霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
×
設定
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
話者名の追加表示 [?]セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。[×閉じる]
表示できる章
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
ルビの表示


アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注[※]用語解説 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

脚注[*]編集用 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

外字の外周色 [?]一般のフォントに存在しない文字は専用の外字フォントを使用しています。目立つようにその文字の外周の色を変えます。[×閉じる]
現在のページには外字は使われていません

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。
【新着情報】サイトをリニューアルしました。不具合がある場合は従来バージョンをお使い下さい| サブスクのお知らせ

第七章 都率天(とそつてん)〔一〇七二〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第39巻 舎身活躍 寅の巻 篇:第2篇 黄金清照 よみ(新仮名遣い):おうごんせいしょう
章:第7章 都率天 よみ(新仮名遣い):とそつてん 通し章番号:1072
口述日:1922(大正11)年10月22日(旧09月3日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年5月5日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
イールとヨセフは、いつの間にか茫々とした大原野をさまよっていた。向こうの空から五色の雲が広がり、美しい衣装を着た二人の女神が降りてくるのが見えた。女神は一人は若く、一人は年老いていた。
よく見れば、年老いた女神は黄金姫、若い女神は清照姫であった。イールとヨセフは、女神たちを峠で襲おうとしたことを詫びた。
黄金姫は、ここは未来の夢想国で、娑婆において神様のために大活躍をすると救われる浄土だと説明した。これは神様が来るべき世界を見せてくれているのだという。
女神たちは都率天の案内をすることになった。一行は立ったまま、青空の雲の中に昇っていく。眼前には宝玉で飾られた美しい殿堂が現れた。清照姫は、これは都率天の月照彦のお宮であると説明した。
清照姫は、中に入ると一言も発してはならないと二人に気を付けた。お宮の中に入ると、四人の女神が現れて、一行四人をそれぞれ導いた。
奥殿には、紫磨黄金の肌をした神が厳然として控えていた。威厳の中になつかしみを感じる。これが月照彦命であった。月照彦命は四人を差し招いた。黄金姫が先導し、一行は殿堂の後ろにある階段を降っていく。
イールとヨセフは、いつの間にか雑草が生い茂る沼に落ち込んでいた。美しき殿堂も、女神たちの姿も見えなくなっていた。沼の岸ではタール、レーブ、ハムが現れて何か口論をしているのが見えた。
ハムは、沼の中のイールとヨセフを助けようとしたが、取り憑いている鬼が邪魔をして助けられない。どこからか宣伝歌が聞こえてくると、ハムに憑いていた鬼は消えてしまった。そしてイールとヨセフもいつの間にか沼から抜け出て、ほとりに立っていた。
二人はハムの後を追っていくと、一本の松の木に大蛇が待ち伏せているのが見えた。二人が松の木の根元を見ると、バラモン教の大黒主が首だけ出して埋められている。大黒主は、天地の神の罰を受けているのだと説明し、二人に早く三五教に改心した方がよい、と勧めた。
