霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一章 玉(たま)騒疑(さわぎ)〔六九三〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第22巻 如意宝珠 酉の巻 篇:第1篇 暗雲低迷 よみ(新仮名遣い):あんうんていめい
章:第1章 玉騒疑 よみ(新仮名遣い):たまさわぎ 通し章番号:693
口述日:1922(大正11)年05月24日(旧04月28日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年7月30日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一部の章はAIによって要約を作成しています。[×閉じる]:
天地の元津御親である国治立大神は、醜の曲津の猛びによってぜひ無く豊国姫命とともに独身神となって御身を隠したもうた。
大国治立尊の御子である神伊弉諾大神、神伊弉冊大神の二柱は、神勅を奉じて海月なす漂へる国を造り固めようとした。木花姫命や日の出神とはかって神国成就のために尽くしたのだが、天足彦・胞場姫の霊から現れ出た曲津見が荒れ狂い、八百万の神人たちの心は再びねじけて、世は常闇となってしまった。
神伊弉諾命の御子と生まれた天照大御神と神素盞嗚大神は、天津神・国津神たちに道を説き諭したが、日に世に穢れが積もって多くの罪が出で来た。
素盞嗚大神は葦原国を治めるべく心を砕いたが、治めるすべもなく泣き叫んだ。神伊弉諾命はこれを見咎めて、葦原国を治める資格がないので母の治める地下の国へ行くように、と申し渡した。
素盞嗚尊は姉神・天照大御神に事と次第を申し上げようと高天原に上ったが、天照大御神は素盞嗚尊が高天原を奪いに来たのではないか、と真意を疑った。
素盞嗚尊の疑いは、誓約によって晴れたが、素盞嗚尊の従神たちが怒って暴れたために、素盞嗚尊は千座の置戸を背負って高天原を追われ、地上の国々にはびこる邪神たちを言向け和す漂浪の旅を続けることとなった。
大洪水以前はエルサレムが神業の中心地であった。その後、国治立尊の分霊・国武彦が自転倒島に現れて、神素盞嗚大神と共に五六七神政の基礎を築いた。それより自転倒島は世界統一の神業地と定まった。
顕国玉の精より現れた如意宝珠の玉、黄金の玉、紫の玉は神界における三種の神宝として最も貴重なものとされている。この三つの玉を称して瑞の御魂という。この玉が納まる国は、豊葦原の瑞穂国を統一すべき神憲が備わっているのである。
国治立命は天教山を出入り口となし、豊国姫神は鳴門を出入り口として、地上の経綸を行い、長く世に隠れて五六七神政成就の時機を待った。
素盞嗚尊は分霊・少彦名命として神業に参加していたが、今また言依別命と現れて三種の神宝を保護することとなった。
三種の神宝は錦の宮に納まったが、国治立命・豊国姫神の命によって、いまだ時期尚早なれば三千世界一度に開く梅の花の春を待って三個の神宝を世に表すべし、とあったため、言依別命はひそかに自転倒島のある地点に深く隠した。
本巻はその神業の由来を口述する。有形にして無形、有声にして無声なる神変不可思議の神宝なので、凡眼では見ることができないものである。
黒姫は、言依別命から黄金の玉を守る役目を与えられていた。黒姫は黄金の玉を四尾山の麓の一つ松の下に埋めて隠し、ときどき密かにその無事を確認にやってきていた。
ある晩、黒姫がしばしばこそこそとどこかへ出かけていくのを不審に思ったテーリスタンとカーリンスは、黒姫のあとをつけて四尾山の麓までやってきた。
すると黒姫は、一つ松の下から石びつを掘り出して、その蓋を開けて中をのぞいていた。しかし黒姫は中が空っぽであることに驚いてどっと打ち倒れてしまった。黒姫は人の足音を聞きつけて気を取り直し、木陰に姿を隠した。
テーリスタンとカーリンスは、黒姫が去った後に一つ松の下に来て、石びつを確認し、言依別命が黒姫に託した黄金の玉は、ここに隠されてあったことを悟った。しかし先ほど見た黒姫の様子が変だったので、二人は黒姫の姿を辺りに探す。
すると下手のため池に人が飛び込んだ音がした。二人は駆けつけると、池の縁に履物が脱ぎ捨ててあるのが見えた。黒姫が身投げしたことを悟り、カーリンスは池に飛び込んで黒姫を救出した。
カーリンスは、二人分の着物を取りに行き、その間にテーリスタンが火を起こして黒姫の体を温めた。そのうちに黒姫は気が付くが、死なしてくれ、と言ってテーリスタンとカーリンスを困らせる。
