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霊界物語
海洋万里(第25~36巻)
第35巻(戌の巻)
序文
総説歌
第1篇 向日山嵐
第1章 言の架橋
第2章 出陣
第3章 進隊詩
第4章 村の入口
第5章 案外
第6章 歌の徳
第7章 乱舞
第8章 心の綱
第9章 分担
第2篇 ナイルの水源
第10章 夢の誡
第11章 野宿
第12章 自称神司
第13章 山颪
第14章 空気焔
第15章 救の玉
第16章 浮島の花
第3篇 火の国都
第17章 霧の海
第18章 山下り
第19章 狐の出産
第20章 疑心暗狐
第21章 暗闘
第22章 当違
第23章 清交
第24章 歓喜の涙
余白歌
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海洋万里(第25~36巻)
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第35巻(戌の巻)
> 第3篇 火の国都 > 第24章 歓喜の涙
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(B)
(N)
余白歌 >>>
第二四章
歓喜
(
くわんき
)
の
涙
(
なみだ
)
〔九八八〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第35巻 海洋万里 戌の巻
篇:
第3篇 火の国都
よみ(新仮名遣い):
ひのくにみやこ
章:
第24章 歓喜の涙
よみ(新仮名遣い):
かんきのなみだ
通し章番号:
988
口述日:
1922(大正11)年09月17日(旧07月26日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年12月25日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
黒姫は玄関口にて愛子姫と歌を交わした。黒姫は、高国別を自分の夫の高山彦だと勘違いしており、夫を奪ったと思い込んで愛子姫を非難し、自分の悲哀の思いを歌に託している。
愛子姫は誤解を解こうと真実を歌で聞かせるが、黒姫は容易に信じず、かえって愛子姫にきつい言葉で歌を歌いかけた。
奥の間にずかずか上がってきた黒姫は、愛子姫の居間に玉治別がいるのをみてますます嵩にかかって、夫のいない間に若い男を引っ張り込んだと愛子姫を中傷する。
玉治別は、高山彦はずっと聖地にいたのであり、それを不憫に思ってはるばる黒姫にそのことを伝えようと筑紫の島まで追って来たのだ、と真心から説き諭した。夫が自転倒島にいると聞いて、初めて黒姫は以外の念に打たれて玉治別に真偽を糾した。
玉治別は、火の国館の主人の姿を描いた絵象を指示し、筑紫の島の高山彦は、黒姫の探す夫とは別人であることを説明した。これで黒姫もようやく自らの勘違いを悟り、愛子姫と玉治別に謝罪をなした。
黒姫は自分の勘違いではるばる遠い筑紫の島までやってきて火の国館を騒がせたことを情けなく思い、神前に懺悔を始めた。その中で、自分に生き別れの息子がいることを明かした。
玉治別は黒姫の懺悔をふと聞いて、生き別れの息子の幼名や捨て子の様子を尋ねた。すると年・名前、体の特徴である痣の形、守り袋までぴったりと一致していることがわかった。
玉治別と黒姫は、お互いに親子であることがわかり、思わぬ親子対面に二人はうれし涙にかきくれた。
黒姫、玉治別、房公、芳公、孫公の五人は自転倒島へ帰ることとなり、愛子姫、久公、徳公にその場で別れを告げて聖地に向けて船出した。その後、黒姫が自転倒島の由良港に着き、秋山別の館に立ち寄り、麻邇の宝珠の御用をすることになるいきさつは、第三十三巻に述べられているとおりである。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-10-03 12:22:23
OBC :
rm3524
愛善世界社版:
283頁
八幡書店版:
第6輯 572頁
修補版:
校定版:
299頁
普及版:
110頁
初版:
ページ備考:
001
愛子姫
(
あいこひめ
)
は
黒姫
(
くろひめ
)
の
訪問
(
はうもん
)
と
聞
(
き
)
き、
002
稍
(
やや
)
危
(
あやぶ
)
み
乍
(
なが
)
ら、
003
玄関口
(
げんくわんぐち
)
に
津軽
(
つがるの
)
命
(
みこと
)
と
共
(
とも
)
に
出
(
い
)
で
迎
(
むか
)
へる。
004
玉治別
(
たまはるわけ
)
は
後
(
あと
)
に
只
(
ただ
)
一人
(
ひとり
)
腕
(
うで
)
を
組
(
く
)
み、
005
何
(
なに
)
か
思案
(
しあん
)
にくれてゐる。
006
黒姫
(
くろひめ
)
は
玄関口
(
げんくわんぐち
)
に
立
(
た
)
ち、
007
黒姫
『
高山彦
(
たかやまひこ
)
夫
(
つま
)
の
命
(
みこと
)
の
後
(
あと
)
追
(
お
)
うて
008
黒姫司
(
くろひめつかさ
)
ここにきたれり。
009
高山彦
(
たかやまひこ
)
夫
(
つま
)
の
命
(
みこと
)
は
如何
(
いか
)
にして
010
われを
出迎
(
でむか
)
へ
遊
(
あそ
)
ばさざるや』
011
