霊界物語.ネット
~出口王仁三郎 大図書館~
設定
|
ヘルプ
ホーム
霊界物語
海洋万里(第25~36巻)
第35巻(戌の巻)
序文
総説歌
第1篇 向日山嵐
第1章 言の架橋
第2章 出陣
第3章 進隊詩
第4章 村の入口
第5章 案外
第6章 歌の徳
第7章 乱舞
第8章 心の綱
第9章 分担
第2篇 ナイルの水源
第10章 夢の誡
第11章 野宿
第12章 自称神司
第13章 山颪
第14章 空気焔
第15章 救の玉
第16章 浮島の花
第3篇 火の国都
第17章 霧の海
第18章 山下り
第19章 狐の出産
第20章 疑心暗狐
第21章 暗闘
第22章 当違
第23章 清交
第24章 歓喜の涙
余白歌
×
設定
この文献を王仁DBで開く
印刷用画面を開く
[?]
プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。
[×閉じる]
話者名の追加表示
[?]
セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。
[×閉じる]
追加表示する
追加表示しない
【標準】
表示できる章
テキストのタイプ
[?]
ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。
[×閉じる]
通常のテキスト
【標準】
コピー用のテキスト
文字サイズ
S
【標準】
M
L
ルビの表示
通常表示
【標準】
括弧の中に表示
表示しない
アンカーの表示
[?]
本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。
[×閉じる]
左側だけに表示する
【標準】
表示しない
全てのアンカーを表示
宣伝歌
[?]
宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。
[×閉じる]
一段組
【標準】
二段組
脚注[※]用語解説
[?]
[※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。
[×閉じる]
脚注マークを表示する
【標準】
脚注マークを表示しない
脚注[*]編集用
[?]
[※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。
[×閉じる]
脚注マークを表示する
脚注マークを表示しない
【標準】
外字の外周色
[?]
一般のフォントに存在しない文字は専用の外字フォントを使用しています。目立つようにその文字の外周の色を変えます。
[×閉じる]
無色
【標準】
赤色
現在のページには外字は使われていません
表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。
サイトをリニューアルしました(
従来バージョンはこちら
)【新着情報】
(
サブスク
のお知らせ)
霊界物語
>
海洋万里(第25~36巻)
>
第35巻(戌の巻)
> 第1篇 向日山嵐 > 第9章 分担
<<< 心の綱
(B)
(N)
夢の誡 >>>
第九章
分担
(
ぶんたん
)
〔九七三〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第35巻 海洋万里 戌の巻
篇:
第1篇 向日山嵐
よみ(新仮名遣い):
むこうやまあらし
章:
第9章 分担
よみ(新仮名遣い):
ぶんたん
通し章番号:
973
口述日:
1922(大正11)年09月16日(旧07月25日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年12月25日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
[×閉じる]
:
新公、徳公、久公は酒の機嫌でなんとなく寝られなく、三公の館の庭を歩きながら、よもやま話にふけっている。新公は、お梅は実は虎公の妹ではなく拾い子で、昔黄泉比良坂の戦いで活躍した松・竹・梅の三姉妹の宣伝使の生まれ変わりだとしゃべってしまう。
三公と虎公に一喝された三人は、田圃へ酔い覚ましに行ってしまった。黒姫は、三人の話が本当かどうか、虎公とお梅に確かめる。お梅の身の上話によれば、両親はバラモン教の鬼雲彦に亡き者とされ、自分も悪者にかどわかされていたところを、虎公に助けられたのだという。
孫公は、今度は三公の身の上話に話題を変えた。三公は実はエヂプトの三五教宣伝使・春公とお常の子であったという。父母がスッポンの湖に棲むという大蛇を言向け和しに出かけたが、力及ばず湖にのまれて亡くなってしまったという。
エヂプトの酋長である夏山彦の託宣によれば、三公の両親は自分自身の執着心が凝って大蛇となり、言霊戦に敗れて亡くなったのだから、三公は両親の冥福を祈る生活を送るべきだと諭されたという。
しかし三公は両親の仇を取ろうと、夏山彦の親切な申し出も断ってスッポンの湖に出かけたが、その広大さに力不足を感じ、熊襲の国にやってきて屋方村で侠客をはじめ、密かにスッポンの湖の大蛇退治のために子分を集めていたのだという。
お愛についても素性をしっており、恋慕もあったが、大蛇退治に効験ある霊系であろうという目算もあったのだ、と明かした。そして、悪を退治するために自ら悪人となり悪人の子分を集めていたことが、三五教の教理に背いていたことを告白して懺悔した。
三公の身の上話を聞いて、虎公の発案で早速、虎公、お愛、三公、孫公の四人は、スッポンの湖の大蛇を言向け和すべく出立することになった。
黒姫は火の国へ先を行くことになり、三公と虎公の命で、道案内として徳公と久公が同道することになった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2019-10-07 02:32:57
OBC :
rm3509
愛善世界社版:
92頁
八幡書店版:
第6輯 505頁
修補版:
校定版:
98頁
普及版:
34頁
初版:
ページ備考:
001
吼
(
ほ
)
え
猛
(
たけ
)
る
虎
(
とら
)
狼
(
おほかみ
)
や
獅子
(
しし
)
大蛇
(
をろち
)
002
熊襲
(
くまそ
)
の
国
(
くに
)
の
高原
(
かうげん
)
に
003
館
(
やかた
)
を
構
(
かま
)
へて
遠近
(
をちこち
)
に
004
暴威
(
ばうゐ
)
を
揮
(
ふる
)
ひし
男達
(
をとこだて
)
005
その
名
(
な
)
も
大蛇
(
をろち
)
の
三公
(
さんこう
)
が
006
離座敷
(
はなれざしき
)
に
夜
(
よ
)
もすがら
007
酒
(
さけ
)
汲
(
く
)
みかはし
四方山
(
よもやま
)
の
008
話
(
はなし
)
に
耽
(
ふけ
)
る
人
(
ひと
)
の
影
(
かげ
)
009
障子
(
しやうじ
)
に
映
(
うつ
)
る
五
(
いつ
)
つ
六
(
む
)
つ
010
夜
(
よ
)
は
深々
(
しんしん
)
と
更
(
ふ
)
け
渡
(
わた
)
り
011
荒野
(
あらの
)
を
渡
(
わた
)
る
夜嵐
(
よあらし
)
の
012
声
(
こゑ
)
も
何時
(
いつ
)
しか
静
(
しづ
)
まりて
013
幽
(
かす
)
かに
聞
(
きこ
)
ゆる
谷川
(
たにがは
)
の
014
巌
(
いはほ
)
を
咬
(
か
)
むで
迸
(
ほとばし
)
る
015
水
(
みづ
)
の
音
(
おと
)
のみ
鳴
(
な
)
り
渡
(
わた
)
る。
016
酒
(
さけ
)
の
機嫌
(
きげん
)
で
何
(
なん
)
となく
神経
(
しんけい
)
興奮
(
こうふん
)
して
寝
(
ね
)
つかれぬままに、
017
ブラリブラリと
境内
(
けいだい
)
を
逍遥
(
せうえう
)
してゐた
新
(
しん
)
、
018
久
(
きう
)
、
019
徳
(
とく
)
の
三
(
さん
)
人
(
にん
)
、
020
障子
(
しやうじ
)
に
映
(
うつ
)
る
人影
(
ひとかげ
)
を
眺
(
なが
)
め、
021
巻舌
(
まきじた
)
になつて
呶鳴
(
どな
)
つてゐる。
022
徳公
『オイ
新公
(
しんこう
)
、
023
あの
障子
(
しやうじ
)
の
影
(
かげ
)
を
見
(
み
)
い!
