霊界物語.ネット
~出口王仁三郎 大図書館~
設定
|
ヘルプ
ホーム
霊界物語
如意宝珠(第13~24巻)
第22巻(酉の巻)
序文
凡例
総説
第1篇 暗雲低迷
第1章 玉騒疑
第2章 探り合ひ
第3章 不知火
第4章 玉探志
第2篇 心猿意馬
第5章 壇の浦
第6章 見舞客
第7章 囈語
第8章 鬼の解脱
第3篇 黄金化神
第9章 清泉
第10章 美と醜
第11章 黄金像
第12章 銀公着瀑
第4篇 改心の幕
第13章 寂光土
第14章 初稚姫
第15章 情の鞭
第16章 千万無量
第5篇 神界経綸
第17章 生田の森
第18章 布引の滝
第19章 山と海
第20章 三の魂
余白歌
×
設定
この文献を王仁DBで開く
印刷用画面を開く
[?]
プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。
[×閉じる]
話者名の追加表示
[?]
セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。
[×閉じる]
追加表示する
追加表示しない
【標準】
表示できる章
テキストのタイプ
[?]
ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。
[×閉じる]
通常のテキスト
【標準】
コピー用のテキスト
文字サイズ
S
【標準】
M
L
ルビの表示
通常表示
【標準】
括弧の中に表示
表示しない
アンカーの表示
[?]
本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。
[×閉じる]
左側だけに表示する
【標準】
表示しない
全てのアンカーを表示
宣伝歌
[?]
宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。
[×閉じる]
一段組
【標準】
二段組
脚注[※]用語解説
[?]
[※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。
[×閉じる]
脚注マークを表示する
【標準】
脚注マークを表示しない
脚注[*]編集用
[?]
[※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。
[×閉じる]
脚注マークを表示する
脚注マークを表示しない
【標準】
外字の外周色
[?]
一般のフォントに存在しない文字は専用の外字フォントを使用しています。目立つようにその文字の外周の色を変えます。
[×閉じる]
無色
【標準】
赤色
現在のページには外字は使われていません
表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。
【新着情報】
サイトをリニューアルしました。不具合がある場合は
従来バージョン
をお使い下さい|
サブスク
のお知らせ
霊界物語
>
如意宝珠(第13~24巻)
>
第22巻(酉の巻)
> 第1篇 暗雲低迷 > 第3章 不知火
<<< 探り合ひ
(B)
(N)
玉探志 >>>
第三章
不知火
(
しらぬひ
)
〔六九五〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第22巻 如意宝珠 酉の巻
篇:
第1篇 暗雲低迷
よみ(新仮名遣い):
あんうんていめい
章:
第3章 不知火
よみ(新仮名遣い):
しらぬい
通し章番号:
695
口述日:
1922(大正11)年05月24日(旧04月28日)
口述場所:
筆録者:
加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1922(大正11)年7月30日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
[×閉じる]
:
黒姫は今度は、テーリスタンとカーリンスの主人だった鷹依姫に疑いをかける。朝参の後に竜国別の家に立ち寄り、鷹依姫に対して、テーリスタンとカーリンスに盗み出させた黄金の玉を返せ、と詰め寄る。
鷹依姫は必死に抗弁するが、黒姫はあくまで鷹依姫を疑って聞かない。鷹依姫は居丈高に尋問する黒姫の態度に、腹立たしくなり泣いている。そこへ竜国別が帰ってきた。
そこへテーリスタンとカーリンスが入ってきた。カーリンスは竜国別らに、黒姫が黄金の玉を紛失し、自分たちが池に身投げした黒姫を助けたのがあべこべに、玉盗人の疑いをかけられてしまっている顛末を語った。
竜国別は黄金の玉が紛失したこと、黒姫がその疑いをテーリスタン、カーリンス、鷹依姫にかけていることを知ると、ご神前にお伺いを立てに行った。戻ってきた竜国別は、「時節を待て」という神示があったことを告げた。
黒姫はあくまで鷹依姫を疑い、憎まれ口を叩いた後、懐剣を抜いて自害しようとする。するとテーリスタンとカーリンスは突然、玉を盗んだのは自分たち二人であり、玉はすでにバラモン教の蜈蚣姫に渡したのだ、と狂言を始めた。
黒姫、鷹依姫、竜国別は、てっきり真犯人が自白したと思い、二人を相手に大喧嘩を始める。そこへ言依別命が館の前を通りかかり、騒ぎを聞きつけた。
言依別命が訳を尋ねると、黒姫はテーリスタンとカーリンスが黄金の玉を盗んだことを白状したのだ、と説明した。
言依別命はテーリスタンとカーリンスが、黒姫の疑いが鷹依姫や竜国別に飛び火するのを防ぐために、自ら濡れ衣を着たことを悟って二人を褒めた。
言依別命は一同に対して、玉が紛失した責任はすべて自分が負うので、もうこれ限りこのことは水に流してくれ、と言ってその場を祓い清めた。黒姫は言依別命が玉の紛失を追及しないので肝を抜かれて唖然としている。
この後、黒姫、鷹依姫、竜国別、テーリスタン、カーリンスの五人は、神界の仕組の糸に操られて、黄金の玉探索という名目で四方の国々を訪ね、悪魔退治の旅を行うことになるのであった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2021-05-26 10:36:39
OBC :
rm2203
愛善世界社版:
35頁
八幡書店版:
第4輯 392頁
修補版:
校定版:
36頁
普及版:
17頁
初版:
ページ備考:
001
黒姫
(
くろひめ
)
は
錦
(
にしき
)
の
宮
(
みや
)
の
朝参
(
てうさん
)
を
済
(
す
)
ませ、
002
帰途
(
きと
)
竜国別
(
たつくにわけ
)
の
家
(
いへ
)
に
立
(
た
)
ち
寄
(
よ
)
り、
003
奥
(
おく
)
の
一室
(
ひとま
)
に
入
(
い
)
り
