霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一三章 平等愛(びやうどうあい)〔九〇四〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第32巻 海洋万里 未の巻 篇:第2篇 北の森林 よみ(新仮名遣い):きたのしんりん
章:第13章 平等愛 よみ(新仮名遣い):びょうどうあい 通し章番号:904
口述日:1922(大正11)年08月23日(旧07月01日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年10月15日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一部の章はAIによって要約を作成しています。[×閉じる]:
高姫たち一行は、森林の兎の都の霊場に着いた。鷹依姫はあまねく獣の霊の済度に全力を尽くしていた。高姫は鷹依姫との久しぶりに面会し、嬉しさと懐かしさに涙を流した。
高姫一行四人、安彦一行四人、鷹依姫一行四人の合わせて十二の身魂は、天地に向かって七日七夜、間断なく神言を奏上し、すべての猛獣をことごとく言向け和した。肉体を離れた後は必ず天国に至り、神人となって再びこの地に生まれ来て神業の参加すべき約束を与えた。あらゆる猛獣たちは歓喜の涙にくれた。
猛悪な獣も、肉体の保存上やむを得ざるときに他の動物の命を奪うのみである。しかるに万物の霊長たる人間は、食物が満ち足りてもなお欲をたくましくし、他人を倒して自己の財を肥やし、わが子孫のために美田を買って他を憐み助ける意思のない者が大多数を占めている。
しかしながら神代は社会上の組織はもっとも簡単にして、物々交換の制度自然に行われていた。さまざまな珍しきものが通貨の代わりに使われて、一定の価格も定まっていなかった。それゆえに神代の人はもっとも寡欲であった。
大宜津姫神が現れて衣食住の贅沢が始まり、大山祇、野槌の神などが土地山野を区画して占領したとしても、現代ほど貧富の差もなく狭くもなく、安泰なものであった。
高姫、鷹依姫、竜国別は、神に許しを受けて、猛獣に対して律法を定めた。
肉食を廃すこと
時々代表者を兎の都に派遣して、最善の生活上の評議をなすこと
鰐によってモールバンド、エルバンドへの防備となし、また河の往来の用に任じること
鰐を獅子王の次の位とし、毎年月の大神の神前で鰐を主賓として懇談会を開き慰労すること
律法に違反した者は獅子王の命によって肉体は取り食らわれ、その子孫は永遠に獣類の身体を得て地上に棲息する神罰を与えられること
この律法を遵守し、月の大神の宮に詣でて赤誠を捧げた獣は、帰幽するとただちにその霊は天国に上り、人間として再び地上に生まれて来ることになった。
国治立大神は、神人のみならず禽獣虫魚に至るまでその霊に光を与え、いつまでも浅ましき獣の体を継続させることなく、救いの道を作り律法を守らせて、その霊を向上せしめ給うたのである。
それゆえ、禽獣虫魚が帰幽したその肉体は、ただちに屍化の法によって天に昇るのである。みな、神の恵みによってある期間種々の修行を積み、天上に昇って霊を向上せしめるのである。
これ天地の神の無限の仁慈が偏ることなく等しくすべての命に行き渡っていることの証拠である。禽獣虫魚としてのいやしい肉体をもってこの世にあるのは、人間に進む行程であることを思えば、いかなる小さな動物といえども、粗末に取り扱うことはできないことを悟らねばならない。
その精神に目覚めなければ、神の神国魂となり、神心となることは到底できない。また人間としての資格もない。
ただし、職業として漁師・猟師を営む者は宿世の因縁にして、天より特に許されたものである。しかるに遊猟・遊漁のごとき、自分の心を一時慰めるために禽獣虫魚の命を絶つことは、鬼畜にも勝る残酷な魔心といわねばならない。
人には各々、天より定められた職業に一意専心に努めて、士農工商ともに神業に参加することをもって、人生の本分とするものである。
たとえば神は、ツツガムシの発生を抑えるためにネズミを作り、ネズミの発生を抑えるために猫を造り給うたごとく、仕組まれているのである。
禽獣虫魚はすべて、引く息をもって音声を発するのに対して、神国人は吹く息をもって臍下丹田より喨喨たる声音を発するのである。また禽獣虫魚はすべて、その性質に見合った言霊を発することで動・止・進・退するものである。
言霊の真意活用を悟った真人は、天地を震撼し、風雨雷霆を叱咤し駆使し、山川草木を鎮定せしめ、安息を与えるという妙用を行いうるのである。
