霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
×
設定
URL:
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
話者名の追加表示 [?]セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。[×閉じる]
表示できる章
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
行間
ルビの表示


アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注[※]用語解説 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

脚注[*]編集用 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

外字の外周色 [?]一般のフォントに存在しない文字は専用の外字フォントを使用しています。目立つようにその文字の外周の色を変えます。[×閉じる]
現在のページには外字は使われていません

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。

第一四章 清春山(きよはるやま)〔一〇七九〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第39巻 舎身活躍 寅の巻 篇:第4篇 浮木の岩窟 よみ(新仮名遣い):うききのがんくつ
章:第14章 清春山 よみ(新仮名遣い):きよはるやま 通し章番号:1079
口述日:1922(大正11)年10月28日(旧09月9日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年5月5日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
清春山の大岩窟には、バラモン教の一派が暴力をもって地方民に生産物を奉納させ、信仰を強要し、恨みの声は地上に満ちている有様であった。
照国別は照公・梅公を連れて清春山山麓にさしかかったとき、谷底に聞こえてきた女の声に立ち止まった。一行が谷底に向かうと、大の男が女を縛って打ち殴っている。宣伝歌を歌いながら近づくと、男たちは逃げてしまった。
女は、梅彦というウラル教徒の兄が竜宮の一つ島へ渡ったのを探しいているのだという。三五教に梅彦という宣伝使がいると聞き、信者と化けて兄の行方を探っていたが、いつしかその教えがありがたくなり、本当の三五教徒になったのだという。
女は、兄の行方を尋ねる旅の途上、清春山に巣窟を構える大足別というバラモン教の悪神の部下たちに捉えられていたのだと明かした。照国別は、女の名・菖蒲から、この女が自分の妹であることを確信した。
菖蒲は大足別の妻になるようにと強要され、両親をさらわれてしまったことを照国別に明かした。照国別は大神の使命の途中に寄り道をすることをためらうが、照公と梅公は、人々の危難を見過ごして通り過ぎるわけにはいかない、と主張し、大足別を言向け和しに出発することになった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2022-11-21 10:35:54 文字数:4790 OBC :rm3914
愛善世界社版:194頁 八幡書店版:第7輯 350頁 修補版: 校定版:204頁 普及版:83頁 初版: ページ備考:
