霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
×
設定
URL:
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
話者名の追加表示 [?]セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。[×閉じる]
表示できる章
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
行間
ルビの表示


アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注[※]用語解説 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

脚注[*]編集用 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

外字の外周色 [?]一般のフォントに存在しない文字は専用の外字フォントを使用しています。目立つようにその文字の外周の色を変えます。[×閉じる]
現在のページには外字は使われていません

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。

第七章 囈語(うはごと)〔六九九〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第22巻 如意宝珠 酉の巻 篇:第2篇 心猿意馬 よみ(新仮名遣い):しんえんいば
章:第7章 囈語 よみ(新仮名遣い):うわごと 通し章番号:699
口述日:1922(大正11)年05月25日(旧04月29日) 口述場所: 筆録者:外山豊二 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年7月30日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一部の章はAIによって要約を作成しています。[×閉じる]:
高姫は精神錯乱状態になって、その咆哮は館の外にまでびりびりと響いてきた。遠州と武州はうろたえてしまっている。
そこへ杢助がやってきた。杢助とお初は高姫の床に来ると、天の数歌を唱えて鎮魂した。荒れ狂っていた高姫は鎮静し、ばたりと床の上に倒れて唸っている。
杢助は高姫に心配しないようにと声をかけるが、高姫はやにわに杢助の胸倉をつかんで、杢助とお初が如意宝珠の玉を吐き出させたからこうなったのだ、と八つ当たりをはじめた。
杢助は強力に任せて高姫を引き剥がした。お初は高姫に、有形の玉三個を失くした代わりに、もっと立派な無形の玉をみなそれぞれ神様からいただいたのだ、と高姫を諭す。
しかし高姫は、お初に飛びかかろうとする。お初は身軽に高姫をかわしている。そこへテルヂーと雲州が高姫の見舞いにやってきた。遠州が出迎えて、高姫の病気が昂じて危険な状態になっているから、今は帰った方がよい、と忠告する。しかしテルヂーと雲州は忠告を聞かずに中へ入っていく。
中では高姫がお初に飛び掛りお初がよける、というのを繰り返している。杢助は煙草を吸いながらそれを悠々と見物している。高姫はテルヂーと雲州の姿を見るや否や、二人が玉を盗んだのだろうと飛び掛って玉を吐かせようとする。
杢助は強力を発揮して高姫を引き剥がし、蒲団の上につまみ降ろした。高姫はうわごとを言い始めた。
そのうわごとは、素盞嗚尊の立派な身魂に感心して三五教へ来てみたが、ハイカラ教主の言依別命に愛想をつかしたので、自分が三つの玉を飲み込んでふたたびウラナイ教を立てようと考えていたのに、黒姫は玉を邪神に取られ、自分の如意宝珠も取られてしまった、と自分の心のうちを白状するものであった。
一同は高姫が恐ろしい考えでいたことを知り、肝をつぶしている。そのうちに高姫の館の門前には、見舞い客がごった返してきた。杢助は高姫のうわごとが漏れては大変なことになると、面会謝絶にしてしまった。
