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霊界物語
海洋万里(第25~36巻)
第32巻(未の巻)
序文
総説
第1篇 森林の都
第1章 万物同言
第2章 猛獣会議
第3章 兎の言霊
第4章 鰐の言霊
第5章 琉球の光
第6章 獅子粉塵
第2篇 北の森林
第7章 試金玉
第8章 三人娘
第9章 岩窟女
第10章 暗黒殿
第11章 人の裘
第12章 鰐の橋
第13章 平等愛
第14章 山上の祝
第3篇 瑞雲靉靆
第15章 万歳楽
第16章 回顧の歌
第17章 悔悟の歌
第18章 竜国別
第19章 軽石車
第20章 瑞の言霊
第21章 奉答歌
第4篇 天祥地瑞
第22章 橋架
第23章 老婆心切
第24章 冷氷
余白歌
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霊界物語
>
海洋万里(第25~36巻)
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第32巻(未の巻)
> 第1篇 森林の都 > 第6章 獅子粉塵
<<< 琉球の光
(B)
(N)
試金玉 >>>
第六章
獅子
(
しし
)
粉塵
(
ふんじん
)
〔八九七〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第32巻 海洋万里 未の巻
篇:
第1篇 森林の都
よみ(新仮名遣い):
しんりんのみやこ
章:
第6章 獅子粉塵
よみ(新仮名遣い):
ししふんじん
通し章番号:
897
口述日:
1922(大正11)年08月22日(旧06月30日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年10月15日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
左守の大兎は立ち上がり、琉球の霊光の出現を祝し、鷹依姫ら四人の宣伝使たちに感謝を顕す歌を歌った。
そこへ、ほとんど瀕死の状態になった兎の一群が、鰐に運ばれてやってきた。竜国別はそばに寄り添って天の数歌を高らかにうたいながら、傷を撫でさすった。そして天津祝詞を唱えて一同の回復を暗祈黙祷した。
すると神徳たちまち現れて、運ばれてきた兎たちの痛みは癒え、傷は回復した。兎たちは竜国別に涙を流して感謝の意を表した。
兎たちは、獅子王の棲み処の森に近づいたところ、猛獣隊に襲われて捕えられ、命を奪われようとしたときに霊光が照らし、猛獣たちは倒れ伏してしまったという。兎たちは命からがら湖まで逃れ、運ばれてきたと報告し、また改めて宣伝使たちに感謝を表した。
兎の都を襲撃した猛獣の大軍は、琉球の霊光に照らされて命からがら、獅子王の本拠であるアラスの森に敗走しつつあった。
戦況報告を待っていた獅子王の下に、禿鷲の王がいち早く戻ってきて、兎方に強力な神威が現れあえなく敗戦した旨を伝えた。獅子王はこれを聞いて悲憤にくれてしまった。
そこへ、風のまにまにどこからともなく宣伝歌が聞こえてきた。それを聞くと獅子王は頭を抱え目をふさぎ、たちまちその場に倒れ伏して苦しみ悶えてしまった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-05-01 18:00:15
OBC :
rm3206
愛善世界社版:
63頁
八幡書店版:
第6輯 172頁
修補版:
校定版:
66頁
普及版:
24頁
初版:
ページ備考:
001
兎
(
うさぎ
)
の
王
(
わう
)
の
側近
(
そばちか
)
く
仕
(
つか
)
へたる
左守
(
さもり
)
の
位置
(
ゐち
)
にある
大兎
(
おほうさぎ
)
は、
002
立上
(
たちあが
)
つて
感謝
(
かんしや
)
の
意
(
い
)
を
表
(
へう
)
し、
003
又
(
また
)
もやうたひ
始
(
はじ
)
むる。
004
左守の兎
『
暗夜
(
やみよ
)
を
照
(
て
)
らす
琉
(
りう
)
の
玉
(
たま
)
005
