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霊界物語
舎身活躍(第37~48巻)
第39巻(寅の巻)
序歌
総説
第1篇 伊祖の神風
第1章 大黒主
第2章 評定
第3章 出師
第2篇 黄金清照
第4章 河鹿越
第5章 人の心
第6章 妖霧
第7章 都率天
第8章 母と娘
第3篇 宿世の山道
第9章 九死一生
第10章 八の字
第11章 鼻摘
第12章 種明志
第4篇 浮木の岩窟
第13章 浮木の森
第14章 清春山
第15章 焼糞
第16章 親子対面
第5篇 馬蹄の反影
第17章 テームス峠
第18章 関所守
第19章 玉山嵐
附録 大祓祝詞解
余白歌
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霊界物語
>
舎身活躍(第37~48巻)
>
第39巻(寅の巻)
> 第5篇 馬蹄の反影 > 第19章 玉山嵐
<<< 関所守
(B)
(N)
附録 大祓祝詞解 >>>
第一九章
玉山嵐
(
たまやまあらし
)
〔一〇八四〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第39巻 舎身活躍 寅の巻
篇:
第5篇 馬蹄の反影
よみ(新仮名遣い):
ばていのはんえい
章:
第19章 玉山嵐
よみ(新仮名遣い):
たまやまあらし
通し章番号:
1084
口述日:
1922(大正11)年10月29日(旧09月10日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年5月5日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
黄金姫たち一行は、フサの国のライオン河に着いた。橋がないので、馬に乗ったまま河を泳いで渡らなければならない。二人は水馬の心得があったので騎乗のまま一里ばかりの河を渡り切った。
レーブたちも泳いで河を渡りきり、休息していたところへ、バラモン教の釘彦・片彦の騎馬隊がやってきた。騎馬隊は一行には目もくれずに河に入って向こう岸へ行ってしまった。
レーブは釘彦・片彦が蜈蚣姫と小糸姫を捜索している先遣隊であることを知っていたので、彼らが気が付かずに行ってしまったことに胸をなでおろした。しかし黄金姫はなぜか、レーブたちにここで別れようと切り出した。
レーブは仕方なく、二人と別れることにした。もう一人の馬子は物も言わずに森林に姿を隠してしまった。すると、先に河を渡った騎馬隊のうち二三が、引き返してきてレーブに二人の女について問いただした。
レーブは、騎馬武者たちを足止めして黄金姫、小糸姫を先に逃がそうと話をはぐらかし、またこの先の山道は細くて馬が詰まってしまうから、徒歩で追いかけるしかないと言って引き留めた。
武者たちは、レーブが鬼熊別の部下であることを認めた。レーブは、自分も蜈蚣姫と小糸姫を探しているのだが、先の女たちはひどい人相で、人違いだったと証言した。武者たちはあきらめて帰って行った。
レーブはそれを見届けると、黄金姫と清照姫の後を追って行った。途中、道端で休んでいた黄金姫が走っていくレーブを見かけて声をかけた。黄金姫は、もう一人の馬方がスパイだと見抜いてわざとレーブと別行動をして引き離したのであった。
そこへ、人馬・矢叫び・軍鼓の音がものすごく響いてきた。黄金姫は立ち上がり、神軍と魔軍の戦いに備えて清照姫とレーブに覚悟を呼びかけた。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-11-23 12:41:59
OBC :
rm3919
愛善世界社版:
270頁
八幡書店版:
第7輯 378頁
修補版:
校定版:
283頁
普及版:
120頁
初版:
ページ備考:
001
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
002
秋野
(
あきの
)
を
彩
(
いろ
)
どる
黄金姫
(
わうごんひめ
)
の
003
神
(
かみ
)
の
司
(
つかさ
)
を
初
(
はじ
)
めとし
004
月日
(
つきひ
)
も
四方
(
よも
)
に
清照姫
(
きよてるひめ
)
の
005
貴
(
うづ
)
の
命
(
みこと
)
と
只
(
ただ
)
二人
(
ふたり
)
006
雲
(
くも
)
つく
山
(
やま
)
を
駒
(
こま
)
に
乗
(
の
)
り
007
漸
(
やうや
)
く
頂上
(
ちやうじやう
)
にいざり
着
(
つ
)
き
008
二人
(
ふたり
)
の
馬子
(
まご
)
に
送
(
おく
)
られて
009
胸突坂
(
むなつきざか
)
を
下
(
くだ
)
りつつ
010
夜
(
よ
)
を
日
(
ひ
)
についでフサの
国
(
くに
)
011
ライオン
河
(
がは
)
に
着
(
つ
)
きにける。
012
レーブ『モシ
奥様
(
おくさま
)
、
013
ここが
有名
(
いうめい
)
な
波斯
(
フサ
)
のライオン
河
(
がは
)
で
厶
(
ござ
)
います。
014
橋梁
(
けうりやう
)
は
無
(
な
)
し、
015
如何
(
どう
)
しても
馬
(
うま
)
で
越
(
こ
)
さねばなりませぬが、
016
私
(
わたし
)
は
馬丁
(
べつとう
)
の
事
(
こと
)
ですから、
017
向
(
むか
)
ふへ
泳
(
およ
)
ぎ
渡
(
わた
)
りを
致
(
いた
)
します。
018
どうぞ
此
(
この
)
馬
(
うま
)
に
乗
(
の
)
つて
向
(
むか
)
ふ
岸
(
ぎし
)
へお
渡
(
わた
)
り
下
(
くだ
)
さい。
019
水馬
(
すゐば
)
に
乗
(
の
)
るのはお
心得
(
こころえ
)
でせうが、
020
馬
(
うま
)
の
腹帯
(
はらおび
)
を
緩
(
ゆる
)
め、
021
手綱
(
たづな
)
を
一方
(
いつぱう
)
の
手
(
て
)
にグツと
握
(
にぎ
)
り、
022
一方
(
いつぱう
)
の
手
(
て
)
を
放
(
はな
)
して、
023
馬
(
うま
)
も
人
(
ひと
)
も
水
(
みづ
)
に
浮
(
う
)
き
綱
(
つな
)
と
鬣
(
たてがみ
)
とを
一緒
(
いつしよ
)
に
握
(
にぎ
)
つて
渡
(
わた
)
らねば、
024
河
(
かは
)
の
真
(
ま
)
ん
中
(
なか
)
で
溺没
(
できぼつ
)
する
虞
(
おそれ
)
があります、
025
其
(
その
)
積
(
つもり
)
で
渡
(
わた
)
つて
下
(
くだ
)
さい』
026
黄金姫
(
わうごんひめ
)
『
私
(
わたし
)
もエデンの
河
(
かは
)
で
水馬
(
すゐば
)
を
稽古
(
けいこ
)
した
覚
(
おぼえ
)
がある、
027
私
(
わたし
)
は
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
だが、
028
清照姫
(
きよてるひめ
)
はまだ
水馬
(
すゐば
)
の
経験
(
けいけん
)
がないから
案
(
あん
)
