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霊界物語
舎身活躍(第37~48巻)
第39巻(寅の巻)
序歌
総説
第1篇 伊祖の神風
第1章 大黒主
第2章 評定
第3章 出師
第2篇 黄金清照
第4章 河鹿越
第5章 人の心
第6章 妖霧
第7章 都率天
第8章 母と娘
第3篇 宿世の山道
第9章 九死一生
第10章 八の字
第11章 鼻摘
第12章 種明志
第4篇 浮木の岩窟
第13章 浮木の森
第14章 清春山
第15章 焼糞
第16章 親子対面
第5篇 馬蹄の反影
第17章 テームス峠
第18章 関所守
第19章 玉山嵐
附録 大祓祝詞解
余白歌
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舎身活躍(第37~48巻)
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第39巻(寅の巻)
> 第5篇 馬蹄の反影 > 第18章 関所守
<<< テームス峠
(B)
(N)
玉山嵐 >>>
第一八章
関所守
(
せきしよもり
)
〔一〇八三〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第39巻 舎身活躍 寅の巻
篇:
第5篇 馬蹄の反影
よみ(新仮名遣い):
ばていのはんえい
章:
第18章 関所守
よみ(新仮名遣い):
せきしょもり
通し章番号:
1083
口述日:
1922(大正11)年10月29日(旧09月10日)
口述場所:
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年5月5日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
テームス峠の山頂には、バラモン教の関所が設けられていた。実は、大黒主の命で蜈蚣姫、小糸姫を見つけて捕えようというのがこの関所の目的であった。
五人のバラモン教徒がここを守っていたが、人通りのない関所で暇を持て余し、酒を飲んで酔っ払っている。
一同は、山奥の関所守のような閑職に回されたことを嘆いたり、都であくせくするよりはずっといいと開き直ったり、酔って馬鹿な話にふけっている。
そこへ黄金姫たち一行がやってきた。黄金姫と清照姫は馬にまたがり、レーブたちが馬を引いている。関所守たちは一行を改めるために止めた。
レーブは、馬上にいるのは蜈蚣姫と小糸姫だと関所守たちに伝えた。しかし関所守たちさっさと関を通ってくれと促した。黄金姫たち一行はゆうゆうと関所を通過した。
関所守たちは、黄金姫と小糸姫が本物に違いないと思いながらも、威厳に当てられてしまった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-11-23 11:37:47
OBC :
rm3918
愛善世界社版:
257頁
八幡書店版:
第7輯 373頁
修補版:
校定版:
270頁
普及版:
113頁
初版:
ページ備考:
001
テームス
峠
(
たうげ
)
の
山上
(
さんじやう
)
にはバラモン
教
(
けう
)
の
関所
(
せきしよ
)
が
設
(
まう
)
けられ
四五
(
しご
)
人
(
にん
)
の
人
(
ひと
)
が
往来
(
ゆきき
)
の
人
(
ひと
)
の
信仰
(
しんかう
)
調
(
しら
)
べをやつて
居
(
ゐ
)
る。
002
と
云
(
い
)
ふのは
表面
(
へうめん
)
の
理由
(
りいう
)
で
其
(
その
)
実
(
じつ
)
は
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
命
(
めい
)
によつて
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
、
003
黄竜姫
(
わうりようひめ
)
の
所在
(
ありか
)
を
捜索
(
そうさく
)
し、
004
見付
(
みつ
)
け
次第
(
しだい
)
フン
縛
(
じば
)
つて
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
館
(
やかた
)
へソツと
連
(
つ
)
れ
帰
(
かへ
)
れよとの
命令
(
めいれい
)
を
下
(
くだ
)
して
日夜
(
にちや
)
見張
(
みは
)
りをさして
居
(
ゐ
)
たのである。
005
此
(
この
)
関守
(
せきもり
)
は
春公
(
はるこう
)
、
006
清公
(
きよこう
)
、
007
道公
(
みちこう
)
、
008
紅葉
(
もみぢ
)
、
009
雪公
(
ゆきこう
)
と
云
(
い
)
ふ
五
(
ご
)
人
(
にん
)
であつた。
010
五
(
ご
)
人
(
にん
)
は
朝
(
あさ
)
から
晩
(
ばん
)
まで、
011
日
(
ひ
)
によると
一人
(
ひとり
)
も
道通
(
みちどほ
)
りがない
此
(
この
)
関所
(
せきしよ
)
で
大
(
おほ
)
きな
口
(
くち
)
をあけ、
012
両手
(
りやうて
)
を
逆八
(
さかはち
)
の
字
(
じ
)
に
天井
(
てんじやう
)
へグツと
伸
(
の
)
ばし『アヽヽ』と
欠伸
(
あくび
)
の
共進会
(
きやうしんくわい
)
を
仕事
(
しごと
)
にして
居
(
ゐ
)
た。
013
仕方
(
しかた
)
がなしにそこら
中
(
ぢう
)
の
果物
(
くだもの
)
を
むし
つて
来
(
き
)
て
果物
(
くだもの
)
の
酒
(
さけ
)
を
造
(
つく
)
り
朝
(
あさ
)
から
晩
(
ばん
)
まで
飲
(
の
)
んで
飲
(
の
)
んで
飲
(
の
)
み
暮
(
くら
)
し
ズブ
六
(
ろく
)
になつてゐる。
014
こんな
関守
(
せきもり
)
が
仮令
(
たとへ
)
千
(
せん
)
人
(
にん
)
あつたとて
屁
(
へ
)
の
突張
(
つつぱ
)
