霊界物語.ネット
~出口王仁三郎 大図書館~
設定
|
ヘルプ
ホーム
霊界物語
海洋万里(第25~36巻)
第32巻(未の巻)
序文
総説
第1篇 森林の都
第1章 万物同言
第2章 猛獣会議
第3章 兎の言霊
第4章 鰐の言霊
第5章 琉球の光
第6章 獅子粉塵
第2篇 北の森林
第7章 試金玉
第8章 三人娘
第9章 岩窟女
第10章 暗黒殿
第11章 人の裘
第12章 鰐の橋
第13章 平等愛
第14章 山上の祝
第3篇 瑞雲靉靆
第15章 万歳楽
第16章 回顧の歌
第17章 悔悟の歌
第18章 竜国別
第19章 軽石車
第20章 瑞の言霊
第21章 奉答歌
第4篇 天祥地瑞
第22章 橋架
第23章 老婆心切
第24章 冷氷
余白歌
×
設定
この文献を王仁DBで開く
印刷用画面を開く
[?]
プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。
[×閉じる]
話者名の追加表示
[?]
セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。
[×閉じる]
追加表示する
追加表示しない
【標準】
表示できる章
テキストのタイプ
[?]
ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。
[×閉じる]
通常のテキスト
【標準】
コピー用のテキスト
文字サイズ
S
【標準】
M
L
ルビの表示
通常表示
【標準】
括弧の中に表示
表示しない
アンカーの表示
[?]
本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。
[×閉じる]
左側だけに表示する
【標準】
表示しない
全てのアンカーを表示
宣伝歌
[?]
宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。
[×閉じる]
一段組
【標準】
二段組
脚注[※]用語解説
[?]
[※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。
[×閉じる]
脚注マークを表示する
【標準】
脚注マークを表示しない
脚注[*]編集用
[?]
[※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。
[×閉じる]
脚注マークを表示する
脚注マークを表示しない
【標準】
外字の外周色
[?]
一般のフォントに存在しない文字は専用の外字フォントを使用しています。目立つようにその文字の外周の色を変えます。
[×閉じる]
無色
【標準】
赤色
現在のページには外字は使われていません
表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。
サイトをリニューアルしました(
従来バージョンはこちら
)【新着情報】
(
サブスク
のお知らせ)
霊界物語
>
海洋万里(第25~36巻)
>
第32巻(未の巻)
> 第2篇 北の森林 > 第7章 試金玉
<<< 獅子粉塵
(B)
(N)
三人娘 >>>
第七章
試金
(
しきん
)
玉
(
ぎよく
)
〔八九八〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第32巻 海洋万里 未の巻
篇:
第2篇 北の森林
よみ(新仮名遣い):
きたのしんりん
章:
第7章 試金玉
よみ(新仮名遣い):
しきんぎょく
通し章番号:
898
口述日:
1922(大正11)年08月22日(旧06月30日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年10月15日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
[×閉じる]
:
高姫は、常彦、春彦、ヨブとともにアマゾンの時雨の森の北の林に到着した。高姫は、この森林に居る鷹依姫一行を助け出そうと森の中を進んで行った。
すると前方より、えもいわれぬ美しさの女が一人現れ、一行に向かって近づいてきた。一行は、すわ妖怪変化かと警戒している。
女は高姫の前に来てお辞儀をした。女は高姫たちがここへくることを知っており、金剛不壊の如意宝珠、紫の玉、黄金の玉、麻邇の宝珠などは、自分の館に神政成就の宝として蓄えられているので献上しようと申し出た。
改心したはずの高姫は、この甘言を聞いてたちまち元の病が再発したごとくに目を丸くして顔を緊張させ、女の話に食いついてきた。世界に二つとない宝が本当にこんなところにあるのかと疑う高姫に対し、女は実地に来てみて調べればわかる、と答えた。
女は鷹依姫たちがどこに居るかも後で教えよう、と言うと、高姫たちを迎える準備をするからしばらく待つようにと言い残して去って行った。
高姫は女を見送って上機嫌で、常彦、春彦、ヨブに自分の神徳をひけらかし始めた。常彦は高姫に合わせて、宝珠が手に入る運びになったことを馬鹿喜びしている。
春彦は、女の耳がビリビリ動いていたことを告げて、高姫と常彦に女は妖怪変化ではないかと懸念を伝え、用心するようにと戒めた。高姫は春彦を叱りつけ、言い争いになってしまう。
春彦とヨブは高姫のもとを去ろうとするが、高姫は二人をあわてて引き留める。高姫の味方をしていた常彦にしても、高姫に同意しているようで実は皮肉っている口調が現れてきてしまっていた。
そこへ先ほどの女が美々しく盛装をこらし、二人の侍女を従えてやってきた。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-05-02 18:30:21
OBC :
rm3207
愛善世界社版:
77頁
八幡書店版:
第6輯 176頁
修補版:
校定版:
81頁
普及版:
29頁
初版:
ページ備考:
001
金剛
(
こんがう
)
不壊
(
ふゑ
)
の
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
002
紫色
(
むらさきいろ
)
の
宝玉
(
ほうぎよく
)
や
003
黄金
(
こがね
)
の
玉
(
たま
)
を
紛失
(
ふんしつ
)
し
004
心
(
こころ
)
いらちて
高姫
(
たかひめ
)
が
005
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
や
黒姫
(
くろひめ
)
は
006
言
(
い
)
ふも
更
(
さら
)
なり
傍人
(
ばうじん
)
に
007
向
(
むか
)
つて
怒
(
いか
)
り
八当
(
やつあた
)
り
008
玉
(
たま
)
の
在処
(
ありか
)
を
探
(
さぐ
)
らむと
009