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
を
救
(
すく
)
ふ
球
(
きう
)
の
玉
(
たま
)
006
二
(
ふた
)
つの
玉
(
たま
)
は
大空
(
おほぞら
)
の
007
月日
(
つきひ
)
の
如
(
ごと
)
く
輝
(
かがや
)
きぬ
008
青
(
あを
)
くしぼみし
吾々
(
われわれ
)
の
009
曇
(
くも
)
りし
顔
(
かほ
)
も
忽
(
たちま
)
ちに
010
二
(
ふた
)
つの
玉
(
たま
)
の
御
(
ご
)
威光
(
ゐくわう
)
に
011
喜
(
よろこ
)
び
栄
(
さか
)
え
輝
(
かがや
)
きぬ
012
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
013
神
(
かみ
)
の
救
(
すく
)
ひか
神人
(
しんじん
)
の
014
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
を
救
(
すく
)
ふ
真心
(
まごころ
)
の
015
魂
(
たま
)
の
光
(
ひかり
)
の
現
(
あら
)
はれか
016
南
(
みなみ
)
と
北
(
きた
)
に
立並
(
たちなら
)
ぶ
017
屏風
(
びやうぶ
)
ケ
峰
(
みね
)
の
山脈
(
やまなみ
)
に
018
雲
(
くも
)
を
圧
(
あつ
)
して
聳
(
そび
)
え
立
(
た
)
つ
019
帽子
(
ぼうし
)
ケ
岳
(
だけ
)
の
頂上
(
ちやうじやう
)
より
020
瑞
(
みづ
)
の
御霊
(
みたま
)
の
神司
(
かむつかさ
)
021
言依別
(
ことよりわけ
)
の
大教主
(
だいけうしゆ
)
022
国依別
(
くによりわけ
)
の
真人
(
まさびと
)
が
023
琉
(
りう
)
と
球
(
きう
)
との
神力
(
しんりき
)
を
024
発揮
(
はつき
)
し
給
(
たま
)
ひて
吾々
(
われわれ
)
が
025
此
(
この
)
苦
(
くる
)
しみを
詳
(
まつぶ
)
さに
026
救
(
すく
)
ひ
給
(
たま
)
ひし
事
(
こと
)
の
由
(
よし
)
027
月
(
つき
)
大神
(
おほかみ
)
の
御
(
おん
)
前
(
まへ
)
に
028
額
(
ぬか
)
づく
折
(
をり
)
しも
示
(
しめ
)
されぬ
029
いよいよ
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
は
天地
(
あめつち
)
の
030
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
を
相守
(
あひまも
)
り
031
互
(
たがひ
)
に
他
(
た
)
をば
犯
(
をか
)
さずに
032
睦
(
むつ
)
び
親
(
した
)
しみ
皇神
(
すめかみ
)
の
033
大慈
(
だいじ
)
大悲
(
だいひ
)
の
御心
(
みこころ
)
に
034
叶
(
かな
)
へまつらであるべきや
035
皇
(
すめ
)
大神
(
おほかみ
)
の
任
(
ま
)
けのまに
036
百
(
もも
)
の
艱
(
なや
)
みを
凌
(
しの
)
ぎつつ
037
心
(
こころ
)
の
岩戸
(
いはと
)
を
打開
(
うちあ
)
けて
038
遥々
(
はるばる
)
此処
(
ここ
)
に
来
(
きた
)
りまし
039
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
が
救
(
すく
)
ひの
神
(
かみ
)
となり
040
百
(
もも
)
の
艱
(
なや
)
みを
科戸辺
(
しなどべ
)
の
041
風
(
かぜ
)
に
隈
(
くま
)
なく
吹払
(
ふきはら
)
ひ
042
アマゾン
河
(
がは
)
の
急流
(
きふりう
)