001 フサと月(つき)との国境(くにざかひ)に屹山(きつりつ)せる半禿山(はんはげやま)の山奥(やまおく)に大岩窟(だいがんくつ)を構(かま)へて、002バラモン教(けう)を開設(かいせつ)し、003一方(いつぱう)無暗(むやみ)に地方民(ちはうみん)の生産物(せいさんぶつ)を暴力(ばうりよく)を以(もつ)て奉納(ほうなふ)せしめ、004驕慢(けうまん)日(ひ)に募(つの)り怨嗟(ゑんさ)の声(こゑ)は地上(ちじやう)に充(み)ちてゐる。005バラモン教(けう)の宣伝使(せんでんし)は清春山(きよはるやま)の部下(ぶか)に限(かぎ)り、006左手(ゆんで)にコーランを持(も)ち右手(めて)に剣(つるぎ)を携(たづさ)へて無理(むり)往生(わうじやう)に信仰(しんかう)を強要(きやうえう)しつつあつた。
007 照国別(てるくにわけ)は照公(てるこう)、008梅公(うめこう)の両人(りやうにん)と共(とも)に、009河鹿(かじか)峠(たうげ)を難(なん)なく打越(うちこ)え清春山(きよはるやま)の山麓(さんろく)にさしかかる時(とき)しもあれや、010俄(にはか)に谷底(たにそこ)に聞(きこ)える女(をんな)の叫(さけ)び声(ごゑ)に一同(いちどう)立止(たちど)まり暫(しば)し首(かうべ)を傾(かたむ)けてゐた。011叫(さけ)び声(ごゑ)は益々(ますます)烈(はげ)しくなつて来(き)た。012只事(ただごと)ならじと照国別(てるくにわけ)一行(いつかう)は悲鳴(ひめい)を尋(たづ)ねて谷底(たにそこ)に近寄(ちかよ)り見(み)れば、013大(だい)の男(をとこ)四五(しご)人(にん)、014女(をんな)を後手(うしろで)に縛(しば)り打擲(ちやうちやく)してゐる。015人(ひと)を助(たす)くる宣伝使(せんでんし)、016これが見(み)すてておかれやうかと、017宣伝歌(せんでんか)を歌(うた)ひ乍(なが)ら其(その)場(ば)に間近(まぢか)くかけつけた。018五(ご)人(にん)の荒男(あらをとこ)は三(さん)人(にん)の姿(すがた)を見(み)るより、019あわてふためき、020女(をんな)をそこに残(のこ)して、021チリヂリバラバラに思(おも)ひ思(おも)ひの方(はう)へ逃(に)げて行(ゆ)く。022照国別(てるくにわけ)は女(をんな)の側近(そばちか)く立寄(たちよ)り、
023照国別『吾々(われわれ)は三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)、024此(この)街道(かいだう)を通(とほ)る折(をり)しも、025俄(にはか)に女(をんな)の叫(さけ)び声(ごゑ)、026コリヤ何事(なにごと)か惨劇(さんげき)が演(えん)ぜられてゐるのであらう、027何(なに)は兎(と)もあれ助(たす)けねばなるまいとここ迄(まで)尋(たづ)ねて来(き)たもの、028最早(もはや)吾々(われわれ)が現(あら)はれた以上(いじやう)は大丈夫(だいぢやうぶ)だから、029御(ご)安心(あんしん)なされよ』
030と親切(しんせつ)に労(いた)はれば、031女(をんな)は目(め)をしばたき、
032女(菖蒲)『ハイ、033有難(ありがた)う厶(ござ)います、034ようマア危急(ききふ)存亡(そんばう)の場合(ばあひ)をお助(たす)け下(くだ)さいました。035これと云(い)ふのも全(まつた)く神(かみ)様(さま)のお助(たす)けで厶(ござ)いませう。036何(なに)を隠(かく)しませう、037妾(わたし)は三五教(あななひけう)の信者(しんじや)、038兄(あに)の行方(ゆくへ)を尋(たづ)ねて巡礼(じゆんれい)する者(もの)、039女(をんな)の一人旅(ひとりたび)、040ここ迄(まで)参(まゐ)りますとバラモン教(けう)の連中(れんちう)に取巻(とりま)かれ、041高手(たかて)小手(こて)に縛(いまし)められ、042無体(むたい)の要求(えうきう)に立腹(りつぷく)の余(あま)り、043口(くち)を極(きは)めて罵(ののし)つてやりました所(ところ)、044五(ご)人(にん)の男(をとこ)は大(おほい)に怒(いか)り殺(ころ)してくれむと四方(しはう)八方(はつぱう)より、045刀(かたな)の鞘(さや)にて体(からだ)一面(いちめん)所(ところ)かまはず、046突(つ)いて突(つ)いて突(つ)きまはし、047苦痛(くつう)に堪(た)へかね、048卑怯(ひけふ)にも悲鳴(ひめい)を上(あ)げた所(ところ)で厶(ござ)います。049よくマアお助(たす)け下(くだ)さいました』
