霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第八章 (おに)解脱(げだつ)〔七〇〇〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第22巻 如意宝珠 酉の巻 篇:第2篇 心猿意馬 よみ(新仮名遣い):しんえんいば
章:第8章 鬼の解脱 よみ(新仮名遣い):おにのげだつ 通し章番号:700
口述日:1922(大正11)年05月25日(旧04月29日) 口述場所: 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年7月30日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
高姫は荒野原に居た。頭の取れた地蔵が左手に玉を載せている。その玉を如意宝珠だと思って、高姫は地蔵の手から玉を取ろうともがいていた。
すると地蔵の後ろから、黒姫、鷹依姫、竜国別、テーリスタン、カーリンスが現れた。高姫は黒姫に、黄金の玉探索の首尾を尋ねる。黒姫は、自分たちは身を投げて死んだのだが、高姫を取り殺してこの地獄に連れて来たのだ、という。
高姫が自分の頭を探ると、三角形の紙帽子が被せられていた。どうやら自分が死んだらしいと悟ると、高姫は逆上して五人を怒鳴りつけた。
しかし五人は数を頼りに高姫に掴みかかり、高姫は追い詰められてしまう。荒野原を逃げていくと、大川に突き当たった。高姫は濁流に飛び込んで向こう岸に渡ると、ぬれた着物を抱えて薄の原を傷だらけになりながら逃げて行った。
五人はなおも追いかけてくる。高姫は薄の中に隠れている。見ると五人は鉄棒を引っさげた鬼の姿になって高姫を探している。
鬼は高姫は先に行ってしまったと思って駆け出すが、一人の赤鬼だけが、ここでもう少し高姫を探すと言って残った。赤鬼は黒姫であった。
赤鬼となった黒姫は、高姫を助けようとの心で、他の鬼が行ってしまったのを幸い残って高姫を探していたのであった。赤鬼の黒姫は、高姫を背負って幽界の安全地帯に運んでいった。
しかし山をいくつも越えていった先に、玉草の生えた池のほとりに着くと、赤鬼はにわかに高姫を降ろすと、池の中に飛び込んでしまった。高姫は不審に思って、赤鬼が残した鉄棒を手に取ると、それは張子の棒であった。
しかし鉄棒を持つやいなや、高姫は黒鬼と化してしまった。池の中から黒姫が元の姿で現れて、鉄棒は執着を表しているから、捨ててしまうようにと高姫の黒鬼に呼びかけた。
黒姫は、執着を捨てて池に飛び込んだところ、池の中に立派な女神が現れて元の姿に戻ることができたのだ、と高姫に忠告した。
そこへ残りの四人の鬼がやってきて、高姫の黒鬼に襲いかかろうとする。高姫は鉄棒で応戦しようとするが、黒姫の忠告の声ににわかに我に返り、鉄棒を投げ捨てて池に飛び込んだ。他の四人の鬼たちもそれにならった。
水底に麗しい女神が現れて、一同に対して、まだ幽界に来るべき者ではない、執着心の悪魔に引きずられてこんなところまで来たのだから、一刻も早く立ち返れ、と諭した。そして女神は、小和田姫命またの名を地蔵菩薩だと名乗った。
高姫はたちまち麗しい原野に花に囲まれているかと思うと、気が付けば杢助に介抱されながら、言依別命らが天の数歌を歌うのを聞いていた。これ以降高姫の病気は拭うがごとく消えてしまった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2021-06-04 17:38:38 OBC :rm2208
愛善世界社版:99頁 八幡書店版:第4輯 416頁 修補版: 校定版:102頁 普及版:46頁 初版: ページ備考:
001頭髪(かしら)(しも)(いただ)きし
002(この)()(なかば)()()つた
003(しわ)くちや(ばばあ)一人旅(ひとりたび)
004枯野(かれの)にすだく(むし)()
005(ほそ)(きこ)ゆる断末魔(だんまつま)
006(かぜ)のそよぎも(なん)となく
007(さび)しさ(まじ)荒野原(あらのはら)