りにもならぬのは、
015
もとよりである。
016
春公
(
はるこう
)
はソロソロ
酔
(
よひ
)
がまはり
出
(
だ
)
し、
017
春公
『オイ、
018
雪公
(
ゆきこう
)
、
019
貴様
(
きさま
)
は
冷
(
つめた
)
い
白
(
しろ
)
い
名
(
な
)
だが、
020
矢張
(
やつぱ
)
り
酒
(
さけ
)
を
喰
(
くら
)
うと
体
(
からだ
)
が
熱
(
あつ
)
くなり
顔
(
かほ
)
まで
赤
(
あか
)
くなるのが、
021
俺
(
おれ
)
や
不思議
(
ふしぎ
)
で
堪
(
たま
)
らぬワイ。
022
それだから、
023
化物
(
ばけもの
)
の
多
(
おほ
)
い
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
と
云
(
い
)
ふのだよ。
024
ゲーガラガラガラ』
025
雪公
(
ゆきこう
)
『
何
(
なに
)
が
化物
(
ばけもの
)
だい。
026
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は
凡
(
すべ
)
てこんなものだよ。
027
善悪
(
ぜんあく
)
一如
(
いちによ
)
、
028
正邪
(
せいじや
)
不二
(
ふじ
)
、
029
表裏
(
へうり
)
一体
(
いつたい
)
だ。
030
「
一羽
(
いちは
)
の
鳥
(
とり
)
も
鶏
(
にはとり
)
と
言
(
い
)
ひ、
031
葵
(
あふひ
)
の
花
(
はな
)
も
赤
(
あか
)
に
咲
(
さ
)
く、
032
雪
(
ゆき
)
と
云
(
い
)
ふ
字
(
じ
)
を
墨
(
すみ
)
で
書
(
か
)
く」と
云
(
い
)
ふ
歌
(
うた
)
を
貴様
(
きさま
)
は
知
(
し
)
つてるか。
033
貴様
(
きさま
)
の
名
(
な
)
は
春
(
はる
)
ぢやないか、
034
春公
(
はるこう
)
の
癖
(
くせ
)
に
此
(
この
)
秋
(
あき
)
になつて
行
(
ゆ
)
くのに
鼻
(
はな
)
を
高
(
たか
)
うし
鼻唄
(
はなうた
)
を
唄
(
うた
)
ひ、
035
はな
はなしう
朝
(
あさ
)
から
晩
(
ばん
)
まで
浮
(
う
)
かれきつて
居
(
ゐ
)
るのが
一体
(
いつたい
)
全体
(
ぜんたい
)
訳
(
わけ
)
が
分
(
わか
)
らぬ。
036
貴様
(
きさま
)
こそネツトプライスの
正札
(
しやうふだ
)
の
化物
(
ばけもの
)
だ。
037
否
(
いな
)
馬鹿者
(
ばかもん
)
だよ。
038
あんまり
他人
(
ひと
)
の
事
(
こと
)
を
誹
(
そし
)
ると
自分
(
じぶん
)
の
事
(
こと
)
におちて
来
(
く
)
るのを
知
(
し
)
らぬか。
039
丁度
(
ちやうど
)
空
(
そら
)
を
向
(
む
)
いて
天
(
てん
)
に
唾
(
つば
)
を
吐
(
は
)
いた
様
(
やう
)
なものだよ。
040
アーア、
041
酔
(
よ
)
うた
酔
(
よ
)
うた、
042
ヨタンボばかりの
中
(
なか
)
に
混入
(
こんにふ
)
してゐると
俺
(
おれ
)
迄
(
まで
)
ヨタンボ
病
(
びやう
)
が
伝染
(
でんせん
)
して、
043
嫌
(
いや
)
でもない
酒
(
さけ
)
を
飲
(
の
)
まされて
喉
(
のど
)
の
虫
(
むし
)
がグイグイ
喜
(
よろこ
)
びよつて、
044
腹
(
はら
)
が
立
(
た
)
つて
仕方
(
しかた
)
がないワ。
045
本当
(
ほんたう
)
にこんな
関守
(
せきもり
)
を
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
大将
(
たいしやう
)
だつて
飼
(
か
)
うておくのは
大抵
(
たいてい
)
ぢやない。
046
俺
(
おれ
)
だつたら
斯
(
こ
)
んな
者
(
もの
)
は
遠
(
とほ
)
の
昔
(
むかし
)
に
免職
(
めんしよく
)
するけどな、
047
流石
(
さすが
)
大黒主
(
おほくろぬし
)
だけあつて
大舞台
(
おほぶたい
)
だワイ』
048
春公
(
はるこう
)
『
何
(
なに
)
、
049
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
だつて、
050
こんな
現状
(
げんじやう
)
を
見付
(
みつ
)
けたら
一遍
(
いつぺん
)
に
免職
(
めんしよく
)
さすのは
請合
(
うけあひ
)
だ。
051
何分
(
なにぶん
)
遠
(
とほ
)
い
所
(
ところ
)
だから
分
(
わか
)
らないので
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
も、
052
かうして
毎日
(
まいにち
)
睾丸
(
きんたま
)
の
皺
(
しわ
)
のばしを
安閑
(
あんかん
)
とやつて
居
(
を
)
られるのだ。
053
(
都々逸
(
どどいつ
)
)「
他処
(
よそ
)
で
妻
(
つま
)
もちや
遠山林
(
とほやまばやし
)
、
054
誰
(
たれ
)
がかるやら
盗
(
ぬす
)
むやら」とか
何
(
なん
)
とか
云
(
い
)
つて
遠距離
(
ゑんきより
)
に
居所
(
ゐどころ
)
を
構
(
かま
)
へて
居
(
を
)
りさへすれば、
055
少々
(
せうせう
)
の
脱線
(
だつせん
)
も
矛盾
(
むじゆん
)
も
無事
(
ぶじ
)
通過
(
つうくわ
)
するものだ。
056
それだから
俺
(
おれ
)
はお
膝元
(
ひざもと
)
のハルナの
大都会
(
だいとくわい
)
に
居
(
を
)
るよりも、
057
かう
云
(
い
)
ふ
山奥
(
やまおく
)
の
関守
(
せきもり
)
