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霊界物語
海洋万里(第25~36巻)
第32巻(未の巻)
序文
総説
第1篇 森林の都
第1章 万物同言
第2章 猛獣会議
第3章 兎の言霊
第4章 鰐の言霊
第5章 琉球の光
第6章 獅子粉塵
第2篇 北の森林
第7章 試金玉
第8章 三人娘
第9章 岩窟女
第10章 暗黒殿
第11章 人の裘
第12章 鰐の橋
第13章 平等愛
第14章 山上の祝
第3篇 瑞雲靉靆
第15章 万歳楽
第16章 回顧の歌
第17章 悔悟の歌
第18章 竜国別
第19章 軽石車
第20章 瑞の言霊
第21章 奉答歌
第4篇 天祥地瑞
第22章 橋架
第23章 老婆心切
第24章 冷氷
余白歌
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霊界物語
>
海洋万里(第25~36巻)
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第32巻(未の巻)
> 第1篇 森林の都 > 第2章 猛獣会議
<<< 万物同言
(B)
(N)
兎の言霊 >>>
第二章
猛獣
(
まうじう
)
会議
(
くわいぎ
)
〔八九三〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第32巻 海洋万里 未の巻
篇:
第1篇 森林の都
よみ(新仮名遣い):
しんりんのみやこ
章:
第2章 猛獣会議
よみ(新仮名遣い):
もうじゅうかいぎ
通し章番号:
893
口述日:
1922(大正11)年08月22日(旧06月30日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年10月15日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
宣伝歌を歌いながらアマゾンの大森林に進み入った鷹依姫一行の前に、大きな兎の一族が現れた。兎の長老は、月の大神のお示しにより、宣伝使たちがやってくることを知り、自分たちを助けてくれるように懇願しに迎え出たのだという。
この時雨の森は、太古に月の大神から兎一族に与えられた楽園であったが、アダムとエバの霊魂から発生した八岐大蛇とその眷属が跋扈し、モールバンドやエルバンドのような怪物となって兎一族を餌食とし暴威を振るっているという。
竜国別は兎の長老の請いを容れて、兎一族の都に向かうこととなった。兎たちは怪物や猛獣を避けて、広い湖をめぐらした、四方を丘に囲まれた安全地帯に住んでいた。兎一族は、湖のほとりに棲む数多の鰐族と同盟を結び、互いに怪物や猛獣に対する守りを固めていた。
モールバンドとエルバンドは、兎たちがここに居を定めてから、兎を食べることができなくなってしまった。そのため、代わりに獅子、虎、狼、熊などの猛獣を食らっていた。
あるとき、モールバンドはエルバンドを使者として、猛獣の集まる森林の都の獅子王に遣わした。モールバンドとエルバンドは、獅子王に、猛獣の軍隊を引き連れて兎の都を襲い、兎を食料として提供することを要求した。
この要求を飲まなければ、モールバンドとエルバンドは猛獣を手当たり次第に取り食らうという脅迫も含んでいた。獅子王は、熊、狼、虎、大蛇、鷲などの猛獣の頭を集めて協議をなした。
モールバンド・エルバンドに従うか抗戦するかで議論は紛糾したが、獅子王は結局、強敵に立ち向かうよりも、弱い兎を攻めて自分たちの命をつなぐ方を選択した。猛獣たちの軍はただちに兎の都に向かって進撃した。
兎の王はそうとは知らず、鷹依姫、竜国別、テーリスタン、カーリンスの宣伝使たちを饗応していた。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-04-23 19:52:09
OBC :
rm3202
愛善世界社版:
18頁
八幡書店版:
第6輯 157頁
修補版:
校定版:
18頁
普及版:
7頁
初版:
ページ備考:
001
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
、
002
竜国別
(
たつくにわけ
)
の
一行
(
いつかう
)
は
宣伝歌
(
せんでんか
)
をうたひ
乍
(
なが
)
ら、
003
数百万
(
すうひやくまん
)
年
(
ねん
)
の
秘密
(
ひみつ
)
の
籠
(
こも
)
りたる
南岸
(
なんがん
)
の
森林
(
しんりん
)
に
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
る。
004
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
人跡
(
じんせき
)
なき
此
(
この
)
森林
(
しんりん
)
も、
005
思
(
おも
)
ひの
外
(
ほか
)
雑草
(
ざつさう
)
少
(
すくな
)
く、
006
空
(
そら
)
はあらゆる
大木
(
たいぼく
)
に
蔽
(
おほ
)
はれて、
007
日月
(
じつげつ
)
の
光
(
ひかり
)
を
見
(
み
)
る
事
(
こと
)
甚
(
はなは
)
だ
稀
(
まれ
)
であつた。
008
一本
(
いつぽん
)
の
大木
(
たいぼく
)
と
云
(
い
)
へば
周囲
(
しうゐ
)
百丈
(
ひやくぢやう
)
余
(
あま
)
りもあり、
009
高
(
たか
)
さ
数百丈
(
すうひやくぢやう
)
に
及
(
およ
)
び、
010
樹上
(
じゆじやう
)
には
猩々
(
しやうじやう
)
、
011
猅々
(
ひひ
)
、
012
野猿
(
やえん
)
の
類
(
るゐ
)
群
(
むれ
)
をなし、
013
果物
(
くだもの
)
を
常食
(
じやうしよく
)
として
可
(
か
)
なりに
安心
(
あんしん
)
な
生活
(
せいくわつ
)
をつづけ、
014
其
(
その
)
種族
(
しゆぞく
)
を
益々
(
ますます
)
繁殖
(
はんしよく
)
させ、
015
至
(
いた
)
る
所
(
ところ
)
に
猿
(
さる
)
の
叫
(
さけ
)
び
声
(
ごゑ
)
は
耳
(
みみ
)
をつんざく
許
(
ばか
)
り
怪
(
あや
)