愛子姫
(
あいこひめ
)
『あらたふと
黒姫司
(
くろひめつかさ
)
はるばると
012
出
(
い
)
でます
事
(
こと
)
の
心
(
こころ
)
嬉
(
うれ
)
しき。
013
いざ
早
(
はや
)
く
館
(
やかた
)
の
奥
(
おく
)
へ
上
(
のぼ
)
りませ
014
汝
(
なれ
)
来
(
き
)
ますとてわれは
待
(
ま
)
ちける。
015
玉治別
(
たまはるわけ
)
神
(
かみ
)
の
命
(
みこと
)
も
出
(
い
)
でまして
016
汝
(
なれ
)
が
入来
(
じゆらい
)
を
待
(
ま
)
たせ
玉
(
たま
)
へり』
017
黒姫
『いざさらばお
構
(
かま
)
ひなくば
奥
(
おく
)
の
間
(
ま
)
へ
018
進
(
すす
)
みて
夫
(
つま
)
に
言問
(
ことと
)
ひ
申
(
まを
)
さむ。
019
高山彦
(
たかやまひこ
)
夫
(
つま
)
の
命
(
みこと
)
の
情
(
つれ
)
なさよ
020
吾
(
われ
)
を
見
(
み
)
すててかかる
国
(
くに
)
まで。
021
年老
(
としお
)
いし
身
(
み
)
も
顧
(
かへり
)
みず
若草
(
わかぐさ
)
の
022
妻
(
つま
)
持
(
も
)
たすとは
何
(
なん
)
の
心
(
こころ
)
ぞ。
023
うらめしき
汝
(
なれ
)
が
命
(
みこと
)
の
姿
(
すがた
)
かな
024
吾
(
わが
)
背
(
せ
)
の
君
(
きみ
)
のいろと
思
(
おも
)
へば』
025
愛子姫
『
黒姫
(
くろひめ
)
の
神
(
かみ
)
の
司
(
つかさ
)
よ
聞
(
きこ
)
しめせ
026
吾
(
わが
)
背
(
せ
)
の
君
(
きみ
)
は
高国別
(
たかくにわけ
)
の
神
(
かみ
)
。
027
高山彦
(
たかやまひこ
)
神
(
かみ
)
の
命
(
みこと
)
と
名乗
(
なの
)
らせど
028
活津彦根
(
いくつひこね
)
の
神
(
かみ
)
にましける。
029
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
も
奥
(
おく
)
に
入
(
い
)
りませ
三五
(
あななひ
)
の
030
神
(
かみ
)
の
司
(
つかさ
)
の
黒姫
(
くろひめ
)
の
君
(
きみ
)
』
031
黒姫
『さやうならこれより
奥
(
おく
)
へ
駆込
(
かけこ
)
みて
032
否応
(
いやおう
)
いはさず
調
(
しら
)
べ
見
(
み
)
むかな。
033
詐
(
いつは
)
りの
多
(
おほ
)
き
此
(
この
)
世
(
よ
)
と
知
(
し
)
らずして
034
さまよひ
来
(
きた
)
りし
心
(
こころ
)
悲
(
かな
)
しも』
035
愛子姫
『
疑
(
うたが
)
ひの
雲
(
くも
)
明
(
あきら
)
かに
晴
(
は
)
らせませ
036
吾
(
わが
)
背
(
せ
)
の
君
(
きみ
)
の
絵像
(
ゑざう
)
見
(
み
)
まして』
037
黒姫
『さてもさても
合点
(
がてん
)
のゆかぬ
汝
(
なれ
)
が
詞
(
ことば
)
038
荒井
(
あらゐ
)
ケ
岳
(
だけ
)
の
狐
(
きつね
)
にあらぬか』
039
津軽
(
つがるの
)
命
(
みこと
)
『これはしたり
口
(
くち
)
が
悪
(
わる
)
いも
程
(
ほど
)
がある
040
黒姫
(
くろひめ
)
さまよ
何
(
なに
)
を
証拠
(
しようこ
)
に』
041
黒姫
(
くろひめ
)
『
自転倒
(
おのころ
)
島
(
じま
)
を
後
(
あと
)
にして
042
姿
(
すがた
)
隠
(
かく
)
した
高山彦
(
たかやまひこ
)
の
043
神
(
かみ
)
の
命
(
みこと
)
の
吾
(
わが
)
夫
(
つま
)
は
044
筑紫
(
つくし
)
の
島
(
しま
)
に
渡
(
わた
)
るとて
045
聖地
(
せいち
)
を
見
(
み
)
すてて
出
(
い
)
でしより
046
妾
(
わたし
)
は
後
(
あと
)
を
慕
(
した
)
ひつつ
047
遠
(
とほ
)
き
海路
(
うなぢ
)
を
打
(
うち
)
わたり
048
嶮
(
けは
)
しき
山
(
やま
)
をふみ
越
(
こ
)
えて
049
雨
(
あめ
)
にさらされ
荒風
(
あらかぜ
)
に
050
髪
(
かみ
)
梳
(
くしけづ
)
りトボトボと
051
三人
(
みたり
)
の
供
(
とも
)
を
従
(
したが
)
へて
052
此処迄
(
ここまで
)
進
(
すす
)
み
来
(
きた
)
りけり
053
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
054
誠
(
まこと
)
の
神
(
かみ
)
のましまさば
055
愛子
(
あいこ
)
の
姫
(
ひめ
)
がすげもなく
056
わが
背
(
せ
)
の
命
(
みこと
)
を
奥
(
おく
)
深
(
ふか
)
く
057
包
(
つつ
)
みかくして
白
(
しら
)
ばくれ
058
たばかる
醜
(
しこ
)
の