貴様
(
きさま
)
が
親方
(
おやかた
)
の
不在
(
るす
)
になると、
024
チヨイチヨイと
酒
(
さけ
)
を
汲
(
く
)
んで
貰
(
もら
)
ふと
吐
(
ぬか
)
しよつたナイスの
影法師
(
かげぼうし
)
がシヤントコセイのウントコセと
映
(
うつ
)
つとるぢやねえか、
025
本当
(
ほんたう
)
に
偉
(
えら
)
い
奴
(
やつ
)
だなア。
026
お
愛
(
あい
)
の
姐貴
(
あねき
)
も
只
(
ただ
)
の
狐
(
きつね
)
ぢやないと
思
(
おも
)
うて
居
(
を
)
つたが、
027
八島別
(
やしまわけ
)
とか
何
(
なん
)
とかの
娘
(
むすめ
)
だと
言
(
い
)
ひよつたなア。
028
昔
(
むかし
)
常世
(
とこよ
)
の
会議
(
くわいぎ
)
で
八島
(
やしま
)
とかいふ
狐
(
きつね
)
が
出
(
で
)
よつて、
029
常世姫
(
とこよひめの
)
命
(
みこと
)
をアフンと
言
(
い
)
はしよつた
其奴
(
そいつ
)
の
系統
(
ひつぽう
)
かも
知
(
し
)
れないぞ』
030
新公
『コリヤ
徳
(
とく
)
、
031
そんな
大
(
おほ
)
きい
声
(
こゑ
)
で
吐
(
ぬか
)
すと、
032
三公
(
さんこう
)
に
聞
(
きこ
)
えるぢやねえか。
033
貴様
(
きさま
)
が
口外
(
こうぐわい
)
せぬと
吐
(
ぬか
)
したから、
034
この
新公
(
しんこう
)
が
親切
(
しんせつ
)
に
神秘
(
しんぴ
)
の
鍵
(
かぎ
)
を
開
(
ひら
)
いて
聞
(
き
)
かしてやつたぢやねえか、
035
これ
程
(
ほど
)
夜
(
よ
)
が
更
(
ふ
)
けて、
036
そこらあたりがシーンとして
居
(
を
)
るのだから、
037
小
(
ちひ
)
さい
囁
(
ささや
)
き
声
(
ごゑ
)
でも
聞
(
きこ
)
えるのだから、
038
小
(
ちひ
)
さい
声
(
こゑ
)
で
云
(
い
)
はぬかい。
039
お
愛
(
あい
)
さまに
聞
(
きこ
)
えたら
大変
(
たいへん
)
だぞ』
040
徳公
『
貴様
(
きさま
)
の
其
(
その
)
声
(
こゑ
)
の
方
(
はう
)
が
余程
(
よつぽど
)
大
(
おほ
)
きいぢやねえか。
041
オイ
新公
(
しんこう
)
、
042
あのお
梅
(
うめ
)
と
云
(
い
)
ふ
奴
(
やつ
)
ア、
043
親分
(
おやぶん
)
の
妹
(
いもうと
)
だといふ
事
(
こと
)
だが、
044
妹
(
いもうと
)
迄
(
まで
)
伴
(
つ
)
れて
駆落
(
かけおち
)
しよつたのか。
045
本当
(
ほんたう
)
に
念
(
ねん
)
の
入
(
い
)
つた
奴
(
やつ
)
だなア』
046
新公
『
妹
(
いもうと
)
といへばマアマア
妹
(
いもうと
)
だ。
047
実
(
じつ
)
のとかア、
048
彼奴
(
あいつ
)
も
拾
(
ひろ
)
ひ
子
(
ご
)
だよ。
049
うちの
虎公
(
とらこう
)
が
表向
(
おもてむき
)
妹
(
いもうと
)
だと
云
(
い
)
つてるのだが、
050
其
(
その
)
実
(
じつ
)
ア、
051
フサの
国
(
くに
)
に
生
(
うま
)
れた
女
(
をんな
)
で、
052
姉
(
あね
)
にはお
松
(
まつ
)
といふ
立派
(
りつぱ
)
なナイスがあるのだ』
053
徳公
『
其
(
その
)
お
松
(
まつ
)
を
如何
(
どう
)
して
知
(
し
)
つとるのだ』
054
新公
『きまつた
事
(
こと
)
だ。
055
松
(
まつ
)
竹
(
たけ
)
梅
(
うめ
)
と
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
があるぢやねえか。
056
お
梅
(
うめ
)
の
姉
(
あね
)
はお
竹
(
たけ
)
、
057
お
竹
(
たけ
)
の
姉
(
あね
)
はお
松
(
まつ
)
だ。
058
黄泉
(
よもつ
)
比良坂
(
ひらさか
)
の
桃
(
もも
)
の
実
(
み
)
になつた
松
(
まつ
)
竹
(
たけ
)
梅
(
うめ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
の
生
(
うま
)
れ
変
(
かは
)
りだからなア。
059
本当
(
ほんたう
)
に
素敵
(
すてき
)
なものだ。
060
オイ
徳公
(
とくこう
)
、
061
俺
(
おれ
)
が
一
(
ひと
)
つ
貴様
(
きさま
)
の
改悪
(
かいあく
)
記念
(
きねん
)
にお
梅
(
うめ
)
さまを
女房
(
にようばう
)
に
周旋
(
しうせん
)
してやらうか』
062
徳公
『あんな
若
(
わけ
)
え
代物
(
しろもの
)
と
如何
(
どう
)
して
夫婦
(
ふうふ
)
になれるものけえ。
063
世間体
(
せけんてい
)
が
見
(
み
)
つともねえワ』
064
新公
『
貴様
(
きさま
)
ア、
065
世間体
(
せけんてい
)
を
憚
(
はばか
)
る
良心
(
りやうしん
)
があるのなら、
066
なぜこんな
無頼漢
(
ぶらいかん
)
の
三公
(
さんこう
)
の
乾児
(
こぶん
)
になつたのだい。
067
それの
方
(
はう
)
が
余程
(
よつぽど
)
世間体
(
せけんてい
)
が
悪
(
わる
)
いぞ。
068
俺
(
おれ
)
のとこの
親方
(
おやかた
)
はドンドンながら、
069
ポンポンながら、
070
豊
(
とよ
)
の
国
(
くに
)
の
豊日別
(
とよひわけの
)
命
(
みこと
)
さまの
御
(
ご
)
総領
(
そうりやう
)
で、
071
虎若彦
(
とらわかひこの
)
命
(
みこと
)
様
(
さま
)
だ。
072
若
(
わか
)
い
時
(
とき
)
に
無分別
(
むふんべつ
)
な
恋
(
こひ
)
におちて、
073
熊襲
(
くまそ
)
の
国
(
くに
)
へお
出
(
い
)
で
遊
(
あそ
)
ばしたのだが、
074
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
種
(
たね
)
が
種
(
たね
)
だから
偉
(
えら
)
いものだ。
075
大蛇
