霊界物語.ネット
~出口王仁三郎 大図書館~
設定
|
ヘルプ
ホーム
霊界物語
海洋万里(第25~36巻)
第35巻(戌の巻)
序文
総説歌
第1篇 向日山嵐
第1章 言の架橋
第2章 出陣
第3章 進隊詩
第4章 村の入口
第5章 案外
第6章 歌の徳
第7章 乱舞
第8章 心の綱
第9章 分担
第2篇 ナイルの水源
第10章 夢の誡
第11章 野宿
第12章 自称神司
第13章 山颪
第14章 空気焔
第15章 救の玉
第16章 浮島の花
第3篇 火の国都
第17章 霧の海
第18章 山下り
第19章 狐の出産
第20章 疑心暗狐
第21章 暗闘
第22章 当違
第23章 清交
第24章 歓喜の涙
余白歌
×
設定
この文献を王仁DBで開く
印刷用画面を開く
[?]
プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。
[×閉じる]
話者名の追加表示
[?]
セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。
[×閉じる]
追加表示する
追加表示しない
【標準】
表示できる章
テキストのタイプ
[?]
ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。
[×閉じる]
通常のテキスト
【標準】
コピー用のテキスト
文字サイズ
S
【標準】
M
L
ルビの表示
通常表示
【標準】
括弧の中に表示
表示しない
アンカーの表示
[?]
本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。
[×閉じる]
左側だけに表示する
【標準】
表示しない
全てのアンカーを表示
宣伝歌
[?]
宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。
[×閉じる]
一段組
【標準】
二段組
脚注[※]用語解説
[?]
[※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。
[×閉じる]
脚注マークを表示する
【標準】
脚注マークを表示しない
脚注[*]編集用
[?]
[※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。
[×閉じる]
脚注マークを表示する
脚注マークを表示しない
【標準】
外字の外周色
[?]
一般のフォントに存在しない文字は専用の外字フォントを使用しています。目立つようにその文字の外周の色を変えます。
[×閉じる]
無色
【標準】
赤色
現在のページには外字は使われていません
表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。
【新着情報】
サイトをリニューアルしました。不具合がある場合は
従来バージョン
をお使い下さい|
サブスク
のお知らせ
霊界物語
>
海洋万里(第25~36巻)
>
第35巻(戌の巻)
> 第3篇 火の国都 > 第17章 霧の海
<<< 浮島の花
(B)
(N)
山下り >>>
第一七章
霧
(
きり
)
の
海
(
うみ
)
〔九八一〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第35巻 海洋万里 戌の巻
篇:
第3篇 火の国都
よみ(新仮名遣い):
ひのくにみやこ
章:
第17章 霧の海
よみ(新仮名遣い):
きりのうみ
通し章番号:
981
口述日:
1922(大正11)年09月17日(旧07月26日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年12月25日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
[×閉じる]
:
荒井ケ岳の頂上に腰を打ちかけて、黒姫たち一行三人(黒姫・徳公・久公)は四方を見晴らして雑談にふけっていた。徳公はあたりの地理に詳しいのを幸い、黒姫に景色を示しながら筑紫島の地図の解説をしている。
久公にせかされた徳公はくってかかり、二人は喧嘩のような言い争いを始める。黒姫が止めに入ったが、そこへ四五人の男たちがかよわい女を伴って一行の反対側から急坂を登ってきた。
荒井ケ岳は山賊の名所とのことで、黒姫一行と、反対側から熊襲の国へ向かう一行は、お互いに相手を山賊ではないかと思って警戒している。最初はお互いに山賊だと思いあって手荒なことをしないようにと頼み込み、話がかみあわない。
黒姫が見かねて話に入り、ようやくお互いに山賊ではないことがわかり、ほっと胸をなでおろした。
旅の男の中でも勢いがよい鉄公は、黒姫一行が山賊ではないことがわかると途端にほらを吹きだした。黒姫一行の徳公と久公はそれを面白く聞いていたが、鉄公一行はまた急に臆病風に吹かれてか、坂道をっさんに下って去って行った。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2018-05-27 17:24:22
OBC :
rm3517
愛善世界社版:
195頁
八幡書店版:
第6輯 541頁
修補版:
校定版:
207頁
普及版:
75頁
初版:
ページ備考:
001
青葉
(
あをば
)
は
薫
(
かを
)
り、
002
霞
(
かすみ
)
は
迷
(
まよ
)
ふ
荒井
(
あらゐ
)
ケ
岳
(
だけ
)
の
絶頂
(
ぜつちやう
)