海洋
(
かいやう
)
万里
(
ばんり
)
を
乗越
(
のりこ
)
えて
010
捜
(
さが
)
し
廻
(
まは
)
れど
影
(
かげ
)
さへも
011
なみの
上
(
うへ
)
をば
徘徊
(
さまよ
)
ひつ
012
再
(
ふたた
)
び
聖地
(
せいち
)
に
立帰
(
たちかへ
)
り
013
八尋
(
やひろ
)
の
殿
(
との
)
に
黒姫
(
くろひめ
)
と
014
麻邇
(
まに
)
の
宝珠
(
ほつしゆ
)
の
玉
(
たま
)
しらべ
015
これ
又
(
また
)
案
(
あん
)
に
相違
(
さうゐ
)
して
016
面
(
つら
)
を
膨
(
ふく
)
らせ
泡
(
あわ
)
をふき
017
言依別
(
ことよりわけ
)
の
教主
(
けうしゆ
)
奴
(
め
)
が
018
三
(
みつ
)
つの
宝
(
たから
)
や
麻邇
(
まに
)
の
玉
(
たま
)
019
盗
(
ぬす
)
み
隠
(
かく
)
して
聖地
(
せいち
)
をば
020
後
(
あと
)
に
見
(
み
)
すてて
高砂
(
たかさご
)
の
021
島
(
しま
)
に
渡
(
わた
)
りしものなりと
022
思
(
おも
)
ひつめたる
一心
(
いつしん
)
の
023
心猿
(
しんゑん
)
意馬
(
いば
)
の
狂
(
くる
)
ふまで
024
春彦
(
はるひこ
)
、
常彦
(
つねひこ
)
伴
(
ともな
)
ひて
025
高砂島
(
たかさごじま
)
に
打渡
(
うちわた
)
り
026
テルの
島国
(
しまぐに
)
振出
(
ふりだ
)
しに
027
鏡
(
かがみ
)
の
池
(
いけ
)
に
立寄
(
たちよ
)
りて
028
架橋
(
かけはし
)
御殿
(
ごてん
)
に
侵入
(
しんにふ
)
し
029
減
(
へ
)
らず
口
(
ぐち
)
のみ
並
(
なら
)
べ
立
(
た
)
て
030
皇
(
すめ
)
大神
(
おほかみ
)
の
戒
(
いまし
)
めを
031
受
(
う
)
けてやかたを
飛
(
と
)
び
出
(
いだ
)
し
032
アリナの
山
(
やま
)
を
乗越
(
のりこ
)
えて
033
アルゼンチンの
大野原
(
おほのはら
)
034
木
(
こ
)
の
花姫
(
はなひめ
)
の
化身
(
けしん
)
なる
035
日
(
ひ
)
の
出姫
(
でのひめ
)
に
廻
(
めぐ
)
り
会
(
あ
)
ひ
036
いよいよ
茲
(
ここ
)
に
悔悟
(
くわいご
)
して
037
荒野
(
あらの
)
をわたり
河
(
かは
)
を
越
(
こ
)
え
038
夜
(
よ
)
を
日
(
ひ
)
についでアル
港
(
みなと
)
039
ここより
船
(
ふね
)
に
身
(
み
)
を
任
(
まか
)
せ
040
ゼムの
港
(
みなと
)
に
上陸
(
じやうりく
)
し
041
天祥山
(
てんしやうざん
)
を
乗越
(
のりこ
)
えて
042
チンの
港
(
みなと
)
に
辿
(
たど
)
りつき
043
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
の
一行
(
いつかう
)
を
044
救
(
すく
)
はむものと
真心
(
まごころ
)
の
045
駒
(
こま
)
に
鞭
(
むち
)
うち
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く
046
アマゾン
河
(
がは
)
に
来
(
き
)
て
見
(
み
)
れば
047
半濁流
(
はんだくりう
)
は
滔々
(
たうたう
)
と
048
目
(
め
)
さへ
届
(
とど
)
かぬ
広河
(
ひろかは
)
を
049
勢
(
いきほひ
)
猛
(
たけ
)
く
流
(
なが
)
れ
居
(
ゐ
)
る
050
波
(
なみ
)
のまにまにモールバンド
051
怪
(
あや
)
しき
頭
(
かしら
)
を
擡
(
もた
)
げつつ
052
吾物顔
(
わがものがほ
)
に
荒
(
すさ
)
び
居
(
ゐ
)
る
053
流石
(
さすが
)
の
高姫
(
たかひめ
)
仰天
(
ぎやうてん
)
し
054
アマゾン
河
(
がは
)
の
北岸
(
きたぎし
)
に
055
命
(
いのち
)
からがら
辿
(
たど
)
りつき
056
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
し
057
宣伝歌
(
せんでんか
)
をば
歌
(
うた
)
ひつつ
058
森林
(
しんりん
)
深
(
ふか
)
く
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
る
059
遠
(
とほ
)
き
神代
(
かみよ
)
の
物語
(
ものがたり
)
060
いよいよここに
述
(
の
)
べ
立
(
た
)
つる
061
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
062
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はひましませよ。
063
高姫
(
たかひめ
)
は
常彦
(
つねひこ
)
、
064
春彦
(
はるひこ
)
、
065
ヨブと
共
(
とも
)
に
漸
(
やうや
)
くアマゾン
河
(
がは
)
の
大森林
(
だいしんりん
)
、
066
時雨
(
しぐれ
)
の
森
(
もり
)
の
北
(
きた
)
の
林
(
はやし
)
に
安着
(
あんちやく
)
せり。
067
此処
(
ここ
)
は
東西
(
とうざい
)
殆
(
ほとん
)
ど
三百
(
さんびやく
)
里
(
り
)
、
068
南北
(
なんぽく
)
四百
(
よんひやく
)
里
(
り
)
位
(
くらゐ
)
の
際限
(
さいげん
)
もなき
大森林
(
だいしんりん
)
なり。
069
高姫
(
たかひめ
)
は
此
(
この
)
森林
(
しんりん
)
に
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
の
一行
(
いつかう
)
が
迷
(
まよ
)
ひ
居
(
ゐ
)
るものと
深
(
ふか
)
く
信
(
しん
)
じ、
070
一
(
いち
)
日
(
にち
)
も
早
(
はや
)
く
救
(
すく
)
ひ
出
(
いだ
)
さむものと、
071
鬱蒼
(
うつさう
)
たる
樹木
(
じゆもく
)
の
間
(
あひだ
)
を
右
(
みぎ
)
にくぐり
左
(
ひだり
)
に
抜
(
ぬ
)
