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霊界物語
如意宝珠(第13~24巻)
第17巻(辰の巻)
序文
凡例
総説歌
第1篇 雪山幽谷
第1章 黄金の衣
第2章 魔の窟
第3章 生死不明
第4章 羽化登仙
第5章 誘惑婆
第6章 瑞の宝座
第2篇 千態万様
第7章 枯尾花
第8章 蚯蚓の囁
第9章 大逆転
第10章 四百種病
第11章 顕幽交通
第3篇 鬼ケ城山
第12章 花と花
第13章 紫姫
第14章 空谷の足音
第15章 敵味方
第16章 城攻
第17章 有終の美
霊の礎(三)
暁山雲(謡曲)
余白歌
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>
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第17巻(辰の巻)
> 第3篇 鬼ケ城山 > 第14章 空谷の足音
<<< 紫姫
(B)
(N)
敵味方 >>>
第一四章
空谷
(
くうこく
)
の
足音
(
そくいん
)
〔六二五〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第17巻 如意宝珠 辰の巻
篇:
第3篇 鬼ケ城山
よみ(新仮名遣い):
おにがじょうざん
章:
第14章 空谷の足音
よみ(新仮名遣い):
くうこくのそくいん
通し章番号:
625
口述日:
1922(大正11)年04月23日(旧03月27日)
口述場所:
筆録者:
東尾吉雄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年1月10日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
一方、青彦、夏彦、常彦は悦子姫らの後を追って、鬼ケ城に進んできた。しかし烈風に吹き煽られて、深い谷間に転落し、足腰を痛めて苦しんでいた。そこへ、宣伝歌の声が近づいて来る。
三人は滑稽なやり取りをひとしきり行い、四つ這いになって険しい崖を上った。そこでは、悦子姫一行が、各々雑談に耽っていた。
加米彦は、途中で姿が見えなくなった青彦の噂をし、丹波村のお節のところに行ったのではないか、と勘ぐっている。
そこへ木の中から青彦が登場して、一行は合流する。青彦は、ウラナイ教から夏彦、常彦を引き抜いた顛末を一同に話す。一行はここで夜を明かしてから鬼ケ城に進むこととして、野宿した。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2021-02-28 18:39:24
OBC :
rm1714
愛善世界社版:
212頁
八幡書店版:
第3輯 602頁
修補版:
校定版:
219頁
普及版:
95頁
初版:
ページ備考:
001
頃
(
ころ
)
しも
二
(
に
)
月
(
ぐわつ
)
十五
(
じふご
)
日
(
にち
)
002
東
(
あづま
)
の
空
(
そら
)
を
輝
(
かがや
)
かし
003
山
(
やま
)
の
端
(
は
)
出
(
い
)
づる
月影
(
つきかげ
)
に
004
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
005
色
(
いろ
)
青彦
(
あをひこ
)
の
神司
(
かむつかさ
)
は
006
夏彦
(
なつひこ
)
常彦
(
つねひこ
)
ともなひて
007
鬼
(
おに
)
ケ
城
(
じやう
)
山
(
ざん
)
に
立
(
た
)
て
籠
(
こも
)
る
008
八岐
(
やまた
)
大蛇
(
をろち
)
の
分霊
(
わけみたま
)
009
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
の
一類
(
いちるゐ
)
を
010
言向
(
ことむ
)
け
和
(
やは
)
し
皇神
(
すめかみ
)
の
011
恵
(
めぐ
)
みの
露
(
つゆ
)
に
救
(
すく
)
はむと
012
比沼
(
ひぬ
)
の
真名井
(
まなゐ
)
を
後
(
あと
)
にして
013
谷間
(
たにま
)
の
雪
(
ゆき
)
をみたけ
山
(
やま
)
014
川
(
かは
)
を
飛
(
と
)
び
越
(
こ
)
え
山
(
やま
)
の
尾
(
を
)
わたり
015
立出
(
たちい
)
でたまふ
悦子姫
(
よしこひめ
)
016
音彦
(
おとひこ
)
、
加米彦
(
かめひこ
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
が
017
あとを
尋
(
たづ
)
ねて
走
(
はし
)
り
来
(
く
)
る
018
見渡
(
みわた
)
す
限
(
かぎ
)
り
山
(
やま
)
と
山
(
やま
)
019
日
(
ひ
)
は
黄昏
(
たそがれ
)
に
近
(
ちか
)
づきて
020
塒
(
ねぐら
)
たづぬる
群烏
(
むらがらす
)
021
熊鷹
(
くまたか
)
、
鳶
(
とんび
)
、
百鳥
(
ももどり
)
の
022
各
(
おのおの
)
すみかへ
帰
(
かへ
)
り
行
(
ゆ
)
く
023
時
(
とき
)
しもあれや
忽然
(
こつぜん
)
と
024
吹
(
ふ
)
き
来
(
く
)
る
烈風
(
れつぷう
)
に
身
(
み
)
を
煽
(
あふ
)
られて
025
青彦
(
あをひこ
)
、
夏彦
(
なつひこ
)
、
常彦
(
つねひこ
)
は
026
深
(
ふか
)
き
谿間
(
たにま
)
に
転落
(
てんらく
)
し
027
足
(
あし
)
をいためつ
腰
(
こし
)
を
打
(
う
)
ち
028
苦
(
くる
)
しみ
悶
(
もだ
)
ゆる
折
(
をり
)
からに
029
遠音
(
とほね
)
に
聞
(
