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霊界物語
海洋万里(第25~36巻)
第32巻(未の巻)
序文
総説
第1篇 森林の都
第1章 万物同言
第2章 猛獣会議
第3章 兎の言霊
第4章 鰐の言霊
第5章 琉球の光
第6章 獅子粉塵
第2篇 北の森林
第7章 試金玉
第8章 三人娘
第9章 岩窟女
第10章 暗黒殿
第11章 人の裘
第12章 鰐の橋
第13章 平等愛
第14章 山上の祝
第3篇 瑞雲靉靆
第15章 万歳楽
第16章 回顧の歌
第17章 悔悟の歌
第18章 竜国別
第19章 軽石車
第20章 瑞の言霊
第21章 奉答歌
第4篇 天祥地瑞
第22章 橋架
第23章 老婆心切
第24章 冷氷
余白歌
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霊界物語
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海洋万里(第25~36巻)
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> 第2篇 北の森林 > 第12章 鰐の橋
<<< 人の裘
(B)
(N)
平等愛 >>>
第一二章
鰐
(
わに
)
の
橋
(
はし
)
〔九〇三〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第32巻 海洋万里 未の巻
篇:
第2篇 北の森林
よみ(新仮名遣い):
きたのしんりん
章:
第12章 鰐の橋
よみ(新仮名遣い):
わにのはし
通し章番号:
903
口述日:
1922(大正11)年08月23日(旧07月01日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年10月15日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
高姫を助けに森林に入った春彦とヨブは、呼ばわっても高姫の居場所がわからない。春彦は探しながら宣伝歌を歌い始めた。これまでの経緯を歌いながら、高姫の改心を願う内容であった。
春彦とヨブが奥へ奥へと進むと、ようやく高姫が避難している大樹のところまでやってきた。見れば小山のようなモールバンドが目を怒らせて高姫を狙っている。春彦は恐ろしさに震えて、言霊がうまく発射できなくなってしまった。
モールバンドは春彦とヨブが近づいてきたことに気づき、今度は春彦とヨブを狙い始めた。二人は大木に登って避難し、互いに境遇を嘆きながら誰か助けに来てくれる者がないかと待つのみであった。
すると、そこへ安彦、宗彦、秋山別、モリスの四人が、宣伝歌を歌いながらやってきた。高姫や春彦らは樹上からその歌を聞いて、三五教徒であることがわかり、勇気づけられて力いっぱい天津祝詞を奏上した。
安彦ら四人も、高姫たちがいることがわかって喜び、呼応して元気を出して天津祝詞を奏上した。モールバンドはなおもひるまず樹上の一行を狙っていたが、そこへ琉と球の大火光が帽子ケ岳から落ちてきた。モールバンドはこれに驚き、こそこそと森林を逃げ出してアマゾン河に去ってしまった。
ここに高姫一行と安彦一行合わせて八人は合流した。安彦たちは高姫に、アマゾン河の南の大森林に、鷹依姫が猛獣たちを従えていると消息を伝えた。一行の発した天津祝詞の声を聴きつけて、北の大森林の猛獣たちが慕い集まり、八人の後に続いた。
アマゾン河を前にして高姫は、南岸に無事に渡ることを一生懸命に祈願した。すると幾千万もの鰐が川底から現れ、鰐橋をかけた。高姫は、大神の神徳と鰐の好意に感謝した。
こうして、何里もの広いアマゾン河の川幅も、無事に渡りきることができた。また、集まってきた北の森の猛獣たちも一緒に南岸に渡り、高姫一行を兎の都まで送った。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-05-14 18:31:05
OBC :
rm3212
愛善世界社版:
134頁
八幡書店版:
第6輯 197頁
修補版:
校定版:
140頁
普及版:
56頁
初版:
ページ備考:
001
春彦
(
はるひこ
)
はヨブと
共
(
とも
)
に
高姫
(
たかひめ
)
の
危難
(
きなん
)
を
救
(
すく
)
はむと、
002
大声
(
おほごゑ
)
に
叫
(
さけ
)
びながら
密林
(
みつりん
)
の
中
(
なか
)
に
駆
(
か
)
け
入
(
い
)
り、
003
呼
(
よ
)
べど
叫
(
さけ
)
べど、
004
森
(
もり
)
の
木霊
(
こだま
)
に
吾
(
わが
)
声
(
こゑ
)
の
反響
(
はんきやう
)
するのみ、
005
何
(
なん
)
の
見当
(
けんたう
)
もつかず、
006
已
(
や
)
むを
得
(
え
)
ず
大声
(
おほごゑ
)
に
歌
(
うた
)
ひながら、
007
森林
(
しんりん
)
を
何処
(
どこ
)
彼処
(
かしこ
)
となく
循
(
めぐ
)
り
始
(
はじ
)
めたり。
008
春彦
(
はるひこ
)
『
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
の
師匠
(
ししやう
)
と
頼
