霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
×
設定
URL:
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
話者名の追加表示 [?]セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。[×閉じる]
表示できる章
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
行間
ルビの表示


アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注[※]用語解説 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

脚注[*]編集用 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

外字の外周色 [?]一般のフォントに存在しない文字は専用の外字フォントを使用しています。目立つようにその文字の外周の色を変えます。[×閉じる]
現在のページには外字は使われていません

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。

第二二章 橋架(はしかけ)〔九一三〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第32巻 海洋万里 未の巻 篇:第4篇 天祥地瑞 よみ(新仮名遣い):てんしょうちずい
章:第22章 橋架 よみ(新仮名遣い):はしかけ 通し章番号:913
口述日:1922(大正11)年08月24日(旧07月02日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年10月15日
概要: 舞台:ウヅの館 あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一部の章はAIによって要約を作成しています。[×閉じる]:
神司たちは各々眠りにつき、体を休めた。あくる朝早々、松若彦は国依別の一室にやってきた。改まってやってきた松若彦が切り出したのは、末子姫との婚姻話であった。
神素盞嗚大神から相談された末子姫の結婚相手について、言依別命と松若彦は、そろって国依別を推薦したというのである。また神素盞嗚大神も、国依別の名前を聞いて大いにお喜びになったという。
それを聞いて国依別は涙を流してうつむいている。訳を尋ねる松若彦に対して国依別は、自分は若いころから極道をなしたので、改心してからは女と一切関係を絶ち、生涯独身を覚悟しているのだと告げた。
松若彦は、大神様は国依別の素性は知ったうえで縁談に前向きなのだと伝えた。松若彦と国依別は押し問答を繰り返したが、最後に国依別は覚悟を決め、何事も大神様のおおせと松若彦に任せると答えた。
松若彦は喜んで部屋を後にした。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2022-06-08 18:44:54 文字数:4794 OBC :rm3222
愛善世界社版:261頁 八幡書店版:第6輯 236頁 修補版: 校定版:265頁 普及版:95頁 初版: ページ備考:
001 国依別(くによりわけ)、002高姫(たかひめ)、003鷹依姫(たかよりひめ)、004竜国別(たつくにわけ)其(その)他(た)の宣伝使(せんでんし)は各(かく)休息室(きうそくしつ)を与(あた)へられ、005夜(よる)は其処(そこ)に眠(ねむ)り、006筋骨(きんこつ)を休(やす)ませて居(ゐ)た。007翌朝(よくあさ)早々(さうさう)国依別(くによりわけ)の一室(いつしつ)に松若彦(まつわかひこ)は訪(たづ)ね来(きた)り、
