ひとしきり酒宴が済み、三公は虎公、お愛、お梅、孫公、黒姫、兼公を自分の居間に誘い、四方山話をしながらくつろいで二次会を始めていた。子分たちもあちこちで思い思いにくつろいでいた。
三公の子分である六公、徳公、高公と、虎公の子分である新公、久公、八公の六人は打ち解けて話をしていた。徳公は、お愛に酒を注いでもらったことを自慢し始めた。
新公は負けずとのろけだすが、久公に実態はぜんぜん違うことを明かされて、言い合いを始めた。そのうちに殴り合いの喧嘩になってしまう。三公の子分たちは、今日はめでたい日だからと止めに入る。
新公は、虎公の古い従者であることから、お愛の方の素性を皆に話し始めた。お愛は実は、天教山から天使として火の国に降った八島別神(建日向別神)の娘・愛子姫であるという。
愛子姫は貴族生活がきらいで、両親の縁談を嫌って家を飛び出してしまった。そして夜道で悪漢に襲われかけていたところへ、新公を共に連れた虎公が出くわし、助けたのだという。
そのとき愛子姫は身分を明かし、身に着けていた宝石・宝玉をお礼にと差し出したが、虎公は頑として断り、どうしてもと愛子姫が差し出した宝を谷川に投げ捨ててしまったという。それで、愛子姫は虎公の気風に惚れこんでしまった。
愛子姫は、身分を隠しお愛と名乗って武野村で奉公して働いていた。そのときに大蛇の三公が口説きにやってきていたのだが、数年後、愛子姫は虎公に申し込んで結婚することになったのだという。
六公と高公は、新公の話から愛子姫を襲った悪漢は自分たちであったことに思い至り、悪いことはできないと悔悟し、改心の情を表した。
新公はさらに、虎公も実は火の国出身の虎転別、のちに豊の国で豊日別命となった神様の総領息子という身分で、虎若という名であることを明かした。
虎若は下女と駆け落ちする途上、病気で女を亡くしてしまった過去を持つという。新公も実は豊日別命の家来であったのが、虎若についてきて今に至っているということを自慢げに話した。
遠くに鳴り響く子の刻の鐘に、徳公はお開きして休もうと一同を促した。