しく
聞
(
きこ
)
えて
居
(
ゐ
)
る。
016
二三尺
(
にさんじやく
)
許
(
ばか
)
りの
大蜥蜴
(
おほとかげ
)
は
時々
(
ときどき
)
一行
(
いつかう
)
が
路
(
みち
)
を
遮
(
さへぎ
)
り、
017
開闢
(
かいびやく
)
以来
(
いらい
)
見
(
み
)
た
事
(
こと
)
もなき
人
(
ひと
)
の
姿
(
すがた
)
を
見
(
み
)
て、
018
驚
(
おどろ
)
いて
逃
(
に
)
げ
隠
(
かく
)
るるもあり、
019
中
(
なか
)
には
飛付
(
とびつ
)
き
来
(
く
)
るもあり、
020
其
(
その
)
他
(
た
)
異様
(
いやう
)
の
爬虫族
(
はちうぞく
)
、
021
先
(
さき
)
を
争
(
あらそ
)
うて
逃
(
に
)
げ
隠
(
かく
)
るる
音
(
おと
)
、
022
ザワザワと
谷川
(
たにがは
)
の
水流
(
すゐりう
)
の
如
(
ごと
)
くに
聞
(
きこ
)
え
来
(
きた
)
る。
023
此
(
この
)
時
(
とき
)
白毛
(
はくまう
)
の
兎
(
うさぎ
)
の
一群
(
ひとむれ
)
、
024
大
(
だい
)
なるは
現代
(
げんだい
)
の
牛
(
うし
)
の
如
(
ごと
)
きもの、
025
ノソノソと
一行
(
いつかう
)
の
前
(
まえ
)
に
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
尋
(
たづ
)
ねて
来
(
きた
)
り、
026
両足
(
りやうあし
)
を
前
(
まへ
)
に
行儀
(
ぎやうぎ
)
よく
並
(
なら
)
べて
涙
(
なみだ
)
を
流
(
なが
)
し
乍
(
なが
)
ら、
027
兎
(
うさぎ
)
『
私
(
わたくし
)
は
此
(
この
)
森林
(
しんりん
)
に
神代
(
かみよ
)
の
昔
(
むかし
)
より
永住
(
えいぢゆう
)
致
(
いた
)
しまする
兎
(
うさぎ
)
の
長
(
をさ
)
で
厶
(
ござ
)
います。
028
此
(
この
)
通
(
とほ
)
り
数多
(
あまた
)
の
種族
(
しゆぞく
)
を
引連
(
ひきつ
)
れ、
029
あなた
様
(
さま
)
一行
(
いつかう
)
の
御
(
お
)
降
(
くだ
)
りを
月
(
つき
)
の
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
より
御
(
お
)
示
(
しめ
)
しに
預
(
あづか
)
り、
030
ここに
謹
(
つつし
)
んでお
迎
(
むか
)
へに
参
(
まゐ
)
りました。
031
あなたは
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
様
(
さま
)
、
032
竜国別
(
たつくにわけ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
一行
(
いつかう
)
で
厶
(
ござ
)
いませう。
033
何卒
(
なにとぞ
)
この
森林
(
しんりん
)
を
御
(
ご
)
踏査
(
たうさ
)
下
(
くだ
)
さいまして、
034
吾々
(
われわれ
)
の
安逸
(
あんいつ
)
に
一生
(
いつしやう
)
を
送
(
おく
)
り
得
(
え
)
らるる
様
(
やう
)
、
035
御
(
お
)
守
(
まも
)
りの
程
(
ほど
)
偏
(
ひとへ
)
に
願
(
ねが
)
ひ
上
(
あ
)
げ
奉
(
たてまつ
)
ります』
036
と
慇懃
(
いんぎん
)
に
頼
(
たの
)
み
入
(
い
)
るにぞ、
037
竜国別
(
たつくにわけ
)
は、
038
竜国別
『ヤア
始
(
はじ
)
めて
御
(
お
)
目
(
め
)
にかかります。
039
あなたは
此
(
この
)
森林
(
しんりん
)
に
長
(
なが
)
らく
御
(
お
)
住居
(
すまゐ
)
なさると
聞
(
き
)
きましたが、
040
大変
(
たいへん
)
に
険呑
(
けんのん
)
な
所
(
ところ
)
で
厶
(
ござ
)
いますなア』
041
兎
『ハイ
御存
(
ごぞん
)
じの
通
(
とほ
)
り、
042
此
(
この
)
時雨
(
しぐれ
)
の
森
(
もり
)
は、
043
其
(
その
)
昔
(
むかし
)
吾々共
(
われわれども
)
の
種族
(
しゆぞく
)
が
月
(
つき
)
の
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
より
千代
(
ちよ
)
の
棲処
(
すみか
)
として
与
(
あた
)
へられたもので
厶
(
ござ
)
いますが、
044
アダム、
045
エバの
霊
(
みたま
)
より
発生
(
はつせい
)
したる
八岐
(
やまた
)
の
大蛇
(
をろち
)
の
一族
(
いちぞく
)
を
始
(
はじ
)
め
悪鬼
(
あくき
)
悪狐
(
あくこ
)
の
子孫
(
しそん
)
益々
(
ますます
)
跋扈
(
ばつこ
)
して、
046
遂
(
つひ
)
にはモールバンドやエルバンドの
如
(
ごと
)
き
怪獣
(
くわいじう
)
と
成
(
な
)
り
変
(
かは
)
り、
047
吾々
(
われわれ
)
一同
(
いちどう
)
のものを
餌食
(
ゑじき
)
と
致
(
いた
)
し、
048
今
(
いま
)
は
殆
(
ほとん
)
ど
亡
(
ほろ
)
ぼされて
了
(
しま
)
ひ、
049
此
(
この
)
数百
(
すうひやく
)
里
(
り
)
の
大森林
(
だいしんりん
)
の
棲処
(
すみか
)
に
於
(
おい
)
て、
050
実
(
じつ
)
に
数千頭
(
すうせんとう
)
の
影
(
かげ
)
を
止
(
とど
)
むるのみ、
051
実
(
じつ
)
に
吾々
(
われわれ
)
は
悲惨
(
ひさん
)
な
生活
(
せいくわつ
)
をつづけ、
052
戦々
(
せんせん
)
兢々
(
きようきよう
)
として、
053
一時
(
いつとき
)
の
間
(
ま
)
も