008松若彦『国依別(くによりわけ)様(さま)、009御(お)早(はや)う御座(ござ)います。010就(つ)いてはあなたに折入(をりい)つて御(ご)相談(さうだん)が御座(ござ)いまして、011早(はや)くから御(お)邪魔(じやま)を致(いた)しました』
012と心(こころ)ありげに笑(ゑみ)を含(ふく)んでゐる。013国依別(くによりわけ)は、
014国依別『これは又(また)改(あらた)まつた御(お)言葉(ことば)、015私(わたくし)に対(たい)し、016御(ご)相談(さうだん)とはどんな事(こと)で御座(ござ)いますか。017明智(あけち)の言依別(ことよりわけ)様(さま)が居(ゐ)らせられる以上(いじやう)は、018どうぞ命様(みことさま)に御(ご)相談(さうだん)下(くだ)さつたら、019如何(いかが)でせうかなア』
020松若彦『実(じつ)の所(ところ)は夜前(やぜん)神(かむ)素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)様(さま)の御(お)召(め)しに依(よ)り、021言依別(ことよりわけ)様(さま)及(およ)び私(わたし)と三(さん)人(にん)三(み)つ巴(どもゑ)になつて、022御(ご)相談(さうだん)あつた結果(けつくわ)、023私(わたし)が特命(とくめい)全権(ぜんけん)公使(こうし)に選(えら)まれて参(まゐ)りましたので御座(ござ)います。024万一(まんいち)此(この)使(つかひ)が、025不成功(ふせいこう)に終(をは)るやうな事(こと)があれば、026此(この)松若彦(まつわかひこ)は海外(かいぐわい)旅行券(りよかうけん)を交附(かうふ)された手前(てまへ)、027腹(はら)を切(き)らねばならないのです』
028国依別『そりやマア大変(たいへん)な御(ご)使命(しめい)と見(み)えますが、029どうぞ早(はや)く仰有(おつしや)つて下(くだ)さいませ。030私(わたくし)の力(ちから)の及(およ)ぶ事(こと)ならば、031神(かみ)様(さま)に捧(ささ)げた此(この)体(からだ)、032如何(いか)なる御用(ごよう)も承(うけたま)はるで御座(ござ)いませう』
033松若彦『実(じつ)は私(わたし)の父(ちち)国彦(くにひこ)は、034正鹿(まさか)山津見(やまづみの)神(かみ)様(さま)が五月姫(さつきひめ)様(さま)と共(とも)に黄泉(よもつ)比良坂(ひらさか)の戦(たたか)ひに御(ご)出陣(しゆつぢん)の砌(みぎり)、035ウヅの国(くに)の人民(じんみん)は申(まを)すも更(さら)なり、036此(この)神館(かむやかた)を御(お)預(あづ)け遊(あそ)ばし、037やがて時(とき)来(きた)らば、038神(かむ)素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)様(さま)の瑞(みづ)の御霊(みたま)の貴(うづ)の御子(みこ)、039此(この)国(くに)に降(くだ)り給(たま)ふことあるべし。040それ迄(まで)汝(なんぢ)は我命(わがめい)を守(まも)つて、041此(この)国(くに)及(およ)び神館(かむやかた)を預(あづか)り呉(く)れよとの厳命(げんめい)で御座(ござ)いました。042父(ちち)は幸(かう)か不幸(ふかう)か、043最早(もはや)幽界(いうかい)に参(まゐ)りましたが、044後(あと)に残(のこ)つた私(わたし)が父(ちち)の後(あと)を継(つ)ぎ、045此(この)館(やかた)を守(まも)つて居(を)ります所(ところ)へ、046正鹿山津見(まさかやまづみ)の神(かみ)様(さま)の御(おん)仰(あふ)せの如(ごと)く、047瑞(みづ)の御霊(みたま)の大神(おほかみ)様(さま)の御(おん)娘子(むすめご)、048末子姫(すゑこひめ)様(さま)が御(お)越(こ)し遊(あそ)ばしたので、049直(ただ)ちに御(お)館(やかた)を姫(ひめ)様(さま)に御(お)渡(わた)し申(まを)し、050此(この)国(くに)をも御(お)渡(わた)しをして、051私(わたし)は御存(ごぞん)じの通(とほ)り総司(そうし)として仕(つか)へて参(まゐ)りました。