霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一五章 情(なさけ)の鞭(むち)〔七〇七〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第22巻 如意宝珠 酉の巻 篇:第4篇 改心の幕 よみ(新仮名遣い):かいしんのまく
章:第15章 情の鞭 よみ(新仮名遣い):なさけのむち 通し章番号:707
口述日:1922(大正11)年05月27日(旧05月01日) 口述場所: 筆録者:外山豊二 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年7月30日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
鷹鳥姫と若彦は、この不思議を語り合っている。若彦と金・銀の三人は、とりもなおさず杢助にお礼を言いにいくことになって出立した。
三人が山麓の道にさしかかると、昼寝をしていた数十人の男たちに見咎められた。これはスマートボールらバラモン教徒の手勢だった。若彦は木の上に難をのがれ、金助と銀公はスマートボールに改心を促す。
スマートボールは怒って金・銀に襲い掛かるが、樹上から若彦が改心を促す宣伝歌を歌った。バラモン教徒たちは散り散りに逃げてしまった。
三人は生田の森の杢助の庵にたどり着いた。杢助は知らぬ態にて三人を迎える。若彦が玉能姫がここにいないか尋ねると、杢助は何事も神様に任せて執着を去れ、と若彦を諭す。
玉能姫は杢助親子に助けられてここにかくまわれていた。しかし杢助は女房を訪ねて教えの館を捨ててくる若彦の態度を、宣伝使として厳しく咎めたてた。また玉能姫は素盞嗚大神の御楯となって功名を表すまで夫に面会できないとのお示しを明かした。
若彦は杢助の言葉に胸を打たれ、伏し拝むと金・銀と共に去って行った。一方杢助は、神界の命とはいえ、若彦と玉能姫の間の生木を裂くような仕打ちをした苦しい胸の内をひとり明かして懺悔の涙に暮れている。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2025-04-30 05:57:42 文字数:5235 OBC :rm2215
愛善世界社版:190頁 八幡書店版:第4輯 450頁 修補版: 校定版:197頁 普及版:88頁 初版: ページ備考:
001 時置師(ときおかしの)神(かみ)、002初稚姫(はつわかひめ)、003玉能姫(たまのひめ)は、004忽然(こつぜん)として此(こ)の場(ば)に姿(すがた)を隠(かく)した。005何時(いつ)の間(ま)にか押寄(おしよ)せ来(きた)りしバラモン教(けう)のスマートボール以下(いか)数拾(すうじふ)人(にん)の人影(ひとかげ)も、006煙(けむり)の如(ごと)く消(き)えて了(しま)つた。007鷹鳥姫(たかとりひめ)、008若彦(わかひこ)は互(たがひ)に顔(かほ)を見合(みあは)せ、009不審(ふしん)の念(ねん)に駆(か)られながら、
010鷹鳥姫(たかとりひめ)(高姫)『これ若彦(わかひこ)さま、011なんと不思議(ふしぎ)ぢやありませぬか。012私(わたくし)は貴方(あなた)に御(お)留守(るす)を頼(たの)み、013此(この)山(やま)の頂(いただき)に玉能姫(たまのひめ)さまと登(のぼ)つて見(み)れば、014黄金(わうごん)の立像(りつざう)四辺(あたり)眩(まば)ゆき許(ばか)りに輝(かがや)き給(たま)ひ、015荘厳(さうごん)無比(むひ)にして近(ちか)づくべからざるやうでしたが、016勇気(ゆうき)を出(だ)して御(お)側(そば)近(ちか)く立寄(たちよ)つたと思(おも)へば、017左右(さいう)の御手(みて)を伸(の)ばして吾(われ)等(ら)二人(ふたり)を中空(ちうくう)に投(ほ)り上(あ)げ給(たま)ひ、018後(あと)は夢心地(ゆめごこち)、019覚(さ)めて見(み)れば吾(わが)庵(いほり)の庭先(にはさき)に倒(たふ)れてゐました。020さうして天(てん)より神(かみ)さまの声(こゑ)聞(きこ)え、021いろいろの教訓(けうくん)を賜(たま)はりし時(とき)は、022実(じつ)に畏(おそ)れ入(い)つて自分(じぶん)の今(いま)までの罪(つみ)が山(やま)の如(ごと)く前(まへ)に現(あら)はれ来(きた)り、023何(なん)とも云(い)へぬ心(こころ)の苦(くる)しさ。