け、
072
草
(
くさ
)
を
分
(
わ
)
け、
073
身
(
み
)
を
没
(
ぼつ
)
する
許
(
ばか
)
りの
笹原
(
ささはら
)
をくぐり、
074
時々
(
ときどき
)
猛獣
(
まうじう
)
に
脅
(
おびや
)
かされ、
075
毒蛇
(
どくじや
)
に
追
(
お
)
はれ、
076
稍
(
やや
)
広
(
ひろ
)
き
樹木
(
じゆもく
)
稀
(
まれ
)
なる
原野
(
げんや
)
に
出
(
で
)
ることを
得
(
え
)
たり。
077
世界
(
せかい
)
第一
(
だいいち
)
の
大森林
(
だいしんりん
)
のこととて
名
(
な
)
も
知
(
し
)
れぬ
大木
(
たいぼく
)
、
078
風
(
かぜ
)
を
含
(
ふく
)
んでごうごうと
吼
(
ほ
)
え
猛
(
たけ
)
り、
079
見慣
(
みな
)
れぬ
美
(
うる
)
はしき
果物
(
くだもの
)
は
所々
(
ところどころ
)
に
稔
(
みの
)
りつつあり。
080
一行
(
いつかう
)
は
樹木
(
じゆもく
)
まばらなる
此
(
この
)
原野
(
げんや
)
に
酷熱
(
こくねつ
)
の
太陽
(
たいやう
)
の
光
(
ひかり
)
を
浴
(
あ
)
びながら
物珍
(
ものめづ
)
らしげに
日光浴
(
につくわうよく
)
を
恣
(
ほしいまま
)
にせり。
081
此
(
この
)
時
(
とき
)
前方
(
ぜんぱう
)
より
得
(
え
)
も
言
(
い
)
はれぬ
美
(
うる
)
はしき
一人
(
ひとり
)
の
女
(
をんな
)
、
082
悠々
(
いういう
)
として
高姫
(
たかひめ
)
一行
(
いつかう
)
が
前
(
まへ
)
に
進
(
すす
)
み
来
(
きた
)
る
訝
(
いぶ
)
かしさ。
083
四
(
よ
)
人
(
にん
)
は
顔
(
かほ
)
を
見合
(
みあは
)
せて、
084
妖怪
(
えうくわい
)
変化
(
へんげ
)
の
出現
(
しゆつげん
)
ならむと、
085
腹帯
(
はらおび
)
を
締
(
し
)
め
肝
(
きも
)
を
据
(
す
)
ゑて、
086
女
(
をんな
)
の
近寄
(
ちかよ
)
るを
待
(
ま
)
ち
居
(
ゐ
)
たる。
087
女
(
をんな
)
は
声
(
こゑ
)
しとやかに
高姫
(
たかひめ
)
の
前
(
まへ
)
に
来
(
きた
)
り、
088
お
辞儀
(
じぎ
)
しながら、
089
少
(
すこ
)
しく
顔
(
かほ
)
を
赤
(
あか
)
らめ、
090
女
『エヽ
一寸
(
ちよつと
)
お
尋
(
たづ
)
ね
致
(
いた
)
しますが、
091
あなたは
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
、
092
玉捜
(
たまさが
)
しの
高姫
(
たかひめ
)
様
(
さま
)
一行
(
いつかう
)
では
御座
(
ござ
)
いませぬか?
玉
(
たま
)
が
御
(
ご
)
入用
(
にふよう
)
ならば
金剛
(
こんがう
)
不壊
(
ふゑ
)
の
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
、
093
紫色
(
むらさきいろ
)
の
玉
(
たま
)
、
094
黄金
(
こがね
)
の
玉
(
たま
)
、
095
麻邇
(
まに
)
の
宝珠
(
ほつしゆ
)
は、
096
数限
(
かずかぎ
)
りなく
妾
(
わらは
)
の
館
(
やかた
)
に
遠
(
とほ
)
き
神代
(
かみよ
)
の
昔
(
むかし
)
より、
097
神政
(
しんせい
)
成就
(
じやうじゆ
)
の
宝
(
たから
)
として
数多
(
あまた
)
蓄
(
たくは
)
へて
御座
(
ござ
)
いますれば、
098
どうぞ、
099
御
(
お
)
検
(
あらた
)
めの
上
(
うへ
)
御
(
お
)
受
(
う
)
け
取
(
と
)
り
下
(
くだ
)
さいますれば、
100
実
(
じつ
)
に
有難
(
ありがた
)
き
仕合
(
しあは
)
せに
存
(
ぞん
)
じ
奉
(
たてまつ
)
ります』
101
一旦
(
いつたん
)
玉
(
たま
)
の
執着
(
しふちやく
)
をはなれたる
高姫
(
たかひめ
)
は、
102
又
(
また
)
もや
此
(
この
)
言葉
(
ことば
)
を
聞
(
き
)
いて
持病
(
ぢびやう
)
再発
(
さいはつ
)
したるものの
如
(
ごと
)
く、
103
目
(
め
)
を
丸
(
まる
)
くし、
104
顔
(
かほ
)
を
妙
(
めう
)
に
緊張
(
きんちやう
)
させながら、
105
高姫
『エヽ
何
(
なん
)
と
仰
(
おほ
)
せられます。
106
金剛
(
こんがう
)
不壊
(
ふゑ
)
の
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
は
世界
(
せかい
)
に
一
(
ひと
)
つよりなきものと
存
(
ぞん
)
じて
居
(
を
)
りますが、
107
貴女
(
あなた
)
の
御
(
お
)
宅
(
たく
)
にはそれ
程
(
ほど
)
沢山
(
たくさん
)
に
御
(
お
)
持
(
も
)
ちで
御座
(
ござ
)
いますか。
108
ソリヤ
大方
(
おほかた
)
偽玉
(
にせだま
)
では
御座
(
ござ
)
いませぬか?
金剛
(
こんがう
)
不壊
(
ふゑ
)
の
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
と
云
(
い
)
へば
世界
(
せかい
)
に
一
(
ひと
)
つよりなき
筈
(
はず
)
で
御座
(
ござ
)
いますが……』
109
と
半信
(
はんしん
)
半疑
(
はんぎ
)
の
目
(
め
)
を
見張
(
みは
)
り、
110
あわよくば
此
(
この
)
玉
(
たま
)
を
得
(
え
)
て
帰
(
かへ
)
らむとの
野心
(
やしん
)
にみたされながら、
111
心
(
こころ
)
欣々
(
いそいそ
)
として
尋
(
たづ
)
ね
返
(
かへ
)
した。
112
美人
(
びじん
)
は
打笑
(
うちわら
)
ひ、
113
女
『ホヽヽヽヽ、
114
高姫
(
たかひめ
)
様
(
さま
)
貴女
(
あなた
)
は
妾
(
わらは
)
の
申
(
まを
)
す
事
(
こと
)
をお
疑
(
うたが
)
ひ
遊
(
あそ
)
ばすので
御座
(
ござ
)
いますか?