じられたものだ。
029
何
(
なん
)
とか
良
(
よ
)
い
工夫
(
くふう
)
はあるまいかな』
030
清照姫
(
きよてるひめ
)
『
決
(
けつ
)
して
決
(
けつ
)
して
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
下
(
くだ
)
さるな、
031
私
(
わたし
)
も
地恩城
(
ちおんじやう
)
に
於
(
おい
)
て
時々
(
ときどき
)
エーリス
河
(
がは
)
に
馬
(
うま
)
を
馳
(
は
)
せ、
032
水馬
(
すゐば
)
の
遊
(
あそ
)
びをやつた
経験
(
けいけん
)
があります』
033
黄金姫
(
わうごんひめ
)
『アヽそれなら
安心
(
あんしん
)
だ、
034
サア
用意
(
ようい
)
に
取
(
とり
)
かからう』
035
レーブ『
其
(
その
)
儘
(
まま
)
にしてゐて
下
(
くだ
)
さい、
036
腹帯
(
はらおび
)
を
私
(
わたし
)
が
緩
(
ゆる
)
めます』
037
と
河渡
(
かはわた
)
りの
準備
(
じゆんび
)
を
整
(
ととの
)
へ、
038
レーブは
両馬
(
りやうば
)
の
尻
(
しり
)
を
鞭
(
むち
)
にて
力限
(
ちからかぎ
)
りにぶちすゑた。
039
駻馬
(
かんば
)
は
躍
(
をど
)
り
上
(
あが
)
つて、
040
さしもの
激流
(
げきりう
)
にザンブと
計
(
ばか
)
り
飛込
(
とびこ
)
み、
041
首
(
くび
)
丈
(
だけ
)
を
現
(
あら
)
はして
難
(
なん
)
なく
横巾
(
よこはば
)
一
(
いち
)
里
(
り
)
許
(
ばか
)
りの
大河
(
おほかは
)
を
向
(
むか
)
ふへ
渡
(
わた
)
つて
了
(
しま
)
つた。
042
二人
(
ふたり
)
の
馬子
(
まご
)
は
馬
(
うま
)
の
後
(
あと
)
に
従
(
したが
)
つて
漸
(
やうや
)
く
向岸
(
むかふぎし
)
に
渡
(
わた
)
りつき、
043
各自
(
かくじ
)
に
着衣
(
ちやくい
)
を
絞
(
しぼ
)
り、
044
馬
(
うま
)
を
休養
(
きうやう
)
させてゐた。
045
其処
(
そこ
)
へ
数十
(
すうじふ
)
人
(
にん
)
の
部下
(
ぶか
)
を
引
(
ひき
)
つれてやつて
来
(
き
)
たのは
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
股肱
(
ここう
)
と
頼
(
たの
)
む
釘彦
(
くぎひこ
)
、
046
久米彦
(
くめひこ
)
の
両人
(
りやうにん
)
である。
047
采配
(
さいはい
)
を
打振
(
うちふ
)
り
打振
(
うちふ
)
り、
048
荒馬
(
あらうま
)
に
跨
(
またが
)
つてライオン
河
(
がは
)
の
岸
(
きし
)
を
目
(
め
)
がけて
一目散
(
いちもくさん
)
にかけ
来
(
きた
)
り、
049
その
勢
(
いきほひ
)
に
乗
(
じやう
)
じて、
050
ザバザバザバと
数十騎
(
すうじつき
)
の
騎馬隊
(
きばたい
)
は
黄金姫
(
わうごんひめ
)
一行
(
いつかう
)
の
姿
(
すがた
)
に
目
(
め
)
もかけず、
051
向岸
(
むかふぎし
)
へ
渡
(
わた
)
つて
了
(
しま
)
つた。
052
レーブは
之
(
これ
)
を
眺
(
なが
)
めて
胸
(
むね
)
なでおろし、
053
レーブ
『アヽ
大変
(
たいへん
)
な
事
(
こと
)
になる
所
(
ところ
)
だつたが、
054
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のおかげで
貴女
(
あなた
)
を
捜索
(
そうさく
)
してゐる
釘彦
(
くぎひこ
)
の
一隊
(
いつたい
)
は
向
(
むか
)
ふへ
渡
(
わた
)
りました。
055
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
彼奴
(
あいつ
)
は
先鋒隊
(
せんぽうたい
)
に
違
(
ちが
)
ひありませぬ。
056
まだまだ
油断
(
ゆだん
)
はなりますまい。
057
浮木
(
うきき
)
の
森
(
もり
)
の
失敗
(
しつぱい
)
を
回復
(
くわいふく
)
せむと、
058
大軍
(
たいぐん
)
を
引
(
ひき
)
つれてやつて
来
(
き
)
たのでせう、
059
言
(
い
)
はば
今
(
いま
)
渡
(
わた
)
つた
奴
(
やつ
)
は
斥候
(
せきこう
)
兼
(
けん
)
先鋒隊
(
せんぽうたい
)
のやうな
役
(
やく
)
まはりです。
060
これから
此処
(
ここ
)
に
馬
(
うま
)
を
棄
(
す
)
てて
乞食
(
こじき
)
の
姿
(
すがた
)
に
化
(
ば
)
けて
無事
(
ぶじ
)
に
難関
(
なんくわん
)
を
通過
(
つうくわ
)
し、
061
タルの
港
(
みなと
)
まで
参
(
まゐ
)
りませう』
062
清照姫
(
きよてるひめ
)
『レーブ、
063
さう
心配
(
しんぱい
)
するには
及
(
およ
)
ばぬ。
064
吾々
(
われわれ
)
には
尊
(
たふと
)
き
神
(
かみ
)
の
御
(
お
)
守
(
まも
)
りがある。
065
無限
(
むげん
)
絶対
(
ぜつたい
)
無始
(
むし
)
無終
(
むしう
)
の
神力
(
しんりき
)
を
具備
(
ぐび
)
し
玉
(
たま
)
ふ
国治立
(
くにはるたちの
)
命
(
みこと
)
の
厚
(
あつ
)
き
御
(
お
)
守
(
まも
)
りあれば
如何
(
いか
)
なる
敵
(
てき
)
も
決
(
けつ
)
して
恐
(
おそ
)
るるには
及
(
およ
)
びますまい。
066
臆病風
(
おくびやうかぜ
)
に
襲
(
おそ
)
はれ、
067
水禽
(
みづどり
)
の
羽音
(
はおと
)
に
驚
(
おどろ
)
くやうな
愚
(
ぐ
)
を
学
(
まな
)
んでは、
068
宣伝使
(
せんでんし
)
としての
貫目
(
くわんめ
)
はゼロです。
069
ナアお
母
(
か
)
アさま、
070
汚
(
けが
)
らはしい
乞食
(
こじき
)
の
風
(
ふう
)
なんかして
行
(
ゆ
)
くよりも、
071
正々
(
せいせい
)
堂々
(
だうだう
)
と
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
歌
(
うた
)
ひ、
072
四辺
(
あたり
)
の
木魂
(
こだま
)
を
響
(
ひび
)
かせ
乍
(
なが
)
ら
進
(
すす
)
まうぢやありませぬか』
073
黄金姫
(
わうごんひめ
)
『お
前
(
まへ
)
の
言
(
い
)
ふ
通
(
とほ
)
り、
074
心
(
こころ
)
が
