霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
×
設定
URL:
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
話者名の追加表示 [?]セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。[×閉じる]
表示できる章
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
行間
ルビの表示


アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注[※]用語解説 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

脚注[*]編集用 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

外字の外周色 [?]一般のフォントに存在しない文字は専用の外字フォントを使用しています。目立つようにその文字の外周の色を変えます。[×閉じる]
現在のページには外字は使われていません

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。

第一三章 紫姫(むらさきひめ)〔六二四〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第17巻 如意宝珠 辰の巻 篇:第3篇 鬼ケ城山 よみ(新仮名遣い):おにがじょうざん
章:第13章 紫姫 よみ(新仮名遣い):むらさきひめ 通し章番号:624
口述日:1922(大正11)年04月23日(旧03月27日) 口述場所: 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年1月10日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
岩窟に入ると五六人の手下たちがいたが、加米彦の一喝で慌て出す。しかし手下の中の丹州という男が理屈をこねて加米彦に食ってかかる。
しかし丹州は実は自分は玉彦という者で、豊国姫命の命で小鬼となってバラモン教に潜入していた、という。そして、丹州はバラモン教の他の手下らを手なずけて、紫姫の二人の僕かくまっていた。衣に猪の血をつけて荒鷹・鬼鷹の目をごまかしていたのである。
丹州は二人の僕を他の手下に連れてこさせた。そして丹州は一行を鬼ケ城の方へ案内するが、三嶽山の山頂に出たところで一行は突風に煽られてしまう。
丹州が手なずけていた荒鷹・鬼鷹の手下らは、吹き飛ばされてしまった。雲の中から大蛇が舌を出して一行に襲い掛かるが、加米彦の言霊の発射で雲の中に逃げていく。
風はぴたりと止み、一同は天津祝詞と宣伝歌を唱和して、山伝いに鬼ケ城へと進んで行った。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2021-02-14 00:43:55 文字数:4135 OBC :rm1713
愛善世界社版:201頁 八幡書店版:第3輯 598頁 修補版: 校定版:207頁 普及版:89頁 初版: ページ備考:
001 細(ほそ)い暗(くら)い穴(あな)を腰(こし)を屈(かが)めて二三十(にさんじつ)間(けん)進(すす)んで行(ゆ)くと、002其処(そこ)に明(あか)りのさした稍(やや)広(ひろ)き隧道(すゐだう)が前方(ぜんぱう)に貫通(くわんつう)し居(ゐ)たり。
003紫姫(むらさきひめ)『サア之(これ)から天井(てんじやう)も高(たか)う御座(ござ)います、004何卒(どうぞ)お腰(こし)を伸(の)ばしてお歩(ある)き下(くだ)さいませ、005此(この)巌窟(がんくつ)は長(なが)さ三丁(さんちやう)許(ばか)り縦横(たてよこ)十文字(じふもんじ)に隧道(すゐだう)が穿(うが)たれ、006処々(ところどころ)に四角(しかく)い岩窟(いはや)の室(ま)が御座(ござ)います。007荒鷹(あらたか)、008鬼鷹(おにたか)の居(を)ります場所(ばしよ)は特(とく)に広(ひろ)く築(きづ)いてあります』