024今迄(いままで)の取違(とりちが)ひを全(まつた)く覚(さと)り、025神(かみ)さまに罪(つみ)を赦(ゆる)されたと思(おも)へば、026バラモン教(けう)の人(ひと)は竹槍(たけやり)を以(もつ)て、027妾(わたし)等(たち)二人(ふたり)を突(つ)き滅(ほろ)ぼさむと攻(せ)め寄(よ)せ来(きた)る危機(きき)一髪(いつぱつ)の際(さい)、028杢助(もくすけ)さまは初稚姫(はつわかひめ)様(さま)を背(せな)に負(お)ひ、029玉能姫(たまのひめ)さまを伴(ともな)ひ、030宣伝歌(せんでんか)を歌(うた)ひながら此(この)場(ば)に現(あら)はれ、031初稚姫(はつわかひめ)様(さま)を背(せな)より下(おろ)し給(たま)うたと思(おも)へば、032初稚姫(はつわかひめ)様(さま)は神懸(かみがかり)状態(じやうたい)に御(お)成(な)り遊(あそ)ばし、033娑婆(しやば)即(そく)寂光(じやくくわう)浄土(じやうど)の因縁(いんねん)を細々(こまごま)と御(お)説(と)き下(くだ)され、034ヤレ有難(ありがた)やと伏(ふ)し拝(をが)むと見(み)れば、035三(さん)人(にん)の御(お)姿(すがた)は煙(けむり)と消(き)えて了(しま)はれた。036不思議(ふしぎ)な事(こと)があればあるものだなア』
037若彦(わかひこ)『私(わたくし)も其(そ)の通(とほ)りで御座(ござ)います。038天(てん)から女神(めがみ)の声(こゑ)聞(きこ)え、039いろいろの尊(たふと)き教訓(けうくん)を賜(たま)はり、040杢助(もくすけ)様(さま)一行(いつかう)は現(げん)に此処(ここ)に御(お)出(い)でになつたのは、041決(けつ)して夢(ゆめ)でも現(うつつ)でもありますまい。042又(また)蜈蚣姫(むかでひめ)の部下(ぶか)の人々(ひとびと)が攻(せ)め寄(よ)せて来(き)たのも事実(じじつ)です。043吾々(われわれ)両人(りやうにん)は杢助(もくすけ)様(さま)親子(おやこ)に救(すく)はれたも同様(どうやう)ですから、044黙(だま)つて居(を)る訳(わけ)には行(ゆ)きますまい。045是(これ)から杢助(もくすけ)様(さま)の御(お)宿(やど)を訪(たづ)ね、046御(お)礼(れい)に参(まゐ)らねばなりますまい』
047鷹鳥姫(高姫)『さうですかなア、048貴方(あなた)御(ご)苦労(くらう)だが妾(わたし)は此処(ここ)に神(かみ)様(さま)の御(お)給仕(きふじ)をしながら、049留守(るす)をしてゐます。050一度(いちど)御(お)礼(れい)に行(い)つて来(き)て下(くだ)さい。051金(きん)さま、052銀(ぎん)さま、053貴方(あなた)も共(とも)に助(たす)けて頂(いただ)いたのだ。054若彦(わかひこ)さまと一緒(いつしよ)に杢助(もくすけ)さまの宅(たく)迄(まで)、055御(お)礼(れい)に行(い)つてお出(い)でなさい』
056 金(きん)、057銀(ぎん)一度(いちど)に、
058金助、銀公『ハイ、059有難(ありがた)う、060御(お)伴(とも)致(いた)します』
061と感謝(かんしや)の涙(なみだ)に咽(むせ)ぶ。062茲(ここ)に若彦(わかひこ)は口(くち)を嗽(そそ)ぎ手(て)を洗(あら)ひ、063高姫(たかひめ)、064金(きん)、065銀(ぎん)二人(ふたり)と共(とも)に、066神前(しんぜん)に向(むか)ひ恭(うやうや)しく天津(あまつ)祝詞(のりと)を奏上(そうじやう)し、067神言(かみごと)を宣(の)り、068庵(いほり)を後(あと)に崎嶇(きく)たる山坂(やまさか)を伝(つた)ひ伝(つた)ひて下(くだ)り行(ゆ)く。
069 山麓(さんろく)の稍(やや)平坦(へいたん)なる大木(たいぼく)の茂(しげ)みに差掛(さしかか)る時(とき)しも、070午睡(ひるね)をしてゐた拾数(じふすう)人(にん)の男(をとこ)、071三(さん)人(にん)の姿(すがた)を見(み)るよりスツクと立(た)ち上(あが)り、072前途(ゆくて)に大手(おほて)を拡(ひろ)げ、