008(つゑ)(ちから)(すす)()く。
009 (みち)(かたへ)薄原(すすきはら)(うづも)つた(あたま)()けた石塔(せきたふ)(なな)()つ、010(こけ)()して()(ろく)()()ねるばかり(ふる)びて()る。011(そば)(あたま)のとれた石地蔵(いしぢざう)012左手(ひだりて)(たま)()せ、013右手(みぎて)親指(おやゆび)中指(なかゆび)(あは)して()となし、014食指(ひとさしゆび)をツンと(そら)()て、015地蔵(ぢざう)(ぜに)なき衆生(しゆじやう)()(がた)しと、016(くび)まで()られても執念深(しふねんぶか)く、017()金銭(かね)(よく)(はな)せないと()え、018此処(ここ)にも(また)執着心(しふちやくしん)遺憾(ゐかん)なく暴露(ばくろ)して()る。
019 一人(ひとり)(ばば)地蔵(ぢざう)(たま)をツクヅクと打眺(うちなが)打眺(うちなが)め、
020婆(高姫)『オイ、021(まへ)何者(なにもの)ぢや、022(その)(たま)勿体(もつたい)なくも如意(によい)宝珠(ほつしゆ)(たま)ではないか、023(この)高姫(たかひめ)秘蔵(ひざう)せし神宝(しんぽう)何時(いつ)()にか(ぬす)みよつて(その)天罰(てんばつ)貴様(きさま)(くび)(この)(とほ)り、024サア(はや)此方(こちら)(わた)せ』
025石地蔵(いしぢざう)()から無理(むり)むし()らうと藻掻(もが)いて()る。026石塔(せきたふ)(うら)から(かや)()をガサガサ()はせながら、027ヌツと(あら)はれた二人(ふたり)(ばば)(さん)(にん)(をとこ)028(ちから)なき(こゑ)で、
029五人(黒姫、鷹依姫、竜国別、テーリスタン、カーリンス)高姫(たかひめ) 高姫(たかひめ)
030()()める。031高姫(たかひめ)(この)(こゑ)(おどろ)いて萱原(かやはら)()(そそ)げば、032(あに)(はか)らむや、033黒姫(くろひめ)034鷹依姫(たかよりひめ)035竜国別(たつくにわけ)036テーリスタン、037カーリンスの五人(ごにん)()れである。
038高姫(たかひめ)『これ、039黒姫(くろひめ)さま、040黄金(わうごん)(たま)如何(どう)なつた。041(まへ)(たち)五人(ごにん)()れで手分(てわ)けして、042世界中(せかいぢう)(たづ)(まは)り、043あの(たま)受取(うけと)無言(むげん)霊話(れいわ)()けよと吩咐(いひつ)けて()いたのに、044()んな(ところ)(なに)愚図(ぐづ)々々(ぐづ)して()るのだい』
045黒姫(くろひめ)(わたし)貴方(あなた)無体(むたい)(こと)()はれ、046それが残念(ざんねん)残念(ざんねん)(たま)らなくなつて、047到頭(たうとう)丹後(たんご)(うみ)()(にん)一度(いちど)()()げて()んだワイ(のう)048この怨恨(うらみ)()らさむ()めにお(まへ)憑依(とりつ)いて生命(いのち)をとつたのだ。049サア(これ)から()(にん)()つて(たか)つて、050(くび)()()()(あし)()き、051嬲殺(なぶりごろし)にしてやらう、052覚悟(かくご)をなされ』
053蒼白(まつさを)(かほ)(さら)()し、054両手(りやうて)(ちち)(あたり)から蟷螂(かまきり)(やう)(まへ)()げ、055(かぜ)のまにまにフワリフワリと高姫(たかひめ)前後(ぜんご)左右(さいう)()()せて()る。
056高姫(たかひめ)此処(ここ)何処(どこ)心得(こころえ)()る、057(まへ)(たち)冥途(めいど)()つて、058まだ(まよ)うて()るのか。059エー()んだ(やつ)仕方(しかた)がないから、060もう(ゆる)してやらう、061(はや)成仏(じやうぶつ)したが()からうぞ』
062鷹依姫(たかよりひめ)『お(まへ)()めに母子(おやこ)二人(ふたり)(この)難儀(なんぎ)063(まへ)現界(げんかい)(つも)りだらうが、064此処(ここ)地獄(ぢごく)八丁目(はつちやうめ)だ、065精神(せいしん)錯乱(さくらん)してお(まへ)最早(もはや)地獄(ぢごく)(たび)をして()るのだよ』
