霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第三章 出師(すゐし)〔一〇六八〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第39巻 舎身活躍 寅の巻 篇:第1篇 伊祖の神風 よみ(新仮名遣い):いそのかみかぜ
章:第3章 出師 よみ(新仮名遣い):すいし 通し章番号:1068
口述日:1922(大正11)年10月21日(旧09月2日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年5月5日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一部の章はAIによって要約を作成しています。[×閉じる]:
照国別は日の出神からハルナの都への出立を許され、意気揚々と座に就いた。そして妻の幾代姫に後事を託し、神軍として出立の抱負を歌った。
黄竜姫、蜈蚣姫の母子二人連れは、旅人に身を変えてフサの国を横断し、フサの海から舟に乗ってハルナの都に進んでいくことになった。
一方照国別は宣伝使の服装を整え、照公、国公、梅公を従者として河鹿峠を越えてフサの国の東南から月の国へ進むこととなった。
玉国別は立ち上がり、自分とても多くのバラモン教徒を言向け和してきた勇者であり、広い月の国の大敵に照国別一人では前途を案じられるとして、自分も派遣してほしいと願い出た。
日の出神はその心をよしとして、玉国別にも出立の許可を出した。玉国別は一同に別れを告げて後を託し、三人の従者を従えて河鹿峠を越え、フサの国の原野を越えて印度を指して進んでいった。
また治国別も印度への出陣を願い出て、これもまた日の出神の許可を得て出立していった。初稚姫は五人の神司の出陣を祝して、金扇を開いて歌い舞った。
そして初稚姫自身も、単身大黒主の館に忍び込んで曲神を帰順させるために出陣を願い出た。日の出神は躊躇したが、初稚姫と時置師神の強い言葉を受けて、ハルナ行きを許可した。初稚姫は単身、共も連れずに出立して行った。
こうしていよいよ、月の国の大黒主に対する言霊戦の準備はまったく整ったのであった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2022-11-15 09:20:18 文字数:4186 OBC :rm3903
愛善世界社版:33頁 八幡書店版:第7輯 291頁 修補版: 校定版:35頁 普及版:13頁 初版: ページ備考:
001 照国別(てるくにわけ)の梅彦(うめひこ)は日出別(ひのでわけ)の教主(けうしゆ)より月(つき)の国(くに)のハルナの都(みやこ)へ向(むか)ふ事(こと)を許(ゆる)され、002意気(いき)揚々(やうやう)として座(ざ)につき、
 
003照国別『有難(ありがた)し神(かみ)の心(こころ)に叶(かな)ひしか
004  月(つき)の国(くに)をば照国別(てるくにわけ)と行(ゆ)く。
005 いざさらばこれより吾(われ)は幾代姫(いくよひめ)
006  やかたを清(きよ)く後(あと)に守(まも)れよ』
 
007 幾代姫(いくよひめ)は歌(うた)ふ。
008幾代姫『照国別(てるくにわけ)の吾(わが)夫(つま)は
009日出別(ひのでのわけ)の教主(けうしゆ)より
010月(つき)の御国(みくに)に潜(ひそ)みたる
011大黒主(おほくろぬし)の神司(かむつかさ)
012其(その)外(ほか)百(もも)の醜神(しこがみ)を
013尊(たふと)き神(かみ)の御教(みをしへ)に
014言向和(ことむけやは)し救(すく)ふべく
015斎苑(いそ)の館(やかた)を立出(たちい)でて
016出(い)でます今日(けふ)の雄々(をを)しさよ
017妾(わらは)は後(あと)に止(とど)まりて
018神(かみ)の教(をしへ)を守(まも)りつつ
019力限(ちからかぎ)りに世(よ)の人(ひと)を
020皇(すめ)大神(おほかみ)の大道(おほみち)に
021導(みちび)き救(すく)ひまつるべし