050照国別(てるくにわけ)『それは危(あぶな)い事(こと)、051マアマア安心(あんしん)なさい。052オイ、053照公(てるこう)、054梅公(うめこう)、055此(この)婦人(ふじん)の縛(いましめ)を解(と)け』
056 『ハイ』と答(こた)へて両人(りやうにん)は手早(てばや)く縛(いましめ)をときにかかつた。
057照公(てるこう)『何(なん)とマア惨酷(ざんこく)な縛(しば)りやうだ。058藤蔓(ふぢづる)で肉(にく)にくひ入(い)る様(やう)に縛(しば)つてゐやがる』
059と言(い)ひ乍(なが)ら守刀(まもりがたな)をスラリと引(ひき)ぬき、060蔓(つる)を切(き)り放(はな)し、061女(をんな)を漸(やうや)くにして縛(いましめ)よりとき放(はな)つた。
062女(をんな)(菖蒲)『おかげで安心(あんしん)致(いた)しました。063あなたは三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)様(さま)、064私(わたし)はコーカス山(ざん)に参(まゐ)り或(ある)動機(どうき)より三五教(あななひけう)の信者(しんじや)になつた者(もの)で厶(ござ)います。065私(わたし)の兄(あに)は梅彦(うめひこ)といつて盤古(ばんこ)神王(しんわう)様(さま)の教(をしへ)を伝(つた)ふべく、066竜宮(りうぐう)の一(ひと)つ島(じま)へ参(まゐ)つたきり、067今(いま)に行方(ゆくへ)が判(わか)りませぬ。068父母(ふぼ)はそれを苦(く)にして最早(もはや)世(よ)を去(さ)り、069後(あと)に残(のこ)つた妾(わたし)は只(ただ)一人(ひとり)、070家(うち)にゐる事(こと)も出来(でき)ず、071噂(うはさ)に聞(き)けば、072三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)に梅彦(うめひこ)といふ方(かた)があると承(うけたまは)り、073コーカス山(ざん)に元(もと)は信者(しんじや)と化(ば)け込(こ)んで様子(やうす)を探(さぐ)る折(をり)しも、074いつとはなしに三五(あななひ)の教理(けうり)が有難(ありがた)くなり、075とうとう誠(まこと)の信者(しんじや)となつて了(しま)ひました。076承(うけたま)はれば兄(あに)の梅彦(うめひこ)は自転倒(おのころ)島(じま)とやらへ宣伝使(せんでんし)となつて参(まゐ)つたと云(い)ふこと、077そして日出別(ひのでわけ)の神(かみ)様(さま)のお弟子(でし)になつた事(こと)まで承(うけたま)はり、078斎苑(いそ)の館(やかた)の日出別(ひのでわけ)様(さま)にお目(め)にかかり、079兄(あに)の所在(ありか)を尋(たづ)ねむと、080アーメニヤを後(あと)にはるばる此処(ここ)まで参(まゐ)る途中(とちう)に、081悪者(わるもの)に出会(であ)つてかかる憂目(うきめ)に会(あ)うた所(ところ)で厶(ござ)います。082此(この)近(ちか)くには清春山(きよはるやま)といふ高山(かうざん)があつて、083其(その)山奥(やまおく)に大足別(おほだるわけ)といふ悪神(わるがみ)の大将(たいしやう)が巣窟(さうくつ)を構(かま)へて居(を)りまする。084其(その)部下(ぶか)共(ども)に捉(とら)へられ、085大足別(おほだるわけ)の女房(にようばう)になれよとの無体(むたい)の要求(えうきう)に腹(はら)を立(た)てこんな憂目(うきめ)に会(あ)うてゐた所(ところ)、086よくマア助(たす)けて下(くだ)さいました。087たつた一人(ひとり)の兄妹(きやうだい)を尋(たづ)ねて参(まゐ)る憐(あは)れな女(をんな)で厶(ござ)います。088あなた様(さま)も三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)と承(うけたま)はりましたが、089梅彦(うめひこ)の所在(ありか)は御存(ごぞん)じでは厶(ござ)いませぬか』