弱
(
よわ
)
くては
猛獣
(
まうじう
)
の
猛
(
たけ
)
び
狂
(
くる
)
ふ
荒野
(
あらの
)
ケ
原
(
はら
)
を
横断
(
わうだん
)
する
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ない。
075
レーブ、
076
お
前
(
まへ
)
はモウこれから
帰
(
かへ
)
つてくれ、
077
イヤ
自由
(
じいう
)
行動
(
かうどう
)
を
取
(
と
)
つたがよかろ、
078
万一
(
まんいち
)
途中
(
とちう
)
に
於
(
おい
)
て、
079
数万
(
すうまん
)
の
敵
(
てき
)
に
出会
(
でつくは
)
した
時
(
とき
)
は
足手纏
(
あしてまとひ
)
になつて、
080
却
(
かへつ
)
て
味方
(
みかた
)
の
不利
(
ふり
)
だから……』
081
レーブ『モシ
奥様
(
おくさま
)
、
082
それは
余
(
あんま
)
り
惨酷
(
ざんこく
)
ぢやありませぬか、
083
私
(
わたし
)
をここまでお
供
(
とも
)
さしておき
乍
(
なが
)
ら、
084
見限
(
みかぎ
)
り
遊
(
あそ
)
ばしたのぢや
御座
(
ござ
)
いませぬか。
085
何
(
なん
)
と
仰有
(
おつしや
)
つても
足
(
あし
)
の
続
(
つづ
)
く
丈
(
だけ
)
はお
供
(
とも
)
を
致
(
いた
)
します』
086
黄金姫
(
わうごんひめ
)
『
凡
(
すべ
)
て
戦
(
いくさ
)
といふものは
大多数
(
だいたすう
)
の
味方
(
みかた
)
を
以
(
もつ
)
て
敵
(
てき
)
に
向
(
むか
)
ふか、
087
さなくば
只
(
ただ
)
一人
(
ひとり
)
敵
(
てき
)
に
向
(
むか
)
つて
突
(
つ
)
き
入
(
い
)
る
方
(
はう
)
が
大変
(
たいへん
)
な
利益
(
りえき
)
だ。
088
獅子
(
しし
)
奮迅
(
ふんじん
)
の
勇気
(
ゆうき
)
を
揮
(
ふる
)
ふには
一人
(
ひとり
)
に
限
(
かぎ
)
る、
089
手当
(
てあた
)
り
次第
(
しだい
)
、
090
斬
(
き
)
つた
奴
(
やつ
)
は
皆
(
みな
)
敵
(
てき
)
だ。
091
余
(
あま
)
り
慌
(
あわ
)
てて
味方
(
みかた
)
を
斬
(
き
)
りはせぬかといふやうな
気遣
(
きづか
)
ひがあつては、
092
到底
(
たうてい
)
充分
(
じうぶん
)
の
活動
(
くわつどう
)
は
出来
(
でき
)
ない、
093
ここの
道理
(
だうり
)
を
聞分
(
ききわ
)
けて、
094
どうぞ
別
(
わか
)
れて
下
(
くだ
)
さい。
095
ハルナの
都
(
みやこ
)
でお
目
(
め
)
にかからうから……』
096
レーブ『あなたは
一人
(
ひとり
)
の
方
(
はう
)
が
良
(
よ
)
いと
仰有
(
おつしや
)
つたが
清照姫
(
きよてるひめ
)
様
(
さま
)
は
如何
(
どう
)
なさるのですか』
097
黄金姫
(
わうごんひめ
)
『
清照姫
(
きよてるひめ
)
は
女
(
をんな
)
だから、
098
何程
(
なにほど
)
戦
(
いくさ
)
の
中
(
なか
)
でも
目
(
め
)
につき
易
(
やす
)
い、
099
メツタに
同士討
(
どうしうち
)
をする
気遣
(
きづか
)
ひはないが、
100
お
前
(
まへ
)
等
(
ら
)
二人
(
ふたり
)
は
男
(
をとこ
)
だから、
101
モシ
間違
(
まちが
)
つてお
前
(
まへ
)
を
斃
(
たふ
)
しでもしやうものなら
大変
(
たいへん
)
だ。
102
喧嘩
(
けんくわ
)
は
一人
(
ひとり
)
が
最
(
もつと
)
も
利益
(
りえき
)
だ。
103
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
の
女房
(
にようぼう
)
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
や、
104
娘
(
むすめ
)
の
小糸姫
(
こいとひめ
)
はバラモン
教
(
けう
)
の
寄手
(
よせて
)
に
対
(
たい
)
し、
105
馬丁
(
べつとう
)
に
加勢
(
かせい
)
をさしたといはれては、
106
末代
(
まつだい
)
まで
武勇
(
ぶゆう
)
の
汚
(
けが
)
れになる。
107
どうぞ
頼
(
たの
)
みぢやから
別
(
わか
)
れて
下
(
くだ
)
さい』
108
レーブ『さやうならば
是非
(
ぜひ
)
に
及
(
およ
)
びませぬ、
109
お
別
(
わか
)
れ
致
(
いた
)
しませう。
110
併
(
しか
)
し
主従
(
しゆじゆう
)
の
縁
(
えん
)
は
切
(
き
)
らぬやうに
願
(
ねが
)
ひます』
111
黄金姫
(
わうごんひめ
)
『
互
(
たがひ
)
に
了解
(
れうかい
)
した
上
(
うへ
)
の
別
(
わか
)
れだから
安心
(
あんしん
)
して
下
(
くだ
)
さい、
112
決
(
けつ
)
してお
前
(
まへ
)
は
捨
(
す
)
てませぬから……』
113
レーブ『ハイ
有難
(
ありがた
)
う、
114
左様
(
さやう
)
なれば、
115
ここでお
別
(
わか
)
れ
致
(
いた
)
します。
116
随分
(
ずゐぶん
)
道々
(
みちみち
)
気
(
き
)
をつけてお
出
(
い
)
でなさいませ。
117
お
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
左様
(
さやう
)
なれば、
118
奥様
(
おくさま
)
のお
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
をどうぞ
御
(
ご
)
注意
(
ちうい
)
下
(
くだ
)
さいますやうに』
119
清照姫
(
きよてるひめ
)
『ハア
宜
(
よろ
)
しい、
120
気遣
(
きづか
)
ひしてくれな、
121
私
(
わたし
)
が
附
(
つ
)
いて
居
(
を
)
れば
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
だ、
122
否々
(
いないな
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
がついて
御座
(
ござ
)
るから、
123
大磐石
(
だいばんじやく
)
だよ。
124
サアお
母
(
か
)
アさま
参
(
まゐ
)
りませう』
125
と
先
(
さき
)
に
立
(
た
)
つて
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
126
後
(
あと
)
にレーブは
二人
(
ふたり
)
の
