霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一七章 有終(いうしう)の美(び)〔六二八〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第17巻 如意宝珠 辰の巻 篇:第3篇 鬼ケ城山 よみ(新仮名遣い):おにがじょうざん
章:第17章 有終の美 よみ(新仮名遣い):ゆうしゅうのび 通し章番号:628
口述日:1922(大正11)年04月23日(旧03月27日) 口述場所: 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年1月10日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
常彦は、随所に滑稽をちりばめつつ、鬼熊別に降伏を促す宣伝歌を歌う。防戦の馬彦は、どっちの味方かわからない歌を歌い、攻撃側の加米彦に冷やかされる。
青彦が改心を促す宣伝歌を歌うと、それに応じて荒鷹が歌を返すが、その歌は、今まで自分が使えた鬼熊別・蜈蚣姫に改心を促す歌になっていた。
続いて音彦が宣伝歌を歌い、鬼鷹がそれに応じた。鬼鷹はこれまでの悪行を悔いて、瑞霊の恵みに立ち返るよう促す歌を歌い、天地に向かって合掌しつつ、嬉し涙を流しながらその場に倒れた。
鬼熊別の部下たちも、鬼鷹の歌に感激して大地にひれ伏した。続いて紫姫、悦子姫が宣伝歌を歌った。すると鬼ケ城の高殿から火煙が上がった。見ると、鬼熊別と蜈蚣姫は天の岩船に乗り込んで東方の天に逃げて行った。
敵味方の士卒たちは三五教万歳の声を張り上げた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2021-02-14 01:04:22 文字数:5903 OBC :rm1717
愛善世界社版:267頁 八幡書店版:第3輯 622頁 修補版: 校定版:275頁 普及版:119頁 初版: ページ備考:
001常彦(つねひこ)『世(よ)は常暗(とこやみ)と成(な)り果(は)てて
002鬼(おに)や大蛇(をろち)や曲津(まがつ)神(かみ)
003天(あめ)が下(した)をば横行(わうかう)し
004吹(ふ)き来(く)る風(かぜ)は腥(なまぐさ)く
005歎(なげ)き悲(かな)しむ人(ひと)の声(こゑ)
006鬼(おに)の棲(す)むてふ大江山(おほえやま)
007憂(うき)を三嶽(みたけ)の岩窟(いはやど)に
008鬼熊別(おにくまわけ)の片腕(かたうで)と
009誇(ほこ)り顔(がほ)なる鬼鷹(おにたか)や
010情(なさけ)容赦(ようしや)も荒鷹(あらたか)の
011爪(つめ)研(と)ぎすまし世(よ)の人(ひと)を
012見付(みつ)け次第(しだい)に引攫(ひつつか)み
013岩窟(いはや)の中(なか)へと連(つ)れ帰(かへ)り
014人(ひと)を悩(なや)ます曲津(まがつ)神(かみ)
015それさへあるに鬼(おに)ケ城(じやう)の
016数多(あまた)の部下(てした)を従(したが)へて
017天(あめ)が下(した)をば吾儘(わがまま)に
018振(ふ)る舞(ま)ひ暮(くら)す曲霊(まがみたま)
019鬼熊別(おにくまわけ)を始(はじ)めとし
020それに連(つ)れ添(そ)ふ蜈蚣姫(むかでひめ)
021数多(あまた)の魔神(まがみ)と諸共(もろとも)に
022バラモン教(けう)の教理(けうり)をば
023世人(よびと)欺(あざむ)く種(たね)となし
024男(をとこ)、女(をんな)の嫌(きら)ひなく
025暇(ひま)さへあれば引捕(ひつとら)へ
026己(おの)が棲処(すみか)へ連(つ)れ帰(かへ)り
027無理(むり)往生(わうじやう)に部下(ぶか)となし
028日(ひ)に日(ひ)にまさる頭数(あたまかず)
029烏合(うがふ)の衆(しう)を駆(か)り集(あつ)め
030世(よ)を驚(おどろ)かす空威張(からゐば)り
031山砦(とりで)は立派(りつぱ)に見(み)ゆれども
032その内実(ないじつ)は反比例(はんぴれい)
033風(かぜ)が吹(ふ)いてもガタガタと
034障子(しやうじ)は踊(をど)る戸(と)は叫(さけ)ぶ
035柱(はしら)はグキグキ泣(な)き出(いだ)す
036一寸(ちよつと)の風(かぜ)にも屋根(やね)の皮(かは)
037剥(む)けて忽(たちま)ち雨(あめ)が漏(も)る
038コンナ山砦(とりで)を偉相(えらさう)に
039難攻(なんこう)不落(ふらく)の鉄城(てつじやう)と
040誇(ほこ)る奴(やつ)等(ら)の気(き)が知(し)れぬ
041鼻(はな)の糞(くそ)にて的(まと)貼(は)つた
042様(やう)な要害(えうがい)何(なん)になる
043三五教(あななひけう)の言霊(ことたま)に
044忽(たちま)ち城(しろ)は滅茶(めちや)々々(めちや)に
045砕(くだ)けて逃(に)げ出(だ)す曲津(まがつ)共(ども)