009加米彦(かめひこ)『ヤア益々(ますます)鬼(おに)の奴(やつ)、010洒落(しやれ)た事(こと)をやつて居(ゐ)よる哩(わい)、011鬼(おに)ケ城(じやう)へ行(い)つて不在中(ふざいちゆう)で安心(あんしん)な様(やう)なものだが、012若(も)しひよつと愚図(ぐづ)々々(ぐづ)して居(ゐ)ると中途(ちうと)に帰(かへ)つて来(き)よつて、013あの細(ほそ)い入口(いりぐち)をピツタリ塞(ふさ)ぎよるか但(ただし)は青松葉(あをまつば)でも燻(くす)べられたら、014それこそ大変(たいへん)だ、015良(い)い加減(かげん)に探険(たんけん)したら斯様(かやう)な危険(きけん)地帯(ちたい)は退却(たいきやく)するに限(かぎ)る、016ナア音彦(おとひこ)さま』
017音彦(おとひこ)『さうだなア、018一方口(いつぱうぐち)を塞(ふさ)がれては袋(ふくろ)の鼠(ねずみ)も同然(どうぜん)だ』
019紫姫(むらさきひめ)『イエイエ御(ご)心配(しんぱい)下(くだ)さいますな、020二ケ所(にかしよ)も三ケ所(さんかしよ)も非常口(ひじやうぐち)が開(あ)いて居(ゐ)ます、021妾(わたし)は能(よ)く承知(しようち)して居(を)りますから御(ご)安心(あんしん)して下(くだ)さい』
022加米彦(かめひこ)『アヽさうですか、023それなら安心(あんしん)だ』
024と紫姫(むらさきひめ)の後(あと)につき大手(おほて)を振(ふ)つて大股(おほまた)にフン張(ば)り行(ゆ)く。
025加米彦(かめひこ)『ヤア小鬼(こおに)共(ども)が沢山(たくさん)寝(ね)て居(ゐ)よるワ。026オイオイ、027小鬼(こおに)の奴(やつこ)、028起(お)きぬかい、029三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)悦子姫(よしこひめ)一行(いつかう)の御(ご)臨検(りんけん)だ、030サアサア之(これ)から簡閲(かんえつ)点呼(てんこ)の始(はじ)まり』
031 五六(ごろく)人(にん)の男(をとこ)吃驚(びつくり)して起(お)き上(あが)り、
032男『何方(どなた)さまか知(し)りませぬが生憎(あいにく)御(おん)大将(たいしやう)は御(ご)不在(ふざい)、033一向(いつかう)お構(かま)ひ出来(でき)ませぬ、034何卒(なにとぞ)悠々(ゆるゆる)とお休(やす)み下(くだ)さいませ』
035加米彦(かめひこ)『休(やす)めと云(い)はいでも休(やす)みてやる、036然(しか)し乍(なが)ら貴様(きさま)達(たち)は何(なん)の為(ため)に留守番(るすばん)を致(いた)して居(を)るのぢや、037鬼(おに)の上前(うはまへ)を越(こ)す音彦(おとひこ)や、038加米彦(かめひこ)がノソノソと奥深(おくふか)く進入(しんにふ)し、039此(この)岩窟(いはや)は最早(もはや)陥落(かんらく)より外(ほか)に道(みち)なき悲境(ひきやう)に立(た)ち到(いた)つて居(を)るのに、040大将(たいしやう)の留守(るす)を窺(うかが)ひ、041秘蔵(ひざう)の酒(さけ)に喰(くら)ひ酔(よ)ひ、042鱶(ふか)の様(やう)に愚助(ぐうすけ)八兵衛(はちべゑ)と前後(ぜんご)も知(し)らず寝(ね)て居(を)るとは不届(ふとど)き至極(しごく)な代物(しろもの)だ、043サア此(この)加米彦(かめひこ)が目(め)に留(と)まつた以上(いじやう)は容赦(ようしや)は致(いた)さぬ、044鬼鷹(おにたか)、045荒鷹(あらたか)の両人(りやうにん)になり代(かは)り、046今日(こんにち)只今(ただいま)より暇(ひま)を遣(つか)はす、047何(いづれ)へなりと勝手(かつて)に出(で)て行(ゆ)け』