テーリスタンは、黒姫が黄金の玉を紛失したのだろう、と推測する。黒姫は図星を指されて、自分を助けてくれたテーリスタンとカーリンスが、てっきり玉を盗んだものと疑い始め、二人を厳しく詰問しだした。
テーリスタンとカーリンスは、親切心が仇となってあらぬ疑いをかけられたことに困惑している。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2021-05-27 18:54:04 文字数:5090 OBC :rm2201
愛善世界社版:11頁 八幡書店版:第4輯 383頁 修補版: 校定版:11頁 普及版:5頁 初版: ページ備考:
001 天(あめ)と地(つち)との元津(もとつ)御祖(みおや)、002国治立(くにはるたちの)大神(おほかみ)は、003醜(しこ)の曲津(まがつ)の猛(たけ)びに依(よ)りて是非(ぜひ)なく豊国姫(とよくにひめの)尊(みこと)と共(とも)に、004独身神(ひとりがみ)となりまして御身(みみ)を隠(かく)し給(たま)ひ、005茲(ここ)に大国治立(おほくにはるたちの)尊(みこと)の御子(みこ)と坐(ま)します神(かむ)伊弉諾(いざなぎの)大神(おほかみ)、006神(かむ)伊弉冊(いざなみの)大神(おほかみ)の二柱(ふたはしら)、007天津(あまつ)大神(おほかみ)の御言(みこと)を畏(かしこ)み、008海月(くらげ)なす漂(ただよ)へる国(くに)を造(つく)り固(かた)め成(な)さむとして、009神勅(しんちよく)を奉(ほう)じ、010天(あめ)の浮橋(うきはし)に立(た)ち、011泥水(どろみづ)漂(ただよ)ふ豊葦原(とよあしはら)の瑞穂国(みづほのくに)を、012天(あま)の瓊矛(ぬほこ)を以(もつ)て、013シオコヲロ、014コヲロに掻(か)き鳴(な)し給(たま)ひ、015滴(したた)る矛(ほこ)の雫(しづく)より成(な)りしてふ自転倒(おのころ)島(じま)の天教山(てんけうざん)に下(お)り立(た)ち、016天(あめ)の御柱(みはしら)、017国(くに)の御柱(みはしら)を搗(つ)き固(かた)め、018撞(つき)の御柱(みはしら)を左右(ひだりみぎ)りより廻(めぐ)り会(あ)ひ再(ふたた)び豊葦原(とよあしはら)の中津国(なかつくに)を、019神代(かみよ)の本津国(もとつくに)に復(かへ)さむと、020木花姫(このはなひめの)命(みこと)、021日(ひ)の出神(でのかみ)と言議(ことはか)り給(たま)ひて、022心(こころ)を協(あは)せ力(ちから)を尽(つく)し、023神国(しんこく)成就(じやうじゆ)の為(ため)に竭(つく)し給(たま)ひしが、024天足彦(あだるひこ)、025胞場姫(えばひめ)の霊(みたま)より現(あら)はれ出(い)でたる醜(しこ)の曲津見(まがつみ)、026再(ふたた)び処(ところ)を得(え)て、027縦横(じうわう)無尽(むじん)に暴(あ)れ狂(くる)ひ、028八百万(やほよろづ)の神人(しんじん)は又(また)も心(こころ)捩(ねぢ)けて、029あらぬ方(かた)にと赴(おもむ)きつ、030復(ふたた)び世(よ)は常闇(とこやみ)となりにけり。
031 茲(ここ)に天照(あまてらす)大御神(おほみかみ)、032神(かむ)素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)は伊弉諾(いざなぎの)命(みこと)の御子(みこ)と現(あ)れまして天津(あまつ)神(かみ)、033国津(くにつ)神(かみ)、034八百万(やほよろづ)の神人(しんじん)に誠(まこと)の道(みち)を説(と)き諭(さと)し給(たま)ひしが、035世(よ)は日(ひ)に月(つき)に穢(けが)れ行(ゆ)きて、036畔放(あはな)ち溝埋(みぞう)め、037樋放(ひはな)ち頻蒔(しきま)き串差(くしさ)し、038生剥(いけは)ぎ逆剥(さかは)ぎ、039屎戸(くそへ)許々太久(ここたく)の罪(つみ)、040天地(てんち)に充満(じうまん)し、041生膚断(いきはだだち)、042死膚断(しにはだだち)、043白人(しらひと)胡久美(こくみ)、044己(おの)が母(はは)犯(をか)せる罪(つみ)、045己(おの)が子(こ)犯(をか)せる罪(つみ)、046母(はは)と子(こ)と犯(をか)せる罪(つみ)、047子(こ)と母(はは)と犯(をか)せる罪(つみ)、