(
をろち
)
の
三公
(
さんこう
)
なんて
云
(
い
)
ふ
奴
(
やつ
)
あ、
076
どこの
牛骨
(
ぎうこつ
)
だか
馬骨
(
ばこつ
)
だか
素性
(
すじやう
)
の
分
(
わか
)
らねえゲス
下郎
(
げろう
)
だから、
077
人情
(
にんじやう
)
も
知
(
し
)
らねば、
078
誠
(
まこと
)
の
道理
(
だうり
)
も
悟
(
さと
)
らず、
079
卑怯
(
ひけふ
)
未練
(
みれん
)
な、
080
親分
(
おやぶん
)
の
不在宅
(
るすたく
)
へ
押
(
おし
)
かけて、
081
お
愛
(
あい
)
の
方
(
かた
)
を
無理
(
むり
)
往生
(
わうじやう
)
させようとしよつたのだよ。
082
そんな
奴
(
やつ
)
の
提灯持
(
ちやうちんもち
)
をしてる
奴
(
やつ
)
に、
083
碌
(
ろく
)
な
奴
(
やつ
)
があるかい、
084
なア
久公
(
きうこう
)
』
085
久公
『オイオイそんな
声
(
こゑ
)
を
出
(
だ
)
すと、
086
親分
(
おやぶん
)
に
聞
(
きこ
)
えるぢやねえか。
087
聞
(
きこ
)
えたら
又
(
また
)
事
(
こと
)
が
面倒
(
めんだう
)
だぞ』
088
新公
『(
浄瑠璃
(
じやうるり
)
)そりや
聞
(
きこ
)
えませぬ、
089
久公
(
きうこう
)
さま……だい、
090
お
詞
(
ことば
)
無理
(
むり
)
とは……チンチン……ぢや、
091
思
(
おも
)
はねどオヽヽヽ
俺
(
おれ
)
は
余
(
あんま
)
り
気
(
き
)
にかかる、
092
折角
(
せつかく
)
結構
(
けつこう
)
な
親方
(
おやかた
)
を、
093
持
(
も
)
つて
喜
(
よろこ
)
ぶひまもなう、
094
追
(
お
)
ひ
出
(
だ
)
されては、
095
此
(
この
)
新公
(
しんこう
)
、
096
どこに
如何
(
どう
)
して
暮
(
くら
)
さうやら、
097
案
(
あん
)
じすごしてヒヤヒヤと、
098
轟
(
とどろ
)
く
胸
(
むね
)
を
押
(
おさ
)
へつ……け……
悔
(
くや
)
み
歎
(
なげ
)
きし
其
(
その
)
顔付
(
かほつき
)
……』
099
徳公
『オイオイ
障子
(
しやうじ
)
が
開
(
あ
)
いたぞ。
100
親分
(
おやぶん
)
が
今
(
いま
)
お
目玉
(
めだま
)
だ。
101
逃
(
に
)
げろ
逃
(
に
)
げろ』
102
久公
『(
浄瑠璃
(
じやうるり
)
)ヤレ
其
(
その
)
障子
(
しやうじ
)
開
(
あ
)
けまいぞ、
103
此
(
この
)
蚊帳
(
かや
)
の
内
(
うち
)
は
黒姫婆
(
くろひめばば
)
が
城廓
(
じやうくわく
)
、
104
其
(
その
)
腐
(
くさ
)
つた
魂
(
たましひ
)
で、
105
此
(
この
)
城
(
しろ
)
一重
(
ひとへ
)
破
(
やぶ
)
らるるなら、
106
サヽヽ
破
(
やぶ
)
つて
見
(
み
)
……よ……と
百筋
(
ももすぢ
)
千筋
(
ちすぢ
)
の
理
(
り
)
をこめて、
107
引
(
ひ
)
つかついだる
蚊帳
(
かや
)
の
内
(
うち
)
、
108
泣
(
な
)
くねより
外
(
ほか
)
応答
(
いらへ
)
なし……と
云
(
い
)
ふ
様
(
やう
)
な
愁歎場
(
しうたんば
)
だ』
109
障子
(
しやうじ
)
をあけた
男
(
をとこ
)
の
影
(
かげ
)
、
110
男(虎公)
『オイ
久公
(
きうこう
)
、
111
何
(
なに
)
を
云
(
い
)
つてゐるか』
112
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
一度
(
いちど
)
に
両手
(
りやうて
)
で
頭
(
あたま
)
を
抱
(
かか
)
へ、
113
三人『ヘーー』
114
と
云
(
い
)
つた
限
(
き
)
り
踞
(
しやが
)
んで
了
(
しま
)
つた。
115
男(虎公)
『ハハー、
116
人間
(
にんげん
)
かと
思
(
おも
)
へば、
117
四
(
よ
)
つ
足
(
あし
)
だつたな』
118
新公
『イエイエ
違
(
ちが
)
ひます
違
(
ちが
)
ひます。
119
新
酒
(
しんざけ
)
と
久
酒
(
きうざけ
)
と
徳
利
(
とくり
)
に
入
(
い
)
れて
持
(
も
)
つて
来
(
き
)
やした、
120
三公
(
さんこう
)
……オツトドツコイ
三
(
さん
)
人
(
にん
)
で
御座
(
ござ
)
います。
121
トラ
まアよい
味
(
あぢ
)
の
酒
(
さけ
)
で
御座
(
ござ
)
いますから、
122
味
(
あぢ
)
はお
ウメ
さんで、
123
中々
(
なかなか
)
素敵
(
すてき
)
な
物
(
もの
)
でげす。
124
夜夜中
(
よるよなか
)
にこんな
所
(
ところ
)
迄
(
まで
)
来
(
き
)
て、
125
孫公
(
まごこう
)
々々
(
まごこう
)
して
居
(
ゐ
)
るものだから、
126
月
(
つき
)
も
星
(
ほし
)
もないこれ
程
(
ほど
)
曇
(
くも
)
つた
黒姫
(
くろひめ
)
の
晩
(
ばん
)
に、
127
ヲロチ
い
目
(
め
)
に
会
(
あ
)
うて
困
(
こま
)
つて
居
(
ゐ
)
る
三公
(
さんこう
)
でげす。
128
親方
(
おやかた
)
如何
(
どう
)
でげせう、
129
第三次
(
だいさんじ
)
会
(
くわい
)
をお
開
(
ひら
)
きなさつたら……モウ
夜
(
よ
)
の
明
(
あ
)
けるに
間
(
ま
)
もあるめえから、
130
綺麗
(
きれい
)
なナイスをお
愛
手
(
あいて
)
として
一杯
(
いつぱい
)
やるも
乙
(
おつ
)
でげせう。
131
アーア、
132
とうとう
酒
(
さけ
)
に
一夜酔
(
いちやよひ
)
をして
了
(
しま
)
つて、
133
舌
(
した
)
も
碌
(
ろく
)
にまはりやしねえわ』
134
虎公
(
とらこう
)
『オイ
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
奴
(
やつ
)
、
135
最前
(
さいぜん
)
から
聞
(
き