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
と、
004
ひそひそ
話
(
はなし
)
を
始
(
はじ
)
めかけた。
005
黒姫
(
くろひめ
)
『
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
さま、
006
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
に
宝
(
たから
)
と
云
(
い
)
うたら
何
(
なに
)
が
一番
(
いちばん
)
だと
思
(
おも
)
ひますか』
007
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
『
私
(
わたくし
)
は
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
よりも、
008
黄金
(
わうごん
)
の
玉
(
たま
)
よりも、
009
紫
(
むらさき
)
の
玉
(
たま
)
よりも、
010
天地
(
てんち
)
の
誠
(
まこと
)
が
一番
(
いちばん
)
の
宝
(
たから
)
だと
考
(
かんが
)
へて
居
(
を
)
ります』
011
黒姫
『ア
左様
(
さやう
)
か、
012
それは
御尤
(
ごもつと
)
も。
013
併
(
しか
)
し
貴女
(
あなた
)
はその
宝
(
たから
)
を
如何
(
どう
)
しました』
014
鷹依姫
『
何分
(
なにぶん
)
にも
曇
(
くも
)
つた
身魂
(
みたま
)
で
御座
(
ござ
)
いますから、
015
誠
(
まこと
)
の
宝
(
たから
)
が
手
(
て
)
に
入
(
はい
)
らいで、
016
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
対
(
たい
)
しはづかしいことで
御座
(
ござ
)
います。
017
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
は
誠
(
まこと
)
の
玉
(
たま
)
を
早
(
はや
)
く
取
(
と
)
れよと
突
(
つ
)
き
出
(
だ
)
して
御座
(
ござ
)
るのですが、
018
何
(
ど
)
うも
人間
(
にんげん
)
は
身魂
(
みたま
)
の
曇
(
くも
)
りが
甚
(
ひど
)
いのでお
貰
(
もら
)
ひ
申
(
まを
)
す
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ませぬ。
019
何
(
なん
)
とかして
早
(
はや
)
く
誠
(
まこと
)
と
云
(
い
)
ふ
宝
(
たから
)
を
手
(
て
)
に
入
(
い
)
れたいと
朝夕
(
あさゆふ
)
祈
(
いの
)
つて
居
(
を
)
ります』
020
黒姫
『お
前
(
まへ
)
さまはさうぢやありますまい。
021
誠
(
まこと
)
の
玉
(
たま
)
よりも、
022
黄金
(
わうごん
)
の
玉
(
たま
)
が
結構
(
けつこう
)
なのでせう。
023
三五教
(
あななひけう
)
の
唯一
(
ゆいつ
)
の
宝
(
たから
)
、
024
黄金
(
わうごん
)
の
玉
(
たま
)
を、
025
貴女
(
あなた
)
こつそりと
何処
(
どこ
)
へ
隠
(
かく
)
しましたか』
026
鷹依姫
『エ、
027
何
(
なん
)
とおつしやいます。
028
合点
(
がてん
)
の
行
(
ゆ
)
かぬお
言葉
(
ことば
)
、
029
黄金
(
わうごん
)
の
玉
(
たま
)
が
何
(
ど
)
うなつたと
仰有
(
おつしや
)
るのですか』
030
黒姫
『
白々
(
しらじら
)
しい、
031
呆
(
とぼ
)
けなさいますな。
032
心
(
こころ
)
に
覚
(
おぼ
)
えが
御座
(
ござ
)
いませう。
033
何
(
なん
)
とお
隠
(
かく
)
しなさつても、
034
此
(
この
)
黒姫
(
くろひめ
)
の
目
(
め
)
でちやんと
睨
(
にら
)
んだら
外
(
はづ
)
れつこはありませぬ。
035
既
(
すで
)
にテーリスタンや、
036
カーリンスがお
前
(
まへ
)
さまの
命令
(
めいれい
)
で、
037
黄金
(
わうごん
)
の
玉
(
たま
)
を
盗
(
ぬす
)
んだと
云
(
い
)
はぬばかりの
口吻
(
くちぶり
)
をして
居
(
ゐ
)
ますよ』
038
鷹依姫
『あの、
039
テー、
040
カーの
二人
(
ふたり
)
がそんな
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
ひましたか。
041
何
(
なに
)
を
証拠
(
しようこ
)
にそんな
大
(
だい
)
それた
嘘
(
うそ
)
を
云
(
い
)
ふのでせうか』
042
黒姫
『ヘン、
043
貴女
(
あなた
)
よく
呆
(
とぼ
)
けますねえ。
044
松
(
まつ
)
の
根元
(
ねもと
)
から
掘
(
ほ
)
り
出
(
だ
)
しなさつた、
045
あの
黄金
(
わうごん
)
の
玉
(
たま
)
ですよ。
046
貴女
(
あなた
)
が
高春山
(
たかはるやま
)
でアルプス
教
(
けう
)
の
教主
(
けうしゆ
)
と
云
(
い
)
うて
威張
(
ゐば
)
つて
居
(
を
)
られた
時
(
とき
)
、
047
徳公
(
とくこう
)
を
聖地
(
せいち
)
に
入
(
い
)
り
込
(
こ
)
ませ、
048
玉
(
たま
)
の
在処
(
ありか
)
を
考
(
かんが
)
へさして
居
(
を
)
つたぢやありませぬか。
049
あの
徳
(
とく
)
と
云
(
い
)
ふ
奴
(
やつ
)
は
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
に
在処
(
ありか
)
を
知
(
し
)
らした
奴
(
やつ
)
だ。
050
それが
又
(
また
)
お
前
(
まへ
)
さまの
三五教
(
あななひけう
)
へ
偽帰順
(
にせきじゆん
)
と
共
(
とも
)
に、
051
素知
(
そし
)
らぬ
顔
(
かほ
)
をして
入
(
はい
)
つて
来
(
き
)
て
居
(
ゐ
)
ませうがな。
052
真実
(
ほんと
)
は
彼奴
(
あいつ
)
の
手引
(