022わが背(せ)の君(きみ)よ一時(ひととき)も
023早(はや)く館(やかた)を立出(たちい)でて
024天地(あめつち)百(もも)の神人(しんじん)の
025苦(くるし)み悩(なや)む災(わざはひ)を
026払(はら)はせ玉(たま)へ惟神(かむながら)
027神(かみ)の御前(みまへ)に願(ね)ぎまつる』
028と歌(うた)ひ了(をは)るや、029照国別(てるくにわけ)は、
030照国別『いざさらば曲津(まがつ)の運(うん)も月(つき)の国(くに)
031頭(あたま)ハルナの都(みやこ)に進(すす)まむ。
032大黒主(おほくろぬし)斎苑(いそ)の館(やかた)の神軍(しんぐん)に
033驚(おどろ)くならむ今日(けふ)の出立(いでた)ち。
034八尋殿(やひろどの)並(なら)びいませる司(つかさ)たちよ
035吾(われ)はハルナの都(みやこ)に立(た)たむ』
036 時置師(ときおかしの)神(かみ)は立(た)つて歌(うた)ふ。
037時置師『照国別(てるくにわけ)神(かみ)の命(みこと)はとく行(ゆ)かせ
038われは館(やかた)に止(とど)まり守(まも)らむ』
039 これより黄竜姫(わうりようひめ)、040蜈蚣姫(むかでひめ)は、041日出別(ひのでわけの)命(みこと)の承諾(しようだく)を得(え)、042数多(あまた)の司(つかさ)に讃嘆(さんたん)され乍(なが)ら、043母娘(おやこ)は普通(ふつう)の旅人(たびびと)に身(み)を変(へん)じ、044フサの国(くに)を横断(わうだん)し、045フサの海(うみ)より舟(ふね)に乗(の)りて、046ハルナの都(みやこ)へ進(すす)み行(ゆ)くこととなつた。047又(また)梅彦(うめひこ)は直(ただ)ちに宣伝使(せんでんし)の服装(ふくさう)を整(ととの)へ、048照公(てるこう)、049国公(くにこう)、050梅公(うめこう)の従者(じゆうしや)と共(とも)に河鹿(かじか)峠(たうげ)をこえ、051フサの国(くに)を東南(とうなん)さして進(すす)み、052月(つき)の国(くに)へ進(すす)むこととなつた。
053 此(この)時(とき)玉国別(たまくにわけ)の音彦(おとひこ)は立上(たちあが)つて歌(うた)ひ出(だ)した。
054玉国別『三五教(あななひけう)に仕(つか)へたる
055玉国別(たまくにわけ)の宣伝使(せんでんし)
056音(おと)に聞(きこ)えし音彦(おとひこ)は
057ペルシヤの国(くに)を宣伝(せんでん)し
058海(うみ)に泛(うか)びて自転倒(おのころ)の
059島(しま)に渡(わた)りて遠近(おちこち)と
060神(かみ)の教(をしへ)を宣(の)べ乍(なが)ら
061大江(おほえ)の山(やま)に立(たて)こもる
062バラモン教(けう)の大棟梁(だいとうりやう)
063鬼雲彦(おにくもひこ)や鬼熊別(おにくまわけ)の
064魔神(まがみ)に向(むか)つて言霊(ことたま)の
065戦(いくさ)を開(ひら)き曲神(まがかみ)を
066追(お)ひ散(ち)らしたる強者(つはもの)ぞ
067梅彦(うめひこ)いかに勇(ゆう)あるも
068音彦司(おとひこつかさ)に及(およ)ばむや
069日出別(ひのでのわけ)の大教主(だいけうしゆ)
070照国別(てるくにわけ)を遣(つか)はして
071大黒主(おほくろぬし)の曲神(まがかみ)を
072言向和(ことむけやは)し玉(たま)はむと
073計(はか)り玉(たま)ふはいぶかしも
074いかに神徳(しんとく)充実(じうじつ)し
075天地(てんち)をゆるがす言霊(ことたま)を
076身(み)に受(う)けゐるとは云(い)ひ乍(なが)ら
077敵(てき)にも鋭(するど)き刃(やいば)あり
078いかでかこれの大敵(たいてき)を
079一人(ひとり)や二人(ふたり)の力(ちから)にて
080言向和(ことむけやは)し了(おう)せむや
081此(この)音彦(おとひこ)の心中(しんちう)は
082実(じつ)に不安(ふあん)の雲(くも)掩(おほ)ひ
083前途(ぜんと)を案(あん)じやられけり
084あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
085神(かみ)の心(こころ)に見直(みなほ)して
086玉国別(たまくにわけ)を今(いま)一人(ひとり)
087遣(つか)はし給(たま)へ真心(まごころ)を
088こめてぞ祈(いの)り奉(たてまつ)る
089朝日(あさひ)は照(て)るとも曇(くも)るとも
090月(つき)は盈(み)つとも虧(か)くるとも
091仮令(たとへ)大地(だいち)は沈(しづ)むとも
092三五教(あななひけう)の御教(みをしへ)を
093決(けつ)して汚(けが)す事(こと)あらじ
094月日(つきひ)の如(ごと)く明(あきら)けく
095道(みち)の光(ひかり)を現(あら)はして
096神(かみ)の御前(みまへ)に復言(かへりごと)
097申(まを)しまつらむ惟神(かむながら)
098早(はや)く許(ゆる)させ玉(たま)へかし』
099 と歌(うた)を以(もつ)て希望(きばう)を述(の)べた。100日出別(ひのでわけの)神(かみ)は、101歌(うた)を以(もつ)てこれに答(こた)ふ。
102日出別『玉国別(たまくにわけ)神(かみ)の司(つかさ)は言霊(ことたま)の
103清(きよ)くいませば悩(なや)むことなし。
104さり乍(なが)ら数(かず)限(かぎ)りなき八十(やそ)の国(くに)
105只(ただ)一柱(ひとはしら)にてせむ術(すべ)もなけむ。
106玉国別(たまくにわけ)神(かみ)の司(つかさ)よ心(こころ)して
107曲津(まがつ)の荒(すさ)ぶ月(つき)へ出(い)でませ。
108月照彦(つきてるひこ)神(かみの)命(みこと)をあがめつつ
109夜(よ)を日(ひ)についで進(すす)みませ君(きみ)』
110 玉国別(たまくにわけ)は欣然(きんぜん)として立上(たちあが)り、111又(また)も歌(うた)にて答(こた)ふ。
112玉国別『千早(ちはや)ふる神(かみ)の光(ひかり)の現(あら)はれて
113玉国別(たまくにわけ)の玉(たま)を照(て)らさむ。
114月照彦(つきてるひこ)神(かみの)命(みこと)の御光(みひかり)に
115暗路(やみぢ)を安(やす)く渡(わた)らむと思(おも)ふ。
116イソイソと斎苑(いそ)の館(やかた)を立出(たちい)でて
117進(すす)む吾(われ)こそ楽(たの)し嬉(うれ)しき。
118東野別(あづまのわけ)司(つかさ)の前(まへ)に物申(ものまを)す
119守(まも)らせ玉(たま)へ妻(つま)の身(み)の上(うへ)』
120 東野別(あづまのわけ)はこれに答(こた)へて、
121東野別『五十子(いそこ)姫(ひめ)清(きよ)く雄々(をを)しくましまさば
122音(おと)づれなくも安(やす)く行(ゆ)きませ。
123素盞嗚(すさのを)の神(かみの)尊(みこと)の愛娘(まなむすめ)
124瑞(みづ)の御霊(みたま)とあれし君(きみ)はも。
125此(この)君(きみ)のこれの館(やかた)にゐます限(かぎ)り
126安(やす)く楽(たの)しく道(みち)は栄(さか)えむ。
127村肝(むらきも)の心(こころ)残(のこ)さず印度(ツキ)の国(くに)
128ハルナの都(みやこ)にとく進(すす)みませ』
129 音彦(おとひこ)は又(また)歌(うた)ふ。
130玉国別(音彦)『有難(ありがた)し心(こころ)にかかる雲(くも)もなく
131道(みち)伝(つた)へ行(ゆ)かむ印度(ツキ)の御国(みくに)へ。
132時置師(ときおかしの)神(かみの)命(みこと)よ昼夜(ひるよる)を
133守(まも)らせ玉(たま)へこれの館(やかた)を。
134いざさらば並(なみ)ゐる司(つかさ)を後(あと)にして
135神(かみ)の随々(まにまに)別(わか)れて行(ゆ)かむ。
136五十子(いそこ)姫(ひめ)玉国別(たまくにわけ)が勇(いさ)ましく
137復言(かへりごと)する日(ひ)をこそまてよ』
138 五十子(いそこ)姫(ひめ)は歌(うた)ふ。
139五十子姫『勇(いさ)ましき吾(わが)背(せ)の君(きみ)の御姿(みすがた)を
140隠(かく)るるまでに眺(なが)め守(まも)らな。