)
いて
居
(
を
)
れば、
136
貴様
(
きさま
)
等
(
ら
)
は
怪
(
け
)
しからぬ
事
(
こと
)
を
囀
(
さへづ
)
つて
居
(
を
)
つたではねえか』
137
徳公
『ヘエ、
138
虎公
(
とらこう
)
の
親分
(
おやぶん
)
さま
済
(
す
)
みませぬ。
139
新公
(
しんこう
)
が
自慢顔
(
じまんがほ
)
をして、
140
親方
(
おやかた
)
さまの
素性
(
すじやう
)
を
明
(
あ
)
かしよつたものだから、
141
耳
(
みみ
)
が
痛
(
いた
)
くて
仕方
(
しかた
)
がねえのを
辛抱
(
しんばう
)
して
聞
(
き
)
いて
居
(
を
)
つたのですよ。
142
さうして
宅
(
たく
)
の
親分
(
おやぶん
)
をボロ
糞
(
くそ
)
にこきおろしよるものだから、
143
ムカつくのムカつかぬのつて、
144
最前
(
さいぜん
)
から
三四度
(
さんしど
)
も
八百屋
(
やほや
)
店
(
みせ
)
を
出
(
だ
)
しましたのだ。
145
アーア、
146
こんな
所
(
ところ
)
に
居
(
を
)
つちや
剣呑
(
けんのん
)
だ。
147
親方
(
おやかた
)
、
148
今日
(
けふ
)
はそんな
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
つて、
149
私
(
わたし
)
を
冷
(
ひや
)
つかし、
150
冷酒
(
ひやざけ
)
で
苦
(
くる
)
しめるよりも、
151
燗酒
(
かんざけ
)
に
見直
(
みなほ
)
し
聞直
(
ききなほ
)
して
下
(
くだ
)
さいませ。
152
オイ
皆
(
みな
)
の
奴
(
やつ
)
、
153
あつちへ
行
(
ゆ
)
かうかい』
154
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
155
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
暗
(
やみ
)
に
紛
(
まぎ
)
れて、
156
田圃
(
たんぼ
)
の
中
(
なか
)
へ
酔醒
(
よひさ
)
ましに
行
(
い
)
つて
了
(
しま
)
つた。
157
あとには
例
(
れい
)
の
虎公
(
とらこう
)
、
158
黒姫
(
くろひめ
)
、
159
孫公
(
まごこう
)
、
160
兼公
(
かねこう
)
、
161
お
愛
(
あい
)
、
162
お
梅
(
うめ
)
に、
163
主人側
(
しゆじんがは
)
の
三公
(
さんこう
)
七
(
しち
)
人
(
にん
)
が
机
(
つくゑ
)
を
中
(
なか
)
において、
164
ヒソヒソ
話
(
ばなし
)
を
続
(
つづ
)
けて
居
(
ゐ
)
る。
165
宵
(
よひ
)
から
尊
(
たふと
)
き
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
経綸談
(
けいりんだん
)
に
魂
(
たま
)
をぬかれ、
166
夜
(
よ
)
の
更
(
ふ
)
けるも
知
(
し
)
らず、
167
又
(
また
)
余
(
あま
)
りの
愉快
(
ゆくわい
)
さに
睡気
(
ねむけ
)
もささず、
168
小声
(
こごゑ
)
にいろいろの
経歴話
(
けいれきばなし
)
を
交
(
ま
)
ぜて、
169
入信
(
にふしん
)
の
経路
(
けいろ
)
などを
物語
(
ものがた
)
つてゐる。
170
黒姫
(
くろひめ
)
が、
171
黒姫
『
今
(
いま
)
窓外
(
まどそと
)
にて
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
話
(
はなし
)
を
聞
(
き
)
けば、
172
お
愛
(
あい
)
さまや
虎公
(
とらこう
)
さま、
173
お
梅
(
うめ
)
さまの
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
話
(
ばなし
)
、
174
実際
(
じつさい
)
あの
通
(
とほ
)
りで
御座
(
ござ
)
いますか』
175
虎公
『
若
(
わけ
)
え
奴
(
やつ
)
が
酒
(
さけ
)
に
酔
(
よ
)
つて
云
(
い
)
ふのですから、
176
当
(
あて
)
になつたものぢや
御座
(
ござ
)
いませぬ』
177
黒姫
『
酒
(
さけ
)
の
酔
(
よひ
)
本性
(
ほんしやう
)
違
(
たが
)
はず……と
云
(
い
)
ひますから、
178
満更
(
まんざら
)
、
179
影
(
かげ
)
も
形
(
かたち
)
もない
事
(
こと
)
では
御座
(
ござ
)
いますまい。
180
酒
(
さけ
)
に
酔
(
よ
)
うた
時
(
とき
)
は
比較
(
ひかく
)
的
(
てき
)
正直
(
しやうぢき
)
なものですからなア
虎公
(
とらこう
)
さま』
181
虎公
『
合
(
あ
)
うたとこもあれば、
182
合
(
あ
)
はない
所
(
ところ
)
もあり、
183
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
聞
(
き
)
きはづれを
云
(
い
)
つてるのですから、
184
困
(
こま
)
つたものですワイ』
185
黒姫
『お
梅
(
うめ
)
さまはお
松
(
まつ
)
さまの
妹
(
いもうと
)
だとか
云
(
い
)
つてゐましたなア。
186
そのお
松
(
まつ
)
さまは
今
(
いま
)
どこに
居
(
を
)
られますか。
187
お
差支
(
さしつかへ
)
なくば
仰有
(
おつしや
)
つて
下
(
くだ
)
さいませ』
188
お梅
『ハイ
私
(
わたくし
)
には
姉
(
あね
)
が
御座
(
ござ
)
いました。
189
中
(
なか
)
の
姉
(
ねえ
)
さまのお
竹
(
たけ
)
さまはコーカス
山
(
ざん
)
へ
行
(
い
)
つたきり
行方
(
ゆくへ
)
不明
(
ふめい
)
となり、
190
上
(
うへ
)
の
姉
(
ねえ
)
さまのお
松
(
まつ
)
さまはフサの
国
(
くに
)
から
海
(
うみ
)
を
渡
(
わた
)
つてどこか
遠
(
とほ
)
い
国
(
くに
)
へ
行
(
ゆ
)
かれたとか
言
(
い
)
ふ
話
(