枉業
(
まがわざ
)
を
059
あらはせ
玉
(
たま
)
へ
惟神
(
かむながら
)
060
皇
(
すめ
)
大神
(
おほかみ
)
の
御
(
おん
)
前
(
まへ
)
に
061
三五教
(
あななひけう
)
の
神司
(
かむづかさ
)
062
黒姫
(
くろひめ
)
謹
(
つつし
)
み
願
(
ね
)
ぎまつる』
063
愛子姫
(
あいこひめ
)
『
天地
(
てんち
)
の
神
(
かみ
)
も
御
(
ご
)
照覧
(
せうらん
)
064
いかに
心
(
こころ
)
の
汚
(
けが
)
れたる
065
愛子
(
あいこ
)
の
姫
(
ひめ
)
も
徒
(
いたづら
)
に
066
人
(
ひと
)
の
男
(
をとこ
)
をそそのかし
067
宿
(
やど
)
の
夫
(
つま
)
とぞなすべきか
068
黒姫
(
くろひめ
)
さまの
背
(
せ
)
の
君
(
きみ
)
は
069
高山彦
(
たかやまひこ
)
と
聞
(
き
)
くからは
070
同名
(
どうめい
)
異人
(
いじん
)
のわが
夫
(
つま
)
を
071
誠
(
まこと
)
の
夫
(
つま
)
と
思
(
おも
)
ひつめ
072
迷
(
まよ
)
ひ
玉
(
たま
)
ひしものならむ
073
黒姫司
(
くろひめつかさ
)
きこしめせ
074
妾
(
わらは
)
も
神
(
かみ
)
の
大道
(
おほみち
)
を
075
守
(
まも
)
る
身
(
み
)
なれば
如何
(
いか
)
にして
076
詐
(
いつは
)
り
言
(
ごと
)
を
用
(
もち
)
ふべき
077
早
(
はや
)
くも
奥
(
おく
)
へ
進
(
すす
)
みませ
078
汝
(
なれ
)
が
命
(
みこと
)
の
疑
(
うたが
)
ひも
079
旭
(
あさひ
)
に
露
(
つゆ
)
と
消
(
き
)
え
失
(
う
)
せむ
080
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
081
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はひましませよ』
082
と
歌
(
うた
)
ひ
終
(
をは
)
り、
083
悄然
(
せうぜん
)
として
涙
(
なみだ
)
含
(
ぐ
)
む。
084
愛子姫
(
あいこひめ
)
は
黒姫
(
くろひめ
)
のキツイ
詞
(
ことば
)
に、
085
きつく
侮辱
(
ぶじよく
)
された
様
(
やう
)
な
感
(
かん
)
じがして、
086
女心
(
をんなごころ
)
の
悲
(
かな
)
しくなり
来
(
きた
)
れるなりき。
087
黒姫
(
くろひめ
)
『
高山彦
(
たかやまひこ
)
さまが
桂
(
かつら
)
の
滝
(
たき
)
とやらへ
修業
(
しうげふ
)
に
行
(
ゆ
)
かれたから、
088
不在
(
ふざい
)
だと
言
(
い
)
はれたさうだが、
089
そんな
仇
(
あだ
)
とい
事
(
こと
)
で、
090
此
(
この
)
黒姫
(
くろひめ
)
はあとへ
引
(
ひ
)
く
様
(
やう
)
な
女
(
をんな
)
ぢや
御座
(
ござ
)
いませぬ。
091
女
(
をんな
)
の
一心
(
いつしん
)
岩
(
いは
)
でもつきぬく、
092
何処
(
どこ
)
までも
調
(
しら
)
べ
上
(
あ
)
げねば
承知
(
しようち
)
を
致
(
いた
)
しませぬぞや。
093
大方
(
おほかた
)
奥
(
おく
)
にかくれて
御座
(
ござ
)
るのだらう。
094
稲荷
(
いなり
)
か
何
(
なに
)
かの
託宣
(
たくせん
)
で、
095
此
(
この
)
黒姫
(
くろひめ
)
が
此処
(
ここ
)
へ
来
(
く
)
るといふ
事
(
こと
)
を
前知
(
ぜんち
)
し、
096
大方
(
おほかた
)
皆
(
みな
)
の
者
(
もの
)
が
腹
(
はら
)
をあはし、
097
門番
(
もんばん
)
迄
(
まで
)
に
言
(
い
)
ひ
含
(
ふく
)
め
隠
(
かく
)
して
御座
(
ござ
)
るのだらう。
098
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
隠
(
かく
)
すより
現
(
あら
)
はるるはなしといつて、
099
終
(
しま
)
ひには
尻尾
(
しつぽ
)
が
見
(
み
)
えますぞや。
100
ヘエ
御免
(
ごめん
)
なさいませ、
101
コレコレ
番頭
(
ばんとう
)
どの、
102
奥
(
おく
)
へ
案内
(
あんない
)
して
下
(
くだ
)
さい。
103
夫
(
をつと
)
の
所在
(
ありか
)
が
分
(
わか
)
るまではビクとも
動
(
うご
)
かぬ
此
(
この
)
黒姫
(
くろひめ
)
、
104
マア
暫
(
しばら
)
く
御
(
ご
)
厄介
(
やくかい
)
になりませうかい、
105
オツホヽヽヽ』
106
愛子姫
(
あいこひめ
)
は
先
(
さき
)
に
立
(
た
)
ち
奥
(
おく
)
の
間
(
ま
)
に
導
(
みちび
)
く。
107
此処
(
ここ
)
には