てび
)
きで、
053
テー、
054
カーの
両人
(
りやうにん
)
が
私
(
わたし
)
の
保管
(
ほくわん
)
して
居
(
を
)
る
黄金
(
わうごん
)
の
玉
(
たま
)
を、
055
お
前
(
まへ
)
さまの
指図
(
さしづ
)
で
盗
(
と
)
つたに
違
(
ちが
)
ひありませぬ。
056
私
(
わたし
)
も、
057
もう
命
(
いのち
)
がけだ。
058
お
前
(
まへ
)
さまの
生首
(
なまくび
)
を
引
(
ひ
)
き
抜
(
ぬ
)
いて、
059
私
(
わたし
)
も
潔
(
いさぎよ
)
く
死
(
し
)
んで
仕舞
(
しま
)
ふのだ、
060
さあ
何
(
ど
)
うだ』
061
と
藪
(
やぶ
)
から
棒
(
ぼう
)
の
詰問
(
きつもん
)
に、
062
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
は
呆
(
あき
)
れ
果
(
は
)
て、
063
茫然
(
ばうぜん
)
として
顔
(
かほ
)
を
真蒼
(
まつさを
)
にし、
064
黒姫
(
くろひめ
)
を
凝視
(
みつ
)
めて
居
(
ゐ
)
る。
065
黒姫
『
悪事
(
あくじ
)
千
(
せん
)
里
(
り
)
と
云
(
い
)
うて、
066
悪
(
わる
)
い
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ますまいがな。
067
併
(
しか
)
し
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
は
屹度
(
きつと
)
赦
(
ゆる
)
して
下
(
くだ
)
さいますから
綺麗
(
きれい
)
薩張
(
さつぱり
)
と
白状
(
はくじやう
)
なさいませ。
068
お
前
(
まへ
)
さまは
可愛
(
かあい
)
い
一人
(
ひとり
)
の
息子
(
むすこ
)
の
竜国別
(
たつくにわけ
)
さまに
毒茶
(
どくちや
)
を
呑
(
の
)
ませ、
069
熱湯
(
ねつたう
)
を
浴
(
あ
)
びせるやうなものだ。
070
私
(
わたし
)
も
仮令
(
たとへ
)
一
(
いち
)
日
(
にち
)
でも
大切
(
たいせつ
)
な
玉
(
たま
)
が
紛失
(
ふんしつ
)
して
居
(
を
)
つたと
云
(
い
)
ふことが、
071
皆
(
みな
)
さまに
知
(
し
)
れては
大変
(
たいへん
)
だから、
072
何処迄
(
どこまで
)
も
秘密
(
ひみつ
)
を
守
(
まも
)
つて、
073
お
前
(
まへ
)
さまが
盗
(
ぬす
)
んだとは
云
(
い
)
はないから、
074
サア、
075
ちやつと
出
(
だ
)
して
下
(
くだ
)
さい。
076
お
前
(
まへ
)
さまの
身
(
み
)
のため、
077
竜国別
(
たつくにわけ
)
さまのためだ。
078
随分
(
ずゐぶん
)
温順
(
おとなし
)
さうな
顔
(
かほ
)
をして
居
(
を
)
つて、
079
貴女
(
あなた
)
も
敏腕家
(
やりて
)
ぢやなア。
080
黒姫
(
くろひめ
)
も
其
(
その
)
腕前
(
うでまへ
)
には
感心
(
かんしん
)
致
(
いた
)
しましたよ。
081
ホヽヽヽヽ』
082
と
嫌
(
いや
)
らしく
笑
(
わら
)
ふ。
083
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
は
当惑顔
(
たうわくがほ
)
、
084
涙
(
なみだ
)
をぼろぼろと
流
(
なが
)
し、
085
鷹依姫
『あゝ
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
、
086
何卒
(
どうぞ
)
此
(
この
)
黒白
(
こくびやく
)
を
分
(
わ
)
けて
下
(
くだ
)
さいませ。
087
私
(
わたくし
)
は
今
(
いま
)
、
088
大変
(
たいへん
)
の
難題
(
なんだい
)
を
蒙
(
かうむ
)
つて
居
(
を
)
ります』
089
と
手
(
て
)
を
合
(
あは
)
す。
090
黒姫
(
くろひめ
)
は
声
(
こゑ
)
を
尖
(
とが
)
らして、
091
黒姫
『
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
さま、
092
馬鹿
(
ばか
)
な
真似
(
まね
)
をなさいますな。
093
そんな
嘘
(
うそ
)
を
喰
(
く
)
ふ
黒姫
(
くろひめ
)
とは、
094
ヘン、
095
些
(
ちつ
)
と
種
(
たね
)
が
違
(
ちが
)
ひますぞや』
096
鷹依姫
『
黒姫
(
くろひめ
)
さま、
097
そりや
貴女
(
あなた
)
本気
(
ほんき
)
で
仰有
(
おつしや
)
るのですか。
098
夢
(
ゆめ
)
にも
思
(
おも
)
はぬ
難題
(
なんだい
)
を
私
(
わたくし
)
に
持
(
も
)
ちかけ、
099
自分
(
じぶん
)
が
監督
(
かんとく
)
不行届
(
ふゆきとどき
)
の
罪
(
つみ
)
を
塗
(
ぬ
)
りつけようと
遊
(
あそ
)
ばすのか。
100
私
(
わたくし
)
もかう
見
(
み
)
えても
一度
(
いちど
)
は
一教派
(
いちけうは
)
の
教主
(
けうしゆ
)
をして
来
(
き
)
たものだ。
101
滅多
(
めつた
)
な
事
(
こと
)
を
仰有
(
おつしや
)
ると
了簡
(
りやうけん
)
なりませぬぞや』
102
黒姫
『
了簡
(
りやうけん
)
ならぬとは、
103
そりや
誰
(
たれ
)
に
云
(
い
)
ふのだえ。
104
此方
(
こちら
)
からこそ
了簡
(
りやうけん
)
ならぬ。
105
何
(
なん
)
と
図太
(
づぶと
)
い
胆玉
(
きもだま
)
だなア』
106
鷹依姫
『
黒姫
(
くろひめ
)
様
(
さま
)
、
107
貴女
(
あなた
)
は
何
(
なに
)
か
私
(
わたし
)
に
恨
(
うらみ
)
があつてそんな
難題
(
なんだい
)
を
吹
(
ふ
)
きかけるのでせう。
108
それならそれで
宜敷
(
よろし
)
い、
109
私
(
わたし
)
にも
考
(
かんが
)
へがある。
110
お
前
(
まへ
)
さまの
様
(
