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霊界物語
海洋万里(第25~36巻)
第35巻(戌の巻)
序文
総説歌
第1篇 向日山嵐
第1章 言の架橋
第2章 出陣
第3章 進隊詩
第4章 村の入口
第5章 案外
第6章 歌の徳
第7章 乱舞
第8章 心の綱
第9章 分担
第2篇 ナイルの水源
第10章 夢の誡
第11章 野宿
第12章 自称神司
第13章 山颪
第14章 空気焔
第15章 救の玉
第16章 浮島の花
第3篇 火の国都
第17章 霧の海
第18章 山下り
第19章 狐の出産
第20章 疑心暗狐
第21章 暗闘
第22章 当違
第23章 清交
第24章 歓喜の涙
余白歌
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第35巻(戌の巻)
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<<< 空気焔
(B)
(N)
浮島の花 >>>
第一五章
救
(
すくひ
)
の
玉
(
たま
)
〔九七九〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第35巻 海洋万里 戌の巻
篇:
第2篇 ナイルの水源
よみ(新仮名遣い):
ないるのすいげん
章:
第15章 救の玉
よみ(新仮名遣い):
すくいのたま
通し章番号:
979
口述日:
1922(大正11)年09月16日(旧07月25日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年12月25日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
お愛は簡単に大蛇を神の道に諭す歌を歌った。その言霊に今までの烈風は勢いを減じ、猛獣の叫びも火の玉もおさまってきたが、完全になくなりはしなかった。
虎公はねじり鉢巻きで宣伝歌を歌い言霊を発射した。虎公は大蛇が三公の両親を飲み込んだことの罪を挙げて悔悟を促し諭す歌を歌った。
しかしどうしたことか、湖面の怪物は姿形を変えて数限りなく浮かび上がり、四人の周りに集まって囲んだ。その臭気に四人はあてられて、弱り切ってしまった。
いつの間にか夜は明けて、湖面の怪物は次第に消えていき、太陽が照らし始めたときには怪物は残らず消え失せて、ただ紺碧の波が悠々と漂うのみであった。
四人は池の岸辺に座って昨夜の怪を話し合いながら湖水で禊をなし、天津祝詞を奏上した。すると木の茂みを分けて宣伝使が現れ、玉治別命と名乗った。
四人は玉治別の姿を見て喜び敬意を表した。玉治別は先回りして湖水の岸辺の森林に潜み、昨夜の言霊戦の様子をうかがっていたのであった。玉治別は四人の言霊が大蛇に押され気味であったことを茶化して声をかけた。
玉治別は、四人が火の玉の怪に襲われなかったのは、霊衣が厚く、その威徳におそれて近寄れなかったためだと解説した。また大蛇はまだ恐ろしいたくらみをしていたが、自分が鎮魂したために、山野に潜んでいた大蛇の手下の猛獣たちが逃げ去ったのだと経緯を明かした。
玉治別はにわか宣伝使の孫公をからかい軽く戒めたあと、湖水の浮島に渡って休息し、根本的に大蛇を言向け和そうと、一行の先に立って湖畔をたどって行く。一行は救われた気分で宣伝使の後を付いていった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-09-28 11:51:25
OBC :
rm3515
愛善世界社版:
168頁
八幡書店版:
第6輯 532頁
修補版:
校定版:
178頁
普及版:
65頁
初版:
ページ備考:
001
お
愛
(
あい
)
は
立上
(
たちあが
)
り、
002
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
歌
(
うた
)
う。
003
お愛
『
豊葦原
(
とよあしはら
)
の
瑞穂国
(
みづほくに
)
004
国
(
くに
)
の
八十国
(
やそくに
)
八十島
(
やそしま
)
は
005
国治立
(
くにはるたち
)
の
御
(
おん
)
体
(
からだ
)
006
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのを
)
の
御
(
ご
)
霊力
(
れいりよく
)
007
金勝要
(
きんかつかねの
)
大神
(
おほかみ
)
の
008
御霊
(
みたま
)
の
守
(
まも
)
らす
国
(
