霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一三章 浮木(うきき)の森(もり)〔一〇七八〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第39巻 舎身活躍 寅の巻 篇:第4篇 浮木の岩窟 よみ(新仮名遣い):うききのがんくつ
章:第13章 浮木の森 よみ(新仮名遣い):うききのもり 通し章番号:1078
口述日:1922(大正11)年10月28日(旧09月9日) 口述場所: 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年5月5日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一部の章はAIによって要約を作成しています。[×閉じる]:
印度と波斯の国境にある大原野・浮木ケ原の森蔭で、黄金姫と清照姫は四方の風景を眺めながら休息していた。二人は鬼熊別の館に一刻も早く到着し、天地の真理を説いて三五教に改心させようと話していた。
そこへバラモン教の大足別が部下を率いてやってきて、母娘を取り囲む。母娘は金剛杖をもって立ち向かうが、衆寡的せず覚悟を固めた。すると、数十頭の狼の集団がやってきてバラモン軍に襲い掛かった。
その勢いにバラモン軍は逃げ散って行った。狼たちは敵を追い払うと、母娘に謹慎の態度をとり、ひと声うなると煙のように消え失せてしまった。森のかなたからは涼しい宣伝歌が聞こえてくる。
宣伝歌の主は国公だった。国公は母娘に気が付き、声をかけた。そして、自分が連れているバラモン教徒たちは、すでに三五教に帰順したから心配ないと言い、彼らの先日の無礼を詫びた。
国公は、黄金姫母娘の護衛を申し出るが、黄金姫母娘は、照国別たちが清春山の岩窟で危難にあっているから引き返して加勢に行くようにと命じた。国公は、ハム、イール、ヨセフ、タールを引き連れて、清春山に駒を返した。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2022-11-20 09:30:06 文字数:4479 OBC :rm3913
愛善世界社版:181頁 八幡書店版:第7輯 345頁 修補版: 校定版:191頁 普及版:77頁 初版: ページ備考:
001印度(つき)と波斯(ふさ)との国境(くにざかひ)
002天地(てんち)の神(かみ)の御稜威(みいづ)をば
003アフガニスタンの大原野(だいげんや)
004浮木(うきき)ケ原(はら)の森蔭(もりかげ)に
005佇(たたず)む母娘(おやこ)の宣伝使(せんでんし)
006斎苑(いそ)の館(やかた)をたち出(い)でて
007ハルナの都(みやこ)に立(た)ち向(むか)ふ
008その御姿(みすがた)ぞ雄々(をを)しけれ
009秋野(あきの)の木(こ)の葉(は)色(いろ)づきて
010黄金姫(わうごんひめ)や清照姫(きよてるひめ)
011神(かみ)の命(みこと)の御(おん)気色(けしき)
012実(げ)に麗(うらら)かに照妙(てるたへ)の
013さながら小春(こはる)の如(ごと)くなり。
014 母娘(おやこ)の宣伝使(せんでんし)とは云(い)はずと知(し)れた黄金姫(わうごんひめ)、015清照姫(きよてるひめ)である。016清照姫(きよてるひめ)は四方(よも)の風景(ふうけい)を眺(なが)め乍(なが)ら、
