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霊界物語
海洋万里(第25~36巻)
第32巻(未の巻)
序文
総説
第1篇 森林の都
第1章 万物同言
第2章 猛獣会議
第3章 兎の言霊
第4章 鰐の言霊
第5章 琉球の光
第6章 獅子粉塵
第2篇 北の森林
第7章 試金玉
第8章 三人娘
第9章 岩窟女
第10章 暗黒殿
第11章 人の裘
第12章 鰐の橋
第13章 平等愛
第14章 山上の祝
第3篇 瑞雲靉靆
第15章 万歳楽
第16章 回顧の歌
第17章 悔悟の歌
第18章 竜国別
第19章 軽石車
第20章 瑞の言霊
第21章 奉答歌
第4篇 天祥地瑞
第22章 橋架
第23章 老婆心切
第24章 冷氷
余白歌
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(B)
(N)
冷氷 >>>
第二三章
老婆
(
らうば
)
心切
(
しんせつ
)
〔九一四〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第32巻 海洋万里 未の巻
篇:
第4篇 天祥地瑞
よみ(新仮名遣い):
てんしょうちずい
章:
第23章 老婆心切
よみ(新仮名遣い):
ろうばしんせつ
通し章番号:
914
口述日:
1922(大正11)年08月24日(旧07月02日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年10月15日
概要:
舞台:
ウヅの館
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
国依別と末子姫の縁談の噂は、たちまち館の内外に喧伝された。言依別命は結婚の準備に独り心をはたらかせていた。そこへすっとふすまを開けて高姫が入ってきた。
高姫は、こともあろうに瑞の御霊の大神の御娘子を国依別とめあわせるなど飛んでもないことだと、この結婚話に反対するべく言依別命を説得に来たのであった。
言依別命は用事があるからと、逃げ向上を述べて高姫を避ける。高姫は捨て台詞でその場を離れると、国依別本人のところへやってきた。
国依別は、独身生活でのんびりできるのは今のうちだと、素っ裸で畳の上にあおむけになっていた。そこへ入ってきた高姫は目を丸くして国依別を怒鳴りつけた。
国依別は単衣をひっかぶって高姫と問答を始めたが、国依別は相変わらずの茶目ぶりで高姫の説教を煙に巻いた。高姫は馬鹿にされ、怒ってあわただしくこの場を去って行った。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-06-10 17:19:28
OBC :
rm3223
愛善世界社版:
273頁
八幡書店版:
第6輯 241頁
修補版:
校定版:
278頁
普及版:
101頁
初版:
ページ備考:
001
国依別
(
くによりわけ
)
、
002
末子姫
(
すゑこひめ
)
の
結婚
(
けつこん
)
の
噂
(
うはさ
)
は、
003
忽
(
たちま
)
ち
館
(
やかた
)
の
内外
(
ないぐわい
)
に
雷
(
らい
)
の
如
(
ごと
)
く
駄賃
(
だちん
)
取
(
と
)
らずの
飛脚
(
ひきやく
)
の
口
(
くち
)
から
喧伝
(
けんでん
)
されて
了
(
しま
)
つた。
004
之
(
これ
)
を
聞
(
き
)
いた
高姫
(
たかひめ
)
はムツクと
立上
(
たちあが
)
り、
005
言依別
(
ことよりわけの
)
命
(
みこと
)
の
居間
(
ゐま
)
を
訪
(
たづ
)
ねた。
006
言依別
(
ことよりわけの
)
命
(
みこと
)
は
結婚
(
けつこん
)
の
準備
(
じゆんび
)
に
就
(
つ
)
いて、
007
いろいろと
独
(
ひと
)
り
心
(
こころ
)
を
働
(
はたら
)
かせて
居
(
ゐ
)
た
所
(
ところ
)
である。
008
高姫
(
たかひめ
)
は
襖
(
ふすま
)
をソツと
引開
(
ひきあ
)
け、
009
叮嚀
(
ていねい
)
に
頭
(
あたま
)
を
下
(
さ
)
げ、
010
高姫
『
言依別
(
ことよりわけ
)
様
(
さま
)
、
011
御
(
お
)
邪魔
(
じやま
)
を
致
(
いた
)
しますが、
012
一寸
(
ちよつと
)
貴方
(
あなた
)
に
御
(
ご
)
相談
(
さうだん
)
申
(
まを
)
したきこと、
013
否
(
いや
)
御
(
お
)
尋
(
たづ
)
ね
申
(
まを
)
したき
事
(
こと
)
が
御座
(
ござ
)
いまして
伺
(
うかが
)
ひました。
014
お
差支
(
さしつかへ
)
は
御座
(
ござ
)
いますまいかなア』
015
言依別
『ハイ、
016
別
(
べつ
)
に
大
(
たい
)
した
用
(
よう
)
も
御座
(
ござ
)
いませぬ。
017
どうぞ
御
(
お
)
這入
(
はい
)
り
下
(
くだ
)
さいませ』
018
と
気乗
(
きの
)
りのせぬ
様
(
やう
)
な
言葉
(
ことば
)
附
(
つ
)
きである。
019
高姫
(
たかひめ
)
はツカツカと
言依別
(
ことよりわけ
)
の
前
(
まへ
)
に
進
(
すす
)
み、
020
行儀
(
ぎやうぎ
)
よく
膝
(
ひざ
)
を
折
(
を
)
つてすわり、
021
両手
(
りやうて
)
を
膝
(
ひざ
)
の
上
(
うへ
)
に
乗
(
の
)
せ、
022
極
(
きは
)
めて
謹厳
(
きんげん
)
な
態度
(
たいど
)
で、
023
高姫
『
言依別
(
ことよりわけ
)
様
(
さま
)
、
024
承
(
うけたま
)
はりますれば、
025
末子姫
(
すゑこひめ
)
様
(
さま
)
に
対
(