きこ
)
ゆる
宣伝歌
(
せんでんか
)
030
木霊
(
こだま
)
にひびきて
三
(
さん
)
人
(
にん
)
が
031
鼓膜
(
こまく
)
をかすめ
送
(
おく
)
り
来
(
く
)
る。
032
青彦
(
あをひこ
)
『アヽ
大変
(
たいへん
)
な
事
(
こと
)
であつたワイ。
033
レコード
破
(
やぶ
)
りの
烈風
(
れつぷう
)
に
吹
(
ふ
)
き
散
(
ち
)
らされ、
034
千仭
(
せんじん
)
の
谷間
(
たにま
)
に
陥落
(
かんらく
)
し
少々
(
せうせう
)
腰
(
こし
)
を
打
(
う
)
ち、
035
暫
(
しばら
)
くは
目
(
め
)
を
眩
(
まはか
)
して
居
(
ゐ
)
たが、
036
宣伝歌
(
せんでんか
)
の
声
(
こゑ
)
が
耳
(
みみ
)
に
微
(
かすか
)
にひびき、
037
これでどうやら
此方
(
こつち
)
のものらしい
気分
(
きぶん
)
がして
来
(
き
)
た。
038
夏彦
(
なつひこ
)
、
039
常彦
(
つねひこ
)
、
040
お
前
(
まへ
)
はどうだ。
041
何処
(
どこ
)
も
怪我
(
けが
)
は
無
(
な
)
かつたか』
042
夏彦
(
なつひこ
)
『
其処
(
そこ
)
ら
一面
(
いちめん
)
真暗
(
まつくら
)
がりになつて、
043
大蛇
(
をろち
)
の
奴
(
やつ
)
、
044
大空
(
おほぞら
)
から
大
(
おほ
)
きな
舌
(
した
)
を
出
(
だ
)
し、
045
中天
(
ちうてん
)
にぶら
下
(
さが
)
つた
時
(
とき
)
の
恐
(
おそ
)
ろしさ、
046
それから
後
(
あと
)
はどう
成
(
な
)
つたか、
047
一向
(
いつかう
)
覚
(
おぼ
)
えて
居
(
を
)
りませぬが、
048
どうやら
足
(
あし
)
を
挫
(
くじ
)
いたらしい。
049
踵
(
かかと
)
がキクキクと
痛
(
いた
)
み
出
(
だ
)
した。
050
一体
(
いつたい
)
此処
(
ここ
)
は
何処
(
どこ
)
でせうな』
051
青彦
(
あをひこ
)
『
此処
(
ここ
)
は
矢張
(
やつぱり
)
三嶽山
(
みたけやま
)
の
谷底
(
たにそこ
)
ぢや。
052
オイ
常彦
(
つねひこ
)
、
053
お
前
(
まへ
)
はどうぢや』
054
常彦
(
つねひこ
)
『いや
何
(
ど
)
うも
斯
(
こ
)
うも
有
(
あ
)
りませぬ
哩
(
わい
)
、
055
痛
(
いた
)
いと
云
(
い
)
つても、
056
苦
(
くる
)
しいと
云
(
い
)
つても、
057
コンナ
非道
(
ひど
)
い
目
(
め
)
にあふのなら、
058
矢張
(
やつぱり
)
黒姫
(
くろひめ
)
の
御用
(
ごよう
)
をきくのだつたに、
059
丹波村
(
たんばむら
)
で
別
(
わか
)
れた
時
(
とき
)
、
060
黒姫
(
くろひめ
)
の
奴
(
やつ
)
大
(
おほ
)
きな
目
(
め
)
をむきよつて、
061
嫌
(
いや
)
らしい
笑
(
わら
)
ひ
顔
(
がほ
)
をして
行
(
ゆ
)
きよつたが、
062
その
笑
(
わら
)
ひには
確
(
たし
)
かに
貴様
(
きさま
)
等
(
ら
)
俺
(
おれ
)
に
叛
(
そむ
)
くと、
063
谷底
(
たにそこ
)
へ
落
(
お
)
ちてエライ
目
(
め
)
に
会
(
あ
)
ふぞよといふ、
064
言
(
い
)
はず
語
(
かた
)
りの
色
(
いろ
)
が
見
(
み
)
えて
居
(
を
)
つた、
065
アーアー
膝節
(
ひざぶし
)
が
抜
(
ぬ
)
けた
様
(
やう
)
だ。
066
ウラナイ
教
(
けう
)
の
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
、
067
誠
(
まこと
)
に
心得
(
こころえ
)
違
(
ちが
)
ひを
致
(
いた
)
しました。
068
どうぞお
赦
(
ゆる
)
し
下
(
くだ
)
さいませ』
069
青彦
(
あをひこ
)
『アハヽヽヽ、
070
よう
精神
(
せいしん
)
の
動揺
(
どうえう
)
する
奴
(
やつ
)
ぢやなア、
071
貴様
(
きさま
)
の
信仰
(
しんかう
)
は、
072
砂上
(
さじやう
)
の
楼閣
(
ろうかく
)
、
073
風前
(
ふうぜん
)
の
灯火
(
ともしび
)
同様
(
どうやう
)
だ』
074
夏彦
(
なつひこ
)
『こいつは
風前
(
ふうぜん
)
の
灯火
(
ともしび
)
では
無
(
な
)
うて
風後
(
ふうご
)
の
変心
(
へんしん
)
ですよ。
075
アハヽヽヽ。
076
モシモシ
青彦
(
あをひこ
)
さま、
077
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝歌
(
せんでんか
)
が
益々
(
ますます
)
近寄
(
ちかよ
)
つて
来
(
く
)
るぢやありませぬか。
078
此方
(
こちら
)
から
一
(
ひと
)
つ
大
(
おほ
)
きな
声
(
こゑ
)
を
出
(
だ
)
して
合図
(
あひづ
)
をしたらどうでせう』
079
青彦
(
あをひこ
)
『あれは
確
(
たし
)
かに
悦子姫
(
よしこひめ
)
さまの
御
(
ご
)
一行
(
いつかう
)
らしい。
080
コンナ
谷底
(
たにそこ
)
へ
吹
(
ふ
)
き
飛
(
と
)
ばされ、
081
名自
(
めいめい
)
に
怪我
(
けが
)
をして
みつとも
ない。
082
自分
(
じぶん
)
の
怪我
(
けが
)