論
(
ろん
)
より
証拠
(
しようこ
)
、
115
妾
(
わらは
)
が
宅
(
たく
)
へお
出
(
い
)
で
下
(
くだ
)
さいますれば、
116
お
分
(
わか
)
りになるでせう。
117
如意
(
によい
)
の
宝珠
(
ほつしゆ
)
は
只
(
ただ
)
一個
(
いつこ
)
とのみ
思召
(
おぼしめ
)
すのは、
118
失礼
(
しつれい
)
な
申分
(
まをしぶん
)
ながら、
119
井中
(
せいちう
)
の
蛙
(
かはづ
)
大海
(
たいかい
)
を
知
(
し
)
らざる
譬
(
たとへ
)
も
同様
(
どうやう
)
で
御座
(
ござ
)
います。
120
マア
一寸
(
ちよつと
)
妾
(
わらは
)
の
宅
(
たく
)
までお
出
(
い
)
で
下
(
くだ
)
さいまして、
121
お
査
(
しら
)
べなさいませ』
122
高姫
『ナンと
妙
(
めう
)
なことを
仰
(
あふ
)
せられます。
123
さうして
又
(
また
)
昔
(
むかし
)
から
人
(
ひと
)
の
来
(
き
)
たことのない
此
(
この
)
森林
(
しんりん
)
に
貴女
(
あなた
)
が
住
(
す
)
んで
居
(
を
)
られるとは
合点
(
がつてん
)
が
参
(
まゐ
)
らぬぢやありませぬか?
何神
(
なにがみ
)
様
(
さま
)
かの
化身
(
けしん
)
では
御座
(
ござ
)
いますまいか?
人間
(
にんげん
)
の
住
(
す
)
むべき
場所
(
ばしよ
)
ぢや
御座
(
ござ
)
いますまい』
124
女
『ホヽヽヽヽ、
125
此
(
この
)
森林
(
しんりん
)
に
人間
(
にんげん
)
が
住
(
す
)
めない
道理
(
だうり
)
がどこに
御座
(
ござ
)
いませう。
126
現
(
げん
)
に
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
、
127
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
さまの
一行
(
いつかう
)
が
御
(
お
)
住居
(
すまゐ
)
になつてゐるぢやありませぬか』
128
高姫
『アヽ
其
(
その
)
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
、
129
竜国別
(
たつくにわけ
)
一行
(
いつかう
)
の
在処
(
ありか
)
を
捜
(
さが
)
すべく、
130
それが
第一
(
だいいち
)
の
目的
(
もくてき
)
で
御座
(
ござ
)
います。
131
玉
(
たま
)
などは
最早
(
もはや
)
断念
(
だんねん
)
して
居
(
を
)
ります。
132
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
貴女
(
あなた
)
のお
宅
(
うち
)
に
其
(
その
)
尊
(
たふと
)
い
玉
(
たま
)
があつて、
133
私
(
わたくし
)
に
受取
(
うけと
)
れとの
事
(
こと
)
なれば、
134
別
(
べつ
)
に
否
(
いな
)
みは
致
(
いた
)
しませぬ。
135
そんなら
参
(
まゐ
)
りませう。
136
どうぞ
御
(
お
)
宅
(
たく
)
まで
案内
(
あんない
)
して
下
(
くだ
)
さい』
137
女
『
一寸
(
ちよつと
)
待
(
ま
)
つて
下
(
くだ
)
さいませ。
138
つい
其処
(
そこ
)
に
妾
(
わらは
)
の
住家
(
すみか
)
が
御座
(
ござ
)
いますれば、
139
俄
(
にはか
)
にお
越
(
こ
)
し
下
(
くだ
)
さいますと
余
(
あま
)
り
散
(
ち
)
らかつて
居
(
を
)
りますので
済
(
す
)
みませぬ。
140
どうぞ
此処
(
ここ
)
でゆるゆると
休
(
やす
)
んでゐて
下
(
くだ
)
さい。
141
其
(
その
)
中
(
うち
)
に
又
(
また
)
お
迎
(
むか
)
へに
参
(
まゐ
)
ります。
142
又
(
また
)
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
様
(
さま
)
一行
(
いつかう
)
の
在処
(
ありか
)
を
御
(
お
)
探
(
たづ
)
ねならば、
143
妾
(
わらは
)
が
存
(
ぞん
)
じてゐますから、
144
ゆつくりと
妾
(
わらは
)
が
案内
(
あんない
)
致
(
いた
)
します。
145
此
(
この
)
広
(
ひろ
)
い
森
(
もり
)
を
五
(
ご
)
年
(
ねん
)
や
十
(
じふ
)
年
(
ねん
)
当所
(
あてど
)
もなく
御
(
お
)
探
(
たづ
)
ねになつたつて、
146
分
(
わか
)
る
道理
(
だうり
)
がありませぬから……』
147
高姫
『
何
(
なに
)
から
何
(
なに
)
まで
御
(
ご
)
親切
(
しんせつ
)
なる
御
(
お
)
言葉
(
ことば
)
、
148
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のなさることは
抜
(
ぬ
)
け
目
(
め
)
のないもので……あなたにお
目
(
め
)
にかかるも
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のお
引合
(
ひきあは
)
せです。
149
ほのぼのと
出
(
で
)
て
行
(
い
)
けど
心淋
(
こころさび
)
しく
思
(
おも
)
ふなよ
150
力
(
ちから
)
になる
人
(
ひと
)
用意
(
ようい
)
がしてあるぞよ
151
とお
筆
(
ふで
)
に
出
(
で
)
て
居
(
ゐ
)
る。
152
一分
(
いちぶ
)
一厘
(
いちりん
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
言葉
(
ことば
)
は
違
(
ちが
)
ひはありませぬワイ。
153
これが
違
(
ちが
)
うたら
神
(
かみ
)
は
此
(
この
)
世
(
よ
)
に
居
(
を
)
らぬぞよと
仰有
(
おつしや
)
るのだから、
154
斯
(
こ
)
んな
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