017清照姫『お母(かあ)さま、018随分(ずゐぶん)お足(あし)が疲(つか)れたでせう。019河鹿(かじか)峠(たうげ)で悪漢(わるもの)に出会(であ)つてから最早(もはや)十日(とをか)ばかり山坂(やまさか)を無難(ぶなん)に此処(ここ)まで参(まゐ)りました。020これも全(まつた)く神(かみ)様(さま)の御(ご)守護(しゆご)の厚(あつ)き所以(ゆゑん)で御座(ござ)いませう』
021黄金姫(わうごんひめ)『私(わし)は何(なん)と云(い)つても年(とし)をとつた丈(だけ)世(よ)の中(なか)の辛酸(しんさん)を嘗(な)め尽(つく)して居(ゐ)るから別(べつ)に何(なん)とも……これ位(くらゐ)の旅行(りよかう)は苦(く)にもならぬが、022年若(としわか)きそなたは随分(ずゐぶん)苦痛(くつう)を感(かん)じたであらう。023早(はや)くお父(とう)さまに会(あ)はして上(あ)げ度(た)いは胸一杯(むねいつぱい)だが、024肝腎要(かんじんかなめ)の信仰(しんかう)を異(こと)にして居(ゐ)るのだから思想(しさう)上(じやう)から云(い)へば矢張(やつぱり)敵味方(てきみかた)の仲(なか)、025三五教(あななひけう)の教(をしへ)には天ケ下(あめがした)には他人(たにん)もなければ鬼(おに)もない、026何(いづ)れも尊(たふと)き神(かみ)の御子(みこ)ぢやと教(をし)へられてある、027けれどもバラモンの教(をしへ)はさう広(ひろ)く道理(だうり)が判(わか)つてゐないのだから折角(せつかく)親子(おやこ)の対面(たいめん)をした所(ところ)で其(その)結果(けつくわ)は如何(どう)なるやら判(わか)つたものぢやない。028これを思(おも)へば嬉(うれ)しいやら悲(かな)しいやらテンと心(こころ)が落(お)ち着(つ)きませぬ』
029清照姫(きよてるひめ)『お母(かあ)さま、030決(けつ)してそんな心配(しんぱい)は要(い)りませぬ。031三五教(あななひけう)の仁慈(じんじ)無限(むげん)の言霊(ことたま)を以(もつ)て如何(いか)なる鬼(おに)大蛇(をろち)曲神(まがかみ)も言向和(ことむけやは)さねばならぬ吾々(われわれ)の天職(てんしよく)、032況(ま)して血(ち)を分(わ)けた親子(おやこ)夫婦(ふうふ)、033如何(いか)に頑強(ぐわんきやう)な父上(ちちうへ)ぢやとて、034吾(われ)等(ら)母娘(おやこ)が熱心(ねつしん)に誠(まこと)を以(もつ)て説(と)きつければ、035屹度(きつと)改心(かいしん)して下(くだ)さるでせう』
036黄金姫(わうごんひめ)『お前(まへ)も一(ひと)つ島(じま)のクヰーンと迄(まで)なつた丈(だけ)の腕前(うでまへ)を持(も)つて居(ゐ)るのだから大丈夫(だいぢやうぶ)とは思(おも)へども、037此(この)思想(しさう)上(じやう)の問題(もんだい)ばかりはさう易々(やすやす)と動(うご)かせるものではない。038何(なに)は兎(と)もあれ神(かみ)様(さま)にお願(ねが)ひ申(まを)して一(いち)時(じ)も早(はや)く夫(をつと)の館(やかた)に到着(たうちやく)し、039御(ご)神力(しんりき)を以(もつ)て天地(てんち)の真理(しんり)をお話(はな)し申上(まをしあ)げ、040悪逆(あくぎやく)無道(ぶだう)のバラモン教(けう)を脱退(だつたい)……否々(いないな)改良(かいりやう)せなくてはなりませぬが、041これこそ私(わたし)にとつては非常(ひじやう)に重大(ぢうだい)な任務(にんむ)だ。042神(かむ)素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)様(さま)の御心(みこころ)は実(じつ)に寛仁(くわんじん)大度(たいど)、043いやもう有難(ありがた)うて、044涙(なみだ)がこぼれます。