安楽
(
あんらく
)
に
生活
(
せいくわつ
)
を
送
(
おく
)
る
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ないので
厶
(
ござ
)
います。
054
加
(
くは
)
ふるに、
055
虎
(
とら
)
、
056
狼
(
おほかみ
)
、
057
獅子
(
しし
)
、
058
熊
(
くま
)
、
059
大蛇
(
をろち
)
、
060
鷲
(
わし
)
などの
連中
(
れんぢう
)
が、
061
常世
(
とこよ
)
の
国
(
くに
)
のロツキー
山
(
ざん
)
方面
(
はうめん
)
より、
062
常世
(
とこよ
)
会議
(
くわいぎ
)
のありし
後
(
のち
)
、
063
此
(
この
)
森林
(
しんりん
)
に
逃
(
に
)
げ
来
(
きた
)
り、
064
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
が
種族
(
しゆぞく
)
を
餌食
(
ゑじき
)
と
致
(
いた
)
し、
065
暴虐
(
ばうぎやく
)
無道
(
ぶだう
)
の
其
(
その
)
振舞
(
ふるまひ
)
、
066
実
(
じつ
)
に
名状
(
めいじやう
)
す
可
(
べか
)
らざる
惨状
(
さんじやう
)
で
厶
(
ござ
)
います。
067
何卒
(
なにとぞ
)
あなた
方
(
がた
)
の
御
(
ご
)
神力
(
しんりき
)
を
以
(
もつ
)
て
此
(
この
)
森林
(
しんりん
)
の
悪獣
(
あくじう
)
、
068
悪蛇
(
あくだ
)
、
069
悪鳥
(
あくてう
)
を
言向和
(
ことむけやは
)
し、
070
動物
(
どうぶつ
)
一切
(
いつさい
)
相和
(
あひわ
)
し
相親
(
あひした
)
しみ、
071
天与
(
てんよ
)
の
恩恵
(
おんけい
)
を
永遠
(
えいゑん
)
に
楽
(
たの
)
しむ
様
(
やう
)
、
072
お
執
(
と
)
りなしを
偏
(
ひとへ
)
に
希
(
こひねが
)
ひ
奉
(
たてまつ
)
ります』=兎は月神を祭る民族の意=
073
竜国別
『
委細
(
ゐさい
)
承知
(
しようち
)
致
(
いた
)
した。
074
然
(
しか
)
らば、
075
是
(
これ
)
より
其
(
その
)
方
(
はう
)
は
吾々
(
われわれ
)
の
先導
(
せんだう
)
になつて、
076
第一
(
だいいち
)
に
猛獣
(
まうじう
)
の
棲処
(
すみか
)
へ
案内
(
あんない
)
致
(
いた
)
せ。
077
惟神
(
かむながら
)
の
神法
(
しんぱふ
)
を
以
(
もつ
)
て、
078
彼
(
かれ
)
等
(
ら
)
を
善
(
ぜん
)
に
導
(
みちび
)
き、
079
悪
(
あく
)
を
悔
(
く
)
い
改
(
あらた
)
めしめ、
080
此
(
この
)
森林
(
しんりん
)
をして
忽
(
たちま
)
ち
天国
(
てんごく
)
の
楽園
(
らくゑん
)
と
化
(
くわ
)
せしめむ。
081
あゝ
面白
(
おもしろ
)
し
面白
(
おもしろ
)
し……
母上
(
ははうへ
)
様
(
さま
)
、
082
妙
(
めう
)
なことになつて
参
(
まゐ
)
りました。
083
サア
兎殿
(
うさぎどの
)
、
084
案内
(
あんない
)
召
(
め
)
されよ』
085
兎
『ハイ、
086
早速
(
さつそく
)
の
御
(
ご
)
承知
(
しようち
)
、
087
吾々
(
われわれ
)
一族
(
いちぞく
)
は
実
(
じつ
)
に
蘇生
(
そせい
)
の
思
(
おも
)
ひを
致
(
いた
)
します』
088
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
089
大兎
(
おほうさぎ
)
は
数多
(
あまた
)
の
団体
(
だんたい
)
を
率
(
ひき
)
ゐ、
090
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
一行
(
いつかう
)
の
前後
(
ぜんご
)
を
警護
(
けいご
)
しつつ
森林
(
しんりん
)
深
(
ふか
)
く
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
091
数多
(
あまた
)
の
兎
(
うさぎ
)
に
送
(
おく
)
られて、
092
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
一行
(
いつかう
)
は
天
(
てん
)
を
封
(
ふう
)
じて
樹
(
た
)
てる
森林
(
しんりん
)
の
中
(
なか
)
を、
093
意気
(
いき
)
揚々
(
やうやう
)
と
半日
(
はんにち
)
許
(
ばか
)
り
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
094
此処
(
ここ
)
には
稍
(
やや
)
展開
(
てんかい
)
された
樹木
(
じゆもく
)
のなき
空地
(
あきち
)
がある。
095
殆
(
ほとん
)
ど
十
(
じふ
)
里
(
り
)
四方
(
しはう
)
の
間
(
あいだ
)
は
余
(
あま
)
り
太
(
ふと
)
き
樹木
(
じゆもく
)
もなく、
096
針葉樹
(
しんえうじゆ
)
の
小高
(
こだか
)
き
丘
(
をか
)
四方
(
しはう
)
を
包
(
つつ
)
み、
097
恰
(
あだか
)
も
青垣山
(
あをがきやま
)
の
屏風
(
びやうぶ
)
を
引廻
(
ひきまは
)
せし
如
(
ごと
)
き
安全
(
あんぜん
)
地帯
(
ちたい
)
である。
098
兎
(
うさぎ
)
の
一族
(
いちぞく
)
は
僅
(
わづか
)
に
此
(
この
)
地帯
(
ちたい
)
を
永住処
(
えいぢうしよ
)
となして
生活
(
せいくわつ
)
を
続
(
つづ
)
けてゐる。
099
謂
(
い
)
はば
兎
(
うさぎ
)
の
都
(
みやこ
)
である。
100
