霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一章 万物(ばんぶつ)同言(どうげん)〔八九二〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第32巻 海洋万里 未の巻 篇:第1篇 森林の都 よみ(新仮名遣い):しんりんのみやこ
章:第1章 万物同言 よみ(新仮名遣い):ばんぶつどうげん 通し章番号:892
口述日:1922(大正11)年08月22日(旧06月30日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年10月15日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一部の章はAIによって要約を作成しています。[×閉じる]:
ウヅの国の荒野ケ原で神の戒めにあって改心し、アマゾン河の大森林の魔神を言向け和すべく、鷹依姫、竜国別、テーリスタン、カーリンスの一行四人は河口にやってきた。
アマゾン河で猛獣の王として君臨しているのは、水陸両棲のモールバンドという怪物である。図体は象の体を十四五集めたような太く長く、四本の足の先には水かきのついた指と剣のように光る七八尺の爪がついている。頭部は鰐のごとく、四五十間も伸ばすことができる尻尾には、鋭利な諸刃の剣のような凶器を持っていた。
大蛇も森林や水底に潜んで、獣や人々を狙っている。しかし猛獣も大蛇も、モールバンドには恐れをなして姿を隠している。
モールバンドに次ぐ恐ろしい生き物として、エルバンドという動物もいた。四本の足を持ち、鱗は鉄のように固い。丸い玉のような頭には、小さな目がついている。この丸い頭部を細長く伸ばし、獲物の血を吸って生きる怪物である。
鷹依姫一行は怪物たちが住む河を遡るのを避け、船を捨てて上陸し、河の南岸を時雨の森を指して進んで行った。そして森林に住む動植物の声を聞いて状況を理解し、モールバンドやエルバンドの征服に従事することになった。
ところで、宇宙の森羅万象はすべて陰陽の水火(いき)によって形成されている。すべてのものは言霊の水火を有し、言語を発しているのである。また禽獣も人語を解するとともに、人にも禽獣草木の言葉を解する能力が備わっている。
世が下って人々の心が曲がってしまい、言語を理解できない人間に堕落してしまっているのである。言霊学を体得するときは、禽獣虫魚山川草木の言葉も容易に解することができるのである。
国魂の優れた日本人は、本来、円満晴朗なる七十五声を完全に使用することができるのだが、今はまったく心の耳・心の眼が閉じてしまっていることは、実に嘆かわしいことである。
今日の世界の言語は、言霊学上の原則を乱しているために、お互いに諒解しがたい点が多々あることになってしまっているのである。言霊の原則を誤らなければ、世界共通的に通用することができる。これが言霊の妙用であり宇宙の真理なのである。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2022-04-22 17:34:50 文字数:3823 OBC :rm3201
愛善世界社版:7頁 八幡書店版:第6輯 153頁 修補版: 校定版:7頁 普及版:2頁 初版: ページ備考:
001国治立(くにはるたちの)大神(おほかみ)が
002再(ふたた)び地上(ちじやう)に現(あら)はれて
003至仁(しじん)至愛(しあい)の五六七(みろく)神(しん)
004真善美(しんぜんび)なる神(かみ)の世(よ)を
005堅磐(かきは)常磐(ときは)に樹(た)て給(たま)ふ
006其(その)経綸(けいりん)の神宝(しんぱう)と
007尊重(そんちよう)されし珍宝(うづだから)
008金剛(こんがう)不壊(ふゑ)の如意(によい)宝珠(ほつしゆ)
009紫色(むらさきいろ)の霊玉(れいぎよく)や
