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霊界物語
如意宝珠(第13~24巻)
第22巻(酉の巻)
序文
凡例
総説
第1篇 暗雲低迷
第1章 玉騒疑
第2章 探り合ひ
第3章 不知火
第4章 玉探志
第2篇 心猿意馬
第5章 壇の浦
第6章 見舞客
第7章 囈語
第8章 鬼の解脱
第3篇 黄金化神
第9章 清泉
第10章 美と醜
第11章 黄金像
第12章 銀公着瀑
第4篇 改心の幕
第13章 寂光土
第14章 初稚姫
第15章 情の鞭
第16章 千万無量
第5篇 神界経綸
第17章 生田の森
第18章 布引の滝
第19章 山と海
第20章 三の魂
余白歌
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霊界物語
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如意宝珠(第13~24巻)
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第22巻(酉の巻)
> 第1篇 暗雲低迷 > 第4章 玉探志
<<< 不知火
(B)
(N)
壇の浦 >>>
第四章
玉
(
たま
)
探志
(
さがし
)
〔六九六〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第22巻 如意宝珠 酉の巻
篇:
第1篇 暗雲低迷
よみ(新仮名遣い):
あんうんていめい
章:
第4章 玉探志
よみ(新仮名遣い):
たまさがし
通し章番号:
696
口述日:
1922(大正11)年05月24日(旧04月28日)
口述場所:
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1922(大正11)年7月30日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
黒姫、鷹依姫、竜国別、テーリスタン、カーリンスの五人は、言依別命にしたがって錦の宮に参拝して帰る途上、高姫、紫姫、若彦に出くわした。
高姫は、自分が参拝する間に、五人に自宅に来るようにと言い渡して行ってしまった。黒姫、テーリスタン、カーリンスはてっきり黄金の玉紛失の件がすでに高姫の耳に入ったのではないかと恐れている。
果たして、戻ってきた高姫は黄金の玉紛失の責任を一同に対して問い始める。そして無関係の紫姫と若彦に対しても当たりだした。
高姫に覚悟を問われた黒姫、鷹依姫、竜国別、テーリスタン、カーリンスの五人は、世界中を探し回ってでも黄金の玉を見つけ出す決意を表した。そしてそのまま高姫宅を出ると、錦の宮を拝して旅装を整え、黄金の玉探索の旅に出立して行った。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2021-05-26 10:43:37
OBC :
rm2204
愛善世界社版:
49頁
八幡書店版:
第4輯 397頁
修補版:
校定版:
51頁
普及版:
23頁
初版:
ページ備考:
001
言依別
(
ことよりわけの
)
命
(
みこと
)
に
従
(
したが
)
ひて
黒姫
(
くろひめ
)
、
002
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
、
003
竜国別
(
たつくにわけ
)
、
004
テーリスタン、
005
カーリンスの
五
(
ご
)
人
(
にん
)
は
錦
(
にしき
)
の
宮
(
みや
)
に
参拝
(
さんぱい
)
し、
006
言依別
(
ことよりわけの
)
命
(
みこと
)
は
宮殿
(
きうでん
)
深
(
ふか
)
く
神務
(
しんむ
)
の
為
(
た
)
めに
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
り、
007
五
(
ご
)
人
(
にん
)
は
各
(
おのおの
)
家路
(
