霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第七章 試金(しきん)玉(ぎよく)〔八九八〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第32巻 海洋万里 未の巻 篇:第2篇 北の森林 よみ(新仮名遣い):きたのしんりん
章:第7章 試金玉 よみ(新仮名遣い):しきんぎょく 通し章番号:898
口述日:1922(大正11)年08月22日(旧06月30日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年10月15日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一部の章はAIによって要約を作成しています。[×閉じる]:
高姫は、常彦、春彦、ヨブとともにアマゾンの時雨の森の北の林に到着した。高姫は、この森林に居る鷹依姫一行を助け出そうと森の中を進んで行った。
すると前方より、えもいわれぬ美しさの女が一人現れ、一行に向かって近づいてきた。一行は、すわ妖怪変化かと警戒している。
女は高姫の前に来てお辞儀をした。女は高姫たちがここへくることを知っており、金剛不壊の如意宝珠、紫の玉、黄金の玉、麻邇の宝珠などは、自分の館に神政成就の宝として蓄えられているので献上しようと申し出た。
改心したはずの高姫は、この甘言を聞いてたちまち元の病が再発したごとくに目を丸くして顔を緊張させ、女の話に食いついてきた。世界に二つとない宝が本当にこんなところにあるのかと疑う高姫に対し、女は実地に来てみて調べればわかる、と答えた。
女は鷹依姫たちがどこに居るかも後で教えよう、と言うと、高姫たちを迎える準備をするからしばらく待つようにと言い残して去って行った。
高姫は女を見送って上機嫌で、常彦、春彦、ヨブに自分の神徳をひけらかし始めた。常彦は高姫に合わせて、宝珠が手に入る運びになったことを馬鹿喜びしている。
春彦は、女の耳がビリビリ動いていたことを告げて、高姫と常彦に女は妖怪変化ではないかと懸念を伝え、用心するようにと戒めた。高姫は春彦を叱りつけ、言い争いになってしまう。
春彦とヨブは高姫のもとを去ろうとするが、高姫は二人をあわてて引き留める。高姫の味方をしていた常彦にしても、高姫に同意しているようで実は皮肉っている口調が現れてきてしまっていた。
そこへ先ほどの女が美々しく盛装をこらし、二人の侍女を従えてやってきた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2022-05-02 18:30:21 文字数:5300 OBC :rm3207
愛善世界社版:77頁 八幡書店版:第6輯 176頁 修補版: 校定版:81頁 普及版:29頁 初版: ページ備考:
001金剛(こんがう)不壊(ふゑ)の如意(によい)宝珠(ほつしゆ)
002紫色(むらさきいろ)の宝玉(ほうぎよく)や
003黄金(こがね)の玉(たま)を紛失(ふんしつ)し
004心(こころ)いらちて高姫(たかひめ)が
005鷹依姫(たかよりひめ)や黒姫(くろひめ)は
006言(い)ふも更(さら)なり傍人(ばうじん)に
007向(むか)つて怒(いか)り八当(やつあた)り
008玉(たま)の在処(ありか)を探(さぐ)らむと
009海洋(かいやう)万里(ばんり)を乗越(のりこ)えて
010捜(さが)し廻(まは)れど影(かげ)さへも
011なみの上(うへ)をば徘徊(さまよ)ひつ
012再(ふたた)び聖地(せいち)に立帰(たちかへ)り
013八尋(やひろ)の殿(との)に黒姫(くろひめ)と
014麻邇(まに)の宝珠(ほつしゆ)の玉(たま)しらべ
015これ又(また)案(あん)に相違(さうゐ)して
016面(つら)を膨(ふく)らせ泡(あわ)をふき
017言依別(ことよりわけ)の教主(けうしゆ)奴(め)が
018三(みつ)つの宝(たから)や麻邇(まに)の玉(たま)