やう
)
に
子
(
こ
)
のないものならそれで
宜
(
よ
)
いが、
111
私
(
わたし
)
には
天
(
てん
)
にも
地
(
ち
)
にも
一人
(
ひとり
)
の
可愛
(
かあい
)
い
伜
(
せがれ
)
がある。
112
そんな
難題
(
なんだい
)
を
吹
(
ふ
)
つかけられて
何
(
ど
)
うして
伜
(
せがれ
)
が
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
に
立
(
た
)
つて
行
(
い
)
けませう。
113
竜国別
(
たつくにわけ
)
の
母親
(
ははおや
)
は
聖地
(
せいち
)
に
於
(
おい
)
て
宝
(
たから
)
を
盗
(
ぬす
)
んだと
云
(
い
)
はれては、
114
伜
(
せがれ
)
どころか
先祖
(
せんぞ
)
の
名
(
な
)
迄
(
まで
)
汚
(
けが
)
すぢやありませぬか。
115
何
(
なに
)
を
証拠
(
しようこ
)
にそんな
無茶
(
むちや
)
な
事
(
こと
)
を
仰有
(
おつしや
)
るのだ。
116
私
(
わたし
)
は
高姫
(
たかひめ
)
様
(
さま
)
のやうに、
117
呑
(
の
)
んだり
吐
(
は
)
いたり、
118
そんな
芸当
(
げいたう
)
はよう
致
(
いた
)
しませぬ。
119
お
前
(
まへ
)
さまは
私
(
わたし
)
が
腹
(
はら
)
にでも
呑
(
の
)
んで
居
(
を
)
るやうに
思
(
おも
)
うて
居
(
ゐ
)
るのでせう』
120
黒姫
『そりや
貴女
(
あなた
)
の
腹
(
はら
)
にありませう。
121
人
(
ひと
)
の
腹
(
はら
)
は
外
(
そと
)
からは
分
(
わか
)
りませぬからなア』
122
鷹依姫
『そんなら
私
(
わたし
)
は
潔白
(
けつぱく
)
を
示
(
しめ
)
すために
腹
(
はら
)
を
切
(
き
)
つてお
目
(
め
)
にかける。
123
その
代
(
かは
)
り、
124
もし
呑
(
の
)
んで
居
(
ゐ
)
なかつたら
何
(
ど
)
うして
下
(
くだ
)
さる』
125
黒姫
『
玉
(
たま
)
を
隠
(
かく
)
すのは
腹
(
はら
)
ばつかりぢやありませぬ。
126
土
(
つち
)
の
中
(
なか
)
でも、
127
倉
(
くら
)
の
中
(
なか
)
でも、
128
川
(
かは
)
の
中
(
なか
)
でも、
129
どつこへでも
隠
(
かく
)
せるぢやありませぬか。
130
そんな
あざとい
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
うて、
131
黒姫
(
くろひめ
)
を
ちよろまか
さうと
思
(
おも
)
つても、
132
いつかな いつかな、
133
此
(
この
)
黒姫
(
くろひめ
)
は
些
(
ちつ
)
と
違
(
ちが
)
ひますから、
134
お
前
(
まへ
)
さまの
口車
(
くちぐるま
)
には
乗
(
の
)
りませぬぞい。
135
オホヽヽヽ』
136
と
頤
(
あご
)
をしやくり、
137
肩
(
かた
)
を
四角
(
しかく
)
にし、
138
舌端
(
ぜつたん
)
を
唇
(
くちびる
)
の
所
(
ところ
)
へ
少
(
すこ
)
し
出
(
だ
)
して、
139
目
(
め
)
まで
しばづか
せて
見
(
み
)
せた。
140
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
は
無念
(
むねん
)
さ、
141
口惜
(
くや
)
しさに
声
(
こゑ
)
をあげて
泣
(
な
)
き
立
(
た
)
てる。
142
黒姫
『
泣
(
な
)
いて
事
(
こと
)
が
済
(
す
)
むと
思
(
おも
)
うて
居
(
ゐ
)
なさるか、
143
なぜ
堂々
(
だうだう
)
と
仰有
(
おつしや
)
らぬのだ。
144
泣
(
な
)
いて
威
(
おど
)
さうと
思
(
おも
)
つたつて、
145
女郎
(
おやま
)
の
涙
(
なみだ
)
も
同然
(
どうぜん
)
、
146
そんな
手
(
て
)
を
喰
(
く
)
ふ
私
(
わし
)
かいな』
147
と
又
(
また
)
頤
(
あご
)
をしやくつて
馬鹿
(
ばか
)
にする。
148
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
は
腹立
(
はらだ
)
たしさに
益々
(
ますます
)
泣
(
な
)
き
入
(
い
)
る。
149
声
(
こゑ
)
を
聞
(
き
)
きつけて
今
(
いま
)
門口
(
かどぐち
)
に
帰
(
かへ
)
つて
来
(
き
)
たばかりの
竜国別
(
たつくにわけ
)
は
走
(
はし
)
り
来
(
きた
)
り、
150
竜国別
『お
母
(
かあ
)
さま、
151
何処
(
どこ
)
ぞ
悪
(
わる
)
う
御座
(
ござ
)
いますか、
152
何
(
ど
)
うなさいました。
153
ヤア
黒姫
(
くろひめ
)
さま、
154
お
早
(
はや
)
う
御座
(
ござ
)
います。
155
母
(
はは
)
は
何処
(
どこ
)
か
悪
(
わる
)
いのですか』
156
黒姫
(
くろひめ
)
は
憎々
(
にくにく
)
しげに、
157
黒姫
『よう、
158
お
前
(
まへ
)
は
竜国別
(
たつくにわけ
)
、
159
悪
(
わる
)
けりやこそ
泣
(
な
)
くのぢやないか。
160
息
(
いき
)
が
詰
(
つま
)
つて、
161
ものの
答
(
こたへ
)
が
出来
(
でき
)
なくなつたものだから
泣
(
な
)
き
入
(
い
)
るのだよ。
162
お
前
(
まへ
)
の
親
(
おや
)
で
云
(
い
)
ふぢやないが、
163
ほんとに、
164
驚
(
おどろ
)
いた
悪党
(
あくたう
)
だ』
165
竜国別
『
黒姫
(
くろひめ
)
さま、
166
私
(
わたくし
)
の
母
(
はは
)
が
悪党
(
あくたう
)
だとは、
167
そりや
又
(
また
)
何
(
ど
)
うした
訳
(
わけ
)
で』
168
黒姫
(
くろひめ
)
は
につこ
と
笑
(
わら
)
ひ、
169
黒姫
『
同
(
おな
)
じ
穴
(
あな
)
の
狐
(
きつね
)
、
170
ようここまで