其
(
その
)
殆
(
ほとん
)
ど
中心
(
ちうしん
)
に、
101
聖地
(
せいち
)
に
於
(
お
)
ける
桶伏山
(
をけぶせやま
)
の
如
(
ごと
)
き
美
(
うる
)
はしき
岩石
(
がんせき
)
を
以
(
もつ
)
て
自然
(
しぜん
)
に
造
(
つく
)
られたる
霊場
(
れいぢやう
)
があり、
102
そこには
兎
(
うさぎ
)
の
最
(
もつと
)
も
尊敬
(
そんけい
)
する
月
(
つき
)
の
大神
(
おほかみ
)
の
宮
(
みや
)
が
儼然
(
げんぜん
)
として
建
(
た
)
てられてある。
103
此
(
この
)
清
(
きよ
)
き
宮山
(
みややま
)
を
繞
(
めぐ
)
る
清鮮
(
せいせん
)
の
水
(
みづ
)
を
湛
(
たた
)
へた
広
(
ひろ
)
き
湖
(
うみ
)
の
辺
(
ほとり
)
には、
104
大小
(
だいせう
)
無数
(
むすう
)
の
鰐
(
わに
)
=鰐は武人の群=が
棲息
(
せいそく
)
し、
105
鰐
(
わに
)
と
兎
(
うさぎ
)
の
両族
(
りやうぞく
)
は
互
(
たがひ
)
に
相提携
(
あひていけい
)
して
天与
(
てんよ
)
の
恩恵
(
おんけい
)
を
楽
(
たのし
)
んでゐる。
106
つまり
此
(
この
)
鰐
(
わに
)
は
森林
(
しんりん
)
の
持主
(
もちぬし
)
たる
兎
(
うさぎ
)
の
眷属
(
けんぞく
)
とも
云
(
い
)
ふべきものにして、
107
兎
(
うさぎ
)
の
国
(
くに
)
の
軍隊
(
ぐんたい
)
の
如
(
ごと
)
き
用務
(
ようむ
)
に
従事
(
じうじ
)
してゐるのである。
108
モールバンド、
109
エルバンドの
怪獣
(
くわいじう
)
は
兎
(
うさぎ
)
を
食
(
しよく
)
する
事
(
こと
)
を
最
(
もつと
)
も
好
(
この
)
み、
110
日夜
(
にちや
)
其
(
その
)
事
(
こと
)
のみに
精神
(
せいしん
)
を
傾注
(
けいちゆう
)
して
居
(
ゐ
)
る。
111
されど
兎
(
うさぎ
)
は
最早
(
もはや
)
此
(
この
)
安全
(
あんぜん
)
地帯
(
ちたい
)
に
集
(
あつ
)
まりし
事
(
こと
)
とて、
112
巨大
(
きよだい
)
なる
肉体
(
にくたい
)
を
有
(
いう
)
するモールバンドは、
113
数多
(
あまた
)
の
密生
(
みつせい
)
したる
樹木
(
じゆもく
)
に
遮
(
さへぎ
)
られて、
114
ここに
侵入
(
しんにふ
)
するを
得
(
え
)
なくなつて
了
(
しま
)
つた。
115
如何
(
いか
)
にエルバンドと
雖
(
いへど
)
も、
116
アマゾン
河
(
がは
)
の
岸
(
きし
)
より
首
(
くび
)
を
伸
(
の
)
ばし、
117
ここ
迄
(
まで
)
届
(
とど
)
かす
事
(
こと
)
は
到底
(
たうてい
)
出来
(
でき
)
ない。
118
それ
故
(
ゆゑ
)
止
(
や
)
むを
得
(
え
)
ず、
119
余
(
あま
)
り
好
(
この
)
まざる
肉
(
にく
)
ながら
虎
(
とら
)
、
120
狼
(
おほかみ
)
、
121
熊
(
くま
)
、
122
獅子
(
しし
)
等
(
など
)
を
捕喰
(
とりくら
)
ひ、
123
僅
(
わづ
)
かに
其
(
その
)
餓
(
うゑ
)
を
凌
(
しの
)
ぎつつあるのである。
124
或時
(
あるとき
)
モールバンドはエルバンドを
使者
(
ししや
)
として、
125
猛獣
(
まうじう
)
の
集
(
あつ
)
まる
森林
(
しんりん
)
の
都
(
みやこ
)
、
126
獅子
(
しし
)
の
巣窟
(
さうくつ
)
に
向
(
むか
)
つて
使
(
つか
)
ひせしめ、
127
ここに
談判
(
だんぱん
)
を
開始
(
かいし
)
する
事
(
こと
)
となつた。
128
其
(
その
)
談判
(
だんぱん
)
の
要領
(
えうりやう
)
は
左
(
さ
)
の
通
(
とほ
)
りである。
129
獅子王
(
ししわう
)
『あなたはモールバンド
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
使者
(
ししや
)
エルバンド
様
(
さま
)
、
130
能
(
よ
)
くこそ
御
(
ご
)
入来
(
じゆらい
)
下
(
くだ
)
さいました。
131
就
(
つ
)
いては
今日
(
こんにち
)
の
御用
(
ごよう
)
の
趣
(
おもむき
)
、
132
何卒
(
なにとぞ
)
詳
(
つぶ
)
さに
御
(
お
)
話
(
はな
)
し
下
(
くだ
)
さいませ』
133
エルバンド『
吾々
(
われわれ
)
今日
(
こんにち
)
使者
(
ししや
)
として
獅子王
(
ししわう
)
の
都
(
みやこ
)
へ
参
(
まゐ
)
りしは、
134
余
(
よ
)
の
儀
(
ぎ
)
では
御座
(
ござ
)
らぬ。
135
吾
(
わが
)
統領
(
とうりやう
)
のモールバンド
様
(
さま
)
、
136
アマゾン
河
(
がは
)
に
数多
(
あまた
)
の
眷族
(
けんぞく
)
を
御
(
お
)
連
(
つ
)
れ
遊
(
あそ
)
ばし、
137
兎
(
うさぎ
)
を
捉
(
とら
)
へて
常食
(
じやうしよく
)
となし
給
(
たま
)
ふ。
138
吾々
(
われわれ
)
も
亦
(
また
)
、
139
兎
(
うさぎ
)
を
以
(
もつ
)
て
最上
(
さいじやう
)
の
美味
(
びみ
)
と
致
(
いた
)
して
居
(
ゐ
)
るもの、
140
然
(
しか
)
るに
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
は
兎
(
うさぎ
)
の
影
(
かげ
)
も
見
(
み
)
せ
申
(
まを
)
さず、
141
甚
(
はなはだ
)
以
(
もつ
)
て
吾々
(
われわれ
)
一族
(
いちぞく
)
は