010黄金(こがね)の玉(たま)を三五(あななひ)の
011神(かみ)の聖地(せいち)に納(をさ)めつつ
012時(とき)待(ま)ちたまふ折柄(をりから)に
013錦(にしき)の宮(みや)の黒姫(くろひめ)が
014保管(ほくわん)なしたる黄金(わうごん)の
015珍(うづ)の宝(たから)を紛失(ふんしつ)し
016日(ひ)の出神(でのかみ)と自称(じしよう)する
017系統(ひつぽう)の身魂(みたま)高姫(たかひめ)に
018追放(つゐはう)されて黒姫(くろひめ)は
019竜宮洲(りうぐうじま)なるオセアニア
020一(ひと)つの洲(しま)に打渡(うちわた)り
021玉(たま)の所在(ありか)を探(たづ)ねむと
022進(すす)み行(い)くこそ憐(あは)れなれ
023アルプス教(けう)を開(ひら)きたる
024鷹依姫(たかよりひめ)も高姫(たかひめ)の
025嫌疑(けんぎ)を受(う)けて止(や)むを得(え)ず
026竜国別(たつくにわけ)を伴(ともな)ひて
027浪路(なみぢ)を遥(はるか)に浮(うか)びつつ
028数多(あまた)の島(しま)を捜索(そうさく)し
029心筑紫(こころつくし)の果(は)て迄(まで)も
030駆(か)け巡(めぐ)りつつ探(さが)せども
031行方(ゆくへ)は更(さら)に白波(しらなみ)の
032舟(ふね)漕(こ)ぎ渡(わた)りやうやうに
033そば立(だ)つ波(なみ)も高砂(たかさご)の
034旭(あさひ)もテルの港(みなと)まで
035テーリスタンやカーリンス
036二人(ふたり)を加(くは)へて四人(よにん)連(づ)れ
037漸々(やうやう)此処(ここ)に安着(あんちやく)し
038テル国(くに)街道(かいだう)をスタスタと
039南(みなみ)に向(むか)つて行進(かうしん)し
040蛸取村(たことりむら)を乗越(のりこ)えて
041アリナの滝(たき)の其(その)ほとり
042鏡(かがみ)の池(いけ)の岩窟(がんくつ)に
043一行(いつかう)四(よ)人(にん)は居(きよ)を構(かま)へ
044あらぬ知識(ちしき)を搾(しぼ)り出(だ)し
045テルの国(くに)をば振出(ふりだ)しに
046夜昼(よるひる)なしにヒルの国(くに)
047足許(あしもと)さへもカルの国(くに)
048ブラジル国(こく)の果(は)て迄(まで)も
049鏡(かがみ)の池(いけ)の神霊(しんれい)に
050玉(たま)と名(な)のつく物(もの)あらば
051惜(を)しまず隠(かく)さず献(たてまつ)り
052宏大(くわうだい)無辺(むへん)の神徳(しんとく)を
053早(はや)く受(う)けよと宣伝(せんでん)の
054其(その)効(かう)空(むな)しからずして
055鏡(かがみ)の池(いけ)の聖場(せいぢやう)は
056種々(しゆじゆ)様々(さまざま)の厄雑玉(やくざだま)
057山(やま)の如(ごと)くに積(つ)まれける
058さはさりながら一(いつ)として
059鷹依姫(たかよりひめ)の求(もと)め居(ゐ)る
060黄金(こがね)の玉(たま)の神宝(しんぱう)は
061容易(ようい)に現(あら)はれ来(きた)らずて
062テー、カー二人(ふたり)は張詰(はりつ)めし
063心(こころ)の箍(たが)もいつしかに
064緩(ゆる)みて厭気(いやけ)はさしにけり
065あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
066神(かみ)の心(こころ)に叶(かな)はぬか
067一日(ひとひ)も早(はや)く此(この)国(くに)を
068後(あと)に見捨(みす)ててハルの国(くに)
069清(きよ)き霊地(れいち)を選択(せんたく)し
070ふたたび玉(たま)の収集(しうしふ)に
071着手(ちやくしゆ)せばやと鷹依姫(たかよりひめ)の
072教司(をしへつかさ)に献策(けんさく)し