(
たの
)
みたる
009
高姫
(
たかひめ
)
さまが
又
(
また
)
しても
010
金剛
(
こんがう
)
不壊
(
ふゑ
)
の
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
011
其
(
その
)
他
(
た
)
の
玉
(
たま
)
に
魂
(
たま
)
ぬかれ
012
アタ
恥
(
はづ
)
かしや
森林
(
しんりん
)
の
013
此
(
この
)
正中
(
まんなか
)
で
高倉
(
たかくら
)
や
014
月日
(
つきひ
)
、
旭
(
あさひ
)
の
明神
(
みやうじん
)
に
015
心
(
こころ
)
の
底
(
そこ
)
を
査
(
しら
)
べられ
016
散々
(
さんざん
)
脂
(
あぶら
)
を
搾
(
しぼ
)
られて
017
体
(
からだ
)
は
泥
(
どろ
)
にまみれつつ
018
尚
(
なほ
)
も
取
(
と
)
れない
負惜
(
まけをし
)
み
019
へらず
口
(
ぐち
)
のみ
言
(
い
)
ひながら
020
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
二人
(
ふたり
)
を
振棄
(
ふりす
)
てて
021
元来
(
もとき
)
し
路
(
みち
)
へ
引返
(
ひきかへ
)
し
022
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
の
在処
(
ありか
)
をば
023
捜
(
さが
)
さむものと
出
(
い
)
でましぬ
024
吾々
(
われわれ
)
二人
(
ふたり
)
は
是非
(
ぜひ
)
もなく
025
西北
(
せいほく
)
指
(
さ
)
して
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
けば
026
道
(
みち
)
の
片方
(
かたへ
)
の
石地蔵
(
いしぢざう
)
027
耳
(
みみ
)
が
取
(
と
)
れたり
手
(
て
)
が
千切
(
ちぎ
)
れ
028
頭
(
あたま
)
の
欠
(
か
)
けた
立
(
た
)
ちすくみ
029
黒
(
くろ
)
い
顔
(
かほ
)
して
道
(
みち
)
の
辺
(
べ
)
に
030
罷
(
まか
)
り
立
(
た
)
つたる
其
(
その
)
前
(
まへ
)
に
031
暫
(
しばら
)
く
息
(
いき
)
を
休
(
やす
)
めつつ
032
高姫
(
たかひめ
)
さまの
噂
(
うはさ
)
のみ
033
為
(
な
)
せる
折
(
をり
)
しも
石地蔵
(
いしぢざう
)
034
ソロソロ
立
(
た
)
つて
吾
(
わが
)
前
(
まへ
)
に
035
胡坐
(
あぐら
)
をかいてすわり
込
(
こ
)
み
036
不思議
(
ふしぎ
)
や
物
(
もの
)
をベラベラと
037
喋
(
しやべ
)
り
出
(
だ
)
したる
可笑
(
をか
)
しさよ
038
化
(
ば
)
けた
地蔵
(
ぢざう
)
の
言
(
い
)
ふことにや
039
高姫
(
たかひめ
)
さまや
常彦
(
つねひこ
)
は
040
モールバンドに
取巻
(
とりま
)
かれ
041
大木
(
おほき
)
の
枝
(
えだ
)
にかけ
登
(
のぼ
)
り
042
避難
(
ひなん
)
してゐる
最中
(
さいちう
)
に
043
猅々
(
ひひ
)
の
群
(
むれ
)
奴
(
め
)
がやつて
来
(
き
)
て
044
無性
(
むしやう
)
矢鱈
(
やたら
)
にせめかける
045
モールバンドは
木
(
き
)
の
下
(
した
)
に
046
目
(
め
)
を
怒
(
いか
)
らして
控
(
ひか
)
へ
居
(
を
)
る
047
進退
(
しんたい
)
茲
(
ここ
)
に
谷
(
きは
)
まりて
048
流石
(
さすが
)
剛毅
(
がうき
)
の
高姫
(
たかひめ
)
も
049
常彦
(
つねひこ
)
諸共
(
もろとも
)
抱
(
いだ
)
き
合
(
あ
)
ひ
050
アヽアヽどうせう
斯
(
か
)
うせうと
051
吐息
(
といき
)
もらして
居
(
ゐ
)
るだらう
052
春彦
(
はるひこ
)
、ヨブの
両人
(
りやうにん
)
は
053
こんな
話
(
はなし
)
を
耳
(
みみ
)
にして
054
如何
(
どう
)
して
見捨
(
みす
)
てておかれうか
055
仮令
(
たとへ
)
大蛇
(
をろち
)
の
巣窟
(
さうくつ
)
も
056
モールバンドの
棲処
(
すみか
)
をも
057
恐
(
おそ
)
れず
撓
(
たゆ
)
まず
進撃
(
しんげき
)
し
058
救
(
すく
)
ひ
出
(
だ
)
さねばおかれない
059
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
060
皇
(
すめ
)
大神
(
おほかみ
)
の
御光
(
みひかり
)
に
061
高姫
(
たかひめ
)
さまの
在処
(
ありか
)
をば
062
てらして
吾
(
われ
)
に
見
(
み
)
せ
給
(
たま
)
へ
063
高姫
(
たかひめ
)
さまも
是