046蜘蛛(くも)の子(こ)ちらす其(そ)の如(ごと)く
047四方(しはう)八方(はつぱう)に散乱(さんらん)し
048這(は)うて逃行(にげゆ)く可笑(をか)しさは
049他所(よそ)の見(み)る目(め)も哀(あは)れなり
050ドツコイ待(ま)つたそれや先(さき)ぢや
051今(いま)は鬼鷹(おにたか)荒鷹(あらたか)が
052死力(しりよく)を竭(つく)して防戦(ばうせん)の
053真最中(まつさいちう)のお気苦労(きぐらう)
054遥(はるか)に察(さつ)し奉(たてまつ)る
055もう良(よ)い加減(かげん)に我(が)を折(お)つて
056運(うん)の尽(つ)きたる此(この)城(しろ)を
057綺麗(きれい)薩張(さつぱり)引(ひ)き渡(わた)せ
058花(はな)も実(み)もある其(その)間(うち)に
059渡(わた)すが利巧(りかう)なやり方(かた)ぞ
060人(ひと)を助(たす)ける宣伝使(せんでんし)
061相互(たがひ)の為(ため)にならぬ様(やう)な
062下手(へた)な事(こと)をば申(まを)さない
063サアサア如何(どう)ぢや、さア如何(どう)ぢや
064返答(へんたふ)聞(き)かせ早(はや)う聞(き)かせ
065朝日(あさひ)は照(て)るとも曇(くも)るとも
066月(つき)は盈(み)つとも虧(か)くるとも
067仮令(たとへ)千(せん)年(ねん)かかるとも
068三五教(あななひけう)の言霊(ことたま)の
069続(つづ)く限(かぎ)りは攻(せ)めかける
070水攻(みづぜ)め火攻(ひぜ)めはまだ愚(おろか)
071地震(ぢしん)雷(かみなり)火(ひ)の車(くるま)
072大洪水(だいこうずゐ)は宵(よひ)の口(くち)
073それより怖(こは)ひ俺(おれ)の口(くち)
074口(くち)惜(を)しからうが我(が)を折(お)つて
075素直(すなほ)に降参(かうさん)するが良(よ)い
076宵(よひ)に企(たく)みた梟鳥(ふくろどり)
077夜食(やしよく)に外(はづ)れてつまらない
078顔(かほ)を見(み)るのが気(き)の毒(どく)ぢや
079此(この)世(よ)を造(つく)りし神直日(かむなほひ)
080心(こころ)も広(ひろ)き大直日(おほなほひ)
081只(ただ)何事(なにごと)も三五(あななひ)の
082神(かみ)の教(をしへ)の吾々(われわれ)は
083直日(なほひ)に見直(みなほ)し聞直(ききなほ)す
084深(ふか)き恵(めぐみ)に省(かへり)みて
085鬼熊別(おにくまわけ)の家来(けらい)ども
086胸(むね)の戸(と)開(ひら)いてさらさらと
087醜(しこ)の岩窟(いはや)を明(あ)け渡(わた)せ
088渡(わた)る浮世(うきよ)に鬼(おに)は無(な)い
089泣(な)いて暮(くら)すも一生(いつしやう)ぢや
090怒(おこ)つて暮(くら)すも一生(いつしやう)ぢや
091笑(わら)うて暮(くら)せ鬼(おに)ケ城(じやう)
092笑(わら)ふ門(かど)には福(ふく)が来(く)る
093鬼(おに)は仏(ほとけ)と早変(はやがは)り
094仏(ほとけ)は神(かみ)と出世(しゆつせ)する
095神(かみ)が表(おもて)に現(あら)はれて
096善(ぜん)と悪(あく)とを立(た)て別(わ)ける
097此(この)世(よ)の立替(たてかへ)立別(たてわけ)の
098出(で)て来(く)る迄(まで)に逸早(いちはや)く
099神(かみ)の御(おん)子(こ)と生(うま)れたる
100鬼熊別(おにくまわけ)の家来(けらい)共(ども)
101叶(かな)はぬ時(とき)の神頼(かみだの)み
102もう斯(か)うなつては百年目(ひやくねんめ)
103早(はや)く山砦(とりで)を明(あ)け渡(わた)せ
104此(この)常彦(つねひこ)が気(き)をつける
105アヽ惟神(かむながら)々々(かむながら)
106御霊(みたま)幸倍(さちはへ)坐世(ましませ)よ』
107夏彦(なつひこ)『何(なん)だ、108常彦(つねひこ)、109俺(おれ)の言霊(ことたま)を随分(ずゐぶん)冷(ひや)かしたが貴様(きさま)の言霊(ことたま)は何(なん)だ、110長(なが)い長(なが)い大蛇(だいじや)の様(やう)なぬるぬるとした、111蜒(くね)りさがした骨無(ほねな)し歌(うた)ぢやないか』
112常彦(つねひこ)『きまつた事(こと)だ、113先方(むかふ)が大蛇(をろち)の身魂(みたま)だから此方(こちら)もぬるぬると長(なが)く攻(せめ)かけたのだよ』
114加米彦(かめひこ)『何(なん)だか根(ね)つから能(よ)う分(わか)る言霊(ことたま)だつた、115之(これ)には流石(さすが)の鬼熊別(おにくまわけ)も胆(きも)を潰(つぶ)して腹(はら)を抱(かか)へて笑(わら)ひ転(こ)けるであらう、116アハヽヽヽ』
117 馬公(うまこう)は岩窟(いはや)の高欄(かうらん)の上(うへ)に立(た)ち、118怪(あや)しき身振(みぶ)りをし乍(なが)ら謡(うた)ひ初(はじ)めた。