141村肝(むらきも)の心(こころ)を残(のこ)し玉(たま)はずに
142神(かみ)のまにまに進(すす)みませ君(きみ)』
143 玉国別(たまくにわけ)は一同(いちどう)に向(むか)ひ会釈(ゑしやく)し乍(なが)ら宣伝歌(せんでんか)を歌(うた)ひつつ、144三(さん)人(にん)の随行(ずゐかう)と共(とも)に、145これ又(また)河鹿(かじか)峠(たうげ)を踏(ふ)み越(こ)え、146フサの国(くに)の原野(げんや)を渉(わた)りて、147印度(いんど)を指(さ)して進(すす)み行(ゆ)かむとする。
148 治国別(はるくにわけ)の亀彦(かめひこ)は立上(たちあが)つて歌(うた)もて自分(じぶん)の希望(きばう)を述(の)べた。
149治国別『神(かむ)素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)の
150隠(かく)れ玉(たま)ひし斎苑(いそ)館(やかた)
151教司(をしへつかさ)と現(あ)れませる
152日出別(ひのでのわけ)に物申(ものまを)す
153ウラルの道(みち)を奉(ほう)じたる
154醜(しこ)の司(つかさ)の吾(われ)なれど
155フサの海(うみ)にて巡(めぐ)り会(あ)ひ
156汝(なれ)が命(みこと)の薫陶(くんたう)を
157受(う)けて誠(まこと)の人(ひと)となり
158名(な)さへめでたき宣伝使(せんでんし)
159喜(よろこ)び勇(いさ)んで四方(よも)の国(くに)
160自転倒(おのころ)島(じま)まで打渡(うちわた)り
161醜(しこ)の魔神(まがみ)を言向(ことむけ)けて
162再(ふたた)びこれの斎苑(いそ)館(やかた)
163皇(すめ)大神(おほかみ)に従(したが)ひて
164功績(いさを)を立(た)てしわが身魂(みたま)
165見向(みむ)きもやらず梅彦(うめひこ)や
166音彦(おとひこ)二人(ふたり)を抜擢(ばつてき)し
167大黒主(おほくろぬし)をいましめの
168任務(にんむ)を依(よ)さし玉(たま)ひたり
169あゝ恨(うら)めしし恨(うら)めしし
170われも神(かみ)の子(こ)神(かみ)の宮(みや)
171いかでか彼(かれ)に劣(おと)らむや
172直日(なほひ)に見直(みなほ)し聞直(ききなほ)し
173宣直(のりなほ)しまし亀彦(かめひこ)を
174印度(ツキ)の御国(みくに)へ遣(つか)はして
175八岐(やまた)大蛇(をろち)のかかりたる
176醜(しこ)の司(つかさ)を悉(ことごと)く
177三五教(あななひけう)の大道(おほみち)に
178救(すく)ひ助(たす)くる神使(かみつかひ)
179任(ま)けさせ玉(たま)へ逸早(いちはや)く
180神(かみ)の御前(みまへ)に伺(うかが)ひて
181わが言霊(ことたま)の神力(しんりき)を
182照(て)らさせ玉(たま)へ惟神(かむながら)
183菊子(きくこ)の姫(ひめ)と諸共(もろとも)に
184謹(つつし)み敬(うやま)ひ祈(ね)ぎ奉(まつ)る』
185 と歌(うた)ひ了(をは)つた。186日出別(ひのでわけの)命(みこと)は、187これに答(こた)へて、
188日出別『勇(いさ)ましき治国別(はるくにわけ)の言(こと)あげを
189心(こころ)涼(すず)しく頼(たの)もしく思(おも)ふ。
190いざさらば汝(なれ)が命(みこと)は印度(ツキ)の国(くに)
191すみずみ迄(まで)も巡(めぐ)り救(すく)へよ。
192言霊(ことたま)の幸(さち)はふ国(くに)の神司(かむつかさ)
193勝鬨(かちどき)あげて早帰(はやかへ)りませ』
194 と歌(うた)もて印度(ツキ)の国(くに)への出陣(しゆつぢん)を許(ゆる)した。195治国別(はるくにわけ)は勇(いさ)み立(た)ち、
196治国別『かけ巻(まく)も綾(あや)に畏(かしこ)き皇神(すめかみ)の
197御言(みこと)のままに進(すす)みて行(ゆ)かむ。
198日出別(ひのでわけ)神(かみ)の命(みこと)よ今(いま)しばし
199わが復言(かへりごと)待(ま)たせ玉(たま)はれ。