また宣伝歌が聞こえてきた。大黒主の体は地面から抜け出て浮き上がると、大蛇に飲まれてしまった。大蛇は雲を起こしてどこかへ去って行った。
二人が気が付くと、谷底の河原に半身が埋まっており、三五教の照国別宣伝使一行に介抱されているところであった。
イールとヨセフは、黄金姫と清照姫を襲って逆に谷底に投げ込まれた一件を物語り、宣伝使たちに付いていくことになったが、なんとなく威光に打たれて恐ろしくなり、隙を見て逃げ出してしまった。
照国別は道端の古い祠で一夜を明かすことにした。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2022-11-17 12:00:34 OBC :rm3907
愛善世界社版:91頁 八幡書店版:第7輯 313頁 修補版: 校定版:95頁 普及版:38頁 初版: ページ備考:
001 紫色(むらさきいろ)(たけ)(みじか)芝草(しばくさ)一面(いちめん)大地(だいち)()(しげ)り、002(いは)もなければ(たか)()もない茫々(ばうばう)たる大原野(だいげんや)に、003(あか)(しろ)()などの(ちひ)さき(はな)(ほし)のやうに()()ちてゐる。004(そら)紺碧(こんぺき)(くも)(ただよ)ひ、005太陽(たいやう)(かげ)も、006太陰(たいいん)姿(すがた)()えねども、007(なん)とはなしに爽快(さうくわい)気分(きぶん)(ただよ)ふ、008(つゆ)(たま)(ひか)野原(のはら)をヒヨロリヒヨロリと(とほ)つてゐる二人(ふたり)(をとこ)009四辺(あたり)光景(くわうけい)現界(げんかい)とはどこともなく(ちが)つてゐるに不審(ふしん)(おこ)し、010茫然(ばうぜん)として(あし)(とど)め、
011イール『オイ、012ヨセフ、013何時(いつ)()にこんな(ところ)吾々(われわれ)両人(りやうにん)はやつて()たのだらうか、014河鹿(かじか)(たうげ)細谷路(ほそたにみち)母娘(おやこ)二人(ふたり)(をんな)巡礼(じゆんれい)出会(であ)ひ、015谷底(たにそこ)()つて(はう)られたと(おも)つたが、016あとは夢現(ゆめうつつ)017如何(どう)してこんな(ところ)如何(どう)いふ手続(てつづ)きをしてやつて()たのか合点(がつてん)がいかぬ。018貴様(きさま)(なに)記憶(きおく)(のこ)つてはゐはせぬかな』
019ヨセフ『(おれ)記憶(きおく)(のこ)つてゐるのは(ほか)でもない、020(ゆめ)ばかりだ。021河鹿(かじか)(たうげ)母娘(おやこ)巡礼(じゆんれい)()うたと(おも)つたのは、022あれこそ本当(ほんたう)(ゆめ)だ、023ここが本当(ほんたう)現実(げんじつ)世界(せかい)だ、024現界(げんかい)(ゆめ)浮世(うきよ)といふのだから、025現界(げんかい)にあつた(こと)(みな)(ゆめ)だよ。026(いよいよ)吾々(われわれ)(みたま)故郷(こきやう)現実(げんじつ)世界(せかい)(かへ)つて()た、027こんな結構(けつこう)(ところ)()()極楽(ごくらく)(あま)(かぜ)をソヨソヨとうけ(なが)ら、028(たれ)(はばか)(ところ)もなく気儘(きまま)旅行(りよかう)してるのは愉快(ゆくわい)ぢやないか。029現界(げんかい)のやうに此処(ここ)(たれ)領分(りやうぶん)だ、030何某(なにがし)土地(とち)だとせせつこましい区劃(くくわく)をうけてるよりも、031(なん)制縛(せいばく)もないこんな花園(はなぞの)逍遥(せうえう)するのは、032到底(たうてい)現界人(げんかいじん)(ゆめ)にだも()らざる(ところ)だ。033アヽ有難(ありがた)い、034仮令(たとへ)(ゆめ)にしても(この)(ゆめ)(せん)(ねん)(まん)(ねん)()らせ()くないワ』