はなし
)
で
御座
(
ござ
)
います。
191
何分
(
なにぶん
)
私
(
わたくし
)
の
小
(
ちひ
)
さい
時
(
とき
)
に
別
(
わか
)
れたのですから
詳
(
くは
)
しい
事
(
こと
)
は
存
(
ぞん
)
じませぬ』
192
黒姫
『あなたの
御
(
ご
)
両親
(
りやうしん
)
は
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ひますかな』
193
お梅
『
私
(
わたし
)
の
父母
(
ちちはは
)
は
人
(
ひと
)
の
噂
(
うはさ
)
に
承
(
うけたま
)
はりますれば、
194
バラモン
教
(
けう
)
の
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
とやら
云
(
い
)
ふ
大将
(
たいしやう
)
に
連
(
つ
)
れ
帰
(
かへ
)
られ、
195
生命
(
いのち
)
を
取
(
と
)
られたとか
云
(
い
)
ふことを
承
(
うけたま
)
はりました。
196
私
(
わたくし
)
は
或
(
ある
)
悪者
(
わるもの
)
の
為
(
ため
)
に
拐
(
かど
)
はかされ、
197
筑紫
(
つくし
)
ケ
岳
(
だけ
)
の
頂上
(
ちやうじやう
)
へ
来
(
きた
)
る
折
(
をり
)
しも、
198
兄
(
にい
)
さまがお
出
(
い
)
でになり、
199
悪者
(
わるもの
)
を
追
(
お
)
ひ
散
(
ち
)
らし、
200
私
(
わたし
)
を
助
(
たす
)
けて
連
(
つ
)
れ
帰
(
かへ
)
り、
201
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
世話
(
せわ
)
して
下
(
くだ
)
さいました。
202
兄
(
にい
)
さまの
計
(
はか
)
らひで、
203
親子
(
おやこ
)
兄弟
(
きやうだい
)
のない
子
(
こ
)
だと
言
(
い
)
つたら
世間
(
せけん
)
の
人
(
ひと
)
が
軽蔑
(
けいべつ
)
するから、
204
お
前
(
まへ
)
は
俺
(
おれ
)
の
国許
(
くにもと
)
から
訪
(
たづ
)
ねて
来
(
き
)
た
妹
(
いもうと
)
だと
言
(
い
)
つてをるがよい、
205
俺
(
おれ
)
もお
前
(
まへ
)
を
真
(
まこと
)
の
妹
(
いもうと
)
だと
思
(
おも
)
うて
可愛
(
かあい
)
がつてやると
仰有
(
おつしや
)
つて
下
(
くだ
)
さいました』
206
と
涙
(
なみだ
)
を
流
(
なが
)
し
泣
(
な
)
き
入
(
い
)
る。
207
虎公
(
とらこう
)
もお
愛
(
あい
)
も
黒姫
(
くろひめ
)
も
手
(
て
)
を
組
(
く
)
み
首
(
かうべ
)
を
垂
(
た
)
れ、
208
太
(
ふと
)
き
息
(
いき
)
をついて
居
(
ゐ
)
る。
209
三公
『お
梅
(
うめ
)
さまの
事
(
こと
)
は
三公
(
さんこう
)
今
(
いま
)
始
(
はじ
)
めて
承
(
うけたま
)
はりました。
210
ヤア
虎公
(
とらこう
)
さま、
211
あなたは
本当
(
ほんたう
)
に
親切
(
しんせつ
)
な
方
(
かた
)
ですなア。
212
ヤもう
感心
(
かんしん
)
致
(
いた
)
しました』
213
とこれも
亦
(
また
)
涙
(
なみだ
)
含
(
ぐ
)
む。
214
孫公
『ヤア
是
(
これ
)
で
孫公
(
まごこう
)
も
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
秘密
(
ひみつ
)
が
全部
(
ぜんぶ
)
分
(
わか
)
りました。
215
就
(
つ
)
いては
三公
(
さんこう
)
の
親分
(
おやぶん
)
、
216
お
前
(
まへ
)
さまは
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ふ
人
(
ひと
)
の
子
(
こ
)
だい、
217
序
(
ついで
)
に
言
(
い
)
つて
下
(
くだ
)
さつたら
如何
(
どう
)
です。
218
モウ
斯
(
か
)
うなれば
親身
(
しんみ
)
の
兄弟
(
きやうだい
)
も
同様
(
どうやう
)
だから、
219
何
(
なん
)
の
分
(
わ
)
け
隔
(
へだ
)
ても
要
(
い
)
りますまい』
220
三公
『
私
(
わたし
)
の
父
(
ちち
)
はエヂプトの
町
(
まち
)
に
住
(
す
)
んで
居
(
を
)
りまして、
221
春公
(
はるこう
)
と
申
(
まを
)
し、
222
母
(
はは
)
はお
常
(
つね
)
といひました。
223
或時
(
あるとき
)
、
224
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
となつたのを
幸
(
さいは
)
ひ、
225
初陣
(
うひぢん
)
の
功名
(
こうみやう
)
をして
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
御
(
お
)
目
(
め
)
にかけたいとか
云
(
い
)
つて、
226
私
(
わたし
)
を
家
(
いへ
)
に
残
(
のこ
)
し、
227
白瀬川
(
しらせがは
)
の
水上
(
みなかみ
)
、
228
スツポンの
湖
(
みづうみ
)
に
棲
(
す
)
む
大蛇
(
をろち
)
を
言向和
(
ことむけやは
)
すとか
云
(
い
)
つて、
229
夫婦
(
ふうふ
)
が
参
(
まゐ
)
りました。
230
さうした
所
(
ところ
)
が、
231
私
(
わたし
)
の
両親
(
りやうしん
)
はまだ
神力
(
しんりき
)
が
足
(
た
)
らなかつたと
見
(
み
)
えまして、
232
湖
(
みづうみ
)
の
大蛇
(
をろち
)
に
苦
(
く
)
もなく
呑
(
の
)
まれて
了
(
しま
)
つたので
御座
(
ござ
)
います。
233
私
(
わたし
)
はただ
一人
(
ひとり
)
下男
(
げなん
)
と
留守
(
るす
)
をして
居
(
を
)
りましたが、
234
此
(
この
)
事
(
こと
)
を
風
(
かぜ
)
の
便
(