(
これ
)
からは
064
心
(
こころ
)
の
底
(
そこ
)
より
改良
(
かいりやう
)
し
065
三五教
(
あななひけう
)
の
神柱
(
かむばしら
)
066
神
(
かみ
)
の
使
(
つかひ
)
と
申
(
まを
)
しても
067
恥
(
はづ
)
かしからぬ
魂
(
たま
)
となり
068
キツト
手柄
(
てがら
)
を
為
(
な
)
さるだらう
069
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
胸
(
むね
)
の
戸
(
と
)
を
070
開
(
ひら
)
いて
在処
(
ありか
)
を
明
(
あきら
)
かに
071
春彦
(
はるひこ
)
、ヨブの
両人
(
りやうにん
)
に
072
知
(
し
)
らさせ
給
(
たま
)
へ
天津
(
あまつ
)
神
(
かみ
)
073
国津
(
くにつ
)
神
(
かみ
)
等
(
たち
)
国魂
(
くにたま
)
の
074
竜世
(
たつよ
)
の
姫
(
ひめ
)
の
御
(
おん
)
前
(
まへ
)
に
075
心
(
こころ
)
清
(
きよ
)
めて
祈
(
ね
)
ぎまつる
076
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
077
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はひましませよ』
078
と
歌
(
うた
)
ひながら、
079
大樹
(
たいじゆ
)
の
根元
(
ねもと
)
を
一々
(
いちいち
)
巡視
(
じゆんし
)
し、
080
且
(
か
)
つ
空
(
そら
)
を
仰
(
あふ
)
ぎなどしつつ、
081
奥
(
おく
)
へ
奥
(
おく
)
へと
捜
(
さが
)
し
行
(
ゆ
)
く。
082
春彦
(
はるひこ
)
、
083
ヨブの
二人
(
ふたり
)
は
漸
(
やうや
)
くにして、
084
高姫
(
たかひめ
)
の
避難
(
ひなん
)
せる
大樹
(
たいじゆ
)
の
間近
(
まぢか
)
に
辿
(
たど
)
りつけば、
085
石地蔵
(
いしぢざう
)
のお
化
(
ば
)
けの
云
(
い
)
つた
通
(
とほ
)
り、
086
小山
(
こやま
)
のやうな
胴体
(
どうたい
)
をしたモールバンドが、
087
森
(
もり
)
の
樹立
(
こだち
)
のマバラなる
所
(
ところ
)
を
選
(
えら
)
み、
088
目
(
め
)
を
怒
(
いか
)
らして
高姫
(
たかひめ
)
を
睨
(
ね
)
めつけ、
089
何
(
なん
)
とかして
一打
(
ひとう
)
ちに
打
(
う
)
ちころさむと
息
(
いき
)
まいてる
其
(
その
)
物凄
(
ものすご
)
さ。
090
春彦
(
はるひこ
)
は
真蒼
(
まつさを
)
になり、
091
ソロソロ
慄
(
ふる
)
ひ
出
(
だ
)
し『
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
』も
天
(
あま
)
の
数歌
(
かずうた
)
も
千切
(
ちぎ
)
れ
千切
(
ちぎ
)
れになり、
092
一向
(
いつかう
)
美
(
うる
)
はしき
言霊
(
ことたま
)
を
発射
(
はつしや
)
することが
出来
(
でき
)
なくなつて
来
(
き
)
た。
093
モールバンドは
春彦
(
はるひこ
)
、
094
ヨブの
間近
(
まぢか
)
に
来
(
きた
)
りしに
気付
(
きづ
)
きしものと
見
(
み
)
え、
095
小山
(
こやま
)
のやうな
胴体
(
どうたい
)
を
徐
(
おもむ
)
ろに
二人
(
ふたり
)
の
方
(
はう
)
に
向
(
む
)
け
直
(
なほ
)
し、
096
長大
(
ちやうだい
)
なる
尾
(
を
)
に
撚
(
よ
)
りをかけ、
097
今
(
いま
)
や
一打
(
ひとう
)
ちに
両人
(
りやうにん
)
を
打
(
う
)
たむとする
形勢
(
けいせい
)
を
示
(
しめ
)
して
居
(
ゐ
)
る。
098
二人
(
ふたり
)
は
命
(
いのち
)
カラガラ
傍
(
かたはら
)
の
大木
(
たいぼく
)
目蒐
(
めが
)
けて
漸
(
やうや
)
く
登
(
のぼ
)
りつめ、
099
後
(
あと
)
は
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
、
100
暫時
(
ざんじ
)
の
避難所
(
ひなんじよ
)
と
常磐樹
(
ときはぎ
)
の
頂上
(
ちやうじやう
)
にしがみついて、
101
誰
(
たれ
)
か
助
(
たす
)
けに
来
(
き
)
てくれる
者
(
もの
)
はなからうかと
期待
(
きたい
)
して
居
(
ゐ
)
る。
102
樹
(
き
)
の
上
(
うへ
)
にて
春彦
(
はるひこ
)
は
声
(
こゑ
)
を
慄
(
ふる
)
はせながら、
103
春彦
『コレコレ、
104
ヨブさま、
105
大変
(
たいへん
)
な
事
(
こと
)
ぢや
御座
(
ござ
)
いませぬか。
106
私
(