いへぢ
)
に
帰
(
かへ
)
らむとする
時
(
とき
)
しも、
008
高姫
(
たかひめ
)
、
009
紫姫
(
むらさきひめ
)
、
010
若彦
(
わかひこ
)
の
三
(
さん
)
人
(
にん
)
と
十字
(
じふじ
)
街頭
(
がいとう
)
にピタリと
出会
(
でつくわ
)
した。
011
高姫
(
たかひめ
)
『これはこれは
黒姫
(
くろひめ
)
さま、
012
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
さま、
013
その
他
(
た
)
御
(
ご
)
一同
(
いちどう
)
、
014
一寸
(
ちよつと
)
高姫
(
たかひめ
)
の
宅
(
たく
)
まで
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さい。
015
折入
(
をりい
)
つてお
訊
(
たづ
)
ねしたい
事
(
こと
)
が
御座
(
ござ
)
います』
016
意味
(
いみ
)
あり
気
(
げ
)
な
此
(
こ
)
の
言葉
(
ことば
)
に
黒姫
(
くろひめ
)
はハツと
胸
(
むね
)
を
刺
(
さ
)
される
心地
(
ここち
)
がした。
017
されど、
018
さあらぬ
態
(
てい
)
にて、
019
黒姫
『ハイ、
020
何用
(
なによう
)
か
存
(
ぞん
)
じませぬが、
021
妾
(
わたし
)
は
今
(
いま
)
参拝
(
さんぱい
)
の
帰
(
かへ
)
り
路
(
みち
)
で
御座
(
ござ
)
います。
022
何時
(
いつ
)
参
(
まゐ
)
りましたら
宜
(
よろ
)
しいでせうか』
023
高姫
『
皆
(
みな
)
さま、
024
妾
(
わたし
)
等
(
ら
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
参拝
(
さんぱい
)
して
来
(
き
)
ますから、
025
先
(
さき
)
へ
妾
(
わたし
)
の
宅
(
たく
)
まで
帰
(
かへ
)
つて
居
(
ゐ
)
て
下
(
くだ
)
さい。
026
直
(
すぐ
)
に
帰
(
かへ
)
りますから。
027
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
さまも、
028
竜国別
(
たつくにわけ
)
さまも、
029
テーさまも、
030
カーさまも
御
(
ご
)
一緒
(
いつしよ
)
に
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
て
下
(
くだ
)
さい』
031
と
撥
(
は
)
ねた
様
(
やう
)
な
言葉尻
(
ことばじり
)
を
残
(
のこ
)
して
忙
(
いそが
)
しさうに
参拝道
(
さんぱいみち
)
に
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
032
黒姫
(
くろひめ
)
は
胸
(
むね
)
に
一物
(
いちもつ
)
、
033
思案
(
しあん
)
に
暮
(
く
)
れながら
高姫
(
たかひめ
)
の
宅
(
たく
)
に
立寄
(
たちよ
)
り、
034
帰宅
(
かへり
)
を
五
(
ご
)
人
(
にん
)
一同
(
いちどう
)
打揃
(
うちそろ
)
ひ
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
た。
035
テーリスタン『モシ
黒姫
(
くろひめ
)
さま、
036
高姫
(
たかひめ
)
さまの
顔色
(
かほいろ
)
が
変
(
かは
)
つて
居
(
ゐ
)
ましたな。
037
悪事
(
あくじ
)
千
(
せん
)
里
(
り
)
と
云
(
い
)
つて、
038
今朝
(
けさ
)
の
騒
(
さわ
)
ぎが
高姫
(
たかひめ
)
さまの
耳
(
みみ
)
へ