045鬼熊別(おにくまわけ)の妻(つま)たり、046娘(むすめ)たる吾(われ)等(ら)を見込(みこ)んで此(この)大任(たいにん)を仰(あふ)せつけられた其(その)襟度(きんど)の広(ひろ)い事(こと)、047到底(たうてい)凡神(ぼんしん)の企(くはだ)て及(およ)ぶ所(ところ)でない。048ここ迄(まで)良(よ)く人(ひと)を信(しん)じ玉(たま)ふ其(その)御心(みこころ)に対(たい)しても、049仮令(たとへ)吾(われ)等(ら)母娘(おやこ)が如何(いか)なる運命(うんめい)に陥(おちい)るとも此(この)大神(おほかみ)の御心(みこころ)は背(そむ)く事(こと)は出来(でき)ませぬ』
050清照姫(きよてるひめ)『左様(さやう)で御座(ござ)います。051たとへ父上(ちちうへ)様(さま)がお怒(いか)り遊(あそ)ばしてお母(かあ)さまと私(わたし)をお殺(ころ)し遊(あそ)ばしても、052決(けつ)してバラモン教(けう)へ帰順(きじゆん)する事(こと)は出来(でき)ませぬ。053お母(かあ)さまも其(その)御(ご)決心(けつしん)で御座(ござ)いませうなあ』
054黄金姫(わうごんひめ)『それは勿論(もちろん)のことだ。055仁慈(じんじ)無限(むげん)の大神(おほかみ)様(さま)の仰(あふ)せには背(そむ)かれぬ。056どこ迄(まで)も誠(まこと)一(ひと)つを立(た)てぬかねばなりませぬ』
057 斯(か)く話(はな)す折(をり)しも、058馬(うま)に跨(また)がり数十(すうじふ)人(にん)の部下(ぶか)を率(ひき)ゐて、059浮木(うきき)ケ原(はら)の宝(たから)の森(もり)を目蒐(めが)けて進(すす)み来(く)るバラモン教(けう)の宣伝使(せんでんし)があつた。060矢庭(やには)に馬(うま)を飛(と)び下(お)り同勢(どうぜい)を引(ひき)つれ、061二人(ふたり)が休息(きうそく)せる前(まへ)に堂々(だうだう)と進(すす)み来(きた)り眼(め)を怒(いか)らして、
062(大足別)『此(この)方(はう)はバラモン教(けう)の大黒主(おほくろぬし)様(さま)の御(ご)家来(けらい)大足別(おほだるわけ)と云(い)ふ宣伝使(せんでんし)だ。063レーブの注進(ちゆうしん)に依(よつ)て汝(なんぢ)等(ら)母娘(おやこ)を召捕(めしと)らむ為(た)め部下(ぶか)を引率(ひきつ)れここに立向(たちむか)うたり。064サア尋常(じんじやう)に手(て)を廻(まは)せよ』
065と大音声(だいおんじやう)に突立(つつた)ち乍(なが)ら呶鳴(どな)つて居(ゐ)る。066瞬(またた)く間(うち)に数十(すうじふ)人(にん)の部下(ぶか)は母娘(おやこ)の周囲(しうゐ)を満月(まんげつ)の形(かたち)に取(と)り囲(かこ)んで了(しま)つた。067清照姫(きよてるひめ)は笠(かさ)を脱(ぬ)ぎ棄(す)て花(はな)の如(ごと)き顔(かんばせ)をさらし乍(なが)ら、
068清照姫『妾(わらは)は三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)、069心(こころ)も清(きよ)く照(て)り渡(わた)る清照姫(きよてるひめ)であるぞよ。070これなるは清照姫(きよてるひめ)の母(はは)、071黄金(わうごん)世界(せかい)を建設(けんせつ)する大任(たいにん)を帯(お)び給(たま)ふ黄金姫(わうごんひめ)だ。072汝(なんぢ)大足別(おほだるわけ)とやら其(その)気張(きば)り様(やう)は何事(なにごと)だ。073も少(すこ)し肩(かた)を削(けづ)り腰(こし)を屈(かが)めおだやかに掛合(かけあ)つては如何(どう)だ。074頭抑(あたまおさ)へに女(をんな)と侮(あなど)つて抑(おさ)へつけようと致(いた)すのはバラモン教(けう)の教理(けうり)ではあるまい。075少(すこ)しは心得(こころえ)たがよからうぞ』