わたし
)
も
獅子
(
しし
)
、
107
虎
(
とら
)
、
108
熊
(
くま
)
、
109
狼
(
おほかみ
)
、
110
大蛇
(
をろち
)
位
(
くらゐ
)
は、
111
さうも
恐
(
おそ
)
れないのだが、
112
どれ
丈
(
だけ
)
肝
(
きも
)
を
放
(
はう
)
り
出
(
だ
)
して
見
(
み
)
ても、
113
あのモールバンド
丈
(
だけ
)
は
如何
(
どう
)
することも
出来
(
でき
)
ない。
114
腹
(
はら
)
の
底
(
そこ
)
から
自然
(
しぜん
)
に
戦
(
おのの
)
いて
来
(
き
)
て、
115
自分
(
じぶん
)
の
体
(
からだ
)
がどこにあるやら、
116
分
(
わか
)
らなくなつて
来
(
き
)
ました。
117
お
前
(
まへ
)
さまは
如何
(
どう
)
ですかな?』
118
ヨブ
『
私
(
わたし
)
だとて
同
(
おな
)
じ
事
(
こと
)
ですよ。
119
併
(
しか
)
しながら、
120
何時迄
(
いつまで
)
もああしてモールバンドに
狙
(
ねら
)
はれて
居
(
を
)
らうものなら、
121
何時
(
いつ
)
ここを
下
(
くだ
)
つて
逃
(
に
)
げ
帰
(
かへ
)
ると
云
(
い
)
ふことも
出来
(
でき
)
ず、
122
困
(
こま
)
つたものですなア。
123
幸
(
さいはひ
)
に
此
(
この
)
樹
(
き
)
に
固
(
かた
)
い
果物
(
くだもの
)
がなつて
居
(
を
)
りますが、
124
これさへ
食
(
た
)
べて
居
(
を
)
れば、
125
仮令
(
たとへ
)
十日
(
とをか
)
や
二十日
(
はつか
)
、
126
此
(
この
)
樹
(
き
)
の
上
(
うへ
)
に
籠城
(
ろうじやう
)
したつて、
127
別
(
べつ
)
に
困
(
こま
)
りもしませぬが、
128
大風
(
おほかぜ
)
が
吹
(
ふ
)
いたり、
129
大雨
(
おほあめ
)
の
時
(
とき
)
には
実
(
じつ
)
に
困
(
こま
)
るぢやありませぬか。
130
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
の
様
(
やう
)
に
毎日
(
まいにち
)
日日
(
ひにち
)
二三回
(
にさんくわい
)
づつ
大
(
おほ
)
きな
雨
(
あめ
)
が
降
(
ふ
)
つて
来
(
く
)
ると、
131
第一
(
だいいち
)
身体
(
からだ
)
が
持
(
も
)
てませぬワイ。
132
モウ
斯
(
か
)
うなる
上
(
うへ
)
からは
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
におすがりして、
133
運
(
うん
)
を
天
(
てん
)
に
任
(
まか
)
すより
方法
(
はうはふ
)
はないから、
134
一
(
ひと
)
つ
此処
(
ここ
)
で
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に、
135
モールバンドが
退却
(
たいきやく
)
する
様
(
やう
)
に
御
(
ご
)
祈念
(
きねん
)
を
致
(
いた
)
しませうかい』
136
春彦
『ソリヤ
結構
(
けつこう
)
です……
併
(
しか
)
し、
137
何
(
なん
)
だか、
138
腹
(
はら
)
の
底
(
そこ
)
がワナワナして……
声
(
こゑ
)
が
円満
(
ゑんまん
)
に
出
(
で
)
て
来
(
き
)
ませぬ……』
139
と
千切
(
ちぎ
)
れ
千切
(
ちぎ
)
れに
話
(
はな
)
して
居
(
ゐ
)
る。
140
斯
(
か
)
かる
所
(
ところ
)
へ、
141
又
(
また
)
もや
宣伝歌
(
せんでんか
)
が
聞
(
きこ
)
え
来
(
きた
)
る。
142
(安彦)
『
国依別
(
くによりわけ
)
の
神司
(
かむづかさ
)
143
御供
(
みとも
)
をなしてはるばると
144
ヒルの
国原
(
くにはら
)
立出
(
たちい
)
でて
145
ブラジル
峠
(
たうげ
)
を
打
(
う
)
ちわたり
146
果
(
は
)
てしも
知
(
し
)
れぬ
谷道
(
たにみち
)
を
147
辿
(
たど
)
り
辿
(
たど
)
りてシーズンの
148
川
(
かは
)
の
片方
(
かたへ
)
に
来
(
き
)
て
見
(
み
)
れば
149
恋
(
こひ
)
の
虜
(
とりこ
)
となりはてし
150
秋山別
(
あきやまわけ
)
やモリスの
司
(
つかさ
)
151
二人
(
ふたり
)
の
男
(
をとこ
)
が
激流
(
げきりう
)
に
152
浮
(
う
)
きつ
沈
(
しづ
)
みつ
流
(
なが
)
れ
来
(
く
)
る
153
コリヤ
大変
(
たいへん
)
と
吾々
(
われわれ
)
は
154
国依別
(
くによりわけ
)
の
命
(
めい
)
を
受
(
う
)
け
155
衣類
(
いるゐ
)
をすぐに
脱
(
ぬ
)
ぎすてて
156
ザンブと
計
(
ばか
)