なことは
御座
(
ござ
)
いませぬ。
155
オホヽヽヽ』
156
女
『
暫
(
しばら
)
く
御免
(
ごめん
)
蒙
(
かうむ
)
ります。
157
後
(
ご
)
してお
迎
(
むか
)
へに……』
158
と
云
(
い
)
ひながら、
159
足早
(
あしばや
)
にあたりの
森林
(
しんりん
)
に
消
(
き
)
ゆるが
如
(
ごと
)
く
姿
(
すがた
)
をかくしける。
160
高姫
(
たかひめ
)
は
後
(
あと
)
見送
(
みおく
)
つてニコニコ
顔
(
がほ
)
、
161
高姫
『コレ
常
(
つね
)
さま、
162
春
(
はる
)
さま、
163
ヨブさまえ、
164
神
(
かみ
)
さまと
云
(
い
)
ふ
方
(
かた
)
はエライ
力
(
ちから
)
で
御座
(
ござ
)
いませうがなア。
165
此
(
この
)
様
(
やう
)
な
東西
(
とうざい
)
南北
(
なんぽく
)
果
(
は
)
てしもなき
大森林
(
だいしんりん
)
の
中
(
なか
)
で、
166
あんな
美
(
うつく
)
しき
女
(
をんな
)
に
出会
(
であ
)
ふとは
夢
(
ゆめ
)
にも
思
(
おも
)
はなかつたでせう。
167
私
(
わたし
)
でさへもこんな
事
(
こと
)
があらうとは
思
(
おも
)
はなんだのですよ。
168
ついては
改心
(
かいしん
)
位
(
くらゐ
)
結構
(
けつこう
)
なものは
御座
(
ござ
)
いますまい。
169
自転倒
(
おのころ
)
島
(
じま
)
に
居
(
を
)
つた
時
(
とき
)
に、
170
金剛
(
こんがう
)
不壊
(
ふゑ
)
の
一
(
ひと
)
つの
玉
(
たま
)
に
現
(
うつつ
)
をぬかし、
171
此
(
この
)
宝
(
たから
)
がなければ
神政
(
しんせい
)
成就
(
じやうじゆ
)
は
出来
(
でき
)
ない、
172
又
(
また
)
高姫
(
たかひめ
)
が
之
(
これ
)
を
使用
(
しよう
)
せなくては、
173
神政
(
しんせい
)
成就
(
じやうじゆ
)
は
駄目
(
だめ
)
だと
思
(
おも
)
ひつめて、
174
いろいろと
心
(
こころ
)
を
砕
(
くだ
)
きましたが、
175
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
は
有難
(
ありがた
)
い。
176
苦労
(
くらう
)
艱難
(
かんなん
)
を
十分
(
じふぶん
)
にさせておいて、
177
こんな
所
(
ところ
)
で
思
(
おも
)
ひがけなく
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
の
玉
(
たま
)
を
下
(
くだ
)
さるとは、
178
何
(
なん
)
と
有難
(
ありがた
)
いことぢや
御座
(
ござ
)
いませぬか。
179
それだから
魂
(
たましひ
)
を
研
(
みが
)
いて
改心
(
かいしん
)
なされと
申
(
まを
)
すのだよ。
180
コレ
常
(
つね
)
さま、
181
春
(
はる
)
さま、
182
ヨブさまよ、
183
お
前
(
まへ
)
は
結構
(
けつこう
)
なお
神徳
(
かげ
)
を
頂
(
いただ
)
いて
万劫
(
まんがふ
)
末代
(
まつだい
)
名
(
な
)
の
残
(
のこ
)
る
御用
(
ごよう
)
が
出来
(
でき
)
ますぞえ。
184
これも
全
(
まつた
)
く
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の……オツトドツコイ、
185
モウ
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
は
云
(
い
)
はぬ
筈
(
はず
)
だつた……
神
(
かみ
)
さま、
186
うつかりと
申
(
まを
)
しました、
187
どうぞお
許
(
ゆる
)
し
下
(
くだ
)
さいませ……
高姫
(
たかひめ
)
についてお
出
(
い
)
でたればこそ、
188
こんな
御用
(
ごよう
)
が
出来
(
でき
)
ますぞえ。
189
何
(
なに
)
を
云
(
い
)
うても
変性
(
へんじやう
)
男子
(
なんし
)
の
御
(
ご
)
系統
(
ひつぽう
)
……オツトドツコイ、
190
之
(
これ
)
も
云
(
い
)
ふ
筈
(
はず
)
ぢやなかつたが
余
(
あま
)
りの
嬉
(
うれ
)
しさに、
191
ツイこぼれました。
192
ホヽヽヽヽ』
193
常彦
(
つねひこ
)
『
其
(
その
)
玉
(
たま
)
が
沢山
(
たくさん
)
手
(
て
)
に
入
(
い
)
るからは、
194
何程
(
なにほど
)
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
と
仰有
(
おつしや
)
らうが、
195
変性
(
へんじやう
)
男子
(
なんし
)
の
系統
(
ひつぽう
)
と
申
(
まを
)
されようが、
196
差支
(
さしつかへ
)
はないぢやありませぬか。
197
正々
(
せいせい
)
堂々
(
だうだう
)
と
玉
(
たま
)
を
携
(
たづさ
)
へて
帰
(
かへ
)
り、
198
さすがは
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
ぢや、
199
変性
(
へんじやう
)
男子
(
なんし
)
の
系統
(
ひつぽう
)
のなさることは、
200
マアざつとこの
通
(
とほ
)
りだ。
201
皆
(
みな
)
さま、
202
ヘン
済
(
す
)
みませぬナ……と
云
(
い
)
ふやうな
顔
(
かほ
)
して
帰
(
かへ
)
つた
所
(
ところ
)
で、
203
誰
(
たれ
)
が
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ふ
者
(
もの
)
が
御座
(
ござ
)
いませうか。
204
神
(
かみ
)
さまだつて、
205
これ
丈
(
だけ
)
の
御用
(
ごよう
)
をあそばした
高姫
(
たかひめ
)
様
(
さま
)
に、
206
少々
(
せうせう
)
の
過
(
あやま
)
ち
位
(
くらゐ
)
あつたとて、
207
御
(
お
)
