
が
分
(
わか
)
りますか』
229
加米彦
(
かめひこ
)
『それや
一寸
(
ちよつと
)
分
(
わか
)
らないよ、
230
足
(
あし
)
に
目
(
め
)
が
無
(
な
)
いからなア』
231
黒雲
(
くろくも
)
は
左右
(
さいう
)
に
別
(
わか
)
れてヌツと
現
(
あら
)
はれた
巨大
(
きよだい
)
の
竜体
(
りゆうたい
)
、
232
中央
(
ちうあう
)
に
半身
(
はんしん
)
を
現
(
あら
)
はし
大口
(
おほぐち
)
を
開
(
ひら
)
き
五
(
ご
)
人
(
にん
)
の
頭上
(
づじやう
)
にブラ
下
(
さが
)
り、
233
一丈
(
いちぢやう
)
ばかりの
紅
(
あか
)
い
舌
(
した
)
を
出
(
だ
)
して
舐
(
なめ
)
かかる。
234
加米彦
(
かめひこ
)
『ヤア、
235
やりよつたな、
236
面白
(
おもしろ
)
い
面白
(
おもしろ
)
い、
237
オイ
八岐
(
やまた
)
の
大蛇
(
をろち
)
、
238
貴様
(
きさま
)
の
十八番
(
じふはちばん
)
はそれ
位
(
くらゐ
)
なものか、
239
それ
位
(
くらゐ
)
の
事
(
こと
)
で
吾々
(
われわれ
)
観客
(
くわんきやく
)
は「やんや」と
云
(
い
)
はないぞ、
240
もちつと
変
(
かは
)
つた
放
(
はな
)
れ
業
(
わざ
)
をやらないか、
241
一
(
ひと
)
二
(
ふた
)
三
(
み
)
四
(
よ
)
五
(
いつ
)
六
(
むゆ
)
七
(
なな
)
八
(
や
)
九
(
ここの
)
十
(
たり
)
百
(
もも
)
千
(
ち
)
万
(
よろづ
)
』
242
と
言霊
(
ことたま
)
の
発射
(
はつしや
)
に
大蛇
(
をろち
)
の
姿
(
すがた
)
はおひおひ
縮小
(
しゆくせう
)
し
遂
(
つひ
)
には
雲
(
くも
)
に
全身
(
ぜんしん
)
を
没
(
ぼつ
)
し
終
(
をは
)
りける。
243
加米彦
(
かめひこ
)
『アハヽヽヽ、
244
加米彦
(
かめひこ
)
さまの
言霊
(
ことたま
)
の
発射
(
はつしや
)
は
見事
(
みごと
)
なものだ、
245
ナア
音彦
(
おとひこ
)
さま、
246
此
(
この
)
神力
(
しんりき
)
には
流石
(
さすが
)
の
悦子姫
(
よしこひめ
)
さまも
御
(
ご
)
感服
(
かんぷく
)
遊
(
あそ
)
ばすだらう』
247
悦子姫
(
よしこひめ
)
『ホヽヽヽ、
248
加米
(
かめ
)
サン、
249
何故
(
なぜ
)
折角
(
せつかく
)
出
(
で
)
て
来
(
き
)
た
大蛇
(
をろち
)
を
去
(
い
)
なして
了
(
しま
)
つたの、
250
捕擒
(
とりこ
)
に
出来
(
でき
)
なかつたの』
251
加米彦
(
かめひこ
)
『エ、
252
荷物
(
にもつ
)
の
多
(
おほ
)
いのにあの
様
(
やう
)
な
嵩
(
かさ
)
の
高
(
たか
)
い、
253
不恰好
(
ぶかつかう
)
の
奴
(
やつ
)
を
荷物
(
にもつ
)
にした
処
(
ところ
)
が
棒
(
ぼう
)
にもならず、
254
杖
(
つゑ
)
にもならず、
255
帯
(
おび
)
には
短
(
みじか
)
し
襷
(
たすき
)
にや
長
(
なが
)
し、
256
邪魔
(
じやま
)
になるから
助
(
たす
)
けてやりました。
257
アハヽヽ、
258
東西
(
とうざい
)
々々
(
とうざい
)
、
259
只今
(
ただいま
)
の
芸当
(
げいたう
)
お
目
(
め
)
に
留
(
とど
)
まりますれば
次
(
つぎ
)
なる
芸当
(
げいたう
)
お
目
(
め
)
に
掛
(
か
)
けます』
260
音彦
(
おとひこ
)
『アハヽヽヽ、
261
陽気
(
やうき
)
な
男
(
をとこ
)
だな、
262
序
(
ついで
)
にモ
一
(
ひと
)
つ
立派
(
りつぱ
)
な
手品
(
てじな
)
を
見
(
み
)
せて
貰
(
もら
)
はうかい』
263
加米彦
(
かめひこ
)
『
八釜
(
やかま
)
しう
云
(
い
)
ふない、
264
今
(
いま
)
大蛇
(
をろち
)
の
奴
(
やつ
)
が
楽屋
(
がくや
)
で
厚化粧
(
あつげしやう
)
の
最中
(
さいちう
)
だ、
265
暫
(
しば
)
らく
待
(
ま
)
つて
下
(
くだ
)
さい、
266
今度
(
こんど
)
は
素敵
(
すてき
)
滅法界
(
めつぱふかい
)
の
代物
(
しろもの
)
をお
目
(
め
)
にぶら
下
(
さ
)
げます』
267
風
(
かぜ
)
はピタリと
止
(
や
)
み、
268
満天
(
まんてん
)
の
黒雲
(
くろくも
)
はさらりと
霽渡
(
はれわた
)
り、
269
日光
(
につくわう
)
は
晃々
(
くわうくわう
)
と
輝
(
かがや
)
き
始
(
はじ
)
めたり。
270
加米彦
(
かめひこ
)
『サアサア
天
(
あま
)
の
岩戸
(
いはと
)
開
(
びら
)
きと
御座
(
ござ
)
い、
271
皆
(
みな
)
さまお
目
(
め
)
に
留
(
と
)
まりますれば
拍手
(
はくしゆ
)
喝采
(
かつさい
)
の
代
(
かは
)
りに
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
して
下
(
くだ
)
さい』
272
茲
(
ここ
)
に
悦子姫
(
よしこひめ
)
、
273
音彦
(
おとひこ
)
、
274
加米彦
(
かめひこ
)
、
275
紫姫
(
むらさきひめ
)
、
276
丹州
(
たんしう
)
、
277
鹿公
(
しかこう
)
、
278
馬公
(
うまこう
)
の
一同
(
いちどう
)
は、
279
西天
(
せいてん
)
に
向
(
むか
)
ひ
両手
(
りやうて
)
を
合
(
あは
)
せ
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
し
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
謡
(
うた
)
ひ
終
(
をは
)
つて、
280
一行
(
いつかう
)
潔
(
いさぎよ
)
く
南
(
みなみ
)
を
指
(
さ
)
して
山伝
(
やまづた
)
ひ、
281
雲表
(
うんぺう
)
に
聳
(
そび
)
ゆる
鬼
(
おに
)
ケ
城
(
じやう
)
を
目蒐
(
めが
)
けて
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
282
(
大正一一・四・二三
旧三・二七
北村隆光
録)
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