052然(しか)るに此(この)度(たび)、053御(おん)父君(ちちぎみ)神(かむ)素盞嗚(すさのをの)尊(みこと)、054突然(とつぜん)天降(あまくだ)り給(たま)ひ、055大変(たいへん)に御(お)悦(よろこ)び遊(あそ)ばし、056且(か)つ末子姫(すゑこひめ)も最早(もはや)良(よ)い年頃(としごろ)であるから、057適当(てきたう)な夫(をつと)を持(も)たせたいのだが……との御(お)尋(たづ)ね、058招(まね)かれた吾々(われわれ)始(はじ)め言依別(ことよりわけの)命(みこと)様(さま)は、059言下(げんか)に国依別(くによりわけ)様(さま)を御(お)婿(むこ)様(さま)になされましたら如何(どう)でせうと申上(まをしあ)げし処(ところ)、060大神(おほかみ)様(さま)は大変(たいへん)に御(お)悦(よろこ)び遊(あそ)ばされ、061実(じつ)は其(その)事(こと)に就(つい)て、062はるばるとここまで出(で)て来(き)たのだ。063どうぞ神徳(しんとく)の強(つよ)き国依別(くによりわけ)を末子姫(すゑこひめ)の夫(をつと)になつて呉(く)れる様(やう)、064其(その)方(はう)は取(と)り持(も)てよ……との御(ご)命令(めいれい)取(と)る物(もの)も取(と)り敢(あへ)ず、065あなたに於(おい)ても御(ご)異存(いぞん)は御座(ござ)いますまいと思(おも)ひまして……ヘヽヽヽ、066一寸(ちよつと)全権(ぜんけん)公使(こうし)の役(やく)を拝命(はいめい)し、067御(お)伺(うかが)ひに参(まゐ)つた次第(しだい)で御座(ござ)います。068どうぞ善(ぜん)は急(いそ)げですから、069早(はや)く善(よ)き御(ご)返事(へんじ)を御(お)願(ねが)ひ申(まを)します』
070 国依別(くによりわけ)は案(あん)に相違(さうゐ)の面持(おももち)にて首(かうべ)を傾(かたむ)け、071双手(もろて)を組(く)み、072太(ふと)き息(いき)をつきながら、073ものをも言(い)はず両眼(りやうがん)より涙(なみだ)さへ滴(したた)らしつつ居(ゐ)る。
074松若彦『モシ国依別(くによりわけ)さま、075あなたは何(なに)それ程(ほど)御(ご)思案(しあん)なされますか、076見(み)れば涙(なみだ)を御(お)垂(た)らしになつてゐるやうですなア。077如何(どう)しても御(お)気(き)に入(い)らないのですか?』
078国依別『イエイエどうしてどうして気(き)に入(い)らぬ所(どころ)か、079余(あま)りの事(こと)で、080勿体(もつたい)なくて、081申上(まをしあ)げる言葉(ことば)も御座(ござ)いませぬ。082私(わたし)は若(わか)い時(とき)より道楽(だうらく)の有丈(ありたけ)を尽(つく)し、083沢山(たくさん)の女殺(をんなごろ)し、084御家(ごけ)倒(だほ)し、085家潰(いへつぶ)しをやつてきた罪(つみ)の塊(かたまり)で御座(ござ)います。086今日(こんにち)は三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)として、087女(をんな)と一切(いつさい)の関係(くわんけい)を絶(た)ち、088生涯(しやうがい)独身(どくしん)生活(せいくわつ)を続(つづ)ける覚悟(かくご)を致(いた)して居(を)るので御座(ござ)います。