048小鬼(こおに)『オイ丹州(たんしう)、049金州(きんしう)、050源州(げんしう)、051遠州(ゑんしう)、052播州(ばんしう)、053大変(たいへん)だぞ、054只今(ただいま)限(かぎ)り免職(めんしよく)だとえ』
055丹州(たんしう)『それだから酒(さけ)は飲(の)むな、056酒(さけ)を飲(の)んだら縮尻(しくじ)ると何時(いつ)も云(い)うとるのだ、057俺(おれ)もウラナイ教(けう)の黒姫(くろひめ)の児分(こぶん)になつて二三(にさん)年(ねん)随(つ)いて廻(まは)つて居(を)つたが、058三五教(あななひけう)には随分(ずゐぶん)偉(えら)い豪傑(がうけつ)が居(を)つて神変(しんぺん)不思議(ふしぎ)の術(じゆつ)を使(つか)ひ、059ドンナ処(ところ)へでも生命(いのち)構(かま)はずに出(で)て来(く)ると云(い)ふ事(こと)を云(い)つて居(を)つたが、060本当(ほんたう)に油断(ゆだん)のならぬ三五教(あななひけう)ぢや、061三五教(あななひけう)は穴(あな)が無(な)いのでコンナ鬼(おに)の穴(あな)まで探(さが)して取(と)りに来(く)るのだらうなア』
062加米彦(かめひこ)『コレコレ丹州(たんしう)とやら、063何(なに)を申(まを)す、064神妙(しんめう)に此(この)方(はう)の申(まを)す通(とほ)り退却(たいきやく)致(いた)さぬか』
065丹州(たんしう)『お前(まへ)は三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)ぢやないか、066ドンナ悪神(あくがみ)でも悪人(あくにん)でも鬼(おに)でも餓鬼(がき)でも虫族(むしけら)までも助(たす)けると云(い)ふお役(やく)だらう、067仮令(たとへ)吾々(われわれ)は鬼(おに)の乾児(こぶん)になつて居(を)つても、068元(もと)は天地(てんち)の大神(おほかみ)様(さま)の結構(けつこう)な御分霊(わけみたま)、069指一本(ゆびいつぽん)でも触(さ)へるなら触(さ)へて見(み)なさい、070天則(てんそく)違反(ゐはん)の大罪(だいざい)で根(ね)の国(くに)、071底(そこ)の国(くに)へ真逆(まつさか)様(さま)に落(おと)されますぞえ』
072加米彦(かめひこ)『アハヽヽヽ、073此奴(こいつ)、074仲々(なかなか)理屈(りくつ)を云(い)ひよる哩(わい)、075オイ丹州(たんしう)、076貴様(きさま)は何処(どこ)の出生(うまれ)ぢや』
077丹州(たんしう)『俺(おれ)かい、078俺(おれ)は云(い)はいでも定(きま)つた事(こと)ぢや、079国(くに)の生(うま)れだよ』
080加米彦(かめひこ)『国(くに)と云(い)つても沢山(たくさん)あるぢやないか、081何処(どこ)の国(くに)だ』
082丹州(たんしう)『エー、083頭脳(あたま)の悪(わる)い男(をとこ)だなア、084ソンナ事(こと)で宣伝使(せんでんし)が勤(つと)まるか、085丹波(たんば)の国(くに)に居(ゐ)て国(くに)の生(うま)れと云(い)へば丹波(たんば)に定(きま)つて居(ゐ)るではないか』
086加米彦(かめひこ)『アハヽヽヽ、087そうして丹波(たんば)の何処(どこ)だ』
088丹州(たんしう)『丹波(たんば)の三嶽山(みたけやま)ぢや』
089加米彦(かめひこ)『三嶽山(みたけやま)は定(きま)つて居(ゐ)る、090何(なん)と云(い)ふ村(むら)の何(なん)と云(い)ふ者(もの)から生(うま)れたのだ』
091丹州(たんしう)『生(うま)れた処(ところ)の村(むら)が分(わか)つたり、092親(おや)が判(わか)る様(やう)なら誰(たれ)がコンナ鬼(おに)の乾児(こぶん)になつて居(ゐ)るものかい、093お前(まへ)も余程(よつぽど)訳(わけ)の分(わか)らぬ事(こと)を云(い)ふものぢやな』