073いろいろ雑多(ざつた)と村肝(むらきも)の
074心(こころ)を悩(なや)ます折柄(をりから)に
075テーナの里(さと)の酋長(しうちやう)が
076家(いへ)の秘蔵(ひざう)の金玉(きんぎよく)を
077御輿(みこし)に乗(の)せて献(たてまつ)り
078神(かみ)の御前(みまへ)に三五(あななひ)の
079心(こころ)の誠(まこと)を捧(ささ)げける
080鷹依姫(たかよりひめ)の一行(いつかう)は
081忽(たちま)ち玉(たま)を取出(とりいだ)し
082夜(よる)に紛(まぎ)れてアリナ山(やま)
083駆登(かけのぼ)りつつウヅの国(くに)
084荒野(あらの)ケ原(はら)に遁走(とんさう)し
085神(かみ)の化身(けしん)に散々(さんざん)と
086不言(ふげん)実行(じつかう)の懲戒(いましめ)を
087受(う)けていよいよ改心(かいしん)し
088一行(いつかう)四(よ)人(にん)は荒野原(あらのはら)
089東(ひがし)へ指(さ)して進(すす)み行(い)く
090アルの港(みなと)を船出(ふなで)して
091百(もも)の艱(なや)みに遇(あ)ひながら
092ゼムの港(みなと)に漂着(へうちやく)し
093天祥山(てんしやうざん)に立向(たちむか)ひ
094モールバンドの危害(きがい)をば
095救(すく)ひてチンの港(みなと)より
096岩樟船(いはくすふね)を造(つく)りあげ
097アマゾン河(がは)を溯(さかのぼ)り
098時雨(しぐれ)の森(もり)に潜(ひそ)みたる
099八岐(やまた)大蛇(をろち)や醜鬼(しこおに)を
100言向(ことむ)け和(やは)し三五(あななひ)の
101神(かみ)の恵(めぐみ)を照(て)らさむと
102心(こころ)をきはめて進(すす)み行(い)く。
103 目(め)の届(とど)かぬ許(ばか)り川幅(かははば)広(ひろ)く、104うす濁(にご)りのした水底(みなそこ)の深(ふか)き大激流(だいげきりう)、105飛沫(ひまつ)を飛(と)ばし、106何物(なにもの)の制圧(せいあつ)をも恐(おそ)れざる勢(いきほひ)を以(もつ)て、107自由(じいう)自在(じざい)に奔流(ほんりう)するアマゾン河(がは)の河口(かはぐち)に、108鷹依姫(たかよりひめ)の一行(いつかう)は、109帆(ほ)に風(かぜ)を孕(はら)ませ漸(やうや)くに安着(あんちやく)しぬ。
110 此処(ここ)には水陸(すゐりく)両棲(りやうせい)動物(どうぶつ)のモールバンドと云(い)ふ怪獣(くわいじう)がすべての猛獣(まうじう)の王(わう)として覇(は)を利(き)かして居(ゐ)る。111象(ざう)の体(からだ)を十四五(じふしご)許(ばか)り集(あつ)めた様(やう)な太(ふと)さの長(なが)き図体(づうたい)をなし、112爬虫族(はちうぞく)の様(やう)に四本(しほん)の足(あし)の先(さき)に水掻(みづか)きあり、113爪(つめ)の長(なが)さ七八(しちはつ)尺(しやく)にして、114剣(つるぎ)の如(ごと)く光(ひか)り且(か)つ尖(とが)つて居(ゐ)る。115頭部(とうぶ)は鰐(わに)の如(ごと)く、116口(くち)は非常(ひじやう)に大(おほ)きく、117鹿(しか)のやうな角(つの)を生(はや)し、118角(つの)の尖(さき)より何時(いつ)も煙(けむり)のやうなものを噴出(ふんしゆつ)してゐる。119目(め)は常(つね)に血走(ちばし)り、120尻(しり)は蜥蜴(とかげ)の尾(を)の如(ごと)く、121必要(ひつえう)に応(おう)じ四五十(しごじつ)間(けん)迄(まで)伸(の)ばす事(こと)が出来(でき)る。122さうして尾(を)の先(さき)には鋭利(えいり)な両刃(もろは)の剣(つるぎ)の如(ごと)き凶器(きやうき)を持(も)つてゐる。123此(この)モールバンドに対(たい)しては、124如何(いか)なる大蛇(をろち)も猛獣(まうじう)も恐(おそ)れ戦(をのの)き、125森林(しんりん)深(ふか)く姿(すがた)を隠(かく)して、126モールバンドの害(がい)を免(まぬが)れむとして居(ゐ)る。
