霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一六章 浮島(うきしま)の花(はな)〔九八〇〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第35巻 海洋万里 戌の巻 篇:第2篇 ナイルの水源 よみ(新仮名遣い):ないるのすいげん
章:第16章 浮島の花 よみ(新仮名遣い):うきしまのはな 通し章番号:980
口述日:1922(大正11)年09月16日(旧07月25日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年12月25日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
スッポンの湖水には、三個の浮島があって時々刻々湖面をただよっている。玉治別はこの島を引き寄せようと、金扇を開いて打ちあおぎながら差し招いた。
玉治別が島寄せの歌を歌うと、一つの広い大きな松の生い茂った島がこちらにやってきた。玉治別が島に渡ろうとしたとき、どこからともなく声が聞こえてきた。声は、この島は曲津神の変化で、玉治別たちをだまして陥れようとしたのだと、歌で警告した。
そして声は、自分は素盞嗚尊の生御魂・言依別神だと名乗った。そして日の出別神、蚊取別神も一緒に来ていると明かした。
玉治別は拍手再拝して神恩を感謝した。そして寄ってきた松の浮島に対して、大蛇として呼びかけ、神の道への改心を促す生言霊を、声も涼しくうちかけた。
大蛇の身魂も罪をゆるし救い上げようと呼びかける玉治別の歌に、島はぐれんと転覆し、白と赤のダンダラ筋模様の鱗を湖面にさらして湖中深く沈んでいった。
別の浮島がこちらに向かって進んできた。島には黒く細い竹が密生していた。竹の間から美しい女神が三柱現れ、しきりに手招きしている。玉治別は先ほどの松の島に懲りて、鎮魂を修しながら岸辺で見守っていた。竹の島はさらに近づき、女神たちは竹藪を出て岸から玉治別一行と対面した。
玉治別が歌で女神たちに呼びかけ、何者かを問うた。お愛は、女神たちを素盞嗚神の分霊として呼びかけた。女神の一人は松の姫命と名乗り、愛子姫の歌に応えた。次の女神は、愛子姫の父神は天教山に、母神はヒマラヤ山にいると明かし、父母の恩を忘れないようにと諭した。
最後に三人の女神は、孫公に誠の道に進むようにと諭した。また三公には、父母は神国に到達しており、世の中は神の目から見れば仇も味方もないことを諭した。この湖に父母の仇が潜むと思い詰めたのは心の迷いであり、それを晴らすようにと教えた。
女神たちは玉治別に、火の国の都に良くないことの前兆があり、早く進んで行くようにと促した。そして別れを告げると、湖面には島の跡形もなく、波が穏やかにうねっているのみであった。
これより玉治別一行は、この湖の曲津神を基準するべく皇大神に請いのみまつり、一日一夜祈願をこらした。湖水は二つに分かれ、大蛇は美しい女神の姿となって五人の前に現れ、無言のまま感謝の礼をなすと、天上高く登って行った。
玉治別は一行と共に白山峠を戻り、熊襲の国の三公の館に帰ってきた。一夜を明かすと玉治別は、急いで火の国を目指して進んで行った。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ:蚊取の別(蚊取別) データ凡例:055「いよよ」はママ。 データ最終更新日:2022-09-29 12:03:36 文字数:3438 OBC :rm3516
愛善世界社版:179頁 八幡書店版:第6輯 535頁 修補版: 校定版:187頁 普及版:69頁 初版: ページ備考:
001 東西(とうざい)二十(にじふ)里(り)、002南北(なんぽく)三十(さんじふ)里(り)に亘(わた)る此(この)湖水(こすゐ)の中(なか)に三個(さんこ)の浮島(うきしま)ありて、003時々(じじ)刻々(こくこく)に其(その)位置(ゐち)を変(へん)じ、004浮草(うきぐさ)の如(ごと)く漂(ただよ)へる奇妙(きめう)なる島(しま)なり。005玉治別(たまはるわけ)は此(この)島(しま)を近(ちか)く引寄(ひきよ)せむと、006金扇(きんせん)を開(ひら)き、007打煽(うちあふ)ぎながら差招(さしまね)く。