090照公(てるこう)『ヤア其(その)梅彦(うめひこ)とやら梅公(うめこう)とやら云(い)ふ男(をとこ)は此処(ここ)にザツと一対(いつつゐ)居(を)られますよ』
091女(をんな)(菖蒲)『エヽそれは本当(ほんたう)で厶(ござ)いますか』
092照公(てるこう)『梅公(うめこう)といふのは此(この)男(をとこ)、093照国別(てるくにわけ)の宣伝使(せんでんし)は今迄(いままで)梅彦(うめひこ)さまと言(い)つてゐました。094ナアもし宣伝使(せんでんし)様(さま)、095あなたは何時(いつ)やら、096一人(ひとり)の妹(いもうと)があると仰有(おつしや)つたやうに覚(おぼ)えて居(を)ります。097ヨモヤ此(この)お方(かた)ではありますまいか、098三日月(みかづき)眉毛(まゆげ)にクルリとした目(め)の具合(ぐあひ)、099よく似(に)て居(を)りますで』
100梅公(うめこう)『ホンにホンに似(に)たりや似(に)たりや、101瓜二(うりふた)つだ。102何(なん)と云(い)つても照国別(てるくにわけ)様(さま)の妹(いもうと)に違(ちがひ)ない』
103 照国別(てるくにわけ)は黙然(もくねん)として女(をんな)の顔(かほ)をマジマジと眺(なが)めてゐる。104女(をんな)も亦(また)宣伝使(せんでんし)の顔(かほ)を穴(あな)のあく程(ほど)首(くび)をかたげ乍(なが)ら見(み)つめてゐた。105暫(しばら)くあつて女(をんな)は思(おも)ひ切(き)つた様(やう)に、
106女(菖蒲)『あなたは兄上(あにうへ)ぢや厶(ござ)いませぬか、107お懐(なつ)かしう存(ぞん)じます』
108照国別(てるくにわけ)『お前(まへ)の幼名(えうめい)は何(なん)と云(い)つたか』
109女(菖蒲)『ハイ私(わたし)の幼名(えうめい)は菖蒲(あやめ)と申(まを)しました』
110照国別(てるくにわけ)『そんなら擬(まが)ふ方(かた)なき吾(わが)妹(いもうと)、111ようマア無事(ぶじ)でゐてくれた。112併(しか)し乍(なが)ら海山(うみやま)の御恩(ごおん)深(ふか)き御(ご)両親(りやうしん)は、113此(この)梅彦(うめひこ)の事(こと)を苦(く)にやんでお国替(くにがへ)なさつたか、114アヽ残念(ざんねん)やなア。115如何(どう)して両親(りやうしん)に申訳(まをしわけ)が立(た)たうか、116余(あま)り神(かみ)様(さま)のお道(みち)に一生(いつしやう)懸命(けんめい)になつて今迄(いままで)両親(りやうしん)の事(こと)や妹(いもうと)の事(こと)を忘(わす)れてゐた。117妹(いもうと)、118どうぞ許(ゆる)してくれ』
119菖蒲(あやめ)『勿体(もつたい)ない兄上(あにうへ)様(さま)、120許(ゆる)すも許(ゆる)さぬも厶(ござ)いませぬ、121斯(か)うなる上(うへ)は最前(さいぜん)申(まを)しました事(こと)は取消(とりけ)します。122実(じつ)の処(ところ)は吾々(われわれ)の両親(りやうしん)は清春山(きよはるやま)の岩窟(がんくつ)に捕(とら)はれて居(ゐ)るさうで厶(ござ)います。