073男たち『ヤー、074其(その)方(はう)は三五教(あななひけう)の若彦(わかひこ)であらう。075汝(なんぢ)は玉能姫(たまのひめ)と云(い)ふ魔神(ましん)を使(つか)つて、076俺(おれ)達(たち)を清泉(きよいづみ)に投(な)げ込(こ)んだ悪神(あくがみ)の張本(ちやうほん)、077手足(てあし)も顔(かほ)も傷(きず)だらけに致(いた)しやがつた。078サア、079これからは返報(へんぱう)がやしして呉(く)れむ、080覚悟(かくご)をせよ』
081と四方(しはう)八方(はつぱう)より棍棒(こんぼう)打振(うちふ)り攻(せ)め来(きた)る。
082 若彦(わかひこ)は飽(あ)く迄(まで)無抵抗(むていかう)主義(しゆぎ)を支持(しぢ)すれども、083敵(てき)の勢(いきほひ)余(あま)り猛烈(まうれつ)にして危(あやふ)くなりければ、084四辺(あたり)の枝(えだ)振(ぶ)りよき松(まつ)を目蒐(めが)けて猿(ましら)の如(ごと)く駆(か)け上(のぼ)つた。085金助(きんすけ)、086銀公(ぎんこう)の二人(ふたり)は松(まつ)の小株(こかぶ)を楯(たて)に取(と)り、
087金助(きんすけ)『オイ、088スマートボール、089カナンボールの阿兄(あにい)、090その腹立(はらだち)は最(もつと)もだが、091此(こ)の宣伝使(せんでんし)の知(し)つたことぢやない。092貴様(きさま)等(ら)が作(つく)つた心(こころ)の穽(おとしあな)に落(お)ち込(こ)んだのだ。093敵(てき)は汝(なんぢ)の心(こころ)に潜(ひそ)んでゐるぞ。094マア気(き)を落着(おちつ)けよ。095貴様(きさま)は今(いま)杢助(もくすけ)の娘(むすめ)初稚姫(はつわかひめ)に危急(ききふ)を救(すく)はれて、096雲(くも)を霞(かすみ)と遁(に)げ去(さ)りながら、097其(そ)の御恩(ごおん)を忘(わす)れ、098未(ま)だ三五教(あななひけう)に敵意(てきい)を含(ふく)むのか。099貴様(きさま)冷静(れいせい)に考(かんが)へて見(み)よ』
100スマート『考(かんが)へるも考(かんが)へぬもあつたものかい。101俺(おれ)が何時(いつ)杢助(もくすけ)の娘(むすめ)に救(たす)けられたか。102莫迦(ばか)を云(い)ふない、103テンで鷹鳥姫(たかとりひめ)の庵(いほり)に行(い)つたこともない。104なア、105カナン、106妙(めう)なことを金助(きんすけ)の奴(やつ)吐(ぬか)すぢやないか』
107金助『吐(ぬか)すも吐(ぬか)さぬもあつたものかい、108白々(しらじら)しい。109僅(わづ)か一人(ひとり)や二人(ふたり)の宣伝使(せんでんし)に向(むか)つて、110竹槍隊(たけやりたい)を引率(いんそつ)し、111芋刺(いもざ)しにして呉(く)れむと、112大人気(おとなげ)なくも襲撃(しふげき)して来(き)よつたぢやないか。113余(あま)り空(そら)惚(とぼ)けない』
114スマートボール『貴様(きさま)はちつと逆上(のぼ)せてゐよるなア。115これから俺(おれ)が谷水(たにみづ)でも掬(すく)つて飲(の)ましてやらう』
116金助『逆上(のぼ)せて居(ゐ)るのは貴様(きさま)等(ら)ぢや。117皆(みな)神(かみ)様(さま)が貴様(きさま)等(ら)のやうな分(わか)らん屋(や)には相手(あひて)になるなと云(い)つて、118若彦(わかひこ)さまを此(こ)の松(まつ)の木(き)の頂上(てつぺん)まで上(のぼ)らせてござるのだ。119ちつと上(のぼ)せ様(やう)が違(ちが)ふぞ。120水(みづ)を飲(の)ましてやると云(い)ひよつたが、121俺(おれ)の欲(ほつ)する水(みづ)は、122飲(の)めば直様(すぐさま)、123汗(あせ)や小便(せうべん)になるやうな水(みづ)ではない。124乾(かわ)くことなく、125尽(つ)くることなき身魂(みたま)を洗(あら)ふ生命(いのち)の水(みづ)だ。126瑞(みづ)の身魂(みたま)の救(すく)ひの清水(せいすゐ)だ。127サア、128これから俺(おれ)が飲(の)ましてやらう。129確(しつか)り聞(き)けよ』
130カナン『金助(きんすけ)の奴(やつ)、131貴様(きさま)は筒井(つつい)順慶(じゆんけい)式(しき)だな。132腹(はら)の黒(くろ)い裏返(うらがへ)り者(もの)、133サア、134一(ひと)つ目(め)を覚(さ)ましてやらう。135覚悟(かくご)を致(いた)せ』