姿
(
すがた
)
のかくるるまで
見送
(
みおく
)
つてゐた。
127
一人
(
ひとり
)
の
馬子
(
まご
)
は
物
(
もの
)
をも
言
(
い
)
はず、
128
何
(
なん
)
に
感
(
かん
)
じてか、
129
傍
(
かたはら
)
の
森林
(
しんりん
)
に
手早
(
てばや
)
く
姿
(
すがた
)
をかくした。
130
レーブは
双手
(
もろて
)
を
組
(
く
)
んで、
131
独言
(
ひとりごと
)
を
言
(
い
)
つてゐる。
132
レーブ
『アヽ
又
(
また
)
私
(
わたし
)
は
一人
(
ひとり
)
になつて
了
(
しま
)
つた。
133
よくよく
連
(
つれ
)
に
縁
(
えん
)
の
無
(
な
)
い
男
(
をとこ
)
だなア、
134
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
らどうも
奥様
(
おくさま
)
や
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
の
事
(
こと
)
が
気
(
き
)
に
掛
(
かか
)
つて
仕方
(
しかた
)
がないワ。
135
ハテ
如何
(
どう
)
したらよからうかなア』
136
と
双手
(
もろて
)
を
組
(
く
)
み
大地
(
だいち
)
に
胡坐
(
あぐら
)
をかいて、
137
俯
(
うつ
)
むいたまま
首
(
くび
)
を
左右
(
さいう
)
に
振
(
ふ
)
つてゐる。
138
かくする
所
(
ところ
)
へ
以前
(
いぜん
)
向
(
むか
)
ふへ
渡
(
わた
)
つた
騎馬隊
(
きばたい
)
の
内
(
うち
)
二三
(
にさん
)
人
(
にん
)
の
男
(
をとこ
)
、
139
一鞭
(
ひとむち
)
あてて
再
(
ふたた
)
び
河
(
かは
)
に
飛込
(
とびこ
)
み
此方
(
こなた
)
を
指
(
さ
)
して
渡
(
わた
)
り
来
(
く
)
る。
140
レーブは……『ハテ
不思議
(
ふしぎ
)
だ、
141
無事
(
ぶじ
)
に
此処
(
ここ
)
を
渡
(
わた
)
りよつたと
思
(
おも
)
つたら、
142
釘彦
(
くぎひこ
)
の
奴
(
やつ
)
、
143
奥様
(
おくさま
)
や
嬢様
(
ぢやうさま
)
の
姿
(
すがた
)
を
見
(
み
)
つけ、
144
召捕
(
めしと
)
らむと
引返
(
ひきかへ
)
して
来
(
き
)
よつたのだらう。
145
逃
(
に
)
げた
所
(
ところ
)
で
仕方
(
しかた
)
がない、
146
此方
(
こちら
)
は
徒歩
(
とほ
)
だ、
147
向
(
むか
)
ふは
馬上
(
ばじやう
)
、
148
到底
(
たうてい
)
追
(
お
)
つつかれずには
居
(
を
)
られない。
149
それよりも
自分
(
じぶん
)
がここに
頑張
(
ぐわんば
)
つて、
150
彼
(
かれ
)
等
(
ら
)
の
行進
(
かうしん
)
を
妨
(
さまた
)
げ、
151
お
二人
(
ふたり
)
様
(
さま
)
が
一足
(
ひとあし
)
でも
敵
(
てき
)
に
遠
(
とほ
)
ざかり
遊
(
あそ
)
ばすやうに、
152
暇
(
ひま
)
取
(
と
)
らせるのが
俺
(
おれ
)
の
務
(
つとめ
)
だ。
153
こんな
事
(
こと
)
があらうとて、
154
奥様
(
おくさま
)
は
別
(
わか
)
れてくれと
仰有
(
おつしや
)
つたのだなア、
155
なんと
偉
(
えら
)
いものだなア。
156
矢張
(
やつぱり
)
凡人
(
ぼんじん
)
とはどことはなしに
変
(
かは
)
つてゐるワイ………』
157
と
感心
(
かんしん
)
し
乍
(
なが
)
ら
一人
(
ひとり
)
呟
(
つぶや
)
いてゐる。
158
そこへ
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
騎馬
(
きば
)
武者
(
むしや
)
、
159
蹄
(
ひづめ
)
の
音
(
おと
)
をカツカツと
響
(
ひび
)
かせ
乍
(
なが
)
ら
進
(
すす
)
み
来
(
きた
)
り、
160
レーブの
姿
(
すがた
)
を
見
(
み
)
て、
161
武士
『オイ、
162
其
(
その
)
方
(
はう
)
が
今
(
いま
)
ここで
話
(
はな
)
して
居
(
を
)
つた
女
(
をんな
)
は
何者
(
なにもの
)
であつたか、
163
逐一
(
ちくいち
)
陳述
(
ちんじゆつ
)
致
(
いた
)
せ』
164
レーブは
何
(
なん
)
とか
言
(
い
)
つて
暇
(
ひま
)
を
取
(
と
)
らせようと
思
(
おも
)
ひ、
165
ワザと
空呆
(
そらとぼ
)
けて、
166
レーブ
『ハイ、
167
何
(
なん
)
でも
人間
(
にんげん
)
の
様
(
やう
)
で
厶
(
ござ
)
いました』
168
武士
(
ぶし
)
『
馬鹿
(
ばか
)
、
169
そんな
事
(
こと
)
を
尋
(
たづ
)
ねてゐるのぢやない、
170
何
(
なん
)
といふ
女
(
をんな
)
だかそれを
聞
(
き
)
かせといふのだ』
171
レーブは
暫
(
しばら
)
く
思案
(
しあん
)
をして
漸
(
やうや
)
くに
顔
(
かほ
)
をあげ、
172
ポカンとした
阿呆面
(
あはうづら
)
をさらして、
173
レーブ
『ハーイ、
174
婆
(
ば
)
アといふ
女
(
をんな
)
と
娘
(
むすめ
)
といふ
女
(
をんな
)
と
二人
(
ふたり
)
通
(
とほ
)
りました』
175
武士
(
ぶし
)
『
馬鹿
(
ばか
)
な
奴
(
やつ
)
だなア、
176
姓名
(
せいめい
)
は
何
(
なん
)
と
申
(
まを
)
すか』
177
レーブ『ハイ、
178
姓名
(
せいめい
)
ですか、
179
姓名
(
せいめい
)
は
生命
(
いのち
)
と
申
(
まを
)
します。
180
命
(
いのち
)
あつての
物種
(
ものだね
)
、
181
お
前
(
まへ
)
さまも
一
(
ひと
)
つここで
一服
(
いつぷく
)
しなさい、
182
長
(
なが
)
い
月日
(
つきひ
)
に
短
(
みじか
)
い
命
(
いのち
)
だ、
183
生命
(
せいめい
)
が
肝腎
(
かんじん
)
だよ。
184
清明
(
せいめい
)
無垢
(
むく
)
の
尊
(
たふと
)
き
神
(
かみ
)
のお
道
(
みち
)
に
仕
(
つか
)
へ
玉
(
たま
)
ふバラモン
教
(
けう
)
の
神司
(
かむづかさ
)
ぢやありませぬか』
185
武士
(
ぶし
)
『エヽ
辛気
(
しんき
)
臭
(
くさ
)
い、
186
貴様
(
きさま
)
は
天下
(
てんか
)
一品
(
いつぴん
)
の
馬鹿者
(
ばかもの
)
だな』
187
レーブ『ハイ、
188
馬