となつて
田園
(
でんえん
)
生活
(
せいくわつ
)
オツト
簡易
(
かんい
)
生活
(
せいくわつ
)
をやつて
自然
(
しぜん
)
を
楽
(
たの
)
しむのだ。
058
人間
(
にんげん
)
は
自然
(
しぜん
)
の
風光
(
ふうくわう
)
に
接
(
せつ
)
せなくちや
嘘
(
うそ
)
だよ。
059
紅塵
(
こうぢん
)
万丈
(
ばんぢやう
)
雑閙
(
ざつたう
)
を
極
(
きは
)
めた
大都市
(
だいとし
)
に
煙突
(
えんとつ
)
の
煙
(
けむり
)
を
吸入
(
きふにふ
)
して
虚空
(
こくう
)
如来
(
によらい
)
の
様
(
やう
)
に
燻
(
くすぼ
)
つてブラブラしてゐるよりも
何程
(
なにほど
)
愉快
(
ゆくわい
)
だか
知
(
し
)
れやしない。
060
三百
(
さんびやく
)
年
(
ねん
)
の
寿命
(
じゆみやう
)
が
斯
(
か
)
う
云
(
い
)
ふ
所
(
ところ
)
に
居
(
を
)
ると、
061
嘘
(
うそ
)
八百
(
はつぴやく
)
年
(
ねん
)
も
延
(
の
)
びるやうだ。
062
うまいうまいうまいのは
此
(
この
)
酒
(
さけ
)
だ。
063
「
酒屋
(
さかや
)
へ
三
(
さん
)
里
(
り
)
豆腐屋
(
とうふや
)
へ
一
(
いち
)
里
(
り
)
」と
十八
(
じふはち
)
世紀
(
せいき
)
の
人間
(
にんげん
)
は
吐
(
ほざ
)
きよるが、
064
至治
(
しぢ
)
至楽
(
しらく
)
の
神代
(
しんだい
)
生活
(
せいくわつ
)
は
自
(
みづか
)
ら
田
(
た
)
を
耕
(
たがや
)
して
喰
(
く
)
ひ、
065
自
(
みづか
)
ら
井
(
ゐ
)
を
穿
(
うが
)
つて
飲
(
の
)
み、
066
そこらあたり
枝
(
えだ
)
もたわわに
実
(
みの
)
つてゐる
果物
(
くだもの
)
を
手
(
て
)
づから
むし
り、
067
手
(
て
)
づから
酒
(
さけ
)
を
造
(
つく
)
つて
賞翫
(
しやうぐわん
)
する
程
(
ほど
)
結構
(
けつこう
)
なものはない。
068
仁
(
じん
)
ぢやとか
義
(
ぎ
)
ぢやとか、
069
礼
(
れい
)
ぢやとか、
070
そんな
詐偽
(
さぎ
)
的
(
てき
)
言辞
(
げんじ
)
を
並
(
なら
)
べて
暗黒
(
あんこく
)
世界
(
せかい
)
に
住
(
す
)
むよりも
山
(
やま
)
青
(
あを
)
く
水
(
みづ
)
清
(
きよ
)
く、
071
空
(
そら
)
高
(
たか
)
き
此
(
この
)
山頂
(
さんちやう
)
に
四方
(
しはう
)
を
見晴
(
みは
)
らし、
072
王者
(
わうじや
)
気
(
き
)
どりになつて
簡易
(
かんい
)
生活
(
せいくわつ
)
を
続
(
つづ
)
けて
居
(
ゐ
)
る
位
(
くらゐ
)
安楽
(
あんらく
)
なものはない。
073
何
(
なん
)
せよ
霊主
(
れいしゆ
)
体従
(
たいじう
)
だとか、
074
慈悲
(
じひ
)
ぢやとか、
075
情
(
なさけ
)
とか、
076
道徳
(
だうとく
)
とか、
077
下
(
くだ
)
らぬ
屁理屈
(
へりくつ
)
を
囀
(
さへづ
)
つて
居
(
ゐ
)
るよりも、
078
善悪
(
ぜんあく
)
を
超越
(
てうゑつ
)
し、
079
道理
(
だうり
)
を
通過
(
つうくわ
)
して、
080
惟神
(
かむながら
)
的
(
てき
)
風光
(
ふうくわう
)
を
楽
(
たの
)
しみ、
081
安逸
(
あんいつ
)
に
一生
(
いつしやう
)
を
送
(
おく
)
る
位
(
ぐらゐ
)
、
082
利口
(
りこう
)
なものはないワイ。
083
何
(
なん
)
といつても
一寸先
(
いつすんさき
)
や
暗
(
やみ
)
ぢや、
084
此
(
この
)
瞬間
(
しゆんかん
)
が
吾々
(
われわれ
)
の
自由
(
じいう
)
意志
(
いし
)
を
遂行
(
すゐかう
)
する
黄金
(
わうごん
)
時代
(
じだい
)
だ。
085
(唄)「
飲
(
の
)
めよ
喰
(
くら
)
へよ
一寸先
(
いつすんさき
)
や
暗
(
やみ
)
よ、
086
酒
(
さけ
)
を
飲
(
の
)
むなら
土瓶
(
どびん
)
で
沸
(
わ
)
かせ」
土瓶
(
どびん
)
で
沸
(
わ
)
かした
酒
(
さけ
)
を
飲
(
の
)
んで
薬鑵頭
(
やくわんあたま
)
を
沸
(
たぎ
)
らすのもいいコントラストだ。
087
俺
(
おれ
)
やもうハルナの
都
(
みやこ
)
のハムにしてやらうと
云
(
い
)
つても、
088
斯
(
こ
)
んな
自由
(
じいう
)
生活
(
せいくわつ
)
を
覚
(
おぼ
)
えた
以上
(
いじやう
)
は
煩雑
(
はんざつ
)
な
都会
(
とくわい
)
へ
行
(
い
)
つて
追従
(
つゐしやう
)
タラダラ
虚偽
(
きよぎ
)
ばかりの
生活
(
せいくわつ
)
をするよりも
俺
(
おれ
)
は
此
(
この
)
関守
(
せきもり
)
ばかりは
何時
(
いつ
)
になつても
思
(
おも
)
ひきる
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ないワ。
089
「
山
(
やま
)
に
伐
(
き
)
る
木
(
き
)
は
沢山
(
たくさん
)
あれど
090
思
(
おも
)
ひきる
気
(
き
)
はないわいな」
091
とけつかるワイ。
092
アハヽヽヽ』
093
紅葉
(
もみぢ
)
『オイ
春公
(
はるこう
)
、
094
毎日
(
まいにち
)
日日
(
ひにち
)
職務
(
しよくむ
)
を
忘
(
わす
)
れて
酒
(
さけ
)
ばかり
喰
(
くら
)
ひ
酔
(
よ
)