048畜(けもの)犯(をか)せる罪(つみ)、049昆虫(はふむし)の災(わざはひ)、050高津(たかつ)神(かみ)の災(わざはひ)、051高津鳥(たかつとり)の災(わざはひ)、052畜(けもの)殪(たふ)し蠱物(まじもの)せる罪(つみ)、053許々太久(ここたく)の罪(つみ)出(い)で来(きた)り、054世(よ)は益々(ますます)暗黒(あんこく)の雲(くも)に閉(とざ)され黒白(あやめ)も分(わ)かずなり行(ゆ)きたれば、055素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)は葦原国(あしはらのくに)を治(をさ)め給(たま)ふ術(すべ)もなく日夜(にちや)に御心(みこころ)を砕(くだ)かせ給(たま)ひ、056泣(な)き伊佐知(いさち)給(たま)へば、057茲(ここ)に神(かむ)伊弉諾(いざなぎの)命(みこと)、058天(あめ)より降(くだ)り給(たま)ひて、059素盞嗚(すさのをの)尊(みこと)にその故由(ゆゑよし)を問(と)はせ給(たま)ひ、060素盞嗚(すさのをの)尊(みこと)は地上(ちじやう)の罪悪(ざいあく)を一身(いつしん)に引受(ひきう)け、061部下(ぶか)の神々(かみがみ)又(また)は八岐(やまたの)大蛇(をろち)醜神(しこがみ)の曲(まが)を隠(かく)し、062我(あ)が一柱(ひとはしら)の言心行(げんしんかう)悪(あ)しき為(ため)なりと答(こた)へ給(たま)へば、063伊弉諾(いざなぎの)大神(おほかみ)は怒(いか)らせ給(たま)ひ、
064伊弉諾大神『ここに汝(な)は海原(うなばら)を知食(しろしめ)すべき資格(しかく)なければ、065母(はは)の国(くに)に臻(いた)りませ』
066と厳(おごそ)かに言宣(ことの)り給(たま)へば、067素盞嗚(すさのをの)尊(みこと)は姉(あね)の大神(おほかみ)に事(こと)の由(よし)を委細(つぶさ)に申(まを)し上(あ)げむと、068高天原(たかあまはら)に上(のぼ)り給(たま)ふ。069此(この)時(とき)山川(やまかは)草木(くさき)を守護(しゆご)せる神々(かみがみ)驚(おどろ)きて動揺(どうえう)し、070世(よ)はますます暗黒(あんこく)となりければ、071姉(あね)大神(おほかみ)は弟神(おとうとがみ)に黒(きたな)き心(こころ)ありと言挙(ことあ)げし給(たま)ひ、072茲(ここ)に天(あま)の安河(やすかは)を中(なか)に置(お)き、073天(あめ)の真奈井(まなゐ)に御禊(みそぎ)して、074厳(いづ)之(の)御魂(みたま)、075瑞(みづ)之(の)御魂(みたま)の証明(あかし)し給(たま)ひ、076姉(あね)大神(おほかみ)は変性(へんじやう)男子(なんし)の御霊(みたま)、077弟神(おとうとがみ)は変性(へんじやう)女子(によし)の御霊(みたま)なる事(こと)を宣(の)り分(わ)け給(たま)ひぬ。
078 素盞嗚(すさのをの)尊(みこと)に従(したが)ひませる八十猛(やそたける)の神々(かみがみ)は大(おほい)に怒(いか)りて、
079八十猛神『吾(あ)が仕(つか)へ奉(まつ)る素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)は清明(せいめい)無垢(むく)の瑞霊(ずゐれい)に坐(ま)しませり。080然(しか)るに何(なに)を以(もつ)て吾(あ)が大神(おほかみ)に対(たい)し、081黒(きたな)き心(こころ)ありと宣(の)らせ給(たま)ひしか』
082と怒(いか)り狂(くる)ひて、083遂(つひ)に姉(あね)大神(おほかみ)をして天(あま)の岩戸(いはと)に隠(かく)れ給(たま)ふの已(や)むなきに到(いた)らしめたのは、084実(じつ)に素盞嗚(すさのをの)尊(みこと)の為(ため)に惜(を)しむべき事(こと)である。
085 茲(ここ)に素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)はいよいよ千座(ちくら)の置戸(おきど)を負(お)ひ給(たま)ひ、086吾(あ)が治(しら)せる国(くに)を姉(あね)大神(おほかみ)に奉(たてまつ)り、087高天原(たかあまはら)を下(くだ)りて、088葦原(あしはら)の中津国(なかつくに)に騒(さや)れる曲津(まがつ)神(かみ)を言向(ことむ)け和(やは)し、089八岐(やまたの)大蛇(をろち)や醜狐(しこぎつね)、090曲鬼(まがおに)、091醜女(しこめ)、092探女(さぐめ)の霊(みたま)を清(きよ)め、093誠(まこと)の道(みち)に救(すく)ひ、094完全(くわんぜん)無欠(むけつ)、095至善(しぜん)至美(しび)なるミロクの神政(しんせい)を樹立(じゆりつ)せむとし、096親(みづか)ら漂浪(さすらひ)の旅(たび)を続(つづ)かせ給(たま)ふ事(こと)となつた。