035イール『オイあれを()よ、036(むか)ふの(そら)を、037(なん)だか(めう)(くも)()たぢやないか。038(いつ)分間(ぷんかん)(さき)にはホンの(まり)のやうな斑点(はんてん)西北(せいほく)(そら)にパツと(あら)はれたと(おも)()もなく、039追々(おひおひ)あの(とほ)膨脹(ばうちやう)し、040五色(ごしき)(くも)(あざや)かになつて()て、041(おれ)(たち)(かほ)までに五色(ごしき)光彩(くわうさい)(かがや)(はじ)めたぢやないか』
042 五色(ごしき)(くも)()()満天(まんてん)(ひろ)がり、043(うる)はしき衣裳(いしやう)()けたる二人(ふたり)女神(めがみ)044一人(ひとり)年老(としお)一人(ひとり)(わか)く、045五色(ごしき)盛裳(せいしやう)をこらして、046(くも)()つて此方(こちら)(むか)つて(くだ)(きた)様子(やうす)であつた。047二人(ふたり)()つてゐる紫野(むらさきの)原野(げんや)はいつとはなしに(てん)浮上(うきあが)つた(ごと)(かん)ぜられ、048(くも)(さが)つたか()(あが)つたか、049区画(くくわく)のつかないやうな塩梅(あんばい)で、050いつのまにか二人(ふたり)女神(めがみ)二人(ふたり)(まへ)立現(たちあら)はれた。051よくよく()れば河鹿(かじか)(たうげ)谷底(たにそこ)()げすてて()つた、052二人(ふたり)母娘(おやこ)である。053イール、054ヨセフは不意(ふい)対面(たいめん)打驚(うちおどろ)き、055(かしら)()げ、
056イール『これはこれは黄金姫(わうごんひめ)さま(まこと)()無礼(ぶれい)(いた)しました。057どうぞお(ゆる)(くだ)さいませ』
058ヨセフ『あなたは清照姫(きよてるひめ)さま、059こんな(たふと)(かみ)さまとは()らずに()無礼(ぶれい)(いた)しました。060どうぞ(ゆる)して(くだ)さいませ』
061黄金姫(わうごんひめ)(その)(ことわ)りを()はれては(こま)ります。062(わたくし)こそ(をんな)のくせに、063あられもない荒男(あらをとこ)谷川(たにがは)()()んだり、064イヤもう()無礼(ぶれい)ばかり(いた)しました』
065清照姫(きよてるひめ)(わたくし)(わか)(をんな)()(もつ)て、066荒男(あらをとこ)()()むなどと乱暴(らんばう)なことを(いた)しましたが、067どうぞ(ゆる)して(くだ)さい』
068イール『ハイ有難(ありがた)御座(ござ)います。069(しか)(なが)らここは(なん)といふ(ところ)御座(ござ)いますか、070一向(いつかう)合点(がつてん)(まゐ)りませぬが』
071黄金姫(わうごんひめ)『ここは未来(みらい)夢想国(むさうこく)ですよ。072あなたが此処(ここ)()たのは、073娑婆(しやば)(おい)(かみ)さまの(ため)大活動(だいくわつどう)をなし、074(かみ)(めぐみ)()つてかやうな天国(てんごく)浄土(じやうど)(すく)はれたのです。075(たがひ)にこんな結構(けつこう)なことはありませぬ、076(よろこ)(まを)します』
077イール『吾々(われわれ)両人(りやうにん)現界(げんかい)(おい)て、078ロクなことは(ひと)つもやらず、079何一(なにひと)(かみ)さまの(ため)にお(やく)()つた(こと)はありませぬ。080それに()やうな(ところ)(すく)はれるとは合点(がつてん)()きませぬ、081ヨモヤ人違(ひとちがひ)では御座(ござ)いますまいかな』
082黄金姫(わうごんひめ)『まだお(まへ)さまは、083今日(こんにち)(ところ)では、084これといふ手柄(てがら)(ひと)つもしてゐない。085どちらかと()へば(わる)(こと)(はう)(おほ)いので、086公平(こうへい)(かみ)さまのお(さば)きに()へば、087こんな(ところ)()身分(みぶん)ぢやない、088吾々(われわれ)だつて(その)(とほ)りです。089(しか)(なが)(かみ)さまは過去(くわこ)現在(げんざい)未来(みらい)をお見透(みとう)しだから、090(まへ)さまがこれから現界(げんかい)にをつて、091(ぜん)(おこな)ひをなし、092現界(げんかい)()つてから(あと)(きた)るべき世界(せかい)一寸(ちよつと)のぞかして(もら)うてゐるのですよ』