うて
居
(
を
)
ると
冥加
(
みやうが
)
が
危
(
あぶな
)
いぞ。
095
バラモン
教
(
けう
)
の
大黒主
(
おほくろぬし
)
は
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
だと
云
(
い
)
つても、
096
人間
(
にんげん
)
のサツクを
被
(
かぶ
)
つてゐるから
誤魔化
(
ごまくわ
)
しはチトはきくが、
097
梵天王
(
ぼんてんわう
)
大自在天
(
だいじざいてん
)
バラモン
大神
(
おほかみ
)
、
098
大国彦
(
おほくにひこの
)
命
(
みこと
)
様
(
さま
)
の
御
(
おん
)
目
(
め
)
を
晦
(
くら
)
ます
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ぬぞよ。
099
いい
加減
(
かげん
)
に
心得
(
こころえ
)
ぬと、
100
習
(
なら
)
ひ
性
(
せい
)
となり、
101
放埒
(
はうらつ
)
不羈
(
ふき
)
の
人間
(
にんげん
)
になつて
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
の
爪弾
(
つまはじ
)
きものにしられてしまふが、
102
それでも
構
(
かま
)
はぬか。
103
困
(
こま
)
つた
奴
(
やつ
)
だな』
104
春公
(
はるこう
)
『
放埒
(
はうらつ
)
不羈
(
ふき
)
の
極点
(
きよくてん
)
に
達
(
たつ
)
した
春公
(
はるこう
)
さまは、
105
実際
(
じつさい
)
の
事
(
こと
)
云
(
い
)
へば
世間
(
せけん
)
から
爪弾
(
つまはぢ
)
きされてハルナの
都
(
みやこ
)
に
居
(
を
)
る
所
(
ところ
)
がないので、
106
大黒主
(
おほくろぬし
)
様
(
さま
)
が
持
(
も
)
て
余
(
あま
)
し、
107
適材
(
てきざい
)
適所
(
てきしよ
)
といつて、
108
あんな
ヤンチヤ
はテームス
峠
(
たうげ
)
の
関守
(
せきもり
)
にするのが
匹適
(
ひつてき
)
だと、
109
あつぱれの
御
(
ご
)
眼力
(
がんりき
)
で
御
(
ご
)
任命
(
にんめい
)
なさつたのは、
110
貴様
(
きさま
)
等
(
ら
)
小人輩
(
せうじんはい
)
の
了解
(
れうかい
)
すべき
限
(
かぎ
)
りではないワ、
111
紅葉
(
もみぢ
)
は
紅葉
(
もみぢ
)
らしうして
地
(
ち
)
に
這
(
は
)
うて
沈黙
(
ちんもく
)
せぬかい。
112
今
(
いま
)
は
何時
(
いつ
)
だと
思
(
おも
)
うてゐる、
113
秋
(
あき
)
の
末
(
すゑ
)
で
紅葉
(
もみぢ
)
の
葉
(
は
)
の
風
(
かぜ
)
に
叩
(
たた
)
かれ、
114
地
(
ち
)
に
落
(
お
)
ちるシーズンだ。
115
こんな
時
(
とき
)
に
浮
(
う
)
き
出
(
だ
)
さずにジツとして
酒
(
さけ
)
でも
喰
(
くら
)
つて、
116
秋
(
あき
)
の
時雨
(
しぐれ
)
の
様
(
やう
)
な
涙
(
なみだ
)
の
雨
(
あめ
)
でも
降
(
ふ
)
らしてシーズンで
居
(
を
)
る
方
(
はう
)
が
余程
(
よほど
)
ましだよ』
117
紅葉
(
もみぢ
)
『
貴様
(
きさま
)
にそんな
忠告
(
ちうこく
)
を
受
(
う
)
けなくとも、
118
俺
(
おれ
)
は
故郷
(
こきやう
)
の
女房
(
にようばう
)
の
事
(
こと
)
を
思
(
おも
)
ひ
出
(
だ
)
してシーズンで
居
(
を
)
るのだ。
119
(
都々逸
(
どどいつ
)
)「
花
(
はな
)
と
月
(
つき
)
とに
間違
(
まちが
)
ふやうな
女房
(
にようばう
)
もつ
身
(
み
)
の
気
(
き
)
はもみぢ」と
云
(
い
)
つて
貴様
(
きさま
)
のやうな
唐変木
(
たうへんぼく
)
とはチツと
選
(
せん
)
を
異
(
こと
)
にして
居
(
を
)
るのだ。
120
一
(
いつ
)
ぺんも
女
(
をんな
)
に
接
(
せつ
)
した
事
(
こと
)
のない
酒喰
(
さけくら
)
ひの
貴様
(
きさま
)
に、
121
浮世
(
うきよ
)
の
味
(
あぢ
)
が
分
(
わか
)
るものかい、
122
浮
(
う
)
いては
沈
(
しづ
)
み
沈
(
しづ
)
んでは
浮
(
うか
)
み、
123
浮沈
(
うきしづ
)
み
七度
(
ななたび
)
の
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
だ。
124
お
前
(
まへ
)
等
(
ら
)
のやうな
連中
(
れんちう
)
さまは
酒
(
さけ
)
より
外
(
ほか
)
に
慰安
(
ゐあん
)
してくれるものが
無
(
な
)
いのだからな』
125
春公
(
はるこう
)
『
時
(
とき
)
に
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
対
(
たい
)
し
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
もチツとは
義務
(
ぎむ
)
と
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
を
尽
(
つく
)
さねばならぬが、
126
こんな
人通
(
ひとどほ
)
りの
無
(
な
)
い
関守
(
せきもり
)
をさされては
丸
(
まる
)
で
島流
(
しまなが
)
しに
遭
(
あ
)
うたやうなものだから、
127
ツイ
焼糞
(
やけくそ
)
になつて
酒
(
さけ
)
をあふるやうになるのだが、
128