たい
)
し
国依別
(
くによりわけ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
が
養子婿
(
やうしむこ
)
になられるにきまつたとか
云
(
い
)
ふ
専
(
もつぱ
)
らの
噂
(
うはさ
)
ですが、
026
それは
実際
(
じつさい
)
の
御
(
お
)
話
(
はなし
)
で
御座
(
ござ
)
いますか?』
027
言依別
『ハイ、
028
実際
(
じつさい
)
で
御座
(
ござ
)
います。
029
私
(
わたくし
)
と
松若彦
(
まつわかひこ
)
両人
(
りやうにん
)
の
肝煎
(
きもいり
)
で
漸
(
やうや
)
く
婚約
(
こんやく
)
が
成立
(
せいりつ
)
致
(
いた
)
しました』
030
高姫
『それは
又
(
また
)
怪
(
け
)
しからぬ
事
(
こと
)
ぢや
御座
(
ござ
)
いませぬか。
031
三千
(
さんぜん
)
世界
(
せかい
)
の
救
(
すく
)
ひ
主
(
ぬし
)
、
032
水晶玉
(
すいしやうだま
)
の
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのをの
)
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
娘子
(
むすめご
)
、
033
生粋
(
きつすい
)
の
大和
(
やまと
)
魂
(
だましひ
)
の
末子姫
(
すゑこひめ
)
様
(
さま
)
に
娶
(
めあ
)
はすに、
034
人
(
ひと
)
もあらうに、
035
国依別
(
くによりわけ
)
の
様
(
やう
)
な
悪戯者
(
いたづらもの
)
を
御
(
ご
)
周旋
(
しうせん
)
なさるとは、
036
余
(
あま
)
りぢや
御座
(
ござ
)
いませぬか。
037
能
(
よ
)
う
考
(
かんが
)
へて
御覧
(
ごらん
)
なさい、
038
女
(
をんな
)
だましの
御家
(
ごけ
)
倒
(
たふ
)
し、
039
家潰
(
いへつぶ
)
しの
天則
(
てんそく
)
違反者
(
ゐはんしや
)
、
040
瓢軽者
(
へうきんもの
)
、
041
揶揄
(
からかひ
)
上手
(
じやうず
)
の、
042
至極
(
しごく
)
粗末
(
そまつ
)
に
出来上
(
できあが
)
つた
男
(
をとこ
)
……
丸
(
まる
)
で
鷺
(
さぎ
)
と
烏
(
からす
)
の
夫婦
(
ふうふ
)
ぢやありませぬか。
043
其
(
その
)
様
(
やう
)
な
汚
(
けが
)
れた
身魂
(
みたま
)
を
水晶
(
すゐしやう
)
の
生
(
うぶ
)
の
末子姫
(
すゑこひめ
)
様
(
さま
)
に
御
(
お
)
世話
(
せわ
)
をするなんて、
044
折角
(
せつかく
)
の
結構
(
けつこう
)
な
身魂
(
みたま
)
を
又
(
また
)
紊
(
みだ
)
して
了
(
しま
)
ふぢやありませぬか。
045
さうすれば、
046
折角
(
せつかく
)
ウヅの
国
(
くに
)
が
五六七
(
みろく
)
の
世
(
よ
)
になりかけてゐるのに、
047
再
(
ふたた
)
び
泥海
(
どろうみ
)
となり、
048
上
(
あ
)
げも
下
(
おろ
)
しもならぬやうなことが
出来
(
しゆつたい
)
致
(
いた
)
します。
049
私
(
わたし
)
は
此
(
この
)
縁談
(
えんだん
)
ばかりは
仮令
(
たとへ
)
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
が
何
(
なん
)
と
仰
(
おほ
)
せられようとも、
050
神界
(
しんかい
)
の
為
(
ため
)
御
(
お
)
道
(
みち
)
の
為
(
ため
)
御
(
お
)
家
(
いへ
)
の
為
(
ため
)
に、
051
どこ
迄
(
まで
)
も
反対
(
はんたい
)
せなくては
置
(
お
)
きませぬぞえ。
052
まだ
幸
(
さいは
)
ひ
結婚
(
けつこん
)
の
式
(
しき
)
も
挙
(
あ
)
げてゐらつしやらないのだから、
053
今
(
いま
)
の
間
(
うち
)
ならば
如何
(
どう
)
でもなります。
054
縁談
(
えんだん
)
と
云
(
い
)
ふものは、
055
飯
(
まま
)
たく
間
(
ま
)
にも
冷
(
ひえ
)
ると
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
だ。
056
此
(
この
)
話
(
はなし
)
を
取消
(
とりけ
)
した
所
(
ところ
)
で、
057
今
(
いま
)
ならば
何
(
なん
)
のイサクサも
起
(
おこ
)
りますまい。
058
国依別
(
くによりわけ
)
が
若
(
も
)
しもゴテゴテ
云
(
い
)
ふならば、
059
及
(
およ
)
ばずながら
高姫
(
たかひめ
)
が
物
(
もの
)
の
道理
(
だうり
)
を
説
(
と
)
き
諭
(
さと
)
し、
060
納得
(
なつとく
)
させて
見
(
み
)
せませう。
061
又
(
また
)
末子姫
(
すゑこひめ
)
様
(
さま
)
が
如何
(
どう
)
してもお
聞
(
き
)
きにならなければ、
062
高姫
(
たかひめ
)
の
老婆心
(
らうばしん
)
と
言
(
い
)
はれるか
知
(
し
)
りませぬが、
063
此
(
この
)
道
(
みち
)
にかけたら
千軍
(
せんぐん
)
万馬
(
ばんば
)
の
功
(
こう
)
を
経
(
へ
)
た
高姫
(
たかひめ
)
、
064
三寸
(
さんずん
)
の
舌鋒
(
ぜつぽう
)
を
以