066高姫(たかひめ)『はて、067不思議(ふしぎ)
068(あたま)()()てて()れば、069何時(いつ)()にか三角形(さんかくけい)(かみ)帽子(ばうし)(かぶ)せられて()る。
070高姫『ヤア、071こりや大変(たいへん)だ、072いつの()()んだのかなア。073もう()()つては神政(しんせい)成就(じやうじゆ)(くそ)もあつたものぢやない。074()んだ人間(にんげん)二度(にど)()(ためし)はあるまい。075(この)(うへ)(やぶ)れかぶれ、076生命(いのち)(まと)にお(まへ)(たち)(ほろぼ)して地獄(ぢごく)(かま)のどん(ぞこ)()れて()つてやらう。077覚悟(かくご)をせよ』
078()()つて呶鳴(どな)りつけた。079竜国別(たつくにわけ)威丈高(ゐたけだか)になり、
080竜国別『こりや高姫(たかひめ)081(おい)()母子(おやこ)()んな()()はせよつたのも、082(もと)貴様(きさま)(ゆゑ)ぢや。083何程(なにほど)貴様(きさま)頑張(ぐわんば)つても此方(こちら)()(にん)其方(そちら)一人(ひとり)084到底(たうてい)衆寡敵(しうくわてき)する(こと)出来(でき)まい。085サア覚悟(かくご)をせい』
086(ほそ)(かいな)でグツと高姫(たかひめ)(つか)みにかかる。087テーリスタン、088カーリンスは棍棒(こんぼう)()ち、089両方(りやうはう)から(たた)(つぶ)して()れむと()つてかかる。090黒姫(くろひめ)091鷹依姫(たかよりひめ)(かた)(ゆす)(あご)をしやくり、092小気味(こぎみ)よささうに、
093黒姫、鷹依姫『ホヽヽヽヽ、094ホウホウホウ』
095(わら)つて()る。096流石(さすが)高姫(たかひめ)進退(しんたい)()(きは)まり、097生命(いのち)からがら枯野(かれの)(はら)当途(あてど)もなく()げて()く。098(あと)より()(にん)は、
099五人『オーイオーイ、100()つた()つた』
101()()(きた)る。102ピタツと()(あた)つた大川(おほかは)103愚図(ぐづ)々々(ぐづ)して()れば()(にん)取捉(とつつか)まるかも()れぬ。104地獄(ぢごく)(かま)一足飛(いつそくと)び、105()(とこ)まで()かむと決心(けつしん)(ほぞ)(かた)めた高姫(たかひめ)は、106()(をど)らして濁流(だくりう)へバサンと()()み、107(なが)(わた)りに向岸(むかふぎし)()いて、108着衣(ちやくい)()へて(たちま)洗濯婆(せんたくばあ)となつて(しま)つた。109(つづ)いて二人(ふたり)はバサンバサンと()()んだ。110(さん)(にん)(をとこ)真裸(まつぱだか)となり、111着衣(ちやくい)(あたま)(くく)りつけ(およ)いで此方(こなた)(わた)つて()る。112高姫(たかひめ)は、
113高姫『こりや大変(たいへん)
114()れた着物(きもの)引抱(ひつかか)へ、115真裸(まつぱだか)のまま()れた薄ケ原(すすきがはら)身体中(からだぢう)擦傷(すりきず)()ひながら、116呼吸(いき)(かぎ)りに何処(どこ)ともなく()けだした。117()(にん)執念深(しふねんぶか)()()けて()く。
118 高姫(たかひめ)()(ぼつ)する(ばか)りの()れた(すすき)(なか)(しやが)んで()る。119()(にん)一生(いつしやう)懸命(けんめい)()けつけ(きた)り、
120五人『ヤア、121(くさ)いぞ(くさ)いぞ、122高姫(たかひめ)(にほひ)がするぞ』