136と迫(せま)り来(きた)る。
137金助(きんすけ)『アハヽヽヽ、138俺(おれ)の腹(はら)が黒(くろ)いと吐(ぬか)すが、139貴様(きさま)が大将(たいしやう)と仰(あふ)ぐ蜈蚣姫(むかでひめ)は何(ど)うだい。140身体(からだ)一面(いちめん)真黒(まつくろ)ぢやないか。141其(そ)の股肱(ここう)と仕(つか)へてゐる貴様(きさま)の顔(かほ)は野山(のやま)の炭焼(すみや)きか、142炭団玉(たどんだま)か、143但(ただし)は屋根葺(やねふき)爺(おやぢ)か、144アフリカの黒(くろ)ン坊(ばう)か、145烏(からす)のお化(ば)けか、146紺屋(こんや)の丁稚(でつち)か、147岩戸(いはと)を閉(し)めた曲神(まがかみ)か、148得体(えたい)の分(わか)らぬ真黒(まつくろ)黒助(くろすけ)。149アハヽヽヽ』
150と肩(かた)を大(おほ)きく揺(ゆす)り、151二三度(にさんど)足(あし)で大地(だいち)に餅(もち)搗(つ)きながら笑(わら)つて見(み)せた。152スマート、153カナンは烈火(れつくわ)の如(ごと)く憤(いきどほ)り、
154スマートボール、カナンボール『腹黒(はらぐろ)の二枚舌(にまいじた)、155腰抜(こしぬ)け野郎(やらう)奴(め)、156云(い)はして置(お)けば際限(さいげん)もなき雑言(ざふごん)無礼(ぶれい)、157最早(もはや)勘忍(かんにん)相成(あひな)らぬ、158覚悟(かくご)致(いた)せ』
159と武者(むしや)振(ぶ)りつく。160金(きん)、161銀(ぎん)二人(ふたり)は拾数(じふすう)人(にん)を相手(あひて)にコロンツ、162コロンツと格闘(かくとう)を始(はじ)めた。
163 松(まつ)の大木(たいぼく)の上(うへ)より若彦(わかひこ)は声(こゑ)を張(は)り上(あ)げて歌(うた)ひ出(だ)した。
164若彦『神(かみ)の造(つく)りし神(かみ)の国(くに)
165恵(めぐ)みの露(つゆ)に潤(うるほ)ひて
166大神宝(おほみたから)と生(うま)れたる
167世界(せかい)の人(ひと)は神(かみ)の御子(みこ)
168人(ひと)のみならず鳥(とり)獣(けもの)
169魚貝(ぎよかひ)の端(はし)に至(いた)るまで
170神(かみ)の造(つく)りし貴(うづ)の御子(みこ)
171互(たがひ)に憎(にく)み争(あらそ)ふは
172吾(われ)等(ら)を造(つく)りし祖神(おやがみ)の
173深(ふか)き心(こころ)に背(そむ)くなり
174スマートボール其(その)他(ほか)の
175バラモン教(けう)の人々(ひとびと)よ
176吾(われ)等(ら)も同(おな)じ天地(あめつち)の
177神(かみ)のみ息(いき)に生(うま)れたる
178断(き)つても断(き)れぬ同胞(はらから)よ
179愛(あい)し愛(あい)され助(たす)け合(あ)ひ
180聖(きよ)き尊(たふと)き此(こ)の世(よ)をば
181一日(ひとひ)も長(なが)く存(なが)らへて
182皇(すめ)大神(おほかみ)の降(ふ)らします
183恵(めぐみ)の雨(あめ)に浴(よく)し合(あ)ひ
184互(たがひ)に心(こころ)打(う)ち解(と)けて
185四海(しかい)同胞(どうはう)の標本(へうほん)を
186世界(せかい)に示(しめ)し神(かみ)の子(こ)と
187生(うま)れし実(じつ)をめいめいに
188挙(あ)げよぢやないか人々(ひとびと)よ
189三五教(あななひけう)やバラモンと
190名(な)は変(かは)れども世(よ)を救(すく)ふ
191誠(まこと)と心(こころ)は皆(みな)一(ひと)つ
192一(ひと)つ心(こころ)に睦(むつ)び合(あ)ひ
193下(くだ)らぬ争(あらそ)ひ打切(うちき)りて
194手(て)を引合(ひきあ)うて神(かみ)の道(みち)
195花(はな)咲(さ)く春(はる)をやすやすと
196心(こころ)楽(たの)しきパラダイス
197進(すす)み行(ゆ)く世(よ)を松(まつ)の上(うへ)
198松(まつ)の緑(みどり)の若彦(わかひこ)が
199皇(すめ)大神(おほかみ)に照(て)らされし
200心(こころ)の魂(たま)を打開(うちあ)けて
201神(かみ)より出(い)でし同胞(はらから)に