這入
(
はい
)
つたのぢやありますまいか』
039
黒姫
(
くろひめ
)
『サア、
040
何
(
なん
)
だか
何時
(
いつ
)
もに
変
(
かは
)
る
気色
(
けしき
)
だつた、
041
困
(
こま
)
つた
事
(
こと
)
になりましたな。
042
お
前
(
まへ
)
、
043
仕様
(
しやう
)
もない
事
(
こと
)
をするものだから
各々
(
めいめい
)
に
心配
(
しんぱい
)
をするのだよ』
044
テー、
045
カーは
首
(
くび
)
を
傾
(
かたむ
)
け、
046
テーリスタン、カーリンス
『ハイ、
047
私
(
わたし
)
が
悪
(
わる
)
う
御座
(
ござ
)
いました。
048
併
(
しか
)
し
教主
(
けうしゆ
)
様
(
さま
)
がお
赦
(
ゆる
)
し
下
(
くだ
)
さつたのだから、
049
もう
彼
(
あ
)
の
話
(
はなし
)
は
言
(
い
)
はぬやうに
致
(
いた
)
しませうかい。
050
折角
(
せつかく
)
教主
(
けうしゆ
)
の
言葉
(
ことば
)
を
無
(
む
)
にしてガヤガヤ
騒
(
さわ
)
ぐと、
051
世間
(
せけん
)
へ
洩
(
も
)
れてはなりませぬから』
052
黒姫
『ヘン、
053
貴方
(
あなた
)
には
都合
(
つがふ
)
が
宜
(
よろ
)
しからうが、
054
責任者
(
せきにんしや
)
たる
妾
(
わたし
)
は
大変
(
たいへん
)
に
面目玉
(
めんぼくだま
)
を
潰
(
つぶ
)
しました。
055
本当
(
ほんたう
)
に
油断
(
ゆだん
)
のならぬお
方
(
かた
)
ぢやなア。
056
テーリスタン、
057
これから
口
(
くち
)
の
物
(
もの
)
を
喰
(
く
)
ひ
合
(
あ
)
ふ
様
(
やう
)
な
仲
(
なか
)
でも
油断
(
ゆだん
)
は
出来
(
でき
)
ませぬぜ、
058
本当
(
ほんたう
)
に
困
(
こま
)
つた
人
(
ひと
)
だ。
059
もう
是
(
これ
)
きり
改心
(
かいしん
)
をするでせうな』
060
カーリンス『
玉
(
たま
)
から
事件
(
じけん
)
が
方角
(
はうがく
)
違
(
ちが
)
ひに
外
(
はづ
)
れて
居
(
ゐ
)
るのだから
仕方
(
しかた
)
がない。
061
まあまあ
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
、
062
吾々
(
われわれ
)
両人
(
りやうにん
)
が
盗
(
ぬす
)
んだ
事
(
こと
)
に
成
(
な
)
つて
居
(
ゐ
)
るのだから、
063
何
(
なん
)
と
言
(
い
)
はれても
仕方
(
しかた
)
がないさ』
064
黒姫
『ヘン、
065
なつて
居
(
ゐ
)
るから
仕方
(
しかた
)
がないとは
能
(
よ
)
う
言
(
い
)
へたものだよ。
066
オホヽヽヽヽ』
067
斯
(
か
)
く
言
(
い
)
ふ
処
(
ところ
)
へ
高姫
(
たかひめ
)
は
身体
(
からだ
)
をプリンプリンと
振
(
ふ
)
りながら、
068
チヨコチヨコ
走
(
ばし
)
りに
慌
(
あわただ
)
しく
帰
(
かへ
)
り
来
(
きた
)
り、
069
高姫
『サア
若彦
(
わかひこ
)
さま、
070
紫姫
(
むらさきひめ
)
さま、
071
お
這入
(
はい
)
りなさいませ』
072
と
先
(
さき
)
に
立
(
た
)
つ。
073
若彦、紫姫
『ハイ』
074
と
答
(
こた
)
へて
両人
(
ふたり
)
は
奥
(
おく
)
へ
通
(
とほ
)
つた。
075
黒姫
(
くろひめ
)
『
高姫
(
たかひめ
)
様
(
さま
)
、
076
えらう
早
(
はや
)
う
御座
(
ござ
)
いましたな』
077
高姫
(
たかひめ
)
『いつもの
様
(
やう