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
の
女房
(
にようぼう
)
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
小糸姫
(
こいとひめ
)
の
両人
(
りやうにん
)
は
何時
(
いつ
)
になつたら
此処
(
ここ
)
を、
129
通
(
とほ
)
るだらうかな。
130
ナア
雪公
(
ゆきこう
)
、
131
貴様
(
きさま
)
一
(
ひと
)
つ
天眼通
(
てんがんつう
)
で
考
(
かんが
)
へて
見
(
み
)
てくれないか』
132
雪公
(
ゆきこう
)
『
俺
(
おれ
)
は
雪
(
ゆき
)
の
様
(
やう
)
に、
133
神
(
かみ
)
の
様
(
やう
)
に
身魂
(
みたま
)
の
清
(
きよ
)
い
執着心
(
しふちやくしん
)
のない、
134
白紙
(
はくし
)
主義
(
しゆぎ
)
の
男
(
をとこ
)
だから、
135
腹
(
はら
)
の
中
(
なか
)
迄
(
まで
)
水晶
(
すゐしやう
)
だ。
136
それが
違
(
ちが
)
ふと
思
(
おも
)
ふなら
人込
(
ひとご
)
みの
中
(
なか
)
ででも、
137
ステーシヨンででも
構
(
かま
)
はぬ、
138
一
(
ひと
)
つ
貴様
(
きさま
)
の
短刀
(
あいくち
)
で
俺
(
おれ
)
の
血
(
ち
)
を
調
(
しら
)
べて
見
(
み
)
い………どこを
切
(
き
)
つても
出
(
で
)
る
血
(
ち
)
は
紅
(
あか
)
い、
139
俺
(
おれ
)
の
心
(
こころ
)
もその
通
(
とほ
)
り………だよ』
140
春公
(
はるこう
)
『コリヤ
貴様
(
きさま
)
はいつとても
身魂
(
みたま
)
の
自慢
(
じまん
)
ばかりしやがつて、
141
肝腎
(
かんじん
)
の
天眼通
(
てんがんつう
)
は
如何
(
どう
)
するつもりだい。
142
早
(
はや
)
く
天眼通
(
てんがんつう
)
で
調
(
しら
)
べてくれないか。
143
貴様
(
きさま
)
のやうな
腰抜
(
こしぬけ
)
でも、
144
ここへ
連
(
つ
)
れて
来
(
き
)
たのは
望遠鏡
(
ばうゑんきやう
)
の
代用
(
だいよう
)
にするつもりだから、
145
早
(
はや
)
く
親子
(
おやこ
)
の
所在
(
ありか
)
を
透視
(
とうし
)
せぬかい。
146
貴様
(
きさま
)
は
都
(
みやこ
)
を
出
(
で
)
る
時
(
とき
)
に
屹度
(
きつと
)
、
147
テームス
峠
(
たうげ
)
を
近
(
ちか
)
い
内
(
うち
)
に
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
と
小糸姫
(
こいとひめ
)
が
通
(
とほ
)
るに
違
(
ちが
)
ひないと
大黒主
(
おほくろぬし
)
様
(
さま
)
に
申上
(
まをしあ
)
げよつたものだから、
148
こんな
処
(
ところ
)
に
関所
(
せきしよ
)
を
拵
(
こしら
)
へて
毎日
(
まいにち
)
日日
(
ひにち
)
待
(
ま
)
たされて
居
(
ゐ
)
るのぢやないか』
149
雪公
(
ゆきこう
)
『あの
時
(
とき
)
は
天眼通
(
てんがんつう
)
の
持合
(
もちあは
)
せが
大分
(
だいぶ
)
にあつたが、
150
ここへ
来
(
き
)
てから
貴様
(
きさま
)
等
(
ら
)
の
悪身魂
(
あくみたま
)
が
感染
(
かんせん
)
して、
151
サツパリ
天眼通
(
てんがんつう
)
が
利
(
き
)
かぬやうになつて
了
(
しま
)
つたのよ。
152
俺
(
おれ
)
の
考
(
かんが
)
へでは
此
(
この
)
広
(
ひろ
)
い
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
、
153
峠
(
たうげ
)
も
沢山
(
たくさん
)
あるし、
154
二人
(
ふたり
)
の
母娘
(
おやこ
)
が
此
(
この
)
峠
(
たうげ
)
を
一代
(
いちだい
)
の
中
(
うち
)
に
通
(
とほ
)
るとも
通
(
とほ
)
らぬとも、
155
見当
(
けんたう
)
がつかぬ
様
(
やう
)
になつたワイ』
156
春公
(
はるこう
)
『
貴様
(
きさま
)
はさうすると
大黒主
(
おほくろぬし
)
様
(
さま
)
を
誑
(
たばか
)
つたのだなア。
157
本当
(
ほんたう
)
に
太
(
ふと
)
い
奴
(
やつ
)
だ。
158
早
(
はや
)
く
本当
(
ほんたう
)
の
事
(
こと
)
を
吐
(
こ
)
かぬか』
159
雪公
(
ゆきこう
)
『ヨシ、
160
こかぬ
事
(
こと
)
はない、
161
太
(
ふと
)
い
奴
(
やつ
)
だな』
162
と
真黒
(
まつくろ
)
の
尻
(
けつ
)
をまくり
上
(
あ
)
げ
春公
(
はるこう
)
の
前
(
まへ
)
に
左巻
(
ひだりまき
)
を
捻
(
ひね
)
り
出
(
だ
)
した。
163
春公
(
はるこう
)
『エー
糞奴
(
くそやつこ
)
め、
164
糞
(
くそ
)
の
間
(
ま
)
にもあはぬ
代物
(
しろもの
)
だな』
165
雪公
(
ゆきこう
)
『ひどい
奴
(
やつ
)
だ。
166
こけと
吐
(
ぬか
)
したぢやないか。
167
これでも
俺
(
おれ
)
は
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
だぞ』
168
春公
(
はるこう
)
『エー
仕方
(
しかた
)
のない、
169
穀潰
(
ごくつぶ
)
しの
製糞器
(
せいふんき
)
だな』
170
とぼやいてゐる。
171
そこへ
黄金姫
(