これより高姫、鷹依姫、竜国別たち一行は、月の大神の前に拝礼を終わり、猛獣たちに兎の王に仕えさせた。そしてアマゾン河のほとりに出て、モールバンドとエルバンドの一族に向かい、善言美詞の言霊を与えて彼らを悦服せしめた。
遂にモールバンドとエルバンドは言霊の妙用に感じて雲を起こし、竜体となって天に昇り、雨風を起こして地上に雨露を与え、清鮮の風を万遍なく与る神の使いとなった。しかしながらまだ悔い改めない怪獣類は森林、幽谷、海底、河底などに潜伏して、面白からぬ光陰を送っているものもあるのである。
古の怪しい獣は、今日よりも数も種類も多かった。しかし三五教の神の仁慈と言霊の妙用によっておいおい浄化し、人体となって生まれて来ることになったのであった。ゆえに霊の因縁性来等によって今日といえども、高下勝劣の違いを来すことになったのである。
しかしながらいずれもその根本は、天御中主大神、高皇産霊神、神皇産霊神の造化三神の陰陽の水火より発生したものなれば、宇宙一切の森羅万象はみな同根にして、いずれも兄弟同様なのである。ただし、幽玄微妙なる霊魂の経緯によって区別ができるのである。
物質文明の学は泰西人によって先鞭をつけられたが、現今は霊魂学においても先鞭をつけられているのは主客相反する惨状と言わねばならない。邦人はいかなる深遠なる真理といえども泰西人の口と筆から出でなければこれを信じない悪癖がある。
この物語も、一度泰西諸国の哲人の耳目に通じ、再び訳されて輸入し来るまでは、邦人の多数はこれを信じないだろうと予想し、深く嘆く次第である。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2022-05-16 18:43:05 文字数:4815 OBC :rm3213
愛善世界社版:146頁 八幡書店版:第6輯 202頁 修補版: 校定版:153頁 普及版:61頁 初版: ページ備考:
派生[?]この文献を底本として書かれたと思われる文献です。[×閉じる]:出口王仁三郎全集 > 第二巻 宗教・教育編 > 第六篇 宗教雑感 > 第八章 神の平等愛
001 高姫(たかひめ)外(ほか)七(しち)人(にん)は鰐(わに)の橋(はし)を渡(わた)り、002南(みなみ)の森林(しんりん)に数多(あまた)の兎(うさぎ)に迎(むか)へられ、003漸(やうや)くにして、004青垣山(あをがきやま)を繞(めぐ)らせる森林(しんりん)の都(みやこ)、005月(つき)の大神(おほかみ)の鎮祭(ちんさい)しある霊場(れいぢやう)に辿(たど)り着(つ)いた。006鷹依姫(たかよりひめ)は白髪(はくはつ)の冠(かむり)を頂(いただ)き、007凡(すべ)ての猛獣(まうじう)を子(こ)の如(ごと)くなつけ、008普(あまね)く獣(けもの)の霊(れい)の済度(さいど)に全力(ぜんりよく)を尽(つく)してゐる。
009 高姫(たかひめ)は久(ひさ)し振(ぶ)りに鷹依姫(たかよりひめ)に面会(めんくわい)し、010固(かた)く手(て)を握(と)りものをも言(い)はず、011嬉(うれ)しさと懐(なつか)しさに涙(なみだ)を両頬(りやうほほ)より垂(た)らしてゐる。012ここに愈(いよいよ)高姫(たかひめ)一行(いつかう)八(はち)人(にん)と、013鷹依姫(たかよりひめ)の一行(いつかう)四(よ)人(にん)を加(くは)へ十二(じふに)の身魂(みたま)は、014天地(てんち)に向(むか)つて七日(なぬか)七夜(ななよ)の間断(かんだん)なき神言(かみごと)を奏上(そうじやう)し、015すべての猛獣(まうじう)を悉(ことごと)く言向(ことむ)け和(やは)し、016肉体(にくたい)を離(はな)れたる後(のち)は必(かなら)ず天国(てんごく)に到(いた)り、017神人(しんじん)となつて再(ふたた)び此(この)土(ど)に生(うま)れ来(きた)り、018神業(しんげふ)に参加(さんか)すべき約束(やくそく)を与(あた)へ、019所在(あらゆる)猛獣(まうじう)をして歓喜(くわんき)の涙(なみだ)に酔(よ)はしめたり。
020 如何(いか)に猛悪(もうあく)なる獅子(しし)、021虎(とら)、022狼(おほかみ)、023熊(くま)、024大蛇(をろち)、025豺(さい)、026豹(へう)と雖(いへど)も、027口腹(こうふく)充(み)つる時(とき)は、028決(けつ)して他(た)の獣類(じうるゐ)を犯(をか)す如(ごと)き暴虐(ばうぎやく)はなさないものである。029只(ただ)飢(うゑ)に迫(せま)り、030其(その)肉体(にくたい)の保存(ほぞん)上(じやう)、031止(や)むを得(え)ずして他(た)の動物(どうぶつ)の生命(いのち)を奪(と)り食(くら)ふのみである。