に
043
流
(
なが
)
し
給
(
たま
)
ひし
有難
(
ありがた
)
さ
044
神徳
(
しんとく
)
高
(
たか
)
き
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
の
045
貴
(
うづ
)
の
命
(
みこと
)
の
神司
(
かむづかさ
)
046
竜国別
(
たつくにわけ
)
を
始
(
はじ
)
めとし
047
心
(
こころ
)
の
色
(
いろ
)
もさやさやに
048
テーリスタンの
真人
(
まさぴと
)
よ
049
森
(
もり
)
に
茂
(
しげ
)
れる
雑草
(
あららぎ
)
を
050
カーリンスなる
神司
(
かむつかさ
)
051
茲
(
ここ
)
に
四柱
(
よはしら
)
並
(
なら
)
ばして
052
時雨
(
しぐれ
)
の
森
(
もり
)
の
中心地
(
ちうしんち
)
053
十
(
じふ
)
里
(
り
)
四方
(
しはう
)
の
霊場
(
れいぢやう
)
に
054
降
(
くだ
)
り
給
(
たま
)
ひて
湖
(
みづうみ
)
の
055
清
(
きよ
)
き
泉
(
いづみ
)
の
御教
(
みをしへ
)
を
056
開
(
ひら
)
き
給
(
たま
)
へる
尊
(
たふと
)
さよ
057
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
058
神
(
かみ
)
の
御徳
(
みとく
)
を
蒙
(
かかぶ
)
りて
059
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
も
早
(
はや
)
く
執着
(
しふちやく
)
の
060
衣
(
ころも
)
を
脱
(
ぬ
)
いで
天津国
(
あまつくに
)
061
神
(
かみ
)
の
御側
(
みそば
)
に
参
(
ま
)
ゐ
詣
(
まう
)
で
062
幸
(
さち
)
ある
人
(
ひと
)
と
生
(
うま
)
れ
来
(
き
)
て
063
青人草
(
あをひとぐさ
)
は
云
(
い
)
ふも
更
(
さら
)
064
禽獣
(
きんじう
)
虫魚
(
ちうぎよ
)
の
端
(
はし
)
までも
065
三五教
(
あななひけう
)
の
御教
(
みをしへ
)
に
066
漏
(
も
)
れなく
落
(
お
)
ちなく
救
(
すく
)
ひ
上
(
あ
)
げ
067
功
(
いさを
)
を
樹
(
た
)
てて
神
(
かみ
)
の
子
(
こ
)
と
068
清
(
きよ
)
く
仕
(
つか
)
へむ
惟神
(
かむながら
)
069
神
(
かみ
)
の
御前
(
みまへ
)
に
願
(
ね
)
ぎまつる
070
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
造
(
つく
)
りし
神直日
(
かむなほひ
)
071
心
(
こころ
)
も
広
(
ひろ
)
き
大直日
(
おほなほひ
)
072
只
(
ただ
)
何事
(
なにごと
)
も
現
(
うつ
)
し
世
(
よ
)
は
073
直日
(
なほひ
)
に
見直
(
みなほ
)
し
聞直
(
ききなほ
)
し
074
宣
(
の
)
り
直
(
なほ
)
しませ
天津
(
あまつ
)
神
(
かみ
)
075
国魂神
(
くにたまがみ
)
の
御
(
おん
)
前
(
まへ
)
に
076
兎
(
うさぎ
)
一同
(
いちどう
)
を
代表
(
だいへう
)
し
077
救
(
すく
)
ひの
御手
(
みて
)
の
一時
(
いつとき
)
も
078
早
(
はや
)
く
降
(
くだ
)
らせ
給
(
たま
)
ひまし
079
獣
(
けもの
)
とおちし
身魂
(
みたま
)
をば
080
救
(
すく
)
はせ
給
(
たま
)
へ
惟神
(
かむながら
)
081
神
(
かみ
)
かけ
祈
(
いの
)
り
奉
(
たてまつ
)
る
082
旭
(
あさひ
)
は
照
(
て
)