くに
)
なれば
009
此
(
この
)
三柱
(
みはしら
)
の
大神
(
おほかみ
)
の
010
御許
(
みゆる
)
しなくば
何神
(
なにがみ
)
も
011
此
(
この
)
世
(
よ
)
に
住
(
す
)
むべき
権利
(
けんり
)
なし
012
三五教
(
あななひけう
)
の
神司
(
かむづかさ
)
013
孫公別
(
まごこうわけ
)
に
従
(
したが
)
ひて
014
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
は
此処
(
ここ
)
に
曲神
(
まがかみ
)
の
015
曲言向
(
まがことむ
)
けて
神国
(
かみくに
)
を
016
清
(
きよ
)
く
涼
(
すず
)
しく
澄
(
す
)
まさむと
017
現
(
あら
)
はれ
出
(
い
)
でし
四人
(
よにん
)
連
(
づれ
)
018
湖底
(
こてい
)
に
潜
(
ひそ
)
む
曲神
(
まがかみ
)
よ
019
如何
(
いか
)
に
勢
(
いきほひ
)
猛
(
たけ
)
くとも
020
此
(
この
)
三柱
(
みはしら
)
の
皇神
(
すめかみ
)
の
021
許
(
ゆる
)
しなくして
地
(
ち
)
の
上
(
うへ
)
に
022
如何
(
いか
)
でか
安
(
やす
)
く
住
(
す
)
み
得
(
う
)
べき
023
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
024
神
(
かみ
)
の
御霊
(
みたま
)
を
蒙
(
かうむ
)
りて
025
一日
(
ひとひ
)
も
早
(
はや
)
く
片時
(
かたとき
)
も
026
とく
速
(
すみや
)
けく
三五
(
あななひ
)
の
027
誠
(
まこと
)
の
道
(
みち
)
の
御教
(
みをしへ
)
に
028
服
(
まつろ
)
ひまつれ
醜大蛇
(
しこをろち
)
029
それにつき
添
(
そ
)
ふ
諸々
(
もろもろ
)
の
030
百
(
もも
)
の
霊
(
みたま
)
に
宣
(
の
)
り
伝
(
つた
)
ふ
031
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
032
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はひましませよ』
033
と
簡単
(
かんたん
)
に
言霊
(
ことたま
)
を
打出
(
うちだ
)
したるに
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
の
烈風
(
れつぷう
)
は
其
(
その
)
勢
(
いきほひ
)
を
減
(
げん
)
じ、
034
猛獣
(
まうじう
)
の
唸
(
うな
)
り
声
(
ごゑ
)
は
漸
(
やうや
)
く
低
(
ひく
)
く
遠
(
とほ
)
く
去
(
さ
)
り
行
(
ゆ
)
き、
035
湖面
(
こめん
)
に
浮
(
うか
)
びし
諸々
(
もろもろ
)
の
怪物
(
くわいぶつ
)
は、
036
時々
(
じじ
)
刻々
(
こくこく
)
に
姿
(
すがた
)
を
減
(
げん
)
じたれども
容易
(
ようい
)
に
全滅
(
ぜんめつ
)
するには
到
(
いた
)
らざりければ、
037
茲
(
ここ
)
に
虎公
(
とらこう
)
は
捩鉢巻
(
ねぢはちまき
)
をしながら、
038
厳
(
いづ
)
の
雄健
(
をたけ
)
びふみたけびつつ、
039
大音声
(
だいおんじやう
)
を
張上
(
はりあ
)
げて、
040
詞
(
ことば
)
涼
(
すず
)
しく
言霊
(
ことたま
)
を
発射
(
はつしや
)
したり。
041
虎公
『
三千
(
さんぜん
)
世界
(
せかい
)
の
梅
(
うめ
)
の
花
(
はな
)
042
一度
(
いちど
)
に
開
(
ひら
)
く
時
(
とき
)
は
今
(
いま
)
043
大蛇
(
をろち
)
の
神
(
かみ
)
よよつく
聞
(
き
)
け
044
きさま
は
余程
(
よつぽど
)
太
(
ふと
)
い
奴
(
やつ
)
045
太
(
ふと
)
いばかりか
長
(
なが
)
い
奴
(
やつ
)
046
エヂプト
都
(
みやこ
)
に
名
(
な
)
も
高
(
たか
)
き
047
春公
(
はるこう
)
お
常
(
つね
)
の
両人
(
りやうにん
)
を
