霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一六章 浮島(うきしま)(はな)〔九八〇〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第35巻 海洋万里 戌の巻 篇:第2篇 ナイルの水源 よみ(新仮名遣い):ないるのすいげん
章:第16章 浮島の花 よみ(新仮名遣い):うきしまのはな 通し章番号:980
口述日:1922(大正11)年09月16日(旧07月25日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年12月25日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
スッポンの湖水には、三個の浮島があって時々刻々湖面をただよっている。玉治別はこの島を引き寄せようと、金扇を開いて打ちあおぎながら差し招いた。
玉治別が島寄せの歌を歌うと、一つの広い大きな松の生い茂った島がこちらにやってきた。玉治別が島に渡ろうとしたとき、どこからともなく声が聞こえてきた。声は、この島は曲津神の変化で、玉治別たちをだまして陥れようとしたのだと、歌で警告した。
そして声は、自分は素盞嗚尊の生御魂・言依別神だと名乗った。そして日の出別神、蚊取別神も一緒に来ていると明かした。
玉治別は拍手再拝して神恩を感謝した。そして寄ってきた松の浮島に対して、大蛇として呼びかけ、神の道への改心を促す生言霊を、声も涼しくうちかけた。
大蛇の身魂も罪をゆるし救い上げようと呼びかける玉治別の歌に、島はぐれんと転覆し、白と赤のダンダラ筋模様の鱗を湖面にさらして湖中深く沈んでいった。
別の浮島がこちらに向かって進んできた。島には黒く細い竹が密生していた。竹の間から美しい女神が三柱現れ、しきりに手招きしている。玉治別は先ほどの松の島に懲りて、鎮魂を修しながら岸辺で見守っていた。竹の島はさらに近づき、女神たちは竹藪を出て岸から玉治別一行と対面した。
玉治別が歌で女神たちに呼びかけ、何者かを問うた。お愛は、女神たちを素盞嗚神の分霊として呼びかけた。女神の一人は松の姫命と名乗り、愛子姫の歌に応えた。次の女神は、愛子姫の父神は天教山に、母神はヒマラヤ山にいると明かし、父母の恩を忘れないようにと諭した。
最後に三人の女神は、孫公に誠の道に進むようにと諭した。また三公には、父母は神国に到達しており、世の中は神の目から見れば仇も味方もないことを諭した。この湖に父母の仇が潜むと思い詰めたのは心の迷いであり、それを晴らすようにと教えた。
女神たちは玉治別に、火の国の都に良くないことの前兆があり、早く進んで行くようにと促した。そして別れを告げると、湖面には島の跡形もなく、波が穏やかにうねっているのみであった。
これより玉治別一行は、この湖の曲津神を基準するべく皇大神に請いのみまつり、一日一夜祈願をこらした。湖水は二つに分かれ、大蛇は美しい女神の姿となって五人の前に現れ、無言のまま感謝の礼をなすと、天上高く登って行った。
玉治別は一行と共に白山峠を戻り、熊襲の国の三公の館に帰ってきた。一夜を明かすと玉治別は、急いで火の国を目指して進んで行った。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ:蚊取の別(蚊取別) データ凡例:055「いよよ」はママ。 データ最終更新日:2022-09-29 12:03:36 OBC :rm3516
愛善世界社版:179頁 八幡書店版:第6輯 535頁 修補版: 校定版:187頁 普及版:69頁 初版: ページ備考:
001 東西(とうざい)二十(にじふ)()002南北(なんぽく)三十(さんじふ)()(わた)(この)湖水(こすゐ)(なか)三個(さんこ)浮島(うきしま)ありて、003時々(じじ)刻々(こくこく)(その)位置(ゐち)(へん)じ、004浮草(うきぐさ)(ごと)(ただよ)へる奇妙(きめう)なる(しま)なり。005玉治別(たまはるわけ)(この)(しま)(ちか)引寄(ひきよ)せむと、006金扇(きんせん)(ひら)き、007打煽(うちあふ)ぎながら差招(さしまね)く。
008玉治別浮島(うきしま)にゐませる(かみ)(こころ)あらば
009()(きた)りませわれはあふがむ。