019盗(ぬす)み隠(かく)して聖地(せいち)をば
020後(あと)に見(み)すてて高砂(たかさご)の
021島(しま)に渡(わた)りしものなりと
022思(おも)ひつめたる一心(いつしん)の
023心猿(しんゑん)意馬(いば)の狂(くる)ふまで
024春彦(はるひこ)、常彦(つねひこ)伴(ともな)ひて
025高砂島(たかさごじま)に打渡(うちわた)り
026テルの島国(しまぐに)振出(ふりだ)しに
027鏡(かがみ)の池(いけ)に立寄(たちよ)りて
028架橋(かけはし)御殿(ごてん)に侵入(しんにふ)し
029減(へ)らず口(ぐち)のみ並(なら)べ立(た)て
030皇(すめ)大神(おほかみ)の戒(いまし)めを
031受(う)けてやかたを飛(と)び出(いだ)し
032アリナの山(やま)を乗越(のりこ)えて
033アルゼンチンの大野原(おほのはら)
034木(こ)の花姫(はなひめ)の化身(けしん)なる
035日(ひ)の出姫(でのひめ)に廻(めぐ)り会(あ)ひ
036いよいよ茲(ここ)に悔悟(くわいご)して
037荒野(あらの)をわたり河(かは)を越(こ)え
038夜(よ)を日(ひ)についでアル港(みなと)
039ここより船(ふね)に身(み)を任(まか)せ
040ゼムの港(みなと)に上陸(じやうりく)し
041天祥山(てんしやうざん)を乗越(のりこ)えて
042チンの港(みなと)に辿(たど)りつき
043鷹依姫(たかよりひめ)の一行(いつかう)を
044救(すく)はむものと真心(まごころ)の
045駒(こま)に鞭(むち)うち進(すす)み行(ゆ)く
046アマゾン河(がは)に来(き)て見(み)れば
047半濁流(はんだくりう)は滔々(たうたう)と
048目(め)さへ届(とど)かぬ広河(ひろかは)を
049勢(いきほひ)猛(たけ)く流(なが)れ居(ゐ)る
050波(なみ)のまにまにモールバンド
051怪(あや)しき頭(かしら)を擡(もた)げつつ
052吾物顔(わがものがほ)に荒(すさ)び居(ゐ)る
053流石(さすが)の高姫(たかひめ)仰天(ぎやうてん)し
054アマゾン河(がは)の北岸(きたぎし)に
055命(いのち)からがら辿(たど)りつき
056天津(あまつ)祝詞(のりと)を奏上(そうじやう)し
057宣伝歌(せんでんか)をば歌(うた)ひつつ
058森林(しんりん)深(ふか)く進(すす)み入(い)る
059遠(とほ)き神代(かみよ)の物語(ものがたり)
060いよいよここに述(の)べ立(た)つる
061あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
062御霊(みたま)幸(さち)はひましませよ。
063 高姫(たかひめ)は常彦(つねひこ)、064春彦(はるひこ)、065ヨブと共(とも)に漸(やうや)くアマゾン河(がは)の大森林(だいしんりん)、066時雨(しぐれ)の森(もり)の北(きた)の林(はやし)に安着(あんちやく)せり。067此処(ここ)は東西(とうざい)殆(ほとん)ど三百(さんびやく)里(り)、068南北(なんぽく)四百(よんひやく)里(り)位(くらゐ)の際限(さいげん)もなき大森林(だいしんりん)なり。
069 高姫(たかひめ)は此(この)森林(しんりん)に鷹依姫(たかよりひめ)の一行(いつかう)が迷(まよ)ひ居(ゐ)るものと深(ふか)く信(しん)じ、070一(いち)日(にち)も早(はや)く救(すく)ひ出(いだ)さむものと、071鬱蒼(うつさう)たる樹木(じゆもく)の間(あひだ)を右(みぎ)にくぐり左(ひだり)に抜(ぬ)け、072草(くさ)を分(わ)け、073身(み)を没(ぼつ)する許(ばか)りの笹原(ささはら)をくぐり、074時々(ときどき)猛獣(まうじう)に脅(おびや)かされ、075毒蛇(どくじや)に追(お)はれ、076稍(やや)広(ひろ)き樹木(じゆもく)稀(まれ)なる原野(げんや)に出(で)ることを得(え)たり。