(
もつ
)
て、
065
どちらも
得心
(
とくしん
)
の
行
(
い
)
く
様
(
やう
)
になだめすかし、
066
此
(
この
)
結婚
(
けつこん
)
問題
(
もんだい
)
を
蛇尾
(
じやみ
)
にして
見
(
み
)
せませう。
067
……
言依別
(
ことよりわけ
)
さま、
068
此
(
この
)
事
(
こと
)
はどうぞ
私
(
わたし
)
に
一任
(
いちにん
)
して
下
(
くだ
)
さいませ。
069
キツと
成功
(
せいこう
)
させて
見
(
み
)
せますから……』
070
言依別
『
一旦
(
いつたん
)
男子
(
だんし
)
と
男子
(
だんし
)
が
契約
(
けいやく
)
した
以上
(
いじやう
)
は、
071
今
(
いま
)
となつて
動
(
うご
)
かすことは
出来
(
でき
)
ませぬ。
072
私
(
わたくし
)
も
男
(
をとこ
)
です。
073
一旦
(
いつたん
)
言
(
い
)
ひ
出
(
だ
)
した
事
(
こと
)
は
後
(
あと
)
へは
引
(
ひ
)
きませぬ。
074
第一
(
だいいち
)
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
所望
(
しよまう
)
ですから』
075
高姫
『
仮令
(
たとへ
)
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
所望
(
しよまう
)
であらうとも、
076
なぜお
前
(
まへ
)
さまは
御
(
ご
)
忠言
(
ちうげん
)
申上
(
まをしあ
)
げないのだ。
077
お
髭
(
ひげ
)
の
塵
(
ちり
)
を
払
(
はら
)
つて
自分
(
じぶん
)
の
地位
(
ちゐ
)
を
安全
(
あんぜん
)
に
守
(
まも
)
らうと
云
(
い
)
ふ
御
(
お
)
考
(
かんが
)
へだらう。
078
良薬
(
りやうやく
)
は
口
(
くち
)
に
苦
(
にが
)
し、
079
諫言
(
かんげん
)
は
耳
(
みみ
)
に
逆
(
さか
)
らふとやら、
080
至誠
(
しせい
)
を
以
(
もつ
)
て
諫
(
いさ
)
め
奉
(
まつ
)
り、
081
もし
聞
(
き
)
かなければ、
082
潔
(
いさぎよ
)
く
死
(
し
)
を
以
(
もつ
)
て
決
(
けつ
)
すると
云
(
い
)
ふ、
083
お
前
(
まへ
)
さまに
誠意
(
せいい
)
がありさへすれば、
084
こんな
不都合
(
ふつがふ
)
な
話
(
はなし
)
は
持上
(
もちあ
)
がらない
筈
(
はず
)
だ。
085
あんな
者
(
もの
)
を
末子姫
(
すゑこひめ
)
様
(
さま
)
の
夫
(
をつと
)
にしようものなら、
086
それこそ
三五教
(
あななひけう
)
の
権威
(
けんゐ
)
は
忽
(
たちま
)
ち
地
(
ち
)
に
落
(
お
)
ち、
087
末子姫
(
すゑこひめ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
信用
(
しんよう
)
はサツパリ、
088
ゼロとなつて
了
(
しま
)
ひますよ』
089
言依別
『あんな
者
(
もの
)
が
斯
(
こ
)
んな
者
(
もの
)
になつたと
云
(
い
)
ふ
仕組
(
しぐみ
)
でせうかい、
090
アハヽヽヽ』
091
高姫
『コレ
笑
(
わら
)
ひごつちやありませぬぜ。
092
千騎
(
せんき
)
一騎
(
いつき
)
の
国家
(
こくか
)
興亡
(
こうばう
)
に
関
(
くわん
)
する
此
(
この
)
場合
(
ばあひ
)
、
093
気楽
(
きらく
)
さうに
面
(
つら
)
をあげてアハヽヽヽとはソリヤ
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ふ
心得
(
こころえ
)
違
(
ちが
)
ひな
事
(
こと
)
ですか。
094
それだから
年
(
とし
)
の
若
(
わか
)
い
者
(
もの
)
は
困
(
こま
)
ると
云
(
い
)
ふのだ。
095
何程
(
なにほど
)
憎
(
にく
)
まれても、
096
此
(
この
)
高姫
(
たかひめ
)
が
構
(
かま
)
はねば
三五教
(
あななひけう
)
はサツパリ
駄目
(
だめ
)
だ。
097
アーア、
098
気
(
き
)
のもめる
事
(
こと
)
だ。
099
肩
(
かた
)
も
腕
(
かひな
)
もメキメキ
云
(
い
)
うて
来
(
き
)
たわいのう』
100
言依別
『
折角
(
せつかく
)
の
御
(
ご
)
親切
(
しんせつ
)
な
御
(
ご
)
注意
(
ちうい
)
、
101
実
(
じつ
)
に
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います。
102
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
此
(
この
)
問題
(
もんだい
)
に
就
(
つ
)
いては、
103
一分
(
いちぶ
)
たりとて
動
(
うご
)
かす
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ませぬ。
104
……
高姫
(
たかひめ
)
様
(
さま
)
、
105
どうぞ
貴女
(
あなた
)
もゆつくり
御
(
お
)
考
(
かんが
)
へ
下
(
くだ
)
さいませ。
106
私
(
わたくし
)
は
少
(
すこ
)
し
取急
(
とりいそ
)
ぐ
用事
(
ようじ
)
が
御座
(
ござ
)
いますから、
107
失礼
(