(
うま
)
の
上
(
うへ
)
に
鹿
(
しか
)
が
乗
(
の
)
つて
居
(
を
)
ります、
189
それは
鹿馬者
(
かばもの
)
と
申
(
まを
)
します。
190
鹿
(
しか
)
の
上
(
うへ
)
に
馬
(
うま
)
が
乗
(
の
)
つた
奴
(
やつ
)
が
馬鹿者
(
ばかもの
)
です』
191
武士
(
ぶし
)
『エヽグヅグヅしてゐると、
192
時
(
とき
)
が
遅
(
おく
)
れては
一大事
(
いちだいじ
)
だ』
193
と
駒
(
こま
)
に
鞭
(
むちう
)
ち
駆
(
か
)
け
出
(
だ
)
さうとするを、
194
レーブは
先頭
(
せんとう
)
に
立
(
た
)
つた
馬
(
うま
)
の
轡
(
くつわ
)
をグツと
握
(
にぎ
)
り、
195
レーブ
『
一寸
(
ちよつと
)
待
(
ま
)
つて
下
(
くだ
)
さい、
196
こんな
細
(
ほそ
)
い
道
(
みち
)
、
197
さうあわてると
危
(
あぶ
)
なう
厶
(
ござ
)
いますで、
198
何
(
なん
)
なら
馬
(
うま
)
を
此処
(
ここ
)
に
乗
(
の
)
り
棄
(
す
)
ててお
上
(
のぼ
)
りなさつたらどうですか、
199
此
(
こ
)
の
山
(
やま
)
は
中々
(
なかなか
)
キツイ
山
(
やま
)
で
馬
(
うま
)
が
辷
(
すべ
)
りこけた
途端
(
とたん
)
に、
200
あなたも
一緒
(
いつしよ
)
に
谷底
(
たにぞこ
)
へでも
落
(
お
)
ちようものなら、
201
それこそ
大変
(
たいへん
)
です。
202
最前
(
さいぜん
)
の
婆
(
ば
)
アといふ
女
(
をんな
)
も、
203
ここに
馬
(
うま
)
を
乗
(
の
)
り
棄
(
す
)
てて
上
(
のぼ
)
つた
位
(
くらゐ
)
ですから……』
204
武士
(
ぶし
)
『
何
(
なん
)
と
言
(
い
)
つても
人間
(
にんげん
)
が
歩
(
ある
)
くより
馬
(
うま
)
の
方
(
はう
)
が
早
(
はや
)
い、
205
グヅグヅしてると、
206
女
(
をんな
)
を
見失
(
みうしな
)
つちや
大変
(
たいへん
)
だ。
207
ヤアお
二方
(
ふたかた
)
、
208
私
(
わたし
)
に
構
(
かま
)
はず、
209
さきへ
馬
(
うま
)
で
行
(
い
)
つて
下
(
くだ
)
さい、
210
二人
(
ふたり
)
の
姿
(
すがた
)
を
見失
(
みうしな
)
はぬ
内
(
うち
)
に……』
211
レーブ『ハヽヽヽ、
212
先
(
さき
)
へ
行
(
ゆ
)
かうと
言
(
い
)
つたつて、
213
こんな
羊腸
(
やうちやう
)
の
小路
(
こみち
)
、
214
而
(
しか
)
も
胸突坂
(
むなつきざか
)
と
来
(
き
)
てゐるのだから、
215
先
(
さき
)
の
馬
(
うま
)
が
止
(
とま
)
つた
以上
(
いじやう
)
には
乗越
(
のりこ
)
す
訳
(
わけ
)
には
行
(
ゆ
)
きますまい。
216
此
(
この
)
馬
(
うま
)
はレーブさまが
轡
(
くつは
)
を
握
(
にぎ
)
つた
以上
(
いじやう
)
は、
217
一時
(
ひととき
)
計
(
ばか
)
りは
微躯
(
びく
)
とも
動
(
うご
)
かさぬのだ。
218
其
(
その
)
間
(
あひだ
)
に
逃
(
に
)
げて
下
(
くだ
)
さると
良
(
よ
)
いのだけれどなア』
219
と
小声
(
こごゑ
)
に
呟
(
つぶや
)
く。
220
武士
(
ぶし
)
『エヽ
仕方
(
しかた
)
のない
奴
(
やつ
)
だ、
221
各
(
おのおの
)
方
(
がた
)
、
222
ここに
馬
(
うま
)
をつないで
一走
(
ひとはし
)
り、
223
追
(
お
)
つかけませうか』
224
レーブ『アヽさうなされませ、
225
それの
方
(
はう
)
が
余程
(
よほど
)
安全
(
あんぜん
)
で
宜
(
よろ
)
しい。
226
併
(
しか
)
しあんな
婆
(
ば
)
アや
娘
(
むすめ
)
を
追
(
お
)
つかけて
如何
(
どう
)
なさる
御
(
お
)
考
(
かんが
)
へですか、
227
大方
(
おほかた
)
あなたはあの
婆
(
ばば
)
アや
娘
(
むすめ
)
を
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
、
228
小糸姫
(
こいとひめ
)
様
(
さま
)
だと
思
(
おも
)
つて、
229
追
(
お
)
つかけてお
出
(
い
)
でなさるでせう。
230
それならばお
止
(
や
)
めになさつた
方
(
はう
)
がよかろ、
231
実
(
じつ
)
は
私
(
わたし
)
も
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
様
(
さま
)
の
家来
(
けらい
)
で、
232
母子
(
おやこ
)
の
顔
(
かほ
)
を
見覚
(
みおぼ
)
えてゐるのを
幸
(
さひは
)
ひ、
233
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
から
女房
(
にようばう
)
や
娘
(
むすめ
)
を
捜
(
さが
)
して
来
(
き
)
たならば、
234
褒美
(
ほうび
)
は
望
(
のぞ
)
み
次第
(
しだい
)
と
仰有
(
おつしや
)
つたので、
235
ここ
迄
(
まで
)
捜
(
さが
)
しに
参
(
まゐ
)
りました。
236
所
(
ところ
)
がよう
似
(
に
)
た
婆
(
ばば
)
、
237
娘
(
むすめ
)
だと
思
(
おも
)
ひ、
238
出世
(
しゆつせ
)
をする
時節
(
じせつ
)
が
来
(
き
)
たのだと、
239
雀躍
(
こをど
)
りし
乍
(
なが
)
ら、
240
河
(
かは
)
を
横切
(
よこぎ
)
り
渡
(
わた
)
つて
来
(
き
)
て
見
(
み
)
れば、
241
豈
(
あに
)
計
(
はか
)
らむや、
242
妹
(
いもうと
)
計
(
はか
)
らむや、
243
一目
(
ひとめ
)
見
(
み
)
てもゾツとするやうな、
244
人品
(
じんぴん
)
骨柄
(
こつがら
)
の
卑
(
いや
)
しい
菊石
(
あばた
)
だらけの
虱
(
しらみ
)
の
這
(
は
)
うた
糞婆
(
くそばば
)
に
乞食
(
こじき
)
娘
(
むすめ
)
、
245
イヤもう
私
(
わたし
)
もガツカリして
了
(
しま
)
ひました。
246
こんな
約
(
つま
)
らぬ
事
(
こと
)
は
厶
(
ござ
)
いませぬ。
247
あの
母子
(
おやこ
)
が
果
(
はた
)
して
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