玉治別
(
たまはるわけ
)
が
腕
(
うで
)
を
組
(
く
)
んで、
108
何事
(
なにごと
)
か
思案
(
しあん
)
にくれゐたり。
109
黒姫
『コレコレお
愛
(
あい
)
さま、
110
お
前
(
まへ
)
も
余程
(
よほど
)
のすれつからしと
見
(
み
)
えて、
111
千軍
(
せんぐん
)
万馬
(
ばんば
)
の
劫
(
がふ
)
を
経
(
へ
)
た
此
(
この
)
老人
(
としより
)
をうまくチヨロまかしますなア……ヤアそこには
一人
(
ひとり
)
何
(
なん
)
だか
見覚
(
みおぼ
)
えのあるやうな
男
(
をとこ
)
が
坐
(
すわ
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
112
コリヤまア
何
(
なん
)
の
事
(
こと
)
ぢやいなア。
113
大方
(
おほかた
)
こんな
事
(
こと
)
だと
思
(
おも
)
うて
居
(
を
)
つた。
114
矢張
(
やつぱり
)
高山彦
(
たかやまひこ
)
さまは
桂
(
かつら
)
の
滝
(
たき
)
へ
行
(
ゆ
)
かれたのだらう。
115
其
(
その
)
不在
(
るす
)
の
間
(
ま
)
にこんな
男
(
をとこ
)
を
伴
(
つ
)
れ
込
(
こ
)
んで、
116
イヤもうお
話
(
はなし
)
になりませぬワイ、
117
オツホヽヽヽ』
118
愛子姫
『モシモシ
黒姫
(
くろひめ
)
さま、
119
夫
(
をつと
)
ある
妾
(
わたし
)
に
対
(
たい
)
して
殺生
(
せつしやう
)
な
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
つて
下
(
くだ
)
さるな。
120
外聞
(
ぐわいぶん
)
が
悪
(
わる
)
う
御座
(
ござ
)
います』
121
黒姫
『
外分
(
ぐわいぶん
)
[
※
初版では「外聞」だが三版以降では「外分」になっている。二版は未確認。
]
の
悪
(
わる
)
い
事
(
こと
)
を
誰
(
たれ
)
がしたのですか。
122
高山彦
(
たかやまひこ
)
の
夫
(
をつと
)
に
代
(
かは
)
り、
123
間男
(
まをとこ
)
の
成敗
(
せいばい
)
は
私
(
わたし
)
がする。
124
サアお
愛
(
あい
)
どの、
125
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
乍
(
なが
)
ら、
126
トツトと
出
(
で
)
て
下
(
くだ
)
さい。
127
アーア
高山
(
たかやま
)
さまが
不在
(
るす
)
になるとサツパリ
ワヤ
だ。
128
一辺
(
いつぺん
)
悪魔
(
あくま
)
の
大
(
だい
)
清潔法
(
せいけつはふ
)
を
行
(
や
)
らないと、
129
神
(
かみ
)
さまだつて
此
(
この
)
館
(
やかた
)
へは
鎮
(
しづ
)
まつて
下
(
くだ
)
さらないわ……コレお
愛
(
あい
)
、
130
何
(
なに
)
をグヅグヅして
泣
(
な
)
いてるのだ。
131
泣
(
な
)
かねばならぬやうな
事
(
こと
)
をなぜなさつたのかい、
132
オツホヽヽヽ、
133
さてもさても
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
なものだなア。
134
私
(
わたし
)
も
同情
(
どうじやう
)
の
涙
(
なみだ
)
がこぼれませぬわいナ。
135
ウツフヽヽヽ、
136
あのマア
悲
(
かな
)
しさうなないぢやくりわいのう』
137
玉治別
(
たまはるわけ
)
はフツと
顔
(
かほ
)
をあげ、
138
玉治別
『ヤアあなたは
黒姫
(
くろひめ
)
さま、
139
最前
(
さいぜん
)
から
待
(
ま
)
つて
居
(
を
)
りました。
140
サア
此方
(
こちら
)
へ
御
(
お
)
越
(
こ
)
し
下
(
くだ
)
さいませ』
141
黒姫
『
何
(
なん
)
だ、
142
お
前
(
まへ
)
は
玉
(
たま
)
ぢやないかい、
143
門
(
かど
)
にも
玉
(
たま
)
が
居
(
を
)
れば
中
(
なか
)
にも
玉
(
たま
)
が
居
(
を
)
る。
144
お
前
(
まへ
)
がお
愛
(
あい
)
の
情夫
(
いろをとこ
)
だなア。
145
何
(
なん
)
と
抜目
(
ぬけめ
)
のない
人間
(
にんげん
)
だこと。
146
高山
(
たかやま
)
さまの
尻
(
しり
)
を
追
(
お
)
うてこんな
所
(
ところ
)
迄
(
まで
)
やつて
来
(
き
)
て、
147
チヨコチヨコとお
愛
(
あい
)
に
可愛
(
かあい
)
がつて
貰
(
もら
)
つてゐるのだろ、
148
オホヽヽヽ。
149
若
(
わか
)
い
時
(
とき
)
は
誰
(
たれ
)
もある
慣
(
なら
)
ひだ。
150
本当
(
ほんたう
)
に
敏腕家
(
びんわんか
)
だ。
151
ドシドシと
体主
(
たいしゆ
)
霊従
(
れいじう
)
主義
(
しゆぎ
)
を
発揮
(