032 然(しか)るに万物(ばんぶつ)の霊長(れいちやう)たる人間(にんげん)は、033倉廩(さうりん)満(み)ちても猶(なほ)欲(よく)を逞(たくま)しうし、034他人(たにん)を倒(たふ)し、035只(ただ)単(たん)に自己(じこ)の財嚢(ざいなう)を肥(こや)し、036吾(わが)子孫(しそん)の為(ため)に美田(びでん)を買(か)ひ、037決(けつ)して他(た)を憐(あはれ)み助(たす)くるの意思(いし)なき者(もの)、038大多数(だいたすう)を占(し)めてゐる。039併(しか)し乍(なが)ら、040神代(かみよ)は社会(しやくわい)上(じやう)の組織(そしき)、041最(もつと)も簡単(かんたん)にして、042物々(ぶつぶつ)交換(かうくわん)の制度(せいど)自然(しぜん)に行(おこな)はれ、043金銭(きんせん)と雖(いへど)も珍(めづら)しき貝殻(かひがら)、044或(あるひ)は椰子(やし)の実(み)の種(たね)をいろいろの器(うつは)になし、045之(これ)を現今(げんこん)の金(かね)に代用(だいよう)し、046又(また)は砂金(しやきん)などを拾(ひろ)ひて通貨(つうくわ)の代用(だいよう)にしてゐたのである。047さうして一定(いつてい)の価格(かかく)も定(さだ)まつてゐなかつた。048それ故(ゆゑ)神代(じんだい)の人(ひと)は最(もつと)も寡欲(くわよく)にして、049如何(いか)に悪人(あくにん)と称(しよう)せらるる者(もの)と雖(いへど)も、050只々(ただただ)情欲(じやうよく)の為(ため)に争(あらそ)ふ位(くらゐ)のものであつた。051時(とき)には大宜津(おほげつ)姫(ひめの)神(かみ)現(あら)はれて、052衣食住(いしよくぢゆう)の贅沢(ぜいたく)始(はじ)まり、053貧富(ひんぷ)の区別(くべつ)漸(やうや)く現(あら)はれたりと雖(いへど)も、054現代(げんだい)の如(ごと)き大懸隔(だいけんかく)は到底(たうてい)起(おこ)らなかつたのである。
055 大山祇(おほやまずみ)、056野槌(のづち)の神(かみ)などの土地(とち)山野(さんや)を区劃(くくわく)して占領(せんりやう)し、057私有(しいう)物視(ぶつし)したる者(もの)も出(い)で来(きた)りたれども、058これ亦(また)現代(げんだい)の如(ごと)くせせこましき者(もの)にあらず、059実(じつ)に安泰(あんたい)なものであつた。
060 高姫(たかひめ)、061鷹依姫(たかよりひめ)、062竜国別(たつくにわけ)は、063茲(ここ)に猛獣(まうじう)に対(たい)し、064神(かみ)に許(ゆる)しを受(う)けて、065律法(りつぽふ)を定(さだ)め、066彼(かれ)等(ら)をして固(かた)く守(まも)らしめた。067其(その)律法(りつぽふ)の大要(たいえう)は、
068一、069熊(くま)は熊(くま)、070虎(とら)は虎(とら)、071狼(おほかみ)は狼(おほかみ)、072獅子(しし)は獅子(しし)、073蛇(へび)は蛇(へび)、074兎(うさぎ)は兎(うさぎ)として或(ある)地点(ちてん)を限(かぎ)り、075其処(そこ)に部落(ぶらく)を作(つく)り、076互(たがひ)に他獣(たじう)の住所(すみか)を侵(をか)さざる事(こと)
077一、078各獣族(かくじうぞく)は一切(いつさい)の肉食(にくしよく)を廃(はい)し、079木(こ)の実(み)又(また)は草(くさ)の葉(は)、080木(き)の芽(め)などを常食(じやうしよく)とし、081而(しか)も身体(しんたい)少(すこ)しも痩衰(やせおとろ)へず、082性質(せいしつ)温良(をんりやう)になり、083互(たがひ)に呑噬(どんぜい)の争(あらそ)ひをなさざる事(こと)
084一、085時々(ときどき)各獣(かくじう)団体(だんたい)より代表者(だいへうしや)を兎(うさぎ)の都(みやこ)に派遣(はけん)し、086最善(さいぜん)の生活(せいくわつ)上(じやう)の評議(へうぎ)をなす事(こと)
087一、088鰐(わに)をして、089モールバンド、090エルバンドの襲来(しふらい)に備(そな)へ、091且(か)つアマゾン河(がは)の往来(わうらい)の用(よう)に任(にん)ずる事(こと)
092一、093鰐(わに)を獅子王(ししわう)の次(つぎ)の位(くらゐ)と尊敬(そんけい)し、094年々(ねんねん)、095各獣(かくじう)、096月(つき)の大神(おほかみ)の社前(しやぜん)に集(あつ)まりて、097懇談会(こんだんくわい)を開(ひら)き鰐(わに)を主賓(しゆひん)となし、098年中(ねんちう)の労苦(らうく)を犒(ねぎら)ふ事(こと)