048
勿体
(
もつたい
)
なくも
呑
(
の
)
み
喰
(
くら
)
ひ
049
平気
(
へいき
)
の
平左
(
へいざ
)
で
此
(
この
)
湖
(
うみ
)
に
050
住居
(
ぢうきよ
)
するとは
何
(
なん
)
のこと
051
天地
(
てんち
)
の
神
(
かみ
)
を
畏
(
おそ
)
れぬか
052
此処
(
ここ
)
に
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
りたる
053
三公
(
さんこう
)
さまは
春公
(
はるこう
)
や
054
お
常
(
つね
)
の
方
(
かた
)
の
生
(
う
)
み
給
(
たま
)
ふ
055
珍
(
うづ
)
の
尊
(
たふと
)
き
御子
(
みこ
)
なるぞ
056
汝
(
なんぢ
)
心
(
こころ
)
のあるならば
057
早
(
はや
)
く
姿
(
すがた
)
を
現
(
あら
)
はして
058
吾
(
わが
)
目
(
め
)
の
前
(
まへ
)
に
出
(
い
)
で
来
(
きた
)
り
059
三公
(
さんこう
)
さまに
打向
(
うちむか
)
ひ
060
前非
(
ぜんぴ
)
を
悔
(
く
)
いて
詫
(
わび
)
をせよ
061
武野
(
たけの
)
の
村
(
むら
)
の
男達
(
をとこだて
)
062
虎公
(
とらこう
)
さまとはおれの
事
(
こと
)
063
虎
(
とら
)
狼
(
おほかみ
)
や
獅子
(
しし
)
熊
(
くま
)
も
064
おれの
名
(
な
)
を
聞
(
き
)
きや
驚
(
おどろ
)
いて
065
小
(
ちひ
)
さくなつて
逃
(
に
)
げて
行
(
ゆ
)
く
066
お
前
(
まへ
)
も
同
(
おな
)
じ
畜生
(
ちくしやう
)
の
067
醜
(
みにく
)
き
体
(
からだ
)
を
持
(
も
)
つ
上
(
うへ
)
は
068
俺
(
おれ
)
に
恥
(
はぢ
)
らひ
底深
(
そこふか
)
く
069
姿
(
すがた
)
隠
(
かく
)
してゐるのだろ
070
そんな
気兼
(
きがね
)
は
要
(
い
)
らぬ
故
(
ゆゑ
)
071
早
(
はや
)
く
此
(
この
)
場
(
ば
)
に
現
(
あら
)
はれて
072
善悪
(
ぜんあく
)
正邪
(
せいじや
)
の
大道
(
だいだう
)
を
073
悟
(
さと
)
りて
天津
(
あまつ
)
神国
(
かみくに
)
の
074
栄
(
さか
)
えを
永久
(
とは
)
に
楽
(
たの
)
しめよ
075
朝日
(
あさひ
)
は
照
(
て
)
るとも
曇
(
くも
)
るとも
076
月
(
つき
)
は
盈
(
み
)
つとも
虧
(
か
)
くるとも
077
大蛇
(
をろち
)
はいかに
猛
(
たけ
)
るとも
078
三五教
(
あななひけう
)
の
大道
(
おほみち
)
に
079
仕
(
つか
)
へまつれる
吾々
(
われわれ
)
は
080
いかで
初心
(
しよしん
)
を
変
(
へん
)
ずべき
081
誠
(
まこと
)
一
(
ひと
)
つの
言霊
(
ことたま
)
を
082
直日
(
なほひ
)
の
銃
(
つつ
)
につめ
込
(
こ
)
みて
083
忽
(
たちま
)
ち
打出
(
うちだ
)
す
宣伝歌
(
せんでんか
)
084
天
(
てん
)
は
轟
(
とどろ
)
き
地
(
ち
)
はゆるぎ
085
大海原
(
おほうなばら
)
は
浪
(
なみ
)
たけり
086
山
(
やま
)
は
忽
(
たちま
)
ち
裂
(
さ
)
けてゆく
087
此
(
この
)
神力
(
しんりき
)
の
活動
(
くわつどう
)
を
088
見
(
み
)
ない
間
(
あひだ
)
に
一刻
(
いつこく
)
も
089
早
(
はや
)
く
心
(
こころ
)
を
改
(
あらた
)
めて
090
善
(
ぜん
)
の
大道
(
おほぢ
)
に
帰
(
かへ
)
るべく
091
誓
(
ちか
)
ひを
立
(
た
)
てよ
大蛇神
(
をろちがみ
)
092
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
093
黒姫司
(
くろひめつかさ
)
に
従
(
したが
)
ひて
094
熊襲
(
くまそ
)
の
国
(
くに
)
へ
渡
(
わた
)
り
来
(
き
)
し
095
孫公別
(
まごこうわけ
)
を
始
(
はじ
)