123要(えう)するに私(わたし)を女房(にようばう)にくれよと、124バラモン教(けう)の大足別(おほだるわけ)が幾度(いくど)となく使(つかひ)を遣(つか)はしましたなれども、125教理(けうり)が違(ちが)ふので、126両親(りやうしん)はやらぬと申(まを)しますなり、127私(わたし)も兄上(あにうへ)に巡(めぐ)り会(あ)うた上(うへ)でなければ、128返答(へんたふ)は出来(でき)ないと申(まを)してゐましたら、129何時(いつ)の間(ま)にやら、130私(わたし)の山(やま)に行(い)つてゐる不在中(るすちう)に、131両親(りやうしん)をかつさらへて、132清春山(きよはるやま)の岩窟(がんくつ)に立帰(たちかへ)り、133私(わたし)に女房(にようばう)になるならば、134両親(りやうしん)の命(いのち)を助(たす)けてやらう、135さなくば両親(りやうしん)を殺(ころ)して了(しま)うとの悪虐(あくぎやく)無道(ぶだう)の掛合(かけあひ)、136両親(りやうしん)も最早(もはや)三五教(あななひけう)の信者(しんじや)となつた以上(いじやう)は、137何程(なにほど)苦(くる)しき責苦(せめく)に会(あ)うても、138バラモン教(けう)には降伏(かうふく)せないと頑張(ぐわんば)つて居(を)りましたから、139さぞ今頃(いまごろ)は悪神(わるがみ)の為(ため)に苦(くるし)んでゐる事(こと)でせう。140私(わたし)は心(こころ)も心(こころ)ならず、141何(なん)とかして兄上(あにうへ)の所在(ありか)を尋(たづ)ね兄妹(きやうだい)力(ちから)を合(あは)せて両親(りやうしん)を救(すく)ひ出(だ)さむと、142斎苑(いそ)の館(やかた)へ進(すす)む途中(とちう)で厶(ござ)いました』
143とワツと許(ばか)りに声(こゑ)をあげて泣(な)き倒(たふ)れる其(その)憐(あは)れさ。144照国別(てるくにわけ)は吐息(といき)をつき乍(なが)ら落涙(らくるい)に沈(しづ)んでゐる。
145照公(てるこう)『ヤア菖蒲(あやめ)様(さま)、146あなたの今(いま)のお話(はなし)で、147何(なに)もかもハツキリ致(いた)しました。148サアこれから宣伝使(せんでんし)様(さま)のお供(とも)して、149清春山(きよはるやま)の征伐(せいばつ)に向(むか)ひませう』
150照国別(てるくにわけ)『神(かむ)素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)より大切(たいせつ)な使命(しめい)を受(う)け乍(なが)ら、151如何(いか)に両親(りやうしん)の危難(きなん)を救(すく)ふとは云(い)へ、152使命(しめい)も果(はた)さずに、153そんな私上(しじやう)の事(こと)は致(いた)されまい、154ハテ困(こま)つたことだなア。155両親(りやうしん)を救(すく)はむとすれば、156大神(おほかみ)の使命(しめい)が遅(おく)れる、157神(かみ)の命(めい)に従(したが)はむとすれば両親(りやうしん)の身(み)の上(うへ)はいかに成行(なりゆ)くかも計(はか)られない。158ハテ困(こま)つた事(こと)が出来(でき)たワイ』
159梅公(うめこう)『モシ宣伝使(せんでんし)様(さま)、160何程(なにほど)御(ご)神命(しんめい)なればとて、161途中(とちう)に悪者(わるもの)のために虐(さいな)まれてゐる者(もの)があれば、162これを見(み)のがして行(ゆ)く事(こと)は出来(でき)ますまい。163却(かへつ)て世界(せかい)を救(すく)ふ宣伝使(せんでんし)の職務(しよくむ)に反(はん)するもので厶(ござ)いませう。164谷底(たにそこ)の叫(さけ)び声(ごゑ)を尋(たづ)ねて、165ここへ道寄(みちよ)りしたも同(おな)じ事(こと)、166そんな斟酌(しんしやく)は決(けつ)していりますまい、167サア早(はや)く清春山(きよはるやま)征伐(せいばつ)に参(まゐ)りませう』
168照国別(てるくにわけ)『お前(まへ)のいふのも一応(いちおう)尤(もつと)もだ。169そんならすまぬ事(こと)乍(なが)ら、170両親(りやうしん)の危難(きなん)を救(すく)ふ事(こと)に致(いた)さう』