119馬公『花(はな)の都(みやこ)を立(た)ち出(い)でて
120馬(うま)と鹿(しか)との二人(ふたり)連(づ)れ
121紫姫(むらさきひめ)のお伴(とも)して
122比沼(ひぬ)の真名井(まなゐ)に詣(まう)でむと
123遥々(はるばる)やつて来(き)た折(をり)に
124バラモン教(けう)の神(かみ)の子(こ)と
125現(あら)はれ出(い)でたる鬼鷹(おにたか)や
126心(こころ)の荒(あら)き荒鷹(あらたか)の
127二人(ふたり)の奴(やつ)にうまうまと
128口(くち)の車(くるま)に乗(の)せられて
129馬(うま)と鹿(しか)との両人(りやうにん)は
130馬鹿(ばか)にしられて三嶽山(みたけやま)
131岩窟(いはや)の中(なか)に放(ほ)りこまれ
132泣(な)いて怒(おこ)つて暮(くら)す中(うち)
133折(をり)も悦子(よしこ)のお姫(ひめ)さま
134音彦(おとひこ)さまや加米彦(かめひこ)の
135二人(ふたり)の取次(とりつぎ)従(したが)へて
136岩窟(いはや)の中(なか)に御(ご)入来(じうらい)
137折(をり)よく私(わたし)は助(たす)けられ
138忽(たちま)ち変(かは)る三五(あななひ)の
139神(かみ)の教(をしへ)の信徒(まめひと)と
140なつて嬉(うれ)しき今日(けふ)の日(ひ)は
141鬼(おに)の棲(す)まへる鬼(おに)ケ城(じやう)
142言霊戦(ことたません)に加(くは)はりて
143鬼熊別(おにくまわけ)の土手(どて)つ腹(ぱら)
144突(つ)いて突(つ)いて突(つ)き捲(まく)り
145オツトドツコイこら違(ちご)うた
146心(こころ)の裡(うち)は兎(と)も角(かく)も
147表(おもて)は矢張(やつぱり)鬼(おに)ケ城(じやう)
148鬼(おに)の味方(みかた)になり居(を)れと
149悦子(よしこ)の姫(ひめ)が仰有(おつしや)つた
150かねて定(さだ)めた八百長(やほちやう)の
151此(この)言霊(ことたま)の戦(たたか)ひに
152敵(てき)と味方(みかた)の区別(くべつ)なく
153言向(ことむ)け和(やは)し三五(あななひ)の
154神(かみ)の教(をしへ)を敷島(しきしま)の
155大和(やまと)島根(しまね)はまだ愚(おろか)
156豊葦原(とよあしはら)の瑞穂国(みづほくに)
157国(くに)の八十国(やそくに)八十(やそ)の島(しま)
158一度(いちど)に開(ひら)く梅(うめ)の花(はな)
159開(ひら)いてちりて実(み)を結(むす)ぶ
160結(むす)ぶ誠(まこと)の神(かみ)の縁(えん)
161鬼熊別(おにくまわけ)の大頭(おほあたま)
162お色(いろ)の黒(くろ)い蜈蚣姫(むかでひめ)
163一(いち)時(じ)も早(はや)く村肝(むらきも)の
164心(こころ)の鬼(おに)を追(お)ひ出(いだ)し
165神(かみ)に貰(もら)うた真心(まごころ)に
166早(はや)く復(かへ)つて下(くだ)されや
167馬公(うまこう)が一生(いつしやう)のお頼(たの)みぢや
168荒鷹(あらたか)改心(かいしん)するならば
169敵(てき)も味方(みかた)もありはせぬ
170天下(てんか)泰平(たいへい)無事(ぶじ)安穏(あんをん)
171千秋(せんしう)万歳(ばんざい)万々歳(ばんばんざい)
172散(ち)らぬ萎(しほ)れぬ花(はな)が咲(さ)く
173誠(まこと)一(ひと)つの神(かみ)の道(みち)
174朝日(あさひ)は照(て)るとも曇(くも)るとも
175月(つき)は盈(み)つとも虧(か)くるとも
176仮令(たとへ)大地(だいち)は沈(しづ)むとも
177神(かみ)のお道(みち)は変(かは)らない
178誠(まこと)の道(みち)は二(ふた)つない
179誠(まこと)一(ひと)つに立(た)ち復(かへ)り
180神(かみ)の光(ひかり)に照(てら)されて
181恵(めぐみ)の露(つゆ)に潤(うるほ)へよ
182鬼熊別(おにくまわけ)や蜈蚣姫(むかでひめ)
183三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)
184音彦(おとひこ)加米彦(かめひこ)青彦(あをひこ)よ
185お前(まへ)も一寸(ちよつと)我(が)が強(つよ)い
186序(ついで)に言霊(ことたま)放(はな)し置(お)く
187アヽ惟神(かむながら)々々(かむながら)
188霊(みたま)幸倍(さちはへ)坐世(ましませ)よ』
189鹿公(しかこう)『アハヽヽヽ、190オイ馬(うま)、191貴様(きさま)は何方(どちら)に向(むか)つて言霊戦(ことたません)をやつたのだ、192貴様(きさま)余程(よつぽど)筒井(つつゐ)式(しき)だな』
193馬公(うまこう)『きまつた事(こと)だ、194味方(みかた)をつついたり、195敵(てき)をつついたりするからつつい式(しき)だよ、196旗色(はたいろ)の良(よ)い方(はう)へつくのが当世(たうせい)の処世法(しよせいほふ)だ、197オツトドツコイ戦略(せんりやく)だよ、198ハヽヽヽ』