わうごんひめ
)
、
172
清照姫
(
きよてるひめ
)
は
駻馬
(
かんば
)
に
跨
(
またが
)
り、
173
二人
(
ふたり
)
の
男
(
をとこ
)
は
馬
(
うま
)
の
口
(
くち
)
をとり、
174
『ハイハイハイ』と
勇
(
いさ
)
ましく
登
(
のぼ
)
つて
来
(
き
)
た。
175
春公
(
はるこう
)
と
雪公
(
ゆきこう
)
は
目
(
め
)
を
怒
(
いか
)
らし、
176
春公
(
はるこう
)
『オイ、
177
一寸
(
ちよつと
)
待
(
ま
)
つた。
178
其
(
その
)
馬
(
うま
)
をここへ
止
(
と
)
めエ』
179
レーブ『ヨシ、
180
止
(
と
)
めなら
止
(
と
)
めもしよう。
181
然
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
吠面
(
ほえづら
)
かわかぬやうにせえよ。
182
此
(
この
)
方
(
かた
)
は
貴様
(
きさま
)
等
(
ら
)
の
朝晩
(
あさばん
)
探
(
たづ
)
ねて
居
(
を
)
る
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
の
奥様
(
おくさま
)
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
様
(
さま
)
と
一人娘
(
ひとりむすめ
)
の
小糸姫
(
こいとひめ
)
様
(
さま
)
だ。
183
よく
拝
(
をが
)
んでおけ、
184
目
(
め
)
が
潰
(
つぶ
)
れるぞよ。
185
光芒
(
くわうばう
)
陸離
(
りくり
)
たる
懐剣
(
くわいけん
)
を
呑
(
の
)
んで
厶
(
ござ
)
る
八岐
(
やまた
)
の
大蛇
(
をろち
)
のやうな
御
(
お
)
方
(
かた
)
だから
生命
(
いのち
)
が
惜
(
をし
)
くなければ
調
(
しら
)
べたがよからう』
186
春公
(
はるこう
)
『これやレーブ、
187
そんな
嘘
(
うそ
)
を
吐
(
ぬか
)
しても
承知
(
しようち
)
せないぞ。
188
人
(
ひと
)
を
盲
(
めくら
)
にするにも
程
(
ほど
)
がある。
189
そいつア
化物
(
ばけもの
)
ぢやないか。
190
目
(
め
)
の
玉
(
たま
)
が
五
(
いつ
)
つも
六
(
む
)
つもあり
口
(
くち
)
が
又
(
また
)
四
(
よつ
)
つも
五
(
いつ
)
つもある
化物
(
ばけもの
)
を
馬
(
うま
)
に
乗
(
の
)
せよつて、
191
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
も
小糸姫
(
こいとひめ
)
もあつたものかい。
192
早
(
はや
)
く
通
(
とほ
)
れ、
193
貴様
(
きさま
)
が
出
(
で
)
て
来
(
く
)
ると
此
(
この
)
関小屋
(
せきごや
)
までが
頻
(
しき
)
りに
廻転
(
くわいてん
)
を
始
(
はじ
)
め
出
(
だ
)
した。
194
此
(
この
)
坂道
(
さかみち
)
迄
(
まで
)
が
上
(
うへ
)
になり、
195
下
(
した
)
になり
地異
(
ちい
)
天変
(
てんぺん
)
の
大騒
(
おほさわ
)
ぎだ。
196
早
(
はや
)
うここを
通過
(
つうくわ
)
せぬかい。
197
気味
(
きび
)
が
悪
(
わる
)
いワイ。
198
俺
(
おれ
)
の
探
(
さが
)
して
居
(
ゐ
)
るのは、
199
そんな
化物
(
ばけもの
)
の
婆
(
ばば
)
アや
娘
(
むすめ
)
ぢやない。
200
正真
(
しやうしん
)
正銘
(
しやうめい
)
の
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
、
201
小糸姫
(
こいとひめ
)
だ』
202
レーブ『
化物
(
ばけもの
)
だからここに
下
(
おろ
)
してやらうと
云
(
い
)
ふのだ。
203
随分
(
ずゐぶん
)
神変
(
しんぺん
)
不思議
(
ふしぎ
)
の
芸当
(
げいたう
)
をやりよるぞ。
204
まあ
一
(
ひと
)
つ
首筋
(
くびすぢ
)
でも
掴
(
つか
)
んで
此
(
この
)
谷底
(
たにそこ
)
へでも「プリン プリン ドスン、
205
キヤーツ」とやつて
貰
(
もら
)
へよ。
206
イヒヽヽヽ』
207
春公
(
はるこう
)
『コラ、
208
レーブ、
209
可笑
(
おか
)
しさうに
何
(
なん
)
だ。
210
妙
(
めう
)
な
笑
(
わら
)
ひ
声
(
ごゑ
)
を
出
(
だ
)
しよつて、
211
俺
(
おれ
)
の
頼
(
たの
)
みぢやからトツトと
此処
(
ここ
)
を
通過
(
つうくわ
)
してくれ、
212
俺
(
おれ
)
は
暫
(
しばら
)
く
目
(
め
)
を
塞
(
ふさ
)
いでゐるから……』
213
レーブ『さう
吐
(
ぬか
)
しや
仕方
(
しかた
)
がない、
214
俺
(
おれ
)
も
同
(
おな
)
じ
信者
(
しんじや
)
の
厚誼
(
よしみ
)
で
貴様
(
きさま
)
の
要求
(
えうきう
)
を
無下
(
むげ
)
に
拒絶
(
きよぜつ
)
する
訳
(
わけ
)
にも
行
(
ゆ
)
かないから、
215
特別
(
とくべつ
)
を
以
(
もつ
)
て
貴様
(
きさま
)
の
嘆願
(
たんぐわん
)
を
許容
(
きよよう
)
してやる。
216
モシモシ
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
様
(
さま
)
、
217
小糸姫
(
こいとひめ
)
様
(
さま
)
、
218
関守
(
せきもり
)
があのやうにいつて
嘆願
(
たんぐわん