094音彦(おとひこ)『サアサア加米彦(かめひこ)、095早(はや)く探険(たんけん)と出掛(でか)け様(やう)ぢやないか、096愚図(ぐづ)々々(ぐづ)して居(ゐ)ると大将株(たいしやうかぶ)が帰(かへ)つて来(き)よるかも知(し)れないぞ』
097加米彦(かめひこ)『大将株(たいしやうかぶ)の帰(かへ)つて来(く)るのを待(ま)つて居(ゐ)るのだ、098盗賊(たうぞく)の親方(おやかた)の居(を)らぬ奴(やつこ)サン許(ばか)りの処(ところ)へ出(で)て来(き)て威張(ゐば)る訳(わけ)にも往(ゆ)かぬ、099張合(はりあひ)が抜(ぬ)けて困(こま)つて居(を)るのだ』
100丹州(たんしう)『モシモシ加米(かめ)サンとやら、101御(ご)心配(しんぱい)なさいますな。102最前(さいぜん)此(この)丹州(たんしう)が鬼(おに)ケ城(じやう)の方(はう)へ向(む)けて合図(あひづ)をして置(お)きました、103たつた今(いま)雲霞(うんか)の如(ごと)き勇将(ゆうしやう)猛卒(まうそつ)を引率(いんそつ)し、104鬼熊別(おにくまわけ)の御(おん)大将(たいしやう)、105旗鼓(きこ)堂々(だうだう)と此方(こなた)に向(むか)つて攻(せ)めて来(き)ますよ、106マアお前(まへ)さまも暫時(しばらく)の生命(いのち)だ、107ゆつくりと法螺(ほら)でも吹(ふ)いて刹那心(せつなしん)を楽(たの)しみなさい』
108加米彦(かめひこ)『ハツハヽヽヽ、109何(なに)を吐(ぬか)しよるのだい、110仮令(たとへ)悪神(あくがみ)の千匹(せんびき)や万匹(まんびき)、111やつて来(き)た処(ところ)で、112三五教(あななひけう)独特(どくとく)の神霊(しんれい)発射(はつしや)によつて忽(たちま)ち消滅(せうめつ)さしてやるのだ、113一(いち)時(じ)も早(はや)く攻(せ)め寄(よ)せて来(こ)ないかいなア、114アヽ待(ま)ち遠(どほ)しいワイ』
115丹州(たんしう)『アハヽヽヽ、116力(ちから)は何(ど)うだか知(し)らぬが随分(ずゐぶん)吹(ふ)きますな』
117加米彦(かめひこ)『きまつた事(こと)だよ、118二百十(にひやくとを)日(か)と綽名(あだな)を取(と)つた加米彦(かめひこ)だ、119まごまごして居(を)ると、120俺(おれ)の鼻息(はないき)で貴様(きさま)等(ら)の木端鬼(こつぱおに)共(ども)を中天(ちうてん)へ捲(ま)き上(あ)げるぞ』
121丹州(たんしう)『実(じつ)の処(ところ)私(わたくし)は真名井(まなゐ)ケ原(はら)に現(あ)れました玉彦(たまひこ)と申(まを)すもの、122あまり悪神(あくがみ)が跋扈(ばつこ)するので豊国姫(とよくにひめ)様(さま)の御(ご)命令(めいれい)を受(う)け、123小鬼(こおに)と身(み)を窶(やつ)し、124此(この)岩窟(がんくつ)に紛(まぎ)れ込(こ)み悪魔(あくま)の状勢(じやうせい)を探(さぐ)つて居(ゐ)たもので御座(ござ)いますよ、125紫姫(むらさきひめ)様(さま)のお伴(とも)になつた二人(ふたり)の僕(しもべ)は、126私(わたくし)の計企(はからひ)で或処(あるところ)に大切(たいせつ)にして隠(かく)して置(お)きました、127やがてお目(め)に掛(か)けませう』
128紫姫(むらさきひめ)『ホー、129其方(そなた)は何(なん)と仰有(おつしや)る、130あの僕(しもべ)を隠(かく)して置(お)いたとな、131ソンナラ何故(なぜ)二人(ふたり)の着物(きもの)は血塗泥(ちみどろ)になつて居(を)つたのですか、132其(その)理由(わけ)を聞(き)かして下(くだ)さい』
133丹州(たんしう)『アハヽヽヽ、134それは此(この)丹州(たんしう)が計企(はからひ)に依(よ)つて猪(しし)を獲(と)つた其(その)血(ち)で着物(きもの)を染(そ)め、135荒鷹(あらたか)、136鬼鷹(おにたか)の大将(たいしやう)に「此(この)通(とほ)り嬲殺(なぶりごろ)しに致(いた)しました」と云(い)つて見(み)せたのだ、137お疑(うたが)ひとあらば今(いま)お目(め)に掛(か)けませう』