202真心(まごころ)籠(こ)めて説(と)き諭(さと)す
203あゝ諸人(もろびと)よ諸人(もろびと)よ
204三五教(あななひけう)やバラモンと
205小(ちひ)さき隔(へだ)てを打破(うちやぶ)り
206尊(たふと)き神(かみ)の御子(みこ)として
207清(きよ)き此(この)世(よ)を永遠(とこしへ)に
208千代(ちよ)も八千代(やちよ)も暮(くら)さうか
209返答(へんたふ)聞(き)かせ早(はや)聞(き)かせ
210汝(なれ)が心(こころ)の仇波(あだなみ)は
211汝(なれ)が心(こころ)に立(た)ち騒(さわ)ぐ
212波(なみ)の鎮(しづ)まる其(そ)の間(あひだ)
213この若彦(わかひこ)は何時(いつ)迄(まで)も
214松(まつ)の梢(こずゑ)に安坐(あんざ)して
215改心(かいしん)するを待(ま)ち暮(くら)す
216あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
217御霊(みたま)幸(さち)はひましませよ
218朝日(あさひ)は照(て)るとも曇(くも)るとも
219月(つき)は盈(み)つとも虧(か)くるとも
220仮令(たとへ)大地(だいち)は沈(しづ)むとも
221神(かみ)は吾(われ)等(ら)の御親(みおや)ぞや
222人(ひと)は残(のこ)らず神(かみ)の御子(みこ)
223人(ひと)と人(ひと)とは同胞(はらから)よ
224親子(おやこ)兄弟(きやうだい)睦(むつ)び合(あ)ひ
225五六七(みろく)の神代(みよ)を永遠(とこしへ)に
226手(て)を引合(ひきあ)うて楽(たのし)まむ
227神(かみ)が表(おもて)に現(あ)れまして
228善(ぜん)と悪(あく)とを別(わ)け給(たま)ふ
229此(この)世(よ)を造(つく)りし神直日(かむなほひ)
230心(こころ)も広(ひろ)き大直日(おほなほひ)
231唯(ただ)何事(なにごと)も吾々(われわれ)は
232互(たがひ)に胸(むね)を明(あ)かし合(あ)ひ
233過(あやま)ちあらば御(お)互(たがひ)に
234諫(いさ)め交(かは)して天地(あめつち)の
235神(かみ)の心(こころ)に叶(かな)ひつつ
236二(ふた)つの教(をしへ)を解(と)け合(あは)せ
237誠(まこと)一(ひと)つの神界(しんかい)の
238道(みち)に復(かへ)ろぢやないかいな
239道(みち)に進(すす)もぢやないかいな
240これ若彦(わかひこ)が一生(いつしやう)の
241バラモン教(けう)の人々(ひとびと)に
242対(たい)して願(ねが)ふ真心(まごころ)ぞ
243あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
244御霊(みたま)幸(さち)はひましませよ』
245と歌(うた)ひ終(をは)つた。
246 俄(にはか)に吹(ふ)き来(く)る春風(はるかぜ)に、247松葉(まつば)の戦(そよ)ぎそよそよと、248梢(こずゑ)を伝(つた)ひ下(くだ)り来(きた)る。249此(こ)の言霊(ことたま)に辟易(へきえき)し、250スマートボールを始(はじ)めとし、251数多(あまた)の人々(ひとびと)一散(いつさん)に、252雲(くも)を霞(かすみ)と走(はし)り行(ゆ)く。253金(きん)、254銀(ぎん)一度(いちど)に、
255金助、銀公『若彦(わかひこ)さま、256貴方(あなた)の宣伝歌(せんでんか)に依(よ)つて一同(いちどう)の者(もの)は、257頭(あたま)を抱(かか)へ尻(しり)引(ひつ)からげ、258初(はじ)めの勢(いきほひ)にも似(に)ず、259雲(くも)を霞(かすみ)と遁(に)げ散(ち)つて了(しま)ひました。260併(しか)し乍(なが)ら彼(かれ)等(ら)とても良心(りやうしん)の閃(ひらめ)きはありませうが、261さうぢやと云(い)つて決(けつ)して油断(ゆだん)はなりませぬ。262気(き)をつけて参(まゐ)りませうか』
263若彦(わかひこ)『マア急(いそ)ぐに及(およ)ばぬ。264バラモン教(けう)の人々(ひとびと)に対(たい)し、265私(わたくし)の宣伝歌(せんでんか)が功(こう)を奏(そう)したか、266奏(そう)しなかつたかは知(し)りませぬが、267兎(と)も角(かく)吾々(われわれ)の進路(しんろ)を開(ひら)いて呉(く)れただけでも結構(けつこう)だ。268此(こ)の松(まつ)の木(き)の麓(ふもと)に於(おい)て大神(おほかみ)さまに感謝(かんしや)の祝詞(のりと)を献(ささ)げませう』