しかし国依別は遠州が止めるのも聞かずに奥に入ってきた。高姫は杢助に介抱されて寝ていた。杢助は、高姫は取りとめのないことを口走り精神錯乱に陥っているから、もう駄目かもしれない、と悲観する。
お初はにっこり笑って、これには深い仔細があることでしょう、と一同を元気付ける。言依別命は教団の幹部を連れて枕頭に訪れ、天津祝詞と天の数歌を歌って回復を祈った。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2022-02-26 23:28:42 文字数:4251 OBC :rm2207
愛善世界社版:87頁 八幡書店版:第4輯 412頁 修補版: 校定版:90頁 普及版:40頁 初版: ページ備考:
001 高姫(たかひめ)は一生(いつしやう)懸命(けんめい)精神(せいしん)錯乱(さくらん)状態(じやうたい)になつて、002熱(ねつ)に浮(う)かされ猛虎(まうこ)の如(ごと)く、003咆哮(はうかう)怒号(どがう)の声(こゑ)屋外(をくぐわい)にビリビリと響(ひび)いて来(き)た。004遠州(ゑんしう)、005武州(ぶしう)は驚(おどろ)いて奥(おく)へ駆(か)け入(い)つたり表(おもて)へ出(で)たり、006手(て)の施(ほどこ)す所(ところ)も知(し)らず、
007武州(ぶしう)『オイ遠州(ゑんしう)、008何(ど)うしよう。009大変(たいへん)ぢやないか。010大変(たいへん)々々(たいへん)』
011と狼狽(うろた)へ廻(まは)つて居(ゐ)る。
012 杢助(もくすけ)はお初(はつ)の手(て)を引(ひ)きながら門(もん)の戸(と)をがらりと開(あ)け、013悠々(いういう)と入(い)り来(きた)り、
014杢助『オイ、015遠州(ゑんしう)、016武州(ぶしう)、017何(なに)を騒(さわ)いでゐるのだ』
018遠州(ゑんしう)『あの声(こゑ)を御(お)聞(き)きなさいませ、019刻々(こくこく)と鳴動(めいどう)がきつくなります。020浅間山(あさまやま)が爆発(ばくはつ)するのか、021高姫山(たかひめやま)が破裂(はれつ)するのか知(し)りませぬが、022大変(たいへん)な騒動(さうだう)が始(はじ)まりかけて居(ゐ)ます。023何処(どこ)へ避難(ひなん)したらいいかと思(おも)つて、024周章(しうしやう)狼狽(らうばい)の体(てい)で御座(ござ)います』
025杢助『アハヽヽヽ、026如何(いか)にも偉(えら)い鳴動(めいどう)ですな』
027遠州『何(なん)と云(い)つても三十八(さんじふはち)度(ど)と四十度(よんじふど)の間(あひだ)を昇降(しやうかう)してゐる熱(ねつ)ですから、028随分(ずゐぶん)偉(えら)い煙(けむり)も吐(は)き出(だ)します。029側(そば)に居(ゐ)られた態(ざま)ぢやありませぬ。030何卒(どうぞ)貴方(あなた)、031鎮(しづ)めて下(くだ)さいな』
032杢助『この鳴動(めいどう)は大森(おほもり)博士(はかせ)[※「大森博士」とは当時の有名な地震学者・大森房吉(1868~1923年)のことだと思われる。]だつて、033如何(どう)することも出来(でき)はしない。034併(しか)し杢助(もくすけ)が一(ひと)つ鎮魂(ちんこん)をして鎮(しづ)めて見(み)ませう』
035とお初(はつ)と共(とも)に高姫(たかひめ)の病床(びやうしやう)に進(すす)み入(い)つた。
036 高姫(たかひめ)は金盥(かなだらひ)の底(そこ)をガンガン叩(たた)きながら、037起(た)ちつ坐(すわ)りつ捩鉢巻(ねぢはちまき)になつて暴(あば)れ狂(くる)うてゐる。038杢助(もくすけ)は両手(りやうて)を組(く)み、039一(ひと)、040二(ふた)、041三(み)、042四(よ)、043……………と天(あま)の数歌(かずうた)を静(しづ)かに唱(とな)へ、044ウンと一声(いつせい)指頭(しとう)より霊光(れいくわう)を発射(はつしや)し、045高姫(たかひめ)の面(おもて)を照(てら)した。046高姫(たかひめ)は漸(やうや)く鎮静(ちんせい)状態(じやうたい)に復(ふく)し、047バタリと床(とこ)の上(うへ)に倒(たふ)れ、048肩(かた)で息(いき)をしながらウンウンと唸(うな)つてゐる。049杢助(もくすけ)は高姫(たかひめ)の肩(かた)を撫(な)で擦(さす)りながら声低(こゑびく)に、