は
自分
(
じぶん
)
が
処置
(
しよち
)
せなくては
成
(
な
)
るまい。
083
卑怯
(
ひけふ
)
未練
(
みれん
)
にも
人
(
ひと
)
の
救
(
すく
)
ひを
求
(
もと
)
めるとは、
084
男子
(
だんし
)
の
恥
(
は
)
づ
可
(
べ
)
き
処
(
ところ
)
だ。
085
それよりも
此方
(
こちら
)
から
声
(
こゑ
)
を
尋
(
たづ
)
ねて
出
(
で
)
かけたらどうだ』
086
常彦
(
つねひこ
)
『
出
(
で
)
かけると
云
(
い
)
つた
処
(
ところ
)
で、
087
膝
(
ひざ
)
が
脱
(
ぬ
)
けて
了
(
しま
)
ひ、
088
コンパスの
使用
(
しよう
)
不可能
(
ふかのう
)
と
成
(
な
)
つて
居
(
ゐ
)
るのにどうして
歩
(
ある
)
けませうか』
089
夏彦
(
なつひこ
)
『
馬鹿
(
ばか
)
云
(
い
)
ふな、
090
俺
(
おれ
)
だつて
足
(
あし
)
は
痛
(
いた
)
い、
091
青彦
(
あをひこ
)
さまだつて
腰
(
こし
)
の
骨
(
ほね
)
を
挫
(
くじ
)
いて
御座
(
ござ
)
るのだ。
092
コンナ
処
(
ところ
)
で
弱音
(
よわね
)
を
吹
(
ふ
)
いて
耐
(
たま
)
るものかい。
093
何事
(
なにごと
)
も
精神
(
せいしん
)
で
勝
(
か
)
つのだ。
094
七
(
しち
)
尺
(
しやく
)
の
男子
(
だんし
)
が、
095
身体
(
からだ
)
の
一箇所
(
いつかしよ
)
や
二箇所
(
にかしよ
)
怪我
(
けが
)
したと
云
(
い
)
つて、
096
屁古垂
(
へこた
)
れるといふ
事
(
こと
)
が
有
(
あ
)
るものか。
097
蛙
(
かへる
)
や
蜥蜴
(
とかげ
)
を
見
(
み
)
い、
098
身体
(
からだ
)
の
半分
(
はんぶん
)
位
(
くらゐ
)
切
(
き
)
られても、
099
平気
(
へいき
)
でピヨコピヨコ
飛
(
と
)
ンで
居
(
ゐ
)
るではないか。
100
兎角
(
とかく
)
人間
(
にんげん
)
は
精神
(
せいしん
)
が
第一
(
だいいち
)
ぢや、
101
サアサア
行
(
ゆ
)
かう』
102
常彦
(
つねひこ
)
『ソンナ
事
(
こと
)
云
(
い
)
つたつて、
103
動
(
うご
)
かぬぢやないか』
104
夏彦
(
なつひこ
)
『
俺
(
おれ
)
の
様
(
やう
)
な
腰
(
こし
)
の
曲
(
まが
)
つた
中年寄
(
ちうとしより
)
が、
105
足
(
あし
)
を
怪我
(
けが
)
してもこれ
丈
(
だ
)
けの
元気
(
げんき
)
だ。
106
それに
何
(
なん
)
だ。
107
若
(
わか
)
い
屈強
(
くつきやう
)
盛
(
ざか
)
りの
身
(
み
)
を
以
(
もつ
)
て、
108
モウ
動
(
うご
)
かぬの
動
(
うご
)
けぬのと、
109
弱
(
よわ
)
い
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
ふない』
110
常彦
(
つねひこ
)
『ハヽヽヽ、
111
俺
(
おれ
)
は
天下
(
てんか
)
無双
(
むさう
)
の
豪傑
(
がうけつ
)
だ、
112
信仰心
(
しんかうしん
)
は
磐石
(
ばんじやく
)
の
如
(
ごと
)
く、
113
チツトも
動
(
うご
)
かぬ。
114
誠
(
まこと
)
生粋
(
きつすゐ
)
の
日本
(
やまと
)
魂
(
だましひ
)
だ。
115
如何
(
いか
)
なる
難局
(
なんきよく
)
にブツカツても
動揺
(
どうえう
)
しないと
云
(
い
)
ふ
代物
(
しろもの
)
だからな』
116
夏彦
(
なつひこ
)
『ヘン、
117
口
(
くち
)
許
(
ばか
)
り
黒姫
(
くろひめ
)
仕込
(
じこ
)
みだけあつて、
118
仰有
(
おつしや
)
います
哩
(
わい
)
。
119
貴様
(
きさま
)
の
信仰
(
しんかう
)
はガタガタ
震
(
ぶる
)
ひの
動揺
(
どうえう
)
震
(
ぶる
)
ひだが、
120
動
(
うご
)
かぬのは
親譲
(
おやゆづ
)
りの
交通
(
かうつう
)
機関
(
きくわん
)
許
(
ばか
)
りだらう。
121
グズグズ
吐
(
ぬか
)
すと
邪魔
(
じやま
)
臭
(
くさ
)
いから、
122
谷底
(
たにそこ
)
にホツトイてやるぞ。
123
サアサア
青彦
(
あをひこ
)
さま、
124
此奴
(
こいつ
)
は
矢張
(
やつぱり
)
黒姫党
(
くろひめたう
)
だ。
125
見捨
(
みす
)
てて
参
(
まゐ
)
りませうか』
126
青彦
(
あをひこ
)
『
常彦
(
つねひこ
)
さまの
足
(
あし
)
の
起
(
た
)
つやうに、
127
鎮魂
(
ちんこん
)
を
願
(
ねが
)
ひませうか』
128
夏彦
(
なつひこ
)
『イヤもう
結構
(
けつこう
)
、
129
コンナ
奴
(
やつ
)
に
鎮魂
(
ちんこん
)
して、
130
足
(
あし
)
でも
起
(
た
)
つたが
最後
(
さいご
)
、
131
又
(
また
)
もや
黒姫
(
くろひめ
)
の
処
(
ところ
)
へ
信仰
(
しんかう
)
逆転
(
ぎやくてん
)
旅行
(
りよかう
)
と
早変
(
はやがは
)
り、
132
膺懲
(
こらしめ
)
の
為
(
た
)
めに、
133
御
(
お
)
筆先
(
ふでさき
)
通
(
どほ
)
り、
134
改心
(
かいしん
)
致
(
いた
)
さぬと
谷底
(
たにそこ
)
へ
落