123其処(そこら)(ぢう)(いぬ)(やう)()ぎつけ(まは)る。124高姫(たかひめ)(すすき)(なか)から怖々(こはごは)()(にん)姿(すがた)()れば黒姫(くろひめ)125鷹依姫(たかよりひめ)126竜国別(たつくにわけ)127テーリスタン、128カーリンスと()えしは(あや)まり、129(いづ)れも(あを)130(あか)131(くろ)(おに)姿(すがた)金棒(かなぼう)()()り、132萱原(かやはら)片端(かたつぱし)から将棋倒(しやうぎだふ)しに(たた)いて(まは)り、133高姫(たかひめ)在処(ありか)何処(いづく)ぞと厳重(げんぢゆう)捜索(そうさく)(はじ)めた。134()(にん)男女(なんによ)(おに)は、
135五人『アヽ(くたび)れた。136もう此処(ここ)まで(さが)して()らねば先方(むかふ)()げたのだらう。137思惑(おもわく)とは(あし)達者(たつしや)(やつ)だ。138現界(げんかい)では口達者(くちたつしや)だと評判(ひやうばん)(やつ)だが、139(くち)八丁(はつちやう)(あし)八丁(はつちやう)とは此奴(こいつ)(こと)だ。140グヅグヅして()ると(おい)()関門(くわんもん)突破(とつぱ)して、141天国(てんごく)遁走(とんそう)するかも()れないぞ。142サア(はや)()かう』
143()()す。144一人(ひとり)(おに)は、
145一人『オイ、146貴様(きさま)(たち)()(にん)147(さき)()け。148(おれ)()此処(ここ)暫時(しばらく)(のこ)つて再調査(さいてうさ)をやつて()るから……如何(どう)(おれ)(はな)には高姫(たかひめ)(にほひ)がして仕方(しかた)がない』
149 ()(にん)(おに)は、
150四人『あと(しつか)(たの)んだぞ』
151(いき)せききつてバタバタ()()(おと)152高姫(たかひめ)(みみ)(らい)(ごと)(ひび)いて()る。153高姫(たかひめ)二三間(にさんげん)(すすき)(へだ)てて赤鬼(あかおに)(つの)()()て、154巨眼(きよがん)()()砂煙草(すなたばこ)()うて()るのに、155(こころ)(こころ)ならず、156呼吸(いき)さへようせず(ちひ)さくなつて(ふる)へて()る。
157(おに)『あゝ(わし)生存中(せいぞんちう)黒姫(くろひめ)()つて(いろ)(くろ)(くろ)いと()はれた(もの)だが、158()冥途(めいど)()()れば身体中(からだぢう)真赤(まつかい)けの赤鬼(あかおに)となつて(しま)つた。159(しか)高姫(たかひめ)さまは、160あゝ()ふものの()(どく)(こと)だ。161如何(どう)かして(たす)けて()げたいものだなア。162(なん)でも(この)(へん)()るに(ちが)ひない。163(みな)(やつ)をあゝしてまいた以上(いじやう)は、164もう大丈夫(だいぢやうぶ)だ。165(いち)()(はや)()ぎつけて高姫(たかひめ)さまを(すく)()さねばなるまい。166ヤア()(にん)(やつ)大分(だいぶ)先方(むかふ)()つた』
167小声(こごゑ)(つぶや)きながら、168高姫(たかひめ)(ひそ)める場所(ばしよ)(かや)()()()(あら)はれ(きた)り、
169赤鬼(黒姫)高姫(たかひめ)さま、170久振(ひさしぶ)りでしたなア』
171高姫(たかひめ)『ハイ、172貴方(あなた)誰方(どなた)御座(ござ)いますか。173何卒(どうぞ)(ゆる)(くだ)さいませ』
174赤鬼(黒姫)(わし)赤鬼(あかおに)ぢや、175(まへ)さまの()つている(とほ)黄金(わうごん)(たま)()られた、176その(くや)しさ残念(ざんねん)さが(のこ)つて(いま)此処(ここ)赤鬼(あかおに)となつて(あら)はれたのだ。177(まへ)さまも(たま)()られて(くや)しからう。178グヅグヅして()ると(また)(おに)(むれ)がやつて()()んな()()はすか()れませぬぞえ。179サア(わし)背中(せなか)()ぶさつて(くだ)さい、180(これ)から(むか)ふの(やま)へお(とも)(いた)しませう。181其処(そこ)幽界(いうかい)第一(だいいち)安全(あんぜん)地帯(ちたい)です』
182(おそ)ろしい(かほ)()親切(しんせつ)言葉(ことば)に、183高姫(たかひめ)はヤツと安心(あんしん)し、