050杢助『モシモシ高姫(たかひめ)さま、051大層(たいそう)御(お)苦(くる)しみと見(み)えますが、052何事(なにごと)も神(かみ)様(さま)のなさることでせうから、053決(けつ)して決(けつ)して御(ご)心配(しんぱい)のなきやうに、054気(き)を確(たしか)に持(も)つて下(くだ)さい。055言依別(ことよりわけ)の教主(けうしゆ)様(さま)も至極(しごく)平気(へいき)で居(ゐ)られますから』
056 高姫(たかひめ)は此(この)声(こゑ)にムツクと立上(たちあが)り、057杢助(もくすけ)の胸倉(むなぐら)を矢庭(やには)にグツと引掴(ひつつか)み、058肩(かた)をいからし声(こゑ)を震(ふる)はし、059歯(は)ぎしりをキリキリと言(い)はせながら眼(め)を釣上(つりあ)げ、
060高姫『お前(まへ)は杢助(もくすけ)ぢやないか、061仮令(たとへ)言依別(ことよりわけ)が何(なん)と云(い)つても、062大事(だいじ)の大事(だいじ)の結構(けつこう)な玉(たま)を紛失(ふんしつ)致(いた)したのは、063神政(しんせい)成就(じやうじゆ)の為(ため)には大変(たいへん)な大失策(だいしつさく)だ。064これと言(い)ふのも貴様(きさま)がお初(はつ)を伴(つ)れて来(き)て、065高姫(たかひめ)の生宮(いきみや)から無理(むり)に引張(ひつぱ)り出(だ)さしたその為(ため)に、066斯(こ)んな目(め)に遇(あ)うたのだ。067私(わし)もそれから何(なん)となく変(へん)になり、068斯(こ)んな病気(びやうき)になつたのも、069みんな杢助(もくすけ)、070お前(まへ)の為(ため)だ。071神政(しんせい)成就(じやうじゆ)の妨害(ばうがい)を致(いた)す大曲津(おほまがつ)奴(め)が。072大方(おほかた)八岐(やまた)の大蛇(をろち)が化(ば)けて居(を)るのだらう。073サア白状(はくじやう)致(いた)して玉(たま)の在処(ありか)を知(し)らせよ。074さうでなければ何処(どこ)までも放(はな)しは致(いた)さぬぞや』
075杢助『高姫(たかひめ)さま、076それは偉(えら)い迷惑(めいわく)、077マア悠(ゆつ)くりと気(き)を落着(おちつ)けて冷静(れいせい)になつて下(くだ)さい』
078高姫『何(なに)ツ、079迷惑(めいわく)と申(まを)すか。080お前(まへ)の迷惑(めいわく)は小(ちひ)さいことだ。081大神(おほかみ)様(さま)を始(はじ)め世界(せかい)万民(ばんみん)の迷惑(めいわく)ぢや。082第一(だいいち)この高姫(たかひめ)が起(た)つても坐(ゐ)ても居(ゐ)られぬ迷惑(めいわく)な目(め)に遇(あ)うてゐる。083サア、084キリキリと白状(はくじやう)致(いた)せ』
085 杢助(もくすけ)は高姫(たかひめ)の手(て)を強力(がうりき)に任(まか)せグツと放(はな)した途端(とたん)に、086高姫(たかひめ)はどんと仰向(あふむ)けに倒(たふ)れ、087口(くち)から蟹(かに)のやうに泡(あわ)を吹(ふ)き飛(と)ばし、088前歯(まへば)の抜(ぬ)けた口(くち)を斜交(はすかひ)に開(ひら)いて、089頻(しき)りに何事(なにごと)か言(い)はむと上下(うへした)の唇(くちびる)をたたいている。
090お初(はつ)『小母(をば)さま、091決(けつ)して御(ご)心配(しんぱい)なさいますな。092その玉(たま)は神(かみ)様(さま)の御(おん)手(て)に御(お)預(あづか)り遊(あそ)ばして御座(ござ)るから、093神政(しんせい)成就(じやうじゆ)の妨害(さまたげ)にはなりませぬ。094三個(さんこ)の玉(たま)は有形(いうけい)です、095そのために皆様(みなさま)はモツト立派(りつぱ)な無形(むけい)の玉(たま)を一個(いつこ)宛(づつ)頂(いただ)きましたから、096御(ご)安心(あんしん)なさいませ』
097 此(この)声(こゑ)に高姫(たかひめ)は気(き)がつき、