076大足別(おほだるわけ)『此(この)者(もの)こそは繊弱(かよわ)き女(をんな)の分際(ぶんざい)として強力(がうりき)無双(むさう)の曲者(くせもの)、077レーブの注進(ちゆうしん)によつて何(なに)も彼(か)も手(て)にとる如(ごと)く判(わか)つてゐる。078到底(たうてい)一筋縄(ひとすぢなは)では行(ゆ)かぬ母娘(おやこ)の巡礼(じゆんれい)と化(ば)けたる三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)、079搦(から)め捕(と)つてハルナの都(みやこ)へ立帰(たちかへ)り、080大黒主(おほくろぬし)の神(かみ)様(さま)に御(ご)褒美(ほうび)の詞(ことば)を頂戴(ちやうだい)せむ。081者(もの)共(ども)かかれ』
082と下知(げち)すれば『オー』と応(こた)へて四方(しはう)より母娘(おやこ)を目蒐(めが)けて十手(じつて)を打振(うちふ)り打振(うちふ)り攻(せ)めかくる。083母娘(おやこ)は『心得(こころえ)たり』と金剛杖(こんがうづゑ)を水車(みづぐるま)の如(ごと)くに空気(くうき)を鳴動(めいどう)させ乍(なが)ら防(ふせ)ぎ戦(たたか)ふ勢(いきほひ)に、084何(いづ)れも辟易(へきえき)し、085遠巻(とほまき)に巻(ま)き乍(なが)ら『あれよあれよ』と口々(くちぐち)に叫(さけ)ぶのみ。086大足別(おほだるわけ)は劫(ごふ)を煮(に)やし、
087大足別『えー、088言(い)ひ甲斐(がひ)なき味方(みかた)の小童子(こわつぱ)共(ども)、089御供(ごく)にも足(た)らぬ蠅虫(はへむし)奴(め)等(ら)、090控(ひか)へ居(を)れ』
091と呶鳴(どな)りつけ長剣(ちやうけん)をスラリと引(ひき)ぬき、092母娘(おやこ)に向(むか)つて斬(き)りかくるを、093二人(ふたり)は笠(かさ)を以(もつ)て右(みぎ)に左(ひだり)に受(う)けとめ、094かい潜(くぐ)り隙(すき)を狙(ねら)つて清照姫(きよてるひめ)は敵(てき)の足(あし)を杖(つゑ)の先(さき)にて力限(ちからかぎ)りに打(うち)たたけば何条(なんでう)以(もつ)て堪(たま)るべき、095大足別(おほだるわけ)はアツと叫(さけ)んで其(その)場(ば)に顛倒(てんたふ)し目(め)をぱちつかせ呻(うめ)きゐる。096数多(あまた)の手下(てした)共(ども)は此(この)態(てい)を眺(なが)めて『素破(すは)一大事(いちだいじ)』と命(いのち)を的(まと)に武者(むしや)振(ぶ)りつく。097此(この)方(はう)は名(な)うての勇者(ゆうしや)、098一人(ひとり)も残(のこ)らず息(いき)の根(ね)を止(と)めて呉(く)れむは易(やす)けれど神(かみ)に仕(つか)ふる身(み)の上(うへ)、099仮令(たとへ)虫族(むしけら)一匹(いつぴき)でも殺(ころ)すと云(い)ふ訳(わけ)には行(ゆ)かないので、100何(いづ)れも金剛杖(こんがうづゑ)の先(さき)にて猫(ねこ)が蛇(へび)にじやれる様(やう)な態度(たいど)でチヨイチヨイと扱(あしら)つて居(ゐ)る。