099一、100右(みぎ)の律法(りつぽふ)に違反(ゐはん)したるものは、101獅子王(ししわう)の命(めい)により、102其(その)肉体(にくたい)は取(と)り喰(くら)はれ、103其(その)子孫(しそん)永遠(えいゑん)に獣類(じうるゐ)の身体(からだ)を受得(じゆとく)して、104地上(ちじやう)に棲息(せいそく)するの神罰(しんばつ)を与(あた)へらるる事(こと)
105等(とう)の数(すう)ケ条(でう)の律法(りつぽふ)を定(さだ)め、106獅子王(ししわう)を始(はじ)め各獣(かくじう)の王(わう)をして、107之(これ)を其(その)種族(しゆぞく)一般(いつぱん)に布告(ふこく)せしめた。
108 これより其(その)律法(りつぽふ)を遵守(じゆんしゆ)し、109月(つき)の大神(おほかみ)の宮(みや)に詣(まう)でて赤誠(せきせい)を捧(ささ)げたるものは、110一定(いつてい)の肉体(にくたい)の期間(きかん)を経(へ)て帰幽(きいう)するや、111直(ただち)に其(その)霊(れい)は天国(てんごく)に上(のぼ)り、112再(ふたた)び人間(にんげん)として地上(ちじやう)に生(うま)れ来(きた)ることとなりぬ。
113 又(また)此(この)律法(りつぽふ)に違反(ゐはん)したる各獣(かくじう)は、114其(その)子孫(しそん)に至(いた)る迄(まで)、115依然(いぜん)として祖先(そせん)の形体(けいたい)を保(たも)ち、116今(いま)に尚(なほ)人跡(じんせき)稀(まれ)なる深山(しんざん)幽谷(いうこく)森林(しんりん)などに、117苦(くる)しき生活(せいくわつ)を続(つづ)けてゐるのである。118あゝ尊(たふと)き哉(かな)、119月(つき)の大神(おほかみ)の御(ご)仁慈(じんじ)よ。
120 国治立(くにはるたちの)大神(おほかみ)は、121あらゆる神人(しんじん)を始(はじ)め禽獣(きんじう)虫魚(ちうぎよ)に至(いた)る迄(まで)、122其(その)霊(みたま)に光(ひかり)を与(あた)へ、123何時迄(いつまで)も浅(あさ)ましき獣(けだもの)の体(たい)を継続(けいぞく)せしむることなく、124救(すく)ひの道(みち)を作(つく)り律法(りつぽふ)を守(まも)らしめて、125其(その)霊(れい)を向上(こうじやう)せしめ給(たま)へり。126故(ゆゑ)に禽獣(きんじう)虫魚(ちうぎよ)の帰幽(きいう)せし其(その)肉体(にくたい)は、127決(けつ)して地上(ちじやう)に遺棄(ゐき)することなく、128直(ただち)に屍化(しけ)の方法(はうほふ)に依(よ)つて天(てん)に其(その)儘(まま)昇(のぼ)り得(う)るは、129人間(にんげん)を措(を)いて他(た)の動物(どうぶつ)に共通(きやうつう)の特権(とくけん)である。130猛獣(まうじう)は云(い)ふも更(さら)なり。131烏(からす)、132鳶(とび)、133雀(すずめ)、134燕(つばめ)其(その)外(ほか)の空中(くうちう)をかける野鳥(やてう)は、135決(けつ)して屍(かばね)を地上(ちじやう)に遺棄(ゐき)し、136人(ひと)の目(め)に触(ふ)るる事(こと)のなきは、137皆(みな)神(かみ)の恵(めぐみ)に依(よ)りて、138或(ある)期間(きかん)種々(しゆじゆ)の修業(しゆげふ)を積(つ)み、139天上(てんじやう)に昇(のぼ)り、140其(その)霊(みたま)を向上(こうじやう)せしむる故(ゆゑ)なり。141只(ただ)死(し)して其(その)体躯(たいく)を残(のこ)す場合(ばあひ)は、142人(ひと)に鉄砲(てつぱう)にて撃(う)たれ、143弓(ゆみ)にて射殺(いころ)され、144或(あるひ)は小鳥(ことり)の大鳥(おほとり)に掴(つか)み殺(ころ)され、145地上(ちじやう)に落(お)ちたる変死(へんし)的(てき)動物(どうぶつ)のみ。146其(その)他(た)自然(しぜん)の天寿(てんじゆ)を保(たも)ち帰幽(きいう)せし禽獣(きんじう)虫魚(ちうぎよ)は残(のこ)らず神(かみ)の恵(めぐみ)によりて、147屍化(しけ)の方法(はうほふ)に依(よ)り天上(てんじやう)に昇(のぼ)り得(う)る如(ごと)きは、148天地(てんち)の神(かみ)の無限(むげん)の仁慈(じんじ)、149偏頗(へんぱ)なく禽獣(きんじう)虫魚(ちうぎよ)に至(いた)る迄(まで)、150依怙(えこ)なく均霑(きんてん)し給(たま)ふ証拠(しようこ)なり。