困窮
(
こんきう
)
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
る
次第
(
しだい
)
で
御座
(
ござ
)
います。
142
就
(
つ
)
いては
獅子王
(
ししわう
)
殿
(
どの
)
に
一
(
ひと
)
つの
談判
(
だんぱん
)
があつて、
143
ワザワザここに
使者
(
ししや
)
として、
144
エルバンド
出張
(
しゆつちやう
)
仕
(
つかまつ
)
りました。
145
其
(
その
)
理由
(
りいう
)
とする
所
(
ところ
)
は、
146
獅子王
(
ししわう
)
の
手
(
て
)
を
以
(
もつ
)
て、
147
熊
(
くま
)
、
148
虎
(
とら
)
、
149
狼
(
おほかみ
)
を
使
(
つか
)
ひ、
150
兎
(
うさぎ
)
の
都
(
みやこ
)
に
侵入
(
しんにふ
)
し、
151
彼
(
かれ
)
等
(
ら
)
を
生捕
(
いけどり
)
にし、
152
日
(
ひ
)
に
数百
(
すうひやく
)
の
兎
(
うさぎ
)
をモールバンド
様
(
さま
)
に
御
(
ご
)
献上
(
けんじやう
)
ありたし。
153
然
(
しか
)
らざれば
熊
(
くま
)
、
154
鹿
(
しか
)
、
155
虎
(
とら
)
、
156
狼
(
おほかみ
)
、
157
止
(
や
)
むを
得
(
え
)
ざれば、
158
獅子
(
しし
)
の
一族
(
いちぞく
)
をも、
159
手当
(
てあた
)
り
次第
(
しだい
)
捕喰
(
とりくら
)
ふべしとの
厳命
(
げんめい
)
で
御座
(
ござ
)
いますれば、
160
速
(
すみや
)
かに
否
(
いな
)
やの
御
(
ご
)
返答
(
へんたふ
)
を
承
(
うけたま
)
はりたう
御座
(
ござ
)
います』
161
獅子王
『これはこれは、
162
何事
(
なにごと
)
かと
思
(
おも
)
へば、
163
思
(
おも
)
ひもよらぬ
御
(
おん
)
仰
(
あふ
)
せ、
164
吾々
(
われわれ
)
一族
(
いちぞく
)
は
虎
(
とら
)
、
165
狼
(
おほかみ
)
、
166
熊
(
くま
)
、
167
獅子
(
しし
)
の
区別
(
くべつ
)
なく、
168
日夜
(
にちや
)
モールバンド
様
(
さま
)
の
部下
(
ぶか
)
に
捉
(
とら
)
へられ、
169
日
(
ひ
)
に
幾百
(
いくひやく
)
となく
生命
(
せいめい
)
を
断
(
た
)
たれ、
170
捕喰
(
とりくら
)
はれ、
171
実
(
じつ
)
に
困憊
(
こんぱい
)
の
極
(
きよく
)
に
達
(
たつ
)
して
居
(
を
)
りまする。
172
就
(
つい
)
ては
吾々
(
われわれ
)
四足
(
よつあし
)
一族
(
いちぞく
)
は
茲
(
ここ
)
に
大軍隊
(
だいぐんたい
)
を
組織
(
そしき
)
し、
173
北岸
(
ほくがん
)
の
森林
(
しんりん
)
の
同志
(
どうし
)
と
相謀
(
あひはか
)
り、
174
川
(
かは
)
を
差挟
(
さしはさ
)
んでモールバンド、
175
エルバンドの
軍隊
(
ぐんたい
)
を
一匹
(
いつぴき
)
も
残
(
のこ
)
らず
殲滅
(
せんめつ
)
し
呉
(
く
)
れむと
日夜
(
にちや
)
肝胆
(
かんたん
)
を
砕
(
くだ
)
き、
176
今
(
いま
)
や
協議
(
けふぎ
)
の
真最中
(
まつさいちう
)
で
御座
(
ござ
)
れば、
177
早速
(
さつそく
)
に
此
(
この
)
返答
(
へんたふ
)
は
致
(
いた
)
し
難
(
がた
)
し。
178
御
(
ご
)
返事
(
へんじ
)
は、
179
追
(
お
)
つてアマゾン
河
(
がは
)
の
岸
(
きし
)
に
使者
(
ししや
)
を
遣
(
つか
)
はし、
180
御
(
お
)
答
(
こた
)
へ
申
(
まを
)
さむ。
181
此
(
この
)
場
(
ば
)
は
一先
(
ひとま
)
づ
御
(
お
)
帰
(
かへ
)
りあらむ
事
(
こと
)
を
希望
(
きばう
)
致
(
いた
)
します』
182
エルバンド
『
然
(
しか
)
らば
是非
(
ぜひ
)
に
及
(
およ
)
ばぬ。
183
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
協議
(
けふぎ
)
を
遂
(
と
)
げ、
184
御
(
ご
)
返事
(
へんじ
)
あらむことを
希望
(
きばう
)
致
(
いた
)
します』
185
と
云
(
い
)
ひ
捨
(
す
)
て、
186
長大
(
ちやうだい
)
なる
巨躯
(
きよく
)
を
蛭
(
ひる
)
の
如
(
ごと
)
く
伸縮
(
しんしゆく
)
させ、
187
のそりのそりと
獅子王
(
ししわう
)
の
都
(
みやこ
)
を
後
(
あと
)
に、
188
アマゾン
河
(
がは
)
のモールバンドの
本陣
(
ほんぢん
)
と
聞
(
きこ
)
えたる
寝覚
(
ねざめ
)
の
淵
(
ふち
)
を
指
(
さ
)
して
帰
(
かへ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
189
あとに
獅子王
(
ししわう
)
は
数多
(
あまた
)
の
四
(
よ
)
つ
足族
(
あしぞく
)
を
獅子
(
しし
)
の
都
(
みやこ
)
に
召集
(
せうしふ
)
し、
190
一大
(
いちだい
)
会議
(
くわいぎ
)
を
開催
(
かいさい
)
する
事
(
こと
)
となりぬ。
191
獅子王
(
ししわう
)
はエルバンドの
使者
(
ししや
)
の
帰
(
かへ
)
つた
後
(
のち
)
、
192
直
(
ただ
)
ちに
使獅子
(
つかひじし
)
を
森林
(
しんりん
)
の
各処
(
かくしよ
)
に
派遣
(
はけん
)
し、
193
熊王
(
くまわう
)
、
194
狼王
(
おほかみわう
)
、
195
虎
(
とら
)
の
王
(
わう
)
、
196