269と言(い)ひ終(をは)り早(はや)くも拍手(はくしゆ)再拝(さいはい)、270鷹鳥山(たかとりやま)の絶頂(ぜつちやう)を目標(めあて)に祝詞(のりと)を奏上(そうじやう)し始(はじ)めた。271若彦(わかひこ)外(ほか)二人(ふたり)が汗(あせ)を流(なが)して奏上(そうじやう)する英気(えいき)に充(み)ちた顔(かほ)を、272遠慮(ゑんりよ)えしやくもなく山(やま)の春風(はるかぜ)が吹(ふ)いて通(とほ)る。
273 再度山(ふたたびやま)の山麓(さんろく)、274生田(いくた)の森(もり)の中(なか)に庵(いほり)を結(むす)ぶ杢助(もくすけ)の仮住居(かりずまゐ)、275形(かたち)ばかりの門戸(もんこ)を開(ひら)いて入(い)り来(きた)る三(さん)人(にん)の男(をとこ)があつた。276その中(なか)の一人(ひとり)は若彦(わかひこ)である。277若彦(わかひこ)は、
278若彦『頼(たの)みます 頼(たの)みます』
279と門(もん)の戸(と)を叩(たた)いて訪(おとな)へば、
280(杢助)『オー』
281と答(こた)へて出(い)で来(きた)る以前(いぜん)の杢助(もくすけ)、282素知(そし)らぬ顔(かほ)にて、
283杢助『ヤーお前(まへ)さまは若彦(わかひこ)の宣伝使(せんでんし)さま、284鷹鳥山(たかとりやま)の庵(いほり)に於(おい)て身魂(みたま)を研(みが)き、285旁(かたがた)御教(みをしへ)を鷹鳥姫(たかとりひめ)と共(とも)に四方(よも)に宣伝(せんでん)して御座(ござ)ると聞(き)いて居(ゐ)たが、286今日(けふ)は又(また)如何(いか)なる風(かぜ)の吹(ふ)き廻(まは)しか、287此(こ)の杢助(もくすけ)が隠家(かくれが)を訪(たづ)ねて御(お)越(こ)し遊(あそ)ばしたのは、288如何(いか)なる御用(ごよう)でございますか』
289若彦『最前(さいぜん)は鷹鳥姫(たかとりひめ)様(さま)始(はじ)め吾々(われわれ)一同(いちどう)、290いかい御(お)世話(せわ)になりました。291御(お)礼(れい)を申(まを)さむかと思(おも)ふ間(ま)もなく、292貴方(あなた)は初稚姫(はつわかひめ)さま、293玉能姫(たまのひめ)と共(とも)に御(お)帰(かへ)り遊(あそ)ばしたので、294鷹鳥姫(たかとりひめ)さまも一(ひと)つ、295言葉(ことば)の御(お)礼(れい)に行(い)つて来(こ)ねば済(す)まないから「若彦(わかひこ)、296お前(まへ)御(お)礼(れい)に行(い)つて来(こ)い」との仰(あふ)せ、297遅(おく)れながら只今(ただいま)参(まゐ)りました』
298杢助『此(こ)の日(ひ)の暮(くれ)紛(まぎ)れに三人(さんにん)連(づ)れで、299此処(ここ)へやつて来(く)るとは合点(がてん)が行(ゆ)かぬ。300此(こ)の杢助(もくすけ)は二三(にさん)日前(にちまへ)から閾(しきゐ)一(ひと)つ跨(また)げた事(こと)はござらぬ。301随(したが)つて貴方(あなた)を最前(さいぜん)とやら御(お)助(たす)け申(まを)した覚(おぼ)えはござらねば、302何(ど)うぞ此(この)儘(まま)御(お)帰(かへ)り下(くだ)さいませ』
303と膠(にべ)も杓子(しやくし)もなく、304榎(えのき)で鼻(はな)を擦(こす)つたやうな挨拶(あいさつ)振(ぶ)り、305稍(やや)面(つら)を膨(ふく)らし、306目(め)を凝視(みつ)めて不機嫌(ふきげん)顔(がほ)、307若彦(わかひこ)は合点(がてん)行(ゆ)かず、308暫(しば)し答(こた)ふる言葉(ことば)も知(し)らなかつたが、309思(おも)ひ切(き)つたやうに、
310若彦『玉能姫(たまのひめ)は貴方(あなた)の宅(うち)に御(お)世話(せわ)になつて居(を)りませぬか』