200東野別(あづまのわけ)司(つかさ)の前(まへ)に物申(ものまを)す
201百(もも)の司(つかさ)を恵(めぐ)ませ玉(たま)へよ。
202われは今(いま)印度(ツキ)の国(くに)へと進(すす)みゆく
203守(まも)らせ玉(たま)へ菊子(きくこ)の姫(ひめ)を。
204残(のこ)しおく妻(つま)の命(みこと)もつつしみて
205神(かみ)の教(をしへ)を宣(の)べ伝(つた)へせよ』
206 東野別(あづまのわけ)は之(これ)に答(こた)へて、
207東野別『みづみづし益良(ますら)武夫(たけを)の亀彦(かめひこ)は
208名(な)を万世(よろづよ)に伝(つた)へますらむ。
209千代(ちよ)八千代(やちよ)万代(よろづよ)までも亀彦(かめひこ)が
210治国別(はるくにわけ)の名(な)をや照(て)らさむ。
211治国別(はるくにわけ)神(かみ)の命(みこと)のいさをしを
212仰(あふ)ぎて待(ま)たむ唐土(もろこし)の空(そら)』
213 菊子姫(きくこひめ)は又(また)歌(うた)ふ。
214菊子姫『けなげなる尊(たふと)き便(たよ)りを菊子姫(きくこひめ)
215待(ま)つ間(ま)の永(なが)き真鶴(まなづる)の首(くび)。
216一足(ひとあし)の歩(あゆ)みも心(こころ)配(くば)らせつ
217進(すす)み行(ゆ)きませ吾(わが)背(せ)の君(きみ)は。
218山(やま)を越(こ)え荒野(あらの)をわたり雨(あめ)にぬれ
219進(すす)み行(ゆ)く君(きみ)見(み)れば雄々(をを)しも』
220 初稚姫(はつわかひめ)は立上(たちあが)り、221金扇(きんせん)を開(ひら)いて、222自(みづか)ら歌(うた)ひ自(みづか)ら舞(ま)ひ、223五(ご)人(にん)の神司(かむづかさ)が出陣(しゆつぢん)を祝(しゆく)した。
224初稚姫『久方(ひさかた)の天津(あまつ)御空(みそら)の限(かぎ)りなく
225照(て)り渡(わた)るなる三五(あななひ)の
226月(つき)の教(をしへ)に四方(よも)の国(くに)
227青人草(あをひとぐさ)や鳥(とり)獣(けもの)
228草(くさ)の片葉(かきは)に至(いた)るまで
229恵(めぐみ)の露(つゆ)に霑(うるほ)ひて
230尊(たふと)き神(かみ)の御光(みひかり)を
231仰(あふ)ぎ楽(たの)しむ葦原(あしはら)の
232八洲(やしま)の国(くに)の其(その)中(なか)に
233如何(いか)なる神(かみ)の仕組(しぐみ)にや
234取残(とりのこ)されし印度(ツキ)の国(くに)
235七千(しちせん)余(あま)りの国々(くにぐに)に
236王(きみ)と現(あ)れます刹帝利(せつていり)
237八岐(やまた)大蛇(をろち)の醜霊(しこたま)に
238惑(まど)はされつつ日(ひ)に月(つき)に
239よからぬ事(こと)のみ行(おこな)ひつ
240世(よ)の常暗(とこやみ)となりて行(ゆ)く
241時(とき)しもあれやバラモンの
242道(みち)に仕(つか)ふる神司(かむづかさ)
243大黒主(おほくろぬし)が現(あら)はれて
244ハルナの都(みやこ)を根拠(こんきよ)とし
245バラモン族(ぞく)を庇護(ひご)しつつ
246刹帝利(せつていり)族(ぞく)を押込(おしこ)めて
247暴威(ばうゐ)を揮(ふる)ふぞうたてけれ
248それに付(つ)いては毘舎(びしや)首陀(しゆだ)の
249三種(さんしゆ)階級(かいきふ)の民族(みんぞく)も
250バラモン族(ぞく)の暴虐(ばうぎやく)に
251苦(くるし)み悶(もだ)へ国原(くにはら)は
252怨嗟(ゑんさ)の声(こゑ)にみちみちぬ
253あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
254神(かみ)の御霊(みたま)の幸(さち)はひて
255神(かむ)素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)は
256時(とき)を計(はか)らひ瑞御霊(みづみたま)
257発揮(はつき)し玉(たま)ひて印度(ツキ)の国(くに)