101かかる所(ところ)へ四五(しご)人(にん)の部下(ぶか)の注進(ちゆうしん)によつて武装(ぶさう)を整(ととの)へたるバラモン教(けう)の軍勢(ぐんぜい)、102鋭利(えいり)なる鎗(やり)を日光(につくわう)に閃(ひらめ)かし乍(なが)ら幾百千(いくひやくせん)とも限(かぎ)りなく轡(くつわ)を並(なら)べて攻(せ)め来(きた)り、103二人(ふたり)の母娘(おやこ)を十重(とへ)二十重(はたへ)に取囲(とりかこ)み、104四方(しはう)八方(はつぱう)より鎗(やり)にて突(つ)きかけ来(きた)る物凄(ものすご)さ、105流石(さすが)の母娘(おやこ)も衆寡(しうくわ)敵(てき)せず、106もう此(この)上(うへ)は天則(てんそく)を破(やぶ)り寄(よ)せ来(く)る武士(つはもの)を片端(かたつぱし)から打殺(うちころ)して呉(く)れむと覚悟(かくご)を極(きは)めし折柄(をりから)に天地(てんち)も揺(ゆる)ぐばかりの呻(うな)り声(ごゑ)、107森(もり)の木蔭(こかげ)より忽然(こつぜん)として現(あら)はれ来(きた)れる数十頭(すうじつとう)の狼(おほかみ)は敵(てき)の集団(しふだん)に向(むか)つて目(め)を怒(いか)らせ大口(おほぐち)を開(ひら)いて驀地(まつしぐら)に襲撃(しふげき)する。108其(その)早業(はやわざ)にエール将軍(しやうぐん)は部下(ぶか)を纏(まと)めて雲(くも)を霞(かすみ)と逃(に)げ散(ち)つたり。109此(この)時(とき)打倒(うちたふ)れたる大足別(おほだるわけ)の肉体(にくたい)も運(はこ)び去(さ)られて敵(てき)の影(かげ)だにも見(み)えなくなつてゐた。
110 二人(ふたり)はハツと息(いき)をつき、111森(もり)の木(こ)の間(ま)より湧(わ)き出(い)づる清水(しみづ)を掬(すく)ひて咽(のど)を湿(うるほ)してゐた。
112 数十(すうじふ)の狼(おほかみ)は敵(てき)を四方(しはう)に追(お)ひ散(ち)らし、113頭(かうべ)を下(さ)げ尾(を)を垂(た)らし乍(なが)ら謹慎(きんしん)の態度(たいど)を装(よそほ)ひつつ母娘(おやこ)が前(まへ)に現(あら)はれ、114二列(にれつ)となつて『ウー』と一声(ひとこゑ)呻(うな)ると共(とも)に煙(けむり)の如(ごと)く消(き)え失(う)せて了(しま)つた。
115 森(もり)の彼方(あなた)より何人(なにびと)とも知(し)れぬ涼(すず)しき声(こゑ)の宣伝歌(せんでんか)が聞(きこ)えて来(き)た。
116(国公)『神(かみ)が表(おもて)に現(あら)はれて
117善(ぜん)と悪(あく)とを立別(たてわ)ける
118三五教(あななひけう)の神(かみ)の道(みち)
119吾(われ)等(ら)は神(かみ)の子(こ)神(かみ)の宮(みや)
120とは云(い)ひ乍(なが)ら人(ひと)の身(み)の
121いかでか神(かみ)を審(さば)かむや
122神(かみ)は尚更(なほさら)世(よ)の人(ひと)の
123善悪(ぜんあく)正邪(せいじや)が分(わか)らうか
124身魂(みたま)の因縁(いんねん)性来(しやうらい)を
125立別(たてわ)けむとする醜司(しこつかさ)
126彼方(かなた)此方(こなた)に現(あら)はれて
127誠(まこと)の道(みち)を蹂躙(じうりん)し
128世(よ)を常暗(とこやみ)と汚(けが)し行(ゆ)く
129あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
130神(かみ)の御霊(みたま)の幸(さちは)ひて
131三五教(あななひけう)は云(い)ふも更(さら)
132バラモン教(けう)やウラル教(けう)
133教(をしへ)の道(みち)に仕(つか)へたる
134神(かみ)の司(つかさ)を悉(ことごと)く
135魂(たま)の御柱(みはしら)建(た)て直(なほ)し
136五六七(みろく)の御世(みよ)を永久(とこしへ)に