093ヨセフ『まだこれから(ぜん)をなす(ため)に、094()やうな(ところ)へよせて(いただ)くとは、095合点(がつてん)()きませぬ。096天晴(あつぱ)()(なか)(こう)()てた(うへ)のことなれば、097いざ()らず、098吾々(われわれ)のやうな(けが)れた(みたま)()やうな(ところ)()るとは、099如何(どう)しても合点(がつてん)がいきませぬ、100コリヤ(ゆめ)ではありますまいかな』
101黄金姫(わうごんひめ)(ゆめ)(どころ)現実(げんじつ)です。102それでもお(まへ)さまが、103これから(さき)()くない(こと)をしようものなら、104キツとこんな結構(けつこう)(ところ)へは()られない、105これと反対(はんたい)(ところ)()かねばなりませぬ。106サアこれから(わたし)が、107都率天(とそつてん)世界(せかい)案内(あんない)して()げよう』
108両人(りやうにん)『ハイ有難(ありがた)う』
109とさしうつむく。110自分(じぶん)()つてゐた地上(ちじやう)は、111フワリフワリと何処(どこ)ともなく浮上(うきあが)るやうになつて()た。112そして()(にん)一行(いつかう)()つた(まま)113青雲(あをくも)(そら)()がけて(のぼ)()く。
114 ()れば、115(たちま)眼前(がんぜん)(あら)はれた朱欄(しゆらん)碧瓦(へきぐわ)(うる)はしき殿堂(でんだう)116まはりは紅色(べにいろ)玉垣(たまがき)をめぐらし、117金銀(きんぎん)(すな)一面(いちめん)()きつめられ、118ダイヤモンドの(すな)所々(ところどころ)(まじ)つて、119銀河(ぎんが)(ごと)(かがや)いてゐる。120二人(ふたり)(ゆめ)かとばかり(かほ)見合(みあは)せ、121呆気(あつけ)にとられて()た。
122清照姫(きよてるひめ)『コレ両人(りやうにん)さま、123ここは都率天(とそつてん)月照彦(つきてるひこ)さまのお(みや)御座(ござ)います。124これからは(なに)()ふことは出来(でき)ませぬぞえ、125吾々(われわれ)二人(ふたり)(あと)についてお()でなさい。126(かみ)さまが(なん)仰有(おつしや)つても、127返事(へんじ)をしてはなりませぬ。128(かみ)さまと人間(にんげん)とは階級(かいきふ)(ちが)ひますから、129(かみ)さまの思召(おぼしめし)()くばかりで一口(ひとくち)()返事(へんじ)することはなりませぬ。130(もの)()ひたくば(この)(もん)をくぐる(まで)()うておきなさい。131(この)(もん)をくぐるや(いな)や、132仮令(たとへ)如何(いか)なる(もの)()うても(ただ)(うつ)むいてお辞儀(じぎ)さへして()れば()いのだから』
133イール『ハイ(かしこ)まりました。134(なん)(おも)うても本当(ほんたう)にはしられませぬワ。135本当(ほんたう)(わたし)斯様(かやう)(ところ)へ、136未来(みらい)とやらに(すく)はれるでせうか』
137黄金姫(わうごんひめ)(ただ)(かみ)さまの(あふ)せを(うけたま)はり、138(その)(とほ)遵奉(じゆんぽう)して()りさへすれば、139未来(みらい)斯様(かやう)結構(けつこう)(ところ)へお(まゐ)りが出来(でき)ます。140何事(なにごと)()つちやなりませぬぞえ』
141イール『ハイこれ(かぎ)(まを)しませぬ。142オイ、143ヨセフお(まへ)(いま)(うち)にお(たづ)ねしておくがいいぞ。144(この)門内(もんない)這入(はい)れば最早(もはや)言論(げんろん)機関(きくわん)使用(しよう)することは出来(でき)ないから』
145 ヨセフは(かしこ)まり、146(しづか)(くび)(かたむ)けたきり、147一言(ひとこと)(はつ)しない。148黄金姫(わうごんひめ)149清照姫(きよてるひめ)無言(むごん)(まま)150門番(もんばん)目礼(もくれい)し、151(しづか)(おく)(おく)へと(すす)()る。