り
飛込
(
とびこ
)
めば
157
流石
(
さすが
)
に
名
(
な
)
に
負
(
お
)
ふシーズンの
158
速瀬
(
はやせ
)
の
波
(
なみ
)
に
漂
(
ただよ
)
ひて
159
溺
(
おぼ
)
れ
死
(
し
)
せむとせし
所
(
ところ
)
160
思
(
おも
)
はぬ
河中
(
かちう
)
の
岩石
(
がんせき
)
に
161
二人
(
ふたり
)
の
身体
(
からだ
)
は
引
(
ひ
)
つかかり
162
ヤツと
息
(
いき
)
をば
休
(
やす
)
めつつ
163
岩
(
いは
)
の
真下
(
ました
)
を
眺
(
なが
)
むれば
164
秋山別
(
あきやまわけ
)
やモリスの
司
(
つかさ
)
165
二人
(
ふたり
)
の
身体
(
からだ
)
は
渦巻
(
うづまき
)
に
166
巻
(
ま
)
かれて
浮
(
う
)
きつ
沈
(
しづ
)
みつつ
167
人事
(
じんじ
)
不省
(
ふせい
)
の
有様
(
ありさま
)
に
168
又
(
また
)
もや
身
(
み
)
をば
跳
(
をど
)
らして
169
安彦
(
やすひこ
)
、
宗彦
(
むねひこ
)
両人
(
りやうにん
)
は
170
二人
(
ふたり
)
の
身体
(
からだ
)
をひつ
抱
(
かか
)
へ
171
弱
(
よわ
)
き
川瀬
(
かはせ
)
を
選
(
えら
)
みつつ
172
彼方
(
かなた
)
の
岸
(
きし
)
に
救
(
すく
)
ひ
上
(
あ
)
げ
173
介抱
(
かいほう
)
すればやうやうに
174
息吹返
(
いきふきかへ
)
し
両人
(
りやうにん
)
は
175
恋
(
こひ
)
の
虜
(
とりこ
)
の
夢
(
ゆめ
)
もさめ
176
国依別
(
くによりわけ
)
に
従
(
したが
)
ひて
177
アマゾン
河
(
がは
)
の
森林
(
しんりん
)
に
178
潜
(
ひそ
)
みて
世間
(
せけん
)
に
災
(
わざはひ
)
の
179
霊
(
みたま
)
を
送
(
おく
)
る
曲津見
(
まがつみ
)
を
180
言向
(
ことむ
)
け
和
(
やは
)
し
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
の
181
なやみを
払
(
はら
)
ひ
清
(
きよ
)
めむと
182
茲
(
ここ
)
に
五
(
ご
)
人
(
にん
)
の
一行
(
いつかう
)
は
183
帽子
(
ぼうし
)
ケ
岳
(
だけ
)
の
頂上
(
ちやうじやう
)
を
184
目当
(
めあて
)
に
進
(
すす
)
み
登
(
のぼ
)
り
行
(
ゆ
)
く
185
遠
(
とほ
)
く
彼方
(
かなた
)
を
見
(
み
)
わたせば
186
アマゾン
河
(
がは
)
の
急流
(
きふりう
)
は
187
天津
(
あまつ
)
日影
(
ひかげ
)
にてらされて
188
長蛇
(
ちやうだ
)
の
如
(
ごと
)
く
光
(
ひか
)
り
居
(
ゐ
)
る
189
南
(
みなみ
)
と
北
(
きた
)
の
森林
(
しんりん
)
は
190
緑紅
(
みどりくれなゐ
)
こき
交
(
ま
)
ぜて
191
果
(
は
)
てしも
知
(
し
)
らず
茂
(
しげ
)
り
生
(
お
)
ふ
192
此
(
この
)
光景
(
くわうけい
)
を
眺
(
なが
)
めつつ
193
言依別
(
ことよりわけ
)
の
神司
(
かむつかさ
)
194
国依別
(
くによりわけ
)
と
諸共
(
もろとも
)
に
195
琉
(
りう
)
と
球
(
きう
)
との
神力
(
しんりき
)
を
196
遠
(
とほ
)
く
此方
(
こなた
)
に
照
(
て
)
らしつつ
197
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
一行
(
いつかう
)
が
言霊
(
ことたま
)
の
198
戦
(
いくさ
)
の
勝
(
かち
)
を
守
(
まも
)
らむと
199
幽玄
(
いうげん
)
微妙
(
びめう
)
の
神策
(
しんさく
)
を
200
立
(
た
)
てさせ
給
(
たま
)
ふ
有難
(
ありがた
)
さ
201
此
(
この
)
森林
(
しんりん
)
は
名
(
な
)
にし
負
(
お
)
ふ
202
妖怪窟
(
えうくわいくつ
)
と
聞
(
きこ
)
ゆれば
203
八岐
(
やまた
)
大蛇
(
をろち
)
は
云
(
い
)
ふも
更
(
さら
)
204
虎
(
とら
)
狼
(
おほかみ
)
に
獅子
(
しし
)
や
熊
(
くま
)
205
其
(
その
)
外
(
ほか
)
百
(
もも
)
の
怪物
(
くわいぶつ
)
が
206
いろいろ
雑多
(
ざつた
)
と
身
(
み
)
を
変
(
へん
)
じ
207
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
を
誑
(
たば
)
かる
事
(
こと
)
あらむ
208
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
209
神
(
かみ
)
の
御霊