、
248
小糸姫
(
こいとひめ
)
さまならば、
249
私
(
わたし
)
は
手柄
(
てがら
)
になるのだから、
250
あなた
方
(
がた
)
のお
力
(
ちから
)
を
借
(
か
)
つて
一緒
(
いつしよ
)
に
捉
(
とら
)
へたいのだが、
251
余
(
あま
)
りの
事
(
こと
)
に
呆
(
あき
)
れて、
252
婆
(
ばば
)
アの
頭
(
あたま
)
を
三
(
み
)
つ
四
(
よ
)
つくらはし、
253
乞食
(
こじき
)
娘
(
むすめ
)
の
尻
(
しり
)
を
擲
(
なぐ
)
りつけて、
254
オイオイメソメソと
吠面
(
ほえづら
)
かわかせおき、
255
ここに
呆然
(
ばうぜん
)
として
失望
(
しつばう
)
落胆
(
らくたん
)
の
淵
(
ふち
)
に
沈
(
しづ
)
んでる
所
(
ところ
)
で
厶
(
ござ
)
います』
256
武士
(
ぶし
)
『お
前
(
まへ
)
は
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
様
(
さま
)
の
部下
(
ぶか
)
の
者
(
もの
)
だなア、
257
矢張
(
やつぱり
)
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
様
(
さま
)
も
女房
(
にようばう
)
子
(
こ
)
の
行方
(
ゆくへ
)
を
尋
(
たづ
)
ねてゐられるのかなア』
258
レーブ『そらさうでせうかい、
259
天
(
てん
)
にも
地
(
ち
)
にも
一人
(
ひとり
)
よりない
女房
(
にようばう
)
や
娘
(
むすめ
)
が
居
(
を
)
らなくては、
260
何程
(
なにほど
)
御
(
ご
)
出世
(
しゆつせ
)
をなさつても
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
が
淋
(
さび
)
しい、
261
妻子
(
つまこ
)
に
憧憬
(
あこが
)
れ
遊
(
あそ
)
ばすのは
尤
(
もつと
)
もでせう』
262
武士
(
ぶし
)
『
如何
(
いか
)
にもさうだ、
263
お
前
(
まへ
)
の
言
(
い
)
ふ
通
(
とほり
)
ならば、
264
彼
(
かれ
)
等
(
ら
)
母子
(
おやこ
)
は
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
様
(
さま
)
の
女房
(
にようばう
)
子
(
こ
)
ではあるまい、
265
エーエ、
266
要
(
い
)
らぬ
苦労
(
くらう
)
をして
河
(
かは
)
を
渡
(
わた
)
つたものだ、
267
ヤアお
邪魔
(
じやま
)
をした。
268
お
二方
(
ふたかた
)
、
269
コレから
元
(
もと
)
へ
引返
(
ひきかへ
)
しませう』
270
と
馬背
(
ばはい
)
に
鞭
(
むち
)
打
(
う
)
ち、
271
勢
(
いきほひ
)
に
乗
(
じやう
)
じて、
272
ライオン
河
(
がは
)
を
驀地
(
まつしぐら
)
に
三騎
(
さんき
)
首
(
くび
)
を
並
(
なら
)
べて
渡
(
わた
)
り
行
(
ゆ
)
く。
273
後
(
あと
)
見送
(
みおく
)
つてレーブは
大口
(
おほぐち
)
をあけ、
274
レーブ
『アツハヽヽヽイヒヽヽヽウフヽヽヽ
何
(
なん
)
とマア、
275
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
仕組
(
しぐみ
)
は
大
(
たい
)
したものだナ。
276
結構
(
けつこう
)
な
手柄
(
てがら
)
をさして
下
(
くだ
)
さつた。
277
何事
(
なにごと
)
も
悧巧
(
りかう
)
出
(
だ
)
しては
失敗
(
しくじ
)
るぞよ、
278
阿呆
(
あはう
)
になつてゐて
下
(
くだ
)
されよといふ、
279
三五教
(
あななひけう
)
の
神諭
(
みさとし
)
が
今更
(
いまさら
)
の
如
(
ごと
)
く
思
(
おも
)
ひ
出
(
だ
)
されて
有難
(
ありがた
)
いワイ。
280
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は
阿呆
(
あはう
)
になつてゐるに
限
(
かぎ
)
る、
281
大賢
(
たいけん
)
は
愚
(
ぐ
)
なるが
如
(
ごと
)
し、
282
愚者
(
ぐしや
)
は
賢人
(
けんじん
)
の
如
(
ごと
)
しとは
此処
(
ここ
)
のことだ。
283
俺
(
おれ
)
も
天下
(
てんか
)
一品
(
いつぴん
)
の
極端
(
きよくたん
)
な
阿呆
(
あはう
)
になつて、
284
真
(
しん
)
の
智恵
(
ちゑ
)
を
働
(
はたら
)
かすことが
出来
(
でき
)
た。
285
ヤア
辱
(
かたじけ
)
ない
此
(
この
)
役目
(
やくめ
)
が
済
(
す
)
んだ
以上
(
いじやう
)
は、
286
これより
後
(
あと
)
追
(
お
)
つかけて、
287
奥様
(
おくさま
)
や
嬢様
(
ぢやうさま
)
について
行
(
い
)
つても、
288
何
(
なん
)
とも
仰有
(
おつしや
)
るまい、
289
ヤア
大分
(
だいぶ
)
に
時
(
とき
)
も
経
(
た
)
つた、
290
モウ
余程
(
よほど
)
行
(
ゆ
)
かれただらう。
291
サア
急
(
いそ
)
がう』
292
と
独言
(
ひとりごと
)
いひ
乍
(
なが
)
ら
一目散
(
いちもくさん
)
に
峻坂
(
しゆんぱん
)
をかけ
登
(
のぼ
)
り、
293
峠
(
たうげ
)
に
佇
(
たたず
)
み、
294
ハーハースースーと
息
(
いき
)
を
休
(
やす
)
め、
295
レーブ『あれ
丈
(
だけ
)
の
敵
(
てき
)
を
甘
(
うま
)
く
撒散
(
まきち
)
らし、
296
抜群
(
ばつぐん
)
の
功名
(
こうみやう
)
手柄
(
てがら
)
を
現
(
あら
)
はして
此
(
この
)
山頂
(
さんちやう
)
に
登
(
のぼ
)
りつめ、
297
四方
(
よも
)
の
景色
(
けしき
)
を
見下
(
みお
)
ろす
時
(
とき
)
の
心持
(
こころもち
)
は
又
(
また
)
格別
(
かくべつ
)
だ。
298
サアもうこれから
下
(
くだ
)
り
坂
(
ざか
)
、
299
走
(
はし
)
ろまいと
思
(
おも
)
つても
走
(
はし
)
れるワイ、
300
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
余
(
あま
)
り
屈曲
(
くつきよく
)
があるから
勢
(
いきほひ
)
に
任
(
まか
)
して
谷底
(
たにそこ
)
へでも
飛込
(
とびこ
)
んぢや