127 又(また)此(この)アマゾン河(がは)には長大(ちやうだい)なる蛇(へび)数多(あまた)棲息(せいそく)し、128或時(あるとき)は森林(しんりん)に或時(あるとき)は水底(みなそこ)に潜(ひそ)んで獣(けもの)を呑(の)み且(か)つ人々(ひとびと)の此(この)地点(ちてん)に迷(まよ)ひ来(きた)る者(もの)あらば、129先(さき)を争(あらそ)うて出(い)で来(きた)り呑(の)み喰(くら)はむと待(ま)ち構(かま)へ居(ゐ)るなり。
130 又(また)外(ほか)にエルバンドと云(い)ふ、131鰐(わに)でもなく大蛇(をろち)でもなく、132鱗(うろこ)は鉄(かね)の如(ごと)く固(かた)く、133竜(りう)の如(ごと)き髯(ひげ)を生(しやう)じ、134四本(しほん)の足(あし)ある動物(どうぶつ)あり。135エルバンドの頭(あたま)は玉(たま)の如(ごと)く丸(まる)く、136其(その)目(め)は比較(ひかく)的(てき)小(ちひ)さい。137エルバンドは其(その)丸(まる)い頭部(とうぶ)を必要(ひつえう)に応(おう)じ、138細(ほそ)く長(なが)く伸(の)ばし、139動物(どうぶつ)の血(ち)を吸(す)ひ生(い)き居(ゐ)る怪物(くわいぶつ)なり。
140 モールバンドは猛獣(まうじう)を取(と)り喰(くら)ふにも、141男性(だんせい)的(てき)に敵(てき)をグツと睨(ね)めつけ、142尻尾(しつぽ)を打振(うちふ)り、143尾端(びたん)の剣(つるぎ)を以(もつ)て敵(てき)を叩(たた)きつけ、144切(き)り殺(ころ)し、145其(その)後(のち)に自分(じぶん)の腹(はら)に入(い)れて了(しま)ふ。146又(また)エルバンドは之(これ)に反(はん)し、147其(その)働(はたら)きは極(きは)めて女性(ぢよせい)的(てき)で、148動物(どうぶつ)の寝(ね)てゐる隙(すき)を考(かんが)へ、149柔(やはら)かき蛸(たこ)のやうな頭(あたま)を、150どこ迄(まで)も細(ほそ)く長(なが)く延長(えんちやう)し、151動物(どうぶつ)の肛門(こうもん)に舌(した)の先(さき)や口(くち)の先(さき)を当(あ)てがひ、152生血(いきち)を搾(しぼ)る恐(おそ)ろしき動物(どうぶつ)なり。153只(ただ)モールバンドにしてもエルバンドにしても、154彼(かれ)の最(もつと)も恐(おそ)るる敵(てき)は、155アマゾン河(がは)の畔(ほとり)に棲息(せいそく)してゐる巨大(きよだい)なる鰐(わに)の群(むれ)ばかりなりといふ。
156 鷹依姫(たかよりひめ)一行(いつかう)は、157かかる怪物(くわいぶつ)の棲息(せいそく)するアマゾン河(がは)の河口(かはぐち)に辿(たど)り着(つ)き、158危険(きけん)刻々(こくこく)に身(み)に迫(せま)り来(きた)る為(ため)に、159船(ふね)を乗(の)り捨(す)て、160アマゾン河(がは)の南岸(なんがん)に上陸(じやうりく)し、161時雨(しぐれ)の森(もり)に向(むか)つて宣伝歌(せんでんか)をうたひながら、162竜国別(たつくにわけ)、163テーリスタン、164カーリンスを伴(ともな)ひ、165樹蔭(こかげ)を縫(ぬ)ひて、166西(にし)へ西(にし)へと進(すす)み行(ゆ)く。