089如何(いか)に大神(おほかみ)様(さま)の思召(おぼしめ)しなればとて、090私(わたし)の様(やう)な横着者(わうちやくもの)の成(な)れの果(は)て、091何程(なにほど)魂(みたま)が研(みが)けたと申(まを)しても、092白(しろ)い布(きれ)に墨(すみ)が浸(し)んだのと同様(どうやう)に、093いくら洗(あら)つても元(もと)の白(しろ)い生地(きぢ)にはなりませぬ。094つまり霊魂(れいこん)上(じやう)の疵者(きずもの)で御座(ござ)います。095斯様(かやう)な疵者(きずもの)が水晶(すいしやう)身魂(みたま)の生(うぶ)の処女(しよぢよ)なる末子姫(すゑこひめ)様(さま)の夫(をつと)になるなぞと云(い)ふ事(こと)は、096どうしても良心(りやうしん)が咎(とが)めてなりませぬ。097冥加(みやうが)の程(ほど)が恐(おそ)ろしうなつて参(まゐ)りました。098どうぞ右様(みぎやう)の次第(しだい)で御座(ござ)いますから、099悪(あ)しからず、100大神(おほかみ)様(さま)に私(わたし)の素性(すじやう)を素破(すつぱ)ぬいた上(うへ)、101宜(よろ)しく御(お)断(ことわ)り下(くだ)さいませ』
102松若彦『左様(さやう)な御(ご)遠慮(ゑんりよ)はチツとも要(い)りませぬ。103神(かむ)素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)様(さま)は、104あなたがバラモン教(けう)の信者(しんじや)であつた事(こと)も、105女(をんな)泣(な)かしの御家(ごけ)倒(たふ)し、106家潰(いへつぶ)しをなさつた事(こと)も、107大(だい)の悪戯者(いたづらもの)で居(ゐ)らつしやつた事(こと)も、108松鷹彦(まつたかひこ)様(さま)のお宿(やど)を知(し)らず識(し)らずに訪(たづ)ね、109お勝(かつ)殿(どの)といろいろのローマンスのあつた事(こと)、110それから真浦(まうら)様(さま)の弟(おとうと)なる事(こと)、111一切(いつさい)万事(ばんじ)御(お)取調(とりしらべ)の上(うへ)の事(こと)で御座(ござ)いますから、112決(けつ)してそんな御(ご)遠慮(ゑんりよ)は要(い)りませぬ。113言依別(ことよりわけ)様(さま)も口(くち)を極(きは)めてあなたの美点(びてん)をあげ、114又(また)悪(わる)い癖(くせ)を一(ひと)つも残(のこ)らず、115大神(おほかみ)様(さま)に申上(まをしあ)げられました。116所(ところ)が大神(おほかみ)様(さま)は大変(たいへん)な御(ご)機嫌(きげん)で……あゝ其奴(そいつ)は益々(ますます)面白(おもしろ)い男(をとこ)だ、117気(き)に入(い)つた、118どうぞ早(はや)く末子姫(すゑこひめ)の夫(をつと)にしたいものだ……との思召(おぼしめ)しで御座(ござ)いましたよ……国依別(くによりわけ)様(さま)、119あなたは言依別(ことよりわけ)様(さま)から承(うけたまは)れば、120随分(ずゐぶん)からかひの上手(じやうず)な御(お)方(かた)ぢやさうですから、121私(わたし)がこんな事(こと)をいつて、122あなたをからかつてゐると思(おも)はれるか知(し)りませぬが、123今日(けふ)は真剣(しんけん)ですから、124どうぞ真面目(まじめ)に聞(き)いて下(くだ)さい』