に
腰
(
こし
)
打
(
うち
)
かけて、
003
四方
(
しはう
)
を
見
(
み
)
はらし、
004
雑談
(
ざつだん
)
に
耽
(
ふけ
)
つてゐる
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
男女
(
だんぢよ
)
がある。
005
余
(
あま
)
り
風
(
かぜ
)
はなけれども
何
(
なん
)
となく
朝
(
あさ
)
の
空気
(
くうき
)
は
涼
(
すず
)
しい。
006
彼方
(
あちら
)
此方
(
こちら
)
に
煙
(
けむり
)
ともつかず、
007
霧
(
きり
)
ともつかぬ
靄
(
もや
)
が
大地
(
だいち
)
一面
(
いちめん
)
に
閉
(
と
)
ぢ
込
(
こ
)
め、
008
其
(
その
)
中
(
なか
)
より
浮
(
う
)
き
出
(
で
)
た
様
(
やう
)
にコバルト
色
(
いろ
)
の
山岳
(
さんがく
)
が
現
(
あら
)
はれてゐる。
009
徳公
『モシモシ
黒姫
(
くろひめ
)
様
(
さま
)
、
010
何
(
なん
)
といい
絶景
(
ぜつけい
)
でせうか、
011
日中
(
につちう
)
は
随分
(
ずゐぶん
)
苦
(
くる
)
しいですが、
012
斯
(
か
)
う
朝霧
(
あさきり
)
に
包
(
つつ
)
まれて、
013
涼
(
すず
)
しい
空気
(
くうき
)
に
当
(
あた
)
り、
014
四方
(
しはう
)
を
見下
(
みくだ
)
す
気分
(
きぶん
)
は、
015
まるで
地上
(
ちじやう
)
の
一切
(
いつさい
)
を
掌握
(
しやうあく
)
した
王者
(
わうじや
)
の
様
(
やう
)
な
雄大
(
ゆうだい
)
なる
気分
(
きぶん
)
が
漂
(
ただよ
)
うて
来
(
く
)
るぢやありませぬか』
016
黒姫
『
実
(
じつ
)
に
雄大
(
ゆうだい
)
な
景色
(
けしき
)
ですなア。
017
火
(
ひ
)
の
国
(
くに
)
の
都
(
みやこ
)
はどの
辺
(
へん
)
に
当
(
あた
)
りますか』
018
徳公
『これからズツと
西
(
にし
)
に、
019
うす
黒
(
ぐろ
)
く
浮
(
う
)
き
出
(
で
)
た
様
(
やう
)
な
山
(
やま
)
がありませう。
020
それが
火
(
ひ
)
の
国
(
くに
)
の
都
(
みやこ
)
の
西
(
にし
)
に
聳
(
そび
)
えてゐる
花見
(
はなみ
)
ケ
岳
(
だけ
)
と
云
(
い
)
つて
火
(
ひ
)
の
国
(
くに
)
第一
(
だいいち
)
の
名山
(
めいざん
)
で
御座
(
ござ
)
いますよ。
021
あの
東
(
ひがし
)
に
見
(
み
)
えるのが
火
(
ひ
)
の
国ケ岳
(
くにがだけ
)
、
022
其
(
その
)
少
(
すこ
)
し
北
(
きた
)
へよつてゐる
絶頂
(
ぜつちやう
)
の
少
(
すこ
)
し
浮
(
う
)
いて
見
(
み
)
えるのが
向日山
(
むかふやま
)
、
023
それからズツと
北
(
きた
)
にうすく
霧
(
きり
)
の
中
(
なか
)
から
覗
(
のぞ
)
いてゐるのが
白山峠
(
しらやまたうげ
)
です。
024
其
(
その
)
外
(
ほか
)
の
山々
(
やまやま
)
は
全部
(
ぜんぶ
)
霧
(
きり
)
の
海
(
うみ
)
に
沈没
(
ちんぼつ
)
して
居
(
を
)
りますから
見
(
み
)
られませぬ。
025
此
(
この
)
霧
(
きり
)
がサラリと
晴
(
は
)
れようものなら、
026
それこそ
天下
(
てんか
)
の
壮観
(
さうくわん
)
です。
027
花頂山
(
くわちやうざん
)
、
028
天狗
(
てんぐ
)
ケ
岳
(
だけ
)
、
029
越
(
こし
)
の
山
(
やま
)
、
030
春山峠
(
はるやまたうげ
)
、
031
志賀
(
しが
)
の
山
(
やま
)
などと、
032
随分
(
ずゐぶん
)
立派
(
りつぱ
)
な
青山
(
せいざん
)
が
点々
(
てんてん
)
してゐます。
033
其
(
その
)
間
(
あひだ
)
を
縫
(
ぬ
)
うてゐる
火
(
ひ
)
の
国川
(
くにがは
)
は、
034
天
(
あめ
)
の
棚機姫
(
たなばたひめ
)
が
布
(
ぬの
)
を
晒
(
さら
)
したやうに
蜿々
(
えんえん
)
として
火
(
ひ
)
の
国
(
くに
)
の
原野
(
げんや
)
を
流
(
なが
)
れ、
035
えも
言
(
い
)
はれぬ
光景
(
くわうけい
)
です。
036
さうして
西南
(
せいなん
)
に
当
(
あた
)
つて
竜
(
たつ
)
の
湖
(
うみ
)
といふ
随分
(
ずゐぶん
)
大
(
おほ
)
きな
湖水
(
こすゐ
)
がありますが、
037
それも
生憎
(
あひにく
)
霞
(
かすみ
)
の
為
(
ため
)
に
包
(
つつ
)
まれてゐます。
038
それから
火
(
ひ
)
の
国都
(
くにみやこ
)
の
名物
(
めいぶつ
)
、
039
五重
(
ごぢゆう
)
の
塔
(
たふ
)
が
霧
(
きり
)
のない
時
(
とき
)
は、
040
うつすらと
目
(
め
)
に
映
(
うつ