184高姫『あゝお(まへ)黒姫(くろひめ)であつたか、185何卒(どうぞ)(わし)(たす)けて(くだ)さい』
186赤鬼(黒姫)承知(しようち)しました』
187高姫(たかひめ)仁王(にわう)(みつ)()()うた(やう)軽々(かるがる)しく(せな)()ひ、188金棒(かなぼう)引抱(ひつかか)へ、
189赤鬼(黒姫)『ヨイシヨ ヨイシヨ』
190足拍子(あしびやうし)をとりながら、191(いばら)だらけの(けは)しき野山(のやま)(なん)()もなく韋駄天(ゐだてん)(ばし)りに()()()()え、192(ほとん)二三十(にさんじふ)ばかりの(やま)(のぼ)りつ(くだ)りつ、193(またた)(うち)蒼々(あをあを)した玉草(たまぐさ)()えて()池辺(ちへん)(おろ)した。
194 (この)(とき)(いけ)(なみ)195(にはか)(かぜ)もなきに()(さわ)(はじ)めた。196高姫(たかひめ)不審(ふしん)(くも)(つつ)まれつつ(いけ)(おもて)()(はな)さず凝視(みつめ)()る。197赤鬼(あかおに)(たちま)ちザブンと(なみ)たつ池中(ちちう)()(をど)らして()()んだ。198あとに(のこ)るは金棒(かなぼう)ばかりである。
199高姫(たかひめ)『こりや、200大変(たいへん)(おも)いものを()つたものだナ』
201()()()れば、202(きり)()(つく)つた張子(はりこ)金棒(かなぼう)であつた。
203高姫『へん、204莫迦(ばか)にして()る。205(なん)だ、206(おほ)きな金棒(かなぼう)だと(おも)つて()たのに、207()んな鼻糞(はなくそ)(まと)()つた(やう)苧殻(をがら)同然(どうぜん)金棒(かなぼう)だ、208こんな(やつ)なら五本(ごほん)十本(じつぽん)209仮令(たとへ)千本(せんぼん)万本(まんぼん)でも一遍(いつぺん)()(にじ)つて(しま)つてやる。210それにしても黒姫(くろひめ)赤鬼(あかおに)211(この)(いけ)()()げて()んだのであらうか、212(ほん)不愍(ふびん)(こと)だ』
213金棒(かなぼう)()つや(いな)や、214(にはか)自分(じぶん)姿(すがた)真黒(まつくろ)けの黒鬼(くろおに)(くわ)して(しま)つた。215(しばら)くすると黒姫(くろひめ)姿(すがた)水面(すゐめん)(うか)()がつた。
216高姫(たかひめ)『あゝ黒姫(くろひめ)さま、217(おに)姿(すがた)如何(どう)なつた』
218黒姫(くろひめ)(わたし)(その)金棒(かなぼう)執着(しふちやく)(のこ)つて()つて、219(おに)となつて(しま)つたのだが、220此処(ここ)()金棒(かなぼう)放擲(はうてき)し、221(うん)(てん)(まか)(この)(いけ)(なか)()(とう)じた(ところ)222池中(ちちう)竜宮(りうぐう)乙姫(おとひめ)さまの(やう)立派(りつぱ)女神(めがみ)さまが(あら)はれて、223(わたし)(おに)(かは)()ぎとり、224(もと)肉体(からだ)にして(くだ)さつたのです。225(まへ)さまも(その)金棒(かなぼう)()かしなさい。226そんな(もの)執着(しふちやく)があると、227(その)(とほ)(たちま)(おに)になつて(しま)ひますよ。228金棒(かなぼう)(おろか)229(かたち)ある(たま)なんかに執着(しふちやく)すると、230(ひと)(くる)しい地獄(ぢごく)()ちねばなりませぬ』
231(なみ)(うへ)(うか)(よし)()(かる)()まつて気楽(きらく)さうに(わら)つて()る。
232 (この)(とき)以前(いぜん)()(にん)(おに)233金棒(かなぼう)(ひつさ)一目散(いちもくさん)(この)()(あら)はれ、
234四人『ヤア、235高姫(たかひめ)此処(ここ)()つたか、236覚悟(かくご)(いた)せ。237何時(いつ)()にやら(おれ)仲間(なかま)になりよつた。238僣越(せんゑつ)至極(しごく)239サア()()めしてやらう。240覚悟(かくご)をせよ』
241四方(しはう)より金棒(かなぼう)(もつ)()つてかかる。