077 世界(せかい)第一(だいいち)の大森林(だいしんりん)のこととて名(な)も知(し)れぬ大木(たいぼく)、078風(かぜ)を含(ふく)んでごうごうと吼(ほ)え猛(たけ)り、079見慣(みな)れぬ美(うる)はしき果物(くだもの)は所々(ところどころ)に稔(みの)りつつあり。080一行(いつかう)は樹木(じゆもく)まばらなる此(この)原野(げんや)に酷熱(こくねつ)の太陽(たいやう)の光(ひかり)を浴(あ)びながら物珍(ものめづ)らしげに日光浴(につくわうよく)を恣(ほしいまま)にせり。
081 此(この)時(とき)前方(ぜんぱう)より得(え)も言(い)はれぬ美(うる)はしき一人(ひとり)の女(をんな)、082悠々(いういう)として高姫(たかひめ)一行(いつかう)が前(まへ)に進(すす)み来(きた)る訝(いぶ)かしさ。083四(よ)人(にん)は顔(かほ)を見合(みあは)せて、084妖怪(えうくわい)変化(へんげ)の出現(しゆつげん)ならむと、085腹帯(はらおび)を締(し)め肝(きも)を据(す)ゑて、086女(をんな)の近寄(ちかよ)るを待(ま)ち居(ゐ)たる。
087 女(をんな)は声(こゑ)しとやかに高姫(たかひめ)の前(まへ)に来(きた)り、088お辞儀(じぎ)しながら、089少(すこ)しく顔(かほ)を赤(あか)らめ、
090女『エヽ一寸(ちよつと)お尋(たづ)ね致(いた)しますが、091あなたは三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)、092玉捜(たまさが)しの高姫(たかひめ)様(さま)一行(いつかう)では御座(ござ)いませぬか? 玉(たま)が御(ご)入用(にふよう)ならば金剛(こんがう)不壊(ふゑ)の如意(によい)宝珠(ほつしゆ)、093紫色(むらさきいろ)の玉(たま)、094黄金(こがね)の玉(たま)、095麻邇(まに)の宝珠(ほつしゆ)は、096数限(かずかぎ)りなく妾(わらは)の館(やかた)に遠(とほ)き神代(かみよ)の昔(むかし)より、097神政(しんせい)成就(じやうじゆ)の宝(たから)として数多(あまた)蓄(たくは)へて御座(ござ)いますれば、098どうぞ、099御(お)検(あらた)めの上(うへ)御(お)受(う)け取(と)り下(くだ)さいますれば、100実(じつ)に有難(ありがた)き仕合(しあは)せに存(ぞん)じ奉(たてまつ)ります』
101 一旦(いつたん)玉(たま)の執着(しふちやく)をはなれたる高姫(たかひめ)は、102又(また)もや此(この)言葉(ことば)を聞(き)いて持病(ぢびやう)再発(さいはつ)したるものの如(ごと)く、103目(め)を丸(まる)くし、104顔(かほ)を妙(めう)に緊張(きんちやう)させながら、
105高姫『エヽ何(なん)と仰(おほ)せられます。106金剛(こんがう)不壊(ふゑ)の如意(によい)宝珠(ほつしゆ)は世界(せかい)に一(ひと)つよりなきものと存(ぞん)じて居(を)りますが、107貴女(あなた)の御(お)宅(たく)にはそれ程(ほど)沢山(たくさん)に御(お)持(も)ちで御座(ござ)いますか。108ソリヤ大方(おほかた)偽玉(にせだま)では御座(ござ)いませぬか? 金剛(こんがう)不壊(ふゑ)の如意(によい)宝珠(ほつしゆ)と云(い)へば世界(せかい)に一(ひと)つよりなき筈(はず)で御座(ござ)いますが……』
109と半信(はんしん)半疑(はんぎ)の目(め)を見張(みは)り、110あわよくば此(この)玉(たま)を得(え)て帰(かへ)らむとの野心(やしん)にみたされながら、111心(こころ)欣々(いそいそ)として尋(たづ)ね返(かへ)した。112美人(びじん)は打笑(うちわら)ひ、
113女『ホヽヽヽヽ、114高姫(たかひめ)様(さま)貴女(あなた)は妾(わらは)の申(まを)す事(こと)をお疑(うたが)ひ遊(あそ)ばすので御座(ござ)いますか? 論(ろん)より証拠(しようこ)、115妾(わらは)が宅(たく)へお出(い)で下(くだ)さいますれば、116お分(わか)りになるでせう。117如意(によい)の宝珠(ほつしゆ)は只(ただ)一個(いつこ)とのみ思召(おぼしめ)すのは、118失礼(しつれい)な申分(まをしぶん)ながら、119井中(せいちう)の蛙(かはづ)大海(たいかい)を知(し)らざる譬(たとへ)も同様(どうやう)で御座(ござ)います。120マア一寸(ちよつと)妾(わらは)の宅(たく)までお出(い)で下(くだ)さいまして、121お査(しら)べなさいませ』