しつれい
)
を
致
(
いた
)
します』
108
高姫
『チト
煙
(
けぶ
)
たうなつて
来
(
き
)
ましたかなア。
109
ドレドレ
若
(
わか
)
い
方
(
かた
)
のお
側
(
そば
)
へ、
110
歯抜婆
(
はぬけばば
)
アが
出
(
で
)
て
来
(
き
)
て
熱
(
ねつ
)
を
吹
(
ふ
)
き、
111
煙
(
けぶ
)
たがられて
居
(
ゐ
)
るよりも、
112
是
(
これ
)
から
国依別
(
くによりわけ
)
の
居間
(
ゐま
)
へ
行
(
い
)
つて、
113
一
(
ひと
)
つドンナ
意見
(
いけん
)
だか
叩
(
たた
)
いて
来
(
き
)
ませう。
114
将
(
しやう
)
を
射
(
い
)
むと
欲
(
ほつ
)
する
者
(
もの
)
は
先
(
ま
)
づ
其
(
その
)
馬
(
うま
)
を
射
(
い
)
よだ。
115
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
言依別
(
ことよりわけ
)
さまは、
116
年
(
とし
)
が
若
(
わか
)
いから、
117
こんな
事
(
こと
)
の
談判
(
だんぱん
)
は
厭
(
いや
)
だらう。
118
それも
無理
(
むり
)
もない、
119
憎
(
にく
)
まれ
序
(
ついで
)
に
高姫
(
たかひめ
)
が、
120
お
道
(
みち
)
の
為
(
ため
)
に、
121
国依別
(
くによりわけ
)
の
改心
(
かいしん
)
する
所
(
ところ
)
まで、
122
居
(
ゐ
)
すわり
談判
(
だんぱん
)
をやつて
来
(
き
)
ませう』
123
と
呟
(
つぶや
)
きながら、
124
イソイソと
此
(
この
)
場
(
ば
)
を
立
(
た
)
つて
出
(
い
)
でて
行
(
ゆ
)
く。
125
国依別
(
くによりわけ
)
は
高姫
(
たかひめ
)
の
意見
(
いけん
)
に
来
(
く
)
るとは
夢
(
ゆめ
)
にも
知
(
し
)
らず、
126
国依別
『あゝ
是
(
これ
)
から
俺
(
おれ
)
も
窮屈
(
きうくつ
)
な
生活
(
せいくわつ
)
に
入
(
はい
)
らねばならぬか。
127
今
(
いま
)
の
間
(
うち
)
に
気楽
(
きらく
)
のしたんのうをしておかうかい』
128
と
窓
(
まど
)
の
戸
(
と
)
をガラリとあけ、
129
赤裸
(
まつぱだか
)
になつて、
130
仰向
(
あふむ
)
けになり、
131
手足
(
てあし
)
をピンピンさせて、
132
座敷
(
ざしき
)
運動
(
うんどう
)
に
余念
(
よねん
)
なかつた。
133
そこへ
高姫
(
たかひめ
)
はあわただしくガラリと
戸
(
と
)
を
開
(
あ
)
け
入
(
い
)
り
来
(
きた
)
り、
134
此
(
この
)
態
(
さま
)
を
見
(
み
)
て
目
(
め
)
を
丸
(
まる
)
くし、
135
口
(
くち
)
を
尖
(
とが
)
らせ、
136
高姫
『マアマアマア
国
(
くに
)
さまかいな。
137
其
(
その
)
態
(
ざま
)
は
一体
(
いつたい
)
何
(
なん
)
の
事
(
こと
)
だい!
誰
(
たれ
)
も
知
(
し
)
らぬかと
思
(
おも
)
つて
其
(
その
)
態
(
ざま
)
は
何
(
なん
)
ぢやいな。
138
ヤツパリ
人
(
ひと
)
の
居
(
ゐ
)
る
所
(
ところ
)
では
鹿爪
(
しかつめ
)
らしうしてゐても、
139
鍍金
(
めつき
)
が
剥
(
は
)
げて
三
(
み
)
つ
児
(
ご
)
の
癖
(
くせ
)
は
百
(
ひやく
)
迄
(
まで
)
とやら、
140
お
前
(
まへ
)
は
若
(
わか
)
い
時
(
とき
)
から、
141
そんな
不規律
(
ふきりつ
)
な
生活
(
せいくわつ
)
をして
来
(
き
)
たのだらう。
142
エヽ
困
(
こま
)
つたものだ。
143
時々
(
じじ
)
刻々
(
こくこく
)
に
愛想
(
あいさう
)
がつきて
来
(
き
)
た。
144
……コレ
国依別
(
くによりわけ
)
どの、
145
高姫
(
たかひめ
)
ですよ、
146
起
(
お
)
きて
貰
(
もら
)
ひませう』
147
国依別
『
高姫
(
たかひめ
)
さま、
148
一寸
(
ちよつと
)
ここを
写真
(
しやしん
)
にうつして、
149
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
や
末子姫
(
すゑこひめ
)
様
(
さま
)
の
御前
(
ごぜん
)
に
御覧
(
ごらん
)
に
入
(
い
)
れて
下
(
くだ
)
さいな。
150
国依別
(
くによりわけ
)
も
実
(
じつ
)
にトチ
面棒
(
めんぼう
)
をふつてゐますワイ』
151
高姫
『エヽ
又
(
また
)
しても、
152
四
(
よ
)
ツ
足
(
あし
)
の
正体
(
しやうたい
)
をあらはし、
153
其
(
その
)
態
(
ざま
)
は
何
(
なん
)
の
事
(
こと
)
だい。
154
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
や
末子姫
(
すゑこひめ
)
様
(
さま
)
に
写真
(
しやしん
)
にとつて
見
(
み
)
せてくれなんて、
155
ヘン、
156
自惚
(
うぬぼれ
)
にも
程
(
ほど
)
がある。
157
誰
(
たれ
)
だつてそんなとこを
見
(
み
)
ようものなら、
158
三
(
さん
)
年
(
ねん
)
の
恋
(
こひ
)
が
一度
(
いちど