信頼
(
しんらい
)
したものだナア。
171
お
前
(
まへ
)
と
云
(
い
)
ひ、
172
テーリスタンと
云
(
い
)
ひ、
173
カーリンスと
云
(
い
)
ひ、
174
これだけマア
悪
(
あく
)
の
四魂
(
しこん
)
が
揃
(
そろ
)
へば、
175
どんな
悪事
(
あくじ
)
でも
出来
(
でき
)
ますワイ。
176
油断
(
ゆだん
)
も
隙
(
すき
)
もあつたものぢや
御座
(
ござ
)
いませぬワイなア。
177
オホヽヽヽヽ』
178
と
腰
(
こし
)
から
上
(
うへ
)
を
揺
(
ゆす
)
つて
見
(
み
)
せる。
179
斯
(
か
)
かる
処
(
ところ
)
へテーリスタン、
180
カーリンスの
両人
(
りやうにん
)
はバラバラと
入
(
い
)
り
来
(
きた
)
る。
181
竜国別
(
たつくにわけ
)
はこれを
見
(
み
)
て、
182
竜国別
『オイ、
183
テー、
184
カーの
二人
(
ふたり
)
、
185
何
(
なん
)
だ
其
(
その
)
顔
(
かほ
)
は、
186
貴様
(
きさま
)
、
187
喧嘩
(
けんくわ
)
でもしたのか』
188
カーリンス『イヤもう
大変
(
たいへん
)
な
事
(
こと
)
です。
189
黒姫
(
くろひめ
)
の
奴
(
やつ
)
、
190
玉
(
たま
)
を
盗
(
と
)
られ、
191
せう
事
(
こと
)
なしに
池
(
いけ
)
へ
身
(
み
)
を
投
(
な
)
げ、
192
それを
吾々
(
われわれ
)
が
助
(
たす
)
けてやつたら、
193
あべこべに
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
さまと
共謀
(
きようぼう
)
して
黄金
(
わうごん
)
の
玉
(
たま
)
を
盗
(
ぬす
)
んだと
云
(
い
)
ふのです。
194
黒姫
(
くろひめ
)
さまも
大切
(
たいせつ
)
な
玉
(
たま
)
の
監督
(
かんとく
)
の
役目
(
やくめ
)
を
仕損
(
しそん
)
じたのだから、
195
何
(
なに
)
どころぢやありますまい。
196
お
察
(
さつ
)
しはするが、
197
併
(
しか
)
し
吾々
(
われわれ
)
二人
(
ふたり
)
を
始
(
はじ
)
め、
198
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
さままでを
泥坊
(
どろばう
)
にするとは
余
(
あんま
)
りぢやありませぬか。
199
私
(
わたし
)
も
終
(
しまひ
)
にはテーリスタンを
疑
(
うたが
)
ひ
出
(
だ
)
し、
200
テーリスタンは
私
(
わたし
)
を
疑
(
うたが
)
ふと
云
(
い
)
ふので、
201
暫
(
しばら
)
く
大喧嘩
(
おほげんくわ
)
をやつてこんな
態
(
ざま
)
になつたのです。
202
併
(
しか
)
し
何
(
ど
)
うしても
吾々
(
われわれ
)
二人
(
ふたり
)
を
始
(
はじ
)
め、
203
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
さまは
潔白
(
けつぱく
)
です。
204
何
(
なん
)
とかして
黒姫
(
くろひめ
)
さまの
疑
(
うたがひ
)
を
解
(
と
)
きたいものです』
205
竜国別
(
たつくにわけ
)
『そりや
大変
(
たいへん
)
だ。
206
何
(
なに
)
は
兎
(
と
)
もあれ
大切
(
たいせつ
)
な
御
(
ご
)
神宝
(
しんぽう
)
、
207
こりや
此
(
この
)
儘
(
まま
)
にしては
置
(
お
)
かれぬ。
208
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
伺
(
うかが
)
つて
来
(
く
)
るから、
209
それ
迄
(
まで
)
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
て
下
(
くだ
)
さい。
210
お
母
(
かあ
)
さま、
211
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
なさいますな。
212
貴女
(
あなた
)
の
潔白
(
けつぱく
)
は
私
(
わたくし
)
が
承知
(
しようち
)
して
居
(
ゐ
)
ます』
213
黒姫
(
くろひめ
)
『
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つてもお
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
を
共謀者
(
きようぼうしや
)
と
認
(
みと
)
めます。
214
竜国別
(
たつくにわけ
)
はあんな
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
つて
尻
(
しり
)
こそばゆくなつて
逃
(
に
)
げたのだらう。
215
オホヽヽヽ、
216
どれもこれも、
217
心
(
こころ
)
に
覚
(
おぼ
)
えがあると
見
(
み
)
えて、
218
あの
詮
(
つま
)
らなささうな
顔
(
かほ
)
ワイな。
219
思
(
おも
)
ひ
内
(
うち
)
にあれば
色
(
いろ
)
外
(
そと
)
に
現
(
あら
)
はる、
220
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
は
正直
(
しやうぢき
)
だ。
221
余
(
あま
)
り
可笑
(
をか
)
しさを
通
(
とほ
)
り
越
(
こ
)
して
阿呆
(
あはう
)
らしいワイのう。
222
オホヽヽヽ』
223
と
身体
(
からだ
)
を
揺
(
ゆす
)
り
嘲弄
(
てうろう
)
する。
224
暫
(
しばら
)
くあつて
竜国別
(
たつくにわけ
)
は
宙
(
ちう
)
を
飛
(
と
)
んで
帰
(
かへ
)
つて
来
(
き
)
た。
225
黒姫
(
くろひめ
)
『
竜国別
(
たつくにわけ
)
、
226
何
(
ど
)
うだつたかナ』
227
竜国別
『
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
御
(
お
)