はつき
)
しなさるがよからう。
152
若
(
わか
)
い
時
(
とき
)
は
二度
(
にど
)
ないからなア。
153
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
らよう
考
(
かんが
)
へて
御覧
(
ごらん
)
、
154
お
前
(
まへ
)
も
三十
(
さんじふ
)
の
坂
(
さか
)
を
越
(
こ
)
えてるぢやないか。
155
十九
(
つづ
)
や
二十
(
はたち
)
の
身
(
み
)
ではなし、
156
チツとは
心得
(
こころえ
)
たがよからうぞえ。
157
併
(
しか
)
しお
前
(
まへ
)
の
恋愛
(
れんあい
)
を
私
(
わたし
)
が
彼
(
かれ
)
これ
云
(
い
)
ふのぢやない。
158
サア
早
(
はや
)
く
今
(
いま
)
の
間
(
うち
)
にお
愛
(
あい
)
を
伴
(
つ
)
れて
駆落
(
かけおち
)
をして
下
(
くだ
)
さい。
159
高山
(
たかやま
)
さまがお
帰
(
かへ
)
りになると、
160
大騒動
(
おほさうどう
)
だから、
161
チヤツと
早
(
はや
)
う
出
(
で
)
なさい。
162
お
前
(
まへ
)
が
可哀相
(
かはいさう
)
だから、
163
親切
(
しんせつ
)
に
言
(
い
)
ふのだよ』
164
玉治別
『アーア、
165
情
(
なさけ
)
ない
事
(
こと
)
になつて
来
(
き
)
た。
166
黒姫
(
くろひめ
)
さま、
167
私
(
わたし
)
はたつた
今
(
いま
)
の
先
(
さき
)
、
168
このお
館
(
やかた
)
へ
参
(
まゐ
)
つたのですよ。
169
実
(
じつ
)
は
高山彦
(
たかやまひこ
)
さまが、
170
筑紫
(
つくし
)
の
島
(
しま
)
へ
渡
(
わた
)
ると
捨台詞
(
すてぜりふ
)
を
使
(
つか
)
つて、
171
あなたにお
別
(
わか
)
れになりました。
172
私
(
わたし
)
もさうだと
思
(
おも
)
つて
居
(
を
)
つた
所
(
ところ
)
、
173
豈計
(
あにはか
)
らむや、
174
高山彦
(
たかやまひこ
)
さまは
伊勢屋
(
いせや
)
の
奥座敷
(
おくざしき
)
にかくれて
暫
(
しばら
)
く
御座
(
ござ
)
つたさうですが、
175
黒姫
(
くろひめ
)
さまがいよいよ
自転倒
(
おのころ
)
島
(
じま
)
を
立
(
た
)
たれた
時分
(
じぶん
)
から、
176
ヌツと
顔
(
かほ
)
を
出
(
だ
)
し、
177
毎日
(
まいにち
)
日日
(
ひにち
)
錦
(
にしき
)
の
宮
(
みや
)
へ
御
(
ご
)
出勤
(
しゆつきん
)
になつて
居
(
ゐ
)
られますよ。
178
そこで
言依別
(
ことよりわけの
)
命
(
みこと
)
様
(
さま
)
が
聖地
(
せいち
)
を
立
(
た
)
たれる
時
(
とき
)
……
黒姫
(
くろひめ
)
さまが
可哀相
(
かはいさう
)
だから、
179
お
前
(
まへ
)
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
だが
宣伝
(
せんでん
)
旁
(
かたがた
)
筑紫
(
つくし
)
の
島
(
しま
)
へ
行
(
い
)
つて、
180
黒姫
(
くろひめ
)
さまをお
迎
(
むか
)
へ
申
(
まを
)
して
来
(
こ
)
い、
181
さうして
夫婦
(
ふうふ
)
和合
(
わがふ
)
して
御
(
ご
)
神業
(
しんげふ
)
にお
仕
(
つか
)
へなさるやう
取計
(
とりはか
)
らへ……との
御
(
ご
)
命令
(
めいれい
)
で、
182
はるばる
貴女
(
あなた
)
の
後
(
あと
)
を
慕
(
した
)
うて
此処
(
ここ
)
まで
参
(
まゐ
)
つたの
御座
(
ござ
)
います。
183
愛子姫
(
あいこひめ
)
様
(
さま
)
と
云々
(
うんぬん
)
などと
云
(
い
)
ふやうな
事
(
こと
)
は
夢
(
ゆめ
)
にも
御座
(
ござ
)
いませぬから、
184
どうぞ
諒解
(
りやうかい
)
して
下
(
くだ
)
さいませ』
185
と
真心
(
まごころ
)
面
(
おもて
)
に
表
(
あら
)
はれ、
186
慨歎
(
がいたん
)
やる
方
(
かた
)
なき
其
(
その
)
顔色
(
かほいろ
)
を
見
(
み
)
て
取
(
と
)
つた
黒姫
(
くろひめ
)
は
稍
(
やや
)
心
(
こころ
)
やはらぎ、
187
黒姫
『
何
(
なに
)
、
188
高山彦
(
たかやまひこ
)
さまが
聖地
(
せいち
)
に
御座
(
ござ
)
るとは、
189
そりや
本当
(
ほんたう
)
かい?』
190
玉治別
『
何
(
なに
)
嘘
(
うそ
)
を
申
(
まを
)
しませう。
191
万里
(
ばんり
)
の
波濤
(
はたう
)
を
渡
(
わた
)
つて、
192
こんな
所
(
ところ
)
まで
嘘
(
うそ
)
を
云
(
い
)
ひに
来
(
く
)
る
者
(