125国依別『から買(か)ひも豆腐買(とうふかひ)も、126厄介(やくかい)も喧嘩買(けんくわかひ)も、127法螺貝(ほらがひ)もドブ貝(がひ)も心霊(しんれい)研究会(けんきうくわい)も、128大日本(だいにほん)修斎会(しうさいくわい)も、129議会(ぎくわい)も日本海(にほんかい)も皆目(かいもく)ありませぬワイ。130正真(しやうしん)正銘(しやうめい)の偽(いつは)りなきあなたの御(お)言葉(ことば)、131国依別(くによりわけ)、132実(じつ)に光栄(くわうえい)に存(ぞん)じます。133併(しか)しながら貴族(きぞく)と卑族(ひぞく)との結婚(けつこん)は提灯(ちやうちん)に釣鐘(つりがね)、134釣合(つりあ)はぬは不縁(ふえん)の元(もと)ですから、135要(い)らぬ苦労(くらう)をさせずに、136どうぞ体(てい)よく断(ことわ)つて下(くだ)さい』
137松若彦『エヽ国依別(くによりわけ)さま、138真剣(しんけん)ですよ。139又(また)例(れい)の癖(くせ)を出(だ)して、140正直(しやうぢき)な私(わたし)をじらしなさるのですか。141あなたの本(ほん)守護神(しゆごじん)はキツト契約済(けいやくずみ)の実印(じついん)を押捺(あふなつ)して御座(ござ)るに間違(まちがひ)ありませぬよ。142又(また)世(よ)の諺(ことわざ)にも、143恋(こひ)に上下(じやうげ)の隔(へだ)てなしと云(い)ふぢやありませぬか。144隔(へだて)のないのが所謂(いはゆる)恋(こひ)の神聖(しんせい)なる所以(ゆゑん)です』
145国依別『私(わたし)は一旦(いつたん)婦人(ふじん)との関係(くわんけい)を心(こころ)の底(そこ)より断念(だんねん)して居(ゐ)ますから、146恋(こひ)なんか心(こころ)に起(おこ)した事(こと)はありませぬ。147鯉(こひ)が滝上(たきのぼ)りをし、148夕立(ゆふだち)に乗(の)つて天上(てんぢやう)する様(やう)な険呑(けんのん)な結婚(けつこん)問題(もんだい)は、149どうぞ御(お)頼(たの)みですから、150早(はや)く撤廃(てつぱい)して下(くだ)さい』
151松若彦『又(また)しても鮒(ふな)々(ふな)と埒(らち)のあかぬ、152あなたの御(お)言葉(ことば)、153末子姫(すゑこひめ)様(さま)があの飯鞘(いひだこ)、154尻目(しじめ)で、155お前(まへ)さまの後姿(うしろすがた)を睨(にら)んで、156あの男(をとこ)を鰌(どぜう)なとして、157私(わたくし)のオツトセイに持(も)ちたいものだと、158明(あ)けても暮(く)れても、159つばすを呑(の)みこんで、160あかえ年(とし)だから、161鯉(こひ)の炎(ほのほ)をもやして御座(ござ)るのだから、162どうぞ色(いろ)よいあぢのよい返事(へんじ)をして下(くだ)さい。163あなたも鱒(ます)々(ます)鯖(さば)けた人間(にんげん)だと云(い)つて、164鱶(ふか)はまりしてゐられるのだ。165それにお前(まへ)さまが尾(を)をふり、166鰭(ひれ)をピンとはねるやうな事(こと)をなさつたら……あゝ私(わたし)も折角(せつかく)の鯉(こひ)が叶(かな)はねば、167一層(いつそう)の事(こと)、168ちぬ鯛(だひ)、169小(こ)鮒(ふな)な浮世(うきよ)に生鰕(なまえび)したかて、170サヨリがないからと云(い)つて淵川(ふちかは)へ身(み)を投(な)げて了(しま)はれたら、171お前(まへ)さま何程(なにほど)魚(うを)々(うを)とうろついて悔(くや)んでもあとの祭(まつ)り、172大神(おほかみ)様(さま)からは、173是程(これほど)事(こと)を分(わ)けて言(い)ふのに、174鯉(こひ)の様(やう)にはねつけるとは、175ギギシイラぬ奴(やつ)だと御(ご)立腹(りつぷく)遊(あそ)ばすかも知(し)れませぬ。176私(わたし)はこれ程(ほど)白魚(しらうを)もやさして、177お前(まへ)さまはそれでも気(き)が済(す)むの貝(かひ)な。178マア厭(いや)でも添(そ)うて見(み)なさい。179仕舞(しまひ)にやすすきになりますぞや、180ヤマメで暮(くら)すより鮎(あゆ)らしい奥(おく)さまとガザミに手(て)を引(ひ)いて、181山野(やまの)を時々(ときどき)跋渉(ばつせふ)なさるのも乙(おつ)ですよ。182これ程(ほど)私(わたし)に八(や)カマス鰯(いわし)ておいて、183だまつてゐるとは、184余(あんま)りぢやありませぬか。185今日(けふ)は大神(おほかみ)様(さま)の思(おぼ)し召(めし)だから、186瓢箪(へうたん)鯰(なまづ)では通(とほ)りませぬぞや』