)
に、
078
ゆつくりと
御
(
お
)
礼
(
れい
)
も
出来
(
でき
)
ませぬわ。
079
能
(
よ
)
うマアお
前
(
まへ
)
さま、
080
ヌツケリと
落着
(
おちつ
)
いて
居
(
ゐ
)
られますなア。
081
黄金
(
わうごん
)
の
玉
(
たま
)
の
行方
(
ゆくへ
)
は
分
(
わか
)
りましたかい』
082
黒姫
『エー、
083
未
(
いま
)
だに………
分
(
わか
)
り…………ませぬ。
084
然
(
しか
)
し
貴女
(
あなた
)
は
誰
(
たれ
)
にお
聞
(
き
)
きなさいましたか』
085
高姫
『
貴女
(
あなた
)
は
誰
(
たれ
)
も
知
(
し
)
らぬかと
思
(
おも
)
つて
居
(
ゐ
)
らつしやるが、
086
夜前
(
やぜん
)
から
貴女
(
あなた
)
等
(
がた
)
の
喧嘩
(
けんくわ
)
を
誰
(
たれ
)
も
知
(
し
)
らない
者
(
もの
)
は
一人
(
ひとり
)
もありませぬよ。
087
みんな
聞
(
き
)
いて
居
(
ゐ
)
ましたよ』
088
黒姫
『
寔
(
まこと
)
に
申訳
(
まをしわけ
)
なき
事
(
こと
)
で
御座
(
ござ
)
います』
089
高姫
『
申訳
(
まをしわけ
)
がないと
言
(
い
)
つて
肝腎要
(
かんじんかなめ
)
の
御
(
ご
)
神宝
(
しんぱう
)
を
紛失
(
ふんしつ
)
し、
090
能
(
よ
)
う
安閑
(
あんかん
)
として
居
(
を
)
れますなア』
091
テーリスタン『もし
高姫
(
たかひめ
)
様
(
さま
)
、
092
黒姫
(
くろひめ
)
様
(
さま
)
が
悪
(
わる
)
いのぢや
御座
(
ござ
)
いませぬ。
093
私
(
わたし
)
とカーリンスと
二人
(
ふたり
)
が
何々
(
なになに
)
したのですワ』
094
高姫
『エー
聞
(
き
)
きますまい、
095
あた
穢
(
けがら
)
はしい。
096
そんな
事
(
こと
)
あ、
097
ちやんと
妾
(
わたし
)
の
耳
(
みみ
)
に
入
(
はい
)
つて
居
(
を
)
る。
098
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
肝腎
(
かんじん
)
の
責任
(
せきにん
)
は
黒姫
(
くろひめ
)
様
(
さま
)
にあるのだ。
099
黒姫
(
くろひめ
)
様
(
さま
)
何
(
なん
)
となさいます。
100
一
(
ひと
)
つ
御
(
ご
)
了簡
(
りやうけん
)
を
承
(
うけたま
)
はり
度
(
た
)
い』
101
黒姫
『
何事
(
なにごと
)
も
言依別
(
ことよりわけの
)
命
(
みこと
)
様
(
さま
)
が
御
(
お
)
引受
(
ひきう
)
け
下
(
くだ
)
さいましたから
申
(
まを
)
しますまい』
102
高姫
『それで
貴女
(
あなた
)
、
103
責任
(
せきにん
)
が
済
(
す
)
むと
思
(
おも
)
ひますか、
104
言依別
(
ことよりわけの
)
命
(
みこと
)
様
(
さま
)
に
何
(
なに
)
も
彼
(
か
)
も
塗
(
ぬ
)
りつけて、
105
能
(
よ
)
うお
前
(
まへ
)
さま、
106
平気
(
へいき
)
の
平左
(
へいざ
)
で
済
(
す
)
まして
居
(
を
)
られますな。
107
無神経
(
むしんけい
)
にも
程
(
ほど
)
があるぢやありませぬか』
108
黒姫
『さうだと
言
(
い
)
つて
如何
(
どう
)
も
仕方
(
しかた
)
がないぢやありませぬか。
109
八岐
(
やまた
)
の
大蛇
(
をろち
)
の
執念
(
しふねん
)
深
(
ぶか
)
き
企
(
たく
)
みに
依
(
よ
)
つて、
110
バラモンの
手
(
て
)
に
疾
(
とう
)
の