199 攻撃軍(こうげきぐん)の青彦(あをひこ)は敵城(てきじやう)に向(むか)ひ、200又(また)もや立(た)つて言霊(ことたま)の発射(はつしや)を開始(かいし)する。
201青彦『三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)
202誠(まこと)の道(みち)を宣(の)べ伝(つた)ふ
203神(かみ)の御子(みこ)たる青彦(あをひこ)が
204之(これ)の山砦(とりで)の司神(つかさがみ)
205鬼熊別(おにくまわけ)や蜈蚣姫(むかでひめ)
206二人(ふたり)の君(きみ)に物申(ものまを)す
207天(あめ)と地(つち)との其(その)中(なか)に
208生(いき)とし生(い)ける者(もの)皆(みな)は
209皇(すめ)大神(おほかみ)の珍(うづ)の御子(みこ)
210青人草(おほみたから)と称(たた)へられ
211神(かみ)の御業(みわざ)をそれぞれに
212御仕(みつか)へまつる者(もの)ぞかし
213汝(なれ)が命(みこと)も天地(あめつち)の
214神(かみ)の霊魂(みたま)を受(う)け給(たま)ひ
215此(この)世(よ)に生(あ)れし者(もの)なれば
216人(ひと)の憫(あは)れを顧(かへり)みて
217善(よし)と悪(あし)とを推(お)し量(はか)り
218世人(よびと)を救(すく)ふ其(その)為(た)めに
219誠(まこと)の道(みち)に立(た)ち復(かへ)れ
220それに従(したが)ふ人々(ひとびと)よ
221バラモン教(けう)の神(かみ)の教(のり)
222心(こころ)一(ひと)つに励(いそ)しみて
223仕(つか)へ給(たま)ふは良(よ)けれども
224神(かみ)の心(こころ)を取違(とりちが)へ
225知(し)らず識(し)らずの其(その)中(うち)に
226曲津(まがつ)の神(かみ)の容器(いれもの)と
227成(な)らせ給(たま)ひて天地(あめつち)の
228神(かみ)の御前(みまへ)に許々多久(ここたく)の
229罪(つみ)をば重(かさ)ね世(よ)を穢(けが)し
230根底(ねそこ)の国(くに)の苦(くるし)みを
231受(う)けさせ給(たま)ふ事(こと)あらば
232吾(われ)等(ら)はいかでか忍(しの)びむや
233天(てん)を父(ちち)とし地(ち)を母(はは)と
234仰(あふ)ぎ生(うま)れし人(ひと)の子(こ)は
235皆(みな)兄弟(はらから)よ姉妹(おとどひ)よ
236一日(ひとひ)も早(はや)く神直日(かむなほひ)
237心(こころ)も広(ひろ)き大直日(おほなほひ)
238神(かみ)の真道(まみち)に立復(たちかへ)り
239誠(まこと)の道(みち)にのりかへて
240今迄(いままで)尽(つく)せし曲業(まがわざ)を
241神(かみ)の御前(みまへ)に悔(く)い給(たま)へ
242三五教(あななひけう)は世(よ)を救(すく)ふ
243神(かみ)の誠(まこと)の言(こと)の葉(は)を
244四方(よも)に伝(つた)ふる天使(あまつかい)
245心(こころ)の耳(みみ)に安(やす)らかに
246吾(わが)言霊(ことたま)を聞(きこ)し召(め)せ
247アヽ惟神(かむながら)々々(かむながら)
248霊(みたま)幸倍(さちはへ)坐世(ましませ)よ』
249と声(こゑ)淑(しと)やかに謡(うた)ひ終(をは)つた。250荒鷹(あらたか)は又(また)もや立(た)ち上(あが)り青彦(あをひこ)に向(むか)つて、251言霊(ことたま)の砲弾(はうだん)を発射(はつしや)し始(はじ)めた。
252荒鷹『神(かみ)の恵(めぐみ)のあら尊(たふと)
253心(こころ)の荒(あら)き荒鷹(あらたか)も
254心(こころ)新(あらた)に立直(たてなほ)し
255世(よ)の荒浪(あらなみ)に掉(さをさ)して
256神(かみ)の助(たす)けの船(ふね)に乗(の)り
257心(こころ)改(あらた)め行(おこな)ひを
258改(あらた)め直(なほ)し世(よ)を広(ひろ)く
259神(かみ)の教(をしへ)を服(まつろ)ひて
260誠(まこと)の道(みち)を立(た)て徹(とほ)し
261バラモン教(けう)やウラナイの
262神(かみ)の教(をしへ)の長(ちやう)を採(と)り
263短(たん)をば捨(す)てて新玉(あらたま)の
264春(はる)立(た)ち返(かへ)る初(はじめ)より
265あな有難(ありがた)や三五(あななひ)の
266神(かみ)の教(をしへ)に身(み)を任(まか)せ
267心(こころ)の花(はな)も一時(ひととき)に
268開(ひら)いて薫(かほ)る梅(うめ)の花(はな)
269日(ひ)の出神(でのかみ)や木(こ)の花姫(はなひめ)の
270神(かみ)の命(みこと)に神習(かむなら)ひ
271野立(のだち)の彦(ひこ)や野立姫(のだちひめ)