138紫姫(むらさきひめ)『何卒(なにとぞ)一(いち)時(じ)も早(はや)く会(あ)はして下(くだ)さい』
139丹州(たんしう)『オイ、140皆(みな)の奴(やつ)、141何時(いつ)も俺(わし)が云(い)うて聞(き)かしてある通(とほ)り、142何(なに)も彼(か)も、143服従(ふくじゆう)するだらうなア』
144 甲(かふ)乙(おつ)丙(へい)丁(てい)、145一度(いちど)に頭(かしら)を下(さ)げ、
146甲乙丙丁『ハイハイ、147承知(しようち)致(いた)しました』
148丹州(たんしう)『ヨシヨシ、149それでこそ俺(おれ)の家来(けらい)だ、150サア金州(きんしう)、151遠州(ゑんしう)の両人(りやうにん)、152二人(ふたり)をこれへ連(つ)れて来(こ)い』
153金州、遠州『畏(かしこ)まりました』
154と金(きん)、155遠(ゑん)の二人(ふたり)は急(いそ)いで岩窟(がんくつ)の彼方(あなた)に姿(すがた)を隠(かく)したるが、156暫時(しばらく)ありて二人(ふたり)の男(をとこ)を伴(ともな)ひ来(きた)り、
157金州、遠州『サア親方(おやかた)、158二人(ふたり)のお客(きやく)さまを御(ご)案内(あんない)して参(まゐ)りました』
159紫姫(むらさきひめ)『ヤアお前(まへ)は鹿(しか)に馬(うま)、160能(よ)うマア無事(ぶじ)に居(ゐ)て下(くだ)さつたナア』
161 鹿(しか)、162馬(うま)一度(いちど)に両手(りやうて)をつき嬉(うれ)し涙(なみだ)に暮(く)れて居(ゐ)る。
163悦子姫(よしこひめ)『コレコレ丹州(たんしう)様(さま)とやら、164其方(そなた)は一目(ひとめ)見(み)た時(とき)から変(かは)つたお方(かた)ぢやと思(おも)つて居(ゐ)ましたが、165豊国姫(とよくにひめ)の神(かみ)様(さま)の御(ご)命令(めいれい)で御(お)越(こ)しになつたとは、166それは真実(しんじつ)で御座(ござ)いますか』
167丹州(たんしう)『ハイハイ、168真実(しんじつ)も真実(しんじつ)、169ずつと正真(しやうしん)正銘(しやうめい)の真実(しんじつ)で御座(ござ)います』
170加米彦(かめひこ)『悦子姫(よしこひめ)さま、171音彦(おとひこ)さま、172何(なん)だか勢(いきほひ)込(こ)ンで岩窟(いはや)の探険(たんけん)と出(で)て来(く)るは来(き)たものの、173暗(くら)がりで屁(へ)を踏(ふ)ンだ様(やう)な話(はなし)ですな。174もうコンナ処(ところ)は張合(はりあひ)がないから何処(どこ)か抜(ぬ)け道(みち)を教(をし)へて貰(もら)つて、175崎嶇(きく)たる山道(やまみち)を跋渉(ばつせふ)し鬼(おに)ケ城(じやう)へ向(むか)つたら何(ど)うでせう、176三五教(あななひけう)には退却(たいきやく)の二字(にじ)は無(な)いから元来(もとき)た道(みち)に引(ひ)き返(かへ)す事(こと)もならず、177何処(どこ)の抜(ぬ)け穴(あな)でも見付(みつ)かつたら脱出(だつしゆつ)するのですなア』
178丹州(たんしう)『此(この)岩窟(いはや)には三ケ所(さんかしよ)も抜(ぬ)け穴(あな)があります、179一方(いつぱう)は鬼(おに)ケ城(じやう)へ行(ゆ)く道(みち)、180一方(いつぱう)は大江山(おほえやま)へ行(ゆ)く道(みち)、181一方(いつぱう)は谷(たに)へ水(みづ)を汲(く)みに行(ゆ)く抜(ぬ)け穴(あな)、182何方(どちら)へ御(ご)案内(あんない)を致(いた)しませうか』
183加米彦(かめひこ)『同(おな)じ事(こと)なら鬼(おに)ケ城(じやう)の方(はう)へ案内(あんない)して下(くだ)さい』
184丹州(たんしう)『承知(しようち)致(いた)しました』
185と先(さき)に立(た)ちドンと突(つ)き当(あた)つた岩石(がんせき)を片手(かたて)でグイと押(お)す途端(とたん)にガラリと開(あ)いた。186見(み)れば三嶽(みたけ)の山頂(さんちやう)、187四方(しはう)八方(はつぱう)見晴(みは)らしのよき場所(ばしよ)なりける。