152 嚠喨(りうりやう)たる音楽(おんがく)(ひび)何処(いづこ)ともなく(きこ)(きた)り、153芳香(はうこう)四辺(しへん)(くん)じ、154門内(もんない)内庭(うちには)には白蓮華(しろれんげ)(はな)()きほこり、155牡丹(ぼたん)白梅(しらうめ)薔薇(ばら)(とう)(かき)(その)(えん)(きそ)ひ、156現界(げんかい)()たこともないやうな(うつく)しき(はね)小鳥(ことり)は、157(さはや)かな(こゑ)()して、158天国(てんごく)(はる)(うた)うてゐる。159黄金(わうごん)玉盃(たまもひ)()にして黄金色(わうごんしよく)衣類(いるゐ)()けた(うる)はしき女神(めがみ)160白装束(しろしやうぞく)(くれなゐ)(はかま)にて、161()(にん)しづしづと()(むか)玉盃(たまもひ)より(むらさき)(いろ)したる(みづ)(ゆび)にぬらして、162一人(ひとり)々々(ひとり)163(くちびる)にひたす。164(その)(あぢ)()(かほ)りと()ひ、165(なん)とも(たと)へやうのなきものである。166四柱(よはしら)女神(めがみ)()(にん)(みちび)いて奥深(おくふか)(すす)()る。
167 奥殿(おくでん)(ふか)(すす)()り、168正面(しやうめん)(なが)むれば、169金銀(きんぎん)(もつ)てちりばめたる須弥壇(しゆみだん)(うへ)に、170紫磨(しま)黄金(わうごん)(はだへ)をあらはし、171儼然(げんぜん)として(ひか)(たま)一柱(ひとはしら)(かみ)があつた。172やさしみのある(うち)にどこともなく威厳(ゐげん)(そな)はつて、173(おもて)()けるもまばゆいやうな心持(こころもち)がすると(とも)に、174(なん)ともいへぬ(なつ)かしみがした。175(この)(かみ)月照彦(つきてるひこの)(みこと)であつた。176()(にん)をゆかしげに()やり、177黄金(わうごん)御手(みて)()べて、178膝元(ひざもと)()たれと(まね)かれる。179左右(さいう)(ひか)へたる沢山(たくさん)童子(どうじ)()種々(いろいろ)(はな)(たづさ)へ、180無言(むごん)のまましとやかに須弥壇(しゆみだん)(まへ)()(くる)うてゐる。181馥郁(ふくいく)たる芳香(はうかう)美妙(びめう)音楽(おんがく)はたえず鼻耳(びじ)をつき、182燦爛(さんらん)たる殿内(でんない)(ひかり)()(あたら)しく(てら)すのみである。
183 黄金姫(わうごんひめ)後振返(あとふりかへ)り、184(さん)(にん)手招(てまね)きする。185(さん)(にん)無言(むごん)のまま黄金姫(わうごんひめ)(あと)(したが)()けば(むらさき)(いろ)(ただよ)(まる)(あな)が、186殿堂(でんだう)(うら)より、187(ななめ)(ひく)穿(うが)たれ、188(むらさき)階段(かいだん)がついてゐる。189黄金姫(わうごんひめ)はつかつかと階段(かいだん)(くだ)()く。190(さん)(にん)(その)(あと)(したが)つて際限(さいげん)もなく(くだ)()けば、191そこに雑草(ざつさう)(しげ)(あし)()えた(ぬま)(よこ)たはつて()る。
192 二人(ふたり)何時(いつ)()にか(この)(ぬま)(なか)におち()んでゐた。193(あま)(ふか)からね(ども)194直立(ちよくりつ)して(くち)のあたり(まで)(みづ)がついて()る。195(すこ)しく(かぜ)()いて(なみ)(たか)くなれば、196(はな)をおそひ、197息苦(いきぐる)しくなつて()る。198黄金姫(わうごんひめ)199清照姫(きよてるひめ)如何(いか)にと、200四辺(あたり)()(ども)201(その)姿(すがた)だになく、202今迄(いままで)(うる)はしかりし殿堂(でんだう)(けむり)(ごと)()()せ、203(ただ)(あし)()(しげ)(ぬま)(うへ)秋風(あきかぜ)()きわたる(その)(さび)しさ。