)
ります。
041
それを
見
(
み
)
る
度
(
たび
)
に、
042
何
(
なん
)
ともいへぬ
気分
(
きぶん
)
になつて、
043
眠
(
ねむ
)
たくなりますよ』
044
黒姫
『
徳公
(
とくこう
)
さま、
045
随分
(
ずゐぶん
)
あなたは
地理
(
ちり
)
に
詳
(
くは
)
しい
方
(
かた
)
ですなア。
046
さう
云
(
い
)
ふお
方
(
かた
)
に
案内
(
あんない
)
をして
貰
(
もら
)
へば
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
ですなア』
047
徳公
『
乍併
(
しかしながら
)
此
(
この
)
荒井峠
(
あらゐたうげ
)
は
其
(
その
)
実
(
じつ
)
、
048
御代
(
みよ
)
ケ
岳
(
だけ
)
といふのですが、
049
いつも
山賊
(
さんぞく
)
が
出
(
で
)
て
荒
(
あら
)
つぽい
事
(
こと
)
をするので、
050
誰
(
たれ
)
いふとなく
荒井峠
(
あらゐたうげ
)
と
綽名
(
あだな
)
がついたのです。
051
一名
(
いちめい
)
は
生首峠
(
なまくびたうげ
)
とも
云
(
い
)
つて、
052
此
(
この
)
峠
(
たうげ
)
には
生首
(
なまくび
)
の
絶
(
た
)
えた
事
(
こと
)
のないといふ
危険
(
きけん
)
区域
(
くゐき
)
です。
053
此
(
この
)
徳公
(
とくこう
)
は
地理
(
ちり
)
には
精通
(
せいつう
)
し
且
(
かつ
)
豪胆者
(
がうたんもの
)
だといふことを、
054
三公
(
さんこう
)
の
親分
(
おやぶん
)
が
知
(
し
)
つてゐますから、
055
抜擢
(
ばつてき
)
して
御
(
ご
)
案内
(
あんない
)
に
立
(
た
)
てと、
056
命
(
めい
)
じたのですから、
057
何事
(
なにごと
)
があらうとも、
058
徳公
(
とくこう
)
のゐる
限
(
かぎ
)
り
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
ですから
御
(
ご
)
安心
(
あんしん
)
なさいませ。
059
仮令
(
たとへ
)
泥棒
(
どろばう
)
の
千匹
(
せんびき
)
万匹
(
まんびき
)
、
060
束
(
たば
)
になつて
押
(
お
)
し
寄
(
よ
)
せ
来
(
きた
)
るとも、
061
敵一倍
(
てきいちばい
)
の
力
(
ちから
)
を
発揮
(
はつき
)
し、
062
縦横
(
じうわう
)
無尽
(
むじん
)
に
斬
(
き
)
り
立
(
た
)
て
薙
(
な
)
ぎ
立
(
た
)
て
追
(
お
)
ひ
散
(
ち
)
らし、
063
敵
(
てき
)
を
千
(
せん
)
里
(
り
)
に
郤
(
しりぞ
)
けて、
064
御
(
おん
)
身
(
み
)
の
御
(
ご
)
安泰
(
あんたい
)
を
守
(
まも
)
ります』
065
黒姫
『オホヽヽヽ、
066
随分
(
ずゐぶん
)
口
(
くち
)
の
勇者
(
ゆうしや
)
ですなア』
067
徳公
『ソラさうですとも、
068
言霊
(
ことたま
)
の
幸
(
さち
)
はひ
助
(
たす
)
け
生
(
い
)
くる
神
(
かみ
)
の
国
(
くに
)
ですもの、
069
勇
(
いさ
)
めば
勇
(
いさ
)
む
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
てくる、
070
悔
(
くや
)
めば
悔
(
くや
)
むことが
出来
(
でき
)
てくるのは
天地
(
てんち
)
の
真理
(
しんり
)
、
071
言霊学
(
ことたまがく
)
上
(
じやう
)
の
本義
(
ほんぎ
)
ですから、
072
力
(
ちから
)
一杯
(
いつぱい
)
強
(
つよ
)
いことをいつて、
073
荒井
(
あらゐ
)
ケ
岳
(
だけ
)
の
曲神
(
まがかみ
)
を
慴伏
(
せふふく
)
させる
徳公
(
とくこう
)
が
一厘
(
いちりん
)
の
仕組
(
しぐみ
)
、
074
実
(
げ
)
に
勇
(
いさ
)
ましき
次第
(
しだい
)
なりけりと
言
(
い
)
ふ
所
(
ところ
)
ですわい、
075
アハヽヽヽ』
076
黒姫
『オホヽヽヽ、
077
元気
(
げんき
)
な
徳公
(
とくこう
)
さまだこと』
078
久公
『オイ
徳
(
とく
)
、
079
モウ
夜
(
よ
)
が
明
(
あ
)
けてゐるぞ。
080
何
(
なに
)
寝言
(
ねごと
)
を
云
(
い
)
つてゐるのだ。
081
一
(
ひと
)
つ
手水
(
てうづ
)
でも
使
(
つか
)
つて
来
(
こ
)
い』
082
徳公
『オイ
久公
(
きうこう
)
、
083
貴様
(
きさま
)
こそ
寝言
(
ねごと
)
を
云
(
い
)
つてるのだらう。
084
さうでなくちやそんな
馬鹿
(
ばか
)
な
事
(
こと
)
が
云
(
い
)
へるかい。
085
よく
考
(
かんが
)
へて
見
(
み
)
よ。
086
こんな
高山
(
かうざん
)
の
絶頂
(
ぜつちやう
)
に、
087
手水
(
てうづ
)
を
使
(