もの
)
が
御座
(
ござ
)
いませうか。
193
黒姫
(
くろひめ
)
さま、
194
よく
御覧
(
ごらん
)
なさいませ。
195
此
(
この
)
絵像
(
ゑざう
)
は
当家
(
たうけ
)
の
御
(
ご
)
主人
(
しゆじん
)
の
生姿
(
いきすがた
)
で
御座
(
ござ
)
いますから、
196
能
(
よ
)
く
御
(
お
)
見並
(
みなら
)
べなさいませ。
197
本年
(
ほんねん
)
三十五
(
さんじふご
)
才
(
さい
)
の
屈強盛
(
くつきやうざか
)
りの
活津
(
いくつ
)
彦根
(
ひこねの
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
が
高国別
(
たかくにわけ
)
と
御
(
お
)
名乗
(
なの
)
り
遊
(
あそ
)
ばし、
198
表向
(
おもてむき
)
は
高山彦
(
たかやまひこ
)
と
呼
(
よ
)
ばれて
御座
(
ござ
)
るのですから、
199
あなたの
御
(
ご
)
主人
(
しゆじん
)
とは
全
(
まつた
)
く
同名
(
どうめい
)
異人
(
いじん
)
ですよ』
200
黒姫
(
くろひめ
)
は
其
(
その
)
絵像
(
ゑざう
)
をジツクリと
眺
(
なが
)
め、
201
黒姫
『いかにも
違
(
ちが
)
つてゐる。
202
……ヤア
愛子姫
(
あいこひめ
)
様
(
さま
)
、
203
えらい
御
(
ご
)
無礼
(
ぶれい
)
な
事
(
こと
)
を
申上
(
まをしあ
)
げました。
204
どうぞはしたない
女
(
をんな
)
と
思召
(
おぼしめ
)
さず、
205
神直日
(
かむなほひ
)
に
見直
(
みなほ
)
し
聞直
(
ききなほ
)
して
下
(
くだ
)
さいませ』
206
愛子姫
『ハイ
有難
(
ありがた
)
う、
207
御
(
ご
)
諒解
(
りやうかい
)
さへゆきましたら、
208
こんな
嬉
(
うれ
)
しい
事
(
こと
)
は
御座
(
ござ
)
いませぬ。
209
どうぞ
御緩
(
ごゆる
)
りと
御
(
お
)
泊
(
とま
)
り
遊
(
あそ
)
ばして、
210
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
話
(
はなし
)
を
聞
(
き
)
かして
下
(
くだ
)
さいませ』
211
玉治別
『
愛子姫
(
あいこひめ
)
様
(
さま
)
、
212
黒姫
(
くろひめ
)
様
(
さま
)
は
別
(
べつ
)
に
悪
(
わる
)
い
心
(
こころ
)
で
仰有
(
おつしや
)
つたのぢや
御座
(
ござ
)
いませぬ。
213
余
(
あま
)
り
一心
(
いつしん
)
に
当家
(
たうけ
)
の
御
(
ご
)
主人
(
しゆじん
)
を
自分
(
じぶん
)
の
夫
(
をつと
)
と
思
(
おも
)
ひつめ、
214
はるばるお
出
(
い
)
でになつたものですから、
215
逆上
(
ぎやくじやう
)
遊
(
あそ
)
ばすのも
無理
(
むり
)
は
御座
(
ござ
)
いませぬから、
216
どうぞ
悪
(
わる
)
く
思
(
おも
)
はないやうにして
下
(
くだ
)
さいませ』
217
愛子姫
『ハイ
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います』
218
と
云
(
い
)
つた
限
(
き
)
り、
219
疑
(
うたがひ
)
のはれた
嬉
(
うれ
)
しさに
愛子姫
(
あいこひめ
)
が
歔
(
すす
)
り
泣
(
な
)
きの
声
(
こゑ
)
さへ
聞
(
きこ
)
ゆる。
220
黒姫
『アヽ
私
(
わたし
)
位
(
ぐらゐ
)
因果
(
いんぐわ
)
な
者
(
もの
)
が
世
(
よ
)
にあらうか。
221
遥々
(
はるばる
)
夫
(
をつと
)
の
後
(
あと
)
を
慕
(
した
)
うて
来
(
き
)
て
見
(
み
)
れば、
222
人違
(
ひとちが
)
ひ、
223
捨
(
す
)
てた
吾
(
わが
)
子
(
こ
)
ではあるまいかと、
224
はるばる
建日
(
たけひ
)
の
館
(
やかた
)
へ
行
(
い
)
つて
見
(
み
)
れば、
225
之
(
これ
)
も
亦
(
また
)
人違
(
ひとちが
)
ひ、
226
どうしてこれ
程
(
ほど
)
する
事
(
こと
)
なす
事
(
こと
)
が
食
(
く
)
ひ
違
(
ちが
)
ふのだらうか。
227
之
(
これ
)
もヤツパリ
前生
(
ぜんしやう
)
の
罪
(
つみ
)
、
228
否々
(
いやいや
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
から
賜
(
たま
)
はつた
伜
(
せがれ
)
を、
229
若気
(
わかげ
)
の
勢
(
いきほひ
)
で
捨
(
す
)
てた
天罰
(
てんばつ
)
が
酬
(
むく
)
うて
来
(
き
)
たのだらう……アヽ
神
(
かみ
)
さま、
230
どうぞ
許
(
ゆる
)
して
下
(
くだ
)
さいませ。
231
さうして
夫