097 大洪水(だいこうずゐ)以前(いぜん)はヱルサレムを中心(ちうしん)として神業(しんげふ)を開始(かいし)し給(たま)ひしが、098茲(ここ)に国治立(くにはるたちの)尊(みこと)の分霊(わけみたま)国武彦(くにたけひこ)と現(あら)はれて、099自転倒(おのころ)島(じま)に下(くだ)りまし、100神(かむ)素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)と共(とも)に五六七(みろく)神政(しんせい)の基礎(きそ)を築(きづ)かせ給(たま)ふ事(こと)となつた。101それより自転倒(おのころ)島(じま)は、102いよいよ世界(せかい)統一(とういつ)の神業地(しんげふち)と定(さだ)まつた。
103 顕国玉(うつしくにたま)の精(せい)より現(あら)はれ出(い)でたる如意(によい)宝珠(ほつしゆ)を始(はじ)め、104黄金(こがね)の玉(たま)、105紫(むらさき)の玉(たま)は、106神界(しんかい)における三種(さんしゆ)の神宝(しんぽう)として、107最(もつと)も貴重(きちよう)なる物(もの)とせられて居(ゐ)る。108此(この)三(みつ)つの玉(たま)を称(しよう)して瑞(みづ)の御霊(みたま)と云(い)ふ。109此(この)玉(たま)の納(をさ)まる国(くに)は、110豊葦原(とよあしはら)の瑞穂国(みづほのくに)を統一(とういつ)すべき神憲(しんけん)、111惟神(かむながら)に備(そな)はつて居(ゐ)るのである。
112 茲(ここ)に国治立(くにはるたちの)命(みこと)は天教山(てんけうざん)を出入口(でいりぐち)となし、113豊国姫(とよくにひめの)神(かみ)は鳴門(なると)を出入口(でいりぐち)として、114地上(ちじやう)の経綸(けいりん)に任(にん)じ給(たま)ひ、115永(なが)く世(よ)に隠(かく)れて、116五六七(みろく)神政(しんせい)成就(じやうじゆ)の時機(じき)を待(ま)たせ給(たま)ひぬ。117素盞嗚(すさのをの)尊(みこと)は其(その)分霊(わけみたま)言霊別(ことたまわけの)命(みこと)を地中(ちちう)に隠(かく)し、118少彦名(すくなひこなの)命(みこと)として神業(しんげふ)に参加(さんか)せしめ給(たま)ひしが、119今(いま)又(また)言依別(ことよりわけの)命(みこと)と現(あら)はして、120三種(さんしゆ)の神宝(しんぽう)を保護(ほご)せしめ給(たま)ふ事(こと)となつた。121言依別(ことよりわけの)命(みこと)の神業(しんげふ)に依(よ)りて、122三種(さんしゆ)の神宝(しんぽう)は錦(にしき)の宮(みや)に納(をさ)まり、123いよいよ神政(しんせい)成就(じやうじゆ)に着手(ちやくしゆ)し給(たま)はむとする時(とき)、124国治立(くにはるたちの)命(みこと)と豊国姫(とよくにひめの)命(みこと)の命(めい)に依(よ)り、125未(いま)だ時機(じき)尚早(しやうそう)なれば、126三千(さんぜん)世界(せかい)一度(いちど)に開(ひら)く梅(うめ)の花(はな)の春(はる)を待(ま)ちて三箇(さんこ)の神宝(しんぽう)を世(よ)に現(あら)はすべしとありければ、127言依別(ことよりわけの)命(みこと)は私(ひそ)かに神命(しんめい)を奉(ほう)じて、128自転倒(おのころ)島(じま)の或(ある)地点(ちてん)に深(ふか)く隠(かく)し給(たま)ひし御(ご)神業(しんげふ)の由来(ゆらい)を本巻(ほんくわん)に於(おい)て口述(こうじゆつ)せむとす。129有形(いうけい)にして無形(むけい)、130無形(むけい)にして有形(いうけい)、131無声(むせい)にして有声(いうせい)、132有声(いうせい)にして無声(むせい)なる神変(しんぺん)不可思議(ふかしぎ)の神宝(しんぽう)なれば、133凡眼(ぼんがん)を以(もつ)て見(み)る事(こと)能(あた)はざるは固(もと)よりなり。
134凩(こがらし)荒(すさ)ぶ冬(ふゆ)の夜(よ)の