大蛇
(
をろち
)
の
頭
(
かしら
)
、
197
鷲
(
わし
)
の
王
(
わう
)
などを
代表者
(
だいへうしや
)
として
召集
(
せうしふ
)
し、
198
獅子王
(
ししわう
)
の
館
(
やかた
)
に
於
(
おい
)
て
大会議
(
だいくわいぎ
)
を
開
(
ひら
)
く
事
(
こと
)
となつた。
199
日
(
ひ
)
ならずして
各獣
(
かくじう
)
の
代表者
(
だいへうしや
)
は
集
(
あつ
)
まり
来
(
きた
)
る。
200
山桃
(
やまもも
)
の
林
(
はやし
)
の
下
(
もと
)
に
大会議
(
だいくわいぎ
)
は
開
(
ひら
)
かれた。
201
獅子王
(
ししわう
)
は
先
(
ま
)
づ
開会
(
かいくわい
)
の
挨拶
(
あいさつ
)
をなし
終
(
をは
)
つて、
202
獅子王
『モールバンドの
使者
(
ししや
)
の
齎
(
もたら
)
した
申込
(
まをしこ
)
みに
対
(
たい
)
し、
203
各自
(
かくじ
)
の
意見
(
いけん
)
を
吐露
(
とろ
)
し、
204
最善
(
さいぜん
)
の
方法
(
はうはふ
)
を
協議
(
けふぎ
)
されむ
事
(
こと
)
を
望
(
のぞ
)
む』
205
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
206
諄々
(
じゆんじゆん
)
として
一伍
(
いちぶ
)
一什
(
しじふ
)
の
経緯
(
いきさつ
)
を
物語
(
ものがた
)
れば、
207
茲
(
ここ
)
に
熊王
(
くまわう
)
は
進
(
すす
)
み
出
(
で
)
て、
208
手
(
て
)
に
唾
(
つばき
)
し
憤然
(
ふんぜん
)
として
雄猛
(
をたけ
)
びし、
209
巨大
(
きよだい
)
なる
目
(
め
)
を
瞠
(
みは
)
りつつ、
210
熊王
『
皆様
(
みなさま
)
、
211
如何
(
いかが
)
で
御座
(
ござ
)
いませう。
212
吾々
(
われわれ
)
四
(
よ
)
つ
足族
(
あしぞく
)
は、
213
今日迄
(
こんにちまで
)
互
(
たがひ
)
に
反噬
(
はんぜい
)
を
逞
(
たくま
)
しうし、
214
優勝
(
いうしよう
)
劣敗
(
れつぱい
)
、
215
弱肉
(
じやくにく
)
強食
(
きやうしよく
)
の
戦闘
(
せんとう
)
を
続
(
つづ
)
けて
参
(
まゐ
)
りました。
216
処
(
ところ
)
が
仁愛
(
じんあい
)
深
(
ふか
)
き
獅子王
(
ししわう
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
威勢
(
ゐせい
)
と
御
(
ご
)
尽力
(
じんりよく
)
に
依
(
よ
)
り、
217
互
(
たがひ
)
に
其
(
その
)
範囲
(
はんゐ
)
を
犯
(
をか
)
さず、
218
熊
(
くま
)
は
熊
(
くま
)
の
団体
(
だんたい
)
、
219
狼
(
おほかみ
)
は
狼
(
おほかみ
)
、
220
豹
(
へう
)
は
豹
(
へう
)
、
221
大蛇
(
をろち
)
は
大蛇
(
をろち
)
、
222
虎
(
とら
)
は
虎
(
とら
)
と
各
(
おのおの
)
部落
(
ぶらく
)
を
作
(
つく
)
り、
223
此
(
この
)
森林
(
しんりん
)
は
漸
(
やうや
)
く
無事
(
ぶじ
)
太平
(
たいへい
)
に
治
(
をさ
)
まり、
224
辛
(
から
)
うじて
猿
(
さる
)
を
捕
(
と
)
り、
225
兎
(
うさぎ
)
を
捕獲
(
ほくわく
)
し、
226
吾々
(
われわれ
)
獣族
(
じうぞく
)
は
漸
(
やうや
)
く
其
(
その
)
生命
(
せいめい
)
を
保
(
たも
)
つて
来
(
き
)
たのである。
227
然
(
しか
)
るに
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
モールバンド、
228
エルバンドの
一族
(
いちぞく
)
、
229
アマゾン
河
(
がは
)
より
這
(
は
)
ひ
上
(
あが
)
り
来
(
きた
)
り、
230
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
が
部落
(
ぶらく
)
を
犯
(
をか
)
す
事
(
こと
)
一再
(
いつさい
)
ならず、
231
吾
(
わが
)
種族
(
しゆぞく
)
は
夜
(
よ
)
も
枕
(
まくら
)
を
高
(
たか
)
くし
安眠
(
あんみん
)
する
事
(
こと
)
も
出来
(
でき
)
ない
惨状
(
さんじやう
)
で
御座
(
ござ
)
います。
232
然
(
しか
)
るに
何
(
なん
)
ぞや、
233
悪虐
(
あくぎやく
)
益々
(
ますます
)
甚
(
はなは
)
だしく、
234
日
(
ひ
)
に
数百頭
(
すうひやくとう
)
の
兎
(
うさぎ
)
を
貢
(
みつぎ
)
せざれば、
235
吾々
(
われわれ
)
が
種族
(
しゆぞく
)
を
捕
(
と
)
り
喰
(
くら
)
ふべしとの
酷烈
(
こくれつ
)
なる
要求
(
えうきう
)
、
236
どうして
是
(
これ
)
が
吾々
(
われわれ
)
として
応
(
おう
)
じられませうか。
237
吾々
(
われわれ
)
は
仮令
(
たとへ
)
種族
(
しゆぞく
)
全滅
(
ぜんめつ
)
の
厄
(
やく
)
に
遭
(
あ
)
ふとも、
238
撓
(
たゆ
)
まず
屈
(
くつ
)
せず
一戦
(
いつせん
)
を
試
(
こころ
)
み、
239
勝敗
(
しようはい
)
を
決
(
けつ
)
せむ
覚悟
(
かくご
)
で
御座
(
ござ
)
る。
240
皆様
(
みなさま
)
の
御
(
お
)
考
(
かんが
)
へは
如何
(
いかが
)
で
御座
(
ござ
)
いますか』
241
と
息
(
いき
)
も
荒々
(
あらあら
)
しく
述
(
の
)
べ
立
(
た
)
つる。