272埴安彦(はにやすひこ)や埴安姫(はにやすひめ)の
273神(かみ)の命(みこと)の御心(みこころ)を
274うまらにつばらに推量(くみと)りて
275神(かむ)素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)の
276此(この)世(よ)を洗(あら)ふ瑞霊(みづみたま)
277厳(いづ)の霊(みたま)の御(おん)教(をしへ)
278身(み)もたなしらに励(いそ)しみて
279仕(つか)へ守(まも)るぞ嬉(うれ)しけれ
280鬼熊別(おにくまわけ)や蜈蚣姫(むかでひめ)
281今迄(いままで)仕(つか)へし荒鷹(あらたか)が
282今(いま)改(あらた)めて願(ね)ぎ申(まを)す
283汝(なんぢ)が尽(つく)せし許々多久(ここたく)の
284邪悪(よこさ)の道(みち)を今(いま)よりは
285改(あらた)めまして天地(あめつち)の
286神(かみ)の御言(みこと)を謹(つつし)みて
287朝(あさ)な夕(ゆふ)なに村肝(むらきも)の
288心(こころ)にかけて守(まも)りませ
289汝(なれ)が命(みこと)に真心(まごころ)を
290尽(つく)しまつるは荒鷹(あらたか)が
291清(きよ)き心(こころ)の表現(あらわれ)ぞ
292必(かなら)ず怒(いか)らせ給(たま)ふまじ
293回顧(かへりみ)すれば荒鷹(あらたか)が
294バラモン教(けう)に仕(つか)へてゆ
295早(は)や二十年(はたとせ)になりたれど
296天(あめ)と地(つち)との神々(かみがみ)や
297世(よ)の人々(ひとびと)の身(み)に対(たい)し
298一(ひと)つの功績(いさを)立(た)てしこと
299まだ荒鷹(あらたか)の身(み)の因果(いんぐわ)
300赦(ゆる)し給(たま)はれ天津(あまつ)神(かみ)
301国津(くにつ)神(かみ)等(たち)百(もも)の神(かみ)
302偏(ひとへ)に願(ねが)ひ奉(たてまつ)る
303アヽ惟神(かむながら)々々(かむながら)
304霊(みたま)幸倍(さちはへ)坐世(ましませ)よ』
305 荒鷹(あらたか)は斯(か)く謡(うた)ひ涙(なみだ)をはらはらと降(ふ)らし鬼熊別(おにくまわけ)、306蜈蚣姫(むかでひめ)の端坐(たんざ)せる高楼(たかどの)の前(まへ)に向(むか)つて合掌(がつしやう)したり。307三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)音彦(おとひこ)はすつくと立(た)ち敵城(てきじやう)に向(むか)ひ、308又(また)もや言霊(ことたま)の速射砲(そくしやはう)を差(さ)し向(む)けたり。309その歌(うた)、
310音彦『日本(にほん)の国(くに)は松(まつ)の国(くに)
311松(まつ)吹(ふ)く風(かぜ)の音彦(おとひこ)が
312音(おと)に名高(なだか)き鬼(おに)ケ城(じやう)
313司(つかさ)の神(かみ)と現(あ)れませる
314鬼熊別(おにくまわけ)の御(おん)前(まへ)に
315稜威(いづ)の言霊(ことたま)宣(の)り上(あ)げて
316清(きよ)き言(こと)の葉(は)宣(の)り伝(つた)ふ
317豊葦原(とよあしはら)の中津国(なかつくに)
318メソポタミヤの楽園(らくゑん)に
319教(をしへ)開(ひら)きしバラモンの
320鬼雲彦(おにくもひこ)が言(こと)の葉(は)は
321霊主(れいしゆ)体従(たいじう)の御(おん)教(をしへ)
322三五教(あななひけう)も其(その)通(とほ)り
323之(これ)亦(また)霊主(れいしゆ)体従(たいじう)を
324珍(うづ)の御旗(みはた)と押(お)し立(た)てて
325四方(よも)の草木(くさき)を靡(なび)かしつ
326天(あめ)が下(した)をば吹(ふ)き払(はら)ふ
327科戸(しなど)の風(かぜ)の神司(かむづかさ)
328松(まつ)に声(こゑ)あり立(た)つ波(なみ)の
329音彦(おとひこ)此処(ここ)に現(あら)はれて
330誠(まこと)の道(みち)を宣(の)べ伝(つた)ふ
331霊主(れいしゆ)体従(たいじう)と称(とな)へたる
332その名目(めいもく)は一(いつ)なれど
333内容(なかみ)は変(かは)る雪(ゆき)と墨(すみ)
334白(しろ)き黒(くろ)きも弁(わきま)へて
335汝(なれ)が命(みこと)は逸早(いちはや)く
336お伴(とも)の者(もの)と諸共(もろとも)に
337誠(まこと)の神(かみ)の開(ひら)きたる
338三五教(あななひけう)の御教(みをしへ)に
339一日(ひとひ)も早(はや)く片時(かたとき)も
340疾(と)く速(すむや)けくかへりませ
341元(もと)は天地(てんち)の分霊(わけみたま)
342天(あめ)が下(した)には敵(てき)も無(な)し
343相互(たがひ)に扶(たす)け助(たす)けられ
344睦(むつ)び親(した)しみ世(よ)の中(なか)に