(
みたま
)
を
身
(
み
)
に
受
(
う
)
けて
210
如何
(
いか
)
なる
曲
(
まが
)
も
恐
(
おそ
)
れなく
211
誠一
(
まことひと
)
つの
神
(
かみ
)
の
道
(
みち
)
212
撓
(
たゆ
)
まず
屈
(
くつ
)
せず
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く
213
モールバンドやエルバンド
214
仮令
(
たとへ
)
幾千
(
いくせん
)
来
(
きた
)
るとも
215
吾
(
わが
)
言霊
(
ことたま
)
の
神力
(
しんりき
)
に
216
言向
(
ことむ
)
け
和
(
やは
)
し
今
(
いま
)
よりは
217
アマゾン
河
(
がは
)
の
底
(
そこ
)
深
(
ふか
)
く
218
潜
(
ひそ
)
みて
百
(
もも
)
の
災
(
わざはひ
)
を
219
思
(
おも
)
ひとまらせくれむぞと
220
言依別
(
ことよりわけ
)
の
御言
(
みこと
)
もて
221
やうやう
此処
(
ここ
)
に
来
(
きた
)
りけり
222
高姫
(
たかひめ
)
さまを
初
(
はじ
)
めとし
223
常彦
(
つねひこ
)
、
春彦
(
はるひこ
)
、
今
(
いま
)
いづこ
224
果
(
は
)
てしも
知
(
し
)
らぬ
此
(
この
)
森
(
もり
)
の
225
いづこに
彷徨
(
さまよ
)
ひ
給
(
たま
)
ふらむ
226
神
(
かみ
)
の
御霊
(
みたま
)
の
幸
(
さち
)
はひて
227
一日
(
ひとひ
)
も
早
(
はや
)
く
高姫
(
たかひめ
)
が
228
在処
(
ありか
)
を
教
(
をし
)
へ
給
(
たま
)
へかし
229
朝日
(
あさひ
)
は
照
(
て
)
るとも
曇
(
くも
)
るとも
230
月
(
つき
)
は
盈
(
み
)
つとも
虧
(
か
)
くるとも
231
モールバンドは
攻
(
せ
)
め
来
(
く
)
とも
232
虎
(
とら
)
狼
(
おほかみ
)
や
獅子
(
しし
)
熊
(
くま
)
の
233
勢
(
いきほひ
)
いかに
猛
(
たけ
)
くとも
234
なにか
恐
(
おそ
)
れむ
敷島
(
しきしま
)
の
235
大和心
(
やまとごころ
)
の
益良夫
(
ますらを
)
が
236
神
(
かみ
)
の
光
(
ひか
)
りを
楯
(
たて
)
となし
237
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐみ
)
を
矛
(
ほこ
)
として
238
進
(
すす
)
みに
進
(
すす
)
む
森
(
もり
)
の
中
(
なか
)
239
実
(
げ
)
に
勇
(
いさ
)
ましき
次第
(
しだい
)
なり
240
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
241
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はひましませよ』
242
と
歌
(
うた
)
ひつつ、
243
安彦
(
やすひこ
)
を
先頭
(
せんとう
)
に、
244
宗彦
(
むねひこ
)
、
245
秋山別
(
あきやまわけ
)
、
246
モリスの
四
(
よ
)
人
(
にん
)
は、
247
神
(
かみ
)
の
引合
(
ひきあは
)
せか、
248
期
(
き
)
せずして、
249
高姫
(
たかひめ
)
、
250
春彦
(
はるひこ
)
等
(
ら
)
が
避難
(
ひなん
)
せる
樹蔭
(
こかげ
)
近
(
ちか
)
く
進
(
すす
)
み
来
(
きた
)
れり。
251
春彦
(
はるひこ
)
、
252
高姫
(
たかひめ
)
の
二組
(
ふたくみ
)
の
避難者
(
ひなんしや
)
は
樹上
(
じゆじやう
)
より
此
(
この
)
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
聞
(
き
)
き、
253
未
(
いま
)
だ
一度
(
いちど
)
も
聞
(
き
)
きしことなき
声
(
こゑ
)
なれども、
254
必
(
かなら
)
ず
途中
(
とちう
)
にて、
255
言依別
(
ことよりわけ
)
、
256
国依別
(
くによりわけ
)
の
教
(
をしへ
)
に
感
(
かん
)
じ
入信
(
にふしん
)
せし
者
(
もの
)
ならむ、
257
あゝ
有難
(
ありがた
)
し
辱
(
かたじけ
)
なし、
258
神
(
かみ
)
の
救
(
すく
)
ひの
御手
(
みて
)
……と
忽
(
たちま
)
ち
元気
(
げんき
)
恢復
(
くわいふく
)
し、
259
拍手
(
はくしゆ
)
し
終
(
をは
)
り、
260
樹上
(
じゆじやう
)
より
声
(
こゑ
)
高
(
たか
)
らかに、
261
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
し
始
(
はじ
)
めた。
262
春彦
(
はるひこ
)
の
祝詞
(
のりと
)
の
声
(
こゑ
)
に、