242高姫(なに)ツ、243苧殻(をがら)(やう)金棒(かなぼう)(なに)(おそ)ろしいか。244さア()い』
245自分(じぶん)黒姫(くろひめ)()てた鉄棒(てつぼう)(ひろ)ひ、246()つてかからうと(かま)へる(をり)しも、247水面(すゐめん)(うか)んだ黒姫(くろひめ)は、
248黒姫『そんな(もの)執着(しふちやく)してはなりませぬ。249()かしなさいよ』
250(こゑ)(かぎ)りに(さけ)ぶ。251(その)言葉(ことば)にハツと()がつき、252池畔(ちはん)()()て、253()(をど)らして高姫(たかひめ)蒼味(あをみ)だつた(いけ)(おも)目蒐(めが)けてバサンと()()む。254(つづ)いて()(にん)(おに)(おな)じく鉄棒(てつぼう)()げ、255同様(どうやう)にバサンバサンと()(をど)らした。256(たちま)水底(みなそこ)(しづ)んだ(とき)257(うるは)しき女神(めがみ)一柱(ひとはしら)(この)()(あら)はれ、258言葉(ことば)(しとや)かに、
259女神(なんぢ)(いま)幽界(いうかい)(きた)るべき(もの)(あら)ず、260一刻(いつこく)(はや)()(かへ)れ。261執着心(しふちやくしん)悪魔(あくま)()()られ()んな(ところ)まで(まよ)うて()たのだ。262(わらは)小和田(さわだ)(ひめの)(みこと)263(また)()地蔵(ぢざう)菩薩(ぼさつ)だ。264(はや)(この)(おに)(ころも)()げ』
265(さと)しの言葉(ことば)()(にん)はハツと鰭伏(ひれふ)途端(とたん)(もと)姿(すがた)(かへ)つて(しま)つた。266(いけ)(みづ)何時(いつ)しか(かげ)もなく、267(くわう)(こう)(はく)()()(みだ)れたる(うる)はしき原野(げんや)真中(まんなか)(はな)(はな)とに(かこ)まれ、268(すず)しき(かぜ)()()びながら()つて()た。269(たちま)(きこ)ゆる祝詞(のりと)(こゑ)270(そら)見上(みあ)ぐれば、271言依別(ことよりわけの)(みこと)272言依姫(ことよりひめの)(みこと)273玉治別(たまはるわけ)274国依別(くによりわけ)275紫姫(むらさきひめ)276若彦(わかひこ)277(たま)(かた)278時置師(ときおかしの)(かみ)279言照姫(ことてるひめ)280(はつ)(はじ)玉照彦(たまてるひこ)281玉照姫(たまてるひめ)282(くも)()悠々(いういう)として(この)()(くだ)(きた)るよと()()に、283(たちま)全身(ぜんしん)冷水(れいすゐ)()びたる(ごと)(すず)しさを(かん)ずると(とも)()(ひら)けば、284時置師(ときおかしの)(かみ)(いだ)かれ、285言依別(ことよりわけの)(みこと)以下(いか)枕辺(まくらべ)端座(たんざ)して、286天津(あまつ)祝詞(のりと)数歌(かずうた)奏上(そうじやう)しつつあつた。
287 (これ)より高姫(たかひめ)病気(びやうき)は、288(ぬぐ)ふが(ごと)全快(ぜんくわい)した。289今後(こんご)高姫(たかひめ)如何(いか)なる活動(くわつどう)をなすであらうか。
290枯野(かれの)(はら)(ただ)一人(ひとり)
291(みち)()(ひと)もあら(なみだ)
292(むね)動悸(どうき)高姫(たかひめ)
293とぼとぼ(すす)(やみ)(みち)
294かたへの(さび)しき薄野(すすきの)
295(かほ)()せこけた五人(ごにん)(づれ)
296よくよく()ればコハ如何(いか)
297鷹依姫(たかよりひめ)(はじ)めとし
298(こころ)黒姫(くろひめ)竜国別(たつくにわけ)
299テーリスタンやカーリンスが
300亡者(まうじや)となつて高姫(たかひめ)
301姿(すがた)()かけて()(きた)
302コリヤ(かな)はぬと雲霞(くもかすみ)
303一目散(いちもくさん)()()せば
304(みち)(よこ)たふ大河(おほかは)
305(なみ)(むね)をば(をど)らせつ
306(あと)()(かへ)(なが)むれば