008玉治別『浮島(うきしま)にゐませる神(かみ)よ心(こころ)あらば
009寄(よ)り来(きた)りませわれはあふがむ。
010水(みづ)の面(おも)に軽(かる)く浮(うか)べる此(この)島(しま)は
011如何(いか)なる神(かみ)のすみかなるらむ。
012島影(しまかげ)にかくれひそめる曲神(まがかみ)を
013神(かみ)の御稜威(みいづ)に救(すく)ひ照(て)らさむ。
014現(うつ)し世(よ)も亦(また)幽世(かくりよ)も神(かみ)の世(よ)も
015皇(すめ)大神(おほかみ)のしらす御国(みくに)ぞ。
016国治立(くにはるたち)神(かみ)の命(みこと)の伊吹(いぶき)より
017現(あら)はれますかあはれ此(この)島(しま)。
018玉(たま)の緒(を)の命(いのち)の限(かぎ)り玉治別(たまはるわけ)は
019汝(な)を救(すく)ふべくここに来(きた)れり。
020玉治別(たまはるわけ)神(かみ)の命(みこと)は素盞嗚(すさのを)の
021神(かみ)の伊吹(いぶき)を受(う)けつぎて来(き)し。
022惟神(かむながら)神(かみ)の誓(ちか)ひの深(ふか)ければ
023如何(いか)なる曲(まが)も救(すく)ひ玉(たま)はむ。
024鬼(おに)大蛇(をろち)虎(とら)狼(おほかみ)や獅子(しし)熊(くま)も
025神(かみ)の水火(いき)より生(うま)れたる御子(みこ)。
026われは今(いま)神(かみ)の御言(みこと)を蒙(かかぶ)りて
027汝(なれ)救(すく)はむとここに来(きた)れり。
028三五(あななひ)の神(かみ)の教(をしへ)は世(よ)を救(すく)ふ
029誠(まこと)一(ひと)つの玉治別(たまはるわけ)なり。
030わが魂(たま)は如意(によい)の宝珠(ほつしゆ)と輝(かがや)きて
031うみの底(そこ)迄(まで)照(て)らし行(ゆ)くなり。
032湖底(うなそこ)に潜(ひそ)み隠(かく)るる醜神(しこがみ)も
033浮(う)かして救(すく)ふ神(かみ)の正道(まさみち)。
034浮(う)き沈(しづ)み交々(こもごも)来(きた)る人(ひと)の世(よ)も
035神(かみ)に任(まか)せば永久(とは)に栄(さか)えむ。
036スツポンの湖(うみ)の底(そこ)ひは深(ふか)くとも
037神(かみ)の恵(めぐみ)の深(ふか)きに若(し)かず。
038いざさらば玉治別(たまはるわけ)が言霊(ことたま)の
039厳(いづ)の伊吹(いぶき)を開(ひら)き見(み)むかな。
040開(ひら)け行(ゆ)く御代(みよ)に扇(あふぎ)の末(すゑ)広(ひろ)く
041栄(さか)え栄(さか)えよ湖(うみ)の底(そこ)まで。
042三五(あななひ)の神(かみ)の教(をしへ)の孫公(まごこう)が
043神(かみ)の司(つかさ)と詐(いつは)りしはや。
044詐(いつは)りのなき世(よ)なりせば斯(か)くばかり
045神(かみ)は心(こころ)を痛(いた)めざらまし。
046あゝ神(かみ)よ普(あまね)く世人(よびと)を救(すく)へかし
047湖(うみ)の底(そこ)なる大蛇(をろち)の末(すゑ)まで。
048鬼(おに)大蛇(をろち)醜(しこ)の猛(たけ)びの強(つよ)くとも
049玉治別(たまはるわけ)の魂(たま)に照(て)らさむ。
050曲神(まがかみ)も皇(すめ)大神(おほかみ)の御霊(みたま)なり
051夢(ゆめ)おろそかに扱(あつか)ふべしやは。
052来(き)て見(み)れば此処(ここ)に四(よ)人(にん)の神(かみ)の子(こ)が
053力(ちから)限(かぎ)りに言霊(ことたま)宣(の)り居(を)り。
054言霊(ことたま)の曇(くも)りはいよよ深(ふか)くして
055湖(うみ)の底(そこ)まで通(とほ)らざりける。
056八千尋(やちひろ)の底(そこ)に潜(ひそ)める曲津神(まがつみ)も
057天津(あまつ)日影(ひかげ)は仰(あふ)ぎ見(み)るらむ。