098高姫『ヤア、099お前(まへ)はお初(はつ)ぢやな。100小豆(こまめ)のやうな態(ざま)をして、101ようツベコベ囀(さへづ)る奴(やつ)ぢや。102私(わし)の玉(たま)を叩(たた)き出(だ)した曲者(くせもの)、103サア、104もう斯(か)うなる上(うへ)は此(この)高姫(たかひめ)が承知(しようち)致(いた)さぬ』
105と飛(と)びかからうとする。106お初(はつ)は体(たい)をヒラリと躱(かは)し、
107お初『小母(をば)さま、108気(き)を落着(おちつ)けなさい』
109高姫『何(なに)ツ、110猪口才(ちよこざい)な、111ゴテゴテ言(い)はずにすつこんで居(を)れ。112大方(おほかた)貴様(きさま)が玉(たま)を盗(ぬす)んだのであらう。113サア、114日(ひ)の出神(でのかみ)の生宮(いきみや)が承知(しようち)致(いた)さぬ』
115と又(また)もや飛(と)びかかる。116お初(はつ)は右(みぎ)へ左(ひだり)へ胡蝶(こてふ)の飛(と)び交(か)ふ如(ごと)く、117ヒラリヒラリと高姫(たかひめ)の鋭鋒(えいほう)を避(さ)けて居(ゐ)る。118門口(かどぐち)にはテルヂー、119雲州(うんしう)の二人(ふたり)、120高姫(たかひめ)の病気(びやうき)危篤(きとく)と聞(き)いて見舞(みまひ)にやつて来(き)たと見(み)え、
121テルヂー『これ遠州(ゑんしう)さま、122一寸(ちよつと)開(あ)けて下(くだ)さい。123テルヂー、124雲州(うんしう)の両人(りやうにん)だ』
125 遠州(ゑんしう)は此(この)声(こゑ)にガラリと戸(と)を引(ひ)き開(あ)け、
126遠州『ヤア、127よく来(き)て下(くだ)さつた。128大変(たいへん)に大将(たいしやう)の病気(びやうき)が、129変(へん)になつて来(き)たので困(こま)つてゐるのだ』
130雲州(うんしう)『変(へん)になつたとは何(ど)うだい。131危篤(きとく)と云(い)ふのか』
132遠州『時々(ときどき)高姫山(たかひめやま)が鳴動(めいどう)をするので危険(きけん)でたまらないのだよ。133人事(じんじ)不省(ふせい)の高姫山(たかひめやま)、134うつかり踏査(たふさ)でもしようものなら、135山(やま)と共(とも)に奈落(ならく)の底(そこ)まで陥落(かんらく)するか分(わか)つたものぢやない。136今(いま)も玉治別(たまはるわけ)さまがカーンとやられて、137遁(に)げ帰(かへ)らしやつたとこだ。138気(き)がついたら又(また)俺(おれ)から篤(とつく)りと云(い)うて置(お)くから、139帰(かへ)つたがよからうぞ』
140テル『折角(せつかく)此処(ここ)まで来(き)たのだから、141御(お)顔(かほ)だけでも拝見(はいけん)して帰(かへ)らうか。142なア、143雲州(うんしう)』
144雲州(うんしう)『危険(きけん)区域(くゐき)だと云(い)つて退却(たいきやく)するのは男子(だんし)の本分(ほんぶん)ではない。145これも修行(しうぎやう)のためだ、146一(ひと)つ踏査(たふさ)することにしようかい』
147と遠州(ゑんしう)の止(とど)むるをも聞(き)かず、148無理(むり)に奥(おく)の間(ま)に進(すす)み入(い)つた。
149 高姫(たかひめ)は火(ひ)の如(ごと)き顔色(がんしよく)に眼(め)を釣(つ)り、150拳(こぶし)を固(かた)めて六(ろく)歳(さい)のお初(はつ)目蒐(めが)けて追(お)ひかけてゐる。151杢助(もくすけ)は此(こ)の騒(さわ)ぎを他所事(よそごと)のやうに煙草(たばこ)をくすべながら、152師団(しだん)演習(えんしふ)の観戦(くわんせん)でもしてゐるやうな調子(てうし)で泰然(たいぜん)と構(かま)へてゐる。153二人(ふたり)の姿(すがた)を見(み)るより、154高姫(たかひめ)は、
155高姫『ヤー、156お前(まへ)はテルヂーに雲州(うんしう)ぢやないか。157貴様(きさま)は元(もと)が小盗人(こぬすと)だから、158大方(おほかた)あの玉(たま)を盗(ぬす)みよつたのだらう。159サア、160了簡(りやうけん)せぬ。161早(はや)く此処(ここ)へ玉(たま)を吐(は)き出(だ)せ』