咎
(
とが
)
め
遊
(
あそ
)
ばす
道理
(
だうり
)
も
御座
(
ござ
)
いますまい。
208
イヤもう
結構
(
けつこう
)
な
事
(
こと
)
が
到来
(
たうらい
)
致
(
いた
)
しました。
209
お
供
(
とも
)
に
出
(
で
)
て
来
(
き
)
た
私
(
わたし
)
さへ、
210
余
(
あま
)
り
嬉
(
うれ
)
して
嬉
(
うれ
)
しうて、
211
手
(
て
)
が
舞
(
ま
)
ひ、
212
足
(
あし
)
が
踊
(
をど
)
りますワイ。
213
アハヽヽヽオホヽヽヽ』
214
と
何
(
なに
)
が
嬉
(
うれ
)
しいのやら、
215
手
(
て
)
を
拍
(
う
)
つて
踊
(
をど
)
りまはる
其
(
その
)
可笑
(
をか
)
しさ。
216
春彦
(
はるひこ
)
は
余
(
あま
)
りすぐれぬ
顔付
(
かほつき
)
にて、
217
春彦
『モシモシ
高姫
(
たかひめ
)
さま、
218
常彦
(
つねひこ
)
さま、
219
チツト
御
(
ご
)
用心
(
ようじん
)
なされませや。
220
あなたは
又
(
また
)
もや
玉
(
たま
)
に
執着心
(
しふちやくしん
)
が
出
(
で
)
て
来
(
き
)
たやうな
塩梅
(
あんばい
)
ですよ。
221
今
(
いま
)
来
(
き
)
た
女
(
をんな
)
は
真
(
まこと
)
の
人間
(
にんげん
)
だと
思
(
おも
)
うて
居
(
を
)
られますか。
222
どうも
私
(
わたくし
)
には
腑
(
ふ
)
におちぬ
点
(
てん
)
が
御座
(
ござ
)
いますワ。
223
能
(
よ
)
く
能
(
よ
)
く
見
(
み
)
れば、
224
あの
娘
(
むすめ
)
の
耳
(
みみ
)
が
時々
(
ときどき
)
ビリビリと
動
(
うご
)
いたぢやありませぬか。
225
人間
(
にんげん
)
の
耳
(
みみ
)
は
不随意
(
ふずゐい
)
筋
(
きん
)
ですから、
226
動
(
うご
)
く
道理
(
だうり
)
はありませぬ。
227
獣
(
けだもの
)
に
限
(
かぎ
)
つて
随意筋
(
ずゐいきん
)
が
発達
(
はつたつ
)
して、
228
耳
(
みみ
)
を
手
(
て
)
のやうに
動
(
うご
)
かすものです。
229
コリヤうつかりはして
居
(
を
)
られますまい』
230
高姫
(
たかひめ
)
『
人間
(
にんげん
)
の
分際
(
ぶんざい
)
として、
231
神
(
かみ
)
さまの
事
(
こと
)
が
分
(
わか
)
るものですか。
232
春
(
はる
)
さまは
春
(
はる
)
さまらしうしてゐなさい……なア、
233
ヨブさま、
234
あなたどう
思
(
おも
)
ひますか、
235
あの
御
(
お
)
方
(
かた
)
を……』
236
ヨブ『
左様
(
さやう
)
ですなア。
237
吾々
(
われわれ
)
にはちつとも
見当
(
けんたう
)
が
取
(
と
)
れませぬ』
238
高姫
(
たかひめ
)
『アヽさうだらう さうだらう、
239
そこが
正直
(
しやうぢき
)
な
所
(
ところ
)
だ。
240
耳
(
みみ
)
が
動
(
うご
)
くの
動
(
うご
)
かぬの、
241
怪
(
あや
)
しいの
怪
(
あや
)
しくないの、
242
頭
(
あたま
)
から
疑
(
うたぐ
)
つてかかつては
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
仕組
(
しぐみ
)
は
分
(
わか
)
りませぬワイ。
243
お
前
(
まへ
)
は
余程
(
よつぽど
)
悧巧
(
りかう
)
な
方
(
かた
)
だと
思
(
おも
)
つたが、
244
私
(
わたし
)
の
目
(
め
)
はヤツパリ
違
(
ちが
)
ひませぬワイ、
245
オホヽヽヽ』
246
春彦
(
はるひこ
)
『そらさうかは
知
(
し
)
りませぬが、
247
如何
(
どう
)
しても
私
(
わたくし
)
には
合点
(
がつてん
)
の
虫
(
むし
)
が
承認
(
しようにん
)
しませぬよ。
248
よう
考
(
かんが
)
へて
御覧
(
ごらん
)
なさい。
249
こんな
森林
(
しんりん
)
にあんな
美
(
うつく
)
しい
女
(
をんな
)
が
住居
(
すまゐ
)
して
居
(
ゐ
)
る
道理
(
だうり
)
はないぢや
御座
(
ござ
)
いませぬか。
250
そして
又
(
また
)
金剛
(
こんがう
)
不壊
(
ふゑ
)
の
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
の
如
(
ごと
)
き
結構
(
けつこう
)
な
宝
(
たから
)
が
幾
(
いく
)
つもあつて、
251
それを
貰
(
もら
)
うてくれと
云
(
い
)
ふのが、
252
それが
第一
(
だいいち
)
理由
(
わけ
)
が
分
(
わか
)
らぬぢや
御座
(
ござ
)
いませぬか。
253
又
(
また
)
しても
執着心
(
しふちやくしん
)
を
起
(
おこ
)
して
失敗
(
しつぱい
)
なされましたら、
254
今度
(
こんど
)
は
取返
(
とりかへ
)
しが
出来
(
でき
)
ませぬぞ。
255
どうぞ
胸
(
むね
)
に
手
(
て
)
を
当
(
あ
)
ててトツクリと
御
(
ご
)
思案
(
しあん
)
なされませや』
256
高姫
(
たかひめ
)
『コレ
春
(
はる
)
さま、
257
お
前
(
まへ
)
は
年
(
とし
)
が
若
(
わか
)
いから、
258
何
(
なに
)
も
知
(
し
)
りさうな
事
(
こと
)
がない。
259
マア
此
(
この
)
高姫
(
たかひめ
)
のすることを
黙
(
だま
)
つて
見
(
み
)
て
居
(
ゐ
)
なさい。
260
年
(
とし
)
の
効
(
かう
)
は
豆
(
まめ
)
の
粉
(
こ
)
、
261
豆
(
まめ
)
の
粉
(
こ
)
は
黄
(
き
)
ナ
粉
(
こ
)
だ。
262
浮世
(
うきよ
)
の
波
(
なみ
)
にさらはれて、
263
千軍
(
せんぐん
)
万馬
(
ばんば
)
の
功
(
こう
)
を
経
(
へ
)
た
心
(
こころ
)
の
鏡
(
かがみ
)
の
光明
(
くわうみやう
)
に
映
(
うつ