058松(まつ)の島(しま)竹(たけ)の島(しま)より梅(うめ)の島(しま)
059三(み)つの御霊(みたま)の姿(すがた)なりけり。
060素盞嗚(すさのを)の神(かみ)の伊吹(いぶき)の清(きよ)ければ
061わが言霊(ことたま)も澄(す)みて鳴(な)り鳴(な)る。
062なりなりてなり余(あま)りたる天教山(てんけうざん)の
063神(かみ)の御稜威(みいづ)ぞ尊(たふと)かりけれ。
064木(こ)の花(はな)の咲耶(さくやの)姫神(ひめがみ)現(あら)はれて
065曲(まが)に悩(なや)める人(ひと)を救(すく)はす。
066何事(なにごと)も神(かみ)の心(こころ)に任(まか)しなば
067世(よ)に恐(おそ)るべきものはあらまし。
068千早(ちはや)振(ふ)る古(ふる)き神代(かみよ)の昔(むかし)より
069神(かみ)の心(こころ)は変(かは)らざりけり。
070火(ひ)と水(みづ)は古(ふる)き神代(かみよ)の昔(むかし)より
071色(いろ)も変(かは)らず味(あぢ)も変(かは)らず』
072 玉治別(たまはるわけ)はかく詠(うた)ふ折(をり)しも、073湖面(こめん)に浮(うか)べる美(うる)はしき一(ひと)つの島(しま)、074言霊(ことたま)の威力(ゐりよく)に感(かん)じてや悠々(いういう)として湖畔(こはん)近(ちか)く寄(よ)り来(きた)る。075近寄(ちかよ)り見(み)れば、076意外(いぐわい)なる広(ひろ)き浮島(うきしま)なり。077玉治別(たまはるわけ)は先頭(せんとう)に立(た)ち、078此(この)浮島(うきしま)に渡(わた)らむとする時(とき)、079いづくよりともなく声(こゑ)ありて、
080(言依別命)『待(ま)て暫(しば)し玉治別(たまはるわけ)の神司(かむづかさ)
081此(この)浮島(うきしま)は曲(まが)の変化(すがた)ぞ。
082美(うる)はしき松(まつ)生(お)ふ島(しま)と見(み)せかけて
083悩(なや)まさむとする曲(まが)の醜業(しこわざ)。
084村肝(むらきも)の心(こころ)を配(くば)れ五柱(いつはしら)
085曲(まが)の集(つど)へるこれの湖(みづうみ)。
086素盞嗚(すさのを)の神(かみ)の尊(みこと)の生御霊(いくみたま)
087われは言依別(ことよりわけ)の神(かみ)ぞや。
088言依別(ことよりわけ)神(かみ)の命(みこと)が現(あら)はれて
089玉治別(たまはるわけ)に力(ちから)を添(そ)へむ。
090烏羽玉(うばたま)の闇夜(やみよ)をてらす日出別(ひのでわけ)
091神(かみ)の命(みこと)も今(いま)ここにあり。
092木(こ)の花姫(はなひめ)神(かみ)の命(みこと)の生御霊(いくみたま)
093蚊取(かとり)の別(わけ)もかくれ来(き)にけり。
094惟神(かむながら)神(かみ)の御霊(みたま)の幸(さち)深(ふか)く
095湖底(うなそこ)までも照(て)らし行(ゆ)くなり』
096と、097何処(どこ)ともなく中空(ちうくう)より聞(きこ)え来(きた)る。
098 玉治別(たまはるわけ)はハツと頭(かうべ)を下(さ)げ、099拍手(はくしゆ)再拝(さいはい)、100神恩(しんおん)を感謝(かんしや)し、101寄(よ)り来(きた)る松島(まつしま)に向(むか)つて、102声(こゑ)も涼(すず)しく生言霊(いくことたま)をうちかけたり。
103玉治別『神(かむ)素盞嗚(すさのをの)大御神(おほみかみ)
104木(こ)の花(はな)咲耶姫(さくやひめの)神(かみ)
105其(その)生霊(いくたま)と現(あ)れませる
106蚊取(かとり)の別(わけ)の宣伝使(せんでんし)
107瑞(みづ)の身魂(みたま)の生御霊(いくみたま)
108言依別(ことよりわけ)の神司(かむづかさ)
109日出別(ひのでのわけ)の神人(しんじん)が
110吾(われ)等(ら)一行(いつかう)の言霊(ことたま)の
111戦(いくさ)を守(まも)り助(たす)けむと
112天空(てんくう)高(たか)く翔(かけ)らせて
113下(くだ)り玉(たま)ひし尊(たふと)さよ
114あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
115神(かみ)の守(まも)りは目(ま)のあたり
116玉治別(たまはるわけ)は勇(いさ)み立(た)ち
117吾(わが)言霊(ことたま)のつづく丈(だけ)
118誠(まこと)一(ひと)つを楯(たて)となし
119仁慈(じんじ)無限(むげん)の大神(おほかみ)の
120深(ふか)き心(こころ)を四方(よも)の国(くに)
121青人草(あをひとぐさ)は云(い)ふも更(さら)
122これの湖水(こすゐ)にひそみたる
123大蛇(をろち)の末(すゑ)に至(いた)る迄(まで)
124救(すく)ひ助(たす)けでおくべきか
125今(いま)浮島(うきしま)と現(あら)はれし
126醜(しこ)の大蛇(をろち)よよつく聞(き)け
127神(かみ)の道(みち)には塵(ちり)程(ほど)も
128詐(いつは)り汚(けが)れなきものぞ
129清(きよ)けき島(しま)と見(み)せかけて
130吾(われ)等(ら)を誑(たば)かり悩(なや)めむと
131謀(はか)りに謀(はか)る邪曲(よこしま)の
132汝(なれ)の心(こころ)ぞ憐(あは)れなり
133あゝ松島(まつしま)と現(あら)はれし
134醜(しこ)の霊(みたま)よ今(いま)よりは
135神(かみ)にうけたる魂(たましひ)を
136教(をしへ)に清(きよ)き湖(みづうみ)に
137洗(あら)ひ清(きよ)めて天地(あめつち)の
138神(かみ)のよさしの瑞御霊(みづみたま)
139元(もと)の姿(すがた)に立(た)ち帰(かへ)れ
140いかなる清(きよ)き霊(みたま)でも
141曇(くも)れば石(いし)に若(し)かざらむ
142玉治別(たまはるわけ)が真心(まごころ)を
143こめて汝(なんぢ)を諭(さと)すなり
144あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
145神(かみ)の大道(おほぢ)に早帰(はやかへ)れ
146神(かみ)に帰(かへ)りし霊(たま)ならば
147祈(いの)らずとても皇神(すめかみ)は
148汝(なんぢ)が罪(つみ)を赦(ゆる)しまし
149生命(いのち)と栄光(さかえ)と歓喜(よろこび)に
150充(み)ち足(た)らひたる神国(かみくに)に
151安(やす)く救(すく)はせ玉(たま)ふべし
152玉治別(たまはるわけ)の宣伝使(せんでんし)
153言霊(ことたま)ここに宣(の)り了(をは)る
154あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
155御霊(みたま)幸(さち)はひましませよ』
156と歌(うた)ひ了(をは)るや否(いな)や、157今(いま)迄(まで)目(め)の前(まへ)に現(あら)はれたる松島(まつしま)は、158グレンと顛覆(てんぷく)した途端(とたん)に、159白(しろ)と赤(あか)とのダンダラ筋(すぢ)の鱗(うろこ)を湖面(こめん)にさらし、160見(み)る間(ま)に荒波(あらなみ)を立(た)て、161湖中(こちう)深(ふか)く沈(しづ)みける。162其(その)光景(くわうけい)は実(じつ)に凄(すさま)じきものにてありき。
163 又(また)もや一(ひと)つの島(しま)、164悠々(いういう)として此方(こなた)に浮(うか)び来(きた)る。165よくよく見(み)れば、166島(しま)一面(いちめん)に黒(くろ)き細(ほそ)き竹(たけ)が密生(みつせい)してゐる。167其(その)竹(たけ)の間(あひだ)より花(はな)を欺(あざむ)く妙齢(めうれい)の美人(びじん)、168三柱(みはしら)現(あら)はれ、169優(やさ)しき手(て)をさし伸(の)べて、170早(はや)く来(きた)れと、171口(くち)には言(い)はねど、172其(その)形容(けいよう)に現(あら)はし、173手招(てまね)き頻(しき)りなり。174玉治別(たまはるわけ)は以前(いぜん)の松島(まつしま)に懲(こ)りて、175容易(ようい)に動(うご)かず、176両手(りやうて)を組(く)み、177此(この)島(しま)に向(むか)つて鎮魂(ちんこん)を修(しう)しければ、178島(しま)は追々(おひおひ)湖畔(こはん)に近(ちか)より来(きた)り、179以前(いぜん)の女神(めがみ)は竹藪(たけやぶ)をぬけ出(い)で、180浮島(うきしま)の水打際(みづうちぎは)に立(た)ちて、181ニコヤカに玉治別(たまはるわけ)一行(いつかう)の姿(すがた)を見(み)つめゐたり。