311杢助『それを訊(たず)ねて何(なん)となさる。312三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)たるものは、313一切(いつさい)を神(かみ)様(さま)に任(まか)せ、314総(すべ)ての執着(しふちやく)を去(さ)り、315師匠(ししやう)を杖(つゑ)につかず、316人(ひと)を相手(あひて)とせず、317親子(おやこ)女房(にようばう)血類(けつるい)を力(ちから)にすなとの教(をしへ)ではござらぬか。318何(なに)を血迷(ちまよ)うて鷹鳥山(たかとりやま)の霊場(れいぢやう)に玉能姫(たまのひめ)を伴(つ)れ込(こ)み、319穢(けが)らはしくも此(こ)の杢助(もくすけ)の宅(たく)に玉能姫(たまのひめ)は居(ゐ)ないかなぞと以(もつ)ての外(ほか)の御(お)心得(こころえ)違(ちが)ひ、320左様(さやう)な腐(くさ)つた魂(たましひ)の宣伝使(せんでんし)には今日(けふ)限(かぎ)り絶縁(ぜつえん)致(いた)します。321此(こ)の閾(しきゐ)、322一歩(いつぽ)でも跨(また)げるなら、323サア、324跨(また)げて見(み)なさい』
325 奥(おく)には玉能姫(たまのひめ)の咳(せき)払(ばら)ひ、326若彦(わかひこ)の耳(みみ)には殊更(ことさら)刺激(しげき)を与(あた)へた。327玉能姫(たまのひめ)は杢助(もくすけ)に救(すく)はれ、328此処(ここ)に病気(いたづき)の身(み)を横(よこた)へながら、329若彦(わかひこ)との問答(もんだふ)を心(こころ)痛(いた)めて聞(き)いて居(ゐ)る。330飛(と)び立(た)つばかり会(あ)ひたさ見(み)たさに、331玉能姫(たまのひめ)は心(こころ)は矢竹(やたけ)に焦(あせ)れども、332人目(ひとめ)の関(せき)や、333抜(ぬ)きさしならぬ杢助(もくすけ)の堅(かた)き言葉(ことば)に遮(さへぎ)られ、334何(なん)と返答(いらへ)もないじやくり、335夜具(やぐ)に食(く)ひつきハラハラと涙(なみだ)を袂(たもと)に拭(ぬぐ)ひつつあつた。
336 杢助(もくすけ)は二人(ふたり)の心(こころ)を察(さつ)し得(え)ない程(ほど)の木石漢(ぼくせきかん)にはあらねども、337二人(ふたり)を思(おも)ふ慈悲心(じひしん)の波(なみ)にせかれて涙(なみだ)を隠(かく)し、338態(わざ)と呶鳴声(どなりごゑ)、
339杢助『ヤイ、340黄昏(たそがれ)のこととて顔(かほ)は慥(たし)かに分(わか)らねど、341其(そ)の声(こゑ)は若彦(わかひこ)によく似(に)たり。342恐(おそ)らくは若彦(わかひこ)に間違(まちが)ひなからうかも知(し)れぬ。343併(しか)し乍(なが)ら三五教(あななひけう)には不惜(ふじやく)身命(しんみやう)的(てき)宣伝使(せんでんし)の数多(あまた)綺羅星(きらぼし)の如(ごと)く、344心(こころ)の玉(たま)を輝(かがや)かし神(かみ)の教(をしへ)の道(みち)を猛進(まうしん)し、345世人(せじん)を導(みちび)く身分(みぶん)として女房(にようばう)に心(こころ)を奪(うば)はれ、346教(をしへ)の館(やかた)を捨(す)てて遥々(はるばる)訪(たづ)ね来(く)る如(ごと)き腰抜(こしぬ)けは一人(ひとり)も御座(ござ)らぬ。347汝(なんぢ)は神(かみ)の名(な)否(いな)宣伝使(せんでんし)の雅号(ががう)をサツクとなし、348此(この)世(よ)を誑(たば)かる泥坊(どろばう)の類(たぐひ)ならむ。349汝(なんぢ)の如(ごと)き偽物(にせもの)、350諸方(しよはう)を徘徊(はいくわい)致(いた)すに依(よ)つて、351第一(だいいち)三五教(あななひけう)の面(つら)汚(よご)し、352獅子(しし)身中(しんちう)否(いな)志士(しし)集団(しふだん)の団体(だんたい)をして腰抜教(こしぬけけう)と天下(てんか)に誤解(ごかい)せしめ、353神(かみ)の神聖(しんせい)を冒涜(ばうとく)するもの、354汝(なんぢ)は是(これ)より己(おの)が住家(すみか)へ帰(かへ)り、355一意(いちい)専念(せんねん)身魂(みたま)を研(みが)き、356名実(めいじつ)相合(あひがつ)する神人(しんじん)となつて、357然(しか)る後(のち)宣伝使(せんでんし)が希望(きばう)ならば宣伝使(せんでんし)となれ。358それが嫌(いや)なら只今(ただいま)の儘(まま)流浪人(さすらひびと)となつて人(ひと)の門戸(もんこ)を叩(たた)き、359乞食(こじき)の恥(はぢ)を曝(さら)すがよからう。