263
はるか
離
(
はな
)
れた
樹
(
き
)
の
上
(
うへ
)
に
避難
(
ひなん
)
して
居
(
ゐ
)
た
高姫
(
たかひめ
)
、
264
常彦
(
つねひこ
)
は、
265
始
(
はじ
)
めて
春彦
(
はるひこ
)
の
所在
(
しよざい
)
を
知
(
し
)
り、
266
非常
(
ひじやう
)
に
心強
(
こころづよ
)
さを
感
(
かん
)
じ、
267
ますます
元気
(
げんき
)
を
出
(
だ
)
して
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
を
力
(
ちから
)
一杯
(
いつぱい
)
、
268
天地
(
てんち
)
も
震撼
(
しんかん
)
せよと
許
(
ばか
)
りに
宣
(
の
)
り
上
(
あ
)
げた。
269
安彦
(
やすひこ
)
、
270
宗彦
(
むねひこ
)
の
一行
(
いつかう
)
は
双方
(
さうはう
)
より
聞
(
きこ
)
え
来
(
きた
)
る
樹上
(
じゆじやう
)
の
祝詞
(
のりと
)
の
声
(
こゑ
)
に、
271
始
(
はじ
)
めて
高姫
(
たかひめ
)
一行
(
いつかう
)
のここに
居
(
ゐ
)
ることを
悟
(
さと
)
り、
272
歓喜
(
くわんき
)
斜
(
ななめ
)
ならず、
273
尚
(
なほ
)
も
元気
(
げんき
)
を
出
(
だ
)
して
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
を
宣
(
の
)
り
始
(
はじ
)
めた。
274
モールバンドは
少
(
すこ
)
しも
屈
(
くつ
)
せず、
275
目
(
め
)
を
怒
(
いか
)
らし、
276
尾
(
を
)
を
振
(
ふ
)
りしごき、
277
縦横
(
じうわう
)
無尽
(
むじん
)
に
四
(
よ
)
人
(
にん
)
に
向
(
むか
)
つて
突進
(
とつしん
)
し
来
(
きた
)
る。
278
四
(
よ
)
人
(
にん
)
は
忽
(
たちま
)
ち
傍
(
かたはら
)
の
大木
(
たいぼく
)
に
辛
(
から
)
うじて
避難
(
ひなん
)
し、
279
樹上
(
じゆじやう
)
より
祝詞
(
のりと
)
を
頻
(
しき
)
りに
奏上
(
そうじやう
)
し、
280
早
(
はや
)
く
此
(
この
)
怪獣
(
くわいじう
)
の
遁走
(
とんさう
)
して、
281
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
一行
(
いつかう
)
を
救
(
すく
)
ひ
給
(
たま
)
へと
念
(
ねん
)
じつつありぬ。
282
忽
(
たちま
)
ち
西北
(
せいほく
)
の
空
(
そら
)
をこがして
輝
(
かがや
)
き
来
(
きた
)
る
琉
(
りう
)
、
283
球
(
きう
)
の
大火光
(
だいくわくわう
)
、
284
あたりは
忽
(
たちま
)
ち
火
(
ひ
)
の
如
(
ごと
)
く
赤
(
あか
)
くなりぬ。
285
これ
言依別
(
ことよりわけ
)
、
286
国依別
(
くによりわけ
)
の
神司
(
かむづかさ
)
が、
287
帽子
(
ぼうし
)
ケ
岳
(
だけ
)
より
救援
(
きうゑん
)
の
為
(
た
)
め
発射
(
はつしや
)
する
所
(
ところ
)
の
霊光
(
れいくわう
)
なりき。
288
モールバンドは
驚
(
おどろ
)
いて、
289
尾
(
を
)
を
縮
(
ちぢ
)
め、
290
首
(
くび
)
をすくめ、
291
コソコソと
森林
(
しんりん
)
を
駆
(
か
)
け
出
(
いだ
)
し、
292
数十
(
すうじふ
)
里
(
り
)
の
林
(
はやし
)
を
潜
(
くぐ
)
つて、
293
アマゾン
河
(
がは
)
に
逃
(
に
)
げ
去
(
さ
)
りにけり。
294
安彦
(
やすひこ
)
一行
(
いつかう
)
四
(
よ
)
人
(
にん
)
はヤツと
胸
(
むね
)
をなでおろし、
295
枝振
(
えだぶり
)
のよい
大木
(
たいぼく
)
を
下
(
くだ
)
り
来
(
きた
)
り、
296
安彦
(
やすひこ
)
『
高姫
(
たかひめ
)
様
(
さま
)
々々々
(
たかひめさま
)
』
297
と
呼
(
よ
)
ばはりながら、
298
樹下
(
じゆか
)
を
巡
(
めぐ
)
り、
299
空
(
そら
)
を
仰
(
あふ
)
いで
高姫
(
たかひめ
)
の
居所
(
ゐどころ
)
を
捜
(
さが
)
して
居
(
ゐ
)
る。
300
高姫
(
たかひめ
)
は
常彦
(
つねひこ
)
と
共
(
とも
)
にヤツと
安心
(
あんしん
)
し
乍
(
なが
)
ら
下
(
くだ
)
つて
来
(
き
)
た。
301
春彦
(
はるひこ
)
もヨブも
亦
(
また
)
一
(
ひと
)
つの
大木
(
たいぼく
)
の
空
(
そら
)
より
此処
(
ここ
)
に
漸
(
やうや
)
く
下
(
くだ
)
り
来
(
きた
)
り、
302
互
(
たがひ
)
に
顔
(
かほ