135月(つき)の光(ひかり)を浴(あ)びながら
136心(こころ)にかかる黒雲(くろくも)の
137晴(は)るる隙(ひま)なき黒姫(くろひめ)が
138言依別(ことよりわけの)命(みこと)より
139言(い)ひつけられて人(ひと)知(し)れず
140納(をさ)め置(お)きたる黄金(わうごん)の
141玉(たま)の在処(ありか)を調(しら)べむと
142丑満時(うしみつどき)に起(お)き出(い)でて
143独(ひと)りスゴスゴ四尾山(よつをやま)
144麓(ふもと)の一(ひと)つ松(まつ)が根(ね)に
145匿(かく)まひ置(お)きし石櫃(いしびつ)の
146そつと蓋(ふた)をば開(ひら)き見(み)て
147思(おも)はずドツと打倒(うちたふ)れ
148吾(わが)責任(せきにん)も玉(たま)無(な)しの
149藻脱(もぬけ)の殻(から)の悲(かな)しさに
150如何(いかが)はせむと起(お)き直(なほ)り
151思案(しあん)に暮(く)れて居(ゐ)たりしが
152忽(たちま)ち人(ひと)の足音(あしおと)に
153気(き)を取直(とりなほ)し立(た)ちあがり
154木蔭(こかげ)を索(もと)めて帰(かへ)り行(ゆ)く。
155 窺(うかが)ひ寄(よ)つたる二人(ふたり)の男(をとこ)、156松(まつ)の根元(ねもと)に立寄(たちよ)りて、
157甲(かふ)(テーリスタン)『ヤア黒姫(くろひめ)さまの様子(やうす)が怪(あや)しいと思(おも)うて跟(つ)いて来(き)たが、158大方(おほかた)これは蜈蚣姫(むかでひめ)が占領(せんりやう)して居(を)つた黄金(わうごん)の玉(たま)を、159言依別(ことよりわけの)命(みこと)から信任(しんにん)を得(え)て、160黒姫(くろひめ)が隠(かく)して置(お)きよつたのだなア』
161乙(おつ)(カーリンス)『併(しか)し黒姫(くろひめ)さまは蓋(ふた)を開(あ)けるが早(はや)いか吃驚(びつくり)して尻餅(しりもち)を搗(つ)いたぢやないか。162大方(おほかた)紛失(ふんしつ)して居(ゐ)たのぢやあるまいかな。163そんな事(こと)だつたら、164黒姫(くろひめ)もサツパリ駄目(だめ)だがなア』
165甲(テーリスタン)『あんまりの玉(たま)の光(ひかり)に驚(おどろ)いて、166尻餅(しりもち)を搗(つ)いたのだらう、167それに定(きま)つて居(ゐ)るよ。168誰一人(たれひとり)こんな所(ところ)に隠(かく)して置(お)いたつて、169探知(たんち)する者(もの)がないからな。170肝腎(かんじん)の紫姫(むらさきひめ)さまでさへも御存(ごぞん)じない位(くらゐ)だから………』
171乙(カーリンス)『イヤどうも怪(あや)しい黒姫(くろひめ)の姿(すがた)、172影(かげ)が薄(うす)い様(やう)だ。173一(ひと)つそつと尋(たづ)ねて見(み)ようぢやないか。174グヅグヅして居(を)ると、175姿(すがた)が分(わか)らなくなつて了(しま)ふよ』
176甲(テーリスタン)『サ、177早(はや)く往(ゆ)かう。178最早(もはや)姿(すがた)が見(み)えなくなつたぢやないか』
179とキヨロキヨロ其処(そこ)らを見廻(みまは)して居(ゐ)る。180忽(たちま)ち下手(しもて)の溜池(ためいけ)にバサリと人(ひと)の飛(と)び込(こ)む水音(みづおと)、181二人(ふたり)は驚(おどろ)いて池(いけ)の辺(ほとり)に駆(か)けつけ見(み)れば、182何(なん)の影(かげ)もなく、183唯(ただ)水面(すゐめん)を波(なみ)が円(ゑん)を描(ゑが)いて揺(ゆ)らいで居(ゐ)る。184月(つき)の影(かげ)さへも砕(くだ)けて、185串団子(くしだんご)の様(やう)に長(なが)く重(かさ)なり動(うご)いて居(ゐ)る。
186甲(かふ)(テーリスタン)『ヤア此処(ここ)に履物(はきもの)が一足(いつそく)脱(ぬ)いである。187こりやてつきり黒姫(くろひめ)さまのだ。188ヤア大変(たいへん)だ、189カーリンス、190貴様(きさま)は早(はや)く帰(かへ)つて言依別(ことよりわけ)様(さま)に申(まを)し上(あ)げ、191大勢(おほぜい)の信者(しんじや)を引率(いんそつ)して救援隊(きうゑんたい)を繰出(くりだ)して呉(く)れ。192俺(おれ)はそれ迄(まで)此処(ここ)に保護(ほご)して居(を)る』
193カーリンス『馬鹿(ばか)言(い)ふない。194グヅグヅして居(ゐ)る間(ま)に縡(ことき)れて了(しま)ふぢやないか』