345茂(しげ)り栄(さか)ゆる人(ひと)の道(みち)
346省(かへり)み給(たま)へ蜈蚣姫(むかでひめ)
347鬼熊別(おにくまわけ)の司神(つかさがみ)
348三五教(あななひけう)の音彦(おとひこ)が
349真心(まごころ)籠(こ)めて宣(の)り申(まを)す
350吾(わが)言霊(ことたま)の一(ひと)つだに
351汝(なれ)が命(みこと)の御(おん)耳(みみ)に
352響(ひび)き渡(わた)りて行(おこな)ひを
353直(なほ)させ給(たま)へば我(われ)として
354之(これ)に越(こ)えたる喜(よろこ)びは
355又(また)と世界(せかい)にあらざらめ
356アヽ惟神(かむながら)々々(かむながら)
357霊(たま)の復(かへ)しを待(ま)ち奉(まつ)る』
358と謡(うた)ひ終(をは)つて岩石(がんせき)の上(うへ)に腰(こし)を下(お)ろしたり。359鬼熊別(おにくまわけ)の片腕(かたうで)と聞(きこ)えたる鬼鷹(おにたか)は白扇(はくせん)を開(ひら)いて衝(つ)つ立(た)ち上(あが)り、360攻撃軍(こうげきぐん)に向(むか)ひ言霊(ことたま)の応戦(おうせん)を開始(かいし)したりけり。
361鬼鷹『神(かみ)の身魂(みたま)と生(あ)れ乍(なが)ら
362誠(まこと)の道(みち)を踏(ふ)み外(はづ)し
363心(こころ)汚(きたな)き鬼神(おにがみ)の
364醜(しこ)の曲津(まがつ)の群(むれ)に入(い)り
365日(ひ)に夜(よ)に募(つの)る許々多久(ここたく)の
366罪(つみ)や穢(けがれ)に包(つつ)まれて
367此(この)世(よ)からなる生地獄(いきぢごく)
368心(こころ)に鬼(おに)が棲(す)むのみか
369鬼雲彦(おにくもひこ)の曲津(まがつ)神(かみ)
370鬼熊別(おにくまわけ)や蜈蚣姫(むかでひめ)
371醜(しこ)の従僕(しもべ)となり果(は)てて
372名(な)も恐(おそ)ろしき鬼鷹(おにたか)と
373天地(てんち)の御子(みこ)と生(うま)れきて
374万(よろづ)の長(をさ)と名(な)を負(お)ひつ
375鬼(おに)畜生(ちくしやう)や鳥翼(とりつばさ)
376虫(むし)にも劣(おと)る醜魂(しこたま)の
377此(この)世(よ)を乱(みだ)す曲業(まがわざ)に
378心(こころ)砕(くだ)きし浅猿(あさま)しさ
379かかる汚(きた)なき吾(わが)身(み)にも
380慈愛(じあい)の深(ふか)き皇神(すめかみ)は
381恵(めぐみ)の鞭(むち)を鞭(う)たせつつ
382今日(けふ)は嬉(うれ)しき三五(あななひ)の
383神(かみ)の教(をしへ)に照(てら)されて
384心(こころ)も広(ひろ)く蓮花(はちすばな)
385薫(かほ)り床(ゆか)しき木(こ)の花(はな)の
386咲耶(さくや)の姫(ひめ)の御(おん)仰(あふ)せ
387日(ひ)の出神(でのかみ)の御(ご)神力(しんりき)
388千座(ちくら)の置戸(おきど)を負(お)ひ給(たま)ひ
389普(あまね)く世人(よびと)を救(すく)ひます
390神(かむ)素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)の
391瑞(みづ)の御霊(みたま)と現(あら)はれて
392身魂(みたま)も清(きよ)き神(かみ)の御子(みこ)
393神(かみ)も仏(ほとけ)もなき世(よ)かと
394日(ひ)に夜(よ)に胸(むね)を痛(いた)めしが
395時節(じせつ)待(ま)ちつる甲斐(かひ)ありて
396悪(あく)を斥(しりぞ)け善道(ぜんだう)に
397忽(たちま)ち復(かへ)る今日(けふ)の空(そら)
398霽(は)れゆく雪(ゆき)の跡(あと)見(み)れば
399三五(さんご)の月(つき)は皎々(かうかう)と
400己(おの)が頭(かうべ)を照(て)らしつつ
401恵(めぐみ)の露(つゆ)をたれ給(たま)ふ
402アヽ惟神(かむながら)々々(かむながら)
403御霊(みたま)幸倍(さちはへ)坐世(ましませ)よ
404仮令(たとへ)大地(だいち)は沈(しづ)むとも
405月日(げつじつ)西(にし)より昇(のぼ)るとも
406神(かみ)に誓(ちか)ひし吾(わが)心(こころ)
407幾世(いくよ)経(へ)ぬとも変(かは)らまじ
408変(かは)る浮世(うきよ)と云(い)ひ乍(なが)ら
409遠(とほ)き神代(かみよ)の昔(むかし)より
410誠(まこと)の道(みち)に変(かは)りなし
411アヽ尊(たふと)しや有難(ありがた)や
412三五教(あななひけう)の神(かみ)の教(のり)
413喜(よろこ)び仰(あふ)ぎ奉(たてまつ)る
414曲津(まがつ)の集(あつ)まる鬼(おに)ケ城(じやう)
415八岐(やまた)大蛇(をろち)の醜魂(しこみたま)
416八握(やつか)の剣(つるぎ)抜(ぬ)き持(も)たせ
417五百(いほ)美須麻琉(みすまる)の玉(たま)の緒(を)に
418神(かみ)の御水火(みいき)を結(むす)びつつ