たよ
)
りに
聞
(
き
)
き、
235
矢
(
や
)
も
楯
(
たて
)
もたまらず、
236
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
で
埃及
(
エヂプト
)
の
酋長
(
しうちやう
)
なる
夏山彦
(
なつやまひこ
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
館
(
やかた
)
へ、
237
父
(
ちち
)
が
入魂
(
じつこん
)
にして
頂
(
いただ
)
いて
居
(
を
)
つたのを
幸
(
さひは
)
ひ
馳
(
は
)
せ
参
(
さん
)
じ、
238
神勅
(
しんちよく
)
を
伺
(
うかが
)
つて
貰
(
もら
)
つた
所
(
ところ
)
「お
前
(
まへ
)
の
両親
(
りやうしん
)
は
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
余
(
あま
)
り
沢山
(
たくさん
)
に
財産
(
ざいさん
)
を
拵
(
こしら
)
へ、
239
難儀
(
なんぎ
)
な
者
(
もの
)
を
助
(
たす
)
ける
助
(
たす
)
けると
云
(
い
)
つた
計
(
ばか
)
りで、
240
米
(
こめ
)
一掴
(
ひとつか
)
み
与
(
あた
)
へた
事
(
こと
)
もなし、
241
大勢
(
おほぜい
)
の
者
(
もの
)
の
執着心
(
しふちやくしん
)
が
重
(
かさ
)
なつて
大蛇
(
をろち
)
となり、
242
お
前
(
まへ
)
の
両親
(
りやうしん
)
を
亡
(
ほろ
)
ぼして
了
(
しま
)
つたのだから、
243
モウ
駄目
(
だめ
)
だ。
244
せめては
両親
(
りやうしん
)
の
冥福
(
めいふく
)
を
祈
(
いの
)
り、
245
再
(
ふたた
)
び
此
(
この
)
世
(
よ
)
へ
立派
(
りつぱ
)
な
人間
(
にんげん
)
として
生
(
うま
)
れて
来
(
く
)
るやうに
祈
(
いの
)
つてやれ」……と
仰有
(
おつしや
)
いました。
246
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
両親
(
りやうしん
)
はどこかへ
生
(
うま
)
れ
変
(
かは
)
るにした
所
(
ところ
)
で、
247
私
(
わたし
)
としては
最早
(
もはや
)
親
(
おや
)
を
取
(
と
)
られたのだから、
248
安閑
(
あんかん
)
としては
居
(
を
)
られない、
249
スツポンの
湖
(
みづうみ
)
の
大蛇
(
をろち
)
を
片
(
かた
)
つ
端
(
ぱし
)
から
切
(
き
)
り
屠
(
ほふ
)
り、
250
親
(
おや
)
の
仇
(
かたき
)
を
討
(
う
)
つてやらむと、
251
夏山彦
(
なつやまひこ
)
御
(
ご
)
夫婦
(
ふうふ
)
が
親切
(
しんせつ
)
におとめ
下
(
くだ
)
さるのも
聞
(
き
)
かず、
252
夜
(
よる
)
に
紛
(
まぎ
)
れて
吾
(
わが
)
家
(
や
)
を
飛出
(
とびだ
)
し、
253
湖
(
みづうみ
)
の
畔
(
ほとり
)
に
来
(
き
)
て
見
(
み
)
れば、
254
際限
(
さいげん
)
もなき
広
(
ひろ
)
い
湖
(
みづうみ
)
、
255
此奴
(
こいつ
)
ア
到底
(
たうてい
)
一人
(
ひとり
)
や
二人
(
ふたり
)
の
力
(
ちから
)
では
可
(
い
)
かないと
断念
(
だんねん
)
し、
256
それから
遥々
(
はるばる
)
と
熊襲
(
くまそ
)
の
国
(
くに
)
の
屋方村
(
やかたむら
)
、
257
樫
(
かし
)
の
森
(
もり
)
の
木
(
こ
)
かげに
庵
(
いほり
)
を
結
(
むす
)
び、
258
侠客
(
けふかく
)
となつて
数多
(
あまた
)
の
乾児
(
こぶん
)
を
養
(
やしな
)
ひ、
259
サア
是
(
これ
)
で
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
と
云
(
い
)
ふやうになつた
所
(
ところ
)
で、
260
一挙
(
いつきよ
)
にして
大蛇
(
をろち
)
を
殲滅
(
せんめつ
)
せむと、
261
心
(
こころ
)
の
底
(
そこ
)
より
悪
(
あく
)
ではないが、
262
悪
(
あく
)
を
装
(
よそほ
)
うて
悪人原
(
あくにんばら
)
をかりあつめ、
263
大蛇
(
をろち
)
退治
(
たいぢ
)
の
用意
(
ようい
)
をして
居
(
を
)
つたのです。
264
三五教
(
あななひけう
)
の
様
(
やう
)
な
無抵抗
(
むていかう
)
主義
(
しゆぎ
)
の
教
(
をしへ
)
を
奉
(
ほう
)
ずる
信者
(
しんじや
)
が
幾
(
いく
)
らあつても、
265
到底
(
たうてい
)
大蛇
(
をろち
)
征伐
(
せいばつ
)
の
様
(
やう
)
な
殺生
(
せつしやう
)
な
事
(
こと
)
は
致
(
いた
)
しますまいから、
266
類
(
るゐ
)
を
以
(
もつ
)
て
集
(
あつ
)
まるとか
云
(
い
)
つて、
267
悪
(
わる
)
い
者
(
もの
)
の
所
(
ところ
)
へは
悪
(
わる
)
い
者
(
もの
)
が
集
(
あつ
)
まります。
268
其
(
その
)
悪
(
わる
)
い
奴
(
やつ
)
を
沢山
(
たくさん
)
集
(
あつ
)
めて
悪
(
わる
)
い
大蛇
(
をろち
)
を
平
(
たひら
)
げるのは
所謂
(
いはゆる
)
毒
(
どく
)
を
以
(
もつ
)
て
毒
(
どく
)
を
制
(
せい
)
すると
云
(
い
)
ふ
筆法
(
ひつぱふ
)
ですから、
269
今日
(
けふ
)
迄
(
まで
)
其
(
その
)
覚悟
(
かくご
)
を
持
(
も
)
つてゐたので
御座
(
ござ
)
います。
270
さうしてお
愛様
(
あいさま
)
に
対
(
たい
)
し
失礼
(
しつれい
)
な
事
(
こと
)
を
致
(
いた
)
しましたのも、
271
実
(
じつ
)
の
所
(
ところ
)
は
恋慕
(
れんぼ
)
に
事寄
(
ことよ
)
せ、
272
お
愛