167 宇宙(うちう)の森羅(しんら)万象(ばんしやう)は一(ひとつ)として、168陰陽(いんやう)の水火(いき)によつて形成(けいせい)されざる物(もの)はない。169従(したが)つて神人(しんじん)は云(い)ふも更(さら)なり、170禽獣(きんじう)虫魚(ちうぎよ)、171山川(さんせん)草木(さうもく)に至(いた)る迄(まで)、172何(いづ)れも言霊(ことたま)の水火(いき)を有(いう)し、173言語(げんご)を発(はつ)せざるものはないのである。174中臣(なかとみ)の祓(はらひ)にも『草(くさ)の片葉(かきは)をも言止(ことや)めて云々(うんぬん)』の文句(もんく)あり、175古(いにしへ)の人(ひと)は凡(すべ)て禽獣(きんじう)草木(さうもく)の言語(げんご)迄(まで)も能(よ)く諒解(りやうかい)したるものなり。
176 又(また)禽獣(きんじう)は人語(じんご)を解(かい)し、177人(ひと)は又(また)禽獣(きんじう)草木(さうもく)の言葉(ことば)を能(よ)く解(かい)する事(こと)を得(え)たり。178されど世(よ)は追々(おひおひ)と降(くだ)り、179人(ひと)の心(こころ)は佞(ねぢ)け曲(まが)り、180遂(つひ)に罪悪(ざいあく)の塊(かたまり)となり、181一切(いつさい)の語(ご)を解(かい)する能(あた)はざる迄(まで)、182不便(ふべん)極(きは)まる人間(にんげん)と堕落(だらく)し了(おほ)せたるなり。183又(また)同(おな)じ人間(にんげん)の中(うち)に於(おい)ても、184国々(くにぐに)所々(ところどころ)言語(げんご)の相違(さうゐ)するは、185第一(だいいち)国魂神(くにたまがみ)の霊魂(みたま)の関係(くわんけい)及(および)風土(ふうど)寒暑(かんしよ)の関係(くわんけい)に依(よ)るものなるが、186之(これ)を一々(いちいち)聞分(ききわ)け其(その)意(い)を悟(さと)る事(こと)が出来(でき)ぬまでに人間(にんげん)の耳(みみ)が鈍(にぶ)り来(きた)りぬ。187幸(さいはひ)に言霊学(げんれいがく)を体得(たいとく)する時(とき)は、188別(べつ)に英語(えいご)とか仏蘭西(フランス)語(ご)、189露西亜(ロシア)語(ご)などと、190せせこましい語学(ごがく)を研究(けんきう)せなくとも、191其(その)声音(せいおん)の色(いろ)並(ならび)に抑揚(よくやう)頓挫(とんざ)等(とう)にて悟(さと)り得(え)らるる筈(はず)なり。192従(したが)つて禽獣(きんじう)虫魚(ちうぎよ)山川(さんせん)草木(さうもく)の言葉(ことば)も、193容易(ようい)に解(かい)し得(う)べきものなり。
194 例(たと)へば無生機物(むせいきぶつ)たる三味線(しやみせん)を引(ひ)き鳴(な)らして、195いろいろの音律(おんりつ)を発(はつ)し、196浄瑠璃(じやうるり)、197唄(うた)などに合(あ)はして物(もの)を言(い)はしむるに、198聞(き)き慣(な)れたる耳(みみ)には、199其(その)音(ね)の何(なに)を語(かた)り居(ゐ)るやを弁別(べんべつ)し得(う)るが如(ごと)し。200其(その)他(た)縦笛(たてぶえ)、201横笛(よこぶえ)、202笙(しやう)、203ひちりき、204太鼓(たいこ)、205鼓(つづみ)に至(いた)るまで、206僅(わづ)かに五音(ごいん)、207或(あるひ)は七八音(しちはちいん)を以(もつ)て、208能(よ)く其(その)用(よう)を達(たつ)する如(ごと)く、209禽獣(きんじう)虫魚(ちうぎよ)等(とう)の声音(せいおん)は、210其(その)数(かず)少(すくな)しと雖(いへど)も、211我(わが)耳(みみ)を清(きよ)くして聞(き)く時(とき)は、212禽獣(きんじう)草木(さうもく)の声(こゑ)を明(あきら)かに悟(さと)る事(こと)が出来(でき)得(う)る。