つか
)
へといつた
所
(
ところ
)
で
水
(
みづ
)
があるかい。
088
それだから
貴様
(
きさま
)
は
寝言
(
ねごと
)
を
云
(
い
)
つてると
云
(
い
)
ふのだ』
089
久公
『
形体
(
けいたい
)
ある
水
(
みづ
)
で
使
(
つか
)
へと
云
(
い
)
ふのぢやないよ。
090
無形
(
むけい
)
の
清水
(
しみづ
)
で
手水
(
てうづ
)
を
使
(
つか
)
へと
云
(
い
)
つたのだ。
091
言霊
(
ことたま
)
の
幸
(
さち
)
はひ
助
(
たす
)
け
生
(
い
)
くる
国
(
くに
)
だから、
092
俺
(
おれ
)
がかう
云
(
い
)
つたが
最後
(
さいご
)
、
093
此
(
この
)
山頂
(
さんちやう
)
から
俄
(
にはか
)
に
清水
(
しみづ
)
が
滾々
(
こんこん
)
として
湧
(
わ
)
き
出
(
だ
)
すかも
知
(
し
)
れないのだ。
094
余
(
あま
)
り
茶々
(
ちやちや
)
を
入
(
い
)
れて
呉
(
く
)
れない』
095
徳公
『
茶々
(
ちやちや
)
を
入
(
い
)
れと
云
(
い
)
つたつて、
096
わかす
水
(
みづ
)
もないぢやないかい』
097
久公
『
俺
(
おれ
)
が
一
(
ひと
)
つ
魔法瓶
(
まはふびん
)
から
茶々
(
ちやちや
)
を
出
(
だ
)
して
呑
(
の
)
ましてやらうか、
098
それツ!』
099
といひ
乍
(
なが
)
ら、
100
前
(
まへ
)
をまくつて、
101
徳公
(
とくこう
)
の
方
(
はう
)
に
向
(
むか
)
つて
竜頭水
(
りうとうすい
)
の
如
(
ごと
)
く
塩水
(
えんすゐ
)
を
噴出
(
ふんしゆつ
)
する。
102
徳公
『エヽ
汚
(
きた
)
ねえ
事
(
こと
)
をすな。
103
此
(
この
)
親分
(
おやぶん
)
にして
此
(
この
)
乾分
(
こぶん
)
あり。
104
いつも
下
(
くだ
)
らぬ
事
(
こと
)
ばかり
見聞
(
けんぶん
)
してゐよるものだから、
105
そんな
無作法
(
ぶさはふ
)
な
事
(
こと
)
を
平気
(
へいき
)
でするのだ。
106
山
(
やま
)
には
山
(
やま
)
の
神
(
かみ
)
さまがあるぞ。
107
すべて
山
(
やま
)
の
頂
(
いただ
)
きは
人間
(
にんげん
)
に
例
(
たと
)
へたら
頭
(
あたま
)
も
同様
(
どうやう
)
だ。
108
頭
(
あたま
)
に
小便
(
せうべん
)
をひりかけるとはチツと
無道
(
むだう
)
ぢやないか』
109
久公
『
俺
(
おれ
)
のは
小便
(
せうべん
)
ぢやない、
110
バリと
云
(
い
)
ふのだ。
111
余
(
あま
)
り
貴様
(
きさま
)
がイ
バリ
よるから、
112
一
(
ひと
)
つ
バリ
水
(
すゐ
)
をさして
温
(
ぬく
)
めてやらうと
思
(
おも
)
つたのだ。
113
余
(
あま
)
りメートルが
上
(
あが
)
りすぎて
居
(
を
)
るからなア。
114
バリ
の
洗礼
(
せんれい
)
を
施
(
ほどこ
)
して
貴様
(
きさま
)
の
心
(
こころ
)
を、
115
サツパリ
荒井峠
(
あらゐたうげ
)
だ、
116
ウツフヽヽヽ』
117
徳公
『
黒姫
(
くろひめ
)
さま、
118
常
(
つね
)
の
習
(
なら
)
ひが
他所
(
よそ
)
で
出
(
で
)
るとか
云
(
い
)
ひまして、
119
日常
(
ふだん
)
の
教育
(
けういく
)
が
不用意
(
ふようい
)
の
間
(
ま
)
に
現
(
あら
)
はれるものですなア。
120
本当
(
ほんたう
)
に
仕方
(
しかた
)
のない
奴
(
やつ
)
です。
121
虎公
(
とらこう
)
親分
(
おやぶん
)
も
斯
(
こ
)
んな
代物
(
しろもの
)
を
飼
(
か
)
つて
居
(
ゐ
)
るのは
随分
(
ずゐぶん
)
大抵
(
たいてい
)
ぢやありますめえ』
122
久公
『コラ
黙
(
だま
)
つて
居
(
を
)
れば、
123
口
(
くち
)
に
番所
(
ばんしよ
)
がないと
思
(
おも
)
つて、
124
非常
(
ひじやう
)
に
バリ
嘲弄
(
てうろう
)
を
恣
(
ほしいまま
)
にしよる。
125
モウ
承知
(
しようち
)
せないぞ』
126
徳公
『
貴様
(
きさま
)
は
貴様
(
きさま
)
の
方
(
はう
)
から
バリ
かけたぢやねえか。
127
俺
(
おれ
)
が
バリ
するのは
当然
(
あたりまへ
)
だ。
128
これでも
三公
(
さんこう
)
の
身内
(
みうち
)
に
於
(
おい
)
ては、
129
徳公
(
とくこう
)
と
云
(
い
)
つて
バリ
バリ
者
(
もの
)
だから、
130
グヅグヅ
吐
(
ぬか
)
すと
笠
(
かさ
)
の
台
(
だい
)
が
洋行
(
やうかう
)
するやうな
目
(
め
)
に
会
(
あ
)
はしてやらうか』
131
久公
『
煩雑
(
はんざつ
)
な
議論
(
ぎろん
)
をして
居
(
ゐ
)
るよりも、
132
手取早
(
てつとりばや
)
く
自由
(