122高姫『ナンと妙(めう)なことを仰(あふ)せられます。123さうして又(また)昔(むかし)から人(ひと)の来(き)たことのない此(この)森林(しんりん)に貴女(あなた)が住(す)んで居(を)られるとは合点(がつてん)が参(まゐ)らぬぢやありませぬか? 何神(なにがみ)様(さま)かの化身(けしん)では御座(ござ)いますまいか? 人間(にんげん)の住(す)むべき場所(ばしよ)ぢや御座(ござ)いますまい』
124女『ホヽヽヽヽ、125此(この)森林(しんりん)に人間(にんげん)が住(す)めない道理(だうり)がどこに御座(ござ)いませう。126現(げん)に三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)、127鷹依姫(たかよりひめ)さまの一行(いつかう)が御(お)住居(すまゐ)になつてゐるぢやありませぬか』
128高姫『アヽ其(その)鷹依姫(たかよりひめ)、129竜国別(たつくにわけ)一行(いつかう)の在処(ありか)を捜(さが)すべく、130それが第一(だいいち)の目的(もくてき)で御座(ござ)います。131玉(たま)などは最早(もはや)断念(だんねん)して居(を)ります。132併(しか)し乍(なが)ら貴女(あなた)のお宅(うち)に其(その)尊(たふと)い玉(たま)があつて、133私(わたくし)に受取(うけと)れとの事(こと)なれば、134別(べつ)に否(いな)みは致(いた)しませぬ。135そんなら参(まゐ)りませう。136どうぞ御(お)宅(たく)まで案内(あんない)して下(くだ)さい』
137女『一寸(ちよつと)待(ま)つて下(くだ)さいませ。138つい其処(そこ)に妾(わらは)の住家(すみか)が御座(ござ)いますれば、139俄(にはか)にお越(こ)し下(くだ)さいますと余(あま)り散(ち)らかつて居(を)りますので済(す)みませぬ。140どうぞ此処(ここ)でゆるゆると休(やす)んでゐて下(くだ)さい。141其(その)中(うち)に又(また)お迎(むか)へに参(まゐ)ります。142又(また)鷹依姫(たかよりひめ)様(さま)一行(いつかう)の在処(ありか)を御(お)探(たづ)ねならば、143妾(わらは)が存(ぞん)じてゐますから、144ゆつくりと妾(わらは)が案内(あんない)致(いた)します。145此(この)広(ひろ)い森(もり)を五(ご)年(ねん)や十(じふ)年(ねん)当所(あてど)もなく御(お)探(たづ)ねになつたつて、146分(わか)る道理(だうり)がありませぬから……』
147高姫『何(なに)から何(なに)まで御(ご)親切(しんせつ)なる御(お)言葉(ことば)、148神(かみ)様(さま)のなさることは抜(ぬ)け目(め)のないもので……あなたにお目(め)にかかるも神(かみ)様(さま)のお引合(ひきあは)せです。
149  ほのぼのと出(で)て行(い)けど心淋(こころさび)しく思(おも)ふなよ
150      力(ちから)になる人(ひと)用意(ようい)がしてあるぞよ
151とお筆(ふで)に出(で)て居(ゐ)る。152一分(いちぶ)一厘(いちりん)神(かみ)様(さま)の御(お)言葉(ことば)は違(ちが)ひはありませぬワイ。153これが違(ちが)うたら神(かみ)は此(この)世(よ)に居(を)らぬぞよと仰有(おつしや)るのだから、154斯(こ)んな大丈夫(だいぢやうぶ)なことは御座(ござ)いませぬ。155オホヽヽヽ』
156女『暫(しばら)く御免(ごめん)蒙(かうむ)ります。157後(ご)してお迎(むか)へに……』