堪
(
たま
)
らない。
301
一
(
ひと
)
つ
足拍子
(
あしびやうし
)
を
取
(
と
)
つておりてやらうかな』
302
と
帯
(
おび
)
を
締
(
し
)
め
直
(
なほ
)
し
鉢巻
(
はちまき
)
をグツと
固
(
かた
)
め、
303
両手
(
りやうて
)
の
拳
(
こぶし
)
をグツと
握
(
にぎ
)
り
爪先
(
つまさき
)
まで
力
(
ちから
)
を
入
(
い
)
れ、
304
ボツボツと
下
(
くだ
)
り
出
(
だ
)
した。
305
レーブは
道々
(
みちみち
)
歌
(
うた
)
ふ。
306
レーブ
『ウントコドツコイ
玉山
(
たまやま
)
は
307
小
(
ちひ
)
さい
峠
(
たうげ
)
といひ
乍
(
なが
)
ら
308
意外
(
いぐわい
)
にキツイ
坂路
(
さかみち
)
だ
309
男
(
をとこ
)
でさへも
此
(
この
)
通
(
とほ
)
り
310
歩
(
あゆ
)
みに
困
(
こま
)
る
坂路
(
さかみち
)
を
311
さぞや
奥
(
おく
)
さまお
嬢
(
ぢやう
)
さま
312
困難
(
こんなん
)
遊
(
あそ
)
ばしましたらう
313
お
道
(
みち
)
の
為
(
ため
)
とは
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
314
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
の
奥様
(
おくさま
)
と
315
ならせ
玉
(
たま
)
ひし
身
(
み
)
を
以
(
もつ
)
て
316
荒野
(
あらの
)
を
渡
(
わた
)
り
川
(
かは
)
を
越
(
こ
)
え
317
いろいろ
雑多
(
ざつた
)
と
御
(
ご
)
艱難
(
かんなん
)
318
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
なさるも
神
(
かみ
)
の
為
(
ため
)
319
世人
(
よびと
)
の
為
(
ため
)
と
聞
(
き
)
くからは
320
感謝
(
かんしや
)
の
涙
(
なみだ
)
が
湧
(
わ
)
いて
来
(
く
)
る
321
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
322
大事
(
だいじ
)
に
大事
(
だいじ
)
にされた
俺
(
おれ
)
323
御
(
ご
)
恩返
(
おんがへ
)
しの
万分一
(
まんぶいち
)
324
何時
(
いつ
)
しか
報
(
むく
)
はななるまいと
325
思
(
おも
)
ひつめたる
真心
(
まごころ
)
が
326
いよいよ
現
(
あら
)
はれ
出
(
い
)
づる
時
(
とき
)
327
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
328
神
(
かみ
)
の
守
(
まも
)
りの
深
(
ふか
)
くして
329
お
二方
(
ふたかた
)
をば
初
(
はじ
)
めとし
330
レーブの
奴
(
やつ
)
も
諸共
(
もろとも
)
に
331
何卒
(
なにとぞ
)
無事
(
ぶじ
)
に
月
(
つき
)
の
国
(
くに
)
332
ハルナの
都
(
みやこ
)
へ
易々
(
やすやす
)
と
333
「ウントコドツコイきつい
坂
(
さか
)
」
334
勢
(
いきほひ
)
余
(
あま
)
つて
谷川
(
たにがは
)
へ
335
スツテンコロリと
落
(
お
)
ちかけた
336
帰
(
かへ
)
らせ
玉
(
たま
)
へバラモンの
337
梵天
(
ぼんてん
)
帝釈
(
たいしやく
)
自在天
(
じざいてん
)
338
大国彦
(
おほくにひこ
)
の
御
(
おん
)
前
(
まへ
)
に
339
慎
(
つつし
)
み
敬
(
ゐやま
)
ひ
願
(
ね
)
ぎ
奉
(
まつ
)
る
340
ライオン
河
(
がは
)
を
横
(
よこ
)
わたり
341
奥様
(
おくさま
)
嬢様
(
ぢやうさま
)
お
二人
(
ふたり
)
に
342
暇
(
ひま
)
を
貰
(
もら
)
つた
怪訝顔
(
けげんがほ
)
343
面
(
つら
)
ふくらした
時
(
とき
)
もあれ
344
大黒主
(
おほくろぬし
)
に
仕
(
つか
)
へてる
345
釘彦
(
くぎひこ
)
久米彦
(
くめひこ
)
両人
(
りやうにん
)
が
346
手下
(
てした
)
の
奴
(
やつ
)
ばら
只
(
ただ
)
三人
(
みたり
)
347
駻馬
(
かんば
)
に
鞭
(
むちう
)
ち
荒河
(
あらかは
)
を
348
渡
(
わた
)
り
来
(
きた
)
れる
恐
(
おそ
)
ろしさ
349
此奴
(
こいつ
)
あテツキリお
二人
(
ふたり
)
の
350
姿
(
すがた
)
をみとめて
捉
(
とら
)
へむと
351
やつてうせたに
違
(
ちがひ
)
ない
352
一時
(
ひととき
)
なりと
暇取
(
ひまと
)
らせ
353
お
二人
(
ふたり
)
様
(
さま
)
を
安全
(
あんぜん
)
に
354
守
(
まも
)
らむものと
真心
(
まごころ
)
の
355
限
(
かぎ
)
りを
尽
(
つく
)
して
阿呆
(
あはう
)
と
化
(
ば
)
け
356
スツタ
揉
(
も
)
んだと
馬鹿口
(
ばかぐち
)
を
357
叩
(
たた
)
いた
揚句
(
あげく
)
に
村肝
(
むらきも
)
の
358
心
(
こころ
)
にもなき
詐
(
いつは
)
りを
359
ベラベラ
喋
(
しやべ
)
つた
其
(
その
)
おかげ
360
追手
(
おつて
)
の
奴
(
やつ
)
らは
忽
(
たちま
)
ちに
361
レーブの
弁
(
べん
)
に
欺
(
あざむ
)
かれ
362
失望
(
しつばう
)
落胆
(
らくたん
)
し
乍
(
なが
)
らも
363
河
(
かは
)
を
渡
(
わた
)
つて
帰
(
かへ
)
り
行
(
ゆ
)
く
364
其
(
その
)
可笑
(
おか
)
しさに
堪
(
た
)
へかねて
365
思
(
おも
)
はず
知
(
し
)
らずアハヽヽヽ
366
イヒヽヽヽヽヽヒウフヽヽヽ
367
笑
(
わら
)
ひ
溢
(
あふ
)
れて
面白
(
おもしろ
)
い
368
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
369
これ
丈
(
だけ
)
賢
(
かしこ
)
い
智慧
(
ちゑ
)
あれば
370
これから
何事
(
なにごと
)
あらう
共
(
とも
)
371
決
(
けつ
)
して
恐
(
おそ
)
るる
事
(
こと
)
はない
372
「ウントコ ドツコイ ドツコイシヨ
373
コラマアきつい
坂
(
さか
)
ぢやなア」
374
これ
丈
(
だけ
)
急
(
いそ
)
いで
下
(
くだ
)
るなら
375
キツと
二人
(
ふたり
)
のお
姿
(
すがた