171菖蒲(あやめ)『兄上(あにうへ)様(さま)、172有難(ありがた)う厶(ござ)います。173そんなら私(わたし)が先導(せんと)に立(た)ちます。174最早(もはや)之(これ)から三(さん)里(り)ばかり奥(おく)まで行(ゆ)けばそこが敵(てき)の岩窟(がんくつ)否(いな)御(ご)両親(りやうしん)の捉(とら)はれ場所(ばしよ)、175かういふ内(うち)にも心(こころ)が急(いそ)ぎます。176サア早(はや)く行(い)つて下(くだ)さい』
177照国別(てるくにわけ)『そんなら照(てる)さま、178梅(うめ)さま、179御(ご)苦労(くらう)だが一緒(いつしよ)に来(き)てくれるか』
180両人(りやうにん)『ハイあなたのお供(とも)だもの、181どこへでも参(まゐ)ります』
182 照国別(てるくにわけ)は二人(ふたり)の言葉(ことば)に勢(いきほひ)を得(え)、183一行(いつかう)四(よ)人(にん)山奥(やまおく)の岩窟(がんくつ)さして、184天津(あまつ)祝詞(のりと)をひそかに奏上(そうじやう)し乍(なが)ら尋(たづ)ね行(ゆ)く。185菖蒲(あやめ)は道々(みちみち)歌(うた)ふ。
186菖蒲『神(かみ)が表(おもて)に現(あら)はれて
187善(ぜん)と悪(あく)とを立別(たてわ)ける
188此(この)世(よ)を造(つく)りし神直日(かむなほひ)
189心(こころ)も広(ひろ)き大直日(おほなほひ)
190只(ただ)何事(なにごと)も人(ひと)の世(よ)は
191直日(なほひ)に見直(みなほ)せ聞直(ききなほ)せ
192世(よ)の過(あやまち)は宣(の)り直(なほ)せ
193此(この)御教(みをしへ)は三五(あななひ)の
194尊(たふと)き神(かみ)の御(ご)託宣(たくせん)
195とは云(い)ひ乍(なが)ら両親(ふたおや)を
196悪魔(あくま)の司(つかさ)に奪(うば)はれて
197どうして見直(みなほ)し聞(き)き直(なほ)し
198宣(の)り直(なほ)す事(こと)が出来(でき)ようか
199山(やま)より高(たか)き父(ちち)の恩(おん)
200海(うみ)より深(ふか)き母(はは)の恩(おん)
201報(むく)い返(かへ)さでおくべきか
202神(かみ)は吾(われ)等(ら)と共(とも)にあり
203三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)
204照国別(てるくにわけ)とはわが兄(あに)と
205分(わか)りし時(とき)の嬉(うれ)しさよ
206曲津(まがつ)の神(かみ)は多(おほ)くとも
207悪魔(あくま)の猛(たけ)びは強(つよ)くとも
208いかでか恐(おそ)れむ三五(あななひ)の
209誠(まこと)一(ひと)つの神司(かむづかさ)
210仁義(じんぎ)の軍(いくさ)に如何(いか)にして
211刃向(はむか)ふ術(すべ)のあるべきぞ
212照国別(てるくにわけ)を初(はじ)めとし
213照(てる)さま梅(うめ)さま菖蒲(あやめ)まで
214心(こころ)を合(あは)せ力(ちから)をば
215一(ひと)つになして進(すす)むなら
216大足別(おほだるわけ)の醜神(しこがみ)が
217何程(なにほど)手下(てした)は多(おほ)くとも
218旭(あさひ)に露(つゆ)の消(き)ゆる如(ごと)
219亡(ほろ)び行(ゆ)かむは目(ま)のあたり
220あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
221御霊(みたま)幸(さち)はひましまして
222曲津(まがつ)の神(かみ)に苦(くるし)みし
223父(ちち)と母(はは)との生命(せいめい)を
224救(すく)はせ玉(たま)へ惟神(かむながら)
225神(かみ)の御前(みまへ)に願(ね)ぎまつる
226旭(あさひ)は照(て)るとも曇(くも)るとも
227月(つき)は盈(み)つとも虧(か)くるとも
228仮令(たとへ)大地(だいち)は沈(しづ)むとも
229三五教(あななひけう)に仕(つか)へたる