162と雲州(うんしう)の素首(そつくび)をグツと捻(ね)ぢ、163畳(たたみ)に摺(すり)つけ、
164高姫『サア、165吐(は)け吐(は)け』
166と高春山(たかはるやま)でお初(はつ)の玉(たま)吐(は)せを見(み)てゐた高姫(たかひめ)は、167同(おな)じ流儀(りうぎ)に倣(なら)つて腰(こし)を滅多(めつた)矢鱈(やたら)に叩(たた)きつける。
168雲州(うんしう)『アイタヽ、169ウンウン。170モシモシさう叩(たた)いて貰(もら)ひますと、171尻(しり)からプン州(しう)や、172ウン州(しう)が出(で)ますワイなア。173オイ、174テルヂー、175早(はや)う俺(おれ)を助(たす)けて呉(く)れぬかい』
176高姫『貴様(きさま)は身魂(みたま)が悪(わる)いから尻(しり)から吐(は)くのだらう。177コラ、178今(いま)デルジリと吐(ぬ)かしただらう。179早(はや)く尻(しり)を出(だ)せ』
180 杢助(もくすけ)は強力(がうりき)に任(まか)せ、181高姫(たかひめ)の素首(そつくび)をグツと握(にぎ)つて、182猫(ねこ)を抓(つま)んだやうに引提(ひつさ)げ、183ポイと蒲団(ふとん)の上(うへ)に抓(つま)み下(おろ)した。
184 又(また)もや高姫(たかひめ)は発熱(はつねつ)甚(はなは)だしく、185ウンウンと苦悶(くもん)の声(こゑ)を上(あ)げながら、186床上(しやうじやう)に力(ちから)なくグタリと倒(たふ)れて囈語(うはごと)を始(はじ)めた。
187高姫『三五教(あななひけう)の変性(へんじやう)男子(なんし)様(さま)の結構(けつこう)な教(をしへ)を、188変性(へんじやう)女子(によし)がワヤに致(いた)して盗(と)つて了(しま)はうとするので、189これは何(なん)でも系統(ひつぱう)の高姫(たかひめ)が、190一(ひと)つ腰(こし)を入(い)れねばなるまいと黒姫(くろひめ)を説(と)き諭(さと)し、191青彦(あをひこ)や魔我彦(まがひこ)に言(い)ひ聞(き)かして、192到頭(たうとう)ウラナイ教(けう)を樹(た)てて、193神政(しんせい)成就(じやうじゆ)の御用(ごよう)を致(いた)さうと思(おも)ひ、194日(ひ)の出神(でのかみ)の生宮(いきみや)が現(あら)はれ、195黒姫(くろひめ)には竜宮(りうぐう)の乙姫(おとひめ)様(さま)が引添(ひつそ)うて、196御(ご)守護(しゆご)遊(あそ)ばすなり、197力(ちから)一杯(いつぱい)変性(へんじやう)女子(によし)の悪(あく)の守護神(しゆごじん)に敵対(てきた)うて見(み)たところが、198思(おも)うたよりは立派(りつぱ)な身魂(みたま)で、199ミロクさまのやうな素盞嗚(すさのをの)尊(みこと)ぢやと感心(かんしん)して、200それから心(こころ)を改(あらた)め三五教(あななひけう)へ帰(かへ)つて、201手(て)を引合(ひきあ)うてやらうと思(おも)へば、202奴灰殻(どはひから)の学(がく)と智慧(ちゑ)とで固(かた)まつた言依別(ことよりわけの)命(みこと)が教主(けうしゆ)となり、203又(また)もや学(がく)と智慧(ちゑ)とで此(この)世(よ)をワヤに致(いた)さうと致(いた)すに依(よ)つて、204アヽ三五教(あななひけう)も駄目(だめ)だ、205私(わし)が三(み)つの玉(たま)を呑(の)み込(こ)んで、206再(ふたた)びウラナイ教(けう)を樹(た)てて見(み)ようと、207心(こころ)の底(そこ)で思(おも)つて居(を)つた。208それ故(ゆゑ)黒姫(くろひめ)に黄金(わうごん)の玉(たま)の御(お)守(もり)をさして置(お)いたのに、209彼奴(あいつ)は莫迦(ばか)だから到頭(たうとう)八岐(やまた)の大蛇(をろち)の眷属(けんぞく)に奪(と)られて了(しま)ひよつた。210アヽ残念(ざんねん)ぢや。211三(み)つの御玉(みたま)が一(ひと)つ欠(か)けた、212何(ど)うしよう、213斯(か)うしようと気(き)が気(き)でならず、214到頭(たうとう)黒姫(くろひめ)を鞭撻(むちう)つて玉(たま)探(さが)しに出(だ)したが、215これでは雲(くも)を掴(つか)むやうな頼(たよ)りのない話(はなし)。