151只(ただ)人間(にんげん)に比(くら)べて、152禽獣(きんじう)虫魚(ちうぎよ)としての卑(いや)しき肉体(にくたい)を保(たも)ち、153此(この)世(よ)にあるは、154人間(にんげん)に進(すす)むの行程(かうてい)であることを思(おも)へば、155吾人(ごじん)は如何(いか)なる小(ちひ)さき動物(どうぶつ)と雖(いへど)も、156粗末(そまつ)に取扱(とりあつか)ふ事(こと)は出来(でき)ない事(こと)を悟(さと)らねばならぬ。157其(その)精神(せいしん)に目覚(めざ)めねば、158真(しん)の神国魂(みくにだま)となり、159神心(かみごころ)となることは到底(たうてい)出来(でき)ない。160又(また)人間(にんげん)としての資格(しかく)もない。
161 斯(か)く曰(い)はば人(ひと)或(あるひ)は云(い)はむ、162魚(うを)を捕(と)る漁師(れふし)なければ吾(われ)等(ら)尊(たふと)き生命(いのち)を保(たも)つ能(あた)はず、163獣(けだもの)を捉(とら)ふる猟夫(れうふ)なければ日常(にちじやう)生活(せいくわつ)の必要品(ひつえうひん)に不便(ふべん)を感(かん)ず、164無益(むえき)の殺生(せつしやう)はなさずと雖(いへど)も、165有益(いうえき)の殺生(せつしやう)は又(また)已(や)むを得(え)ざるべし。166斯(か)かる道(みち)を真(ま)に受(う)けて遵守(じゆんしゆ)することとせば、167社会(しやくわい)の不便(ふべん)実(じつ)に甚(はなはだ)しかるべしとの反対論(はんたいろん)をなす者(もの)がキツト現(あら)はれるでありませう。168併(しか)し各自(めいめい)にその天職(てんしよく)が備(そな)はり、169猫(ねこ)は鼠(ねづみ)を捕(と)り、170鼠(ねづみ)は人類(じんるゐ)の害(がい)をなす恙(つつが)を捕(と)り喰(くら)ひ、171魚(うを)は蚊(か)の卵(たまご)孑孑(ぼうふり)を食(しよく)し、172蛙(かへる)は稲虫(いなむし)を捕(と)り、173山猟師(やまれふし)は獅子(しし)、174熊(くま)を捕(と)り、175川漁師(かはれふし)は川魚(かはざかな)を捕(と)り、176海漁師(うみれふし)は海魚(うみざかな)を捕(と)りて、177其(その)職業(しよくげう)を守(まも)るは皆(みな)宿世(すぐせ)の因縁(いんねん)にして、178天(てん)より特(とく)に許(ゆる)されたるものである。179故(ゆゑ)に山猟師(やまれふし)の手(て)にかかる禽獣(きんじう)はすでに天則(てんそく)を破(やぶ)り、180神(かみ)の冥罰(めいばつ)を受(う)くべき時機(じき)の来(きた)れるもののみ、181猟師(れふし)の手(て)に掛(かか)つて斃(たふ)れる事(こと)になつてゐるのである。182海(うみ)の魚(さかな)も川魚(かはざかな)も皆(みな)其(その)通(とほ)りである。
183 然(しか)るに現代(げんだい)の如(ごと)く、184遊猟(いうれふ)と称(しよう)し、185職人(しよくにん)が休暇(きうか)を利用(りよう)して魚(さかな)を釣(つ)り、186官吏(くわんり)その他(た)の役人(やくにん)が遊猟(いうれふ)の鑑札(かんさつ)を与(あた)へられて、187山野(さんや)に猟(れふ)をなすが如(ごと)きは、188実(じつ)に天則(てんそく)違反(ゐはん)の大罪(たいざい)と云(い)ふべきものである。189自分(じぶん)の心(こころ)を一(いち)時(じ)慰(なぐさ)むる為(ため)に、190貴重(きちよう)なる禽獣(きんじう)虫魚(ちうぎよ)の生命(せいめい)を断(た)つは、191鬼畜(きちく)にも優(まさ)る残酷(ざんこく)なる魔心(ましん)と云(い)はなければならぬ。192人(ひと)には各(おのおの)天(てん)より定(さだ)まりたる職業(しよくげう)がある。193之(これ)を一意(いちい)専心(せんしん)に努(つと)めて、194士(し)農(のう)工(こう)商(しやう)共(とも)神業(しんげふ)に参加(さんか)するを以(もつ)て、195人生(じんせい)の本分(ほんぶん)とするものである。