158と云(い)ひながら、159足早(あしばや)にあたりの森林(しんりん)に消(き)ゆるが如(ごと)く姿(すがた)をかくしける。
160 高姫(たかひめ)は後(あと)見送(みおく)つてニコニコ顔(がほ)、
161高姫『コレ常(つね)さま、162春(はる)さま、163ヨブさまえ、164神(かみ)さまと云(い)ふ方(かた)はエライ力(ちから)で御座(ござ)いませうがなア。165此(この)様(やう)な東西(とうざい)南北(なんぽく)果(は)てしもなき大森林(だいしんりん)の中(なか)で、166あんな美(うつく)しき女(をんな)に出会(であ)ふとは夢(ゆめ)にも思(おも)はなかつたでせう。167私(わたし)でさへもこんな事(こと)があらうとは思(おも)はなんだのですよ。168ついては改心(かいしん)位(くらゐ)結構(けつこう)なものは御座(ござ)いますまい。169自転倒(おのころ)島(じま)に居(を)つた時(とき)に、170金剛(こんがう)不壊(ふゑ)の一(ひと)つの玉(たま)に現(うつつ)をぬかし、171此(この)宝(たから)がなければ神政(しんせい)成就(じやうじゆ)は出来(でき)ない、172又(また)高姫(たかひめ)が之(これ)を使用(しよう)せなくては、173神政(しんせい)成就(じやうじゆ)は駄目(だめ)だと思(おも)ひつめて、174いろいろと心(こころ)を砕(くだ)きましたが、175神(かみ)様(さま)は有難(ありがた)い。176苦労(くらう)艱難(かんなん)を十分(じふぶん)にさせておいて、177こんな所(ところ)で思(おも)ひがけなく如意(によい)宝珠(ほつしゆ)の玉(たま)を下(くだ)さるとは、178何(なん)と有難(ありがた)いことぢや御座(ござ)いませぬか。179それだから魂(たましひ)を研(みが)いて改心(かいしん)なされと申(まを)すのだよ。180コレ常(つね)さま、181春(はる)さま、182ヨブさまよ、183お前(まへ)は結構(けつこう)なお神徳(かげ)を頂(いただ)いて万劫(まんがふ)末代(まつだい)名(な)の残(のこ)る御用(ごよう)が出来(でき)ますぞえ。184これも全(まつた)く日(ひ)の出神(でのかみ)の……オツトドツコイ、185モウ日(ひ)の出神(でのかみ)は云(い)はぬ筈(はず)だつた……神(かみ)さま、186うつかりと申(まを)しました、187どうぞお許(ゆる)し下(くだ)さいませ……高姫(たかひめ)についてお出(い)でたればこそ、188こんな御用(ごよう)が出来(でき)ますぞえ。189何(なに)を云(い)うても変性(へんじやう)男子(なんし)の御(ご)系統(ひつぽう)……オツトドツコイ、190之(これ)も云(い)ふ筈(はず)ぢやなかつたが余(あま)りの嬉(うれ)しさに、191ツイこぼれました。192ホヽヽヽヽ』
193常彦(つねひこ)『其(その)玉(たま)が沢山(たくさん)手(て)に入(い)るからは、194何程(なにほど)日(ひ)の出神(でのかみ)の生宮(いきみや)と仰有(おつしや)らうが、195変性(へんじやう)男子(なんし)の系統(ひつぽう)と申(まを)されようが、196差支(さしつかへ)はないぢやありませぬか。197正々(せいせい)堂々(だうだう)と玉(たま)を携(たづさ)へて帰(かへ)り、198さすがは日(ひ)の出神(でのかみ)の生宮(いきみや)ぢや、199変性(へんじやう)男子(なんし)の系統(ひつぽう)のなさることは、200マアざつとこの通(とほ)りだ。201皆(みな)さま、202ヘン済(す)みませぬナ……と云(い)ふやうな顔(かほ)して帰(かへ)つた所(ところ)で、203誰(たれ)が何(なん)と云(い)ふ者(もの)が御座(ござ)いませうか。204神(かみ)さまだつて、205これ丈(だけ)の御用(ごよう)をあそばした高姫(たかひめ)様(さま)に、206少々(せうせう)の過(あやま)ち位(くらゐ)あつたとて、207御(お)咎(とが)め遊(あそ)ばす道理(だうり)も御座(ござ)いますまい。208イヤもう結構(けつこう)な事(こと)が到来(たうらい)致(いた)しました。209お供(とも)に出(で)て来(き)た私(わたし)さへ、210余(あま)り嬉(うれ)して嬉(うれ)しうて、211手(て)が舞(ま)ひ、212足(あし)が踊(をど)りますワイ。213アハヽヽヽオホヽヽヽ』