182玉治別(たまはるわけ)『竹島(たけしま)に乗(の)りて寄(よ)り来(く)る神人(かみびと)の
183姿(すがた)を見(み)れば心(こころ)栄(さか)えぬ。
184さりながら如何(いか)で心(こころ)を許(ゆる)さむや
185われ松島(まつしま)の怪(あや)しきを見(み)て。
186怪(あや)しきはこれの竹島(たけしま)いかにして
187三人(みたり)乙女(をとめ)の現(あら)はれにけむ。
188素盞嗚(すさのをの)神(かみ)の尊(みこと)の生(う)みましし
189三(み)つの御霊(みたま)に似(に)ましけるかも。
190小波(さざなみ)の中(なか)に漂(ただよ)ふ竹(たけ)の島(しま)
191三人(みたり)乙女(をとめ)の影(かげ)美(うる)はしも』
192 お愛(あい)は又(また)詠(うた)ふ。
193お愛『有難(ありがた)やあら尊(たふと)やと伏(ふ)し拝(をが)む
194神(かみ)の姿(すがた)の美(うる)はしき哉(かな)。
195素盞嗚(すさのをの)神(かみ)の尊(みこと)の分御霊(わけみたま)
196今(いま)わが前(まへ)に現(あ)れましにけむ。
197惟神(かむながら)神(かみ)の大道(おほぢ)を踏(ふ)みしめて
198瑞(みづ)の御霊(みたま)の道(みち)を守(まも)らむ。
199三(み)つ御霊(みたま)、五(い)つの御霊(みたま)と相並(あひなら)び
200守(まも)らせ玉(たま)ふ筑紫(つくし)の神国(かみくに)。
201天教山(てんけうざん)尾(を)の上(へ)を降(くだ)りし八島別(やしまわけ)
202神(かみ)の命(みこと)のわれは娘(むすめ)ぞ』
203と歌(うた)ひ終(をは)り、204三(さん)人(にん)の女神(めがみ)に向(むか)つて伏(ふ)し拝(をが)む。205女神(めがみ)の一人(ひとり)は声(こゑ)も淑(しと)やかに、
206女神の一人『真心(まごころ)をつくしの島(しま)の此(この)湖(うみ)に
207世人(よびと)救(すく)ふと来(きた)ります君(きみ)。
208八島別(やしまわけ)神(かみ)の命(みこと)の御裔(みすゑ)ぞと
209聞(き)くわれこそは嬉(うれ)しかりけり。
210われこそは神世(かみよ)を松(まつ)の姫(ひめ)命(みこと)
211汝(なれ)が心(こころ)の栄(さか)えまちつつ。
212栄(さか)えゆく神(かみ)の御国(みくに)に末永(すえなが)く
213いや栄(さか)えませ愛子(あいこ)の君(きみ)よ』
214お愛(あい)『有難(ありがた)し瑞(みづ)の御霊(みたま)の現(あら)はれて
215わが身(み)の曇(くも)り晴(は)らし玉(たま)へる。
216虎若彦(とらわかひこ)夫(つま)の命(みこと)をわが為(ため)に
217弥(いや)永久(とこしへ)に守(まも)り給(たま)はれ』
218 次(つぎ)なる女神(めがみ)又(また)詠(うた)ふ。
219別の女神『愛子姫(あいこひめ)汝(なれ)が命(みこと)は建日向(たけひむか)
220別(わけ)の命(みこと)の珍(うづ)の御子(みこ)かも。
221八島別(やしまわけ)神(かみ)の命(みこと)は天教(てんけう)の
222山(やま)に登(のぼ)りて栄(さか)えましけり。
223敷妙(しきたへ)の神(かみ)の命(みこと)の汝(な)が母(はは)は
224今(いま)ヒマラヤの山(やま)にましける。
225ヒマラヤの山(やま)より高(たか)き親(おや)の恩(おん)
226ゆめゆめ忘(わす)れ玉(たま)ふまじきぞ』
227 お愛(あい)、228これに応(こた)ふ。
229お愛『敷島(しきしま)の大和心(やまとごころ)のあらむ限(かぎ)りは