)
に
醒
(
さ
)
めますぞや。
159
或処
(
あるところ
)
に
若
(
わか
)
い
娘
(
むすめ
)
が
綺麗
(
きれい
)
な
若
(
わか
)
い
男
(
をとこ
)
を
恋慕
(
こひした
)
ひ、
160
よい
仲
(
なか
)
になつて
居
(
を
)
つたが、
161
其
(
その
)
男
(
をとこ
)
が
女
(
をんな
)
の
前
(
まへ
)
で
尻
(
しり
)
をまくり、
162
庇
(
へ
)
を
一
(
ひと
)
つプンと
放
(
ひ
)
つたが
最後
(
さいご
)
、
163
其
(
その
)
女
(
をんな
)
はそれきり、
164
恋
(
こひ
)
しい
男
(
をとこ
)
が
見
(
み
)
るも
厭
(
いや
)
になつて
了
(
しま
)
うた
例
(
ため
)
しがありますぞえ。
165
それにそんな
態
(
ざま
)
を
末子姫
(
すゑこひめ
)
様
(
さま
)
に
御覧
(
ごらん
)
に
入
(
い
)
れてくれとは
余
(
あま
)
りぢやないか。
166
色男
(
いろをとこ
)
気取
(
きどり
)
で
結構
(
けつこう
)
な
結婚
(
けつこん
)
を
申
(
まを
)
し
込
(
こ
)
まれ、
167
余
(
あま
)
り
嬉
(
うれ
)
しいので
逆上
(
ぎやくじやう
)
して
了
(
しま
)
ひ、
168
赤裸
(
まつぱだか
)
になつて、
169
一角
(
いつかど
)
よい
姿
(
すがた
)
と
思
(
おも
)
ひ……
此
(
この
)
姿
(
すがた
)
を
恋女
(
こひをんな
)
に
見
(
み
)
せ……とはよい
加減
(
かげん
)
に
呆
(
ほう
)
けておきなさい。
170
エヽ
見
(
み
)
つともない、
171
早
(
はや
)
く
着物
(
きもの
)
を
着
(
き
)
なさらぬか!』
172
国依別
『
何分
(
なにぶん
)
お
門
(
かど
)
が
広
(
ひろ
)
いものだから、
173
こんな
風
(
ふう
)
でもして
撃退策
(
げきたいさく
)
でも
構
(
かう
)
じなけりや、
174
やり
切
(
き
)
れませぬワイ。
175
ア、
176
あちらからも
此方
(
こちら
)
からも、
177
目
(
め
)
ひき
袖
(
そで
)
ひき
連中
(
れんぢう
)
が
沢山
(
たくさん
)
で、
178
国依別
(
くによりわけ
)
も
実
(
じつ
)
に
迷惑
(
めいわく
)
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
るぞよ。
179
男
(
をとこ
)
は
裸百貫
(
はだかひやくくわん
)
と
申
(
まを
)
して、
180
飾
(
かざ
)
りのないのが
値打
(
ねうち
)
であるぞよ。
181
元
(
もと
)
の
生
(
うま
)
れ
赤児
(
あかご
)
になりて
神
(
かみ
)
の
御用
(
ごよう
)
を
致
(
いた
)
して
下
(
くだ
)
されよ。
182
生
(
うま
)
れ
赤児
(
あかご
)
と
申
(
もう
)
せば、
183
みんな
丸裸
(
まるはだか
)
ばかりであるぞよ。
184
アツハヽヽヽ』
185
高姫
『コレ
国
(
くに
)
どの、
186
お
前
(
まへ
)
は
一国
(
いつこく
)
の
大将
(
たいしやう
)
にでもならうと
云
(
い
)
ふ
千騎
(
せんき
)
一騎
(
いつき
)
の
大峠
(
おほたうげ
)
に
差掛
(
さしかか
)
つて
居
(
を
)
り
乍
(
なが
)
ら、
187
チツと
謹
(
つつし
)
んだら
如何
(
どう
)
だいなア。
188
油断
(
ゆだん
)
を
致
(
いた
)
すと、
189
坂
(
さか
)
に
車
(
くるま
)
を
押
(
お
)
すが
如
(
ごと
)
く
後
(
あと
)
へ
戻
(
もど
)
りますぞえ』
190
国依別
『あとへ
戻
(
もど
)
るやうに
逆
(
さか
)
になつて、
191
油断
(
ゆだん
)
でなうて
冗談
(
じようだん
)
をして
逆様車
(
さかさまぐるま
)
を
押
(
お
)
してゐるのだ、
192
アツハヽヽヽ。
193
アーア、
194
早
(
はや
)
う
此処
(
ここ
)
を
誰
(
たれ
)
か、
195
一寸
(
ちよつと
)
覗
(
のぞ
)
いて
愛想
(
あいさう
)
をつかして
呉
(
く
)
れないかな。
196
高姫
(
たかひめ
)
さまに
愛想
(
あいさう
)
つかされても、
197
根
(
ね
)
つから
目的
(
もくてき
)
が
達
(
たつ
)
しませぬワイ』
198
高姫
『コレ
国
(
くに
)
どの』
199
と
声
(
こゑ
)
を
高
(
たか
)
め、
200
国依別
(
くによりわけ
)
の
太腿
(
ふともも
)
を三つ四つ
平手
(
ひらて
)
でピシヤピシヤと
擲
(
なぐ
)
りつける。
201
国依別
(
くによりわけ
)
は
此
(
この
)
機
(
はず
)
みに、
202
ガバとはねおき、
203
慌
(
あわただ
)
しく
窓際
(
まどぎは
)
にかけておいた
単衣
(
ひとへ
)
をひつ
被
(
かぶ
)
り、
204
三尺帯
(
さんしやくおび
)
を
無雑作
(
むざふさ
)
にキリキリとまきつけ、
205
ドスンと
高姫
(
たかひめ
)
の
前
(
まへ
)
にすわり
込
(
こ
)
んだ。
206
国依別
『
高姫
(
たかひめ
)
様
(
さま
)
、
207
何
(
なん
)
の
御用
(
ごよう
)
で
御座
(
ござ
)
いますかな。
208
どうぞ
実際
(
じつさい
)
の
事
(
こと
)
を
仰有
(
おつしや
)
つて
下
(
くだ
)
さい』
209
高姫
『お
楽
(
たのし
)
みでせうな!