213例(たと)へば、214喇叭(ラツパ)は僅(わづか)にタチツテトの五音(ごいん)を以(もつ)て数多(あまた)の軍隊(ぐんたい)を動(うご)かし、215三味線(しやみせん)はパピプペポ、216タチツテトの十音(じふいん)を以(もつ)て一切(いつさい)を語(かた)り、217牛(うし)はマミムメモ、218馬(うま)はハヒフヘホ、219猫(ねこ)はナニヌネノ、220犬(いぬ)はワヰウヱヲと云(い)ふやうに、221各(おのおの)特定(とくてい)の言霊(ことたま)を使用(しよう)し、222自分(じぶん)の意思(いし)を完全(くわんぜん)に表示(へうじ)し、223尚(なほ)及(およ)ばざる所(ところ)は、224目(め)を働(はたら)かせ体(からだ)の形容(けいよう)を以(もつ)て之(これ)を補(おぎな)ひ、225且(か)つ声(こゑ)の抑揚(よくやう)頓挫(とんざ)にて、226其(その)意思(いし)を明(あきら)かに表示(へうじ)するものなり。
227 日本人(にほんじん)は円満(ゑんまん)清朗(せいらう)なる七十五(しちじふご)声(せい)を完全(くわんぜん)に使用(しよう)し得(う)る高等(かうとう)人種(じんしゆ)である。228之(こ)れ全(まつた)く国魂(くにたま)の秀(すぐ)れたる所以(ゆゑん)にして、229人種(じんしゆ)として又(また)優等(いうとう)なる所以(ゆゑん)である。230人種(じんしゆ)に依(よ)つては二十四五(にじふしご)声(せい)或(あるひ)は三十声(さんじつせい)内外(ないぐわい)より言語(ことば)を使用(しよう)し得(え)ざるものあり。231而(しか)して其(その)声音(せいおん)は拗音(えうおん)、232濁音(だくおん)、233鼻音(びおん)、234半濁音(はんだくおん)、235獣畜音(じうちくおん)等(とう)が混入(こんにふ)してゐる。236されど神(かみ)と同(おな)じく七十五(しちじふご)声(せい)を使用(しよう)し得(う)る人種(じんしゆ)も今(いま)は全(まつた)く心(こころ)の耳(みみ)塞(ふさ)がり、237心(こころ)の眼(まなこ)閉(と)ぢたれば、238到底(たうてい)神諭(しんゆ)にある如(ごと)く、239一(いち)を聞(き)いて十(じふ)を悟(さと)るが如(ごと)き、240鋭敏(えいびん)なる心(こころ)の耳目(じもく)を欠(か)き、241百言(ひやくげん)聞(き)いて僅(わづか)に一二言(いちにげん)を悟(さと)り得(う)る位(くらゐ)の程度(ていど)まで耳目(じもく)活用(くわつよう)の能率(のうりつ)が低下(ていか)し、242他(た)の動物(どうぶつ)と殆(ほとん)ど選(えら)ぶ所(ところ)なき迄(まで)に到(いた)れるなり。243実(じつ)に天地(てんち)経綸(けいりん)の司宰者(しさいしや)たる人(ひと)として浩歎(かうたん)すべきの至(いた)りならずや。
244 鷹依姫(たかよりひめ)、245竜国別(たつくにわけ)、246テー、247カーの四(よ)人(にん)は此(この)森林(しんりん)に進(すす)み虎(とら)、248熊(くま)、249獅子(しし)、250狼(おほかみ)、251大蛇(をろち)、252鷲(わし)、253狐(きつね)、254兎(うさぎ)、255其(その)外(ほか)一切(いつさい)の動物(どうぶつ)の声音(せいおん)を聞(き)き、256能(よ)く其(その)意(い)を諒解(りやうかい)し、257茲(ここ)に猛獣(まうじう)を使役(しえき)して森(もり)の王(わう)となり、258モールバンド、259エルバンドの征服(せいふく)に従事(じゆうじ)する事(こと)となりぬ。260併(しか)し乍(なが)ら古(いにしへ)の人(ひと)は現代(げんだい)の如(ごと)く、261余(あま)り小(こ)ざかしき円滑(ゑんくわつ)な辞令(じれい)を用(もち)ゐず、262又(また)数万言(すうまんげん)を並(なら)べて喋々(てふてふ)喃々(なんなん)する必要(ひつえう)もなし。263それ故(ゆゑ)アとウとの息(いき)にて禽獣(きんじう)草木(さうもく)と能(よ)く其(その)意思(いし)を交換(かうくわん)する事(こと)を得(え)たりしなり。