419心(こころ)の鏡(かがみ)照(て)り渡(わた)る
420月照彦(つきてるひこ)の大神(おほかみ)や
421足真(だるま)の彦(ひこ)の大神(おほかみ)の
422伝(つた)へ給(たま)ひし御(おん)教(をしへ)
423埴安彦(はにやすひこ)や埴安姫(はにやすひめ)の
424神(かみ)の命(みこと)の現(あら)はれて
425織(お)り出(い)でませる経緯(たてよこ)の
426綾(あや)と錦(にしき)の神機(かみはた)を
427天津(あまつ)御風(みかぜ)に飜(ひるがへ)し
428山(やま)の尾(を)の上(へ)や河(かは)の瀬(せ)に
429荒(あら)ぶる百(もも)の神(かみ)等(たち)を
430草木(くさき)の風(かぜ)に靡(なび)く如(ごと)
431言向(ことむ)け和(やは)し皇神(すめかみ)の
432御水火(みいき)も清(きよ)く九(ここの)十(たり)
433十曜(とえう)の神紋(しんもん)中空(ちうくう)に
434靡(なび)かせ奉(まつ)り皇神(すめかみ)の
435御稜威(みいづ)を四方(よも)に輝(かがや)かし
436醜(しこ)の山砦(とりで)に進撃(しんげき)し
437太(ふと)き功績(いさを)を永久(とことは)に
438立(た)てて心(こころ)の真木柱(まきばしら)
439高天原(たかあまはら)に千木(ちぎ)高(たか)く
440仕(つか)へまつらむ吾(わが)心(こころ)
441アヽ惟神(かむながら)々々(かむながら)
442御霊(みたま)幸倍(さちはへ)坐世(ましませ)よ』
443と謡(うた)ひ終(をは)り、444天地(てんち)に向(むか)つて合掌(がつしやう)し嬉(うれ)し涙(なみだ)に咽(むせ)びつつ地上(ちじやう)にドツと打(う)ち倒(たふ)れたり。445鬼熊別(おにくまわけ)が幕下(ばくか)の者共(ものども)、446感激(かんげき)の涙(なみだ)にうたれ、447ものをも言(い)はず大地(だいち)に平伏(ひれふ)し、448落(お)つる涙(なみだ)に大地(だいち)を潤(うるほ)しける。449紫姫(むらさきひめ)は立(た)ち上(あが)り声(こゑ)淑(しと)やかに宣伝歌(せんでんか)を謡(うた)ひ初(はじ)めたり。
450紫姫『救(すく)ひの神(かみ)と現(あ)れませる
451厳(いづ)の御霊(みたま)や瑞御霊(みづみたま)
452天教山(てんけうざん)や地教山(ちけうざん)
453名(な)さへ目出度(めでた)き万寿山(まんじゆざん)
454霊鷲山(りやうしうざん)の三葉彦(みつばひこ)
455神(かみ)の命(みこと)の御教(みをしへ)は
456天地(あめつち)四方(よも)に拡(ひろ)ごりて
457世(よ)は永久(とこしへ)に開(ひら)け行(ゆ)く
458アヽ惟神(かむながら)々々(かむながら)
459御霊(みたま)幸(さち)はひ坐(ま)しまして
460醜(しこ)の魔風(まかぜ)も凪(な)ぎ渡(わた)り
461荒(あら)き波風(なみかぜ)鎮(をさ)まりて
462御代(みよ)は平(たひ)らに安(やす)らかに
463常磐(ときは)堅磐(かきは)の松(まつ)の世(よ)と
464治(をさ)め給(たま)ふぞ尊(たふと)けれ
465妾(われ)は都(みやこ)に現(あら)はれて
466紫姫(むらさきひめ)と名乗(なの)りつつ
467恋(こひ)しき父(ちち)に生(い)き別(わか)れ
468悲(かな)しき月日(つきひ)を送(おく)る内(うち)
469心(こころ)の色(いろ)も悦子姫(よしこひめ)
470嬉(うれ)しき便(たよ)りの音彦(おとひこ)や
471名(な)さへ目出度(めでた)き加米彦(かめひこ)の
472教(をしへ)の御子(みこ)に助(たす)けられ
473三五教(あななひけう)の御柱(みはしら)と
474仕(つか)へまつりし今日(けふ)こそは
475千代(ちよ)も八千代(やちよ)も忘(わす)られぬ
476生日(いくひ)足日(たるひ)と祝(いは)ひつつ
477心(こころ)に住(す)める曲津見(まがつみ)を
478禊(みそ)ぎ祓(はら)ひて真澄空(ますみぞら)
479三五(さんご)の月(つき)のいと円(まる)く
480神(かみ)の大道(おほぢ)を力(ちから)とし
481円(まる)く治(をさ)めむ神(かみ)の国(くに)
482アヽ有(あ)りがたや尊(たふと)しや
483三五教(あななひけう)の神(かみ)の恩(おん)
484千代(ちよ)に八千代(やちよ)に永久(とこしへ)に
485仕(つか)へまつりて忘(わす)れまじ
486アヽ惟神(かむながら)々々(かむながら)
487御霊(みたま)の幸(さち)を賜(たま)へかし
488アヽ惟神(かむながら)々々(かむながら)
489御霊(みたま)の幸(さち)を賜(たま)へかし』
490と謡(うた)ひ終(をは)り天地(てんち)に向(むか)つて恭(うやうや)しく拝礼(はいれい)したり。491三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)長(ちやう)悦子姫(よしこひめ)は立上(たちあが)り、492鬼熊別(おにくまわけ)の館(やかた)に向(むか)つて声(こゑ)を張上(はりあ)げ宣伝歌(せんでんか)を送(おく)りたり。