)
しますから、
219
貴女
(
あなた
)
も
手荒
(
てあら
)
いことをせずに
許
(
ゆる
)
してやつて
下
(
くだ
)
さい。
220
小糸姫
(
こいとひめ
)
様
(
さま
)
の
武勇
(
ぶゆう
)
を
発揮
(
はつき
)
されやうものなら
此奴
(
こいつ
)
等
(
ら
)
五
(
ご
)
人
(
にん
)
の
笠
(
かさ
)
の
台
(
だい
)
は
飛
(
と
)
んで
了
(
しま
)
ふのみならず、
221
四肢
(
しこ
)
五体
(
ごたい
)
メチヤメチヤになりますから。
222
人
(
ひと
)
を
助
(
たす
)
けるのは
宣伝使
(
せんでんし
)
の
御
(
お
)
役
(
やく
)
、
223
今日
(
けふ
)
ばかりは
見逃
(
みのが
)
し、
224
聞逃
(
ききのが
)
しを
彼
(
かれ
)
等
(
ら
)
五
(
ご
)
人
(
にん
)
に
代
(
かは
)
つて、
225
レーブがお
願
(
ねが
)
ひ
致
(
いた
)
します』
226
黄金姫
(
わうごんひめ
)
『
許
(
ゆる
)
し
難
(
がた
)
き
関守
(
せきもり
)
なれどもお
前
(
まへ
)
の
願
(
ねが
)
ひによつて
苛
(
いぢ
)
める
事
(
こと
)
だけは
止
(
や
)
めてやらう。
227
其
(
その
)
代
(
かは
)
りにレーブ、
228
お
前
(
まへ
)
も
一杯
(
いつぱい
)
関守
(
せきもり
)
の
酒
(
さけ
)
を
頂戴
(
ちやうだい
)
して
元気
(
げんき
)
をつけて
行
(
い
)
つたらよからうぞ』
229
レーブ『
何
(
なん
)
と
気
(
き
)
の
利
(
き
)
いたお
客
(
きやく
)
さまだこと。
230
オイ
春公
(
はるこう
)
、
231
賄賂
(
わいろ
)
だ。
232
見逃
(
みのが
)
し
賃
(
ちん
)
に
其
(
その
)
徳利
(
とつくり
)
を
一本
(
いつぽん
)
貸
(
か
)
せ、
233
グヅグヅ
吐
(
ぬか
)
すと
此
(
この
)
馬
(
うま
)
は
一寸
(
ちよつと
)
も
動
(
うご
)
かないぞ』
234
春公
(
はるこう
)
『
徳利
(
とくり
)
一本
(
いつぽん
)
で
宜
(
よろ
)
しいか。
235
二人
(
ふたり
)
の
馬方
(
うまかた
)
ならば
二
(
ふた
)
つ
要
(
い
)
りませう』
236
レーブ『
何
(
なん
)
とまあ、
237
気
(
き
)
の
利
(
き
)
いたもの
同志
(
どうし
)
の
寄合
(
よりあひ
)
だ。
238
お
客
(
きやく
)
さまもお
客
(
きやく
)
さまなら
関守
(
せきもり
)
も
関守
(
せきもり
)
だな。
239
そんなら
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
なれど
二本
(
にほん
)
頂戴
(
ちやうだい
)
して
行
(
ゆ
)
かう。
240
道々
(
みちみち
)
トツクリ
と
飲
(
の
)
んでお
供
(
とも
)
をしようかい』
241
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
春公
(
はるこう
)
の
突
(
つ
)
き
出
(
だ
)
す
二本
(
にほん
)
の
徳利
(
とつくり
)
を
受取
(
うけと
)
り『ハーイハイハイハイ』『ブーブーブー』
242
レーブ『エーこん
畜生
(
ちくしやう
)
、
243
屁
(
へ
)
ばかり
垂
(
た
)
れよつて、
244
臭
(
くさ
)
いワイ。
245
オイ
皆
(
みな
)
の
関守
(
せきもり
)
、
246
これでヤツト
安心
(
あんしん
)
しただらう。
247
何事
(
なにごと
)
も
羽織
(
はおり
)
の
紐
(
ひも
)
だ、
248
皆
(
みな
)
胸
(
むね
)
にある。
249
以心
(
いしん
)
伝心
(
でんしん
)
教外
(
けうげ
)
別伝
(
べつでん
)
、
250
云
(
い
)
はぬは
云
(
い
)
ふにいやまさる。
251
俺
(
おれ
)
の
雅量
(
がりやう
)
も
分
(
わか
)
つただらうな』
252
春公
(
はるこう
)
『オイ、
253
レーブ、
254
春公
(
はるこう
)
さまの
雅量
(
がりやう
)
も
買
(
か
)
つてくれるだらうな』
255
レーブ『
恐怖心
(
きようふしん
)
に
駆
(
か
)
られ
仕様
(
しやう
)
ことなしの
雅量
(
がりやう
)
だ。
256
チツとお
粗末
(
そまつ
)
ぢやけど、
257
こんな
処
(
ところ
)
で
荒仕事
(
あらしごと
)
するのも
面倒
(
めんだう
)
だから、
258
粗製
(
そせい
)
濫造品
(
らんざうひん
)
の
雅量
(
がりやう
)
を
酒
(
さけ
)
二升
(
にしよう
)
の
熨斗
(
のし
)
をつけて
買
(
か
)
つてやらう。
259
ハイハイハイ』
260
と
馬
(
うま
)
をいましめ
乍
(
なが
)
ら
坂道
(
さかみち
)
を
下
(
くだ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
261
春公
(
はるこう
)
はヤツと
胸
(
むね
)
を
撫
(
な
)
で
下
(
お
)
ろし、
262
春公
『アーア、
263
ドテライ
奴
(
やつ
)
が、
264
やつて
来
(
き
)
よつて、
265
ビツクリ
虫
(
むし
)
が
飛出
(
とびだ
)
し、
266
肝玉
(
きもたま
)
が
洋行
(
やうかう
)
する
処
(
ところ
)
だつた。
267
睾玉
(
きんたま
)
の
奴
(
やつ
)
、
268
俺
(
おれ
)
にこたへもなしに
何処
(
どこ
)
かへ
消滅
(
せうめつ
)
して
了
(
しま
)
ひよつたな』
269
雪公
(
ゆきこう
)
『
俺
(
おれ
)