)
つた
以上
(
いじやう
)
は、
264
どうして
間違
(
まちが
)
ふ
気遣
(
きづか
)
ひが
御座
(
ござ
)
いませうかい。
265
細工
(
さいく
)
は
流々
(
りうりう
)
仕上
(
しあ
)
げを
御覧
(
ごらう
)
じ、
266
そんな
分
(
わか
)
らぬ
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
ふと、
267
たつた
今
(
いま
)
アフンと
致
(
いた
)
さねばなりませぬぞや。
268
……コレ
常彦
(
つねひこ
)
、
269
ヨブの
両人
(
りやうにん
)
さま、
270
私
(
わたし
)
の
言
(
い
)
ふことが
違
(
ちが
)
ひますかな』
271
ヨブ『
違
(
ちが
)
ふか
違
(
ちが
)
はぬか、
272
そんなこと
如何
(
どう
)
して
分
(
わか
)
りませう』
273
高姫
(
たかひめ
)
『お
前
(
まへ
)
もみかけによらぬ
先
(
さき
)
の
見
(
み
)
えぬ
御
(
お
)
方
(
かた
)
ぢやなア。
274
大概
(
たいがい
)
分
(
わか
)
りさうなものぢやないか。
275
籔
(
やぶ
)
を
見
(
み
)
たら
筍
(
たけのこ
)
が
生
(
は
)
えて
居
(
ゐ
)
る、
276
池
(
いけ
)
を
見
(
み
)
たら
魚
(
さかな
)
が
住
(
す
)
んで
居
(
ゐ
)
る、
277
果樹
(
くわじゆ
)
を
見
(
み
)
たら、
278
コラ
甘
(
うま
)
い
果物
(
くだもの
)
がなつて
居
(
ゐ
)
る
位
(
くらゐ
)
の
事
(
こと
)
が
分
(
わか
)
らねば、
279
宣伝使
(
せんでんし
)
になつて
人
(
ひと
)
を
助
(
たす
)
けることは
出来
(
でき
)
ませぬぞえ。
280
お
筆先
(
ふでさき
)
には
一
(
いち
)
を
聞
(
き
)
いて
十
(
じふ
)
を
悟
(
さと
)
る
身魂
(
みたま
)
でないと、
281
まさかの
時
(
とき
)
の
間
(
ま
)
に
合
(
あ
)
はぬぞよと
御
(
お
)
示
(
しめ
)
しになつてるぢやありませぬか』
282
ヨブ『さうだと
云
(
い
)
つて
正直
(
しやうぢき
)
に
告白
(
こくはく
)
してゐるのですよ。
283
不可解
(
ふかかい
)
の
事
(
こと
)
を
分
(
わか
)
つたとは
申
(
まを
)
されませず、
284
又
(
また
)
断然
(
だんぜん
)
分
(
わか
)
らぬとも
云
(
い
)
へぬぢやありませぬか。
285
否定
(
ひてい
)
と
肯定
(
こうてい
)
とのまん
中
(
なか
)
に
立
(
た
)
つて
御
(
ご
)
返事
(
へんじ
)
をしたので
御座
(
ござ
)
います。
286
お
気
(
き
)
に
障
(
さは
)
りましたら、
287
真平
(
まつぴら
)
御免
(
ごめん
)
下
(
くだ
)
さいませ』
288
高姫
(
たかひめ
)
『エヽ
仕方
(
しかた
)
のない
御
(
ご
)
人足
(
にんそく
)
だな……コレコレ
常彦
(
つねひこ
)
、
289
お
前
(
まへ
)
は
余程
(
よほど
)
悧巧
(
りかう
)
さうな
顔付
(
かほつき
)
だ。
290
お
前
(
まへ
)
の
考
(
かんが
)
へは
間違
(
まちが
)
ひなからう、
291
どう
思
(
おも
)
ひますかなア』
292
常彦
(
つねひこ
)
『
誰
(
たれ
)
が
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても、
293
私
(
わたし
)
は
高姫
(
たかひめ
)
さまの
仰有
(
おつしや
)
ることを
真
(
まこと
)
と
信
(
しん
)
じます。
294
乍併
(
しかしながら
)
あの
娘
(
むすめ
)
の
言
(
い
)
つたことは
実地
(
じつち
)
に
当
(
あた
)
らねば、
295
愚鈍
(
ぐどん
)
な
私
(
わたくし
)
、
296
確
(
たし
)
かな
御
(
ご
)
返答
(
へんたふ
)
は
出来
(
でき
)
ませぬ』
297
高姫
(
たかひめ
)
『
扨
(
さて
)
も
扨
(
さて
)
も
困
(
こま
)
つた
分
(
わか
)
らずや
計
(
ばか
)
り
寄
(
よ
)
つたものだな。
298
世界
(
せかい
)
に
此
(
この
)
事
(
こと
)
を
分
(
わ
)
ける
者
(
もの
)
一人
(
ひとり
)
ありたら
物事
(
ものごと
)
は
立派
(
りつぱ
)
に
成就
(
じやうじゆ
)
するものなれど、
299
余
(
あま
)
り
身魂
(
みたま
)
が
曇
(
くも
)
り
切
(
き
)
りて
居
(
を
)
るから、
300
神
(
かみ
)
も
誠
(
まこと
)
に
骨
(
ほね
)
が
折
(
を
)
れるぞよ……と
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
が
仰有
(
おつしや
)
つた。
301
思
(
おも
)
へば
思
(
おも
)
へば
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
心
(
こころ
)
がおいとしいわいのう……それはさうと、
302
何故
(
なぜ
)
早
(
はや
)
くあの
娘
(
むすめ
)
さまは
出
(
で
)
て
来
(
こ
)
ないだらうか。
303
余
(
あま
)
り
広
(
ひろ
)
い
座敷
(
ざしき
)
で
御
(
お
)
掃除
(
さうぢ
)
に
暇
(
ひま
)
が
要
(
い
)
るのではなからうか』
304
春彦
(
はるひこ
)
『
高姫
(
たかひめ
)
さまの
天眼通
(
てんがんつう
)
で
御覧
(
ごらん
)
になつたら、
305
あの
娘
(
むすめ
)
が
何
(
なに
)
をしてゐる
位
(
くらゐ
)
は
分
(
わか
)
らにやなりますまい』
306
高姫
(
たかひめ
)
『
千騎
(
せんき
)
一騎
(
いつき
)
の
此
(
この
)
場合
(
ばあひ
)
、
307
神政
(
しんせい
)
成就
(
じやうじゆ
)
の
御
(
お
)
宝
(
たから
)
が
手
(
て
)
に
入
(
い
)
るか
入
(
い
)
らぬかと
云
(
い
)
ふ
時
(
とき
)
に、
308