めとし
096
三公
(
さんこう
)
、お
愛
(
あい
)
や
虎公
(
とらこう
)
の
097
四魂
(
しこん
)
の
身魂
(
みたま
)
が
今
(
いま
)
此処
(
ここ
)
に
098
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
り
言霊
(
ことたま
)
の
099
大戦
(
おほたたか
)
ひを
宣示
(
せんじ
)
する
100
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
101
神
(
かみ
)
の
心
(
こころ
)
を
諾
(
うべな
)
ひて
102
かかる
小
(
ちひ
)
さき
湖
(
うみ
)
を
捨
(
す
)
て
103
広
(
ひろ
)
き
尊
(
たふと
)
き
限
(
かぎ
)
りなき
104
天津
(
あまつ
)
御空
(
みそら
)
の
神国
(
かみくに
)
へ
105
心
(
こころ
)
も
広
(
ひろ
)
く
昇
(
のぼ
)
り
行
(
ゆ
)
け
106
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
107
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はひましませよ』
108
と
歌
(
うた
)
ひ
了
(
をは
)
る。
109
されど
如何
(
どう
)
したものか、
110
湖面
(
こめん
)
の
怪
(
くわい
)
はいろいろと
形
(
かたち
)
を
変
(
へん
)
じ、
111
蛸入道
(
たこにふだう
)
や
曲鬼
(
まがおに
)
、
112
四
(
よ
)
つ
目
(
め
)
小僧
(
こぞう
)
など
数
(
かず
)
限
(
かぎ
)
りなく
浮
(
うか
)
び
来
(
きた
)
り、
113
お
玉杓子
(
たまじやくし
)
の
形
(
かたち
)
せし
火玉
(
ひだま
)
は
幾百千
(
いくひやくせん
)
ともなく
唸
(
うな
)
りを
立
(
た
)
てて
土手
(
どて
)
の
如
(
ごと
)
く
集
(
あつ
)
まり
来
(
きた
)
り、
114
四
(
よ
)
人
(
にん
)
の
男女
(
だんぢよ
)
を
十重
(
とへ
)
二十重
(
はたへ
)
に
取巻
(
とりま
)
きぬ。
115
四
(
よ
)
人
(
にん
)
は
青臭
(
あをくさ
)
い
何
(
なん
)
ともいへぬ
臭気
(
しうき
)
に
鼻
(
はな
)
をつかれ、
116
胸
(
むね
)
塞
(
ふさ
)
がり、
117
腹
(
はら
)
痛
(
いた
)
み、
118
眼
(
まなこ
)
くらみて、
119
今
(
いま
)
や
如何
(
いかん
)
ともする
事
(
こと
)
能
(
あた
)
はざる
迄
(
まで
)
弱
(
よわ
)
り
切
(
き
)
つてゐる。
120
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
にやら
夜
(
よ
)
はカラリと
明
(
あ
)
けて、
121
湖面
(
こめん
)
より
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
りし
怪物
(
くわいぶつ
)
は
一
(
ひと
)
つ
減
(
へ
)
り
二
(
ふた
)
つ
減
(
へ
)
り、
122
太陽
(
たいやう
)
の
光線
(
くわうせん
)
が
地上
(
ちじやう
)
を
照
(
てら
)
す
時
(
とき
)
には、
123
怪物
(
くわいぶつ
)
の
姿
(
すがた
)
は
残
(
のこ
)
らず
消
(
き
)
え
失
(
う
)
せて、
124
湖面
(
こめん
)
は
只
(
ただ
)
紺碧
(
こんぺき
)
の
波
(
なみ
)
が
悠々
(
いういう
)
と
漂
(
ただよ
)
ひゐるのみ。
125
四
(
よ
)
人
(
にん
)
は
池
(
いけ
)
の
岸辺
(
かたへ
)
に
端坐
(
たんざ
)
し、
126
昨夜
(
さくや
)
の
怪
(
くわい
)
を
話
(
はな
)
し
合
(
あ
)
ひながら、
127
湖水
(
こすゐ
)
の
水
(
みづ
)
に
手
(
て
)
を
洗
(
あら
)
ひ
身
(
み
)
を
清
(
きよ
)
め、
128
次
(
つ
)
いで
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
し
終