昔
(
むかし
)
、
111
手
(
て
)
に
這入
(
はい
)
つて
了
(
しま
)
つたものを、
112
如何
(
どう
)
してこれが
元
(
もと
)
へ
帰
(
かへ
)
りませう。
113
妾
(
わたし
)
がテー、
114
カーの
様
(
やう
)
な
者
(
もの
)
を
使
(
つか
)
つたのが
過失
(
あやまり
)
です』
115
高姫
『これ、
116
テーにカー、
117
お
前
(
まへ
)
如何
(
どう
)
する
積
(
つも
)
りだい』
118
テーリスタン『ハイ、
119
申訳
(
まをしわけ
)
がありませぬ』
120
カーリンス『
仕方
(
しかた
)
がありませぬ』
121
高姫
(
たかひめ
)
『
能
(
よ
)
う、
122
そんな
事
(
こと
)
が
言
(
い
)
へますワイ。
123
これ
黒姫
(
くろひめ
)
さま、
124
この
責任
(
せきにん
)
を
果
(
はた
)
す
為
(
た
)
めにお
前
(
まへ
)
さまは
生命
(
いのち
)
のあらむ
限
(
かぎ
)
り
草
(
くさ
)
を
分
(
わ
)
けても
探
(
たづ
)
ね
出
(
だ
)
し、
125
再
(
ふたた
)
び
手
(
て
)
に
入
(
い
)
れて
神政
(
しんせい
)
成就
(
じやうじゆ
)
のお
宝
(
たから
)
を
御
(
お
)
返
(
かへ
)
し
申
(
まを
)
さねば
済
(
す
)
みますまい。
126
何
(
なに
)
をキヨロキヨロして
居
(
ゐ
)
なさる』
127
と
坐
(
すわ
)
つた
膝
(
ひざ
)
を
畳
(
たたみ
)
が
凹
(
へこ
)
む
程
(
ほど
)
打
(
うち
)
つけて
雄猛
(
をたけ
)
びした。
128
黒姫
(
くろひめ
)
『
妾
(
わたし
)
も
決心
(
けつしん
)
して
居
(
を
)
りますよ』
129
高姫
『
二言目
(
ふたことめ
)
には
刃物
(
はもの
)
三昧
(
ざんまい
)
の
決心
(
けつしん
)
は
廃
(
や
)
めて
貰
(
もら
)
ひませう。
130
そんな
無責任
(
むせきにん
)
な
事
(
こと
)
がありますか。
131
サアサアとつとと
出
(
で
)
なさい。
132
さうして
其
(
その
)
玉
(
たま
)
が
手
(
て
)
に
入
(
い
)
らぬ
事
(
こと
)
には
再
(
ふたた
)
びお
目
(
め
)
には
懸
(
かか
)
りませぬよ。
133
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
さま、
134
お
前
(
まへ
)
さまも
嫌疑
(
けんぎ
)
が
掛
(
かか
)
つた
身体
(
からだ
)
ぢや、
135
黙
(
じつ
)
としては
居
(
を
)
られますまい。
136
竜国別
(
たつくにわけ
)
さまは、
137
親
(
おや
)
の
疑
(
うたがひ
)
を
晴
(
は
)
らす
為
(
ため
)
に
是
(
これ
)
も
黙
(
じつ
)
としては
居
(
を
)
られまい。
138
テー、
139
カーの
両人
(
りやうにん
)
も
本当
(
ほんたう
)
に
盗
(
と
)
つたか
盗
(
と
)
らぬか、
140
そりや
知
(
し
)
らぬが、
141
もう
一苦労
(
ひとくらう
)
して
世界
(
せかい
)
に
踏
(
ふ
)
み
出
(
だ
)
し、
142
五
(
ご
)
人
(
にん
)
が
五大洲
(
ごだいしう
)
に
別
(
わか
)
れて
探
(
さが
)
して
来
(
こ
)
ねばなりますまい。
143
さうぢやありませぬか。
144
若彦
(
わかひこ
)
さま、
145
紫姫
(
むらさきひめ
)
さま、
146
黄金
(
わうごん
)
の
玉
(
たま
)
を
盗
(
と
)
られた
玉
(
たま
)
無
(
な
)
しの
宮
(
みや
)
を、
147
ヌツケリと
番
(
ばん
)
して