そんな
小理屈
(
こりくつ
)
を
言
(
い
)
うておくれなや。
309
さうだから
大勢
(
おほぜい
)
は
入
(
い
)
らぬ、
310
大勢
(
おほぜい
)
居
(
を
)
ると
邪魔
(
じやま
)
が
入
(
い
)
りて
物事
(
ものごと
)
は
成就
(
じやうじゆ
)
致
(
いた
)
さぬと
御
(
お
)
示
(
しめ
)
しになつて
居
(
を
)
るぞえ』
311
春彦
(
はるひこ
)
『そんなら
私
(
わたくし
)
はこれからお
暇
(
いとま
)
申
(
まを
)
して
帰
(
かへ
)
りませうか』
312
高姫
(
たかひめ
)
『
肝腎
(
かんじん
)
の
御用
(
ごよう
)
は
一人
(
ひとり
)
ありたら
勤
(
つと
)
まるのだから、
313
勝手
(
かつて
)
になさりませ』
314
ヨブ『
今
(
いま
)
の
御
(
お
)
言葉
(
ことば
)
によれば、
315
一人
(
ひとり
)
ありたらよいとの
事
(
こと
)
、
316
そんなら
私
(
わたくし
)
も
春彦
(
はるひこ
)
さまと
一緒
(
いつしよ
)
にお
暇
(
いとま
)
致
(
いた
)
しませうか、
317
御
(
お
)
邪魔
(
じやま
)
をしては
済
(
す
)
みませぬからなア』
318
高姫
(
たかひめ
)
『コレ
気
(
き
)
の
早
(
はや
)
い、
319
そら
何
(
なに
)
を
言
(
い
)
はつしやるのだ。
320
ヨブさまに
帰
(
かへ
)
つてくれとは
申
(
まを
)
しませぬぞえ。
321
春
(
はる
)
さまだとて、
322
別
(
べつ
)
に
私
(
わたし
)
が
邪魔
(
じやま
)
になると
言
(
い
)
つたのぢやない。
323
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
言葉
(
ことば
)
を
参考
(
さんかう
)
の
為
(
ため
)
に
話
(
はな
)
して
聞
(
き
)
かした
丈
(
だけ
)
の
事
(
こと
)
だよ。
324
つまり
誠
(
まこと
)
のお
道
(
みち
)
は
大勢
(
おほぜい
)
よりは
一人
(
ひとり
)
の
方
(
はう
)
が
御用
(
ごよう
)
が
出来
(
でき
)
よいものだと
云
(
い
)
ふ
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
示
(
しめ
)
しを
話
(
はな
)
した
丈
(
だけ
)
ですから、
325
今
(
いま
)
となつて、
326
さう
悪気
(
わるき
)
をまはして
貰
(
もら
)
つちや
困
(
こま
)
りますワ。
327
千騎
(
せんき
)
一騎
(
いつき
)
の
此
(
この
)
場合
(
ばあひ
)
、
328
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
の
玉
(
たま
)
を
何程
(
なにほど
)
欲
(
よく
)
に
持
(
も
)
つたとて、
329
一人
(
ひとり
)
に
三
(
みつ
)
つ
位
(
くらゐ
)
より
持
(
も
)
てるものでない。
330
そして
四
(
よ
)
人
(
にん
)
居
(
を
)
れば、
331
三四
(
さんし
)
十二
(
じふに
)
の
玉
(
たま
)
が
手
(
て
)
に
入
(
い
)
るぢやありませぬか。
332
あゝ
斯
(
か
)
うなるとモ
少
(
すこ
)
しガラクタ
人間
(
にんげん
)
でもよいから
伴
(
つ
)
れて
来
(
く
)
るのだつたに、
333
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は
思
(
おも
)
ふやうに
行
(
ゆ
)
かぬものだなア』
334
春彦
(
はるひこ
)
『アハヽヽヽ、
335
何
(
なん
)
とお
口
(
くち
)
の
達者
(
たつしや
)
な
事
(
こと
)
、
336
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
御
(
お
)
手際
(
てぎは
)
拝見
(
はいけん
)
の
上
(
うへ
)
、
337
お
詫
(
わび
)
を
致
(
いた
)
しませう』
338
常彦
(
つねひこ
)
は
口
(
くち
)
を
尖
(
とが
)
らし、
339
常彦
『コリヤ
春彦
(
はるひこ
)
、
340
変性
(
へんじやう
)
男子
(
なんし
)
の
御
(
ご
)
系統
(
ひつぽう
)
に、
341
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ふ
御
(
ご
)
無礼
(
ぶれい
)
な
事
(
こと
)
を
申
(
まを
)
すか。
342
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
ぢやぞよ』
343
春彦
(
はるひこ
)
『ハイ
恐
(
おそ
)
れ
入
(
い
)
りました。
344
乍併
(
しかしながら
)
どうぞ
不調法
(
ぶてうはふ
)
のないやうに、
345
皆
(
みな
)
さま
御
(
お
)
願
(
ねがひ
)
申
(
まを
)
します』
346
高姫
(
たかひめ
)
『オホヽヽヽヽ、
347
あのマア
疑
(
うたがひ
)
の
深
(
ふか
)
い
事
(
こと
)
ワイのう』
348
斯
(
か
)
く
話
(
はな
)
す
折
(
をり
)
しも、
349
以前
(
いぜん
)
の
娘
(
むすめ
)
、
350
美々
(
びび
)
しき
盛装
(
せいさう
)
をこらし、
351
二人
(
ふたり
)
の
侍女
(
じじよ
)
を
従
(
したが
)
へて、
352
悠々
(
いういう
)
と
此方
(
こなた
)
に
向
(
むか
)
ひ
進
(
すす
)
み
来
(
きた
)
る。
353
(
大正一一・八・二二
旧六・三〇
松村真澄
録)
Δこのページの一番上に戻るΔ
<<< 獅子粉塵
(B)
(N)
三人娘 >>>
霊界物語
>
海洋万里(第25~36巻)
>
第32巻(未の巻)
> 第2篇 北の森林 > 第7章 試金玉
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【
メールアドレス
】
【第7章 試金玉|第32巻|海洋万里|霊界物語|/rm3207】
合言葉「みろく」を入力して下さい→