(
をは
)
る
時
(
とき
)
しも、
129
木
(
き
)
の
茂
(
しげ
)
みを
分
(
わ
)
けて
此
(
この
)
場
(
ば
)
に
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
る
一人
(
ひとり
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
あり。
130
よくよく
見
(
み
)
れば
玉治別
(
たまはるわけの
)
命
(
みこと
)
なり。
131
孫公
(
まごこう
)
は
飛立
(
とびた
)
つばかり
打喜
(
うちよろこ
)
び、
132
孫公別
『コレハコレハ
玉治別
(
たまはるわけ
)
さま、
133
幾回
(
いくくわい
)
となくお
声
(
こゑ
)
は
聞
(
き
)
かして
頂
(
いただ
)
きましたが、
134
お
目
(
め
)
にかかるは
今
(
いま
)
が
始
(
はじ
)
めて、
135
ようマア
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さいました……モシモシ
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
方
(
かた
)
、
136
これが
驍名
(
げうめい
)
高
(
たか
)
き
三五教
(
あななひけう
)
の
玉治別
(
たまはるわけ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
で
御座
(
ござ
)
います』
137
お
愛
(
あい
)
、
138
三公
(
さんこう
)
は
嬉
(
うれ
)
し
涙
(
なみだ
)
にくれながら、
139
玉治別
(
たまはるわけ
)
に
向
(
むか
)
つて
跪
(
ひざまづ
)
き
敬意
(
けいい
)
を
表
(
へう
)
してゐる。
140
玉治別
『
私
(
わたし
)
は
玉治別
(
たまはるわけ
)
です。
141
皆
(
みな
)
さま、
142
随分
(
ずゐぶん
)
能
(
よ
)
く
言霊
(
ことたま
)
がころびましたなア。
143
大蛇
(
をろち
)
の
神
(
かみ
)
、
144
随分
(
ずゐぶん
)
いろいろと
面白
(
おもしろ
)
い
芸当
(
げいたう
)
を
見
(
み
)
せてくれたでせう』
145
虎公
『
私
(
わたし
)
は
虎公
(
とらこう
)
でごわす。
146
あなたは
夜前
(
やぜん
)
の
光景
(
くわうけい
)
を
御存
(
ごぞん
)
じで
御座
(
ござ
)
いましたか』
147
玉治別
『ハイ
白山峠
(
しらやまたうげ
)
を
一目散
(
いちもくさん
)
に
駆
(
か
)
け
下
(
くだ
)
り、
148
先
(
さき
)
へ
廻
(
まは
)
つて
此
(
この
)
森林
(
しんりん
)
に
身
(
み
)
を
潜
(
ひそ
)
め、
149
あなた
方
(
がた
)
の
言霊戦
(
ことたません
)
を
面白
(
おもしろ
)
く
観覧
(
くわんらん
)
して
居
(
を
)
りました。
150
大変
(
たいへん
)
危
(
あぶ
)
ない
所
(
ところ
)
迄
(
まで
)
行
(
ゆ
)
きましたなア』
151
虎公
『モウ
少
(
すこ
)
しの
事
(
こと
)
で
火
(
ひ
)
の
玉
(
たま
)
の
鬼
(
おに
)
にくつつかれる
所
(
ところ
)
でしたが、
152
不思議
(
ふしぎ
)
にも
三尺
(
さんじやく
)
ばかり
近寄
(
ちかよ
)
つて、
153
それよりはよう
寄
(
よ
)
りつかなかつたのです。
154
あれだけの
勢
(
いきほひ
)
で
如何
(
どう
)
してマア、
155
もう
二三尺
(
にさんじやく
)
といふ
所
(
ところ
)
が
寄
(
よ
)
りつけないのでせうか』
156
玉治別
『あなたの
霊衣
(
れいい
)
の
外
(
そと
)
迄
(
まで
)
寄
(
よ
)
つて
来
(
き
)
たのですよ。
157
霊衣
(
れいい
)
の
威徳
(
ゐとく
)
に
恐
(
おそ
)
れて、
158
夫
(
そ
)
れ
以上
(
いじやう
)
は
近寄
(
ちかよ
)
れなかつたのです。
159
さうして
大蛇
(
をろち
)
の
奴
(
やつ
)
、
160
まだまだエライ
企
(
たく
)
みをして
居
(
を
)
つた
様
(
やう
)
ですが、
161
私
(
わたし
)
は
此
(