195と云(い)ふより早(はや)く、196カーリンスは、197薄氷(はくひよう)の張(は)りかけた池(いけ)に、198赤裸(まつぱだか)となつて飛(と)び込(こ)み、199水(みづ)を潜(もぐ)つて黒姫(くろひめ)を引抱(ひつかか)へ、200漸(やうや)くにして救(すく)ひあげた。201黒姫(くろひめ)は最早(もはや)虫(むし)の息(いき)となつて居(ゐ)る。
202カーリンス『オイ、203テーリスタン、204誰(たれ)にも此奴(こいつ)ア、205様子(やうす)を聞(き)く迄(まで)極秘(ごくひ)にして置(お)かなくては、206黒姫(くろひめ)さまの為(ため)にはよくなからうぞ。207兎(と)も角(かく)俺(おれ)も寒(さむ)くて体(からだ)が凍(い)てさうだ。208そつと此処(ここら)で火(ひ)を焚(た)いて黒姫(くろひめ)様(さま)の体(からだ)を温(あたた)めて息(いき)を吹(ふ)き返(かへ)さすのが第一(だいいち)だ。209オイ貴様(きさま)早(はや)く、210そつと帰(かへ)つて二人(ふたり)の着物(きもの)を……何(なん)でも良(よ)いから持(も)つて来(き)て呉(く)れ』
211テーリスタン『ヨシ合点(がつてん)だツ』
212とテーリスタンは黒姫(くろひめ)の館(やかた)へ駆(か)けつけ、213そつと衣服(いふく)を二人前(ににんまへ)、214小脇(こわき)に抱(か)い込(こ)み帰(かへ)つて来(き)た。215其(その)間(ま)に黒姫(くろひめ)は息(いき)を吹(ふ)き返(かへ)して居(ゐ)た。216テーリスタンは息(いき)を喘(はづ)ませながら、
217テーリスタン『サア漸(やうや)く持(も)つて来(き)た。218早(はや)く着(き)て呉(く)れ。219寒(さむ)かつただらう』
220カーリンス『アヽそれは御(ご)苦労(くらう)だつた。221サア黒姫(くろひめ)さま、222兎(と)も角(かく)これを着(き)て下(くだ)さい』
223黒姫『お前(まへ)はテー、224カーの両人(りやうにん)ぢやないか。225なぜ妾(わし)の折角(せつかく)の投身(みなげ)を邪魔(じやま)なさるのだい。226どこまでも妾(わし)を苦(くる)しめる心算(つもり)かい』
227カーリンス『コレ黒姫(くろひめ)さま、228チツと確(しつか)りなさらぬか。229お前(まへ)さまは精神(せいしん)に異状(いじやう)を来(きた)して居(ゐ)るのだらう。230生命(いのち)を助(たす)けて貰(もら)つて不足(ふそく)を云(い)ふ者(もの)が何処(どこ)にありますか。231なア、232テーリスタン。233御(ご)苦労(くらう)だつた位(くらゐ)云(い)つても、234あんまり損(そん)はいくまいに………こんな怪体(けつたい)な事(こと)を聞(き)いたことはないのう』
235テーリスタン『コレ黒姫(くろひめ)さま、236お前(まへ)さまが覚悟(かくご)で陥(はま)つたのか、237過(あやま)つて陥(はま)つたのか………そら知(し)らぬが、238吾々(われわれ)二人(ふたり)は生命(いのち)を的(まと)に、239此(この)寒(さむ)いのにお前(まへ)さまの生命(いのち)を助(たす)けたのだ。240なぜそんな不足(ふそく)さうな事(こと)を言(い)ふのだい』
241黒姫『妾(わし)はどうしても生(い)きて居(を)られぬ理由(わけ)があるのだよ。242どうぞ死(し)なしてお呉(く)れ』
243と又(また)もや駆(か)け出(だ)さむとするを、244カーリンスは大手(おほて)を拡(ひろ)げ、
245カーリンス『待(ま)つた待(ま)つた、246死(し)んで花実(くわじつ)が咲(さ)く例(ため)しがない。247仮令(たとへ)どんな事(こと)があつても、248死(し)んで言訳(いひわけ)が立(た)つものか。249却(かへつ)て神界(しんかい)に於(おい)て薄志(はくし)弱行者(じやくかうしや)として冥罰(めいばつ)を受(う)けねばなるまい』
250黒姫『何(なん)と云(い)つても死(し)なねばならぬ理由(わけ)がある。251どうぞ助(たす)けてお呉(く)れ』
252カーリンス『助(たす)けて上(あ)げたぢやないか』
253黒姫『助(たす)けると云(い)ふのは、254妾(わし)の自由(じいう)に為(さ)して呉(く)れと云(い)ふのだよ』