137たてさせ玉(たま)へ惟神(かむながら)
138神(かみ)に仕(つか)ふる国公(くにこう)が
139慎(つつし)み敬(いやま)ひ願(ね)ぎ奉(まつ)る。
140○
141照国別(てるくにわけ)に従(したが)ひて
142斎苑(いそ)の館(やかた)を出(い)でしより
143夜(よ)を日(ひ)に次(つ)いで河鹿山(かじかやま)
144西(にし)の峠(たうげ)に差(さ)しかかり
145不思議(ふしぎ)な事(こと)よりバラモンの
146道(みち)に仕(つか)ふる神司(かむつかさ)
147イール、ヨセフの両人(りやうにん)が
148命(いのち)を救(すく)ひ助(たす)けつつ
149照国別(てるくにわけ)や梅(うめ)照(てる)の
150後(あと)に従(したが)ひ来(きた)る折(をり)
151坂(さか)の此方(こなた)に倒(たふ)れたる
152二人(ふたり)の男(をとこ)を救(すく)へよと
153命令(めいれい)しながら出(い)でて行(ゆ)く
154後(あと)に残(のこ)りし国公(くにこう)は
155二人(ふたり)の男(をとこ)を救(すく)はむと
156立寄(たちよ)り見(み)れば此(こ)は如何(いか)に
157ガランダ国(こく)のハム初(はじ)め
158香具耶(かぐや)の彦(ひこ)の子(こ)と生(あ)れし
159タールの二人(ふたり)の物語(ものがたり)
160神(かみ)の仕組(しぐみ)と喜(よろこ)びて
161互(たがひ)に心(こころ)を打明(うちあ)かし
162三五教(あななひけう)に帰順(きじゆん)させ
163ここまで進(すす)み来(きた)りけり
164あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
165尊(たふと)き神(かみ)が現(あら)はれて
166善神(ぜんしん)邪神(じやしん)を立別(たてわ)ける
167互(たがひ)の身魂(みたま)の因縁(いんねん)を
168神(かみ)のまにまに説(と)き諭(さと)し
169救(すく)はせ玉(たま)ひし有難(ありがた)さ
170尊(たふと)き神(かみ)の御(ご)威光(ゐくわう)を
171アフガニスタンの高原地(かうげんち)
172浮木(うきき)ケ原(はら)の此(この)森(もり)に
173俄(にはか)に聞(きこ)ゆる鬨(とき)の声(こゑ)
174唯事(ただごと)ならじと一行(いつかう)が
175駒(こま)を早(はや)めてシトシトと
176ここ迄(まで)進(すす)み来(き)て見(み)れば
177さも騒(さわ)がしき鬨(とき)の声(こゑ)
178今(いま)は松(まつ)吹(ふ)く風(かぜ)となり
179四辺(あたり)に人(ひと)の影(かげ)もなし
180あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
181神(かみ)の息吹(いぶき)に退(やら)はれて
182荒振(あらぶ)る神(かみ)は逸早(いちはや)く
183逃(に)げ失(う)せたるかいぶかしや
184朝日(あさひ)は照(て)るとも曇(くも)るとも
185月(つき)は盈(み)つとも虧(か)くるとも
186仮令(たとへ)大地(だいち)は沈(しづ)むとも
187悪魔(あくま)の猛(たけ)びは強(つよ)くとも
188三五教(あななひけう)に仕(つか)へたる
189誠(まこと)を守(まも)るわれわれに
190刃向(はむか)ふ敵(てき)はあるべきぞ
191吾(われ)等(ら)は正(ただ)しき神(かみ)の御子(みこ)
192尊(たふと)き神(かみ)の生(あ)れませる
193珍(うづ)の宮居(みやゐ)ぞ何者(なにもの)か
194恐(おそ)るる事(こと)のあるべきや