493悦子姫『天(あめ)の八重雲(やへくも)掻(か)き別(わ)けて
494天降(あも)りましたる皇神(すめかみ)の
495珍(うづ)の御(おん)子(こ)と現(あら)はれし
496神(かむ)素盞嗚(すさのを)の瑞霊(みづみたま)
497木花姫(このはなひめ)の生御霊(いくみたま)
498日(ひ)の出神(でのかみ)の厳霊(いづみたま)
499三五(さんご)の月(つき)の御教(みをしへ)を
500四方(よも)の国々(くにぐに)隈(くま)もなく
501月照彦(つきてるひこ)の大神(おほかみ)や
502金勝要(きんかつかね)の大御神(おほみかみ)
503従(したが)ひ給(たま)ふ八百万(やほよろづ)
504神(かみ)の使(つかい)の宣伝使(せんでんし)
505教(をしへ)を開(ひら)く八洲国(やしまぐに)
506誠(まこと)の道(みち)にさやりたる
507八岐(やまた)大蛇(をろち)や醜(しこ)の鬼(おに)
508醜(しこ)の狐(きつね)や曲神(まがかみ)の
509曇(くも)りし御魂(みたま)を照(てら)さむと
510心(こころ)を千々(ちぢ)に配(くば)りつつ
511霜(しも)の剣(つるぎ)や雪(ゆき)の空(そら)
512雨(あめ)の襖(ふすま)に包(つつ)まれて
513尾羽(をは)打(う)ち枯(か)らしシトシトと
514あてども無(な)しに進(すす)み行(ゆ)く
515教(をしへ)伝(つた)ふる宣伝使(せんでんし)
516夜(よ)な夜(よ)な変(かは)る石枕(いしまくら)
517草(くさ)の褥(しとね)に雪(ゆき)の夜着(よぎ)
518世人(よびと)の為(ため)に身(み)も窶(やつ)れ
519心(こころ)も疲(つか)れ山河(やまかは)を
520数(かず)限(かぎ)りなく渡(わた)り来(き)て
521曲津(まがつ)の神(かみ)にさいなまれ
522寒(さむ)さを凌(しの)ぎ飢(うゑ)、渇(かはき)
523心(こころ)を千々(ちぢ)に尽(つく)しつつ
524救(すく)ひの綱(つな)に操(あやつ)られ
525愈(いよいよ)此処(ここ)に鬼城山(きじやうざん)
526司(つかさ)の神(かみ)と現(あら)はれし
527鬼熊別(おにくまわけ)や蜈蚣姫(むかでひめ)
528永久(とは)の棲処(すみか)と聞(きこ)えたる
529魔窟(まくつ)の山(やま)に登(のぼ)り来(き)て
530宣(の)り足(た)らはれし言霊(ことたま)の
531稜威(いづ)の力(ちから)に許々多久(ここたく)の
532罪(つみ)や穢(けがれ)を吹(ふ)き払(はら)ひ
533祓(はら)ひ清(きよ)むる神(かみ)の道(みち)
534世(よ)は紫陽花(あぢさゐ)の変(かは)るとも
535色香(いろか)褪(あ)せざる兄(こ)の花(はな)の
536一度(いちど)に開(ひら)く神(かみ)の教(のり)
537宣(の)り伝(つた)へ行(ゆ)く楽(たの)しさよ
538アヽ惟神(かむながら)々々(かむながら)
539御霊(みたま)幸倍(さちはへ)坐世(ましませ)よ』
540と言葉(ことば)短(みじか)に謡(うた)ひ終(をは)れる折(をり)しも高殿(たかどの)より、541火煙(くわえん)濛々(もうもう)と立(た)ち昇(のぼ)り阿鼻(あび)叫喚(けうくわん)の声(こゑ)、542耳朶(じだ)を打(う)つ。543一同(いちどう)はハツと驚(おどろ)き見上(みあ)ぐる途端(とたん)に鬼熊別(おにくまわけ)、544蜈蚣姫(むかでひめ)の二人(ふたり)は高閣(かうかく)に納(をさ)めたりし天(あま)の岩船(いはふね)にひらりと飛(と)び乗(の)り、545プロペラの音(おと)轟々(ぐわうぐわう)と中空(ちうくう)を轟(とどろ)かせ乍(なが)ら東方(とうはう)の天(てん)を目蒐(めが)けて一目散(いちもくさん)に翔(かけ)り行(ゆ)く。546敵(てき)も味方(みかた)も一度(いちど)に声(こゑ)張上(はりあ)げて、
547一同『三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)、548万歳(ばんざい)々々(ばんざい)』
549と三唱(さんしやう)したりける。550此(この)声(こゑ)に驚(おどろ)き目覚(めざ)むれば瑞月(ずゐげつ)の身(み)は宮垣内(みやがいち)の賤(しづ)の伏屋(ふせや)に横(よこ)たわり、551枕許(まくらもと)には里鬼(さとおに)と綽名(あだな)を取(と)つた丸松(まるまつ)が、552真赤(まつか)な顔(かほ)をして二三(にさん)人(にん)の隣人(りんじん)と共(とも)に酒(さけ)をグビリグビリと傾(かたむ)け居(ゐ)たりける。
553(大正一一・四・二三 旧三・二七 北村隆光録)
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