)
を
見合
(
みあは
)
せ、
303
嬉
(
うれ
)
し
泣
(
な
)
きに
抱
(
だ
)
き
合
(
あ
)
ひて
泣
(
な
)
く。
304
是
(
これ
)
より
八
(
はち
)
人
(
にん
)
は
互
(
たがひ
)
に
手
(
て
)
を
取
(
と
)
り、
305
無事
(
ぶじ
)
を
祝
(
しゆく
)
し、
306
且
(
か
)
つ
高姫
(
たかひめ
)
一行
(
いつかう
)
は
安彦
(
やすひこ
)
一行
(
いつかう
)
に
向
(
むか
)
ひ
厚
(
あつ
)
く
感謝
(
かんしや
)
の
詞
(
ことば
)
を
述
(
の
)
べながら、
307
アマゾン
河
(
がは
)
の
沿岸
(
えんがん
)
に
向
(
むか
)
つて
引返
(
ひきかへ
)
し、
308
南岸
(
なんがん
)
の
森林中
(
しんりんちう
)
に
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
一行
(
いつかう
)
が
猛獣
(
まうじう
)
の
王
(
わう
)
として
住
(
すま
)
ひ
居
(
ゐ
)
ることを、
309
安彦
(
やすひこ
)
を
以
(
もつ
)
て
国依別
(
くによりわけ
)
より
伝達
(
でんたつ
)
したれば、
310
取
(
と
)
る
物
(
もの
)
も
取
(
と
)
り
敢
(
あへ
)
ず、
311
河端
(
かはばた
)
に
向
(
むか
)
つて
進
(
すす
)
む。
312
一行
(
いつかう
)
が
一心
(
いつしん
)
をこめて
奏上
(
そうじやう
)
したる
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
の
声
(
こゑ
)
に、
313
北
(
きた
)
の
森林
(
しんりん
)
の
猛獣共
(
まうじうども
)
は
争
(
あらそ
)
つて
此処
(
ここ
)
に
集
(
あつ
)
まり
来
(
きた
)
り、
314
八
(
はち
)
人
(
にん
)
の
後
(
あと
)
に
従
(
したが
)
ひ、
315
これ
亦
(
また
)
アマゾン
河
(
がは
)
の
岸
(
きし
)
迄
(
まで
)
、
316
幾百千
(
いくひやくせん
)
とも
知
(
し
)
れず、
317
列
(
れつ
)
を
作
(
つく
)
つて
従
(
したが
)
ひ
来
(
きた
)
る。
318
これより
高姫
(
たかひめ
)
は、
319
アマゾン
河
(
がは
)
の
急流
(
きふりう
)
を
眺
(
なが
)
め、
320
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に、
321
南岸
(
なんがん
)
に
無事
(
ぶじ
)
渡
(
わた
)
らせ
給
(
たま
)
へ……と
祈念
(
きねん
)
した。
322
忽
(
たちま
)
ち
川底
(
かはぞこ
)
より
八尋鰐
(
やひろわに
)
、
323
幾千万
(
いくせんまん
)
とも
限
(
かぎ
)
りなく
現
(
あら
)
はれ
重
(
かさ
)
なり
合
(
あ
)
うて、
324
忽
(
たちま
)
ち
鰐橋
(
わにばし
)
を
架
(
か
)
けたり。
325
高姫
(
たかひめ
)
は
大神
(
おほかみ
)
の
神徳
(
しんとく
)
と
鰐
(
わに
)
の
好意
(
かうい
)
を
一々
(
いちいち
)
感謝
(
かんしや
)
し、
326
七
(
しち
)
人
(
にん
)
と
共
(
とも
)
に
南岸
(
なんがん
)
に
辛
(
から
)
うじて
渡
(
わた
)
ることを
得
(
え
)
たり。
327
此
(
この
)
間
(
あひだ
)
何里
(
なんり
)
とも
分
(
わか
)
らぬ
位
(
くらゐ
)
、
328
広
(
ひろ
)
き
河幅
(
かははば
)
なりけり。
329
北
(
きた
)
の
森林
(
しんりん
)
に
棲
(
す
)
める
猛獣
(
まうじう
)
は
此処
(
ここ
)
まで
送
(
おく
)
り
来
(
きた
)
り、
330
此
(
この
)
激流
(
げきりう
)
を
眺
(
なが
)
めて
稍
(
やや
)
躊躇
(
ちゆうちよ
)
の
色
(
いろ
)
ありしが、
331
忽
(
たちま
)
ち
鰐橋
(
わにばし
)
の
架
(
かか
)
りたるに
力
(
ちから
)
を
得
(
え
)
、
332
一匹
(
いつぴき
)
も
残
(
のこ
)
らず、
333
南森林
(
みなみしんりん
)
に
打渡
(
うちわた
)
り、
334
高姫
(
たかひめ
)
一行
(
いつかう
)
を
送
(
おく
)
りて
兎
(
うさぎ
)
の
都
(
みやこ
)
に
向
(
むか
)
ひ
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
335
(
大正一一・八・二三
旧七・一
松村真澄
録)
Δこのページの一番上に戻るΔ
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(B)
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