214と何(なに)が嬉(うれ)しいのやら、215手(て)を拍(う)つて踊(をど)りまはる其(その)可笑(をか)しさ。216春彦(はるひこ)は余(あま)りすぐれぬ顔付(かほつき)にて、
217春彦『モシモシ高姫(たかひめ)さま、218常彦(つねひこ)さま、219チツト御(ご)用心(ようじん)なされませや。220あなたは又(また)もや玉(たま)に執着心(しふちやくしん)が出(で)て来(き)たやうな塩梅(あんばい)ですよ。221今(いま)来(き)た女(をんな)は真(まこと)の人間(にんげん)だと思(おも)うて居(を)られますか。222どうも私(わたくし)には腑(ふ)におちぬ点(てん)が御座(ござ)いますワ。223能(よ)く能(よ)く見(み)れば、224あの娘(むすめ)の耳(みみ)が時々(ときどき)ビリビリと動(うご)いたぢやありませぬか。225人間(にんげん)の耳(みみ)は不随意(ふずゐい)筋(きん)ですから、226動(うご)く道理(だうり)はありませぬ。227獣(けだもの)に限(かぎ)つて随意筋(ずゐいきん)が発達(はつたつ)して、228耳(みみ)を手(て)のやうに動(うご)かすものです。229コリヤうつかりはして居(を)られますまい』
230高姫(たかひめ)『人間(にんげん)の分際(ぶんざい)として、231神(かみ)さまの事(こと)が分(わか)るものですか。232春(はる)さまは春(はる)さまらしうしてゐなさい……なア、233ヨブさま、234あなたどう思(おも)ひますか、235あの御(お)方(かた)を……』
236ヨブ『左様(さやう)ですなア。237吾々(われわれ)にはちつとも見当(けんたう)が取(と)れませぬ』
238高姫(たかひめ)『アヽさうだらう さうだらう、239そこが正直(しやうぢき)な所(ところ)だ。240耳(みみ)が動(うご)くの動(うご)かぬの、241怪(あや)しいの怪(あや)しくないの、242頭(あたま)から疑(うたぐ)つてかかつては神(かみ)様(さま)の御(お)仕組(しぐみ)は分(わか)りませぬワイ。243お前(まへ)は余程(よつぽど)悧巧(りかう)な方(かた)だと思(おも)つたが、244私(わたし)の目(め)はヤツパリ違(ちが)ひませぬワイ、245オホヽヽヽ』
246春彦(はるひこ)『そらさうかは知(し)りませぬが、247如何(どう)しても私(わたくし)には合点(がつてん)の虫(むし)が承認(しようにん)しませぬよ。248よう考(かんが)へて御覧(ごらん)なさい。249こんな森林(しんりん)にあんな美(うつく)しい女(をんな)が住居(すまゐ)して居(ゐ)る道理(だうり)はないぢや御座(ござ)いませぬか。250そして又(また)金剛(こんがう)不壊(ふゑ)の如意(によい)宝珠(ほつしゆ)の如(ごと)き結構(けつこう)な宝(たから)が幾(いく)つもあつて、251それを貰(もら)うてくれと云(い)ふのが、252それが第一(だいいち)理由(わけ)が分(わか)らぬぢや御座(ござ)いませぬか。253又(また)しても執着心(しふちやくしん)を起(おこ)して失敗(しつぱい)なされましたら、254今度(こんど)は取返(とりかへ)しが出来(でき)ませぬぞ。255どうぞ胸(むね)に手(て)を当(あ)ててトツクリと御(ご)思案(しあん)なされませや』