255カーリンス『自由(じいう)にするとは、256そりや又(また)どうすると云(い)ふのだい。257一(いち)日(にち)でも生(い)きよう生(い)きようとするのが人間(にんげん)の本能(ほんのう)だ。258死(し)ぬのを助(たす)かるとはチツと道理(だうり)に合(あ)はない。259そこまでお前(まへ)さまも覚悟(かくご)をした以上(いじやう)は、260どんな活動(はたらき)でも出来(でき)るだらう。261生命(いのち)を的(まと)に神界(しんかい)の為(ため)に活動(くわつどう)し今迄(いままで)の罪(つみ)を贖(あがな)ひし上(うへ)、262神(かみ)様(さま)のお召(め)しに依(よ)つて国替(くにがへ)するのが本当(ほんたう)だよ』
263テーリスタン『此(この)位(くらゐ)な道理(だうり)の分(わか)らぬ貴女(あなた)ぢやないが、264何故(なぜ)又(また)さう分(わか)らぬのだらうかナア』
265黒姫『何(なに)も彼(か)もサツパリ分(わか)らぬ様(やう)になつて来(き)ましたよ』
266テーリスタン『お前(まへ)さま、267言依別(ことよりわけの)命(みこと)様(さま)より保管(ほくわん)を命(めい)ぜられた、268黄金(わうごん)の玉(たま)を紛失(ふんしつ)したのだらう』
269黒姫『何(なに)ツ、270それが如何(どう)してお前(まへ)に分(わか)つたのか』
271テーリスタン『私(わたし)は貴女(あなた)がチヨコチヨコ夜分(やぶん)になると、272宅(うち)を出(で)て往(ゆ)くので、273此奴(こいつ)ア不思議(ふしぎ)だと、274二人(ふたり)が何時(いつ)も気(き)を付(つ)けて居(を)つたのだ。275さうすると、276四尾山(よつをやま)の一本松(いつぽんまつ)の麓(ふもと)へ行(い)つて居(ゐ)らつしやる。277今日(けふ)も今日(けふ)とて不思議(ふしぎ)で堪(たま)らず、278来(き)て見(み)れば、279お前(まへ)さまは松(まつ)の木(き)の根元(ねもと)で、280唐櫃(からびつ)を開(ひら)いて腰(こし)を抜(ぬ)かしなさつただらう。281てつきり黄金(わうごん)の玉(たま)を誰(たれ)かに盗(ぬす)まれ、282其(その)責(せめ)を負(お)うて自殺(じさつ)しようとしたのだらうがナ』
283黒姫『何(なに)ツ、284お前(まへ)は何時(いつ)も妾(わし)の行動(かうどう)を考(かんが)へて居(ゐ)たのか。285油断(ゆだん)のならぬ男(をとこ)だ。286そんなら其(その)玉(たま)の盗賊(たうぞく)はお前(まへ)達(たち)両人(ふたり)に間違(まちがひ)なからう……サア有態(ありてい)に仰有(おつしや)れ』
287テーリスタン『これはしたり、288黒姫(くろひめ)さま。289それは何(なん)と云(い)ふ無理(むり)を仰有(おつしや)るのだ。290能(よ)う考(かんが)へて御覧(ごらん)なさい。291吾々(われわれ)両人(ふたり)が其(その)玉(たま)を仮(か)りに盗(ぬす)んだとすれば、292どうしてお前(まへ)さまを助(たす)けるものかい。293池(いけ)へ陥(はま)つたのを幸(さいはひ)に、294素知(そし)らぬ顔(かほ)をして居(ゐ)るぢやないか』
295黒姫『兎(と)も角(かく)、296あの松(まつ)の木(き)の下(した)へは、297お前(まへ)達(たち)二人(ふたり)、298何時(いつ)も来(く)ると云(い)ふぢやないか。299玉(たま)の在処(ありか)を知(し)つた者(もの)が盗(と)らいで誰(たれ)が盗(と)らう。300何(なん)と云(い)つても嫌疑(けんぎ)のかかるのは当然(たうぜん)ぢや。301妾(わし)もあの玉(たま)に就(つい)ては生命懸(いのちがけ)に保護(ほご)をして居(ゐ)るのだから、302お前(まへ)の生命(いのち)を奪(と)つてでも白状(はくじやう)させねば置(お)かぬのだよ』
303とカーリンスの胸倉(むなぐら)をグツと握(と)り、304首(くび)を締(し)め、
305黒姫『サア、306カーリンス、307玉(たま)の在処(ありか)を白状(はくじやう)しなさい』
308テーリスタン『コレコレ黒姫(くろひめ)さま、309何(なに)をなさいます。310あんまりぢや御座(ござ)いませぬか』
311黒姫『エー喧(やかま)しい。312お前(まへ)も同類(どうるゐ)だ。313白状(はくじやう)せぬと、314カーリンスの様(やう)に揉(も)み潰(つぶ)して了(しま)はうか。315二人(ふたり)が共謀(きようぼう)して居(を)るのだから、316見(み)せしめに此奴(こいつ)の息(いき)の根(ね)を止(と)め、317次(つぎ)にお前(まへ)の番(ばん)だから、318其処(そこ)一寸(いつすん)も動(うご)くこたアならぬぞえ』