196 ペストが流行(りうかう)すると云(い)つては、197毒薬(どくやく)を盛(も)り鼠(ねづみ)を全滅(ぜんめつ)せむと謀(はか)る人間(にんげん)の考(かんが)へも、198理論(りろん)のみは立派(りつぱ)なれども到底(たうてい)之(これ)を全滅(ぜんめつ)する事(こと)は出来(でき)ない。199又(また)鼠(ねづみ)が人家(じんか)になき時(とき)は人間(にんげん)の寝息(ねいき)より発生(はつせい)する邪気(じやき)、200天井(てんじやう)に凝結(ぎようけつ)して小(ちひ)さき恙虫(つつがむし)を発生(はつせい)せしめ、201其(その)虫(むし)の為(ため)に貴重(きちよう)の生命(いのち)を縮(ちぢ)むる様(やう)になつて了(しま)ふ。202神(かみ)は此(この)害(がい)を除(のぞ)かしめ、203人(ひと)の為(ため)に必要(ひつえう)に応(おう)じて鼠(ねづみ)を作(つく)り給(たま)うたのである。204鼠(ねづみ)は恙虫(つつがむし)を最(もつと)も好(この)むものである。205故(ゆゑ)に其(その)鳴声(なきごゑ)は常(つね)に『チウチウ』と云(い)ふ。206チウの霊返(たまがへ)しは『ツ』となる。207併(しか)し乍(なが)ら鼠(ねづみ)の繁殖(はんしよく)甚(はなはだ)しき時(とき)は、208食(しよく)すべき恙(つつが)少(すくな)き為(ため)、209止(や)むを得(え)ず、210米櫃(こめびつ)を齧(かぢ)り、211いろいろと害(がい)をなすに至(いた)る。212故(ゆゑ)に神(かみ)は猫(ねこ)を作(つく)りて、213鼠(ねづみ)の繁殖(はんしよく)を調節(てうせつ)し給(たま)うたのである。214猫(ねこ)の好(この)んで食(しよく)するものは鼠(ねづみ)である。215鼠(ねづみ)の霊返(たまがへ)しは『ニ』となる。216猫(ねこ)の鳴声(なきごゑ)は『ニヤン』と鳴(な)く、217『ヤ』は退(やら)ふこと、218『ン』は畜生(ちくしやう)自然(しぜん)の持前(もちまへ)として、219言語(げんご)の末(すゑ)に響(ひび)く音声(おんせい)である。220故(ゆゑ)に『ニヤン』と云(い)ふ声(こゑ)を聞(き)く時(とき)は、221鼠(ねづみ)の『ニ』は恐(おそ)れて姿(すがた)を隠(かく)すに至(いた)るは言霊学(ことたまがく)上(じやう)動(うご)かすべからざる真理(しんり)である。222人(ひと)試(こころ)みに引(ひ)く息(いき)を以(もつ)て、223鼠(ねづみ)の荒(あ)れ廻(まは)る時(とき)、224『ニヤン』と一二声(いちにせい)猫(ねこ)の真似(まね)をなす時(とき)、225荒(あ)れ狂(くる)ひたる鼠(ねづみ)は一(いち)時(じ)に静(しづ)まり遠(とほ)く逃(に)げ去(さ)るべし。226『ニヤ』の霊返(たまがへ)しは『ナ』となる。227故(ゆゑ)に猫(ねこ)の中(なか)に於(おい)て、228言霊(ことたま)の清(きよ)きものは『ナン』と鳴(な)くなり。
229 すべて禽獣(きんじう)虫魚(ちうぎよ)は引(ひ)く息(いき)を以(もつ)て音声(おんせい)を発(はつ)し、230神国人(みくにびと)は吹(ふ)く息(いき)を以(もつ)て臍下(せいか)丹田(たんでん)より嚠喨(りうりやう)たる声音(せいおん)を発(はつ)し、231又(また)引(ひ)く息(いき)、232吹(ふ)く息(いき)の中間(ちうかん)的(てき)言語(げんご)を発(はつ)する人種(じんしゆ)もあることを忘(わす)れてはならぬ。
233 又(また)鳥(とり)の中(なか)にも、234吹(ふ)く息(いき)、235引(ひ)く息(いき)の中間(ちうかん)的(てき)の声音(せいおん)を一二声(いちにせい)発(はつ)するものが、236たまにはあるものである。237馬(うま)は陽性(やうせい)の動物(どうぶつ)なれば、238『ハヒフヘホ』と声音(せいおん)を発(はつ)し、239牛(うし)は陰性(いんせい)の動物(どうぶつ)なれば、240『マミムメモ』の声音(せいおん)を発(はつ)す。241其(その)他(た)一切(いつさい)の動物(どうぶつ)、242各(かく)特有(とくいう)の音声(おんせい)を有(いう)し、243完全(くわんぜん)に其(その)意思(いし)を表示(へうじ)することは発端(ほつたん)に述(の)べた通(とほ)りである。
244 馬(うま)は陽性(やうせい)の獣類(じうるゐ)なれば、245人(ひと)其(その)背(せな)に跨(またが)り、2451『ハイ』と声(こゑ)をかくれば、246忽(たちま)ち無意識(むいしき)に前進(ぜんしん)す。247『ハ』は開(ひら)き進(すす)むの言霊(ことたま)であり『イ』は左右(さいう)の息(いき)である。248即(すなは)ち左右(さいう)の脚(あし)を開(ひら)きて進(すす)めと云(い)ふ命令詞(めいれいし)となる。249牛(うし)は陰性(いんせい)の獣類(じうるゐ)なれば、250人(ひと)あり、251後(うしろ)より『シイ』と言(い)へば前進(ぜんしん)す。252『シ』は水(みづ)にして且(か)つ俯(うつ)むき流(なが)れ動(うご)くの意(い)である。253『イ』は前(まへ)に述(の)べた通(とほ)りである。254馬(うま)は頭(あたま)をあげて、255陽(やう)の息(いき)を示(しめ)して進(すす)み、256牛(うし)は頭(あたま)を下(さ)げて陰(いん)の水火(いき)を示(しめ)して進(すす)む。257陽性(やうせい)の馬(うま)は『ドー』と言(い)へば止(と)まり、258陰性(いんせい)の牛(うし)は『オウ』と云(い)へば止(と)まる。259『ド』は陽的(やうてき)不動(ふどう)の意味(いみ)であり、260『オー』は陰的(いんてき)不動(ふどう)の言霊(ことたま)の意味(いみ)である。