神籤
(
みくじ
)
を
伺
(
うかが
)
ひましたら、
228
時節
(
じせつ
)
を
待
(
ま
)
てと
仰有
(
おつしや
)
いました』
229
黒姫
『あゝさうだらう、
230
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
が
何
(
なに
)
そんな
事
(
こと
)
を
仰有
(
おつしや
)
るものか。
231
お
前
(
まへ
)
の
心
(
こころ
)
に
覚
(
おぼ
)
えのある
事
(
こと
)
を…
誰人
(
たれ
)
が
阿呆
(
あはう
)
らしい。
232
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
だつて
返答
(
へんたふ
)
なさるものかい。
233
テツキリ
お
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
が
私
(
わし
)
を
失策
(
しくじ
)
らさうと
思
(
おも
)
つて
隠
(
かく
)
したのか、
234
但
(
ただ
)
しは
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
と
気脈
(
きみやく
)
を
通
(
つう
)
じて
御
(
ご
)
神宝
(
しんぱう
)
を
盗
(
ぬす
)
み
出
(
だ
)
す
考
(
かんが
)
へだらう。
235
そんな
あざとい
事
(
こと
)
をしたつて、
236
その
悪
(
あく
)
が
何処迄
(
どこまで
)
やり
貫
(
ぬ
)
けるものぢやありませぬワイ。
237
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
何
(
ど
)
うでも
此
(
この
)
玉
(
たま
)
の
在処
(
ありか
)
が
知
(
し
)
れぬと
云
(
い
)
へば、
238
私
(
わし
)
は
死
(
し
)
なねばならぬ。
239
私
(
わし
)
許
(
ばか
)
りぢやあるまい、
240
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
さま、
241
竜国別
(
たつくにわけ
)
さま、
242
お
前
(
まへ
)
も
腹
(
はら
)
でも
切
(
き
)
つて
言
(
い
)
ひ
訳
(
わけ
)
をなさらにやなるまい。
243
さあ
私
(
わし
)
から
自害
(
じがい
)
をするから、
244
お
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
も
冥途
(
めいど
)
の
伴
(
とも
)
をなさいませ』
245
と
懐剣
(
くわいけん
)
を
引
(
ひ
)
き
抜
(
ぬ
)
き
吾
(
わが
)
喉
(
のど
)
に
当
(
あ
)
てむとする
時
(
とき
)
しも、
246
テーリスタン、
247
カーリンスの
二人
(
ふたり
)
は
肩
(
かた
)
を
揺
(
ゆす
)
り、
248
テーリスタン、カーリンス
『オイ
黒姫
(
くろひめ
)
、
249
態
(
ざま
)
見
(
み
)
やがれ、
250
其
(
その
)
実
(
じつ
)
は
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
さま、
251
竜国別
(
たつくにわけ
)
さまも
知
(
し
)
つた
事
(
こと
)
ぢやないワ。
252
このテーリスタン、
253
カーリンスの
御
(
ご
)
両人
(
りやうにん
)
様
(
さま
)
が
盗
(
ぬす
)
み
出
(
だ
)
して、
254
とうの
昔
(
むかし
)
に
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
の
手
(
て
)
に
秘蔵
(
ひざう
)
されてあるのだよ。
255
欲
(
ほ
)
しけりや
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
に
頼
(
たの
)
んで
返
(
かへ
)
して
貰
(
もら
)
へ。
256
アハヽヽヽ、
257
小気味
(
こぎみ
)
のよい
事
(
こと
)
だ』
258
と
大声
(
おほごゑ
)
に
罵
(
ののし
)
り
出
(
だ
)
した。
259
黒姫
(
くろひめ
)
は
かつ
となり、
260
黒姫
『こりやテー、
261
カーの
両人
(
りやうにん
)
、
262
この
黒姫
(
くろひめ
)
の
目
(
め
)
は
間違
(
まちが
)
ひなからう、
263
大
(
だい
)
それた
奴
(
やつ
)
だ。
264
さあ
早
(
はや
)
く
其
(
その
)
玉
(
たま
)
を
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
の
手
(
て
)
から
取
(
と
)
り
還
(
かへ
)
して
来
(
こ
)
い。
265
神罰
(
しんばつ
)
が
恐
(
おそ
)
ろしいぞや』
266
テ、
267
カ『
神罰
(
しんばつ
)
が
恐
(
おそ
)
ろしいやうな
事
(
こと
)
で、
268
誰
(
たれ
)
がそんな
玉盗人
(
たまぬすびと
)
をするものか。
269
馬鹿
(
ばか
)
々々
(
ばか
)
』
270
と
連発
(
れんぱつ
)
する。
271
黒姫
(
くろひめ
)
、
272
竜国別
(
たつくにわけ
)
、
273
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
の
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
一斉
(
いつせい
)
に
立
(
た
)
ち
上
(
あが
)
り、
274
三人(黒姫、竜国別、鷹依姫)
『
極悪
(
ごくあく
)
無道
(
ぶだう
)
の
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
に
款
(
くわん
)
を
通
(
つう
)
ずる
両人
(
りやうにん
)
、
275
もはや
了簡
(
りやうけん
)
ならぬぞ』
276
と
茲
(
ここ
)
に
五
(
ご
)
人
(
にん
)
は
入
(
い
)
り
乱
(
みだ
)
れて
大喧嘩
(
おほげんくわ
)
をおつ
始
(
はじ
)
めた。
277
言依別
(
ことよりわけの
)
命
(
みこと
)
は
錦