187国依別『エエハモ鰈(かれい)ヤガラ腥(なまぐさ)い厄介(やくかい)坊主(ばうず)の自堕落(じだらく)上人(しやうにん)で御座(ござ)いますから、188どうぞ今日(けふ)限(かぎ)りそんな事(こと)を言(い)つて下(くだ)さるな。189女(をんな)のスキ身(み)も刺身(さしみ)もモウ若(わか)い時(とき)から食(く)ひあいて来(き)ました。190夜(よ)も昼(ひる)もレコ貝(がひ)に蛤(はまぐり)だつたものだから、191どうぞ、192カマスにおいて下(くだ)さい。193此(この)事(こと)に付(つい)ては、194イカナゴとも飯蛸(いひだこ)致(いた)す訳(わけ)には参(まゐ)りませぬ。195アハヽヽヽ』
196 松若彦(まつわかひこ)は国依別(くによりわけ)の背中(せなか)を、197後(うしろ)へまはつてポンと叩(たた)き、
198松若彦『コレ国依別(くによりわけ)さま! 又(また)しても、199あなたは、200からかひ病(びやう)が起(おこ)りましたね』
201国依別『カラカギでも、202鯰(なまづ)でもフンゾクラヒでもありませぬよ。203小雲川(こくもがは)で石(いし)の魚(な)を釣(つ)つてフンゾクラヒだと云(い)つて、204高姫(たかひめ)さまに贈(おく)つた事(こと)があります。205随分(ずゐぶん)固(かた)い魚(うを)でした。206其(その)通(とほ)り私(わたし)は今(いま)は鯉(こひ)の欲(よく)が化石(くわせき)して了(しま)ひ、207石地蔵(いしぢざう)の様(やう)な冷酷(れいこく)な人間(にんげん)ですから、208到底(たうてい)此(この)縁談(えんだん)は温(あたた)まりますまい。209鯉(こひ)と云(い)ふ奴(やつ)は水(みづ)の中(なか)に常住(じやうぢゆう)してゐますから、210随分(ずゐぶん)体(からだ)が冷(ひ)えてゐますからね、211アハヽヽヽ』
212松若彦『コレ国依別(くによりわけ)さま、213大国主(おほくにぬし)の神(かみ)さまの妻呼(つまよ)びの歌(うた)を知(し)つてますだらう、214男子(だんし)たる者(もの)はさうなくては到底(たうてい)世(よ)に立(た)つことは出来(でき)ますまい。215情(なさけ)を知(し)らずして、216どうして宣伝使(せんでんし)が完全(くわんぜん)に勤(つと)まりますか。217八千矛(やちほこ)の神(かみ)さまを御覧(ごらん)なさい。218はるばると出雲(いづも)の国(くに)から越(こし)の国(くに)まで、219腰弁当(こしべんたう)でお出(い)でになつたぢやありませぬか。220其(その)時(とき)のお歌(うた)に、
 
221 八千矛(やちほこ)の 神(かみ)の命(みこと)は 八洲国(やしまぐに) 妻求(つまま)ぎかねて
222 遠々(とほとほ)し 越(こし)の国(くに)に 賢(さか)し女(め)を ありと聞(き)かして
223 麗(くは)し女(め)を ありと聞(き)こして さよばひに ありたたし
224 結婚(よきひ)にあり通(かよ)はせ 太刀(たち)が緒(を)も 未(いま)だ解(と)かずて
225 襲(おす)ひをも 未(いま)だ解(と)かねば 乙女(をとめ)の 鳴(な)すや板戸(いたど)を
226 押(お)そぶらひ 吾(わ)が立(た)たせれば 引(ひ)こずらひ 吾(わ)が立(た)たせれば
227 青山(あをやま)に 鵺(ぬえ)は鳴(な)き 野鳥(さぬつどり) 雉子(きぎす)は響(どよ)む