(
おと
)
すぞよ。
135
落
(
おと
)
して
行
(
ゆ
)
きませう』
136
常彦
(
つねひこ
)
『アハヽヽヽ、
137
嘘
(
うそ
)
だ
嘘
(
うそ
)
だ、
138
ドツコも
鵜
(
う
)
の
毛
(
け
)
で
突
(
つ
)
いた
程
(
ほど
)
も
怪我
(
けが
)
は
無
(
な
)
いのだよ。
139
完全
(
くわんぜん
)
無欠
(
むけつ
)
ネツトプライスの
完全体
(
くわんぜんたい
)
だ。
140
大
(
おほ
)
きに
色々
(
いろいろ
)
と
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
をかけました。
141
サアサア
参
(
まゐ
)
りませう、
142
お
二人
(
ふたり
)
のお
方
(
かた
)
、
143
私
(
わたくし
)
の
後
(
あと
)
に
跟
(
つ
)
いてうせやがれ』
144
夏彦
(
なつひこ
)
『ヤイ
常彦
(
つねひこ
)
、
145
俺
(
おれ
)
に
何程
(
なにほど
)
汚
(
きたな
)
い
言葉
(
ことば
)
を
使
(
つか
)
うても、
146
友達
(
ともだち
)
の
仲
(
なか
)
だから
構
(
かま
)
はないが、
147
ソンナ
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
うと、
148
青彦
(
あをひこ
)
さまに
御
(
ご
)
無礼
(
ぶれい
)
ぢやぞ。
149
速
(
すみや
)
かに
宣
(
の
)
り
直
(
なほ
)
さぬかい』
150
常彦
(
つねひこ
)
『
初
(
はじ
)
めのは
青彦
(
あをひこ
)
さまに
対
(
たい
)
して
御
(
ご
)
叮嚀
(
ていねい
)
に
申上
(
まをしあ
)
げたのだ。
151
跟
(
つ
)
いてうせやがれと
言
(
い
)
うたのは
御
(
ご
)
註文
(
ちうもん
)
通
(
どほ
)
り
貴様
(
きさま
)
に
言
(
い
)
つたのだ。
152
アハヽヽヽ』
153
夏彦
(
なつひこ
)
『
俺
(
おれ
)
もお
蔭
(
かげ
)
で
蚤
(
のみ
)
が
喰
(
く
)
た
程
(
ほど
)
も
怪我
(
けが
)
は
無
(
な
)
い。
154
大
(
おほ
)
きに
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
をかけました』
155
青彦
(
あをひこ
)
『アヽ
私
(
わたくし
)
も
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
だ。
156
サアサア
行
(
ゆ
)
かう』
157
常彦
(
つねひこ
)
『モシモシ
青彦
(
あをひこ
)
さま、
158
貴方
(
あなた
)
最前
(
さいぜん
)
、
159
腰
(
こし
)
が
抜
(
ぬ
)
けたと
仰有
(
おつしや
)
つたぢや
有
(
あ
)
りませぬか。
160
あれは
嘘
(
うそ
)
でしたか。
161
宣伝使
(
せんでんし
)
たるものが、
162
仮
(
か
)
りにも
嘘
(
うそ
)
を
吐
(
つ
)
いて
良
(
よ
)
いのですか』
163
青彦
(
あをひこ
)
『
腰
(
こし
)
が
抜
(
ぬ
)
けかけたと
言
(
い
)
うたのは、
164
常彦
(
つねひこ
)
さまの
信仰
(
しんかう
)
の
腰
(
こし
)
が
抜
(
ぬ
)
けさうだと
言
(
い
)
つたのだよ。
165
まかり
違
(
ちが
)
へばまたもやウラナイ
教
(
けう
)
に
逆転
(
ぎやくてん
)
する
処
(
ところ
)
でしたね』
166
常彦
(
つねひこ
)
『
三五教
(
あななひけう
)
に
入信
(
はい
)
つてから、
167
三嶽山
(
みたけやま
)
の
吹
(
ふ
)
き
放
(
はな
)
しを
歩
(
ある
)
いて
居
(
を
)
つた
時
(
とき
)
、
168
大変
(
たいへん
)
な
大風
(
おほかぜ
)
、
169
脚下
(
あしもと
)
はヨロヨロ、
170
両方
(
りやうはう
)
は
千仭
(
せんじん
)
の
谷間
(
たにま
)
、
171
これやテツキリ
三五教
(
あななひけう
)
ぢやない、
172
アブナイ
教
(
けう
)
ぢやと
思
(
おも
)
つて、
173
怖々
(
こわごわ
)
歩
(
ある
)
いて
居
(
ゐ
)
ると、
174
忽
(
たちま
)
ち
一陣
(
いちぢん
)
の
烈風
(
れつぷう
)
に
吹
(
ふ
)
き
捲
(
まく
)
られ、
175
空中
(
くうちう
)
を
幾回
(
いくくわい
)
となく
逆転
(
ぎやくてん
)
して
遂
(
つひ
)
にこの
谷底
(
たにそこ
)
へ
無事
(
ぶじ
)
着陸
(
ちやくりく
)
、
176
これ
丈
(
だ
)
け
逆転
(
ぎやくてん
)
の
修行
(
しうぎやう
)
をすれば、
177
モウ
此
(
この
)
上
(
うへ
)
は
逆転
(
ぎやくてん
)
も
懲
(
こ
)
り
懲
(
こ
)
りです。
178
御
(
ご
)
安心
(
あんしん
)
して
下
(
くだ
)
さいませ』
179
夏彦
(
なつひこ
)
『
常彦
(
つねひこ
)
の
安心
(
あんしん
)
して
呉
(
く
)
れも
可
(
い
)
い
加減
(
かげん
)
なものだ。
180
常平常
(
つねへいぜい
)
から
心
(
こころ
)
の
定
(
きま
)
らぬ
奴
(
やつ
)
で、
181
狐
(
きつね
)
の
様
(
やう
)
に
嘘
(
うそ
)
許
(
ばか
)
り
言
(
い
)
ふから、
182
同僚間
(
どうれうかん
)
から、
183
彼奴
(
あいつ
)
は
狐彦
(
きつねひこ
)