307()(にん)(たちま)(おに)となり
308金棒(かなぼう)打振(うちふ)()(きた)
309南無(なむ)三宝(さんぽう)一大事(いちだいじ)
310前後(ぜんご)(みづ)激流(げきりう)
311ザンブとばかり()()んで
312(なが)(わた)りに(むか)(ぎし)
313ヤツト一息(ひといき)濡衣(ぬれぎぬ)
314(しぼ)(をり)しも(おに)(ども)
315(かは)(わた)りて()(せま)
316一生(いつしやう)懸命(けんめい)高姫(たかひめ)
317(たけ)なす(かや)(しげ)みへと
318()(しの)びつつ(ふる)()
319()(にん)(おに)執拗(しつえう)
320高姫(たかひめ)(くさ)いと遠近(をちこち)
321(さが)(まは)るぞ(おそ)ろしき
322()ツの(おに)()赤鬼(あかおに)
323(ひと)(のこ)して一散(いつさん)
324姿(すがた)(もと)めて(はし)()
325(のこ)りし(おに)高姫(たかひめ)
326(おに)似合(にあ)はぬ親切(しんせつ)
327(せな)()ひつつ山谷(やまたに)
328(いく)つも()えて清水(せいすゐ)
329(ただよ)(いけ)(たもと)まで
330(いざな)()きて金棒(かなぼう)
331(たちま)()()池中(いけなか)
332()(をど)らして(しづ)()
333(とき)しも(よつ)ツの(おに)(ども)
334高姫(たかひめ)此処(ここ)かと()(きた)
335金棒(かなぼう)(かざ)して打向(うちむか)
336進退(しんたい)(ここ)(きは)まりて
337高姫(たかひめ)池中(ちちう)()()めば
338四鬼(しき)(つづ)いて(いけ)(そこ)
339たちまち(みづ)右左(みぎひだり)
340サツと(わか)れて(うる)はしき
341女神(めがみ)姿(すがた)ありありと
342(あら)はれ(たま)執着心(しふちやくしん)
343(あら)(おと)せば高姫(たかひめ)
344(いつ)つの(おに)(もと)(ごと)
345(たふと)身魂(みたま)(かへ)るよと
346()ればたちまち(ゆめ)(やぶ)
347四辺(あたり)()れば言依別(ことよりわけ)
348(かみ)(みこと)(はじ)めとし
349杢助(もくすけ)(はつ)その(ほか)
350人々(ひとびと)病床(びやうしやう)(あつ)まりて
351天津(あまつ)祝詞(のりと)言霊(ことたま)
352(かみ)奏上(そうじやう)のまつ最中(さいちう)
353流石(さすが)頑固(ぐわんこ)高姫(たかひめ)
354いよいよ(さと)りて執着(しふちやく)
355(こころ)()てて三五(あななひ)
356(まこと)(みち)真解(しんかい)
357言依別(ことよりわけ)神言(かみごと)
358(まも)りて(みち)(つく)すべく
359霊魂研(みたまみが)きの()経綸(けいりん)
360()神界(しんかい)(おん)(こと)
361凡夫(ぼんぷ)如何(いか)にあせるとも
362窺知(きち)底本では「窮知」だが「窺知」の間違いだと思われる()べくもあらたふと
363かしこき(かみ)のお(とり)なし
364高姫(たかひめ)(はじ)めて中心(ちうしん)
365(まと)(つか)みし物語(ものがたり)
366ここにあらあら(しる)しおく
367あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
368御霊(みたま)(さち)はへましませよ。
369大正一一・五・二五 旧四・二九 北村隆光録)

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10/22【霊界物語ネット】王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)』をテキスト化しました。
5/8【霊界物語ネット】霊界物語ネットに出口王仁三郎の第六歌集『霧の海』を掲載しました。
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