261 之(これ)を以(もつ)て之(これ)を見(み)れば、262禽獣(きんじう)虫魚(ちうぎよ)一切(いつさい)、263惟神(かむながら)的(てき)に言霊(ことたま)によりて動止(どうし)進退(しんたい)することは明白(めいはく)なる事実(じじつ)である。264其(その)他(た)の禽獣(きんじう)皆(みな)然(しか)りである。
265 或(ある)古書(こしよ)にミカエル立(た)ちて叫(さけ)び給(たま)へば、266山川(さんせん)草木(さうもく)、267天地(てんち)一切(いつさい)これに応(おう)ずとあるも、268言霊(ことたま)の真意(しんい)活用(くわつよう)を悟(さと)りたる真人(しんじん)の末世(まつせ)に現(あら)はれて、269天地(てんち)を震撼(しんかん)し、270風雨(ふうう)雷霆(らいてい)を叱咤(しつた)し又(また)は駆使(くし)し、271山川(さんせん)草木(さうもく)を鎮定(ちんてい)せしめ、272安息(あんそく)を与(あた)ふる言霊(ことたま)の妙用(めうよう)を示(しめ)されたものである。273あゝ偉大(ゐだい)なる哉(かな)、274言霊(ことたま)の妙用(めうよう)!
275○
276 是(これ)より高姫(たかひめ)、277鷹依姫(たかよりひめ)、278竜国別(たつくにわけ)、279外(ほか)九(く)人(にん)は月(つき)の大神(おほかみ)の御前(みまへ)に恭(うやうや)しく拝礼(はいれい)を了(をは)り、280兎(うさぎ)の王(わう)をして厚(あつ)く仕(つか)へしめ、281アマゾン河(がは)の畔(ほとり)に出(い)でて、282モールバンドを始(はじ)めエルバンドの一族(いちぞく)に向(むか)ひ、283善言(ぜんげん)美詞(びし)の言霊(ことたま)を与(あた)へて、284彼(かれ)等(ら)を悦服(えつぷく)せしめ、285遂(つひ)にモールバンド、286エルバンドは言霊(ことたま)の妙用(めうよう)に感(かん)じ、287雲(くも)を起(おこ)し、288忽(たちま)ち竜体(りうたい)となつて天(てん)に昇(のぼ)り、289風(かぜ)を起(おこ)し、290雨(あめ)を呼(よ)び、291地上(ちじやう)の一切(いつさい)に雨露(うろ)を与(あた)へ、292清鮮(せいせん)の風(かぜ)を万遍(まんべん)なく与(あた)へて、293神人(しんじん)万有(ばんいう)を安住(あんぢう)せしむる神(かみ)の使(つかひ)となりたり。
294 併(しか)し乍(なが)ら、295まだ悔(く)い改(あらた)めざる彼(かれ)等(ら)怪獣(くわいじう)及(および)猛獣(まうじう)の一部(いちぶ)は、296今尚(いまなほ)浅(あさ)ましき肉体(にくたい)を子孫(しそん)に伝(つた)へて、297或(あるひ)は森林(しんりん)に或(あるひ)は幽谷(いうこく)に潜(ひそ)み、298海底(かいてい)、299河底(かてい)に潜伏(せんぷく)などして、300面白(おもしろ)からぬ光陰(くわういん)を送(おく)つてゐるものもあるのである。
301 古(いにしへ)の怪(あや)しき獣(けもの)は、302今日(こんにち)に比(くら)ぶれば、303其(その)数(すう)に於(おい)て其(その)種類(しゆるゐ)に於(おい)て最(もつと)も夥(おびただ)しかつた。304併(しか)しながら三五教(あななひけう)の神(かみ)の仁慈(じんじ)と言霊(ことたま)の妙用(めうよう)によつて、305追々(おひおひ)に浄化(じやうくわ)し、306人体(じんたい)となつて生(うま)れ来(きた)ることとなつた。307故(ゆゑ)に霊(みたま)の因縁(いんねん)性来(しやうらい)等(とう)に於(おい)て、308今日(こんにち)と雖(いへど)も、309高下(かうげ)勝劣(しようれつ)の差別(さべつ)を来(き)たすこととなつたのである。310併(しか)しながら何(いづ)れも其(その)根本(こんぽん)は天御中主(あめのみなかぬしの)大神(おほかみ)、311高皇(たかみ)産霊(むすびの)神(かみ)、312神皇(かむみ)産霊(むすびの)神(かみ)の造化(ざうくわ)三神(さんしん)の陰陽(いんやう)の水火(いき)より発生(はつせい)したるものなれば、313宇宙(うちう)一切(いつさい)の森羅(しんら)万象(ばんしやう)は皆(みな)同根(どうこん)にして、314何(いづ)れも兄弟(きやうだい)同様(どうやう)である。