(
あい
)
様
(
さま
)
を
私
(
わたし
)
の
手許
(
てもと
)
に
引寄
(
ひきよ
)
せ、
273
建日向別
(
たけひむかわけの
)
命
(
みこと
)
様
(
さま
)
の
霊系
(
れいけい
)
であるから、
274
まさかの
時
(
とき
)
の
用意
(
ようい
)
にと
思
(
おも
)
つて、
275
いろいろ
雑多
(
ざつた
)
と
拙劣
(
へた
)
な
計劃
(
けいくわく
)
をめぐらしてゐたので
御座
(
ござ
)
います。
276
実
(
じつ
)
に
幼稚
(
えうち
)
な
考
(
かんが
)
へで、
277
只今
(
ただいま
)
となつては
恥
(
はづか
)
しう
御座
(
ござ
)
います』
278
と
物語
(
ものがた
)
りつつ、
279
涙
(
なみだ
)
を
雨
(
あめ
)
の
如
(
ごと
)
くに
流
(
なが
)
し
乍
(
なが
)
ら、
280
悄然
(
せうぜん
)
として
俯
(
うつ
)
むく。
281
虎公
『ヤアそれで
虎公
(
とらこう
)
もスツカリと
様子
(
やうす
)
が
分
(
わか
)
つた。
282
いよいよ
四
(
よ
)
人
(
にん
)
の
種明
(
たねあ
)
かしも
無事
(
ぶじ
)
に
終了
(
しうれう
)
してお
目出度
(
めでた
)
い、
283
其
(
その
)
話
(
はなし
)
を
聞
(
き
)
く
以上
(
いじやう
)
は、
284
ジツとしちやゐられない。
285
サア
是
(
これ
)
から
三公
(
さんこう
)
さま、
286
吾々
(
われわれ
)
と
共
(
とも
)
にスツポンの
湖
(
みづうみ
)
に
向
(
むか
)
つて
言霊戦
(
ことたません
)
を
開
(
ひら
)
きに
参
(
まゐ
)
りませう。
287
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら、
288
三五
(
あななひ
)
の
教
(
をしへ
)
は
喜
(
よろこ
)
ばれて
仇
(
かたき
)
を
討
(
う
)
つといふ
教
(
をしへ
)
だから、
289
大蛇
(
をろち
)
の
命
(
いのち
)
を
取
(
と
)
りに
行
(
い
)
くのではない、
290
大蛇
(
をろち
)
の
霊
(
みたま
)
を、
291
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
の
生言霊
(
いくことたま
)
に
依
(
よ
)
つて
解脱
(
げだつ
)
させ、
292
天国
(
てんごく
)
に
救
(
すく
)
ひ
上
(
あ
)
げ、
293
今後
(
こんご
)
は
決
(
けつ
)
して
国民
(
こくみん
)
に
災
(
わざはひ
)
をなさないやうにするのだ。
294
一旦
(
いつたん
)
殺
(
ころ
)
された
御
(
ご
)
両親
(
りやうしん
)
は
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
だが、
295
是
(
これ
)
も
自分
(
じぶん
)
から
作
(
つく
)
つた
罪
(
つみ
)
が
酬
(
むく
)
うて
大蛇
(
をろち
)
に
呑
(
の
)
まれたのだから、
296
吾々
(
われわれ
)
人間
(
にんげん
)
として
如何
(
いかん
)
ともする
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ない。
297
又
(
また
)
三公
(
さんこう
)
さまだとて、
298
大蛇
(
をろち
)
を
親
(
おや
)
の
仇
(
かたき
)
だと
恨
(
うら
)
む
訳
(
わけ
)
には
参
(
まゐ
)
りますまい。
299
要
(
えう
)
するに
春公
(
はるこう
)
、
300
お
常
(
つね
)
御
(
ご
)
両人
(
りやうにん
)
の
自
(
みづか
)
ら
造
(
つく
)
つた
悪魔
(
あくま
)
が、
301
自
(
みづか
)
らを
攻
(
せ
)
めたのだから、
302
言
(
い
)
はば
自業
(
じごう
)
自得
(
じとく
)
、
303
何事
(
なにごと
)
も
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
裁断
(
さいだん
)
に
任
(
まか
)
すより
仕方
(
しかた
)
がない。
304
サア
皆
(
みな
)
さま、
305
言霊戦
(
ことたません
)
に
参
(
まゐ
)
らうぢやありませぬか』
306
三公
『ソリヤ
結構
(
けつこう
)
ですなア。
307
此
(
この
)
三公
(
さんこう
)
の
野郎
(
やらう
)
も
時
(
とき
)
を
移
(
うつ
)
さず
乾児
(
こぶん
)
を
引
(
ひき
)
つれて
参
(
まゐ
)
る
事
(
こと
)
に
致
(
いた
)
しませう』
308
虎公
『イエイエ
乾児
(
こぶん
)
なんか
伴
(
つ
)
れて
行
(
ゆ
)
く
必要
(
ひつえう
)
はありませぬよ。
309
吾々
(
われわれ
)
には
八百万
(
やほよろづ
)
の
神
(
かみ
)
さまが
守護
(
しゆご
)
して
下
(
くだ
)
さるから、
310
人数
(
にんず
)
は
余
(
あま
)
り
要
(
い
)
りませぬ、
311
三
(
さん
)
人
(
にん
)
居
(
を
)
れば
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
です』
312
黒姫
『
左様
(
さやう
)
なれば
虎公
(
とらこう
)
さま、
313
お
愛
(
あい
)
さま、
314
三公
(
さんこう
)
さま、
315
あなたに
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
になりませう。
316
黒姫
(
くろひめ
)
はこれから
孫公
(
まごこう
)
を
伴
(
つ
)
れて
火
(
ひ
)
の
国都
(
くにみやこ
)
へ
参
(
まゐ
)
りませう』
317
三公
『あゝそれは
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
で
御座
(
ござ
)
います。
318
左様
(
さやう
)
なれば
機嫌
(
きげん
)
よく
御
(
お
)
越
(
こ
)
しなさいませ。
319
誰
(
たれ
)
か
乾児
(