るとも
曇
(
くも
)
るとも
083
仮令
(
たとへ
)
天地
(
てんち
)
は
変
(
かは
)
るとも
084
月
(
つき
)
は
盈
(
み
)
つとも
虧
(
か
)
くるとも
085
おのが
身魂
(
みたま
)
のある
限
(
かぎ
)
り
086
皇
(
すめ
)
大神
(
おほかみ
)
や
世
(
よ
)
の
為
(
ため
)
に
087
心
(
こころ
)
を
清
(
きよ
)
めて
三五
(
あななひ
)
の
088
大道
(
おほぢ
)
に
仕
(
つか
)
へ
奉
(
まつ
)
りなむ
089
救
(
すく
)
はせ
給
(
たま
)
へ
天津
(
あまつ
)
神
(
かみ
)
090
恵
(
めぐ
)
み
給
(
たま
)
へよ
国津
(
くにつ
)
神
(
かみ
)
091
国魂神
(
くにたまがみ
)
の
竜世姫
(
たつよひめ
)
092
御前
(
みまへ
)
に
願
(
ねが
)
ひ
奉
(
たてまつ
)
る
093
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
094
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はひましませよ』
095
斯
(
か
)
かる
所
(
ところ
)
へ
兎
(
うさぎ
)
の
一群
(
いちぐん
)
、
096
鰐
(
わに
)
の
背
(
せ
)
に
乗
(
の
)
せられ、
097
気息
(
きそく
)
奄々
(
えんえん
)
として
帰
(
かへ
)
り
来
(
きた
)
るあり。
098
見
(
み
)
れば
四五
(
しご
)
の
兎
(
うさぎ
)
は
手
(
て
)
を
咬
(
か
)
まれ、
099
傷
(
きず
)
つけられ、
100
腹
(
はら
)
をえぐられ、
101
殆
(
ほとん
)
ど
瀕死
(
ひんし
)
の
状態
(
じやうたい
)
に
陥
(
おちい
)
れり。
102
之
(
これ
)
を
見
(
み
)
るより
竜国別
(
たつくにわけ
)
は
忽
(
たちま
)
ち
側
(
そば
)
に
寄
(
よ
)
り
添
(
そ
)
ひ、
103
天
(
あま
)
の
数歌
(
かずうた
)
を
声
(
こゑ
)
高
(
たか
)
く
歌
(
うた
)
ひ
上
(
あ
)
げながら、
104
右
(
みぎ
)
の
手
(
て
)
を
伸
(
の
)
べて
各自
(
かくじ
)
其
(
その
)
傷所
(
きずしよ
)
を
撫
(
な
)
でさすり、
105
懇
(
ねんごろ
)
に
労
(
いた
)
はり
且
(
か
)
つ
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
し、
106
一刻
(
いつこく
)
も
早
(
はや
)
く
傷所
(
きずしよ
)
の
痛
(
いた
)
みを
止
(
とど
)
めさせ
給
(
たま
)
へと、
107
暗祈
(
あんき
)
黙祷
(
もくたう
)
を
続
(
つづ
)
けたるに、
108
不思議
(
ふしぎ
)
なるかな、
109
神徳
(
しんとく
)
忽
(
たちま
)
ち
現
(
あら
)
はれて
四五
(
しご
)
の
兎
(
うさぎ
)
は
一斉
(
いつせい
)
に
痛
(
いた
)
み
鎮
(
しづ
)
まり、
110
疵口
(
きずぐち
)
は
見
(
み
)
る
間
(
ま
)
に
癒
(
い
)
えにける。
111
兎
(
うさぎ
)
は
跪
(
ひざまづ
)
いて、
112
竜国別
(
たつくにわけ
)
に
感謝
(
かんしや
)
の
意
(
い
)
を
表
(
へう
)
し
涙
(
なみだ
)
を
流
(
なが
)
して
俯伏
(
うつぶ
)
せり。
113
兎
(
うさぎ
)
の
王
(
わう
)
は
一同
(
いちどう
)
に
向
(
むか
)
ひ、
114
一刻
(
いつこく
)
も
早
(
はや
)
く
遭難
(
さうなん
)
の
顛末
(
てんまつ
)
を
言上
(
ごんじやう
)
せよと
迫
(
せま