010(みづ)(おも)(かる)(うか)べる(この)(しま)
011如何(いか)なる(かみ)のすみかなるらむ。
012島影(しまかげ)にかくれひそめる曲神(まがかみ)
013(かみ)御稜威(みいづ)(すく)()らさむ。
014(うつ)()(また)幽世(かくりよ)(かみ)()
015(すめ)大神(おほかみ)のしらす御国(みくに)ぞ。
016国治立(くにはるたち)(かみ)(みこと)伊吹(いぶき)より
017(あら)はれますかあはれ(この)(しま)
018(たま)()(いのち)(かぎ)玉治別(たまはるわけ)
019()(すく)ふべくここに(きた)れり。
020玉治別(たまはるわけ)(かみ)(みこと)素盞嗚(すさのを)
021(かみ)伊吹(いぶき)()けつぎて()し。
022惟神(かむながら)(かみ)(ちか)ひの(ふか)ければ
023如何(いか)なる(まが)(すく)(たま)はむ。
024(おに)大蛇(をろち)(とら)(おほかみ)獅子(しし)(くま)
025(かみ)水火(いき)より(うま)れたる御子(みこ)
026われは(いま)(かみ)御言(みこと)(かかぶ)りて
027(なれ)(すく)はむとここに(きた)れり。
028三五(あななひ)(かみ)(をしへ)()(すく)
029(まこと)(ひと)つの玉治別(たまはるわけ)なり。
030わが(たま)如意(によい)宝珠(ほつしゆ)(かがや)きて
031うみの(そこ)(まで)()らし()くなり。
032湖底(うなそこ)(ひそ)(かく)るる醜神(しこがみ)
033()かして(すく)(かみ)正道(まさみち)
034()(しづ)交々(こもごも)(きた)(ひと)()
035(かみ)(まか)せば永久(とは)(さか)えむ。
036スツポンの(うみ)(そこ)ひは(ふか)くとも
037(かみ)(めぐみ)(ふか)きに()かず。
038いざさらば玉治別(たまはるわけ)言霊(ことたま)
039(いづ)伊吹(いぶき)(ひら)()むかな。
040(ひら)()御代(みよ)(あふぎ)(すゑ)(ひろ)
041(さか)(さか)えよ(うみ)(そこ)まで。
042三五(あななひ)(かみ)(をしへ)孫公(まごこう)
043(かみ)(つかさ)(いつは)りしはや。
044(いつは)りのなき()なりせば()くばかり
045(かみ)(こころ)(いた)めざらまし。
046あゝ(かみ)(あまね)世人(よびと)(すく)へかし
047(うみ)(そこ)なる大蛇(をろち)(すゑ)まで。
048(おに)大蛇(をろち)(しこ)(たけ)びの(つよ)くとも
049玉治別(たまはるわけ)(たま)()らさむ。
050曲神(まがかみ)(すめ)大神(おほかみ)御霊(みたま)なり
051(ゆめ)おろそかに(あつか)ふべしやは。
052()()れば此処(ここ)()(にん)(かみ)()
053(ちから)(かぎ)りに言霊(ことたま)()()り。
054言霊(ことたま)(くも)りはいよよ(ふか)くして
055(うみ)(そこ)まで(とほ)らざりける。
056八千尋(やちひろ)(そこ)(ひそ)める曲津神(まがつみ)
057天津(あまつ)日影(ひかげ)(あふ)()るらむ。
058(まつ)(しま)(たけ)(しま)より(うめ)(しま)
059()つの御霊(みたま)姿(すがた)なりけり。
060素盞嗚(すさのを)(かみ)伊吹(いぶき)(きよ)ければ
061わが言霊(ことたま)()みて()()る。
062なりなりてなり(あま)りたる天教山(てんけうざん)
063(かみ)御稜威(みいづ)(たふと)かりけれ。
064()(はな)咲耶(さくやの)姫神(ひめがみ)(あら)はれて
065(まが)(なや)める(ひと)(すく)はす。
066何事(なにごと)(かみ)(こころ)(まか)しなば
067()(おそ)るべきものはあらまし。
068千早(ちはや)()(ふる)神代(かみよ)(むかし)より
069(かみ)(こころ)(かは)らざりけり。
070()(みづ)(ふる)神代(かみよ)(むかし)より
071(いろ)(かは)らず(あぢ)(かは)らず』
072 玉治別(たまはるわけ)はかく(うた)(をり)しも、073湖面(こめん)(うか)べる(うる)はしき(ひと)つの(しま)074言霊(ことたま)威力(ゐりよく)(かん)じてや悠々(いういう)として湖畔(こはん)(ちか)()(きた)る。075近寄(ちかよ)()れば、076意外(いぐわい)なる(ひろ)浮島(うきしま)なり。077玉治別(たまはるわけ)先頭(せんとう)()ち、078(この)浮島(うきしま)(わた)らむとする(とき)079いづくよりともなく(こゑ)ありて、