256高姫(たかひめ)『コレ春(はる)さま、257お前(まへ)は年(とし)が若(わか)いから、258何(なに)も知(し)りさうな事(こと)がない。259マア此(この)高姫(たかひめ)のすることを黙(だま)つて見(み)て居(ゐ)なさい。260年(とし)の効(かう)は豆(まめ)の粉(こ)、261豆(まめ)の粉(こ)は黄(き)ナ粉(こ)だ。262浮世(うきよ)の波(なみ)にさらはれて、263千軍(せんぐん)万馬(ばんば)の功(こう)を経(へ)た心(こころ)の鏡(かがみ)の光明(くわうみやう)に映(うつ)つた以上(いじやう)は、264どうして間違(まちが)ふ気遣(きづか)ひが御座(ござ)いませうかい。265細工(さいく)は流々(りうりう)仕上(しあ)げを御覧(ごらう)じ、266そんな分(わか)らぬ事(こと)を言(い)ふと、267たつた今(いま)アフンと致(いた)さねばなりませぬぞや。268……コレ常彦(つねひこ)、269ヨブの両人(りやうにん)さま、270私(わたし)の言(い)ふことが違(ちが)ひますかな』
271ヨブ『違(ちが)ふか違(ちが)はぬか、272そんなこと如何(どう)して分(わか)りませう』
273高姫(たかひめ)『お前(まへ)もみかけによらぬ先(さき)の見(み)えぬ御(お)方(かた)ぢやなア。274大概(たいがい)分(わか)りさうなものぢやないか。275籔(やぶ)を見(み)たら筍(たけのこ)が生(は)えて居(ゐ)る、276池(いけ)を見(み)たら魚(さかな)が住(す)んで居(ゐ)る、277果樹(くわじゆ)を見(み)たら、278コラ甘(うま)い果物(くだもの)がなつて居(ゐ)る位(くらゐ)の事(こと)が分(わか)らねば、279宣伝使(せんでんし)になつて人(ひと)を助(たす)けることは出来(でき)ませぬぞえ。280お筆先(ふでさき)には一(いち)を聞(き)いて十(じふ)を悟(さと)る身魂(みたま)でないと、281まさかの時(とき)の間(ま)に合(あ)はぬぞよと御(お)示(しめ)しになつてるぢやありませぬか』
282ヨブ『さうだと云(い)つて正直(しやうぢき)に告白(こくはく)してゐるのですよ。283不可解(ふかかい)の事(こと)を分(わか)つたとは申(まを)されませず、284又(また)断然(だんぜん)分(わか)らぬとも云(い)へぬぢやありませぬか。285否定(ひてい)と肯定(こうてい)とのまん中(なか)に立(た)つて御(ご)返事(へんじ)をしたので御座(ござ)います。286お気(き)に障(さは)りましたら、287真平(まつぴら)御免(ごめん)下(くだ)さいませ』
288高姫(たかひめ)『エヽ仕方(しかた)のない御(ご)人足(にんそく)だな……コレコレ常彦(つねひこ)、289お前(まへ)は余程(よほど)悧巧(りかう)さうな顔付(かほつき)だ。290お前(まへ)の考(かんが)へは間違(まちが)ひなからう、291どう思(おも)ひますかなア』
292常彦(つねひこ)『誰(たれ)が何(なん)と云(い)つても、293私(わたし)は高姫(たかひめ)さまの仰有(おつしや)ることを真(まこと)と信(しん)じます。294乍併(しかしながら)あの娘(むすめ)の言(い)つたことは実地(じつち)に当(あた)らねば、295愚鈍(ぐどん)な私(わたくし)、296確(たし)かな御(ご)返答(へんたふ)は出来(でき)ませぬ』
297高姫(たかひめ)『扨(さて)も扨(さて)も困(こま)つた分(わか)らずや計(ばか)り寄(よ)つたものだな。298世界(せかい)に此(この)事(こと)を分(わ)ける者(もの)一人(ひとり)ありたら物事(ものごと)は立派(りつぱ)に成就(じやうじゆ)するものなれど、299余(あま)り身魂(みたま)が曇(くも)り切(き)りて居(を)るから、300神(かみ)も誠(まこと)に骨(ほね)が折(を)れるぞよ……と大神(おほかみ)様(さま)が仰有(おつしや)つた。301思(おも)へば思(おも)へば大神(おほかみ)様(さま)の御(お)心(こころ)がおいとしいわいのう……それはさうと、302何故(なぜ)早(はや)くあの娘(むすめ)さまは出(で)て来(こ)ないだらうか。303余(あま)り広(ひろ)い座敷(ざしき)で御(お)掃除(さうぢ)に暇(ひま)が要(い)るのではなからうか』
304春彦(はるひこ)『高姫(たかひめ)さまの天眼通(てんがんつう)で御覧(ごらん)になつたら、305あの娘(むすめ)が何(なに)をしてゐる位(くらゐ)は分(わか)らにやなりますまい』