も
睾丸
(
きんたま
)
の
所在
(
ありか
)
が
分
(
わか
)
らなくなつて
了
(
しま
)
つた。
270
一方
(
いつぱう
)
の
睾丸
(
きんたま
)
は
婆
(
ばば
)
なり、
271
一方
(
いつぱう
)
は
娘
(
むすめ
)
だ。
272
何処
(
どこ
)
へ
取
(
と
)
り
逃
(
に
)
がしたか
残念
(
ざんねん
)
な
事
(
こと
)
をしたワイ。
273
折角
(
せつかく
)
テームス
峠
(
たうげ
)
でピツタリ
出会
(
であ
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
274
日頃
(
ひごろ
)
の
元気
(
げんき
)
は
何処
(
どこ
)
へやら
睾丸
(
きんたま
)
の
奴
(
やつ
)
三十六
(
さんじふろく
)
計
(
けい
)
の
奥
(
おく
)
の
手
(
て
)
を
出
(
だ
)
して、
275
何処
(
どこ
)
かへ
姿
(
すがた
)
をかくすものだから、
276
此
(
この
)
雪公
(
ゆきこう
)
さまも
手
(
て
)
の
出
(
だ
)
しやうが
無
(
な
)
く、
277
殆
(
ほとん
)
ど
ゆき
詰
(
つま
)
りだ。
278
オイ
紅葉
(
もみぢ
)
、
279
貴様
(
きさま
)
の
睾丸
(
きんたま
)
は
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
かな』
280
紅葉
(
もみぢ
)
『
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
だ。
281
よつぽど
俺
(
おれ
)
とは
利口
(
りこう
)
なと
見
(
み
)
えるワイ。
282
俺
(
おれ
)
の
金助
(
きんすけ
)
は
矢張
(
やつぱ
)
り
君子
(
くんし
)
だなア。
283
危
(
あやふ
)
きに
近
(
ちか
)
よらずと
云
(
い
)
つて
逸早
(
いちはや
)
く
飛行船
(
ひかうせん
)
へ
乗
(
の
)
つて
天国
(
てんごく
)
へ
避難
(
ひなん
)
しよつたらしいワイ。
284
アハヽヽヽ』
285
雪公
(
ゆきこう
)
『あれこそ、
286
本当
(
ほんたう
)
の
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
、
287
小糸姫
(
こいとひめ
)
に
違
(
ちが
)
ひないのう。
288
然
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
らどこともなしに
威厳
(
ゐげん
)
が
備
(
そな
)
はり
面
(
おもて
)
を
向
(
む
)
ける
事
(
こと
)
も
出来
(
でき
)
ないやうな
神力
(
しんりき
)
が
輝
(
かがや
)
いて
居
(
ゐ
)
るので、
289
一目
(
ひとめ
)
見
(
み
)
るなりギヨツとしたよ。
290
到底
(
たうてい
)
俺
(
おれ
)
等
(
たち
)
の
手
(
て
)
にあふ
代物
(
しろもの
)
ぢやないワ。
291
然
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
俺
(
おれ
)
の
天眼通
(
てんがんつう
)
はヤツパリ
的中
(
てきちう
)
しただらう』
292
春公
(
はるこう
)
『コラコラ、
293
これ
限
(
き
)
り
何
(
なに
)
も
云
(
い
)
うてはならないぞ。
294
肝腎
(
かんじん
)
の
目的物
(
もくてきぶつ
)
を
見
(
み
)
す
見
(
み
)
す
取逃
(
とりにが
)
したのだから、
295
こんな
事
(
こと
)
が
見付
(
みつ
)
かつたら
忽
(
たちま
)
ち
罷
(
ひ
)
の
字
(
じ
)
と
免
(
めん
)
の
字
(
じ
)
だ。
296
只今
(
ただいま
)
限
(
かぎ
)
り
沈黙
(
ちんもく
)
を
厳命
(
げんめい
)
する』
297
雪公
(
ゆきこう
)
『アハヽヽヽ、
298
日頃
(
ひごろ
)
の
業託
(
ごふたく
)
に
似
(
に
)
ず、
299
何奴
(
どいつ
)
も
此奴
(
こいつ
)
も
猫
(
ねこ
)
に
出会
(
であ
)
うた
鼠
(
ねずみ
)
の
様
(
やう
)
なスタイルで
其
(
その
)
態
(
ざま
)
つたら
見
(
み
)
られたものぢやないわ。
300
大黒主
(
おほくろぬし
)
様
(
さま
)
もこんな
厄介
(
やくかい
)
な
代物
(
しろもの
)
を
抱
(
かか
)
へて
居
(
ゐ
)
ちや
本当
(
ほんたう
)
にお
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
だ。
301
前途
(
ぜんと
)
が
思
(
おも
)
ひやられるワイ。
302
ウフヽヽヽ』
303
今迄
(
いままで
)
空
(
そら
)
を
包
(
つつ
)
んで
居
(
ゐ
)
た
淡雲
(
たんうん
)
はカラリと
晴
(
は
)
れて
小春
(
こはる
)
の
太陽
(
たいやう
)
は
手厳
(
てきび
)
しく
酒
(
さけ
)
に
酔
(
よ
)
うた
五
(
ご
)
人
(
にん
)
の
頭
(
あたま
)
を
金槌
(
かなづち
)
で
叩
(
たた
)
く
様
(
やう
)
にガンガンと
照
(
て
)
らさせ
給
(
たま
)
うた。
304
五
(
ご
)
人
(
にん
)
は
頭
(
あたま
)
を
抱
(
かか
)
へ、
305
ウンウンと
呻
(
うめ
)
き
乍
(
なが
)
ら
其
(
その
)
場
(
ば
)
に
蹲
(
しやが
)
んで
了
(
しま
)
つた。
306
(
大正一一・一〇・二九
旧九・一〇
北村隆光
録)
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