じいう
)
行動
(
かうどう
)
だ。
133
サア
来
(
こ
)
い
勝負
(
しようぶ
)
!』
134
徳公
『ハツハヽヽヽ
キウ
キウ
取
(
と
)
つつめられ、
135
キウ
策
(
さく
)
を
案出
(
あんしゆつ
)
して、
136
キウ
に
威張
(
ゐば
)
り
出
(
だ
)
しよつたなア、
137
マアちつと
冷静
(
れいせい
)
にものを
考
(
かんが
)
へて
見
(
み
)
よ。
138
親分
(
おやぶん
)
同志
(
どうし
)
は
和解
(
わかい
)
してゐるぢやねえか。
139
ワカ
い
者
(
もの
)
同志
(
どうし
)
が
斯
(
こ
)
んな
所
(
ところ
)
で
喧嘩
(
けんくわ
)
しちや
済
(
す
)
まねえぞ、
140
此処
(
ここ
)
に
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
が
見
(
み
)
て
御座
(
ござ
)
る。
141
無抵抗
(
むていかう
)
主義
(
しゆぎ
)
を
貴様
(
きさま
)
は
何
(
なん
)
と
思
(
おも
)
つてゐるかい』
142
黒姫
『モシモシお
二人
(
ふたり
)
さま、
143
どうぞ
争
(
いさか
)
ひはやめて
下
(
くだ
)
さい。
144
見
(
み
)
つともないぢやありませぬか』
145
徳公
『
徳別
(
とくべつ
)
久
行
(
きうかう
)
列車
(
れつしや
)
が
黒姫
(
くろひめ
)
オツトドツコイ、
146
コリヤ
失敬
(
しつけい
)
、
147
黒煙
(
くろけむり
)
を
吐
(
は
)
いて、
148
火
(
ひ
)
の
国
(
くに
)
の
大原野
(
だいげんや
)
を
疾走
(
しつそう
)
する
所
(
ところ
)
ですからなア、
149
アハヽヽヽ』
150
久公
『
久々
(
きうきう
)
如律令
(
によりつれい
)
、
151
とうかみゑみため、
152
払
(
はら
)
ひ
玉
(
たま
)
へ
清
(
きよ
)
め
玉
(
たま
)
へ、
153
南無
(
なむ
)
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
、
154
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
徳久
(
とくきう
)
列車
(
れつしや
)
が
勝利
(
しようり
)
の
都
(
みやこ
)
へ
安着
(
あんちやく
)
致
(
いた
)
しまする
様
(
やう
)
、
155
帰命
(
きみやう
)
頂礼
(
ちやうらい
)
、
156
願望
(
ぐわんまう
)
成就
(
じやうじゆ
)
、
157
無上
(
むじやう
)
霊宝
(
れいほう
)
、
158
珍妙
(
ちんめう
)
如来
(
によらい
)
、
159
守
(
まも
)
り
玉
(
たま
)
へ
幸
(
さち
)
はひ
玉
(
たま
)
へ、
160
ウツフヽヽヽ』
161
斯
(
か
)
かる
所
(
ところ
)
へ
四五
(
しご
)
人
(
にん
)
の
男
(
をとこ
)
、
162
一人
(
ひとり
)
のかよわき
女
(
をんな
)
を
伴
(
ともな
)
ひ
急坂
(
きふはん
)
を
登
(
のぼ
)
り
来
(
きた
)
る。
163
徳公
『いよいよ
泥公
(
どろこう
)
の
御
(
ご
)
出現
(
しゆつげん
)
だ。
164
此
(
この
)
山
(
やま
)
働
(
はたら
)
く
泥棒
(
どろばう
)
が
165
長
(
なが
)
い
大刀
(
だんびら
)
振
(
ふ
)
りまはし
166
オイオイ
貴様
(
きさま
)
は
旅
(
たび
)
の
奴
(
やつ
)
167
お
金
(
かね
)
をスツカリおれの
前
(
まへ
)
168
出
(
だ
)
すか
出
(
だ
)
さぬかコリヤどうぢや
169
出
(
だ
)
さぬと
云
(
い
)
つたら
此
(
この
)
通
(
とほ
)
り
170
おどせば
久公
(
きうこう
)
は
泣
(
な
)
き
出
(
いだ
)
し
171
金
(
かね
)
を
出
(
だ
)
せなら
出
(
だ
)
しもする
172
供
(
とも
)
をせいなら
供
(
とも
)
もする
173
命
(
いのち
)
ばかりはお
助
(
たす
)
けと
174
云
(
い
)
うても
帰
(
かへ
)
らぬ
久公
(
きうこう
)
を
175
憐
(
あは
)
れや
泥棒
(
どろばう
)
がバツサリと
176
斬
(
き
)
つてすてたる
恐
(
おそ
)
ろしさ
177
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
178
叶
(
かな
)
はぬならば
久公
(
きうこう
)
よ
179
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
逃
(
に
)
げ
出
(
だ
)
せよ
180
三十六
(
さんじふろく
)
計
(
けい
)
の
奥
(
おく
)
の
手
(
て
)
は
181
逃
(
に
)
げるにしくはない
程
(
ほど
)
に
182
かけがひのない
其
(
その
)
命
(
いのち
)
183
もしもバツサリやられたら
184
貴様
(
きさま
)
の
内
(
うち
)
のおなべ
奴
(
め
)
が
185
吠面
(