360斯(か)く申(まを)す杢助(もくすけ)の心(こころ)は千万(せんばん)無量(むりやう)、361推量(すゐりやう)致(いた)して名誉(めいよ)泥坊(どろばう)の二人(ふたり)と共(とも)に疾(と)く此(この)場(ば)を立去(たちさ)れ。362又(また)玉能姫(たまのひめ)とやらの宣伝使(せんでんし)は、363神界(しんかい)のため夫(をつと)に暫(しばら)く離(はな)れて素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)の御楯(みたて)となり、364華々(はなばな)しき功名(こうみやう)を致(いた)す迄(まで)、365夫(をつと)に面会(めんくわい)は致(いた)すまいぞ』
366と声(こゑ)張(は)り上(あ)げて夫婦(ふうふ)に聞(き)かす杢助(もくすけ)が情(なさけ)の言葉(ことば)、367若彦(わかひこ)は胸(むね)に鎹(かすがひ)打(う)たるる心地(ここち)、368両手(りやうて)を合(あは)せ杢助(もくすけ)の庵(いほり)を伏(ふ)し拝(をが)み、369名残(なごり)惜(を)しげに振返(ふりかへ)り振返(ふりかへ)り、370二人(ふたり)の男(をとこ)と共(とも)に、371闇(やみ)の帳(とばり)に包(つつ)まれてしまつた。
372 後(あと)に杢助(もくすけ)は声(こゑ)を湿(しめ)らせながら独言(ひとりごと)、
373杢助『大神(おほかみ)のため、374世人(よびと)のためとは云(い)ひながら、375生木(なまき)を裂(さ)くやうな杢助(もくすけ)が仕打(しうち)ち、376若彦(わかひこ)必(かなら)ず恨(うら)んで呉(く)れな。377それに就(つい)ても玉能姫(たまのひめ)、378せめて一目(ひとめ)なりと会(あ)はして呉(く)れたら良(よ)ささうなものだのに、379気強(きづよ)い杢助(もくすけ)であると嘸(さぞ)恨(うら)んで居(ゐ)るであらう。380最前(さいぜん)初稚姫(はつわかひめ)様(さま)の御(お)知(し)らせに依(よ)つて鷹鳥山(たかとりやま)へ救援(きうゑん)に向(むか)ふ折(を)りしも玉能姫(たまのひめ)は御(お)伴(とも)をしようと云(い)つた。381其(その)時(とき)無下(むげ)に叱(しか)りつけ初稚姫(はつわかひめ)様(さま)を背(せな)に負(お)ひ、382後(あと)に心(こころ)を残(のこ)しつつ宣伝歌(せんでんか)を歌(うた)ひながら鷹鳥姫(たかとりひめ)が館(やかた)に行(い)つて見(み)れば、383神(かみ)の御(お)告(つげ)に寸分(すんぶん)違(たが)はず、384悲惨(ひさん)の幕(まく)が下(お)りて居(ゐ)た。385玉能姫(たまのひめ)の幽体(いうたい)は又(また)見(み)えつ隠(かく)れつ来(き)て居(を)つたやうだ。386嗚呼(ああ)無理(むり)もない。387併(しか)し乍(なが)ら今(いま)会(あ)はせるは易(やす)けれど、388言依別(ことよりわけの)命(みこと)様(さま)の御(ご)内命(ないめい)もあり、389且(かつ)又(また)至仁至愛(みろく)の大神(おほかみ)様(さま)の厳(きび)しき御(お)示(しめ)し、390何程(なにほど)玉能姫(たまのひめ)の心情(しんじやう)を察(さつ)すればとて、391神(かみ)さまの仰(おほせ)には背(そむ)かれず、392神(かみ)の教(をしへ)と人情(にんじやう)の締木(しめき)にかかつた此(こ)の杢助(もくすけ)の胸(むね)の苦(くる)しさよ。393アヽ両人(りやうにん)、394今(いま)の辛(つら)き別(わか)れは勝利(しようり)の都(みやこ)に達(たつ)する首途(かどで)、395杢助(もくすけ)が心(こころ)の中(なか)も些(ちつと)は推量(すゐりやう)して下(くだ)され』
396と流石(さすが)剛毅(がうき)の杢助(もくすけ)も情(なさけ)に絡(から)まれ、397潜々(さめざめ)と落涙(らくるい)に咽(むせ)んでゐる。398奥(おく)には初稚姫(はつわかひめ)、399玉能姫(たまのひめ)が奏(かな)づる一絃琴(いちげんきん)の音(ね)、400しとやかに鼓膜(こまく)をそそる。
401(大正一一・五・二七 旧五・一 外山豊二録)
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