204 ()かる(ところ)何処(いづこ)ともなく、205レーブ、206タールの両人(りやうにん)あわただしく(はし)(きた)り、207(ぬま)のまはりに()つて、208二人(ふたり)()()び、
209レーブ、タール(はや)此方(こちら)(きた)れ』
210差招(さしまね)く。211イール、212ヨセフの両人(りやうにん)()(もが)き、213二人(ふたり)(そば)(およ)()かむとすれ(ども)214如何(どう)したものか二人(ふたり)(あし)沼底(ぬまそこ)漆喰(しつくひ)(ごと)()ひつけられ、215身動(みうご)きもならず、216(かぜ)(あふ)られて、217時々(ときどき)(たか)(なみ)鼻目(びもく)のあたりをおそひ(きた)り、218(くるし)(かぎ)りなし。219二人(ふたり)(こゑ)もえ()げず、220(くるし)(もだ)えて()ると、221何処(どこ)ともなく、222ハムはレーブ、223タールの(まへ)(あら)はれて、224(さん)(にん)はここに何事(なにごと)口論(こうろん)(はじ)()した。225イール、226ヨセフの両人(りやうにん)(ぬま)(なか)にて(ものう)げに(さん)(にん)(あらそ)ひを(なが)めてゐる。227ハムの(うしろ)には(くち)(みみ)まで()けた赤裸(まつぱだか)赤鬼(あかおに)がついてゐた。228(しばら)くすると、229レーブ、230タールの両人(りやうにん)(ぬま)(つつみ)一目散(いちもくさん)東南(とうなん)さして(はし)りゆく。231ハムは二人(ふたり)(ぬま)(なか)(くるし)んでゐるのを()て、232(たす)けやらむと、233赤裸(まつぱだか)となり(ぬま)(なか)()びこまむとすれ(ども)234(うしろ)()つた赤鬼(あかおに)が、235グーツと首筋(くびすぢ)(つか)んで(はな)さないので、236ハムは一生(いつしやう)懸命(けんめい)()をもがいてゐる。237イール、238ヨセフの両人(りやうにん)は、239(いき)もたえだえになつて、240(はや)(たす)けてくれよ………と(さけ)ばむとすれ(ども)241如何(いか)にしけむ、242一言(ひとこと)(こゑ)()なかつた。243何処(どこ)ともなしに宣伝歌(せんでんか)(こゑ)中空(ちうくう)(きこ)えて()る。244(この)(こゑ)()くと(とも)にハムについてゐた(おに)姿(すがた)(けむり)()えた。245ハムはレーブ、246タールの()()つた(あと)()うて、247地響(ぢひびき)させ(なが)(かへ)()く。
248 二人(ふたり)(この)宣伝歌(せんでんか)(こゑ)()くと(とも)身体(しんたい)(かる)()(あが)り、249いつの()にやら(ぬま)(ほとり)についてゐた。250そして()れた着物(きもの)何時(いつ)()にか(かわ)いてゐる。251ハテ不思議(ふしぎ)なことがあるものだなア………と両人(りやうにん)(かほ)見合(みあは)せつつ、252ハムの(はし)つた(あと)()うて駆出(かけだ)すと、253一本(いつぽん)(おほ)きな(まつ)()枝振(えだぶり)よく()つてゐて、254(ぬま)(うへ)(えだ)()れてゐる。255(その)(まつ)()見上(みあ)ぐれば、256えもいはれぬ(おそ)ろしき大蛇(をろち)三間(さんげん)ばかりの(くび)()ばして樹下(じゆか)(なが)め、257大口(おほぐち)(ひら)いて何者(なにもの)()まむとしてゐる。258二人(ふたり)(はじ)めて(くち)(ひら)き、
259イール『オイ、260ヨセフ、261大変(たいへん)ぢやないか』
262ヨセフ『如何(いか)にもイールの()(とほ)り、263(この)(まつ)()には(めう)(やつ)()るではないか。264大方(おほかた)最前(さいぜん)(さん)(にん)(この)大蛇(をろち)()まれて(しま)うたのだろ。265コリヤ、266グヅグヅしてはゐられまいぞ』
267()(なが)ら、268(まつ)根元(ねもと)をよくよく()れば、269(つち)(なか)から(くび)()えてゐる。270(うへ)には大蛇(をろち)(した)には生首(なまくび)271ハテ(いや)らしやと、272()()さうとすれ(ども)273如何(どう)したものか、274身体(しんたい)強直(きやうちよく)してビクともならぬやうになつてゐる。