195進(すす)めよ進(すす)め、いざ進(すす)め
196浮木(うきき)の森(もり)の麓(ふもと)まで
197あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
198御霊(みたま)幸(さちは)ひましませよ』
199と歌(うた)ひ乍(なが)ら母娘(おやこ)の憩(いこ)ふとは夢(ゆめ)にも知(し)らず駒(こま)を早(はや)めて進(すす)み来(く)る。
200 国公(くにこう)は駒(こま)をとどめてツカツカと二人(ふたり)の前(まへ)に現(あら)はれ、
201国公『ヤア、202貴方(あなた)は』
203黄金(わうごん)『シー』
204国公(くにこう)『黄金姫(わうごんひめ)様(さま)、205もはやお隠(かく)しには及(およ)びませぬ。206此処(ここ)へ参(まゐ)りましたタール、207ハム、208イール、209ヨセフの四(よ)人(にん)は全(まつた)く三五教(あななひけう)に心(こころ)の底(そこ)より帰順(きじゆん)致(いた)しました善人(ぜんにん)で御座(ござ)いますから、210何卒(なにとぞ)可愛(かあい)がつてやつて下(くだ)さいませ。211重々(ぢうぢう)の御(ご)無礼(ぶれい)は私(わたし)が代(かは)つてお詫(わ)び致(いた)しますから何卒(どうぞ)御(お)許(ゆる)しを願(ねが)ひます』
212黄金姫(わうごんひめ)『そなたは照国別(てるくにわけ)のお供(とも)に仕(つか)へた国公(くにこう)さまぢやないか。213照国別(てるくにわけ)様(さま)は如何(どう)なつたのだ。214心(こころ)もとなし、215早(はや)く其(その)お所在(ありか)を知(し)らしてお呉(く)れ』
216国公(くにこう)『実(じつ)の所(ところ)はタール、217ハムの両人(りやうにん)、218河鹿(かじか)峠(たうげ)の山道(やまみち)に負傷(ふしやう)を致(いた)し倒(たふ)れて居(ゐ)たので、219照国別(てるくにわけ)の宣伝使(せんでんし)は此(この)国公(くにこう)に介抱(かいほう)を命(めい)じおき、220サツサと先(さき)に立(た)つて行(ゆ)かれました。221それより群(むら)がる野馬(やば)を引捉(ひつとら)へ吾々(われわれ)一行(いつかう)五(ご)人(にん)照国別(てるくにわけ)様(さま)のお後(あと)を追(おひ)かけて此処(ここ)まで参(まゐ)りましたが、222まだお行衛(ゆくへ)が判(わか)らず、223ヒヨツとしたら私(わたくし)達(たち)が先(さき)になつたかも知(し)れませぬ』
224黄金姫(わうごんひめ)『一足先(ひとあしさき)へ出(で)た妾(わし)でさへも、225まだここ迄(まで)到着(たうちやく)した所(ところ)だから、226屹度(きつと)後(あと)からおいでになるのだらう。227清春山(きよはるやま)の岩窟(がんくつ)にバラモン教(けう)の悪神(あくがみ)共(ども)が立籠(たてこも)り国人(くにびと)を悩(なや)ますとの噂(うはさ)があるから、228大方(おほかた)照国別(てるくにわけ)の宣伝使(せんでんし)はそこへ御(お)出(いで)になつたのだらうよ』
229国公(くにこう)『これから私(わたし)は貴方(あなた)様(さま)母娘(おやこ)のお供(とも)をしてハルナの都(みやこ)まで参(まゐ)りませう、230何卒(なにとぞ)お許(ゆる)し下(くだ)さるまいか』
231黄金姫(わうごんひめ)『ウン』