258ハルナの都(みやこ)へ三五(あななひ)の
259神(かみ)の司(つかさ)を遣(つか)はして
260世人(よびと)を救(すく)ひ玉(たま)はむと
261御計(みはか)り在(あ)りし尊(たふと)さよ
262日出別(ひのでのわけ)の教主(つかさ)より
263此(この)大業(たいげふ)を命(めい)ぜられ
264黄竜姫(わうりようひめ)や蜈蚣姫(むかでひめ)
265尊(たふと)き司(つかさ)を初(はじ)めとし
266心(こころ)も明(あか)き照国別(てるくにわけ)
267神(かみ)の命(みこと)や玉国別(たまくにわけ)
268治国別(はるくにわけ)の三柱(みはしら)を
269おのもおのもにこと任(ま)けて
270神(かみ)の御(おん)為(ため)世(よ)の為(ため)に
271遣(つか)はし玉(たま)ふぞ有難(ありがた)き
272われも初稚姫(はつわかひめの)神(かみ)
273年端(としは)も行(ゆ)かぬ身(み)なれ共(ども)
274神(かむ)素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)の
275遣(つか)はし玉(たま)ひし八乙女(やおとめ)が
276清(きよ)き御業(みわざ)に神(かむ)傚(なら)ひ
277大黒主(おほくろぬし)の館(やかた)まで
278忍(しの)び参(まゐ)りて三五(あななひ)の
279誠(まこと)の道(みち)に曲神(まがかみ)を
280言向和(ことむけやは)させ玉(たま)へかし
281日出別(ひのでのわけ)や東野別(あづまのわけ)
282神(かみ)の司(つかさ)の御(おん)前(まへ)に
283謹(つつし)み敬(うやま)ひ祈(ね)ぎまつる
284父(ちち)とあれます時置師(ときおかし)
285神(かみ)の司(つかさ)は初稚(はつわか)が
286願(ねがひ)を必(かなら)ず許(ゆる)すべし
287神(かみ)の御言(みこと)の幸(さち)はひて
288われを遣(つか)はし玉(たま)ひなば
289如何(いか)なる悩(なや)みも堪(た)へ忍(しの)び
290わが大神(おほかみ)の御心(みこころ)を
291うまらにつばらに説(と)きさとし
292時節(じせつ)を待(ま)つて大黒主(おほくろぬし)を
293誠(まこと)の道(みち)に帰順(きじゆん)させ
294神(かみ)の御前(みまへ)に復言(かへりごと)
295申(まを)し奉(まつ)らむいざ早(はや)く
296許(ゆる)させ玉(たま)へ惟神(かむながら)
297神(かみ)の御前(みまへ)に祈(ね)ぎまつる』
298と歌(うた)つて、299自分(じぶん)も単独(たんどく)にて、300大黒主(おほくろぬし)の館(やかた)に忍(しの)び込(こ)み、301曲神(まがかみ)を帰順(きじゆん)せしむべく、302出陣(しゆつぢん)を許(ゆる)されむ事(こと)を請願(せいぐわん)した。303日出別(ひのでわけ)は歌(うた)を以(もつ)てこれに答(こた)ふ。
304日出別『勇(いさ)ましき初稚姫(はつわかひめ)の言霊(ことたま)よ
305聞(き)く度(たび)毎(ごと)に涙(なみだ)こぼるる。
306さり乍(なが)ら初稚姫(はつわかひめ)は独(ひと)り御子(みこ)
307いかでか印度(ツキ)に遣(つか)はすを得(え)む』
308 初稚姫(はつわかひめ)はこれに答(こた)へて、
309初稚姫『いぶかしき日出別(ひのでのわけ)の言霊(ことたま)よ
310神(かみ)に捧(ささ)げし吾(わが)身(み)ならずや。
311時置師(ときおかし)父(ちち)の命(みこと)も初稚(はつわか)が
312誠(まこと)の言葉(ことば)を愛(め)で許(ゆる)しませ』
313 時置師(ときおかしの)神(かみ)は歌(うた)もて答(こた)ふ。
314時置師『天地(あめつち)の御霊(みたま)にあれし吾(わが)娘(むすめ)
315神(かみ)のまにまに仕(つか)へまつれよ。
316時置師(ときおかし)神(かみ)の司(つかさ)は只(ただ)一人(ひとり)
317いでゆく汝(なれ)を雄々(をを)しくぞ思(おも)ふ』
318 日出別(ひのでわけの)命(みこと)は又(また)歌(うた)ふ。