275 二人(ふたり)因果腰(いんぐわごし)()め、276地中(ちちう)から()えた(くび)をよく()れば、277豈計(あにはか)らむや、278バラモン(けう)大棟梁(だいとうりやう)大黒主(おほくろぬし)である。279二人(ふたり)はビツクリして顔色(かほいろ)をかへ(なが)らあわただしく、
280イール『アヽ、281あなたは大黒主(おほくろぬし)(かみ)さまぢや御座(ござ)いませぬか。282如何(どう)してマアこんな(ところ)(くび)ばかり()してゐられます。283あれ御覧(ごらん)なさいませ、284(この)(まつ)(えだ)には大蛇(をろち)(わだかま)つて、285(いま)一口(ひとくち)()まむとしてゐるぢや御座(ござ)いませぬか、286サア(はや)くここを(わたくし)一緒(いつしよ)()げませう』
287大黒主(おほくろぬし)『ヨウ其方(そなた)はイール、288ヨセフの両人(りやうにん)289こんな(ところ)()るものではない。290(いま)(うち)(あと)引返(ひつかへ)したがよからうぞ』
291ヨセフ『引返(ひつかへ)さうと(まを)して、292何処(どこ)()つてよいやら、293(わけ)(わか)りませぬ。294して(また)あなたの(くび)から()がにじんで()りますが、295コリヤまあ如何(どう)した(わけ)ですか』
296大黒主(おほくろぬし)(わし)天地(てんち)大神(おほかみ)(ばつ)をうけ、297(この)(まつ)()(もと)(おい)て、298手足(てあし)(しば)られ、299自分(じぶん)(つく)つた配下(はいか)(おに)(ども)土中(どちう)(うづ)められ、300(この)(とほ)(くび)のみ地上(ちじやう)(あら)はし、301(たか)(からす)(あたま)をこつかれ、302毒虫(どくむし)(くび)()まれ、303こんな(くる)しい()()うてゐるのだ。304(まへ)(はや)改心(かいしん)いたして、305(まこと)(みち)立返(たちかへ)つたがよからうぞ、306(わし)(ごと)くなつて(しま)へばモウ駄目(だめ)だ。307まだまだこれから沢山(たくさん)苦労(くらう)をいたして(つみ)(ゆる)して(もら)へるか(もら)へぬか(わか)らぬ(ところ)だ。308(はや)三五教(あななひけう)神文(しんもん)(とな)へて(この)急場(きふば)をのがれよ』
309イール『コレは(また)310()なることを(うけたま)はります。311あなたはバラモン(けう)大教主(だいけうしゆ)であり(なが)ら、312(なに)(もつ)三五教(あななひけう)神文(しんもん)(とな)へと(まを)されますか、313(すこ)しも合点(がつてん)(まゐ)りませぬ』
314 大黒主(おほくろぬし)(くる)しげに、
315大黒主現界(げんかい)(おい)ては(いま)(とき)めく(いきほひ)なれども、316未来(みらい)(わが)霊魂(れいこん)(この)(とほ)り、317(まつ)(した)(おい)無限(むげん)責苦(せめく)をうけねばならぬことになつてゐるのだ。318三五教(あななひけう)(かみ)より()でたる(をしへ)319(その)()(をしへ)(みな)枝神(えだがみ)人間(にんげん)(つく)つた(をしへ)であるから、320()神慮(しんりよ)(ほど)()からない。321否々(いやいや)神慮(しんりよ)違反(ゐはん)した(をしへ)(いた)して()るから、322バラモン(けう)代表者(だいへうしや)たる(この)(はう)()やうな責苦(せめく)()うてゐるのだ。323とはいふものの、324(われ)肉体(にくたい)(ふく)守護神(しゆごじん)(いきほ)中々(なかなか)猛烈(まうれつ)にして到底(たうてい)容易(ようい)改心(かいしん)(いた)さない。325改心(かいしん)さへ(いた)したらこんな苦悩(くなう)(まぬが)るるのだが、326大黒主(おほくろぬし)肉体(にくたい)がどうしても改心(かいしん)してくれぬので、327本尊(ほんぞん)(この)(はう)がこんな責苦(せめく)にあふのだ。328百年後(ひやくねんご)大黒主(おほくろぬし)行末(ゆくすゑ)は、329(すなは)(いま)有様(ありさま)であるぞ。330サア、331(はや)くここを立去(たちさ)れ』