228 庭(には)つ鳥(とり) 鶏(かけ)は鳴(な)く 慨(うれ)たくも 鳴(な)くなる鳥(とり)か
229 此(こ)の鳥(とり)も 打(う)ち悩(や)めこせね いしたふや 天(あま)はせづかひ
230 ことの語(かた)り言(ごと)も こをば
 
231と歌(うた)はしやつて、232越(こし)の国(くに)の沼河姫(ぬながはひめ)様(さま)の板(いた)の戸(と)を、233夜(よる)の夜中(よなか)に押開(おしあ)け這入(はい)らうと遊(あそ)ばす、234沼河姫(ぬながはひめ)さまは這入(はい)られては大変(たいへん)と、235男(をとこ)と女(をんな)が押(お)そぶらひ、236引(ひ)こづらひを永(なが)らく遊(あそ)ばした末(すゑ)、237遂(つひ)に大国主(おほくにぬしの)命(みこと)さまの熱心(ねつしん)なる恋(こひ)に感(かん)じ、238沼河姫(ぬながはひめ)さまは戸(と)の中(なか)から、
 
239 八千矛(やちほこ)の 神(かみ)の命(みこと) 軟(ぬ)え草(ぐさ)の 女(め)にしあれば
240 吾(わ)が心(こころ) 浦渚(うらす)の鳥(とり)ぞ 今(いま)こそは 千鳥(ちどり)にあらめ
241 のちわ 和鳥(などり)にあらむを いのちは な死(し)せ給(たま)ひそ
242 いしたふや 天(あま)はせづかひ
243 ことの語(かた)り言(ごと)も こをば
244 青山(あをやま)に 日(ひ)が隠(かく)らば 烏羽玉(ぬばたま)の 夜(よ)は出(い)でなむ
245 旭(あさひ)の 笑(ゑ)み栄(さか)え来(き)て 栲綱(たくづぬ)の 白(しろ)き腕(ただむき)
246 沫雪(あはゆき)の 弱(わ)かやる胸(むね)を そ叩(だた)き 叩(たた)き拱(まな)がり
247 真玉手(またまで) 玉手(たまで)さしまき 股長(ももなが)に 寝(い)はなさむを
248 あやに 勿(な)恋聞(こひき)こし 八千矛(やちほこ)の 神(かみ)の命(みこと)
249 ことの語(かた)り言(ごと)も こをば
 
250と歌(うた)つて沼河姫(ぬながはひめ)がたうとう降参(まゐ)つて了(しま)ひ、251実(じつ)に神聖(しんせい)なローマンスが行(おこな)はれたぢやありませぬか。252それに何(なん)ぞや、253お前(まへ)さまは、254八千矛(やちほこ)の神(かみ)一名(いちめい)大国主(おほくにぬし)の神(かみ)さまとは反対(はんたい)で沼河姫(ぬながはひめ)様(さま)よりズツと綺麗(きれい)な賢女(さかしめ)麗女(くはしめ)にラバーされて、255それを何(なん)とも思(おも)はず、256すげなくもエツパツパを喰(く)はす考(かんが)へですか。257本当(ほんたう)に人(ひと)の悪(わる)い唐変木(たうへんぼく)だなア……オツトドツコイ、258余(あま)り一心(いつしん)になつて、259ツイ言霊(ことたま)が濁(にご)りました。260どうぞ早(はや)く、
 
261 綾垣(あやがき)の ふはやが下(した)に 虫衾(むしぶすま) 柔(にこ)やが下(した)に
262 栲衾(たくぶすま) 亮(さや)ぐが下(した)に 沫雪(あはゆき)の 弱(わ)かやる胸(むね)を
263 栲綱(たくづぬ)の 白(しろ)き腕(ただむき) そ叩(だた)き 叩(たた)き拱(まな)がり
264 真玉手(またまで) 玉手(たまで)差纏(さしま)き 股長(ももなが)に 寝(い)をし宿(な)せ
265 豊御酒(とよみき) 献(たてまつ)らせ
 
266と云(い)ふやうに御(ご)返事(へんじ)をして下(くだ)さい。267外(ほか)の方(かた)の御(お)使(つかひ)と違(ちが)ひ、268大神(おほかみ)様(さま)の思召(おぼしめし)だから、269これ計(ばか)りは邪(じや)が非(ひ)でも聞(き)いて貰(もら)はなくちや、270松若彦(まつわかひこ)の男(をとこ)が立(た)ちませぬ』