080(言依別命)()(しば)玉治別(たまはるわけ)神司(かむづかさ)
081(この)浮島(うきしま)(まが)変化(すがた)ぞ。
082(うる)はしき(まつ)()(しま)()せかけて
083(なや)まさむとする(まが)醜業(しこわざ)
084村肝(むらきも)(こころ)(くば)五柱(いつはしら)
085(まが)(つど)へるこれの(みづうみ)
086素盞嗚(すさのを)(かみ)(みこと)生御霊(いくみたま)
087われは言依別(ことよりわけ)(かみ)ぞや。
088言依別(ことよりわけ)(かみ)(みこと)(あら)はれて
089玉治別(たまはるわけ)(ちから)()へむ。
090烏羽玉(うばたま)闇夜(やみよ)をてらす日出別(ひのでわけ)
091(かみ)(みこと)(いま)ここにあり。
092()花姫(はなひめ)(かみ)(みこと)生御霊(いくみたま)
093蚊取(かとり)(わけ)もかくれ()にけり。
094惟神(かむながら)(かみ)御霊(みたま)(さち)(ふか)
095湖底(うなそこ)までも()らし()くなり』
096と、097何処(どこ)ともなく中空(ちうくう)より(きこ)(きた)る。
098 玉治別(たまはるわけ)はハツと(かうべ)()げ、099拍手(はくしゆ)再拝(さいはい)100神恩(しんおん)感謝(かんしや)し、101()(きた)松島(まつしま)(むか)つて、102(こゑ)(すず)しく生言霊(いくことたま)をうちかけたり。
103玉治別(かむ)素盞嗚(すさのをの)大御神(おほみかみ)
104()(はな)咲耶姫(さくやひめの)(かみ)
105(その)生霊(いくたま)()れませる
106蚊取(かとり)(わけ)宣伝使(せんでんし)
107(みづ)身魂(みたま)生御霊(いくみたま)
108言依別(ことよりわけ)神司(かむづかさ)
109日出別(ひのでのわけ)神人(しんじん)
110(われ)()一行(いつかう)言霊(ことたま)
111(いくさ)(まも)(たす)けむと
112天空(てんくう)(たか)(かけ)らせて
113(くだ)(たま)ひし(たふと)さよ
114あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
115(かみ)(まも)りは()のあたり
116玉治別(たまはるわけ)(いさ)()
117(わが)言霊(ことたま)のつづく(だけ)
118(まこと)(ひと)つを(たて)となし
119仁慈(じんじ)無限(むげん)大神(おほかみ)
120(ふか)(こころ)四方(よも)(くに)
121青人草(あをひとぐさ)()ふも(さら)
122これの湖水(こすゐ)にひそみたる
123大蛇(をろち)(すゑ)(いた)(まで)
124(すく)(たす)けでおくべきか
125(いま)浮島(うきしま)(あら)はれし
126(しこ)大蛇(をろち)よよつく()
127(かみ)(みち)には(ちり)(ほど)
128(いつは)(けが)れなきものぞ
129(きよ)けき(しま)()せかけて
130(われ)()(たば)かり(なや)めむと
131(はか)りに(はか)邪曲(よこしま)
132(なれ)(こころ)(あは)れなり
133あゝ松島(まつしま)(あら)はれし
134(しこ)(みたま)(いま)よりは
135(かみ)にうけたる(たましひ)
136(をしへ)(きよ)(みづうみ)
137(あら)(きよ)めて天地(あめつち)
138(かみ)のよさしの瑞御霊(みづみたま)
139(もと)姿(すがた)()(かへ)
140いかなる(きよ)(みたま)でも
141(くも)れば(いし)()かざらむ
142玉治別(たまはるわけ)真心(まごころ)
143こめて(なんぢ)(さと)すなり
144あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
145(かみ)大道(おほぢ)早帰(はやかへ)
146(かみ)(かへ)りし(たま)ならば
147(いの)らずとても皇神(すめかみ)
148(なんぢ)(つみ)(ゆる)しまし
149生命(いのち)栄光(さかえ)歓喜(よろこび)