居
(
を
)
る
訳
(
わけ
)
にはゆきますまい。
148
紫姫
(
むらさきひめ
)
さま、
149
若彦
(
わかひこ
)
さま、
150
返答
(
へんたふ
)
を
聞
(
き
)
かせなさい』
151
と
無関係
(
むくわんけい
)
の
両人
(
りやうにん
)
にまで
腹立
(
はらだ
)
ち
紛
(
まぎ
)
れに
八
(
や
)
つ
当
(
あた
)
りに
当
(
あた
)
る。
152
若彦
(
わかひこ
)
『あゝあ、
153
何処
(
どこ
)
へ
飛沫
(
とばしり
)
が
来
(
く
)
るか
分
(
わか
)
つたものぢやない。
154
併
(
しか
)
し
私
(
わたくし
)
は
言依別
(
ことよりわけ
)
さまの
御
(
ご
)
意見
(
いけん
)
を
伺
(
うかが
)
つて
其
(
その
)
上
(
うへ
)
に
致
(
いた
)
しませう。
155
紫姫
(
むらさきひめ
)
さまも
今
(
いま
)
では
重要
(
ぢうえう
)
な
位置
(
ゐち
)
に
居
(
を
)
られるのだから、
156
之
(
これ
)
も
自分
(
じぶん
)
の
自由
(
じいう
)
にはなりますまい』
157
高姫
(
たかひめ
)
『お
前
(
まへ
)
さまに
直接
(
ちよくせつ
)
責任
(
せきにん
)
がないと
言
(
い
)
つて、
158
そんな
平気
(
へいき
)
な
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
つて
居
(
を
)
られますかいなア。
159
言依別
(
ことよりわけの
)
命
(
みこと
)
様
(
さま
)
は
柔弱
(
にうじやく
)
な
奴灰殻
(
どはひから
)
ぢやから、
160
斯
(
こ
)
んな
黒姫
(
くろひめ
)
さまの
失態
(
しつたい
)
を
何
(
なん
)
とも
処置
(
しよち
)
をつけないのだ。
161
然
(
しか
)
し
教主
(
けうしゆ
)
として
誰
(
たれ
)
を
悪
(
わる
)
いと
云
(
い
)
ふ
訳
(
わけ
)
にもゆかず、
162
瑞
(
みづ
)
の
御魂
(
みたま
)
の
本性
(
ほんしやう
)
を
現
(
あら
)
はし、
163
表面
(
おもて
)
は
何
(
なに
)
喰
(
く
)
はぬ
顔
(
かほ
)
して
平気
(
へいき
)
に
見
(
み
)
せて
御座
(
ござ
)
るが、
164
心
(
こころ
)
の
裡
(
うち
)
は
矢張
(
やつぱ
)
り
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
して
御座
(
ござ
)
るに
間違
(
まちが
)
ひない。
165
一
(
いち
)
を
聞
(
き
)
いて
十
(
じふ
)
を
悟
(
さと
)
る
身魂
(
みたま
)
でないと、
166
肝腎
(
かんじん
)
の
御用
(
ごよう
)
は
勤
(
つと
)
まりますまい。
167
サア
黒姫
(
くろひめ
)
さま、
168
如何
(
どう
)
なさいます、
169
言依別
(
ことよりわけ
)
の
教主
(
けうしゆ
)
が
赦
(
ゆる
)
されても、
170
此
(
この
)
高姫
(
たかひめ
)
が
承知
(
しようち
)
致
(
いた
)
しませぬぞや。
171
妾
(
わたし
)
も
一度
(
いちど
)
はウラナイ
教
(
けう
)
を
樹
(
た
)
て、
172
お
前
(
まへ
)
さま
等
(
ら
)
と
共
(
とも
)
に
変性
(
へんじやう
)
女子
(
によし
)
に
背
(
そむ
)
いて
見
(
み
)
たが、
173
それも
素盞嗚
(
すさのをの
)
尊
(
みこと
)
様
(
さま
)
のお
心
(
こころ
)
を
取違
(
とりちが
)
ひして
居
(
を
)
つたからだ。
174
変性
(
へんじやう
)
女子
(
によし
)
の
身魂
(
みたま
)
からお
生
(
うま
)
れ
遊