)
れば、
115
其
(
その
)
中
(
なか
)
にて
最
(
もつと
)
も
大
(
だい
)
なる
兎
(
うさぎ
)
は、
116
兎王
(
うさぎわう
)
に
向
(
むか
)
ひ、
117
前膝
(
まへひざ
)
をつき、
118
詳
(
つぶ
)
さに
戦況
(
せんきやう
)
を
物語
(
ものがた
)
る。
119
大兎
『
申
(
まを
)
すも
詮
(
せん
)
なき
事
(
こと
)
ながら
120
吾々
(
われわれ
)
は
一行
(
いつかう
)
五十
(
ごじふ
)
の
兄弟
(
きやうだい
)
と
共
(
とも
)
に
121
ターリスの
峰
(
みね
)
を
越
(
こ
)
え
122
獅子王
(
ししわう
)
の
棲処
(
すみか
)
近
(
ちか
)
き
123
アラスの
森
(
もり
)
に
進
(
すす
)
まむと
124
峻
(
さか
)
しき
坂
(
さか
)
を
登
(
のぼ
)
る
折
(
をり
)
しも
125
俄
(
にはか
)
に
聞
(
きこ
)
ゆる
猛獣隊
(
まうじうたい
)
の
唸
(
うな
)
り
声
(
ごゑ
)
126
驚破
(
すは
)
一大事
(
いちだいじ
)
と
127
四辺
(
あたり
)
の
木蔭
(
こかげ
)
に
身
(
み
)
を
忍
(
しの
)
び
128
様子
(
やうす
)
を
窺
(
うかが
)
ふ
時
(
とき
)
もあれ
129
現
(
あら
)
はれ
出
(
い
)
でたる
熊
(
くま
)
の
群
(
むれ
)
130
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
が
一隊
(
いつたい
)
に
向
(
むか
)
つて
131
勢
(
いきほひ
)
猛
(
たけ
)
く
攻
(
せ
)
め
来
(
きた
)
り
132
強力
(
がうりき
)
に
任
(
まか
)
せて
133
或
(
あるひ
)
は
生首
(
なまくび
)
引
(
ひ
)
きぬき
134
手足
(
てあし
)
をもぎ
取
(
と
)
り
135
或
(
あるひ
)
は
捕虜
(
ほりよ
)
となし
136
山
(
やま
)
のあなたに
引立
(
ひつた
)
てて
行
(
ゆ
)
く
137
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
はもとより
138
強力
(
がうりき
)
なる
熊
(
くま
)
の
群
(
むれ
)
に
向
(
むか
)
つて
139
対抗
(
たいかう
)
するの
力
(
ちから
)
もなく
140
負傷
(
ふしやう
)
をしながらも
逃
(
に
)
げまはる
141
今
(
いま
)
や
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
は
142
熊
(
くま
)
の
爪牙
(
さうが
)
にかかりて
143
亡
(
ほろ
)
びむとする
時
(
とき
)
しもあれ
144
眩
(
まばゆ
)
きばかりの
霊光
(
れいくわう
)
145
帽子
(
ぼうし
)
ケ
岳
(
だけ
)
の
方面
(
はうめん
)
より
146
鏡
(
かがみ
)
の
如
(
ごと
)
く
射照
(
いて
)
らし
給
(
たま
)
へば
147
流石
(
さすが
)
強力
(
がうりき
)
無双
(
むさう
)
の
148
熊
(
くま
)
の
一隊
(
いつたい
)
も
眼
(
まなこ
)
眩
(
くら
)
みて
忽
(
たちま
)
ちに
149
其
(
その
)
場
(
ば
)
に
倒
(
たふ
)
れて
伏
(
ふ
)
しました
150
此
(
この
)
機
(
き
)
を
窺
(
うかが
)
ひ
吾々
(
われわれ
)
一隊
(
いつたい
)
のもの
共
(
ども
)
は
151
命
(
いのち
)
カラガラ
湖
(
みづうみ
)
の
152
畔
(
ほとり
)
に
漸
(
やうや
)
く
逃
(
に
)
げ
帰
(
かへ
)
り
153
湖辺
(
こへん
)
を
守
(
まも
)