315 同(おな)じ人間(にんげん)の形体(けいたい)を備(そな)へ、316同(おな)じ教育(けういく)をうけ、317同(おな)じ国(くに)に住(す)み、318同(おな)じ食物(しよくもつ)を食(しよく)しながら、319正邪(せいじや)賢愚(けんぐ)の区別(くべつ)あるは、320要(えう)するに霊(みたま)の因縁(いんねん)性来(しやうらい)のしからしむる所以(ゆゑん)である。
321 或(ある)理窟屋(りくつや)の中(なか)には、322総(すべ)ての人間(にんげん)は同(おな)じ天帝(てんてい)の分霊(ぶんれい)なれば、323霊(みたま)の因縁(いんねん)性来(しやうらい)、324系統(けいとう)、325直系(ちよくけい)、326傍系(ばうけい)などの区別(くべつ)ある理由(りいう)なしと論(ろん)ずる人(ひと)がある。327斯(かく)の如(ごと)き論説(ろんせつ)は、328只(ただ)一片(いつぺん)の道理(だうり)に堕(だ)して、329幽玄(いうげん)微妙(びめう)なる霊魂(れいこん)の経緯(けいゐ)を知(し)らざる人(ひと)である。330人(ひと)の肉体(にくたい)に長短(ちやうたん)肥瘠(ひせき)、331美醜(びしう)ある如(ごと)く、332霊魂(れいこん)も亦(また)これに倣(なら)ふは自然(しぜん)の道理(だうり)である。333要(えう)するに人間(にんげん)の肉体(にくたい)は霊魂(れいこん)のサツクのやうなものであるから、334人間(にんげん)各自(かくじ)の形体(けいたい)は霊魂(れいこん)そのものの形体(けいたい)であることを悟(さと)らねばならぬ。335霊魂(れいこん)肉体(にくたい)を離(はな)れ、336霊界(れいかい)に遊(あそ)ぶ時(とき)は、337其(その)脱却(だつきやく)したる肉体(にくたい)と同様(どうやう)の形体(けいたい)を備(そな)へ居(を)る事(こと)は、338欧米(おうべい)霊学者(れいがくしや)の漸(やうや)く認(みと)むる所(ところ)である。
339 物質(ぶつしつ)文明(ぶんめい)の学(がく)は泰西人(たいせいじん)に先鞭(せんべん)をつけられ、340霊魂学(れいこんがく)の本場(ほんば)たる我国(わがくに)は亦(また)泰西人(たいせいじん)に霊魂学(れいこんがく)迄(まで)先鞭(せんべん)をつけられつつあるは、341天地(てんち)顛倒(てんたふ)、342主客(しゆかく)相反(あひはん)する惨状(さんじやう)と云(い)はねばならぬ。343我々(われわれ)は数十(すうじふ)年来(ねんらい)霊魂学(れいこんがく)の研究(けんきう)につき、344舌(した)をただらし、345声(こゑ)をからして叫(さけ)んで来(き)た。346されど邦人(ほうじん)は如何(いか)に深遠(しんゑん)なる真理(しんり)と雖(いへど)も、347泰西人(たいせいじん)の口(くち)より筆(ふで)より出(い)でざれば、348之(これ)を信(しん)ぜざるの悪癖(あくへき)がある。349故(ゆゑ)に如何(いか)なる高論(かうろん)卓説(たくせつ)と雖(いへど)も、350一旦(いつたん)泰西(たいせい)諸国(しよこく)に輸出(ゆしゆつ)し、351再(ふたた)び泰西人(たいせいじん)の手(て)を借(か)りて、352輸入(ゆにふ)し来(きた)らざれば、353信(しん)ずること能(あた)はざる盲目(もうもく)人種(じんしゆ)たることを、354我々(われわれ)は大(おほい)に歎(なげ)く者(もの)である。355此(この)物語(ものがたり)も亦(また)一度(いちど)泰西(たいせい)諸国(しよこく)の哲人(てつじん)の耳目(じもく)に通(つう)じ、356再(ふたた)び訳(やく)されて輸入(ゆにふ)し来(きた)る迄(まで)は、357邦人(ほうじん)の多数(たすう)は之(これ)を信(しん)じないだらうと予想(よさう)し、358且(か)つ深(ふか)く歎(なげ)く次第(しだい)であります。359惟神(かむながら)霊(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)。
360(大正一一・八・二三 旧七・一 松村真澄録)
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