150()()らひたる神国(かみくに)
151(やす)(すく)はせ(たま)ふべし
152玉治別(たまはるわけ)宣伝使(せんでんし)
153言霊(ことたま)ここに()(をは)
154あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
155御霊(みたま)(さち)はひましませよ』
156(うた)(をは)るや(いな)や、157(いま)(まで)()(まへ)(あら)はれたる松島(まつしま)は、158グレンと顛覆(てんぷく)した途端(とたん)に、159(しろ)(あか)とのダンダラ(すぢ)(うろこ)湖面(こめん)にさらし、160()()荒波(あらなみ)()て、161湖中(こちう)(ふか)(しづ)みける。162(その)光景(くわうけい)(じつ)(すさま)じきものにてありき。
163 (また)もや(ひと)つの(しま)164悠々(いういう)として此方(こなた)(うか)(きた)る。165よくよく()れば、166(しま)一面(いちめん)(くろ)(ほそ)(たけ)密生(みつせい)してゐる。167(その)(たけ)(あひだ)より(はな)(あざむ)妙齢(めうれい)美人(びじん)168三柱(みはしら)(あら)はれ、169(やさ)しき()をさし()べて、170(はや)(きた)れと、171(くち)には()はねど、172(その)形容(けいよう)(あら)はし、173手招(てまね)(しき)りなり。174玉治別(たまはるわけ)以前(いぜん)松島(まつしま)()りて、175容易(ようい)(うご)かず、176両手(りやうて)()み、177(この)(しま)(むか)つて鎮魂(ちんこん)(しう)しければ、178(しま)追々(おひおひ)湖畔(こはん)(ちか)より(きた)り、179以前(いぜん)女神(めがみ)竹藪(たけやぶ)をぬけ()で、180浮島(うきしま)水打際(みづうちぎは)()ちて、181ニコヤカに玉治別(たまはるわけ)一行(いつかう)姿(すがた)()つめゐたり。
182玉治別(たまはるわけ)竹島(たけしま)()りて()()神人(かみびと)
183姿(すがた)()れば(こころ)(さか)えぬ。
184さりながら如何(いか)(こころ)(ゆる)さむや
185われ松島(まつしま)(あや)しきを()て。
186(あや)しきはこれの竹島(たけしま)いかにして
187三人(みたり)乙女(をとめ)(あら)はれにけむ。
188素盞嗚(すさのをの)(かみ)(みこと)()みましし
189()つの御霊(みたま)()ましけるかも。
190小波(さざなみ)(なか)(ただよ)(たけ)(しま)
191三人(みたり)乙女(をとめ)(かげ)(うる)はしも』
192 お(あい)(また)(うた)ふ。
193お愛有難(ありがた)やあら(たふと)やと()(をが)
194(かみ)姿(すがた)(うる)はしき(かな)
195素盞嗚(すさのをの)(かみ)(みこと)分御霊(わけみたま)
196(いま)わが(まへ)()れましにけむ。
197惟神(かむながら)(かみ)大道(おほぢ)()みしめて
198(みづ)御霊(みたま)(みち)(まも)らむ。
199()御霊(みたま)()つの御霊(みたま)相並(あひなら)
200(まも)らせ(たま)筑紫(つくし)神国(かみくに)
201天教山(てんけうざん)()()(くだ)りし八島別(やしまわけ)
202(かみ)(みこと)のわれは(むすめ)ぞ』
203(うた)(をは)り、204(さん)(にん)女神(めがみ)(むか)つて()(をが)む。205女神(めがみ)一人(ひとり)(こゑ)(しと)やかに、
206女神の一人真心(まごころ)をつくしの(しま)(この)(うみ)
207世人(よびと)(すく)ふと(きた)ります(きみ)
208八島別(やしまわけ)(かみ)(みこと)御裔(みすゑ)ぞと
209()くわれこそは(うれ)しかりけり。
210われこそは神世(かみよ)(まつ)(ひめ)(みこと)
211(なれ)(こころ)(さか)えまちつつ。
212(さか)えゆく(かみ)御国(みくに)末永(すえなが)
213いや(さか)えませ愛子(あいこ)(きみ)よ』
214(あい)有難(ありがた)(みづ)御霊(みたま)(あら)はれて
215わが()(くも)()らし(たま)へる。
216虎若彦(とらわかひこ)(つま)(みこと)をわが(ため)