(
あそ
)
ばした
言依別
(
ことよりわけの
)
命
(
みこと
)
様
(
さま
)
も
自分
(
じぶん
)
が
其
(
その
)
罪
(
つみ
)
を
一身
(
いつしん
)
に
御
(
お
)
引受
(
ひきう
)
け
遊
(
あそ
)
ばして
御座
(
ござ
)
るのぢや、
175
それを
思
(
おも
)
へば
妾
(
わたし
)
はお
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
で
堪
(
たま
)
らない。
176
地
(
ち
)
の
高天原
(
たかあまはら
)
は
此
(
この
)
高姫
(
たかひめ
)
が
是
(
これ
)
から
玉照彦
(
たまてるひこ
)
さま、
177
玉照姫
(
たまてるひめ
)
さまを
守
(
も
)
り
立
(
た
)
てて
立派
(
りつぱ
)
に
御用
(
ごよう
)
を
勤
(
つと
)
めて
見
(
み
)
せます。
178
サア
早
(
はや
)
く
何
(
なん
)
とか
準備
(
じゆんび
)
を
為
(
な
)
さらぬか』
179
黒姫
(
くろひめ
)
『
妾
(
わたし
)
も
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
、
180
屹度
(
きつと
)
何
(
なん
)
とか
働
(
はたら
)
いてお
目
(
め
)
に
掛
(
か
)
けます』
181
竜国別
(
たつくにわけ
)
『
吾々
(
われわれ
)
も
母上
(
ははうへ
)
様
(
さま
)
の
嫌疑
(
けんぎ
)
を
解
(
と
)
く
為
(
た
)
め、
182
お
暇
(
ひま
)
を
頂
(
いただ
)
いて
世界
(
せかい
)
漫遊
(
まんいう
)
に
出
(
で
)
かけます。
183
さうして
玉
(
たま
)
の
在処
(
ありか
)
を
探
(
たづ
)
ねて
来
(
き
)
ます』
184
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
『いや
妾
(
わたし
)
も
年寄
(
としより
)
と
云
(
い
)
つても
元気
(
げんき
)
がある。
185
何処迄
(
どこまで
)
も
此
(
この
)
玉
(
たま
)
を
探
(
さが
)
し
当
(
あ
)
てる
迄
(
まで
)
世界中
(
せかいぢう
)
を
巡歴
(
じゆんれき
)
して
来
(
き
)
ます』
186
高姫
(
たかひめ
)
『それは
大
(
おほい
)
に
宜
(
よろ
)
しからう、
187
さうなくてはならぬ
筈
(
はず
)
だ。
188
これ、
189
テー、
190
カー、
191
お
前
(
まへ
)
等
(
ら
)
は
如何
(
どう
)
する
心算
(
つもり
)
だい』
192
テーリスタン『
仮令
(
たとへ
)
八岐
(
やまた
)
の
大蛇
(
をろち
)
の
腹
(
はら
)
の
中
(
なか
)
を
潜
(
くぐ
)
つてでも、
193
玉
(
たま
)
の
在処
(
ありか
)
を
探
(
さが
)
さねば
措
(
お
)
きませぬ』
194
カーリンス『
私
(
わたくし
)
も
其
(
その
)
通
(
とほ
)
りだ。
195
然
(
しか
)
し
高姫
(
たかひめ
)
さま、
196
言
(
い
)
うて
置
(
お
)
くが、
197
何卒
(
どうぞ
)
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
の
玉
(
たま
)
と
紫
(
むらさき
)
の
玉
(
たま
)
を
紛失
(
ふんしつ
)
せない
様
(
やう
)
に、
198
言依別
(
ことよりわけ
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
を
助
(
たす
)
けて
保管
(
ほくわん
)
を
願
(
ねが
)
ひますよ』
199
高姫
(
たかひめ
)
『ハイハイ、