る
鰐
(
わに
)
共
(
ども
)
に
154
救
(
すく
)
はれ
此処
(
ここ
)
に
帰
(
かへ
)
りました
155
此
(
この
)
戦況
(
せんきやう
)
を
王
(
わう
)
様
(
さま
)
に
156
完全
(
うまら
)
に
委曲
(
つばら
)
に
申上
(
まをしあ
)
げ
157
敵
(
てき
)
に
向
(
むか
)
つて
膺懲
(
ようちよう
)
の
158
戦
(
いくさ
)
を
起
(
おこ
)
し
悪神
(
わるがみ
)
の
159
心
(
こころ
)
を
改
(
あらた
)
め
以後
(
いご
)
は
必
(
かなら
)
ず
無謀
(
むぼう
)
の
戦
(
いくさ
)
を
160
起
(
おこ
)
さざらしめむ
事
(
こと
)
の
用意
(
ようい
)
を
161
遊
(
あそ
)
ばされたしと
162
心
(
こころ
)
計
(
ばか
)
りは
張弓
(
はりゆみ
)
の
163
思
(
おも
)
ひ
迫
(
せま
)
つて
帰
(
かへ
)
りました
164
しかるに
尊
(
たふと
)
や
有難
(
ありがた
)
や
165
日頃
(
ひごろ
)
尊
(
たふと
)
み
仕
(
つか
)
へたる
166
三五教
(
あななひけう
)
の
神司
(
かむつかさ
)
167
竜国別
(
たつくにわけ
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
168
危
(
あやふ
)
き
命
(
いのち
)
を
助
(
たす
)
けられ
169
痛
(
いた
)
みも
忽
(
たちま
)
ち
全快
(
ぜんくわい
)
し
170
これ
程
(
ほど
)
尊
(
たふと
)
い
嬉
(
うれ
)
しこと
171
又
(
また
)
と
世界
(
せかい
)
にありませうか
172
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
173
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐみ
)
を
目
(
ま
)
のあたり
174
授
(
さづ
)
かりました
吾々
(
われわれ
)
は
175
是
(
これ
)
より
月
(
つき
)
の
大神
(
おほかみ
)
に
176
感謝
(
かんしや
)
の
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
し
177
兎
(
うさぎ
)
の
都
(
みやこ
)
の
霊地
(
れいち
)
をば
178
堅磐
(
かきは
)
常磐
(
ときは
)
に
守
(
まも
)
りませう
179
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
よ
180
竜国別
(
たつくにわけ
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
よ
181
其
(
その
)
外
(
ほか
)
二人
(
ふたり
)
の
神司
(
かむつかさ
)
182
千代
(
ちよ
)
に
八千代
(
やちよ
)
に
此
(
この
)
里
(
さと
)
に
183
鎮
(
しづ
)
まりまして
吾々
(
われわれ
)
の
184
身魂
(
みたま
)
を
守
(
まも
)
り
給
(
たま
)
へかし
185
海
(
うみ
)
より
深
(
ふか
)
き
大恩
(
たいおん
)
を
186
感謝
(
かんしや
)
しまつり
行末
(
ゆくすゑ
)
の
187
守
(
まも
)
りを
茲
(
ここ
)
に
願
(
ね
)
ぎまつる
188
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
189
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はひましませよ』
190
と
嬉
(
うれ
)
し
涙
(
なみだ
)
を
流
(
なが
)
しながら、
191
心
(