216併(しか)しながら此(こ)の高姫(たかひめ)が保管(ほくわん)して居(ゐ)る二(ふた)つの玉(たま)さへあれば、217何(ど)うなり、218斯(か)うなりと、219神(かみ)様(さま)に対(たい)して高姫(たかひめ)が変性(へんじやう)男子(なんし)の御(ご)用継(ようつ)ぎを致(いた)せると思(おも)うて居(を)つたら、220其(そ)の二(ふた)つの玉(たま)も大蛇(をろち)の乾児(こぶん)に、221何時(いつ)の間(ま)にか盗(と)られて了(しま)ひ、222今(いま)は蟹(かに)の手足(てあし)をぼがれたやうな悲惨(みじめ)な事(こと)になつて了(しま)つた。
223 これと云(い)ふのも言依別(ことよりわけの)命(みこと)が、224余(あま)り物喰(ものく)ひがよいので、225何(なん)でも彼(かん)でも塵芥(ごもくた)を、226此(こ)の聖(きよ)らかな神(かみ)様(さま)の御(お)屋敷(やしき)へ引張(ひつぱ)り込(こ)むものだから、227斯(こ)んな縮尻(しくじり)が出来(でき)たのだ。228エーもう仕方(しかた)が無(な)い。229併(しか)し此(こ)の玉(たま)は遠(とほ)くは行(ゆ)くまい。230何(いづ)れ未(ま)だ近(ちか)くに隠(かく)してあるに違(ちが)ひない。231さうでなければ誰(たれ)かが呑(の)み込(こ)んでゐるのかも知(し)れぬ。232仮令(たとへ)死(し)んでも、233火(ひ)になつても蛇(じや)になつても、234此(こ)の三(み)つの玉(たま)を取返(とりかへ)さねば置(お)くものか。235エーエー残念(ざんねん)や、236口惜(くや)しや、237ウンウンウン』
238と千切(ちぎ)れ千切(ちぎ)れに自分(じぶん)の腹(はら)の底(そこ)まで白状(はくじやう)して了(しま)つた。
239 之(これ)を聞(き)いた杢助(もくすけ)、240お初(はつ)、241テルヂー、242遠州(ゑんしう)、243雲州(うんしう)、244武州(ぶしう)は目(め)と目(め)を見合(みあ)はし、245高姫(たかひめ)の腹(はら)の中(なか)の清(きよ)からざりしに肝(きも)を潰(つぶ)してゐる。
246 高姫(たかひめ)の大病(たいびやう)と聞(き)きつけて、247次(つぎ)から次(つぎ)へと見舞客(みまひきやく)は踵(きびす)を接(せつ)し、248門口(かどぐち)は非常(ひじやう)に雑沓(ざつたふ)を極(きは)めた。249されど杢助(もくすけ)は深(ふか)く慮(おもんぱか)るところあり、250高姫(たかひめ)の囈語(うはごと)を大勢(おほぜい)に聞(き)かせては大変(たいへん)と、251遠州(ゑんしう)、252雲州(うんしう)に堅(かた)く言(い)ひつけ面会(めんくわい)を謝絶(しやぜつ)せしめつつあつた。253此処(ここ)へ国依別(くによりわけ)は駿州(すんしう)、254三州(さんしう)を伴(ともな)ひやつて来(き)た。
255国依別(くによりわけ)『コレコレ遠州(ゑんしう)さま、256高姫(たかひめ)さまの御(ご)病気(びやうき)は如何(どう)です。257些(ちつ)とよい方(はう)ですか』
258遠州(ゑんしう)『善(ぜん)とも悪(あく)とも、259テンと見当(けんたう)がつきませぬ。260善(よ)いと思(おも)へば悪(わる)い、261悪(わる)いと思(おも)へば善(よ)い、262到底(たうてい)凡夫(ぼんぶ)の吾々(われわれ)、263見当(けんたう)の取(と)れぬ仕組(しぐみ)と見(み)えますワイ』
264国依別『コレコレ遠州(ゑんしう)さま、265今日(けふ)は教理(けうり)のことをたづねに来(き)たのぢやない。266御(ご)病気(びやうき)は如何(いかが)と云(い)ふのだよ』
267遠州『病気(びやうき)ですかい。268御(ご)病気(びやうき)は矢張(やつぱり)身体(からだ)の機械(きかい)が、269どつか破損(はそん)したのですなア。270随分(ずゐぶん)奇怪(きつくわい)千万(せんばん)な病気(びやうき)ですよ。271何(なん)でも彼(あ)りや憑(つ)いてますなア』