だと
言
(
い
)
つて
居
(
ゐ
)
るのを
知
(
し
)
らぬのか』
184
常彦
(
つねひこ
)
『
狐彦
(
きつねひこ
)
でも
狸彦
(
たぬきひこ
)
でも、
185
お
構
(
かま
)
ひ
御
(
ご
)
無用
(
むよう
)
、
186
サアサア
狐彦
(
きつねひこ
)
は
山中
(
さんちう
)
は
勝手
(
かつて
)
をよく
知
(
し
)
つて
居
(
を
)
ります。
187
狐
(
きつね
)
の
後
(
あと
)
から
馬
(
うま
)
が
来
(
く
)
るのだよ』
188
青彦
(
あをひこ
)
『アハヽヽヽ』
189
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
月夜
(
つきよ
)
を
幸
(
さいは
)
ひ、
190
四
(
よ
)
ツ
這
(
ば
)
ひに
成
(
な
)
つて
嶮
(
けは
)
しき
山腹
(
さんぷく
)
を
駆
(
か
)
け
登
(
のぼ
)
る。
191
こちらには
悦子姫
(
よしこひめ
)
の
一行
(
いつかう
)
、
192
皎々
(
かうかう
)
たる
満月
(
まんげつ
)
を
眺
(
なが
)
め、
193
山上
(
さんじやう
)
の
岩
(
いは
)
に
各
(
おのおの
)
腰
(
こし
)
打
(
う
)
ち
掛
(
か
)
け、
194
雑談
(
ざつだん
)
に
耽
(
ふけ
)
り
居
(
ゐ
)
る。
195
音彦
(
おとひこ
)
『
今日
(
けふ
)
の
暴風
(
ばうふう
)
といつたら
何
(
ど
)
うだらう、
196
真黒
(
まつくろ
)
けの
雲
(
くも
)
の
中
(
なか
)
より、
197
大蛇
(
をろち
)
の
奴
(
やつ
)
、
198
乙
(
おつ
)
な
芸当
(
げいたう
)
を
演
(
えん
)
じやがる。
199
風
(
かぜ
)
は
吹
(
ふ
)
いて
吹
(
ふ
)
いて
吹
(
ふ
)
き
捲
(
ま
)
くる。
200
イヤもう
落花
(
らくくわ
)
狼藉
(
らうぜき
)
、
201
修羅道
(
しゆらだう
)
の
旅行
(
りよかう
)
のやうだつたね。
202
加米彦
(
かめひこ
)
が
二百十
(
にひやくとを
)
日
(
か
)
だなぞと、
203
大風呂敷
(
おほぶろしき
)
を
拡
(
ひろ
)
げるものだから、
204
アンナ
事
(
こと
)
が
突発
(
とつぱつ
)
したのでせう。
205
何事
(
なにごと
)
も
言霊
(
ことたま
)
の
幸
(
さちは
)
ふ
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
、
206
言霊
(
ことたま
)
は
慎
(
つつし
)
まねばなりませぬなア』
207
悦子姫
(
よしこひめ
)
『さうですとも、
208
言霊
(
ことたま
)
の
天照
(
あまて
)
る
国
(
くに
)
、
209
言霊
(
ことたま
)
の
助
(
たす
)
くる
国
(
くに
)
、
210
言霊
(
ことたま
)
の
生
(
いけ
)
る
国
(
くに
)
ですもの』
211
加米彦
(
かめひこ
)
『ヤア
悦子姫
(
よしこひめ
)
さま
有難
(
ありがた
)
う。
212
只今
(
ただいま
)
限
(
かぎ
)
り、
213
悪
(
あく
)
の
言霊
(
ことたま
)
に
停電
(
ていでん
)
を
命
(
めい
)
じます。
214
どうぞ
今日
(
けふ
)
のところ
見直
(
みなほ
)
して
下
(
くだ
)
さいませ。
215
それについても
青彦
(
あをひこ
)
はどうして
居
(
を
)
るのだらう。
216
三嶽山
(
みたけやま
)
の
登
(
のぼ
)
り
口
(
ぐち
)
まで
跟
(
つ
)
いて
来
(
き
)
よつたが、
217
林
(
はやし
)
の
中
(
なか
)
へ
小便
(
こよう
)
にでも
行
(
ゆ
)
くやうな
顔
(
かほ
)
をして、
218
それきり
姿
(
すがた
)
を
見
(
み
)
せぬぢやありませぬか。
219
大方
(
おほかた
)
丹波村
(
たんばむら
)
のお
節
(
せつ
)
さまの
処
(
ところ
)
へでも
往
(
い
)
つたのぢや
有
(
あ
)
るまいかなア。
220
青彦
(
あをひこ
)
は
此
(
こ
)
の
間
(
あひだ
)
、
221
真名井
(
まなゐ
)
ケ
原
(
はら
)
の
珍
(
うづ
)
の
宝座
(
ほうざ
)
の
前
(
まへ
)
で、
222
お
節
(
せつ
)
の
顔
(
かほ
)
を
穴
(
あな
)
のあく
程
(
ほど
)
眺
(
なが
)
めて
居
(
ゐ
)
た。
223
さうしてお
節
(
せつ
)
さまは
良
(
い
)
い
女
(
をんな
)
だ、
224
良
(
い
)
い
女
(
をんな
)
だと、
225
口癖
(
くちぐせ
)
のやうに
執着心
(
しふちやくしん
)
を
発揮
(
はつき
)
して
居
(
ゐ
)
たから、
226
大方
(
おほかた
)
今頃
(
いまごろ
)
は、
227
お
節
(
せつ
)
の
膝
(
ひざ
)
を
枕
(
まくら
)
に、
228
夜中
(
やちう
)
の
夢
(
ゆめ
)
でも
見
(
み
)
て
居
(
ゐ
)
るのでせう』
229
音彦
(
おとひこ
)
『ナニ、
230
ソンナ
事
(
こと
)
が
有
(
あ
)
るものか。
231
深山
(
しんざん
)
の
事
(
こと
)
だから、
232
吾々
(
われわれ
)
一行
(
いつかう
)
の
姿
(
すがた
)
を
見失
(
みうしな
)
ひ、
233
迷
(
まよ
)
うて
居
(
ゐ
)
るのかも
知
(
し
)
れない。
234
都合
(
つがふ
)
に
依
(
よ
)
れば、
235
吾々
(