こころ
)
の
底
(
そこ
)
より
神恩
(
しんおん
)
を
感謝
(
かんしや
)
し、
192
且
(
かつ
)
竜国別
(
たつくにわけ
)
の
親切
(
しんせつ
)
を
打喜
(
うちよろこ
)
び、
193
親
(
おや
)
の
如
(
ごと
)
くに
慕
(
した
)
ひける。
194
○
195
雲霞
(
うんか
)
の
如
(
ごと
)
く
押
(
お
)
し
寄
(
よ
)
せたる
猛獣
(
まうじう
)
の
一隊
(
いつたい
)
は、
196
琉
(
りう
)
と
球
(
きう
)
との
霊光
(
れいくわう
)
に
照
(
て
)
らされ、
197
命
(
いのち
)
カラガラアラスの
森
(
もり
)
の
獅子王
(
ししわう
)
が
陣屋
(
ぢんや
)
へ、
198
転
(
こ
)
けつ
輾
(
まろ
)
びつ
帰
(
かへ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
199
獅子王
(
ししわう
)
は
此
(
この
)
度
(
たび
)
の
兎
(
うさぎ
)
の
都攻
(
みやこぜ
)
めに
対
(
たい
)
し、
200
勝利
(
しようり
)
は
如何
(
いか
)
にと
首
(
くび
)
を
伸
(
の
)
ばして
待
(
ま
)
ちゐたり。
201
かかる
所
(
ところ
)
へ
速力
(
そくりよく
)
早
(
はや
)
き
禿鷲
(
はげわし
)
は、
202
三丈
(
さんぢやう
)
ばかりの
翼
(
つばさ
)
をひろげ、
203
空中
(
くうちう
)
を
翔
(
かけ
)
つて
矢
(
や
)
の
如
(
ごと
)
く
獅子王
(
ししわう
)
の
前
(
まへ
)
に
翔
(
は
)
せ
帰
(
かへ
)
り
来
(
きた
)
る。
204
獅子王
(
ししわう
)
は
早
(
はや
)
くも
之
(
これ
)
を
認
(
みと
)
めて、
205
獅子王
『
汝
(
なんぢ
)
は
禿鷲
(
はげわし
)
の
王
(
わう
)
ならずや。
206
今日
(
けふ
)
の
一戦
(
いつせん
)
、
207
味方
(
みかた
)
の
勝敗
(
しようはい
)
詳
(
つぶ
)
さに
語
(
かた
)
れ!』
208
と
待
(
ま
)
ちかねし
如
(
ごと
)
く
慌
(
あわただ
)
しく
問
(
と
)
ひかくる。
209
禿鷲
(
はげわし
)
は
羽搏
(
はばた
)
きしながら、
210
さも
恨
(
うら
)
めしげに
獅子王
(
ししわう
)
に
向
(
むか
)
つて
戦闘
(
せんとう
)
の
模様
(
もやう
)
を
陳弁
(
ちんべん
)
する。
211
禿鷲
『
狼
(
おほかみ
)
の
王
(
わう
)
は
青垣山
(
あをがきやま
)
の
南
(
みなみ
)
より
212
熊王
(
くまわう
)
北
(
きた
)
より
進
(
すす
)
みより
213
虎王
(
とらわう
)
西
(
にし
)
より
突進
(
とつしん
)
し
214
豺王
(
さいわう
)
は
東
(
ひがし
)
の
谷間
(
たにま
)
より
215
大蛇
(
をろち
)
は
巽乾
(
たつみいぬゐ
)
より
216
鷲
(
わし
)
の
一隊
(
いつたい
)
艮
(
うしとら
)
や
217
坤
(
ひつじさる
)
に
陣
(
ぢん
)
を
取
(
と
)
り
218
兎
(
うさぎ
)
の
都
(
みやこ
)
を
十重
(
とへ
)
二十重
(
はたへ
)
219
包
(
つつ
)
みて
一度
(
いちど
)
に
鬨
(
とき
)
の
声
(
こゑ
)
220
ドツと
挙
(
あ
)
げつつ
進
(
すす
)
む
折
(
をり
)
221
湖辺
(
こへん
)
に
潜
(
ひそ
)
む
数万
(
すうまん
)
の
222
鰐
(
わに
)
は
忽
(
たちま
)
ち
立上
(
たちあが
)
り
223
波
(
なみ
)
を
踊
(
をど
)
らせ
水
(
みづ
)
を
吹
(
ふ
)
き
224
其
(
その
)
勢
(
いきほひ