230神(かみ)の大道(おほぢ)に進(すす)みて行(ゆ)かむ。
231父母(ちちはは)の神(かみ)の命(みこと)の御心(みこころ)に
232反(そむ)きし事(こと)の歎(なげ)かはしきかも。
233惟神(かむながら)神(かみ)のまにまに進(すす)み行(ゆ)く
234わが宿世(すぐせ)こそ不思議(ふしぎ)なりけり。
235久方(ひさかた)の雲井(くもゐ)の空(そら)を立(た)ち出(い)でて
236武野(たけの)の鄙(ひな)にわれは暮(くら)しつ』
237 三(さん)人(にん)の女神(めがみ)又(また)詠(うた)ふ。
238三人の女神『三五(あななひ)の神(かみ)の教(をしへ)の孫公司(まごこうつかさ)よ
239大蛇(をろち)の曲(まが)は消(き)えうせにける。
240いざさらば心(こころ)の大蛇(をろち)を言向(ことむ)けて
241誠(まこと)の道(みち)に進(すす)ませ給(たま)へ。
242惟神(かむながら)神(かみ)の屋方(やかた)の三公(さんこう)よ
243汝(な)が父母(ちちはは)は神国(かみくに)にあり。
244世(よ)の中(なか)に神(かみ)の御目(みめ)より眺(なが)むれば
245仇(あだ)も味方(みかた)もなきぞ尊(たふと)き。
246此(この)湖(うみ)に汝(なれ)が仇(かたき)のひそむとは
247よくも心(こころ)の迷(まよ)ひしものよ。
248村肝(むらきも)の心(こころ)の雲(くも)を吹(ふ)き払(はら)ひ
249照(て)らせたきもの月(つき)の教(をしへ)を。
250玉治別(たまはるわけ)貴(うづ)の命(みこと)の神司(かむづかさ)
251とく行(ゆ)きませよ火(ひ)の国都(くにみやこ)へ。
252火(ひ)の国(くに)の都(みやこ)の空(そら)に黒雲(くろくも)の
253かかるは忌々(ゆゆ)しとく進(すす)みませ。
254いざさらば三人(みたり)乙女(をとめ)は立(た)ち去(さ)らむ
255五(ご)人(にん)の人(ひと)よすこやかに坐(ま)せよ』
256といふかと見(み)れば、257島(しま)諸共(もろとも)に何処(いづこ)へ行(ゆ)きけむ、258跡形(あとかた)もなく、259あとには紺碧(こんぺき)の湖面(こめん)に、260波(なみ)穏(おだや)かにうねりゐるのみ。
261 是(これ)より玉治別(たまはるわけ)一行(いつかう)は此(この)湖(みづうみ)の曲津(まがつ)神(かみ)を帰順(きじゆん)せしむべく、262皇(すめ)大神(おほかみ)に請(こ)ひのみまつり、263一日(いちにち)一夜(いちや)祈願(きぐわん)をこらせば、264忽(たちま)ち湖水(こすゐ)は二(ふた)つに分(わか)れ、265美(うる)はしき女神(めがみ)の姿(すがた)となりて五(ご)人(にん)に無言(むごん)の儘(まま)、266恭(うやうや)しく拝礼(はいれい)し終(をは)り、267直(ただ)ちに雲(くも)を起(おこ)し、268悠々(いういう)として天上(てんじやう)高(たか)く昇(のぼ)り行(ゆ)けり。269これは此(この)湖(みづうみ)にひそみし巨大(きよだい)なる三頭(さんとう)の大蛇(をろち)、270神(かみ)の霊徳(れいとく)に依(よ)つて三寒(さんかん)三熱(さんねつ)の苦(く)をのがれ、271忽(たちま)ち美(うる)はしき女神(めがみ)の姿(すがた)と化(くわ)して、272天国(てんごく)に救(すく)はれたるなりき。
273 ここに玉治別(たまはるわけ)は一行(いつかう)と共(とも)に、274再(ふたた)び白山峠(しらやまたうげ)を越(こ)え、275熊襲(くまそ)の国(くに)の三公(さんこう)が館(やかた)に立寄(たちよ)り、276一夜(ひとよ)を明(あ)かし、277急(いそ)いで火(ひ)の神国(かみくに)さして進(すす)み行(ゆ)く。278惟神(かむながら)霊(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)。
279(大正一一・九・一六 旧七・二五 松村真澄録)
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