ほえづら
)
かわいて
喧
(
やかま
)
しう
186
近所
(
きんじよ
)
に
迷惑
(
めいわく
)
かけるだろ
187
アハヽヽヽ、アハヽヽヽ』
188
久公
『コリヤ
徳
(
とく
)
、
189
何
(
なに
)
を
吐
(
ほざ
)
きよるのだ。
190
泥棒
(
どろばう
)
が
怖
(
こは
)
くつて
侠客
(
けふかく
)
が
出来
(
でき
)
るかい。
191
おれを
誰
(
たれ
)
だと
思
(
おも
)
つてゐるのかい。
192
蟒
(
うはばみ
)
の
久公
(
きうこう
)
と
云
(
い
)
つたら
俺
(
おれ
)
のことだぞ。
193
昔
(
むかし
)
は
白山峠
(
しらやまたうげ
)
に
岩屋戸
(
いはやど
)
を
構
(
かま
)
へ、
194
七十五
(
しちじふご
)
人
(
にん
)
の
乾児
(
こぶん
)
を
引
(
ひ
)
きつれ、
195
往来
(
わうらい
)
の
人間
(
にんげん
)
を
真裸
(
まつぱだか
)
にし、
196
経験
(
けいけん
)
をつんだ
悪逆
(
あくぎやく
)
無道
(
むだう
)
の
蟒
(
うはばみ
)
の
久公
(
きうこう
)
の
成
(
な
)
れの
果
(
は
)
てだ……と
云
(
い
)
ふのは
俺
(
おれ
)
ではない。
197
其
(
その
)
久公
(
きうこう
)
の
名
(
な
)
をあやかつた
新久公
(
しんきうこう
)
だから、
198
チツとは
泥的
(
どろてき
)
の
匂
(
にほ
)
ひ
位
(
ぐらゐ
)
は
保留
(
ほりう
)
してるつもりだから、
199
余
(
あま
)
りバカにして
貰
(
もら
)
ふまいかい』
200
五
(
ご
)
人
(
にん
)
の
男
(
をとこ
)
は
久公
(
きうこう
)
の
法螺
(
ほら
)
を
聞
(
き
)
いて、
201
本当
(
ほんたう
)
の
泥棒
(
どろばう
)
の
出現
(
しゆつげん
)
と
思
(
おも
)
ひ、
202
顔色
(
かほいろ
)
をサツと
変
(
か
)
へてゐる。
203
一人
(
ひとり
)
の
女
(
をんな
)
は
度
(
ど
)
を
失
(
うしな
)
ひ、
204
女
『あゝ
如何
(
どう
)
しませう、
205
泥棒
(
どろばう
)
が
出
(
で
)
ました。
206
兄
(
にい
)
さま
助
(
たす
)
けて
下
(
くだ
)
さいな』
207
男
(
をとこ
)
(鉄公)
『
人間
(
にんげん
)
は
覚悟
(
かくご
)
が
第一
(
だいいち
)
だ。
208
荒井峠
(
あらゐたうげ
)
に
山賊
(
さんぞく
)
が
出
(
で
)
るから、
209
モウ
少
(
すこ
)
し
遅
(
おそ
)
く、
210
夜
(
よ
)
が
明
(
あ
)
けてから
登
(
のぼ
)
らうと
云
(
い
)
つたのに、
211
貴様
(
きさま
)
が
喧
(
やかま
)
しく
急
(
せ
)
き
立
(
た
)
てて
夜中立
(
よなかだち
)
をして
来
(
き
)
たものだから、
212
こんな
怖
(
こは
)
い
目
(
め
)
に
会
(
あ
)
ふのだ。
213
これも
自業
(
じごう
)
自得
(
じとく
)
とあきらめて
真裸
(
まつぱだか
)
となり、
214
命
(
いのち
)
丈
(
だけ
)
助
(
たす
)
けて
貰
(
もら
)
ふやうにするのが
第一
(
だいいち
)
の
上分別
(
じやうふんべつ
)
だ。
215
オイ
皆
(
みな
)
裸
(
はだか
)
になれ、
216
泥公
(
どろこう
)
の
方
(
はう
)
から
請求
(
せいきう
)
されない
間
(
うち
)
に
綺麗
(
きれい
)
サツパリとおつ
放
(
ぽ
)
りだす
方
(
はう
)
が
得策
(
とくさく
)
だ。
217
人
(
ひと
)
の
性
(
せい
)
は
善
(
ぜん
)
だから、
218
下着
(
したぎ
)
の
一
(
いち
)
枚
(
まい
)
位
(
ぐらゐ
)
は
返
(
かへ
)
してくれるかも
知
(
し
)
れぬからのう』
219
と
小声
(
こごゑ
)
に
一同
(
いちどう
)
に
向
(
むか
)
つて
囁
(
ささや
)
いてゐる。
220
久公
(
きうこう
)
は
此
(
この
)
囁
(
ささや
)
き
声
(
ごゑ
)
はチツとも
耳
(
みみ
)
に
入
(
はい
)
らなかつた。
221
余
(
あま
)
りの
驚
(
おどろ
)
きに
耳
(
みみ
)
が
鳴
(
な
)
つてゐたからである。
222
男
(
をとこ
)
(鉄公)
『
私
(
わたし
)
は
火
(
ひ
)
の
国
(
くに
)
の
者
(
もの
)
で
御座
(
ござ
)
いますが、
223
俄
(
にはか
)
に
急用
(
きふよう
)
が
出来
(
でき
)
まして、
224
男女
(
だんぢよ
)
六人
(
ろくにん
)
連
(
づ
)
れ、
225
此
(
この
)
坂
(
さか
)
を
越
(
こ
)
えて
参
(
まゐ
)
りました。
226
どうぞ
荒
(
あら
)
いことをせないやうに
頼
(
たの
)
みます。
227
其
(
その
)
代
(
かは
)
りスツカリ
着物
(
きもの
)
を
脱
(
ぬ
)
いで
渡
(
わた
)
しますから……』
228
久公
『お
前
(
まへ
)
は
人
(
ひと
)
の
着物
(
きもの
)