(
にしき
)
の
宮
(
みや
)
の
拝礼
(
はいれい
)
を
終
(
をは
)
り、
278
静々
(
しづしづ
)
と
此
(
この
)
前
(
まへ
)
を
通
(
とほ
)
り、
279
騒々
(
さうざう
)
しき
物音
(
ものおと
)
に
何事
(
なにごと
)
ならむと
奥
(
おく
)
へ
入
(
い
)
り
来
(
きた
)
り
見
(
み
)
れば、
280
此
(
こ
)
の
騒
(
さわ
)
ぎ。
281
言依別
(
ことよりわけの
)
命
(
みこと
)
『これこれ
皆
(
みな
)
さま、
282
宣伝使
(
せんでんし
)
や
信者
(
しんじや
)
の
身
(
み
)
を
以
(
もつ
)
て
何
(
なに
)
喧嘩
(
けんくわ
)
をなさるのか』
283
黒姫
(
くろひめ
)
『
言依別
(
ことよりわけの
)
命
(
みこと
)
様
(
さま
)
、
284
此奴
(
こいつ
)
両人
(
りやうにん
)
、
285
私
(
わたくし
)
が
保管
(
ほくわん
)
して
居
(
ゐ
)
る
玉
(
たま
)
を
盗
(
ぬす
)
んだのはテー、
286
カーだ。
287
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
に
渡
(
わた
)
してやつたのだ。
288
馬鹿者
(
ばかもの
)
よと
云
(
い
)
うて、
289
私
(
わたくし
)
等
(
ら
)
を
嘲弄
(
てうろう
)
する
不届
(
ふとど
)
きな
奴
(
やつ
)
で
御座
(
ござ
)
います』
290
言依別
(
ことよりわけの
)
命
(
みこと
)
『テーリスタン、
291
カーリンス、
292
お
前
(
まへ
)
は
実
(
じつ
)
に
感心
(
かんしん
)
な
奴
(
やつ
)
だ。
293
さうなくてはならぬ、
294
三五教
(
あななひけう
)
の
信者
(
しんじや
)
の
亀鑑
(
きかん
)
だ。
295
誠
(
まこと
)
の
玉
(
たま
)
を
能
(
よ
)
くも
手
(
て
)
に
入
(
い
)
れたなア』
296
テー、
297
カーの
二人
(
ふたり
)
は
嬉
(
うれ
)
し
涙
(
なみだ
)
に
暮
(
く
)
れて、
298
テーリスタン、カーリンス
『ハイハイ』
299
と
云
(
い
)
つたきり
畳
(
たたみ
)
に
食
(
く
)
ひついて
泣
(
な
)
いて
居
(
ゐ
)
る。
300
黒姫
(
くろひめ
)
『モシモシ
言依別
(
ことよりわけの
)
命
(
みこと
)
様
(
さま
)
、
301
お
前様
(
まへさま
)
は
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
を
仰有
(
おつしや
)
る。
302
こんな
ドラ
盗人
(
ぬすびと
)
を
褒
(
ほ
)
めると
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
がありますか。
303
何
(
ど
)
うかして
居
(
ゐ
)
ますなア』
304
言依別
(
ことよりわけの
)
命
(
みこと
)
『アヽ、
305
黒姫
(
くろひめ
)
、
306
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
、
307
竜国別
(
たつくにわけ
)
、
308
テーリスタン、
309
カーリンス
殿
(
どの
)
、
310
何事
(
なにごと
)
も
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
計
(
はか
)
らひだ。
311
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
なさいますな、
312
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
深
(
ふか
)
き
思召
(
おぼしめし
)
のある
事
(
こと
)
でせう。
313
只今
(
ただいま
)
限
(
かぎ
)
り
玉
(
たま
)
の
事
(
こと
)
は
云
(
い
)
はないがよい。
314
互
(
たがひ
)
に
迷惑
(
めいわく
)
ですから、
315
何事
(
なにごと
)
も
私
(
わたくし
)
に
任
(
まか
)
して
置
(
お
)
いて
下
(
くだ
)
さい』
316
黒姫
(
くろひめ
)
『
玉
(
たま
)
がなくてもかまひませぬのか』
317
言依別
(
ことよりわけの
)
命
(
みこと
)
『
責任
(
せきにん
)
は
私
(
わたくし
)
が
負
(
お
)
ひます。
318
皆
(
みな
)
さま、
319
これきり
忘
(
わす
)
れて
下
(
くだ
)
さい』
320
と
懐
(
ふところ
)
より
幣
(
ぬさ
)
を
取
(
と
)
り
出
(
だ
)
し、
321
言依別命
『
祓
(
はら
)
ひ
給
(
たま
)
へ
清
(
きよ
)
め
給
(
たま
)
へ』
322
と
云
(
い
)
ひながら
左右左
(
さいうさ
)
に
打
(
う
)
ち
振
(
ふ
)
り、
323
言依別命
『さあ
皆
(
みな
)
さま、
324
これですつかり
解決
(
かいけつ
)
がつきましたよ』
325
黒姫
(
くろひめ
)
は
坐
(
すわ
)
つたまま
左
(
ひだり
)
の
腕
(
うで
)
を
突
(
つ
)
つ
張
(
ぱ
)
り、
326
体
(
からだ
)
を
斜
(
ななめ
)
にして
言依別
(
ことよりわけの
)
命
(
みこと
)
の
顔
(
かほ
)
を
穴
(
あな
)
のあくほど
凝視
(
みつ
)
め、
327
鼈
(
すつぽん
)
に
尻
(
しり
)
を
抜
(
ぬ
)
かれたやうなスタイルで、
328
黒姫
『ヘー』
329
と
長返事
(
ながへんじ
)
しながら
落着
(
おちつ
)
かぬ
面色
(
おももち
)
である。
330
言依別
(
ことよりわけの
)
命
(
みこと
)
『サア
皆
(
みな
)
さま、
331
お
宮
(
みや
)
へ
参拝
(
さんぱい
)
しませう』
332
と
先
(
さき
)
に
立
(
た
)
つ。
333
一同
(
いちどう
)
は
漸
(
やうや
)
く
胸
(
むね
)
を
撫
(
な
)
で
下
(
おろ
)
し、
334
錦
(
にしき
)
の
宮
(
みや
)
に
参拝
(
さんぱい
)
せむと
竜国別
(
たつくにわけ
)