271国依別『大神(おほかみ)様(さま)を始(はじ)め末子姫(すゑこひめ)様(さま)に於(おい)て、272御(ご)異存(いぞん)なければ御(お)世話(せわ)になりませう。273其(その)代(かは)りに古疵(ふるきず)だらけの国依別(くによりわけ)ですから、274何時(なんどき)持病(ぢびやう)が再発(さいはつ)して、275御(お)姫(ひめ)様(さま)に眉気(まゆげ)を逆立(さかだ)てさしたり、276牙(きば)をむかせたり、277死(し)ぬの走(はし)るの、278ひまをくれのと乱痴気(らんちき)騒(さわ)ぎをさすかも知(し)れませぬから、279それが御(ご)承知(しようち)なら、280宜(よろ)しく御(お)取持(とりもち)願(ねが)ひます』
281松若彦『アハヽヽヽ、282面白(おもしろ)い面白(おもしろ)い、283私(わたし)もそれがズンと気(き)に入(い)つた……国依別(くによりわけ)さま、284いよいよ御(ご)結婚(けつこん)が整(ととの)へば、285あなたはウヅの国(くに)の司(つかさ)、286私(わたし)は御(ご)家来(けらい)で御座(ござ)いますから、287どうぞ末永(すえなが)くお召(めし)使(つか)ひ下(くだ)さいませ。288今迄(いままで)の御(ご)無礼(ぶれい)な申(まを)し様(やう)、289只今(ただいま)限(かぎ)り御(お)忘(わす)れの程(ほど)を願(ねが)ひます』
290国依別『サア忽(たちま)ちさうなるから、291窮屈(きうくつ)でたまらぬ。292それだから独身(どくしん)生活(せいくわつ)がしたいのだよ。293あんたはん(阿弥陀(あみだ)はん)、294ぶつたはん(仏陀(ぶつた)はん)、295大将(たいしやう)さんと皆(みな)の連中(れんぢう)にピヨコピヨコ頭(あたま)を下(さ)げられ、296敬遠(けいゑん)主義(しゆぎ)を取(と)られるやうになつて了(しま)つちや、297根(ね)つから世(よ)の中(なか)が無味(むみ)乾燥(かんさう)で、298面白(おもしろ)くも何(なん)ともなくなつて了(しま)ふ。299あゝ折角(せつかく)自由(じいう)の世界(せかい)へ解放(かいはう)されたと思(おも)つたら、300又(また)もや窮屈(きうくつ)な、301お慈悲(じひ)の獄屋(ごくや)に繋(つな)がれねばならぬのかいなア。302エヽこんな事(こと)なら紅井姫(くれなゐひめ)でも伴(つ)らつて来(き)て、303自分(じぶん)の女房(にようばう)のやうに見(み)せて居(を)つたら、304こんな問題(もんだい)は起(おこ)らなかつただらうに、305エヽ有難(ありがた)迷惑(めいわく)とは此(この)事(こと)だ。306女(をんな)が男(をとこ)にお膳(ぜん)を末子姫(すゑこひめ)と来(き)てゐるのだから、307さう無下(むげ)に無愛想(ぶあいさう)に捨子姫(すてこひめ)する訳(わけ)にも行(ゆ)こまい、308アハヽヽヽ』
309松若彦『なるべく、310お気楽(きらく)な様(やう)に持(も)ちかけますから、311どうぞ取越(とりこし)苦労(ぐらう)をなさらずに、312決心(けつしん)をして下(くだ)さいませ』
313国依別『ハイ、314是非(ぜひ)に及(およ)びませぬ。315大神(おほかみ)の御(お)言葉(ことば)、316あなたの御(お)取持(とりもち)、317謹(つつし)んで御(お)受(う)け致(いた)します』
318とキツパリ答(こた)ふれば、319松若彦(まつわかひこ)はニコニコしながら軽(かる)く一礼(いちれい)し、320急(いそ)ぎ奥殿(おくでん)指(さ)して進(すす)み入(い)る。
321(大正一一・八・二四 旧七・二 松村真澄録)
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【メールアドレス】
合言葉「みろく」を入力して下さい→