この
)
木蔭
(
こかげ
)
より
湖面
(
こめん
)
に
向
(
むか
)
つて
鎮魂
(
ちんこん
)
をして
居
(
を
)
りました。
162
それが
為
(
ため
)
に
猛烈
(
まうれつ
)
なる
大蛇
(
をろち
)
の
幕下
(
ばくか
)
、
163
此
(
この
)
山林
(
さんりん
)
に
横行
(
わうかう
)
する
虎
(
とら
)
、
164
獅子
(
しし
)
、
165
熊
(
くま
)
、
166
狼
(
おほかみ
)
なぞの
猛獣
(
まうじう
)
も、
167
害
(
がい
)
を
加
(
くは
)
ふるに
由
(
よし
)
なく、
168
何
(
いづ
)
れも
遠
(
とほ
)
く
逃
(
に
)
げ
去
(
さ
)
つて
了
(
しま
)
つたのです。
169
さうして
孫公
(
まごこう
)
さまは
孫公別
(
まごこうわけ
)
とか
云
(
い
)
ふ
立派
(
りつぱ
)
な
宣伝使
(
せんでんし
)
になられたさうですなア』
170
孫公別
『ハイ、
171
イヤモウ
一寸
(
ちよつと
)
臨時
(
りんじ
)
に
頼
(
たの
)
まれましてやつて
見
(
み
)
ました。
172
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
余
(
あま
)
り
甘
(
うま
)
く
行
(
ゆ
)
きませぬので
宣伝使
(
せんでんし
)
といふものは
辛
(
つら
)
いものだとホトホト
感心
(
かんしん
)
致
(
いた
)
しました。
173
玉治別
(
たまはるわけ
)
様
(
さま
)
がお
越
(
こ
)
しになつたのを
幸
(
さいは
)
ひ、
174
私
(
わたし
)
は
只今
(
ただいま
)
より
孫公別
(
まごこうわけ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
を
返上
(
へんじやう
)
致
(
いた
)
します。
175
どうぞお
受取
(
うけと
)
り
下
(
くだ
)
さいませ。
176
イヤもう
中々
(
なかなか
)
骨
(
ほね
)
の
折
(
を
)
れた
事
(
こと
)
で
御座
(
ござ
)
いました』
177
玉治別
『アハヽヽヽ、
178
誰
(
たれ
)
に
宣伝使
(
せんでんし
)
を
命
(
めい
)
ぜられたのですか。
179
黒姫
(
くろひめ
)
様
(
さま
)
からでも
仮
(
か
)
りにお
貰
(
もら
)
ひになつたのですか』
180
孫公
『イエどうしてどうして、
181
ここは
共和国
(
きようわこく
)
で
御座
(
ござ
)
いますから、
182
国民
(
こくみん
)
一致
(
いつち
)
選挙
(
せんきよ
)
の
結果
(
けつくわ
)
、
183
推
(
お
)
されて
宣伝使
(
せんでんし
)
になつたので
御座
(
ござ
)
います。
184
イヤまことにモウうすい
目
(
め
)
に
会
(
あ
)
ひました』
185
玉治別
『サア
皆
(
みな
)
さま、
186
此処
(
ここ
)
に
居
(
を
)
つても
仕方
(
しかた
)
がありませぬ。
187
此
(
この
)
湖水
(
こすゐ
)
には
大
(
おほ
)
きな
浮島
(
うきしま
)
が
三
(
み
)
つ
四
(
よ
)
つありますから、
188
そこ
迄
(
まで
)
行
(
い
)
つて
休息
(
きうそく
)
を
致
(
いた
)
し、
189
今宵
(
こよひ
)
は
其
(
その
)
島
(
しま
)
に
渡
(
わた
)
り、
190
一
(
ひと
)
つ
言霊戦
(
ことたません
)
をひらき
根本
(
こんぽん
)
的
(
てき
)
に
大蛇
(
をろち
)
の
神
(
かみ
)
を
言向和
(
ことむけやは
)
せませう。
191
皆様
(
みなさま
)
サア
参
(
まゐ
)
りませう』
192
と
先
(
さき
)
にたつて
湖畔
(
こはん
)
を
辿
(
たど
)
るを、
193
四
(
よ
)
人
(
にん
)
はハツと
胸
(
むね
)
撫
(
な
)
でおろし、
194
元気
(
げんき
)
頓
(
とみ
)
に
加
(
くは
)
はり、
195
後
(
あと
)
を
慕
(
した
)
うて
従
(
したが
)
ひ
行
(
ゆ
)
く。
196
(
大正一一・九・一六
旧七・二五
松村真澄
録)
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