242
狼王
(
おほかみわう
)
は
直
(
ただ
)
ちに
口
(
くち
)
を
開
(
ひら
)
き、
243
狼王
『
熊王
(
くまわう
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
意見
(
いけん
)
、
244
実
(
じつ
)
に
御尤
(
ごもつと
)
も
至極
(
しごく
)
では
御座
(
ござ
)
いまするが、
245
どう
考
(
かんが
)
へても
強者
(
きやうしや
)
に
対
(
たい
)
する
吾々
(
われわれ
)
の
如
(
ごと
)
き
弱者
(
じやくしや
)
として、
246
戦
(
たたか
)
ふなどとは
思
(
おも
)
ひも
寄
(
よ
)
らぬ
拙劣
(
せつれつ
)
なる
策
(
さく
)
では
御座
(
ござ
)
いますまいか。
247
常世
(
とこよ
)
会議
(
くわいぎ
)
に
於
(
おい
)
て
吾
(
わが
)
祖先
(
そせん
)
は
翼
(
つばさ
)
をそがれ、
248
最早
(
もはや
)
空中
(
くうちう
)
飛行
(
ひかう
)
の
自由
(
じいう
)
を
失
(
うしな
)
ひし
吾々
(
われわれ
)
四
(
よ
)
つ
足族
(
あしぞく
)
、
249
如何
(
いか
)
に
獅子
(
しし
)
奮迅
(
ふんじん
)
の
勢
(
いきほひ
)
にて
攻撃
(
こうげき
)
致
(
いた
)
すとも、
250
暴虎
(
ぼうこ
)
馮河
(
ひようが
)
の
勇
(
ゆう
)
あるとも、
251
豺狼
(
さいらう
)
の
奸策
(
かんさく
)
を
弄
(
ろう
)
するとも、
252
到底
(
たうてい
)
及
(
およ
)
び
難
(
がた
)
き
議論
(
ぎろん
)
だと
考
(
かんが
)
へます。
253
若
(
し
)
かず
彼
(
かれ
)
が
要求
(
えうきう
)
を
容
(
い
)
れ
部下
(
ぶか
)
を
駆使
(
くし
)
して
兎
(
うさぎ
)
を
捕獲
(
ほくわく
)
し、
254
モールバンドに
日々
(
にちにち
)
これを
貢
(
みつ
)
ぎ、
255
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
一族
(
いちぞく
)
の
大難
(
だいなん
)
を
免
(
まぬが
)
れるが、
256
第一
(
だいいち
)
の
策
(
さく
)
かと
考
(
かんが
)
へます。
257
勝敗
(
しようはい
)
の
数
(
すう
)
分
(
わ
)
かり
切
(
き
)
つたる
此
(
この
)
戦闘
(
せんとう
)
に
従事
(
じゆうじ
)
するは
策
(
さく
)
の
得
(
え
)
たるものではありますまい。
258
皆様
(
みなさま
)
如何
(
いかが
)
で
御座
(
ござ
)
いませうか』
259
と
首
(
くび
)
を
傾
(
かたむ
)
け、
260
前足
(
まへあし
)
を
腕
(
うで
)
の
如
(
ごと
)
くに
組
(
く
)
みながら、
261
心配
(
しんぱい
)
げに
述
(
の
)
べ立てる。
262
虎王
(
とらわう
)
は
腕
(
うで
)
を
組
(
く
)
み、
263
髭
(
ひげ
)
に
露
(
つゆ
)
をもたせ、
264
巨眼
(
きよがん
)
をクワツと
見開
(
みひら
)
き、
265
言葉
(
ことば
)
も
重々
(
おもおも
)
しく、
266
虎王
『
吾々
(
われわれ
)
の
考
(
かんが
)
ふる
所
(
ところ
)
に
依
(
よ
)
れば、
267
如何
(
いか
)
に
弱肉
(
じやくにく
)
強食
(
きやうしよく
)
を
恣
(
ほしいまま
)
にするモールバンドなればとて、
268
吾々
(
われわれ
)
の
種族
(
しゆぞく
)
を
殲滅
(
せんめつ
)
することは
出来
(
でき
)
ますまい。
269
吾々
(
われわれ
)
も
天地
(
てんち
)
の
神
(
かみ
)
の
水火
(
いき
)
を
以
(
もつ
)
て
生
(
うま
)
れ、
270
神
(
かみ
)
の
精霊
(
せいれい
)
の
宿
(
やど
)
りしものなれば、
271
如何
(
いか
)
に
悪虐
(
あくぎやく
)
無道
(
むだう
)
のモールバンドなればとて、
272
妄
(
みだ
)
りに
暴威
(
ばうゐ
)
を
逞
(
たくま
)
しうし、
273
此
(
この
)
森林
(
しんりん
)
を
吾物顔
(
わがものがほ
)
に
占領
(
せんりやう
)
する
事
(
こと
)
は
到底
(
たうてい
)
不可能
(
ふかのう
)
でせう。
274
要
(
えう
)
するに
彼
(
かれ
)
等
(
ら
)
が
如何
(
いか
)
なる
事
(
こと
)
を
申込
(
まをしこ
)
み
来
(
きた
)
るとも
虎耳
(
こじ
)
狼風
(
らうふう
)
と
聞流
(
ききなが
)
し、
275
相手
(
あひて
)
にならず、
276
打棄
(
うちす
)
ておく
方
(
はう
)
が
獅子
(
しし
)
(
志士
(
しし
)
)の
本分
(
ほんぶん
)
で
御座
(
ござ
)
らう。
277
……
熊王殿
(
くまわうどの
)
、
278
豹王殿
(
へうわうどの
)
、
279
大蛇
(
をろち
)
の
頭殿
(
かしらどの
)
、
280
諸君
(
しよくん
)
の
御
(
ご
)
意見
(
いけん
)
は
如何
(
いかが
)
で
御座
(
ござ
)
りますか』
281
大蛇
(
をろち
)
の
頭
(
かしら
)
『
吾々
(
われわれ
)
如何
(
いか
)
に
剽悍
(
へうかん
)
決死
(
けつし
)
の
勇
(
ゆう
)
ありとも、
282
モールバンドの
一族
(
いちぞく
)
、
283
完全
(
くわんぜん
)
無欠
(
むけつ
)
の
武器
(
ぶき
)
を
備
(
そな
)
へ
攻来
(
せめきた
)
るに
於
(
おい
)
ては
到底
(
たうてい
)
敵
(
てき
)
する
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ますまい。
284
飽
(
あ
)
く
迄
(
まで
)
も
豺狼
(
さいらう
)
の
欲
(