)
を
376
時
(
とき
)
を
移
(
うつ
)
さず
拝
(
をが
)
むだろ
377
あゝ
有難
(
ありがた
)
い
有難
(
ありがた
)
い
378
お
二人
(
ふたり
)
様
(
さま
)
は
今頃
(
いまごろ
)
は
379
悠々然
(
いういうぜん
)
と
鼻唄
(
はなうた
)
を
380
唄
(
うた
)
うてレーブの
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
ひ
381
勇
(
いさ
)
み
進
(
すす
)
んで
厶
(
ござ
)
るだろ
382
あゝ
面白
(
おもしろ
)
い
面白
(
おもしろ
)
い
383
一伍
(
いちぶ
)
一什
(
しじふ
)
の
有様
(
ありさま
)
を
384
お
二人
(
ふたり
)
様
(
さま
)
にこまごまと
385
報告
(
はうこく
)
申
(
まを
)
し
上
(
あ
)
げたなら
386
キツと
喜
(
よろこ
)
びなさるだろ
387
これが
第一
(
だいいち
)
楽
(
たのし
)
みだ
388
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
389
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はひましませよ』
390
と
歌
(
うた
)
ひつつ、
391
ドンドンドンと
地響
(
ぢひびき
)
うたせ、
392
さしもの
峻坂
(
しゆんばん
)
を
矢
(
や
)
を
射
(
い
)
る
如
(
ごと
)
く
下
(
くだ
)
つて
行
(
ゆ
)
く。
393
道端
(
みちばた
)
の
岩
(
いは
)
に
母子
(
おやこ
)
二人
(
ふたり
)
が
腰打
(
こしうち
)
かけ、
394
息
(
いき
)
を
休
(
やす
)
めてゐるのも
気
(
き
)
がつかず、
395
大声
(
おほごゑ
)
に
呶鳴
(
どな
)
り
乍
(
なが
)
ら
下
(
くだ
)
り
行
(
ゆ
)
くのを、
396
黄金姫
(
わうごんひめ
)
は、
397
黄金姫
『オーイオーイ レーブ
暫
(
しばら
)
く
待
(
ま
)
て』
398
と
大音声
(
だいおんじやう
)
に
呼
(
よ
)
び
止
(
と
)
めた。
399
此
(
この
)
声
(
こゑ
)
を
聞
(
き
)
くよりレーブは
驚
(
おどろ
)
いて
止
(
と
)
まらうとすれども、
400
急坂
(
きふはん
)
を
下
(
くだ
)
り
切
(
き
)
つた
速力
(
そくりよく
)
の
惰力
(
だりよく
)
は
容易
(
ようい
)
に
止
(
と
)
まらず、
401
十間
(
じつけん
)
許
(
ばか
)
りズルズルと
石道
(
いしみち
)
に
体
(
からだ
)
を
止
(
と
)
めようとして
倒
(
たふ
)
れ、
402
転
(
ころ
)
げ
落
(
お
)
ち『アイタタ』と
顔
(
かほ
)
をしかめ、
403
腰
(
こし
)
のあたりを
撫
(
な
)
で
乍
(
なが
)
ら、
404
エチエチと
二人
(
ふたり
)
の
前
(
まへ
)
に
引返
(
ひきかへ
)
し
来
(
きた
)
り、
405
レーブ
『
奥様
(
おくさま
)
嬢様
(
ぢやうさま
)
、
406
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
いました』
407
黄金姫
(
わうごんひめ
)
『アヽ
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
であつたなア、
408
私
(
わたし
)
もお
前
(
まへ
)
がキツと
追返
(
おひかへ
)
しただろと
思
(
おも
)
うて、
409
ここに
悠
(
ゆつ
)
くりとお
前
(
まへ
)
の
来
(
く
)
るのを
待
(
ま
)
つてゐたのだ。
410
一人
(
ひとり
)
の
馬方
(
うまかた
)
は
甘
(
うま
)
く
まい
ただらうなア』
411
レーブ『ハイ
自分
(
じぶん
)
の
方
(
はう
)
から
勝手
(
かつて
)
に
森林
(
しんりん
)
の
中
(
なか
)
へ
沈没
(
ちんぼつ
)
して
了
(
しま
)
ひました。
412
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
騎馬
(
きば
)
の
士
(
さむらひ
)
が
奥様
(
おくさま
)
嬢様
(
ぢやうさま
)
を
捉
(
とら
)
へむと、
413
再
(
ふたた
)
び
河
(
かは
)
を
渡
(
わた
)
つてやつて
来
(
き
)
ましたが、
414
俄
(
にはか
)
に
私
(
わたし
)
は
馬鹿
(
ばか
)
となつて
甘
(
うま
)
く
追
(
お
)
つ
返
(
かへ
)
してやりました』
415
黄金姫
(
わうごんひめ
)
『アヽさうだろ、
416
お
前
(
まへ
)
の
身魂
(
みたま
)
を
見込
(
みこ
)
んであゝ
言
(
い
)
つたのだ。
417
本当
(
ほんたう
)
の
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
つてやりたかつたが、
418
怪
(
あや
)
しい
奴
(
やつ
)
がついてゐたので、
419
あんなスゲない
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
つたのだから、
420
気
(
き
)
を
悪
(
わる
)
うせないでおいて
下
(
くだ
)
さい』
421
レーブ『どうしてどうして
御
(
ご
)
勿体
(
もつたい
)
ない、
422
気
(
き
)
を
悪
(
わる
)
う
致
(
いた
)
しませうかい、
423
サア
是
(
これ
)
から
参
(
まゐ
)
りませう』
424
と
話
(
はな
)
す
折
(
をり
)
しも、
425
吹来
(
ふきく
)
る
風
(
かぜ
)
につれて
聞
(
きこ
)
え
来
(
く
)
る
人馬
(
じんば
)
の
物音
(
ものおと
)
、
426
金鼓
(
きんこ
)
の
響
(
ひびき
)
、
427
矢叫
(
やさけ
)
びの
声
(
こゑ
)
、
428
物凄
(
ものすご
)
くも
此方
(
こなた
)
に
向
(
むか
)
つて
進
(
すす
)
み
来
(
く
)
る。
429
黄金姫
(
わうごんひめ
)
は
立上
(
たちあが
)
り、
430
黄金姫
『サアこれからが
本当
(
ほんたう
)
の
神軍
(
しんぐん
)
と
魔軍
(
まぐん
)
との
戦争
(
せんそう
)
だ。
431
清照姫
(
きよてるひめ
)
用意
(
ようい
)
をなされ。
432
レーブ、
433
覚悟
(
かくご
)
はよいか………』
434
(
大正一一・一〇・二九
旧九・一〇
松村真澄
録)
435
(昭和一〇・六・一〇 王仁校正)
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