319日出別『勇(いさ)ましき親子(おやこ)二人(ふたり)の心根(こころね)を
320神(かみ)は喜(よろこ)び玉(たま)ふなるらむ。
321いざさらば初稚姫(はつわかひめ)の神司(かむづかさ)
322神(かみ)のまにまに進(すす)み行(ゆ)きませ』
323 東野別(あづまのわけ)は立上(たちあが)りて歌(うた)ふ。
324東野別『年若(としわか)き初稚姫(はつわかひめ)の御姿(みすがた)を
325見(み)るにつけても涙(なみだ)ぐまれつ。
326さり乍(なが)ら尊(たふと)き神(かみ)の守(まも)ります
327司(つかさ)にませば心(こころ)痛(いた)めず。
328いざ早(はや)く御言(みこと)のままに出(い)でまして
329神(かみ)の御前(みまへ)に復言(かへりごと)せよ』
330 初稚姫(はつわかひめ)は嬉(うれ)しげに又(また)歌(うた)ふ。
331初稚姫『日出別(ひのでわけ)東野別(あづまのわけ)や垂乳根(たらちね)の
332父(ちち)の言葉(ことば)は妾(われ)を生(い)かせり。
333有難(ありがた)き神(かみ)の恵(めぐみ)を受(う)け乍(なが)ら
334印度(ツキ)の御国(みくに)へ吾(わ)が進(すす)みゆかむ』
335 かく歌(うた)ひて、336一同(いちどう)に別(わか)れを告(つ)げ、337瓢然(へうぜん)として只(ただ)一人(ひとり)供人(ともびと)をもつれず、338万里(ばんり)の山河(さんか)を越(こ)えて、339印度(ツキ)の国(くに)へ進(すす)み行(ゆ)く。
340 神界(しんかい)の御(ご)経綸(けいりん)にて最初(さいしよ)より印度(ツキ)の国(くに)のハルナの都(みやこ)に現(あら)はれたる大黒主(おほくろぬし)を言向和(ことむけやは)す為(ため)出張(しゆつちやう)を命(めい)ぜらるべき神司(かむつかさ)は、341略(ほぼ)決定(けつてい)されてゐたのである。342併(しか)し乍(なが)ら神(かむ)素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)は吾(わが)娘(むすめ)の夫(をつと)が三柱(みはしら)迄(まで)も加(くは)はり居(を)る事(こと)とて、343明(あから)さまに言(い)ひ出(い)でかね玉(たま)ひ、344日出別(ひのでわけの)神(かみ)に命(めい)じて、345相談会(さうだんくわい)を開(ひら)かせ、346随意(ずゐい)に此(この)使(つかひ)に奉仕(ほうし)する事(こと)の手続(てつづき)をとられたのであつた。347又(また)初稚姫(はつわかひめ)は神(かむ)素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)が八人(やたり)の乙女(おとめ)を一柱(ひとはしら)も残(のこ)さず、348敵(てき)の牙城(がじやう)に使(つか)はし玉(たま)ひし尊(たふと)き清(きよ)き大御心(おほみこころ)に感激(かんげき)し、349如何(いか)にもして、350八人(やたり)乙女(おとめ)の尽(つく)し玉(たま)ひたる如(ごと)き神務(しんむ)に従事(じゆうじ)せばやと、351時(とき)の至(いた)るを待(ま)ちつつあつたのである。352時置師(ときおかしの)神(かみ)の杢助(もくすけ)も、353初稚姫(はつわかひめ)の健気(けなげ)なる心(こころ)に感(かん)じ、354吾(わが)子(こ)乍(なが)らも天晴(あつぱ)れなる者(もの)よと、355ひそかに感涙(かんるい)に咽(むせ)んでゐた。
356 斯(か)くの如(ごと)くにして、357愈(いよいよ)印度(ツキ)の国(くに)の大黒主(おほくろぬし)に対(たい)する言霊戦(ことたません)の準備(じゆんび)は全(まつた)く整(ととの)うたのである。358あゝ惟神(かむながら)霊(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)。
359(大正一一・一〇・二一 旧九・二 松村真澄録)
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