332 ()かる(ところ)へ、333(また)もや三五教(あななひけう)宣伝歌(せんでんか)がかすかに(きこ)え、334宣伝使(せんでんし)(さん)(にん)供人(ともびと)(とも)(ぬま)(ほとり)(あら)はれて()た。335(この)(こゑ)()くと(とも)に、336大黒主(おほくろぬし)(からだ)地上(ちじやう)へガワとばかりに浮上(うきあが)つた。337樹上(じゆじやう)大蛇(をろち)大黒主(おほくろぬし)大口(おほぐち)()けて、338グツと一口(ひとくち)()んだまま、339黒雲(くろくも)呼起(よびおこ)し、340一目散(いちもくさん)中天(ちうてん)姿(すがた)をかくして(しま)つた。
341 二人(ふたり)宣伝使(せんでんし)姿(すがた)()るより、342フツと()()きそこらあたりを()れば、343河鹿(かじか)(たうげ)谷底(たにそこ)(おちい)り、344舞埃(まひごみ)(すな)(なか)半身(はんしん)(うづ)めてゐたことが(わか)つた。345(たに)(なが)れはゴウゴウと四辺(あたり)(ひび)いてゐる。346()をおちつけてよくよく()れば、347照国別(てるくにわけ)宣伝使(せんでんし)(はじ)め、348梅公(うめこう)349照公(てるこう)350国公(くにこう)(さん)(にん)二人(ふたり)身体(からだ)介抱(かいほう)し、351一生(いつしやう)懸命(けんめい)に、352魂呼(たまよ)びの神業(かむわざ)(しう)してゐたことに()()いた。
353 イール、354ヨセフの両人(りやうにん)宣伝使(せんでんし)一行(いつかう)(むか)黄金姫(わうごんひめ)一行(いつかう)無礼(ぶれい)(くは)へて、355(この)谷底(たにそこ)()()まれた一条(いちでう)より、356鬼熊別(おにくまわけ)(やと)はれて、357蜈蚣姫(むかでひめ)358小糸姫(こいとひめ)所在(ありか)(たづ)(もと)めつつあることを(つまびらか)物語(ものがた)り、359ここに翻然(ほんぜん)として(さと)り、360宣伝使(せんでんし)(したが)つて、361(たに)(くだ)り、362山路(やまぢ)()で、363トボトボと(あと)(したが)()く。364二人(ふたり)(なん)となく、365宣伝使(せんでんし)威光(ゐくわう)()たれて、366(おそ)ろしくなり、367あたり(やみ)(つつ)まれし(ころ)368(すき)(うかが)うて()()せて(しま)つた。
369 照国別(てるくにわけ)道端(みちばた)(ふる)(ほこら)(まへ)に、370(さん)(にん)供人(ともびと)(とも)一夜(いちや)()かすこととした。
371大正一一・一〇・二二 旧九・三 松村真澄録)
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【メールアドレス
合言葉「みろく」を入力して下さい→  
霊界物語ネットは飯塚弘明が運営しています。【メールアドレス】 / 動作に不具合や誤字脱字等を発見されましたら是非お知らせ下さるようお願い申し上げます。 / / 本サイトの著作権(デザイン、プログラム、凡例等)は飯塚弘明にあります。出口王仁三郎の著作物(霊界物語等)の著作権は保護期間が過ぎていますのでご自由にお使いいただいて構いません。ただし一部分を引用するのではなく、本サイト掲載の大部分を利用して電子書籍等に転用する場合には、必ず出典と連絡先を記して下さい。→「本サイト掲載文献の利用について」 / 出口王仁三郎の著作物は明治~昭和初期に書かれたものです。現代においては差別的と見なされる言葉や表現もありますが、当時の時代背景を鑑みてそのままにしてあります。 / プライバシーポリシー
(C) 2007-2024 Iizuka Hiroaki