こぶん
)
を
一二
(
いちに
)
人
(
にん
)
、
320
御
(
ご
)
案内
(
あんない
)
に
立
(
た
)
てませうか』
321
黒姫
『ハイ
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います。
322
どなたでも
宜
(
よろ
)
しいから、
323
道
(
みち
)
の
勝手
(
かつて
)
を
御存
(
ごぞん
)
じの
方
(
かた
)
を、
324
お
一人
(
ひとり
)
お
貸
(
か
)
し
下
(
くだ
)
さらば
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います』
325
三公
『そんなら、
326
徳
(
とく
)
をお
供
(
とも
)
に
立
(
た
)
たせますから、
327
宜
(
よろ
)
しう
願
(
ねが
)
ひます。
328
元来
(
ぐわんらい
)
が
気
(
き
)
の
利
(
き
)
かない
男
(
をとこ
)
ですから、
329
却
(
かへつ
)
て
足手纏
(
あしてまと
)
ひになるかも
知
(
し
)
れませぬが……』
330
黒姫
『ハイ
御
(
ご
)
親切
(
しんせつ
)
に
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います。
331
そんなら
徳
(
とく
)
さまに
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
になりませう』
332
虎公
『
黒姫
(
くろひめ
)
さま、
333
女房
(
にようばう
)
の
命
(
いのち
)
を
助
(
たす
)
けて
下
(
くだ
)
さつたお
前
(
まへ
)
さまを、
334
一人
(
ひとり
)
やる
訳
(
わけ
)
にも
行
(
ゆ
)
きませぬから、
335
久公
(
きうこう
)
を
一人
(
ひとり
)
御
(
ご
)
案内
(
あんない
)
に
立
(
た
)
てませう。
336
さうすれば
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
道伴
(
みちづ
)
れ、
337
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
ですから』
338
黒姫
『ハイ
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います。
339
どこへ
行
(
い
)
つても
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
と
道伴
(
みちづ
)
れ、
340
一人
(
ひとり
)
で
結構
(
けつこう
)
で
御座
(
ござ
)
いますが、
341
向
(
むか
)
ふへ
参
(
まゐ
)
つた
所
(
ところ
)
で、
342
掛合
(
かけあひ
)
が
一人
(
ひとり
)
では
都合
(
つがふ
)
が
悪
(
わる
)
う
御座
(
ござ
)
いますから、
343
そんならお
二人
(
ふたり
)
にお
世話
(
せわ
)
になりませう。
344
其
(
その
)
代
(
かは
)
りに
孫公
(
まごこう
)
をあなた
方
(
がた
)
のお
伴
(
とも
)
をさせませう……コレ
孫公
(
まごこう
)
さま、
345
お
二人
(
ふたり
)
の
親分
(
おやぶん
)
によく
仕
(
つか
)
へ、
346
大蛇
(
をろち
)
を
言向和
(
ことむけやは
)
せた
上
(
うへ
)
、
347
火
(
ひ
)
の
国都
(
くにみやこ
)
へ
訪
(
たづ
)
ねて
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さい』
348
孫公
『ハイ
願
(
ねが
)
うてもなき
事
(
こと
)
、
349
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います。
350
そんなら
行
(
い
)
つて
参
(
まゐ
)
ります。
351
随分
(
ずゐぶん
)
御
(
ご
)
無事
(
ぶじ
)
でお
出
(
い
)
で
下
(
くだ
)
さいます
様
(
やう
)
御
(
お
)
祈
(
いの
)
り
致
(
いた
)
します』
352
茲
(
ここ
)
にお
梅
(
うめ
)
は
虎公
(
とらこう
)
の
命
(
めい
)
に
依
(
よ
)
つて、
353
新
(
しん
)
、
354
八
(
はち
)
の
二人
(
ふたり
)
と
共
(
とも
)
に
武野村
(
たけのむら
)
の
不在宅
(
るすたく
)
へ
帰
(
かへ
)
る
事
(
こと
)
となりぬ。
355
虎公
(
とらこう
)
、
356
お
愛
(
あい
)
、
357
三公
(
さんこう
)
、
358
孫公
(
まごこう
)
の
四
(
よ
)
人
(
にん
)
は、
359
いよいよ
時
(
とき
)
を
移
(
うつ
)
さず
屋方
(
やかた
)
の
村
(
むら
)
を
立出
(
たちい
)
で、
360
スツポンの
湖
(
みづうみ
)
の
大蛇
(
をろち
)
を
言向和
(
ことむけやは
)
すべく、
361
意気
(
いき
)
揚々
(
やうやう
)
として
旅装束
(
たびしやうぞく
)
を
整
(
ととの
)
へ
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
362
兼公
(
かねこう
)
、
363
与三公
(
よさこう
)
、
364
高公
(
たかこう
)
の
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
数多
(
あまた
)
の
乾児
(
こぶん
)
と
共
(
とも
)
にあとに
留
(
とど
)
まりて
不在役
(
るすやく
)
を
勤
(
つと
)
めさせらる。
365
(
大正一一・九・一六
旧七・二五
松村真澄
録)
Δこのページの一番上に戻るΔ
<<< 心の綱
(B)
(N)
夢の誡 >>>
霊界物語
>
海洋万里(第25~36巻)
>
第35巻(戌の巻)
> 第1篇 向日山嵐 > 第9章 分担
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【
メールアドレス
】
【第9章 分担|第35巻|海洋万里|霊界物語|/rm3509】
合言葉「みろく」を入力して下さい→