よく
)
を
逞
(
たくま
)
しうし、
285
獅子
(
しし
)
奮迅
(
ふんじん
)
の
勢
(
いきほひ
)
を
以
(
もつ
)
て
猛虎
(
まうこ
)
の
如
(
ごと
)
く
攻
(
せ
)
め
来
(
きた
)
る
敵軍
(
てきぐん
)
、
286
何程
(
なにほど
)
準備
(
じゆんび
)
は
熊
(
くま
)
なく
整
(
ととの
)
ふとも、
287
到底
(
たうてい
)
防戦
(
ばうせん
)
する
豺
(
さい
)
も
覚束
(
おぼつか
)
なき
吾々
(
われわれ
)
の
境遇
(
きやうぐう
)
、
288
なまじひに
強者
(
きやうしや
)
に
向
(
むか
)
つて
弓
(
ゆみ
)
を
引
(
ひ
)
くよりは、
289
モールバンドの
命
(
めい
)
に
従
(
したが
)
ひ、
290
兎
(
うさぎ
)
の
都
(
みやこ
)
に
攻
(
せ
)
めのぼり、
291
残
(
のこ
)
らずこれを
捕獲
(
ほくわく
)
し、
292
モールバンドの
前
(
まへ
)
に
貢物
(
みつぎもの
)
として
捧
(
ささ
)
げなば、
293
彼
(
かれ
)
が
歓心
(
くわんしん
)
を
買
(
か
)
ひ
且
(
か
)
つ
同情
(
どうじやう
)
を
得
(
え
)
、
294
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
の
種族
(
しゆぞく
)
を
捕喰
(
とりくら
)
ふことを
免
(
めん
)
じて
呉
(
く
)
れるでせう。
295
弱
(
じやく
)
を
以
(
もつ
)
て
強
(
きやう
)
に
当
(
あた
)
るは
吾々
(
われわれ
)
の
虎
(
とら
)
ざる
所
(
ところ
)
、
296
一刻
(
いつこく
)
も
早
(
はや
)
く
兎
(
うさぎ
)
の
都
(
みやこ
)
に
進撃
(
しんげき
)
し、
297
彼
(
かれ
)
等
(
ら
)
を
悉
(
ことごと
)
く
捕獲
(
ほくわく
)
して
貢物
(
みつぎもの
)
となし、
298
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
種族
(
しゆぞく
)
の
安全
(
あんぜん
)
を
保
(
たも
)
つに
鹿
(
しか
)
ず、
299
議長
(
ぎちやう
)
獅子王
(
ししわう
)
殿
(
どの
)
、
300
御
(
ご
)
意見
(
いけん
)
如何
(
いか
)
がで
御座
(
ござ
)
るか』
301
と
詰
(
つ
)
めよる。
302
獅子王
(
ししわう
)
は
暫
(
しば
)
し
首
(
かうべ
)
を
傾
(
かたむ
)
け
獅
(
し
)
案
(
あん
)
にくれてゐたが、
303
やがて
頭
(
かしら
)
を
擡
(
もた
)
げ、
304
大
(
おほ
)
きく
唸
(
うな
)
り
乍
(
なが
)
ら、
305
獅子王
『
左様
(
さやう
)
で
御座
(
ござ
)
る。
306
到底
(
たうてい
)
勝算
(
しようさん
)
なき
敵
(
てき
)
に
向
(
むか
)
つて
戦
(
たたかひ
)
を
挑
(
いど
)
み、
307
部下
(
ぶか
)
の
者共
(
ものども
)
を
亡
(
ほろぼ
)
されむよりは、
308
弱小
(
じやくせう
)
なる
兎
(
うさぎ
)
の
都
(
みやこ
)
に
攻
(
せ
)
め
入
(
い
)
り
彼
(
かれ
)
等
(
ら
)
を
引
(
ひき
)
虎
(
とら
)
へ、
309
戦
(
たたかひ
)
の
危害
(
きがい
)
を
除
(
のぞ
)
くに
若
(
し
)
かず。
310
鹿
(
しか
)
らば
諸
(
しよ
)
窘
(
くん
)
と
共
(
とも
)
に
時
(
とき
)
を
移
(
うつ
)
さず
一族
(
いちぞく
)
を
引率
(
いんそつ
)
し、
311
兎
(
うさぎ
)
の
都
(
みやこ
)
を
繞
(
めぐ
)
る
四辺
(
しへん
)
の
山
(
やま
)
より
一斉
(
いつせい
)
に
攻
(
せ
)
め
入
(
い
)
り、
312
鬼虎
(
きこ
)
堂々
(
だうだう
)
として
湖
(
みづうみ
)
を
渡
(
わた
)
り、
313
兎
(
うさぎ
)
の
王
(
わう
)
を
降服
(
かうふく
)
せしめ、
314
一族
(
いちぞく
)
が
犠牲
(
ぎせい
)
に
供
(
きよう
)
さむ』
315
と
憤然
(
ふんぜん
)
として
宣示
(
せんじ
)
する。
316
一同
(
いちどう
)
は
獅子王
(
ししわう
)
の
宣示
(
せんじ
)
に
返
(
かへ
)
す
言葉
(
ことば
)
もなく、
317
直
(
ただち
)
に
軍備
(
ぐんび
)
を
整
(
ととの
)
へ
数多
(
あまた
)
の
部下
(
ぶか
)
を
引率
(
いんそつ
)
し、
318
兎
(
うさぎ
)
の
都
(
みやこ
)
を
指
(
さ
)
して
進撃
(
しんげき
)
することとなりぬ。
319
兎王
(
うさぎわう
)
は
斯
(
か
)
かる
敵軍
(
てきぐん
)
の
襲来
(
しふらい
)
せむとは
神
(
かみ
)
ならぬ
身
(
み
)
の
知
(
し
)
る
由
(
よし
)
もなく、
320
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
、
321
竜国別
(
たつくにわけ
)
、
322
テー、
323
カーの
四
(
よ
)
人
(
にん
)
の
賓客
(
ひんきやく
)
に
珍
(
めづら
)
しき
物
(
もの
)
を
饗応
(
きやうおう
)
し、
324
数多
(
あまた
)
の
部下
(
ぶか
)
を
集
(
あつ
)
めて
舞
(
ま
)
ひ
踊
(
をど
)
り
狂
(
くる
)
ひつつ
四
(
よ
)
人
(
にん
)
の
旅情
(
りよじやう
)
を
慰
(
なぐさ
)
めむと
全力
(
ぜんりよく
)
を
尽
(
つく
)
し
居
(
ゐ
)
たりき。
325
(
大正一一・八・二二
旧六・三〇
松村真澄
録)
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