の
家
(
いへ
)
を
立
(
た
)
ち
出
(
い
)
でた。
335
初春
(
はつはる
)
の
太陽
(
たいやう
)
は
六
(
ろく
)
人
(
にん
)
の
頭
(
あたま
)
を
煌々
(
くわうくわう
)
と
眩
(
まばゆ
)
きまでに
照
(
てら
)
し
給
(
たま
)
うた。
336
黄金
(
わうごん
)
の
玉
(
たま
)
も
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
337
紫玉
(
むらさきだま
)
も
又
(
また
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
338
金剛
(
こんがう
)
不壊
(
ふゑ
)
の
神玉
(
しんぎよく
)
も
339
如意
(
によい
)
の
宝珠
(
ほつしゆ
)
と
称
(
とな
)
ふなり
340
中
(
なか
)
にも
別
(
わ
)
けて
高姫
(
たかひめ
)
が
341
腹
(
はら
)
に
呑
(
の
)
み
居
(
ゐ
)
し
神玉
(
しんぎよく
)
は
342
神宝
(
たから
)
の
中
(
なか
)
の
神宝
(
たから
)
なり
343
言依別
(
ことよりわけの
)
命
(
みこと
)
より
344
委託
(
ゐたく
)
されたる
黄金
(
わうごん
)
の
345
玉
(
たま
)
の
在処
(
ありか
)
を
失
(
うしな
)
ひし
346
黒姫
(
くろひめ
)
心
(
こころ
)
も
落着
(
おちつ
)
かず
347
テーリスタンやカーリンス
348
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
まで
疑
(
うたが
)
ひて
349
色々
(
いろいろ
)
雑多
(
ざつた
)
と
気
(
き
)
を
焦
(
いら
)
ち
350
ヤツサモツサの
最中
(
さいちう
)
へ
351
言依別
(
ことよりわけ
)
が
現
(
あら
)
はれて
352
一先
(
ひとま
)
づその
場
(
ば
)
は
事
(
こと
)
もなく
353
治
(
をさ
)
まりつれど
治
(
をさ
)
まらぬ
354
心
(
こころ
)
の
空
(
そら
)
の
雲霧
(
くもきり
)
を
355
払
(
はら
)
ふ
術
(
すべ
)
なき
折柄
(
をりから
)
に
356
十字
(
じふじ
)
街頭
(
がいとう
)
に
高姫
(
たかひめ
)
が
357
錦
(
にしき
)
の
宮
(
みや
)
に
参詣
(
さんけい
)
の
358
折
(
をり
)
も
折
(
をり
)
とて
出会
(
しゆつくわい
)
し
359
黒姫
(
くろひめ
)
始
(
はじ
)
め
外
(
ほか
)
四
(
よ
)
人
(
にん
)
360
高姫宅
(
たかひめたく
)
に
招
(
せう
)
ぜられ
361
尊
(
たふと
)
き
神
(
かみ
)
の
御宝
(
みたから
)
を
362
紛失
(
ふんしつ
)
したる
責任
(
せきにん
)
を
363
問
(
と
)
ひ
詰
(
つ
)
められて
黒姫
(
くろひめ
)
は
364
いよいよ
爰
(
ここ
)
に
決心
(
けつしん
)
の
365
臍
(
ほぞ
)
を
固
(
かた
)
めて
聖域
(
せいゐき
)
を
366
あとに
眺
(
なが
)
めつ
黄金
(
わうごん
)
の
367
玉
(
たま
)
の
在処
(
ありか
)
を
探
(
さぐ
)
らむと
368
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
や
竜国別
(
たつくにわけ
)
369
テーリスタンやカーリンス
370
五
(
ご
)
人
(
にん
)
は
各自
(
かくじ
)
に
天
(
あめ
)
の
下
(
した
)
371
四方
(
よも
)
の
国々
(
くにぐに
)
隈
(
くま
)
もなく
372
探
(
たづ
)
ね
行
(
ゆ
)
くこそ
神界
(
しんかい
)
の
373
深
(
ふか
)
き
経綸
(
しぐみ
)
と
白雲
(
しらくも
)
の
374
余所
(
よそ
)
に
求
(
もと
)
むるあはれさよ
375
さはさりながら
此
(
この
)
度
(
たび
)
の
376
玉
(
たま
)
の
在処
(
ありか
)
は
言依別
(
ことよりわけ
)
の
377
神
(
かみ
)
の
命
(
みこと
)
の
胸
(
むね
)
の
内
(
うち
)
378
神
(
かみ
)
の
命令
(
みこと
)
を
畏
(
かしこ
)
みて
379
心
(
こころ
)
に
深
(
ふか
)
く
秘
(
ひ
)
めおきし
380
此
(
この
)
神策
(
しんさく
)
は
神
(
かみ
)
ならぬ
381
人
(
ひと
)
の
身
(
み
)
として
知
(
し
)
るよしも
382
泣々
(
なくなく
)
出
(
で
)
て
行
(
ゆ
)
くあさましさ
383
これより
五
(
ご
)
人
(
にん
)
は
神界
(
しんかい
)
の
384
仕組
(
しぐみ
)
の
糸
(
いと
)
に
操
(
あやつ
)
られ
385
悪魔
(
あくま
)
退治
(
たいぢ
)
の
神業
(
かむわざ
)
に
386
知
(
し
)
らず
識
(
し
)
らずに
奉仕
(
ほうし
)
する
387
奇
(
くし
)
き
神代
(
かみよ
)
の
物語
(
ものがたり
)
388
口述
(
こうじゆつ
)
進
(
すす
)
むに
従
(
したが
)
ひて
389
次第
(
しだい
)
々々
(
しだい
)
に
面白
(
おもしろ
)
く
390
深
(
ふか
)
き
神慮
(
しんりよ
)
を
覚
(
さと
)
り
得
(
え
)
む
391
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
392
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はへましませよ。
393
(
大正一一・五・二四
旧四・二八
加藤明子
録)
Δこのページの一番上に戻るΔ
<<< 探り合ひ
(B)
(N)
玉探志 >>>
霊界物語
>
如意宝珠(第13~24巻)
>
第22巻(酉の巻)
> 第1篇 暗雲低迷 > 第3章 不知火
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【
メールアドレス
】
【第3章 不知火|第22巻|如意宝珠|霊界物語|/rm2203】
合言葉「みろく」を入力して下さい→