188加米彦(かめひこ)『サアもう大丈夫(だいぢやうぶ)だ、189皆(みな)さま此(この)風景(ふうけい)を眺(なが)めて一休(ひとやす)み致(いた)しませうか、190紫姫(むらさきひめ)さまも如何(どう)です、191一緒(いつしよ)にお伴(とも)致(いた)しませう、192此(この)様(やう)な岩窟(がんくつ)に何時迄(いつまで)も蟄居(ちつきよ)して居(ゐ)ても何(なん)の楽(たの)しみもありますまい、193貴女(あなた)のお好(す)きな音彦(おとひこ)さまと、194ね……』
195紫姫(むらさきひめ)『ホヽヽヽ』
196と袖(そで)で顔(かほ)を隠(かく)し俯向(うつむ)く。
197 一同(いちどう)は山上(さんじやう)の風景(ふうけい)佳(よ)き処(ところ)に腰(こし)打(う)ち下(お)ろし四方(しはう)を眺(なが)め雑談(ざつだん)に耽(ふけ)る。198折(をり)しも西南(せいなん)の天(てん)に当(あた)り一塊(いつくわい)の黒雲(くろくも)現(あら)はれ、199見(み)る見(み)る拡大(くわくだい)して満天(まんてん)墨(すみ)を流(なが)せし如(ごと)く四方(しはう)暗黒(あんこく)に包(つつ)まれ咫尺(しせき)を弁(べん)ぜざるに立(た)ち至(いた)りぬ。200身(み)をきる許(ばか)りの寒風(かんぷう)、201岩石(がんせき)を飛(と)ばし、202樹木(じゆもく)も倒(たふ)れよと許(ばか)り吹(ふ)きつけ来(きた)る。203金州(きんしう)、204源州(げんしう)、205遠州(ゑんしう)、206播州(ばんしう)の四(よ)人(にん)は『アツ』と云(い)つたきり風(かぜ)に吹(ふ)き捲(ま)くられて暗(やみ)の谷底(たにそこ)へ姿(すがた)を隠(かく)したり。
207音彦(おとひこ)『ヤア大変(たいへん)な事(こと)になつて来(き)たワイ、208八岐(やまた)の大蛇(をろち)が襲来(しふらい)し相(さう)な形勢(けいせい)が現(あら)はれたぞ。209紫姫(むらさきひめ)さま、210私(わたくし)が手(て)を握(にぎ)つてあげませう、211愚図(ぐづ)々々(ぐづ)して居(を)ると吹(ふ)き散(ち)らされて了(しま)ひますよ。212ヤ、213加米彦(かめひこ)、214お前(まへ)は悦子姫(よしこひめ)さまの保護(ほご)の任(にん)に当(あた)れ、215丹州(たんしう)、216お前(まへ)は御(ご)苦労(くらう)だが一人(ひとり)で随(つ)いて来(き)て呉(く)れ』
217丹州(たんしう)『ハイハイ、218委細(ゐさい)承知(しようち)致(いた)しました、219然(しか)し乍(なが)ら、220もう暫時(しばらく)此処(ここ)に休息(きうそく)しなさつたら如何(どう)です、221之(これ)から先(さき)は大変(たいへん)な断崖(だんがい)絶壁(ぜつぺき)、222暗(くら)がりに踏(ふ)み外(はづ)したら大変(たいへん)です』
223加米彦(かめひこ)『何(なに)、224構(かま)うものかい、225何(ど)うなるも斯(こ)うなるも神(かみ)様(さま)の思召(おぼしめし)だ。226之(これ)ばかしの風(かぜ)に屁古垂(へこた)れて宣伝使(せんでんし)が勤(つと)まるか』
227丹州(たんしう)『偉(えら)い馬力(ばりき)ですな、228然(しか)し足許(あしもと)が分(わか)りますか』
229加米彦(かめひこ)『それや一寸(ちよつと)分(わか)らないよ、230足(あし)に目(め)が無(な)いからなア』
231 黒雲(くろくも)は左右(さいう)に別(わか)れてヌツと現(あら)はれた巨大(きよだい)の竜体(りゆうたい)、232中央(ちうあう)に半身(はんしん)を現(あら)はし大口(おほぐち)を開(ひら)き五(ご)人(にん)の頭上(づじやう)にブラ下(さが)り、233一丈(いちぢやう)ばかりの紅(あか)い舌(した)を出(だ)して舐(なめ)かかる。