319カーリンス『アヽ苦(くる)しい苦(くる)しい。320オイ、321テ、322テ、323テーリスタン、324婆(ば)アさまを退(の)けて呉(く)れ、325息(いき)がト、326ト止(と)まる』
327と声(こゑ)も絶(た)え絶(だ)えに叫(さけ)んで居(ゐ)る。328テーリスタンは已(や)むを得(え)ず、329黒姫(くろひめ)の腰帯(こしおび)をグツと握(にぎ)り、330力(ちから)に任(まか)せて後(うしろ)へ引(ひ)いた。331黒姫(くろひめ)は夜叉(やしや)の如(ごと)く、332声(こゑ)も荒(あら)らかに、
333黒姫『モウ此(この)上(うへ)は破(やぶ)れかぶれだ。334汝(おまへ)等(ら)両人(ふたり)白状(はくじやう)すれば可(よ)し、335白状(はくじやう)致(いた)さねば冥途(めいど)の道伴(みちづれ)にしてやらう』
336と死物狂(しにものぐる)ひに両人(りやうにん)に向(むか)つて飛(と)び付(つ)き来(きた)る其(そ)の凄(すさま)じさ。337二人(ふたり)は、
338テーリスタン、カーリンス『黒姫(くろひめ)さま、339待(ま)つた待(ま)つた。340私(わたし)ぢやない。341さう疑(うたが)はれては大変(たいへん)な迷惑(めいわく)を致(いた)しますよ』
342黒姫『ナニ、343貴様(きさま)は高春山(たかはるやま)で悪(わる)い事(こと)ばかりやつて居(ゐ)た奴(やつ)だから、344また病気(びやうき)が再発(さいはつ)したのだ。345改心(かいしん)したと見(み)せかけ、346鷹依姫(たかよりひめ)と諜(しめ)し合(あ)はして、347此(この)玉(たま)を盗(と)り、348尚(なほ)其(その)上(うへ)如意(によい)宝珠(ほつしゆ)の玉(たま)を持(も)つて逃(に)げる計画(たくみ)に違(ちがひ)ない。349アヽさうなると、350妾(わし)も今(いま)死(し)ぬのは早(はや)い。351お前(まへ)達(たち)の計画(たくみ)をスツカリと素破抜(すつぱぬ)いて、352根底(こんてい)から覆(くつが)へさねばならないのだ。353サア如何(どう)ぢや、354何処(どこ)へ隠(かく)した。355早(はや)く言(い)はぬかい』
356 テー、357カー両人(りやうにん)は泣声(なきごゑ)になつて、
358テーリスタン、カーリンス『モシモシ黒姫(くろひめ)さま、359それはあまり残酷(ざんこく)ぢやありませぬか』
360黒姫『ナニ、361どちらが残酷(ざんこく)だ。362妾(わし)に是(こ)れ丈(だけ)の失敗(しつぱい)をさせて置(お)いて、363白々(しらじら)しく、364知(し)らぬ存(ぞん)ぜぬの一点張(いつてんばり)で貫(つ)き通(とほ)さうと思(おも)つても、365此(この)黒姫(くろひめ)が黒(くろ)い眼(め)でチヤンと睨(にら)んだら間違(まちがひ)はないのだよ。366斯(か)う云(い)ふ所(ところ)で愚図(ぐづ)々々(ぐづ)して居(を)ると人(ひと)に見付(みつ)かつては大変(たいへん)だ。367サア妾(わし)の館(やかた)までそつと出(で)て来(き)なさい。368ユツクリと話(はなし)をして互(たがひ)に打解(うちと)けて、369玉(たま)の在処(ありか)をアツサリ聞(き)かして貰(もら)ひませう。370さうすれば妾(わし)も結構(けつこう)なり、371お前(まへ)も言依別(ことよりわけの)命(みこと)様(さま)にとりなして幹部(かんぶ)に入(い)れてあげる。372何時(いつ)までも妾(わし)の宅(うち)に門番(もんばん)をして居(を)つても詰(つま)らぬからナア……』
373テ、374カ(テーリスタン、カーリンス)『ハイ、375そんなら御(お)言葉(ことば)に従(したが)ひ、376お宅(たく)へ参(まゐ)りませう』
377黒姫『ア、378それでヤツと安心(あんしん)した。379素直(すなほ)に在処(ありか)を白状(はくじやう)するのだよ』
380テーリスタン、カーリンス『ハテ、381困(こま)つた事(こと)だなア』
382と二人(ふたり)は思案(しあん)に暮(く)れてゐる。
383(大正一一・五・二四 旧四・二八 松村真澄録)
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