217(いや)永久(とこしへ)(まも)(たま)はれ』
218 (つぎ)なる女神(めがみ)(また)(うた)ふ。
219別の女神愛子姫(あいこひめ)(なれ)(みこと)建日向(たけひむか)
220(わけ)(みこと)(うづ)御子(みこ)かも。
221八島別(やしまわけ)(かみ)(みこと)天教(てんけう)
222(やま)(のぼ)りて(さか)えましけり。
223敷妙(しきたへ)(かみ)(みこと)()(はは)
224(いま)ヒマラヤの(やま)にましける。
225ヒマラヤの(やま)より(たか)(おや)(おん)
226ゆめゆめ(わす)(たま)ふまじきぞ』
227 お(あい)228これに(こた)ふ。
229お愛敷島(しきしま)大和心(やまとごころ)のあらむ(かぎ)りは
230(かみ)大道(おほぢ)(すす)みて()かむ。
231父母(ちちはは)(かみ)(みこと)御心(みこころ)
232(そむ)きし(こと)(なげ)かはしきかも。
233惟神(かむながら)(かみ)のまにまに(すす)()
234わが宿世(すぐせ)こそ不思議(ふしぎ)なりけり。
235久方(ひさかた)雲井(くもゐ)(そら)()()でて
236武野(たけの)(ひな)にわれは(くら)しつ』
237 (さん)(にん)女神(めがみ)(また)(うた)ふ。
238三人の女神三五(あななひ)(かみ)(をしへ)孫公司(まごこうつかさ)
239大蛇(をろち)(まが)()えうせにける。
240いざさらば(こころ)大蛇(をろち)言向(ことむ)けて
241(まこと)(みち)(すす)ませ(たま)へ。
242惟神(かむながら)(かみ)屋方(やかた)三公(さんこう)
243()父母(ちちはは)神国(かみくに)にあり。
244()(なか)(かみ)御目(みめ)より(なが)むれば
245(あだ)味方(みかた)もなきぞ(たふと)き。
246(この)(うみ)(なれ)(かたき)のひそむとは
247よくも(こころ)(まよ)ひしものよ。
248村肝(むらきも)(こころ)(くも)()(はら)
249()らせたきもの(つき)(をしへ)を。
250玉治別(たまはるわけ)(うづ)(みこと)神司(かむづかさ)
251とく()きませよ()国都(くにみやこ)へ。
252()(くに)(みやこ)(そら)黒雲(くろくも)
253かかるは忌々(ゆゆ)しとく(すす)みませ。
254いざさらば三人(みたり)乙女(をとめ)()()らむ
255()(にん)(ひと)よすこやかに()せよ』
256といふかと()れば、257(しま)諸共(もろとも)何処(いづこ)()きけむ、258跡形(あとかた)もなく、259あとには紺碧(こんぺき)湖面(こめん)に、260(なみ)(おだや)かにうねりゐるのみ。
261 (これ)より玉治別(たまはるわけ)一行(いつかう)(この)(みづうみ)曲津(まがつ)(かみ)帰順(きじゆん)せしむべく、262(すめ)大神(おほかみ)()ひのみまつり、263一日(いちにち)一夜(いちや)祈願(きぐわん)をこらせば、264(たちま)湖水(こすゐ)(ふた)つに(わか)れ、265(うる)はしき女神(めがみ)姿(すがた)となりて()(にん)無言(むごん)(まま)266(うやうや)しく拝礼(はいれい)(をは)り、267(ただ)ちに(くも)(おこ)し、268悠々(いういう)として天上(てんじやう)(たか)(のぼ)()けり。269これは(この)(みづうみ)にひそみし巨大(きよだい)なる三頭(さんとう)大蛇(をろち)270(かみ)霊徳(れいとく)()つて三寒(さんかん)三熱(さんねつ)()をのがれ、271(たちま)(うる)はしき女神(めがみ)姿(すがた)(くわ)して、272天国(てんごく)(すく)はれたるなりき。
273 ここに玉治別(たまはるわけ)一行(いつかう)(とも)に、274(ふたた)白山峠(しらやまたうげ)()え、275熊襲(くまそ)(くに)三公(さんこう)(やかた)立寄(たちよ)り、276一夜(ひとよ)()かし、277(いそ)いで()神国(かみくに)さして(すす)()く。278惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)
279大正一一・九・一六 旧七・二五 松村真澄録)
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