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
は
半日
(
はんにち
)
の
日
(
ひ
)
も
百
(
ひやく
)
日
(
にち
)
も
経
(
た
)
つやうな
気
(
き
)
がするでせう。
210
イヤもう
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
御
(
お
)
察
(
さつ
)
し
申
(
まを
)
しますワイ。
211
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら、
212
月
(
つき
)
にも
盈
(
み
)
つる
虧
(
か
)
くるがあり、
213
村雲
(
むらくも
)
のかくすこともあり、
214
綺麗
(
きれい
)
な
花
(
はな
)
には
虫
(
むし
)
がつき、
215
嵐
(
あらし
)
が
夜
(
よ
)
の
間
(
あひだ
)
に
吹
(
ふ
)
いて
来
(
き
)
て、
216
無残
(
むざん
)
にも
散
(
ち
)
らすことがありますぞや。
217
モウ
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
此方
(
こちら
)
の
者
(
もの
)
だと、
218
笑壺
(
ゑつぼ
)
に
入
(
い
)
つて
居
(
ゐ
)
ると、
219
夜
(
よる
)
の
間
(
ま
)
に
天候
(
てんこう
)
忽
(
たちま
)
ち
激変
(
げきへん
)
し、
220
女
(
をんな
)
の
方
(
はう
)
から
秋
(
あき
)
の
空
(
そら
)
、
221
凩
(
こがらし
)
の
冷
(
つめ
)
たい
風
(
かぜ
)
が
吹
(
ふ
)
いて
来
(
こ
)
ぬとも
限
(
かぎ
)
りませぬぞや。
222
さうなつてから、
223
梟鳥
(
ふくろどり
)
が
夜食
(
やしよく
)
に
外
(
はづ
)
れたやうな、
224
約
(
つま
)
らぬ
顔
(
かほ
)
を
致
(
いた
)
しても、
225
何程
(
なにほど
)
アフンと
致
(
いた
)
しても、
226
後
(
あと
)
の
祭
(
まつ
)
りで、
227
取返
(
とりかへ
)
しは
出来
(
でき
)
ませぬぞや。
228
それよりも
男
(
をとこ
)
らしく
今
(
いま
)
の
間
(
うち
)
に、
229
花
(
はな
)
の
散
(
ち
)
らされぬ
間
(
うち
)
に、
230
お
前
(
まへ
)
さまの
方
(
はう
)
から、
231
キレイサツパリと
縁談
(
えんだん
)
を
御
(
お
)
断
(
ことわ
)
りなさい。
232
国依別
(
くによりわけ
)
どののやうな、
233
……
言
(
い
)
ふとすまぬが……ガンガラと
水晶
(
すゐしやう
)
の
生粋
(
きつすい
)
のお
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
と
夫婦
(
ふうふ
)
になつても、
234
末子姫
(
すゑこひめ
)
が
遂
(
と
)
げられますまい。
235
悪
(
わる
)
い
事
(
こと
)
は
云
(
い
)
ひませぬぞえ。
236
今
(
いま
)
の
間
(
うち
)
に
男
(
をとこ
)
らしう
破談
(
はだん
)
をなさい。
237
さうしたら
天晴
(
あつぱ
)
れ
国依別
(
くによりわけ
)
の
男前
(
をとこまへ
)
が
上
(
あが
)
りますぞや。
238
此
(
この
)
広
(
ひろ
)
いウヅの
国
(
くに
)
の
第一
(
だいいち
)
美人
(
びじん
)
で、
239
而
(
しか
)
も
評判
(
ひやうばん
)
のよい
御
(
お
)
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
を、
240
国依別
(
くによりわけ
)
が
一
(
ひと
)
つポンと
肱鉄
(
ひぢてつ
)
をかましたと
云
(
い
)
ふことが
世間
(
せけん
)
に
拡
(
ひろ
)
がつて
見
(
み
)
なさい。
241
それこそどれ
丈
(
だけ
)
お
前
(
まへ
)
さまの
威徳
(
ゐとく
)
が
上
(
あが
)
るか
知
(
し
)
れたものぢやない。
242
さうして
牛
(
うし
)
は
牛
(
うし
)
づれ
馬
(
うま
)
は
馬連
(
うまづ
)
れと
云
(
い
)
つて、
243
似合
(
にあ
)
うた
女房
(
にようばう
)
を
貰
(
もら
)
ひ、
244
誰
(
たれ
)
憚
(
はばか
)
らず
天下
(
てんか
)
を
横行
(
わうかう
)
濶歩
(
くわつぽ
)
する
方
(
はう
)
が、
245
窮屈
(
きうくつ
)
な
籠
(
かご
)
の
鳥
(
とり
)
の
様
(
やう
)
な
目
(
め
)
に
遇
(
あ
)
ひ、
246
一人
(
ひとり
)
の
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
に
忠勤
(
ちうきん
)
振
(
ぶ
)
りを
発揮
(
はつき
)
するよりも
何程
(
なにほど
)
徳
(
とく
)
か
分
(
わか
)
りませぬぞえ。
247
お
前
(
まへ
)
さまが
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
の
夫
(
をつと
)
になり、
248
天下
(
てんか
)
の
権利
(
けんり
)
を
握
(
にぎ
)
るやうな
事
(
こと
)
があつたら、
249
それこそ
天地
(
てんち
)
がひつくりかへりますぞや、
250
いかな
高姫
(
たかひめ
)
も
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御用
(
ごよう
)
はやめねばなりませぬワイ。
251
かうズケズケと
私
(
わたし
)
が
云
(
い
)
ふので、
252
お
前
(
まへ
)
さまは
御
(
お
)
気
(
き
)
に
入