われわれ
)
よりも
先
(
さき
)
に
行
(
い
)
つて
居
(
を
)
るかも
分
(
わか
)
らない。
236
さう
断定
(
だんてい
)
的
(
てき
)
判断
(
はんだん
)
を
下
(
くだ
)
すものぢやないよ』
237
加米彦
(
かめひこ
)
『
貧乏人
(
びんばふにん
)
の
材木屋
(
ざいもくや
)
だ。
238
ワルぎを
廻
(
まは
)
すのだ。
239
アハヽヽヽ。
240
青彦
(
あをひこ
)
の
青瓢箪
(
あをべうたん
)
彦
(
ひこ
)
、
241
実際
(
じつさい
)
何
(
なに
)
をして
居
(
ゐ
)
るのだ。
242
何
(
なん
)
だか
知
(
し
)
らぬが、
243
俺
(
わし
)
は
胸騒
(
むなさわ
)
ぎがして、
244
猿
(
さる
)
の
小便
(
せうべん
)
ぢや
無
(
な
)
いが、
245
きにかかつて
仕方
(
しかた
)
がない』
246
青彦
(
あをひこ
)
、
247
木
(
き
)
の
茂
(
しげ
)
みより、
248
青彦
『
加米彦
(
かめひこ
)
さま、
249
ご
心配
(
しんぱい
)
有難
(
ありがた
)
う』
250
加米彦
(
かめひこ
)
『ヤア、
251
何
(
なん
)
ぢや、
252
姿
(
すがた
)
も
無
(
な
)
いのに
声
(
こゑ
)
許
(
ばか
)
り
聞
(
きこ
)
えてゐるぞ。
253
ハヽア
判
(
わか
)
つた、
254
途中
(
とちう
)
に
於
(
おい
)
て
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
の
部下
(
てした
)
の
奴
(
やつ
)
等
(
ら
)
に、
255
岩窟
(
がんくつ
)
へ
投
(
ほ
)
り
込
(
こ
)
まれ、
256
散々
(
さんざん
)
にさいなまれて
生命
(
いのち
)
を
奪
(
と
)
られ、
257
幽霊
(
いうれい
)
に
成
(
な
)
つて
化
(
ば
)
けて
来
(
き
)
よつたのだ。
258
杜鵑
(
ほととぎす
)
ぢやないが、
259
声
(
こゑ
)
は
聞
(
き
)
けども
姿
(
すがた
)
は
見
(
み
)
えずぢや、
260
エーイ、
261
ケツタイの
悪
(
わる
)
い
夜
(
よさ
)
だ。
262
音彦
(
おとひこ
)
さま、
263
確
(
しつか
)
りせぬと
青彦
(
あをひこ
)
が
青
(
あを
)
い
青
(
あを
)
い
顔
(
かほ
)
をして、
264
ヒユードロドロとやつて
来
(
き
)
ますぜ』
265
音彦
(
おとひこ
)
『
加米彦
(
かめひこ
)
、
266
お
前
(
まへ
)
は
随分
(
ずゐぶん
)
元気
(
げんき
)
な
男
(
をとこ
)
ぢやが、
267
死
(
し
)
んだ
者
(
もの
)
が
何故
(
なぜ
)
そのやうに
怖
(
こわ
)
いのか。
268
怖
(
こわ
)
いものは
此
(
こ
)
の
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
に
人間
(
にんげん
)
許
(
ばか
)
りだ。
269
人間
(
にんげん
)
位
(
くらゐ
)
怖
(
こわ
)
い
者
(
もの
)
は
無
(
な
)
いぞ。
270
仮令
(
たとへ
)
幽霊
(
いうれい
)
が
出
(
で
)
たつて、
271
人間
(
にんげん
)
の
死
(
し
)
んだのぢや
無
(
な
)
いか。
272
マア
気
(
き
)
を
落
(
お
)
ち
着
(
つ
)
けたらどうだ、
273
何
(
なに
)
をビクビク
震
(
ふる
)
うて
居
(
ゐ
)
るのだ』
274
木
(
き
)
の
中
(
なか
)
より
夏彦
(
なつひこ
)
の
声
(
こゑ
)
、
275
夏彦
『
夏
(
なつ
)
、
276
夏
(
なつ
)
、
277
夏
(
なつ
)
、
278
夏彦
(
なつひこ
)
の
幽霊
(
いうれい
)
ぢや。
279
青彦
(
あをひこ
)
は
青
(
あを
)
い
火
(
ひ
)
を
灯
(
とも
)
して、
280
谷
(
たに
)
の
底
(
そこ
)
で
幽霊
(
いうれい
)
に
化
(
な
)
つて
居
(
を
)
るわいのう。
281
加米
(
かめ
)
さまが
恋
(
こひ
)
しいから、
282
今
(
いま
)
お
目
(
め
)
にかかる。
283
夏彦
(
なつひこ
)
一足先
(
ひとあしさき
)
へ
行
(
い
)
つて
偵察
(
ていさつ
)
をして
来
(
こ
)
いと
仰有
(
おつしや
)
つた。
284
ヒユードロドロ ドロドロ』
285
と
腰
(
こし
)
の
屈
(
かが
)
みた
夏彦
(
なつひこ
)
は
加米彦
(
かめひこ
)
の
前
(
まへ
)
に
髪
(
かみ
)
をサンバラにし、
286
妙
(
めう
)
な
手真似
(
てまね
)
をして
現
(
あらは
)
れた。
287
加米彦
(
かめひこ
)
は、
288
加米彦
『キヤツ』
289
と
一声
(
ひとこゑ
)
腰
(
こし
)
を
抜
(
ぬ
)
かし、
290
加米彦
『ヤイヤイ、
291
貴様
(
きさま
)
は
幽霊
(
いうれい
)
の
乾児
(
こぶん
)
か。
292
アヽもう
仕方
(
しかた
)
が
無
(
な
)
い。
293
青彦
(
あをひこ
)
に
能
(
よ
)
う
言
(
い
)
うて
呉
(
く
)
れ、
294
お
目
(
め
)
にかかつたも
同然
(
どうぜん
)
ぢや。
295
御
(
ご
)
親切
(
しんせつ
)
は
有難
(
ありがた
)
いが、
296
今
(
いま
)
では
無事
(
ぶじ
)
に
暮
(
くら
)
して
居
(
を
)
る。
297
黄泉
(
あのよ
)