を
脱
(
ぬ
)
がすのが
商売
(
しやうばい
)
だから
無理
(
むり
)
もないが、
229
どうぞ
今日
(
けふ
)
は
日曜
(
にちえう
)
にしてくれ、
230
頼
(
たの
)
みぢや。
231
三五教
(
あななひけう
)
の
黒姫
(
くろひめ
)
さまのお
供
(
とも
)
をして
火
(
ひ
)
の
国
(
くに
)
へ
行
(
ゆ
)
くのだから、
232
ここで
真裸
(
まつぱだか
)
にせられちやア、
233
本当
(
ほんたう
)
に
迷惑
(
めいわく
)
だからなア。
234
一
(
いち
)
枚
(
まい
)
だつて
渡
(
わた
)
すこたア
出来
(
でき
)
ないから、
235
どうぞ
諦
(
あきら
)
めて
下
(
くだ
)
さい。
236
これでも
男
(
をとこ
)
一匹
(
いつぴき
)
の
侠客
(
けふかく
)
だから、
237
裸一貫
(
はだかいつくわん
)
の
大男
(
おほをとこ
)
だから……』
238
男
(
をとこ
)
も
亦
(
また
)
驚
(
おどろ
)
きの
為
(
ため
)
に
耳
(
みみ
)
もろくに
聞
(
きこ
)
えなくなつてゐた。
239
男(鉄公)
『エヽ
何
(
なん
)
と
仰有
(
おつしや
)
います。
240
一
(
いち
)
枚
(
まい
)
も
渡
(
わた
)
さぬと
仰有
(
おつしや
)
るのですか。
241
せめて
下着
(
したぎ
)
なつと
下
(
くだ
)
さいな、
242
裸一貫
(
はだかいつくわん
)
とか
二貫
(
にくわん
)
とか
仰有
(
おつしや
)
いましたが、
243
裸
(
はだか
)
になつちや
道中
(
だうちう
)
が
出来
(
でき
)
ませぬ、
244
又
(
また
)
こんな
孱弱
(
かよわ
)
い
女
(
をんな
)
も
居
(
を
)
るのですから、
245
そこはお
慈悲
(
じひ
)
で
見
(
み
)
のがして
下
(
くだ
)
さいませ』
246
外
(
ほか
)
五
(
ご
)
人
(
にん
)
の
男女
(
だんぢよ
)
は
目
(
め
)
をふさぎ、
247
耳
(
みみ
)
をつめ
坂路
(
さかみち
)
にふるひふるひ
踞
(
しやが
)
んでゐる。
248
徳公
『アハヽヽヽ、
249
臆病者
(
おくびやうもの
)
同士
(
どうし
)
の
寄合
(
よりあひ
)
ぢやなア………コレコレ
旅
(
たび
)
の
御
(
お
)
方
(
かた
)
、
250
吾々
(
われわれ
)
は
決
(
けつ
)
して
泥棒
(
どろばう
)
ぢやありませぬよ。
251
大蛇
(
をろち
)
の
三公
(
さんこう
)
の
乾児
(
こぶん
)
で、
252
弱
(
よわ
)
きをくじき、
253
強
(
つよ
)
きを
助
(
たす
)
けると
云
(
い
)
ふ
都合
(
つがふ
)
の
好
(
よ
)
い
侠客
(
けふかく
)
だから、
254
マアマア
安心
(
あんしん
)
なさい。
255
命
(
いのち
)
を
取
(
と
)
つても
着物
(
きもの
)
迄
(
まで
)
取
(
と
)
らうとは
云
(
い
)
はねえから
安心
(
あんしん
)
しなせえ。
256
今
(
いま
)
の
人間
(
にんげん
)
は
体
(
からだ
)
よりも
着物
(
きもの
)
を
大切
(
たいせつ
)
がるから
大切
(
たいせつ
)
な
着物
(
きもの
)
の
方
(
はう
)
を
助
(
たす
)
けて
上
(
あ
)
げやせう、
257
アハヽヽヽ』
258
黒姫
『コレコレ
徳公
(
とくこう
)
、
259
久公
(
きうこう
)
、
260
冗談
(
じようだん
)
もいい
加減
(
かげん
)
にしておきなさい。
261
旅
(
たび
)
のお
方
(
かた
)
が
本当
(
ほんたう
)
の
泥棒
(
どろばう
)
だと
思
(
おも
)
つて、
262
あの
通
(
とほ
)
り
慄
(
ふる
)
うてゐられるぢやありませぬか。
263
そんな
肚
(
はら
)
の
悪
(
わる
)
いことを
云
(
い
)
ふものぢやありませぬよ』
264
徳公
『いかにも
御尤
(
ごもつと
)
も
千万
(
せんばん
)
、
265
恐
(
おそ
)
れ
入谷
(
いりや
)
の
鬼子
(
きし
)
母神
(
ぼじん
)
、
266
呆
(
あき
)
れ
蛙
(
かはづ
)
の
面
(
つら
)
に
水
(
みづ
)
、
267
つらつら
思
(
おも
)
んみれば、
268
見
(
み
)
ず
知
(
し
)
らずの
旅人
(
たびびと
)
を
捉
(
つかま
)
へ、
269
いらざる
嚇
(
おど
)
し
文句
(
もんく
)
を
並
(
なら
)
べたて、
270
誠
(
まこと
)
に
以
(
もつ
)
て
不都合
(
ふつがふ
)
千万
(
せんばん
)
、
271
平
(
ひら
)
に
御
(
ご
)
容赦
(
ようしや
)
願
(
ねがひ
)
上
(
あ
)
げ
奉
(
たてまつ
)
りまする……コレコレ
旅
(
たび
)
のお
方
(
かた
)
、
272
吾々
(
われわれ
)
は
決
(
けつ
)
して
泥棒
(
どろばう
)
ぢやありませぬ。
273
三五教
(
あななひけう
)
の
信者
(
しんじや
)
だから
安心
(
あんしん
)
して
下
(
くだ
)
さい。
274
実
(
じつ
)
は
此方
(
こちら