230女心(をんなごころ)の一(ひと)すぢに
231岩(いは)をも射(い)ぬく吾(わが)覚悟(かくご)
232言向和(ことむけやは)さでおくべきか
233照国別(てるくにわけ)の神司(かむづかさ)
234神(かみ)の力(ちから)をうけ玉(たま)ひ
235今(いま)は立派(りつぱ)な宣伝使(せんでんし)
236其(その)風采(ふうさい)も何(なん)とやら
237高尚(かうしやう)優美(いうび)に変(かは)りまし
238昔(むかし)の面影(おもかげ)どこへやら
239英雄(えいゆう)君子(くんし)の御姿(みすがた)と
240ならせ玉(たま)ひし尊(たふと)さよ
241あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
242思(おも)ひの晴(は)るる今(いま)や時(とき)
243花(はな)さく春(はる)の至(いた)る時(とき)
244アヽ勇(いさ)ましや勇(いさ)ましや
245大足別(おほだるわけ)は強(つよ)くとも
246神(かみ)の力(ちから)に如(し)かざらむ
247清春山(きよはるやま)は高(たか)くとも
248此(この)谷路(たにみち)はさかしとも
249なぞや恐(おそ)れむ三五(あななひ)の
250誠(まこと)一(ひと)つの言霊(ことたま)に
251言向和(ことむけやは)しバラモンの
252砦(とりで)にひそむ醜神(しこがみ)を
253まつろへ和(やは)さでおくべきか
254あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
255御霊(みたま)幸(さち)はひましませよ』
256と歌(うた)ひ乍(なが)ら登(のぼ)り行(ゆ)く。257梅公(うめこう)は後(うしろ)より歌(うた)ふ。
258梅公『三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)
259照国別(てるくにわけ)に従(したが)ひて
260河鹿(かじか)峠(たうげ)を打(うち)わたり
261いろいろ雑多(ざつた)と面白(おもしろ)き
262景色(けしき)をながめ来(き)てみれば
263千尋(ちひろ)の谷間(たにま)に「ウントコシヨ
264ヤツトコドツコイきつい坂(さか)」
265グヅグヅしてゐちや危(あぶな)いぞ
266キヤツと一声(ひとこゑ)「ウントコシヨ
267けたたましくもドツコイシヨ」
268女(をんな)の叫(さけ)び声(ごゑ)がする
269照国別(てるくにわけ)に従(したが)ひて
270声(こゑ)を尋(たづ)ねて来(き)てみれば
271思(おも)ひもよらぬ菖蒲(あやめ)さま
272兄妹(きやうだい)名乗(なの)りをあげ乍(なが)ら
273二人(ふたり)の親(おや)の御(ご)難儀(なんぎ)を
274救(すく)はむ為(ため)と勇(いさ)みたち
275此(この)山坂(やまさか)を上(のぼ)り行(ゆ)く
276其(その)いでたちの勇(いさ)ましさ
277「ウントコドツコイ、ハーハーハー」
278本当(ほんたう)にきつい坂路(さかみち)ぢや
279コレコレまうし菖蒲(あやめ)さま
280足元(あしもと)用心(ようじん)なされませ
281ここには蛇(へび)や蜈蚣(むかで)めが
282沢山(たくさん)路(みち)に横(よこ)たはり
283手具脛(てぐすね)引(ひ)いて待(ま)つてゐる
284此奴(こいつ)も矢張(やつぱ)りバラモンの
285大足別(おほだるわけ)の醜魂(しこみたま)
286蛇(へび)や蜈蚣(むかで)となりかはり
287害(がい)を加(くは)へて「ドツコイシヨ」
288困(こま)らしやらむと待(ま)つのだろ
289虫(むし)一匹(いつぴき)と言(い)うたとて
290決(けつ)して油断(ゆだん)はなりませぬ
291「ウントコドツコイドツコイシヨ」
292これ程(ほど)きつい山路(やまみち)を
293越(こ)えて行(ゆ)かねばならぬよな
294山奥(やまおく)深(ふか)き岩窟(がんくつ)に