へ
行
(
い
)
つたらもう
仕方
(
しかた
)
が
無
(
な
)
い。
298
俺
(
おれ
)
に
執着心
(
しふちやくしん
)
を
起
(
おこ
)
さずに、
299
トツトと
神界
(
しんかい
)
へ
行
(
い
)
けと
伝言
(
ことづて
)
をして
呉
(
く
)
れ、
300
何
(
なん
)
だ、
301
お
前
(
まへ
)
の
腰
(
こし
)
はよう
曲
(
まが
)
つて
居
(
を
)
るぢやないか、
302
幽霊
(
いうれい
)
のお
爺
(
ぢい
)
さまだらう、
303
サアサア、
304
トツトと
去
(
い
)
ンだり
去
(
い
)
ンだり』
305
悦子姫
(
よしこひめ
)
『ホヽヽヽヽ』
306
紫姫
(
むらさきひめ
)
『ホヽヽヽヽ』
307
加米彦
(
かめひこ
)
『エーエー、
308
イヤらしい
声
(
こゑ
)
を
出
(
だ
)
して、
309
コンナ
山
(
やま
)
の
上
(
うへ
)
で、
310
おいて
下
(
くだ
)
さいな』
311
青彦
(
あをひこ
)
この
場
(
ば
)
にヌツと
現
(
あら
)
はれ、
312
青彦
『アハヽヽヽ、
313
これはこれは
悦子姫
(
よしこひめ
)
様
(
さま
)
、
314
お
待
(
ま
)
たせ
致
(
いた
)
しました。
315
ヤア
音彦
(
おとひこ
)
さま、
316
加米彦
(
かめひこ
)
さま、
317
済
(
す
)
まなかつた。
318
見
(
み
)
なれぬ
御
(
お
)
女中
(
ぢよちう
)
や
沢山
(
たくさん
)
のお
伴
(
とも
)
が
居
(
を
)
られますが、
319
何
(
いづ
)
れの
方
(
かた
)
ですか。
320
これはこれは
初
(
はじ
)
めてお
目
(
め
)
に
懸
(
かか
)
ります。
321
どうか
御
(
ご
)
昵懇
(
ぢつこん
)
に
願
(
ねが
)
ひます』
322
加米彦
(
かめひこ
)
『アハヽヽ、
323
オイ
青彦
(
あをひこ
)
、
324
貴様
(
きさま
)
谷底
(
たにそこ
)
へ
風
(
かぜ
)
に
吹
(
ふ
)
き
飛
(
と
)
ばされて、
325
蟄居
(
ちつきよ
)
して
居
(
ゐ
)
よつたのだな、
326
お
節
(
せつ
)
は
何
(
なん
)
と
言
(
い
)
つた。
327
加米
(
かめ
)
さまに
宜
(
よろ
)
しう、
328
どうぞ
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
鬼
(
おに
)
ケ
城
(
じやう
)
の
魔神
(
まがみ
)
を
言向
(
ことむ
)
け
和
(
やは
)
し、
329
優
(
やさ
)
しい
加米
(
かめ
)
さまのお
顔
(
かほ
)
を
拝
(
をが
)
まして
下
(
くだ
)
さいと、
330
伝言
(
ことづて
)
をして
居
(
を
)
つただらう』
331
音彦
(
おとひこ
)
『オイ
加米彦
(
かめひこ
)
、
332
何
(
ど
)
うだ、
333
俄
(
にはか
)
に
元気
(
げんき
)
づいたぢやないか』
334
加米彦
(
かめひこ
)
『あまり
退屈
(
たいくつ
)
なから、
335
一
(
ひと
)
つ
臆病者
(
おくびやうもの
)
の
演劇
(
しばゐ
)
をして、
336
悦子姫
(
よしこひめ
)
さまなり、
337
紫姫
(
むらさきひめ
)
さまのお
慰
(
なぐさ
)
みに
供
(
きよう
)
したのだ。
338
アハヽヽヽ』
339
一同
(
いちどう
)
声
(
こゑ
)
を
揃
(
そろ
)
へて
笑
(
わら
)
ひこける。
340
青彦
(
あをひこ
)
『
悦子姫
(
よしこひめ
)
さま、
341
音彦
(
おとひこ
)
様
(
さま
)
にお
願
(
ねが
)
ひが
御座
(
ござ
)
います。
342
どうぞ
御
(
お
)
聴
(
き
)
き
届
(
とど
)
け
下
(
くだ
)
さいませぬか』
343
悦子姫
(
よしこひめ
)
『これは
又
(
また
)
改
(
あらた
)
まつたお
言葉
(
ことば
)
、
344
お
願
(
ねが
)
ひとは
何事
(
なにごと
)
で
御座
(
ござ
)
います』
345
青彦
(
あをひこ
)
『ハイ、
346
犬
(
いぬ
)
の
子
(
こ
)
を
二匹
(
にひき
)
拾
(
ひろ
)
つて
来
(
き
)
ました』
347
音彦
(
おとひこ
)
『
其
(
そ
)
の
犬
(
いぬ
)
は
何処
(
どこ
)
に
居
(
を
)
るのだ』
348
青彦
(
あをひこ
)
は、
349
青彦
『ハイ』
350
と
言
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
351
夏彦
(
なつひこ
)
、
352
常彦
(
つねひこ
)
を
指
(
ゆび
)
さし、
353
青彦
『これで
御座
(
ござ
)
います』
354
夏彦
(
なつひこ
)
『エイ、
355
殺生
(
せつしやう
)
な』
356
常彦
(
つねひこ
)
『
青
(
あを
)
サン、
357
余
(
あんま
)
り
馬鹿
(
ばか
)
にして
貰
(
もら
)
ふまいかい。
358
ソンナ
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
うと、
359
お
節
(
せつ
)
の
事
(
こと
)
を
素破抜
(
すつぱぬ
)
かうか』
360
青彦
(
あをひこ
)
『ハヽヽヽ、
361
お
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
両人
(
りやうにん
)
に
対
(
たい
)
し
只今
(
ただいま
)
より
嵌口令
(
かんこうれい
)
を