232清照姫(きよてるひめ)『国公(くにこう)さま、233そんな勝手(かつて)な事(こと)は出来(でき)ませぬ。234吾々(われわれ)母娘(おやこ)は供(とも)をも許(ゆる)されず、235神(かみ)様(さま)の深(ふか)き思召(おぼしめし)あつてお使(つかひ)に参(まゐ)る者(もの)、236其方(そなた)は照国別(てるくにわけ)様(さま)のお供(とも)に仕(つか)ふるものだ。237他人(ひと)の供人(ともびと)を横取(よこど)りにしたと云(い)はれては神(かみ)様(さま)に申訳(まをしわけ)たたず、238又(また)宣伝使(せんでんし)の吾々(われわれ)として義務(ぎむ)が立(た)たない。239サア早(はや)く国公(くにこう)さま、240清春山(きよはるやま)の岩窟(がんくつ)に引返(ひきかへ)し照国別(てるくにわけ)様(さま)の危難(きなん)をお救(すく)ひなされ、241決(けつ)して吾々(われわれ)母娘(おやこ)の後(あと)へついて来(く)る事(こと)はなりませぬぞえ』
242国公(くにこう)『照国別(てるくにわけ)の宣伝使(せんでんし)は二人(ふたり)の男(をとこ)をお伴(つ)れ遊(あそ)ばします以上(いじやう)は、243国公(くにこう)一人(ひとり)居(ゐ)なくても大丈夫(だいぢやうぶ)でせう。244何(なに)を云(い)つても貴方(あなた)は女(をんな)の二人(ふたり)連(づ)れ、245魔神(まがみ)の猛(たけ)び狂(くる)ふ此(こ)の荒野(あらの)ケ原(はら)をお渡(わた)りなさるのは、246何(なん)とはなしに案(あん)じられてなりませぬ。247照国別(てるくにわけ)様(さま)が私(わたし)を後(あと)に残(のこ)して行(ゆ)かれたのは貴方(あなた)のお供(とも)をせよとの謎(なぞ)であつたかとも考(かんが)へられます。248何卒(どうぞ)タルの港(みなと)までなりとお供(とも)をさせて下(くだ)さいませ』
249清照姫(きよてるひめ)『折角(せつかく)の御(ご)親切(しんせつ)なれどもこればかりは平(ひら)にお断(ことわ)り致(いた)します』
250黄金姫(わうごんひめ)『国公(くにこう)さまの誠心(まごころ)は有難(ありがた)く受(う)けまする。251然(しか)し乍(なが)ら前(まへ)申(まを)した通(とほ)り私(わたし)のお供(とも)は許(ゆる)しませぬ。252一(いち)時(じ)も早(はや)く清春山(きよはるやま)の岩窟(がんくつ)へお越(こ)しなされ、253照国別(てるくにわけ)様(さま)は敵(てき)の計略(けいりやく)にかかつて大変(たいへん)危(あやふ)い所(ところ)で厶(ござ)いますぞ。254今(いま)私(わたし)の霊眼(れいがん)に映(えい)じました。255時(とき)おくれては一大事(いちだいじ)、256僅(わづ)かに十(じふ)里(り)ばかりの道程(みちのり)、257早(はや)く引返(ひつかへ)しなされよ』
258と云(い)ひ乍(なが)ら母娘(おやこ)二人(ふたり)は国公(くにこう)一行(いつかう)を振棄(ふりす)てて荒野(あれの)ケ原(はら)をイソイソと足早(あしばや)に進(すす)み行(ゆ)く。259国公(くにこう)はハム、260イール、261ヨセフ、262タールの四(よ)人(にん)を従(したが)へ駒(こま)の頭(かしら)を並(なら)べて元来(もとき)し道(みち)を一目散(いちもくさん)に清春山(きよはるやま)の岩窟(がんくつ)さして進(すす)み行(ゆ)く。263野路(のぢ)を渉(わた)る秋風(あきかぜ)は中空(ちうくう)に笛(ふえ)を吹(ふ)き乍(なが)ら遠慮(ゑんりよ)会釈(ゑしやく)もなく森(もり)の梢(こずゑ)を渡(わた)り行(ゆ)く。
264(大正一一・一〇・二八 旧九・九 北村隆光録)
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