(
い
)
らぬだらうが、
253
チツとは
私
(
わたし
)
の
言
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
も、
254
聞
(
き
)
きなさつたがよからう。
255
随分
(
ずゐぶん
)
お
前
(
まへ
)
さまもいたづらぢやないか。
256
野天狗
(
のてんぐ
)
か
何
(
なに
)
か
知
(
し
)
らぬが、
257
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
の
玉
(
たま
)
や
其
(
その
)
他
(
ほか
)
二
(
ふた
)
つの
玉
(
たま
)
は、
258
近江
(
あふみ
)
の
国
(
くに
)
の
竹生島
(
ちくぶじま
)
に
隠
(
かく
)
してあるなどと、
259
大
(
だい
)
それた
嘘
(
うそ
)
を
言
(
い
)
つて、
260
はるばると
年
(
とし
)
を
老
(
と
)
つた
吾々
(
われわれ
)
をチヨロまかすと
云
(
い
)
ふ
腕前
(
うでまへ
)
だから、
261
私
(
わたし
)
の
言葉
(
ことば
)
がチツト
位
(
くらゐ
)
きつくても
辛抱
(
しんぼう
)
しなさい』
262
国依別
『アツハヽヽヽ
面白
(
おもしろ
)
い
面白
(
おもしろ
)
い、
263
私
(
わたし
)
も
実
(
じつ
)
は
今度
(
こんど
)
の
結婚
(
けつこん
)
は
厭
(
いや
)
でたまらないのだけれど、
264
余
(
あま
)
り
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
や
言依別
(
ことよりわけ
)
様
(
さま
)
、
265
其
(
その
)
外
(
ほか
)
の
方々
(
かたがた
)
の
御
(
ご
)
熱心
(
ねつしん
)
な
御
(
お
)
取
(
と
)
りなしで
断
(
ことわ
)
る
訳
(
わけ
)
にも
行
(
ゆ
)
かず、
266
義理
(
ぎり
)
にせめられ
承諾
(
しようだく
)
したのだから、
267
さうけなりさうに
法界
(
ほふかい
)
悋気
(
りんき
)
をして
下
(
くだ
)
さるな。
268
国依別
(
くによりわけ
)
も
実
(
じつ
)
に
迷惑
(
めいわく
)
致
(
いた
)
しますワイ』
269
高姫
『オツホヽヽヽ、
270
厭
(
いや
)
で
叶
(
かな
)
はぬなどと、
271
よう
言
(
い
)
へたものだ。
272
此
(
この
)
縁談
(
えんだん
)
を
蛇尾
(
じやみ
)
にされるのが、
273
イヤでイヤで
叶
(
かな
)
はぬのだらう。
274
そんなテレ
隠
(
かく
)
しを
云
(
い
)
つたつて、
275
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
……オツトドツコイ、
276
是
(
これ
)
は
云
(
い
)
ふのぢやなかつた……
高姫
(
たかひめ
)
の
黒
(
くろ
)
い
目
(
め
)
でチヤンと
睨
(
にら
)
ンだら
間違
(
まちが
)
ひつこはありませぬぞや』
277
国依別
『アーア、
278
困
(
こま
)
つた
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
て
来
(
き
)
たワイ。
279
どうしたらよからうな、
280
この
国
(
くに
)
どのも』
281
高姫
『
何程
(
なにほど
)
困
(
こま
)
つても
仕方
(
しかた
)
がない。
282
此
(
この
)
縁談
(
えんだん
)
ばかりは
言依別
(
ことよりわけ
)
が
何
(
なん
)
と
言
(
い
)
はうと、
283
仮令
(
たとへ
)
天地
(
てんち
)
がかへらうと、
284
金輪際
(
こんりんざい
)
水
(
みづ
)
をさして、
285
グチヤグチヤにして
了
(
しま
)
はなくちや、
286
折角
(
せつかく
)
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
が
艱難
(
かんなん
)
苦労
(
くらう
)
なされてお
造
(
つく
)
り
遊
(
あそ
)
ばしたウヅの
国
(
くに
)
が
総崩
(
そうくづ
)
れになつて
了
(
しま
)
ひますワイ。
287
お
前
(
まへ
)
一人
(
ひとり
)
さへ
改心
(
かいしん
)
が
出来
(
でき
)
たら、
288
国中
(
くにぢう
)
の
者
(
もの
)
が
喜
(
よろこ
)
ぶのだから、
289
女
(
をんな
)
の
一人
(
ひとり
)
位
(
くらゐ
)
は
男
(
をとこ
)
らしう
思
(
おも
)
ひ
切
(
き
)
つて
数多
(
あまた
)
の
人民
(
じんみん
)
を
助
(
たす
)
けた
方
(
はう
)
が、
290
何程
(
なにほど
)
立派
(
りつぱ
)
か
知
(
し
)
れませぬぜ。
291
又
(
また
)
何程
(
なにほど
)
愉快
(
ゆくわい
)
か
分
(
わか
)
りますまいがなア』
292
国依別
『アーア、
293
最早
(
もはや
)
幽界
(
いうかい
)
も
神界
(
しんかい
)
もいやになつて
了
(
しま
)
つた。
294
現界
(
げんかい
)
の
悪
(
わる
)
い……
高姫
(
たかひめ
)
さま、
295
私
(
わたし
)
の
腹
(
はら
)
の
底
(
そこ
)
が
如何
(
どう
)
しても、
296
神界
(
しんかい
)
(
真解
(
しんかい
)
)
出来
(
でき
)
ませぬのかい』
297
高姫
『それは
何
(
なに
)
を
ユーカイ
……
皆目
(
かいもく
)
お
前
(
まへ
)
さまの
腹
(
はら
)
の
底
(
そこ
)
を
諒解
(
りやうかい
)
することが
出来
(
でき
)
ぬぢやないかい』
298
国依別
『アーア、
299
仕方
(
しかた
)
がない……
私
(
わたし
)
は
一寸
(
ちよつと
)
急用
(
きふよう