200
そんな
事
(
こと
)
は
言
(
い
)
つて
貰
(
もら
)
はいでも、
201
気
(
き
)
を
付
(
つ
)
けた
上
(
うへ
)
にも
気
(
き
)
を
付
(
つ
)
けて
居
(
ゐ
)
ます。
202
心配
(
しんぱい
)
をせずに
一日
(
ひとひ
)
も
早
(
はや
)
く
玉
(
たま
)
の
在処
(
ありか
)
を
探
(
たづ
)
ねにお
出
(
い
)
でなさい。
203
さうして
在処
(
ありか
)
が
分
(
わか
)
つたら、
204
無言
(
むげん
)
霊話
(
れいわ
)
を
早速
(
さつそく
)
掛
(
か
)
けて
下
(
くだ
)
さい。
205
皆
(
みな
)
さまも
其
(
そ
)
のお
積
(
つも
)
りで…………
宜
(
よろ
)
しいか』
206
と
叩
(
たた
)
きつける
様
(
やう
)
に
言
(
い
)
ひ
放
(
はな
)
つた。
207
五人(黒姫、鷹依姫、竜国別、テーリスタン、カーリンス)
『ハイ
承知
(
しようち
)
致
(
いた
)
しました。
208
然
(
しか
)
らば
之
(
これ
)
より
言依別
(
ことよりわけ
)
の
教主
(
けうしゆ
)
様
(
さま
)
に
一寸
(
ちよつと
)
お
暇
(
いとま
)
乞
(
ご
)
ひを
致
(
いた
)
して
来
(
き
)
ませう』
209
と
五
(
ご
)
人
(
にん
)
が
立
(
た
)
ち
上
(
あが
)
らむとするを、
210
高姫
(
たかひめ
)
は
押
(
お
)
し
止
(
とど
)
め、
211
高姫
『まあお
待
(
ま
)
ちなさい。
212
貴女
(
あなた
)
方
(
がた
)
が
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
為
(
ため
)
に
尽
(
つ
)
くすのなら、
213
此
(
この
)
儘
(
まま
)
言依別
(
ことよりわけ
)
の
教主
(
けうしゆ
)
に
分
(
わか
)
らない
様
(
やう
)
にするのが
誠
(
まこと
)
だ。
214
教主
(
けうしゆ
)
は
涙
(
なみだ
)
脆
(
もろ
)
いから、
215
又
(
また
)
甘
(
うま
)
い
事
(
こと
)
を
仰有
(
おつしや
)
ると、
216
忽
(
たちま
)
ちお
前
(
まへ
)
さま
達
(
たち
)
の
腰
(
こし
)
が
弱
(
よわ
)
つて
了
(
しま
)
ふから、
217
妾
(
わたし
)
が
善
(
よ
)
き
様
(
やう
)
に
申
(
まを
)
し
上
(
あ
)
げて
置
(
お
)
く。
218
サア
早
(
はや
)
くお
出
(
で
)
ましなさいませ』
219
竜国別
(
たつくにわけ
)
『あゝあ、
220
偉
(
えら
)
い
災難
(
さいなん
)
で、
221
高姫
(
たかひめ
)
さまに
高天原
(
たかあまはら
)
を
追
(
お
)
ひ
出
(
だ
)
されるのかなア』
222
高姫
『
嫌
(
いや
)
なら
行
(
ゆ
)
かいでも
宜
(
よろ
)
しい』
223
と
高姫
(
たかひめ
)
は
睨
(
ね
)
め
付
(
つ
)
ける。
224
五
(
ご
)
人
(
にん
)
は
是非
(
ぜひ
)
なく
高姫
(
たかひめ
)
の
宅
(
たく
)
をスゴスゴと
立
(
た
)
ち
出
(
い
)
で
錦
(
にしき
)
の
宮
(
みや
)
を
遥
(
はるか
)
に
拝
(
はい
)
し、
225
各
(
おのおの
)
旅装
(
りよさう
)
を
整
(
ととの
)
へ
世界
(
せかい
)
の
各地
(
かくち
)
に
向
(
むか
)
つて
玉
(
たま
)
の
捜索
(
そうさく
)
に
出
(
で
)
かけた。
226
(
大正一一・五・二四
旧四・二八
北村隆光
録)
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