234加米彦(かめひこ)『ヤア、235やりよつたな、236面白(おもしろ)い面白(おもしろ)い、237オイ八岐(やまた)の大蛇(をろち)、238貴様(きさま)の十八番(じふはちばん)はそれ位(くらゐ)なものか、239それ位(くらゐ)の事(こと)で吾々(われわれ)観客(くわんきやく)は「やんや」と云(い)はないぞ、240もちつと変(かは)つた放(はな)れ業(わざ)をやらないか、241一(ひと)二(ふた)三(み)四(よ)五(いつ)六(むゆ)七(なな)八(や)九(ここの)十(たり)百(もも)千(ち)万(よろづ)』
242と言霊(ことたま)の発射(はつしや)に大蛇(をろち)の姿(すがた)はおひおひ縮小(しゆくせう)し遂(つひ)には雲(くも)に全身(ぜんしん)を没(ぼつ)し終(をは)りける。
243加米彦(かめひこ)『アハヽヽヽ、244加米彦(かめひこ)さまの言霊(ことたま)の発射(はつしや)は見事(みごと)なものだ、245ナア音彦(おとひこ)さま、246此(この)神力(しんりき)には流石(さすが)の悦子姫(よしこひめ)さまも御(ご)感服(かんぷく)遊(あそ)ばすだらう』
247悦子姫(よしこひめ)『ホヽヽヽ、248加米(かめ)サン、249何故(なぜ)折角(せつかく)出(で)て来(き)た大蛇(をろち)を去(い)なして了(しま)つたの、250捕擒(とりこ)に出来(でき)なかつたの』
251加米彦(かめひこ)『エ、252荷物(にもつ)の多(おほ)いのにあの様(やう)な嵩(かさ)の高(たか)い、253不恰好(ぶかつかう)の奴(やつ)を荷物(にもつ)にした処(ところ)が棒(ぼう)にもならず、254杖(つゑ)にもならず、255帯(おび)には短(みじか)し襷(たすき)にや長(なが)し、256邪魔(じやま)になるから助(たす)けてやりました。257アハヽヽ、258東西(とうざい)々々(とうざい)、259只今(ただいま)の芸当(げいたう)お目(め)に留(とど)まりますれば次(つぎ)なる芸当(げいたう)お目(め)に掛(か)けます』
260音彦(おとひこ)『アハヽヽヽ、261陽気(やうき)な男(をとこ)だな、262序(ついで)にモ一(ひと)つ立派(りつぱ)な手品(てじな)を見(み)せて貰(もら)はうかい』
263加米彦(かめひこ)『八釜(やかま)しう云(い)ふない、264今(いま)大蛇(をろち)の奴(やつ)が楽屋(がくや)で厚化粧(あつげしやう)の最中(さいちう)だ、265暫(しば)らく待(ま)つて下(くだ)さい、266今度(こんど)は素敵(すてき)滅法界(めつぱふかい)の代物(しろもの)をお目(め)にぶら下(さ)げます』
267 風(かぜ)はピタリと止(や)み、268満天(まんてん)の黒雲(くろくも)はさらりと霽渡(はれわた)り、269日光(につくわう)は晃々(くわうくわう)と輝(かがや)き始(はじ)めたり。
270加米彦(かめひこ)『サアサア天(あま)の岩戸(いはと)開(びら)きと御座(ござ)い、271皆(みな)さまお目(め)に留(と)まりますれば拍手(はくしゆ)喝采(かつさい)の代(かは)りに天津(あまつ)祝詞(のりと)を奏上(そうじやう)して下(くだ)さい』
272 茲(ここ)に悦子姫(よしこひめ)、273音彦(おとひこ)、274加米彦(かめひこ)、275紫姫(むらさきひめ)、276丹州(たんしう)、277鹿公(しかこう)、278馬公(うまこう)の一同(いちどう)は、279西天(せいてん)に向(むか)ひ両手(りやうて)を合(あは)せ天津(あまつ)祝詞(のりと)を奏上(そうじやう)し宣伝歌(せんでんか)を謡(うた)ひ終(をは)つて、280一行(いつかう)潔(いさぎよ)く南(みなみ)を指(さ)して山伝(やまづた)ひ、281雲表(うんぺう)に聳(そび)ゆる鬼(おに)ケ城(じやう)を目蒐(めが)けて進(すす)み行(ゆ)く。
282(大正一一・四・二三 旧三・二七 北村隆光録)
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【メールアドレス】
合言葉「みろく」を入力して下さい→