)
の
方
(
はう
)
から、
275
お
前
(
まへ
)
さま
達
(
たち
)
を
泥棒
(
どろばう
)
の
群
(
むれ
)
だと
早合点
(
はやがつてん
)
して、
276
雨蛙
(
あまがへる
)
の
胸元
(
むなもと
)
のやうに、
277
ペコペコとハートに
波
(
なみ
)
を
打
(
う
)
たせてゐた
余
(
あま
)
り
強
(
つよ
)
くない
代物
(
しろもの
)
ですよ。
278
疑心
(
ぎしん
)
暗鬼
(
あんき
)
を
生
(
しやう
)
ずとかや、
279
互
(
たがひ
)
に
心
(
こころ
)
の
縺
(
もつ
)
れから、
280
せいでもよい
心配
(
しんぱい
)
をしたり、
281
させたり、
282
らつち
もねえことで
御座
(
ござ
)
んした』
283
旅
(
たび
)
の
男
(
をとこ
)
は
漸
(
やうや
)
くにして
胸
(
むね
)
撫
(
な
)
でおろし、
284
男(鉄公)
『あゝそれで
落着
(
おちつ
)
きました……オイお
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
、
285
モウ
心配
(
しんぱい
)
するには
及
(
およ
)
ばぬ、
286
気
(
き
)
を
確
(
たしか
)
に
持
(
も
)
て。
287
こんな
弱
(
よわ
)
い
事
(
こと
)
で
荒井峠
(
あらゐたうげ
)
が
越
(
こ
)
されると
思
(
おも
)
ふか。
288
仮令
(
たとへ
)
泥棒
(
どろばう
)
の
千匹
(
せんびき
)
万匹
(
まんびき
)
押寄
(
おしよ
)
せ
来
(
きた
)
るとも、
289
此
(
この
)
鉄公
(
てつこう
)
が
鉄拳
(
てつけん
)
を
揮
(
ふる
)
つて、
290
泥棒
(
どろばう
)
の
群
(
むれ
)
に
縦横
(
じうわう
)
無尽
(
むじん
)
に
飛込
(
とびこ
)
んだが
最後
(
さいご
)
、
291
さしも
暴悪
(
ばうあく
)
無道
(
むだう
)
の
泥棒
(
どろばう
)
の
群
(
むれ
)
も
風
(
かぜ
)
に
木
(
こ
)
の
葉
(
は
)
の
散
(
ち
)
る
如
(
ごと
)
く
先
(
さき
)
を
争
(
あらそ
)
ひ、
292
ムラムラパツと
逃
(
に
)
げ
散
(
ち
)
つたり。
293
逃
(
に
)
げる
奴
(
やつ
)
には
目
(
め
)
はかけず、
294
寄
(
よ
)
せくる
奴
(
やつ
)
は
片
(
かた
)
つぱしからブンなぐり、
295
素首
(
そつくび
)
ひきぬき、
296
股
(
また
)
をさき
手
(
て
)
をむしり、
297
子供
(
こども
)
の
人形箱
(
にんぎやうばこ
)
のやうに
致
(
いた
)
してくれむは
案
(
あん
)
の
内
(
うち
)
、
298
ヤア
面白
(
おもしろ
)
し
面白
(
おもしろ
)
し。
299
実
(
げ
)
に
名
(
な
)
にし
負
(
お
)
ふ
荒井
(
あらゐ
)
ケ
岳
(
だけ
)
の
勇将
(
ゆうしやう
)
と、
300
名
(
な
)
を
万世
(
ばんせい
)
に
轟
(
とどろ
)
かす、
301
比
(
たぐ
)
ひ
稀
(
まれ
)
なる
豪傑
(
がうけつ
)
なり………と
云
(
い
)
ふ
様
(
やう
)
なものだ。
302
マアマア
木
(
こ
)
ツぱ
共
(
ども
)
、
303
否
(
いな
)
臆病者
(
おくびやうもの
)
共
(
ども
)
、
304
此
(
この
)
鉄公
(
てつこう
)
さまに
従
(
したが
)
ひ
来
(
きた
)
れ、
305
オツホーン』
306
黒姫
『アハヽヽヽ
又
(
また
)
久公
(
きうこう
)
の
二代目
(
にだいめ
)
が
出来
(
でき
)
ましたなア』
307
徳公
『
久公
(
きうこう
)
の
副
(
ふく
)
守護神
(
しゆごじん
)
が
憑依
(
ひようい
)
したのですよ、
308
アハヽヽヽ』
309
旅
(
たび
)
の
男
(
をとこ
)
は
五
(
ご
)
人
(
にん
)
の
男女
(
だんぢよ
)
を
差
(
さ
)
し
招
(
まね
)
き、
310
法螺
(
ほら
)
を
吹
(
ふ
)
き、
311
空威張
(
からいば
)
りし
乍
(
なが
)
ら、
312
ヤツパリどこかに
薄気味
(
うすぎみ
)
が
悪
(
わる
)
いと
見
(
み
)
え、
313
下
(
くだ
)
り
坂
(
ざか
)
になつたを
幸
(
さいは
)
ひ、
314
転
(
こ
)
けつまろびつ、
315
立板
(
たていた
)
に
砂利
(
じやり
)
をブチまけたやうに、
316
バラバラと
命
(
いのち
)
カラガラ
逃
(
に
)
げて
行
(
ゆ
)
く。
317
(
大正一一・九・一七
旧七・二六
松村真澄
録)
Δこのページの一番上に戻るΔ
<<< 浮島の花
(B)
(N)
山下り >>>
霊界物語
>
海洋万里(第25~36巻)
>
第35巻(戌の巻)
> 第3篇 火の国都 > 第17章 霧の海
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【
メールアドレス
】
【第17章 霧の海|第35巻|海洋万里|霊界物語|/rm3517】
合言葉「みろく」を入力して下さい→