)
は
中々
(
なかなか
)
に
225
近寄
(
ちかよ
)
り
難
(
がた
)
く
見
(
み
)
えけるが
226
獅子
(
しし
)
奮迅
(
ふんじん
)
の
勢
(
いきほひ
)
を
227
発揮
(
はつき
)
しながら
驀地
(
まつしぐら
)
に
228
命
(
いのち
)
を
的
(
まと
)
に
攻
(
せ
)
めよつて
229
漸
(
やうや
)
く
兎
(
うさぎ
)
の
一部隊
(
いちぶたい
)
230
四十
(
しじふ
)
有五
(
いうご
)
を
捕獲
(
ほくわく
)
して
231
ヤツト
一息
(
ひといき
)
それよりは
232
尚
(
なほ
)
も
進
(
すす
)
んて
湖
(
みづうみ
)
を
233
一瀉
(
いつしや
)
千里
(
せんり
)
に
打渡
(
うちわた
)
り
234
月
(
つき
)
の
聖地
(
せいち
)
に
立向
(
たちむか
)
ひ
235
兎
(
うさぎ
)
の
王
(
わう
)
を
捕虜
(
ほりよ
)
となし
236
愈
(
いよいよ
)
目的
(
もくてき
)
達
(
たつ
)
せむと
237
伊猛
(
いたけ
)
り
狂
(
くる
)
ふ
折柄
(
をりから
)
に
238
帽子
(
ぼうし
)
ケ
岳
(
だけ
)
の
頂上
(
ちやうじやう
)
より
239
不思議
(
ふしぎ
)
の
霊光
(
れいくわう
)
現
(
あら
)
はれて
240
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
の
軍
(
いくさ
)
を
射照
(
いて
)
らせば
241
眼
(
まなこ
)
はくらみ
手
(
て
)
はしびれ
242
足
(
あし
)
わななきて
進
(
すす
)
み
得
(
え
)
ず
243
命
(
いのち
)
カラガラ
青垣
(
あをがき
)
の
244
山
(
やま
)
を
再
(
ふたた
)
び
攀登
(
よぢのぼ
)
り
245
東西
(
とうざい
)
南北
(
なんぽく
)
一時
(
いちどき
)
に
246
恨
(
うらみ
)
を
呑
(
の
)
んで
引返
(
ひきかへ
)
し
247
味方
(
みかた
)
は
四方
(
よも
)
に
散乱
(
さんらん
)
し
248
熊王
(
くまわう
)
虎王
(
とらわう
)
狼王
(
おほかみわう
)
249
大蛇
(
をろち
)
の
王
(
わう
)
の
行方
(
ゆくへ
)
さへ
250
今
(
いま
)
に
至
(
いた
)
りて
判明
(
はんめい
)
せず
251
無念
(
むねん
)
ながらも
只
(
ただ
)
一機
(
いつき
)
252
空中
(
くうちう
)
翔
(
かけ
)
りてやうやうに
253
報告
(
はうこく
)
旁
(
かたがた
)
帰
(
かへ
)
りし』と
254
語
(
かた
)
れば
獅子王
(
ししわう
)
腕
(
うで
)
を
組
(
く
)
み
255
悲憤
(
ひふん
)
の
涙
(
なみだ
)
にくれけるが
256
どこともなしに
宣伝歌
(
せんでんか
)
257
風
(
かぜ
)
のまにまに
響
(
ひび
)
き
来
(
く
)
る
258
其
(
その
)
声
(
こゑ
)
聞
(
き
)
くより
獅子王
(
ししわう
)
は
259
頭
(
あたま
)
を
抱
(
かか
)
へ
目
(
め
)
を
塞
(
ふさ
)
ぎ
260
忽
(
たちま
)
ち
其
(
その
)
場
(
ば
)
にドツと
伏
(
ふ
)
し
261
悶
(
もだ
)
え
苦
(
くる
)
しみ
居
(
ゐ
)
たりける
262
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
263
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はひましませよ。
264
(
大正一一・八・二二
旧六・三〇
松村真澄
録)
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