施
(
し
)
く。
362
暫
(
しばら
)
く
沈黙
(
ちんもく
)
するのだよ』
363
加米彦
(
かめひこ
)
『ワハヽヽヽヽ、
364
何
(
なん
)
だか
意味
(
いみ
)
ありげな
此
(
こ
)
の
場
(
ば
)
の
光景
(
くわうけい
)
だ。
365
ナニ、
366
加米彦
(
かめひこ
)
が
許
(
ゆる
)
す。
367
二匹
(
にひき
)
の
犬
(
いぬ
)
とやら、
368
充分
(
じゆうぶん
)
吠
(
ほえ
)
て
吠
(
ほえ
)
て
吠立
(
ほえた
)
てるのだよ』
369
青彦
(
あをひこ
)
『エヽ
喧
(
やかま
)
しい。
370
俺
(
おれ
)
が
口切
(
くちき
)
りする
迄
(
まで
)
、
371
黙
(
だま
)
つて
聞
(
き
)
いて
居
(
を
)
らう。
372
エヽ
悦子姫
(
よしこひめ
)
さま、
373
実
(
じつ
)
はこの
男
(
をとこ
)
二人
(
ふたり
)
は、
374
ウラナイ
教
(
けう
)
の
黒姫
(
くろひめ
)
が
四天王
(
してんわう
)
と
呼
(
よ
)
ばれたる、
375
其
(
その
)
中
(
うち
)
の
二人
(
ふたり
)
で、
376
夏彦
(
なつひこ
)
、
377
常彦
(
つねひこ
)
と
云
(
い
)
ふ
豪
(
がう
)
の
者
(
もの
)
で
御座
(
ござ
)
います。
378
さうした
処
(
ところ
)
が
黒姫
(
くろひめ
)
の
内幕
(
うちまく
)
をすつかり
看破
(
かんぱ
)
し、
379
三五教
(
あななひけう
)
の
教理
(
けうり
)
の
優秀
(
いうしう
)
なる
事
(
こと
)
を、
380
心
(
こころ
)
の
底
(
そこ
)
より
悟
(
さと
)
りまして、
381
どうぞ
入信
(
にふしん
)
させて
呉
(
く
)
れいと、
382
犬
(
いぬ
)
つく
這
(
ば
)
いになつて、
383
低頭
(
ていとう
)
平身
(
へいしん
)
嘆願
(
たんぐわん
)
致
(
いた
)
しますので、
384
物
(
もの
)
の
哀
(
あは
)
れを
知
(
し
)
る
吾々
(
われわれ
)
、
385
さう
無情
(
むげ
)
に
見捨
(
みす
)
ても
成
(
な
)
らず、
386
貴方
(
あなた
)
がたにお
目玉
(
めだま
)
を
頂戴
(
ちやうだい
)
するかも
知
(
し
)
れぬと、
387
恐
(
おそ
)
る
恐
(
おそ
)
る
此処
(
ここ
)
まで
連
(
つ
)
れて
参
(
まゐ
)
りました。
388
然
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
何時
(
なんどき
)
今
(
いま
)
の
固
(
かた
)
い
信仰
(
しんかう
)
がグラツイて、
389
元
(
もと
)
の
古巣
(
ふるす
)
へ
尾
(
を
)
を
振
(
ふ
)
つて
去
(
い
)
ぬかも
知
(
し
)
れませぬ、
390
その
段
(
だん
)
は
保証
(
ほしよう
)
出来
(
でき
)
ないので、
391
イヌものと
覚悟
(
かくご
)
し、
392
二匹
(
にひき
)
の
犬
(
いぬ
)
と
申上
(
まをしあ
)
げました』
393
加米彦
(
かめひこ
)
『オイ
青彦
(
あをひこ
)
さま、
394
言霊
(
ことたま
)
が
悪
(
わる
)
いぞ、
395
宣
(
の
)
り
直
(
なほ
)
せ
宣
(
の
)
り
直
(
なほ
)
せ』
396
悦子姫
(
よしこひめ
)
『オホヽヽヽ』
397
音彦
(
おとひこ
)
『
直
(
すぐ
)
に
真似
(
まね
)
をしよるなア、
398
アハヽヽヽ、
399
夜
(
よ
)
は
追
(
お
)
ひ
追
(
お
)
ひと
更
(
ふ
)
けて
来
(
き
)
ました。
400
今
(
いま
)
から
行
(
ゆ
)
けば
途中
(
とちう
)
に
夜
(
よ
)
が
明
(
あ
)
けますまいから、
401
一同
(
いちどう
)
此処
(
ここ
)
で
悠
(
ゆつ
)
くりと
休息
(
きうそく
)
し、
402
明日
(
あす
)
の
黎明
(
よあけ
)
を
待
(
ま
)
つて、
403
鬼
(
おに
)
ケ
城
(
じやう
)
へ
立向
(
たちむか
)
ふ
事
(
こと
)
に
致
(
いた
)
しませうか』
404
悦子姫
(
よしこひめ
)
『アヽそれが
宣
(
よろ
)
しからう。
405
紫姫
(
むらさきひめ
)
さま、
406
妾
(
わたし
)
の
側
(
そば
)
でお
休
(
やす
)
み
下
(
くだ
)
さい』
407
紫姫
(
むらさきひめ
)
『
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います』
408
と、
409
一同
(
いちどう
)
は
肱
(
ひぢ
)
を
枕
(
まくら
)
に、
410
月
(
つき
)
の
光
(
ひかり
)
を
浴
(
あ
)
びて、
411
蓑
(
みの
)
を
敷
(
し
)
きゴロリと
横
(
よこ
)
たはる。
412
忽
(
たちま
)
ち
聞
(
きこ
)
ゆる
鼾
(
いびき
)
の
声
(
こゑ
)
、
413
無心
(
むしん
)
の
月
(
つき
)
は、
414
一行
(
いつかう
)
の
頭上
(
づじやう
)
をにこにこ
笑
(
わら
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
射照
(
いて
)
らし
居
(
ゐ
)
る。
415
(
大正一一・四・二三
旧三・二七
東尾吉雄
録)
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