)
がありますので、
300
そこ
迄
(
まで
)
往
(
い
)
つて
来
(
き
)
ます。
301
どうぞ
又
(
また
)
四五
(
しご
)
日
(
にち
)
したら、
302
ゆつくりと
遊
(
あそ
)
びにお
出
(
い
)
で
下
(
くだ
)
さりませ』
303
高姫
『
最早
(
もはや
)
明日
(
あす
)
に
迫
(
せま
)
つた
此
(
この
)
結婚
(
けつこん
)
、
304
四五
(
しご
)
日
(
にち
)
してから
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さい……なンて、
305
ヘン、
306
甘
(
うま
)
いことを
仰有
(
おつしや
)
りますワイ。
307
どうでも
斯
(
か
)
うでも、
308
今夜
(
こんや
)
の
間
(
うち
)
にお
前
(
まへ
)
の
所存
(
しよぞん
)
をきめさせて、
309
其
(
その
)
上
(
うへ
)
末子姫
(
すゑこひめ
)
さまに
御
(
ご
)
意見
(
いけん
)
をして
来
(
こ
)
ねばならぬのだから、
310
さう
逃腰
(
にげごし
)
にならずに、
311
ジツクリと
聞
(
き
)
きなさい』
312
国依別
『
聞
(
き
)
きなさいつても、
313
危機
(
きき
)
一髪
(
いつぱつ
)
でも
聞
(
き
)
きませぬワイ……
御免
(
ごめん
)
候
(
さふら
)
へ、
314
高姫
(
たかひめ
)
さま、
315
私
(
わたし
)
は
結婚
(
けつこん
)
の
用意
(
ようい
)
が
急
(
いそ
)
ぎますから、
316
髪
(
かみ
)
を
梳
(
す
)
いたり、
317
髯
(
ひげ
)
をそつたり、
318
チツクを
一寸
(
ちよつと
)
つけたり、
319
頬紅
(
ほほべに
)
もさしたり、
320
口紅
(
くちべに
)
もチツとあしらはねばならず、
321
鏡
(
かがみ
)
も
一寸
(
ちよつと
)
見
(
み
)
て
来
(
こ
)
ねばなりませぬ。
322
そんな
色
(
いろ
)
の
黒
(
くろ
)
い
顔
(
かほ
)
のお
婆
(
ば
)
アさまに
相手
(
あひて
)
になつてをると、
323
ますます
末子姫
(
すゑこひめ
)
さまが
恋
(
こひ
)
しうなつて
来
(
く
)
る。
324
左様
(
さやう
)
なら……』
325
とあわてて
飛
(
と
)
び
出
(
だ
)
さうとする。
326
高姫
(
たかひめ
)
は
後
(
うしろ
)
よりグツと
抱
(
だ
)
きとめ、
327
高姫
『コレコレ
国
(
くに
)
どの、
328
何処
(
どこ
)
へ
行
(
ゆ
)
くのだい。
329
マア
待
(
ま
)
ちなされ、
330
ジツクリとすわつて、
331
天地
(
てんち
)
の
道理
(
だうり
)
を
聞
(
き
)
いて
下
(
くだ
)
さい。
332
決
(
けつ
)
して
悪
(
わる
)
いことは
申
(
まを
)
しませぬぞや』
333
国依別
『どうぞ
離
(
はな
)
して
下
(
くだ
)
さい。
334
そんな
固
(
かた
)
い
手
(
て
)
で
握
(
にぎ
)
られると
痛
(
いた
)
くて
仕方
(
しかた
)
がない。
335
一時
(
いつとき
)
も
早
(
はや
)
う
末子姫
(
すゑこひめ
)
さまのお
側
(
そば
)
へ
行
(
ゆ
)
かねばならぬワイなア。
336
岩
(
いは
)
に
抱
(
だ
)
かれるか、
337
真綿
(
まわた
)
に
抱
(
だ
)
かれるかと
云
(
い
)
ふ
程
(
ほど
)
懸隔
(
けんかく
)
があるのだから
堪
(
たま
)
らない……
高姫
(
たかひめ
)
さま、
338
どうぞ
後生
(
ごしやう
)
だから
放
(
はな
)
して
頂戴
(
ちやうだい
)
な』
339
高姫
『エヽ
是
(
これ
)
が
放
(
はな
)
してなるものかい』
340
国依別
『
高姫
(
たかひめ
)
さま、
341
今
(
いま
)
これが
放
(
はな
)
してなるものか、
342
と
云
(
い
)
ひましたな。
343
そんならヤツパリ
二人
(
ふたり
)
の
仲
(
なか
)
を
離
(
はな
)
さぬといふ
御
(
ご
)
意見
(
いけん
)
ですか?』
344
高姫
『そりや
話
(
はなし
)
が
違
(
ちが
)
ふ。
345
離
(
はな
)
れさすと
云
(
い
)
ふ
話
(
はなし
)
だ。
346
今
(
いま
)
がお
前
(
まへ
)
の
運
(
うん
)
のきめ
所
(
どころ
)
、
347
サアさつぱりここでツンと
思
(
おも
)
ひ
切
(
き
)
りましたと
立派
(
りつぱ
)
に
言挙
(
ことあ
)
げしなさい』
348
国依別
『そんなら……スツカリ
思
(
おも
)
ひ
切
(
き
)
りました』
349
高姫
『ヤレヤレ
嬉
(
うれ
)
しや、
350
お
前
(
まへ
)
は
本当
(
ほんたう
)
に
見上
(
みあ
)
げたものだよ』
351
国依別
『スツカリ
思
(
おも
)
ひ
切
(
き
)
つたのは、
352
皺苦茶
(
しわくちや
)
婆
(
ばば
)
アの
高姫
(
たかひめ
)
さまとの
交際
(
かうさい
)
だ、
353
アハヽヽヽ』
354
高姫
『エヽ
国
(
くに
)
どの、
355
覚
(
おぼ
)
えて
居
(
ゐ
)
なさいや。
356
明日
(
あす
)
の
晩
(
ばん
)
にはアフンとさして
上
(
あ
)
げますぞや、
357
女
(
をんな
)
の
一心
(
いつしん
)
岩
(
いは
)
でもつきぬく、
358
これが
通
(
とほ
)
らいでなるものかい!』
359
と
目
(
め
)
をつり
上
(
あ
)
げながら、
360
あわただしく
此
(
この
)
場
(
ば
)
を
立去
(
たちさ
)
る。
361
(
大正一一・八・二四
旧七・二
松村真澄
録)
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