295潜(ひそ)んでゐる奴(やつ)あ「ドツコイシヨ」
296ロクな奴(やつ)ではあるまいに
297本当(ほんたう)に力(ちから)があるならば
298正々(せいせい)堂々(だうだう)と広原(くわうげん)に
299館(やかた)を構(かま)へてゐるだらう
300獣(けもの)もロクに通(かよ)へない
301此(この)谷路(たにみち)のドン奥(おく)に
302鳥(とり)なき里(さと)の蝙蝠(かうもり)を
303気取(きど)つてゐやがる馬鹿神(ばかがみ)は
304どうで弱虫(よわむし)腰抜(こしぬけ)の
305張本人(ちやうほんにん)に違(ちが)ひない
306脾肉(ひにく)の歎(たん)にたへかぬる
307梅公(うめこう)さまが只(ただ)一人(ひとり)
308あつたら「ドツコイドツコイシヨ」
309バラモン教(けう)の奴原(やつばら)を
310片(かた)つ端(ぱし)からなで切(ぎ)りに
311するのは手間暇(てまひま)いらね共(ども)
312ヤツパリ一人(ひとり)は危(あぶな)いと
313直日(なほひ)に見直(みなほ)し宣直(のりなほ)し
314四(よ)人(にん)一度(いちど)に上(のぼ)り行(ゆ)く
315力(ちから)が余(あま)りて仕様(しやう)がない
316千引(ちびき)の岩(いは)もて鶏(にはとり)の
317玉子(たまご)をわるより易(やす)からう
318あゝ面白(おもしろ)い面白(おもしろ)い
319清春山(きよはるやま)はまだ来(こ)ぬか
320何(なに)をグヅグヅしてゐるぞ
321アタ邪魔臭(じやまくさ)い邪魔臭(じやまくさ)い
322ヤツパリ俺(おれ)がてくらねば
323山(やま)はどうしても動(うご)かない
324「ウントコドツコイドツコイシヨ」
325向(むか)ふに見(み)ゆる黒煙(くろけむり)
326どうやらあこが岩窟(がんくつ)だ
327さぞ今頃(いまごろ)は御(ご)両親(りやうしん)
328われ等(ら)の到(いた)るを待(ま)ちかねて
329厶(ござ)るであらう「ドツコイシヨ」
330悪(あく)のみたまの年(ねん)のあき
331いよいよこれから正念場(しやうねんば)
332進(すす)めや進(すす)めいざ進(すす)め
333照国別(てるくにわけ)や菖蒲(あやめ)さま
334照公(てるこう)さまも潔(いさぎよ)く
335駒(こま)に鞭(むち)打(う)ち進(すす)みませ
336それそれそこに高(たか)い石(いし)
337遠慮(ゑんりよ)会釈(ゑしやく)も「ドツコイシヨ」
338知(し)らぬ顔(かほ)して立(た)つてゐる
339一(いち)時(じ)も早(はや)く岩窟(がんくつ)に
340進(すす)んで曲津(まがつ)の首(かうべ)をば
341片(かた)つ端(ぱし)から切(き)りおとし
342勝鬨(かちどき)あげて三五(あななひ)の
343教(をしへ)を照(て)らし世(よ)の人(ひと)の
344悩(なや)みを救(すく)ひ助(たす)くべし
345あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
346御霊(みたま)幸(さち)はひましまして
347われ等(ら)一行(いつかう)四(よ)人(にん)づれ
348神(かみ)の御(おん)為(ため)世(よ)の為(ため)に
349雄々(をを)しき功績(いさを)をたてぬいて
350二人(ふたり)の親(おや)の生命(せいめい)を
351救(すく)ひて月(つき)の都(みやこ)まで
352進(すす)ませ玉(たま)へ大神(おほかみ)の
353御前(みまへ)に慎(つつし)みねぎまつる』
354と歌(うた)ひ乍(なが)ら、355勢(いきほひ)よく秋風(あきかぜ)に吹(ふ)かれつつ谷間(たにま)を登(のぼ)り行(ゆ)く。
356(大正一一・一〇・二八 旧九・九 松村真澄録)
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【メールアドレス】
合言葉「みろく」を入力して下さい→