306高姫(たかひめ)『千騎(せんき)一騎(いつき)の此(この)場合(ばあひ)、307神政(しんせい)成就(じやうじゆ)の御(お)宝(たから)が手(て)に入(い)るか入(い)らぬかと云(い)ふ時(とき)に、308そんな小理屈(こりくつ)を言(い)うておくれなや。309さうだから大勢(おほぜい)は入(い)らぬ、310大勢(おほぜい)居(を)ると邪魔(じやま)が入(い)りて物事(ものごと)は成就(じやうじゆ)致(いた)さぬと御(お)示(しめ)しになつて居(を)るぞえ』
311春彦(はるひこ)『そんなら私(わたくし)はこれからお暇(いとま)申(まを)して帰(かへ)りませうか』
312高姫(たかひめ)『肝腎(かんじん)の御用(ごよう)は一人(ひとり)ありたら勤(つと)まるのだから、313勝手(かつて)になさりませ』
314ヨブ『今(いま)の御(お)言葉(ことば)によれば、315一人(ひとり)ありたらよいとの事(こと)、316そんなら私(わたくし)も春彦(はるひこ)さまと一緒(いつしよ)にお暇(いとま)致(いた)しませうか、317御(お)邪魔(じやま)をしては済(す)みませぬからなア』
318高姫(たかひめ)『コレ気(き)の早(はや)い、319そら何(なに)を言(い)はつしやるのだ。320ヨブさまに帰(かへ)つてくれとは申(まを)しませぬぞえ。321春(はる)さまだとて、322別(べつ)に私(わたし)が邪魔(じやま)になると言(い)つたのぢやない。323神(かみ)様(さま)の御(お)言葉(ことば)を参考(さんかう)の為(ため)に話(はな)して聞(き)かした丈(だけ)の事(こと)だよ。324つまり誠(まこと)のお道(みち)は大勢(おほぜい)よりは一人(ひとり)の方(はう)が御用(ごよう)が出来(でき)よいものだと云(い)ふ神(かみ)様(さま)の御(お)示(しめ)しを話(はな)した丈(だけ)ですから、325今(いま)となつて、326さう悪気(わるき)をまはして貰(もら)つちや困(こま)りますワ。327千騎(せんき)一騎(いつき)の此(この)場合(ばあひ)、328如意(によい)宝珠(ほつしゆ)の玉(たま)を何程(なにほど)欲(よく)に持(も)つたとて、329一人(ひとり)に三(みつ)つ位(くらゐ)より持(も)てるものでない。330そして四(よ)人(にん)居(を)れば、331三四(さんし)十二(じふに)の玉(たま)が手(て)に入(い)るぢやありませぬか。332あゝ斯(か)うなるとモ少(すこ)しガラクタ人間(にんげん)でもよいから伴(つ)れて来(く)るのだつたに、333世(よ)の中(なか)は思(おも)ふやうに行(ゆ)かぬものだなア』
334春彦(はるひこ)『アハヽヽヽ、335何(なん)とお口(くち)の達者(たつしや)な事(こと)、336兎(と)も角(かく)御(お)手際(てぎは)拝見(はいけん)の上(うへ)、337お詫(わび)を致(いた)しませう』
338 常彦(つねひこ)は口(くち)を尖(とが)らし、
339常彦『コリヤ春彦(はるひこ)、340変性(へんじやう)男子(なんし)の御(ご)系統(ひつぽう)に、341何(なん)と云(い)ふ御(ご)無礼(ぶれい)な事(こと)を申(まを)すか。342日(ひ)の出神(でのかみ)の生宮(いきみや)ぢやぞよ』
343春彦(はるひこ)『ハイ恐(おそ)れ入(い)りました。344乍併(しかしながら)どうぞ不調法(ぶてうはふ)のないやうに、345皆(みな)さま御(お)願(ねがひ)申(まを)します』
346高姫(たかひめ)『オホヽヽヽヽ、347あのマア疑(うたがひ)の深(ふか)い事(こと)ワイのう』
348 斯(か)く話(はな)す折(をり)しも、349以前(いぜん)の娘(むすめ)、350美々(びび)しき盛装(せいさう)をこらし、351二人(ふたり)の侍女(じじよ)を従(したが)へて、352悠々(いういう)と此方(こなた)に向(むか)ひ進(すす)み来(きた)る。
353(大正一一・八・二二 旧六・三〇 松村真澄録)
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