272国依別『誰(たれ)がついて居(ゐ)るのだ。273看護婦(かんごふ)は何人(なんにん)位(くらゐ)居(を)るか』
274遠州『何分(なにぶん)日(ひ)の出神(でのかみ)さまの生宮(いきみや)ですから、275神主(かむぬし)もそれはそれは沢山(たくさん)居(を)るでせう。276人間(にんげん)の目(め)には根(ね)つから見(み)えませぬなア。277死虱(しじらみ)とか云(い)つて、278随分(ずゐぶん)観音(くわんのん)さまが沢山(たくさん)、279御(ご)守護(しゆご)してゐらつしやいますワ』
280国依別『莫迦(ばか)云(い)ふない。281オイ、282駿州(すんしう)、283三州(さんしう)、284斯(こ)んな奴(やつ)に相手(あひて)になつて居(を)つても、285とんと要領(えうりやう)を得(え)ない。286サア、287奥(おく)へ強行(きやうかう)的(てき)進軍(しんぐん)だ』
288と行(ゆ)かむとする。289遠州(ゑんしう)は両手(りやうて)を拡(ひろ)げ、
290遠州『アヽ国(くに)さま、291駿(すん)、292三(さん)、293マア待(ま)つて下(くだ)さい。294杢助(もくすけ)さまが喧(やか)ましいから』
295国依別『なに、296杢助(もくすけ)さまが来(き)てゐるのか。297そんなら猶(なほ)の事(こと)、298這入(はい)らねばなるまい』
299遠州『今(いま)お前(まへ)達(たち)が這入(はい)ると病気(びやうき)は益々(ますます)危篤(きとく)になると云(い)つて、300杢助(もくすけ)さまが心配(しんぱい)して御座(ござ)つたので、301軈(やが)て御(ご)臨終(りんじう)も近寄(ちかよ)つただらう』
302国依別『それほど危篤(きとく)に陥(おちい)つて御座(ござ)るのなら尚更(なほさら)の事(こと)だ。303何(ど)うしても御(お)目(め)にかからねばなるまい。304其処(そこ)除(の)け、305邪魔(じやま)ひろぐな』
306と突(つ)き除(の)け刎(は)ね除(の)け進(すす)み入(い)る。307見(み)れば高姫(たかひめ)は、308杢助(もくすけ)に抱(だ)かれて、309スヤスヤと睡(ねむ)つてゐる。
310国依別(くによりわけ)『アヽお初(はつ)さま、311杢助(もくすけ)さま、312皆(みな)さま、313大変(たいへん)に御(ご)苦労(くらう)でした。314御(ご)様子(やうす)は何(ど)うですな』
315杢助(もくすけ)『ハイ、316案(あん)じられた容態(ようだい)で困(こま)つてゐます。317精神(せいしん)錯乱(さくらん)と見(み)えて取止(とりと)めもないことを口走(くちばし)るので、318実(じつ)のところは面会(めんくわい)謝絶(しやぜつ)をしてゐたのです。319併(しか)しよう来(き)て下(くだ)さつた。320到底(たうてい)もう駄目(だめ)でせう』
321と絶望(ぜつばう)的(てき)悲調(ひてう)を帯(お)びたカスリ声(こゑ)で、322力(ちから)なげに答(こた)へる。
323 お初(はつ)はニコニコしながら、
324お初『何(いづ)れも方(がた)、325御(ご)心配(しんぱい)下(くだ)さいますな。326これには深(ふか)い様子(やうす)のあることでせう』
327 斯(かか)る処(ところ)へ言依別(ことよりわけの)命(みこと)は、328言依姫(ことよりひめ)、329お玉(たま)の方(かた)、330言照姫(ことてるひめ)、331紫姫(むらさきひめ)、332若彦(わかひこ)を伴(ともな)ひ、333病気(びやうき)見舞(みまひ)のために此処(ここ)に現(あら)はれ、334枕頭(まくらもと)に座(ざ)を占(し)め、335天津(あまつ)祝詞(のりと)を奏上(そうじやう)し、336天(あま)の数歌(かずうた)を唱(とな)へて恢復(くわいふく)を祈(いの)つた。
337(大正一一・五・二五 旧四・二九 外山豊二録)
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【メールアドレス】
合言葉「みろく」を入力して下さい→