(
をつと
)
の
所在
(
ありか
)
の
分
(
わか
)
りました
以上
(
いじやう
)
は
厚
(
あつ
)
かましく
御座
(
ござ
)
いますが、
232
どうぞ
伜
(
せがれ
)
の
所在
(
ありか
)
を
知
(
し
)
らして
下
(
くだ
)
さいませ。
233
一度
(
いちど
)
伜
(
せがれ
)
に
会
(
あ
)
はなくては
死
(
し
)
ぬ
事
(
こと
)
も
出来
(
でき
)
ませぬ。
234
あゝ
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
』
235
と
神前
(
しんぜん
)
に
向
(
むか
)
ひ
手
(
て
)
を
合
(
あは
)
せ、
236
涙
(
なみだ
)
乍
(
なが
)
らに
祈願
(
きぐわん
)
する。
237
玉治別
(
たまはるわけ
)
は
首
(
くび
)
を
傾
(
かたむ
)
け
乍
(
なが
)
ら、
238
玉治別
『モシ
黒姫
(
くろひめ
)
さま、
239
今
(
いま
)
始
(
はじ
)
めて
承
(
うけたま
)
はりましたが、
240
貴女
(
あなた
)
にはお
子
(
こ
)
さまがあつたのですか。
241
そして
其
(
その
)
子
(
こ
)
はいつお
捨
(
す
)
てになりましたか。
242
実
(
じつ
)
は
私
(
わたし
)
も
捨子
(
すてご
)
で
御座
(
ござ
)
いますが、
243
未
(
いま
)
だに
両親
(
りやうしん
)
が
分
(
わか
)
りませぬので、
244
日夜
(
にちや
)
神
(
かみ
)
さまに
祈
(
いの
)
り、
245
一目
(
ひとめ
)
なりとも
両親
(
りやうしん
)
に
会
(
あ
)
ひたいと、
246
今
(
いま
)
も
今
(
いま
)
とて
憂
(
うれ
)
ひに
沈
(
しづ
)
んで
居
(
を
)
つた
所
(
ところ
)
で
御座
(
ござ
)
います』
247
黒姫
『
何
(
なに
)
、
248
玉治別
(
たまはるわけ
)
さま、
249
お
前
(
まへ
)
も
捨子
(
すてご
)
ですか、
250
そりや
初耳
(
はつみみ
)
だ。
251
丁度
(
ちやうど
)
私
(
わたし
)
の
子
(
こ
)
が
今
(
いま
)
生
(
い
)
きて
居
(
を
)
つたならば
三十五
(
さんじふご
)
歳
(
さい
)
になつてる
筈
(
はず
)
だ。
252
お
前
(
まへ
)
の
年
(
とし
)
は
幾
(
いく
)
つだつたかなア』
253
玉治別
『ハイ、
254
当年
(
たうねん
)
三十五
(
さんじふご
)
歳
(
さい
)
になりました』
255
黒姫
『
何
(
なに
)
三十五
(
さんじふご
)
歳
(
さい
)
! そりや
又
(
また
)
不思議
(
ふしぎ
)
な
事
(
こと
)
もあるものだ。
256
併
(
しか
)
し
私
(
わたし
)
の
捨
(
す
)
てた
子
(
こ
)
には、
257
背中
(
せなか
)
の
正中
(
まんなか
)
に
富士
(
ふじ
)
の
山
(
やま
)
の
形
(
かたち
)
が、
258
白
(
しろ
)
い
痣
(
あざ
)
で
出
(
で
)
て
居
(
を
)
つた
筈
(
はず
)
だ。
259
これは
全
(
まつた
)
く
木花
(
このはな
)
咲耶姫
(
さくやひめ
)
さまの
因縁
(
いんねん
)
のある
子供
(
こども
)
だからといつて
富士咲
(
ふじさく
)
といふ
名
(
な
)
をつけておいたのだが、
260
余
(
あま
)
り
世間
(
せけん
)
が
喧
(
やか
)
ましいので、
261
守
(
まも
)
り
袋
(
ぶくろ
)
に
富士咲
(
ふじさく
)
と
名
(
な
)
を
書
(
か
)
きしるし
四辻
(
よつつじ
)
にすてました。
262
思
(
おも
)
へば
思
(
おも
)
へば
可哀相
(
かはいさう
)
なことをしました』
263
と
泣
(
な
)
き
沈
(
しづ
)
む。
264
玉治別
『
何
(
なん
)
と
仰有
(
おつしや
)
います。
265
其
(
その
)
捨子
(
すてご
)
は
富士咲
(
ふじさく
)
と
申
(
まを
)
しましたか、
266
そして
背中
(
せなか
)
に
富士
(
ふじ
)
の
山
(
やま
)
の
形
(
かたち
)
の
白
(
しろ
)
い
痣
(
あざ
)
があるとは
合点
(
がてん
)
のゆかぬ
御
(
お
)
言葉
(
ことば
)
、
267
一寸
(
ちよつと
)
失礼
(
しつれい
)
ですが、
268
黒姫
(
くろひめ
)
さま、
269
私
(
わたくし
)
の
背中
(
せなか
)
を
見
(
み
)
て
下
(
くだ
)
さいませぬか。
270
私
(
わたくし
)
の
小
(
ちひ
)
さい
時
(
とき
)
は
富士咲
(
ふじさく
)
と
申
(
まを
)
しました。
271
そして
人
(
ひと
)
の
話
(
はなし
)
によると、
272
何
(
なん
)
だか
山
(
やま
)
のやうな
痣
(
あざ
)
が
出来
(
でき
)
て
居
(
を
)
るさうです』
273
黒姫
『それは
又
(
また
)
耳