264 併(しか)し乍(なが)ら現代人(げんだいじん)は、265到底(たうてい)簡単(かんたん)なる言語(げんご)にて其(その)意思(いし)を諒解(りやうかい)する丈(だけ)の能力(のうりよく)なし。266故(ゆゑ)に此(この)口述(こうじゆつ)も現代人(げんだいじん)の耳(みみ)に諒解(りやうかい)し易(やす)からしむる為(ため)、267大蛇(をろち)、268熊(くま)、269鹿(しか)、270虎(とら)、271狼(おほかみ)、272狐(きつね)、273兎(うさぎ)、274其(その)他(た)の鳥類(てうるゐ)に至(いた)るまで、275現代(げんだい)の人間(にんげん)の言語(げんご)を以(もつ)て話(はな)したる如(ごと)く訳(やく)して口述(こうじゆつ)せむとす。276古事記(こじき)にも大己貴(おほなむちの)命(みこと)、277気多(けた)の岬(みさき)にて因幡(ゐなば)の白兎(しろうさぎ)に出会(であ)ひ、278いろいろと問答(もんだふ)し給(たま)ふ神文(しんもん)がある如(ごと)く、279鳥獣(てうじう)草木(さうもく)の声音(せいおん)と雖(いへど)も、280真(しん)の神国(みくに)魂(だましひ)に返(かへ)りなば、281よく諒解(りやうかい)し得(え)らるるものなり。
282 禽獣(きんじう)草木(さうもく)は今日(こんにち)に至(いた)る迄(まで)、283朧(おぼろ)げながら人語(じんご)を解(かい)するに、284人間(にんげん)として禽獣(きんじう)草木(さうもく)の声音(せいおん)を聞(き)く事(こと)を得(え)ざるは、285実(じつ)に万物(ばんぶつ)の霊長(れいちやう)たる権威(けんゐ)はいづこにありや。286斯(か)かる不完全(ふくわんぜん)なる五感(ごかん)を以(もつ)て、287いかでか、288神(かみ)の生宮(いきみや)として万有(ばんいう)に安息(あんそく)を与(あた)へ、289天地(てんち)経綸(けいりん)の司宰者(しさいしや)たる其(その)職責(しよくせき)を全(まつた)うする事(こと)を得(え)む。290思(おも)へば思(おも)へば実(じつ)に遺憾(ゐかん)の極(きは)みなり。
291 口述者(こうじゆつしや)は外国語(ぐわいこくご)を学(まな)びし事(こと)なく、292又(また)横文字(よこもじ)を一字(いちじ)も解(かい)し得(え)ない。293されど各国人(かくこくじん)の談話(だんわ)を傍(かたはら)に在(あ)りて、294耳(みみ)をすませて聞(き)く時(とき)は、295其(その)意(い)の何(なん)たるかを、296言霊(ことたま)の原則(げんそく)上(じやう)、297諒解(りやうかい)し得(え)らるるなり。298此(この)物語(ものがたり)も亦(また)古代(こだい)の土人(どじん)の言語(げんご)を所々(ところどころ)に羅列(られつ)し、299或(あるひ)は現代(げんだい)の外国語(ぐわいこくご)を使用(しよう)したる所(ところ)もあり。300併(しか)し今日(こんにち)の世界(せかい)の語学(ごがく)は、301言霊学(ことたまがく)上(じやう)其(その)原則(げんそく)を乱(みだ)しゐる為(ため)に、302現代人(げんだいじん)の言語(げんご)は諒解(りやうかい)し難(がた)き点(てん)多々(たた)あり。303如何(いか)なる国(くに)の言語(げんご)と雖(いへど)も、304今(いま)の禽獣(きんじう)草木(さうもく)の如(ごと)く言霊(ことたま)の原則(げんそく)を誤(あやま)らざるに於(おい)ては、305世界(せかい)共通(きようつう)的(てき)に通(つう)ずべきが言霊(ことたま)の妙用(めうよう)、306宇宙(うちう)の真理(しんり)なり。307あゝ惟神(かむながら)霊(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)。
308(大正一一・八・二二 旧六・三〇 松村真澄録)
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