(
みみ
)
よりの
話
(
はなし
)
だ。
274
一寸
(
ちよつと
)
見
(
み
)
せて
御覧
(
ごらん
)
!』
275
「ハイ」と
答
(
こた
)
へて
玉治別
(
たまはるわけ
)
は
肌
(
はだ
)
をぬぎ
背
(
せな
)
をつき
出
(
だ
)
す、
276
黒姫
(
くろひめ
)
は
念入
(
ねんい
)
りにすかして
見
(
み
)
て、
277
黒姫
『ヤアてつきり
富士
(
ふじ
)
の
山
(
やま
)
の
痣
(
あざ
)
、
278
そしてお
前
(
まへ
)
の
幼名
(
えうめい
)
が
富士咲
(
ふじさく
)
と
聞
(
き
)
く
上
(
うへ
)
は、
279
全
(
まつた
)
く
私
(
わたし
)
の
伜
(
せがれ
)
だつたか。
280
アヽ
知
(
し
)
らなんだ
知
(
し
)
らなんだ、
281
神
(
かみ
)
さま、
282
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います。
283
因縁者
(
いんねんもの
)
の
寄合
(
よりあひ
)
で
珍
(
めづ
)
らしい
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
るぞよと
大神
(
おほかみ
)
さまが
仰有
(
おつしや
)
つたが、
284
いかにも
因縁者
(
いんねんもの
)
の
寄合
(
よりあひ
)
だなア』
285
と
嬉
(
うれ
)
し
涙
(
なみだ
)
にかきくれる。
286
玉治別
『そんなら
貴女
(
あなた
)
私
(
わたくし
)
の
母上
(
ははうへ
)
で
御座
(
ござ
)
いましたか。
287
存
(
ぞん
)
ぜぬ
事
(
こと
)
とて、
288
何時
(
いつ
)
とても
御
(
ご
)
無礼
(
ぶれい
)
を
致
(
いた
)
しました。
289
どうぞお
母
(
かあ
)
さま
御
(
お
)
赦
(
ゆる
)
し
下
(
くだ
)
さいませ。
290
あゝ
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
』
291
と
両手
(
りやうて
)
を
合
(
あは
)
せ、
292
嬉
(
うれ
)
し
涙
(
なみだ
)
にかきくれる。
293
これより
黒姫
(
くろひめ
)
は
愛子姫
(
あいこひめ
)
に
厚
(
あつ
)
く
礼
(
れい
)
を
述
(
の
)
べ、
294
無礼
(
ぶれい
)
を
謝
(
しや
)
し
且
(
か
)
つ
徳公
(
とくこう
)
、
295
久公
(
きうこう
)
にも
其
(
その
)
労
(
らう
)
を
謝
(
しや
)
し
別
(
わか
)
れを
告
(
つ
)
げ、
296
いそいそとして
玉治別
(
たまはるわけ
)
、
297
孫公
(
まごこう
)
、
298
房公
(
ふさこう
)
、
299
芳公
(
よしこう
)
と
共
(
とも
)
に
再
(
ふたた
)
び
建日
(
たけひ
)
の
港
(
みなと
)
より
船
(
ふね
)
を
漕
(
こ
)
ぎ
出
(
だ
)
し、
300
由良
(
ゆら
)
の
港
(
みなと
)
の
秋山彦
(
あきやまひこ
)
が
館
(
やかた
)
に
立寄
(
たちよ
)
り、
301
麻邇
(
まに
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
の
神業
(
しんげふ
)
に
参加
(
さんか
)
し、
302
目出度
(
めでた
)
く
聖地
(
せいち
)
に
帰
(
かへ
)
る
事
(
こと
)
となりたるは、
303
三十三
(
さんじふさん
)
巻
(
くわん
)
の
物語
(
ものがたり
)
に
明
(
あきら
)
かな
所
(
ところ
)
であります。
304
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
。
305
○
306
かく
述
(
の
)
べ
終
(
をは
)
られた
時
(
とき
)
しも
正
(
まさ
)
に
午後
(
ごご
)
六
(
ろく
)
時
(
じ
)
、
307
表
(
おもて
)
に
出
(
で
)
て
天空
(
てんくう
)
を
見
(
み
)
れば、
308
ドンヨリと
曇
(
くも
)
つた
大空
(
おほぞら
)
を
南北
(
なんぽく
)
に
区劃
(
くくわく
)
した
青雲
(
あをぐも
)
巾
(
はば
)
二三間
(
にさんげん
)
と
見
(
み
)
ゆるもの、
309
東
(
ひがし
)
の
山
(
やま
)
の
端
(
は
)
より
西
(
にし
)
の
空
(
そら
)
遠
(
とほ
)
く、
310
輪廓
(
りんくわく
)
正
(
ただ
)
しく
帯
(
おび
)
の
如
(
ごと
)
く
銀河
(
ぎんが
)
の
如
(
ごと
)
く
横
(
よこ
)
たはりつつありました。
311
(
大正一一・九・一七
旧七・二六
松村真澄
録)
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(N)
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