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霊界物語
舎身活躍(第37~48巻)
第39巻(寅の巻)
序歌
総説
第1篇 伊祖の神風
第1章 大黒主
第2章 評定
第3章 出師
第2篇 黄金清照
第4章 河鹿越
第5章 人の心
第6章 妖霧
第7章 都率天
第8章 母と娘
第3篇 宿世の山道
第9章 九死一生
第10章 八の字
第11章 鼻摘
第12章 種明志
第4篇 浮木の岩窟
第13章 浮木の森
第14章 清春山
第15章 焼糞
第16章 親子対面
第5篇 馬蹄の反影
第17章 テームス峠
第18章 関所守
第19章 玉山嵐
附録 大祓祝詞解
余白歌
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霊界物語
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舎身活躍(第37~48巻)
>
第39巻(寅の巻)
> 第5篇 馬蹄の反影 > 第17章 テームス峠
<<< 親子対面
(B)
(N)
関所守 >>>
第一七章 テームス
峠
(
たうげ
)
〔一〇八二〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第39巻 舎身活躍 寅の巻
篇:
第5篇 馬蹄の反影
よみ(新仮名遣い):
ばていのはんえい
章:
第17章 テームス峠
よみ(新仮名遣い):
てーむすとうげ
通し章番号:
1082
口述日:
1922(大正11)年10月29日(旧09月10日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年5月5日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
黄金姫と清照姫の母娘は巡礼姿に身をやつして浮木ケ原を指して進んでいく。フサの国から月の国へ渡る際には、テームス山というかなり高い山を登らなければならない。
母娘は山麓の道端の岩の上に腰をかけて息を休めていた。そこへ二人の馬方がやってきて、安くするから馬に乗っていかないか、と声をかけた。黄金姫はすぐにこの馬方が、先日自分たちを襲ってきたバラモン教徒たちだ看破した。
早くもたくらみを見抜かれて、レーブは逃げ腰になっている。黄金姫は、二人に鬼熊別の消息を尋ねた。レーブは、大黒主が教主の立場をいいことに勝手放題にふるまって人心を失っているのに引き換え、鬼熊別は妻と娘が行方不明の境遇にあって品行方正にふるまい、バラモン教徒たちの尊敬を一身に集めていると語った。
レーブはさらに、鬼熊別がバラモン教徒たちの信頼を集めていることから、近年では大黒主に嫌疑をかけられてさまざまな圧迫を受けているが、じっと耐えて従っている様を涙ながらに伝えた。
レーブが真実を面に表した様子に、黄金姫と清照姫は、自分たちが鬼熊別の妻・蜈蚣姫と娘・小糸姫であることを明かした。
レーブは驚いてひれ伏した。レーブは、二人にバラモン教に戻ってもらい、ハルナの都の鬼熊別の元にひそかに送り届けたいと申し出た。レーブは、大黒主は蜈蚣姫と小糸姫が三五教に入ったことを聞き知っており、鬼熊別に会わせる前に命を取ろうと画策していることを明かした。
黄金姫は夫に三五教の教えを説くつもりであったが、レーブにいらぬ心配をかけさせても仕方がないと考え、レーブたちにしたがってハルナの都に入ることにした。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-11-22 11:11:58
OBC :
rm3917
愛善世界社版:
245頁
八幡書店版:
第7輯 368頁
修補版:
校定版:
257頁
普及版:
107頁
初版:
ページ備考:
001
黄金姫
(
わうごんひめ
)
、
002
清照姫
(
きよてるひめ
)
の
母娘
(
おやこ
)
は
巡礼姿
(
じゆんれいすがた
)
に
身
(
み
)
をやつし、
003
金剛杖
(
こんがうづゑ
)
にて
地
(
ち
)
を
叩
(
たた
)
きつつ、
004
霧
(
きり
)
こむ
野辺
(
のべ
)
を
西南
(
せいなん
)
指
(
さ
)
して
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
歌
(
うた
)
ひながら
浮木
(
うきき
)
ケ
原
(
はら
)
をさして
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
005
道
(
みち
)
につき
当
(
あた
)
つた
可
(
か
)
なり
高
(
たか
)
き
山
(
やま
)
がある。
006
此
(
この
)
山
(
やま
)
を
何
(
ど
)
うしても
越
(
こ
)
えねば
道
(
みち
)
がない。
007
日
(
ひ
)
は
已
(
すで
)
に
山
(
やま
)
の
端
(
は
)
に
没
(
ぼつ
)
して
四面
(
しめん
)
暗黒
(
あんこく
)
に
包
(
つつ
)
まれた。
008
此
(
この
)
山
(
やま
)
の
名
(
な
)
はテームス
山
(
ざん
)
といふ。
009
登
(
のぼ
)
りが
三
(
さん
)
里
(
り
)
下
(
くだ
)
りが
三
(
さん
)
里
(
り
)
、
010
可
(
か
)
なり
大
(
おほ
)
きな
峠
(
たうげ
)
でフサの
国
(
くに
)
より
月
(
つき
)
の
国
(
くに
)
へ
渉
(
わた
)
る
境域
(
きやういき
)
である。
011
母娘
(
おやこ
)
二人
(
ふたり
)
は
山麓
(
さんろく
)
の
路傍
(
みちばた
)
の
岩
(
いは
)
の
上
(
うへ
)
に
腰打掛
(
こしうちか
)
け
息
(
いき
)
を
休
(
やす
)
めてゐた。
012
そこへ
二人
(
ふたり
)
の
馬方
(
うまかた
)
駻馬
(
かんば
)
を
引
(
ひき
)
つれ、
013
ハイハイと
言
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
014
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
り、
015
馬方
『モシモシ
旅
(
たび
)
のお
方
(
かた
)
、
016
此
(
この
)
テームス
山
(
ざん
)
はアフガニスタンで
有名
(
いうめい
)
な
峻坂
(
しゆんぱん
)
で
厶
(
ござ
)
います。
017
女
(
をんな
)
の
足
(
あし
)
では
到底
(
たうてい
)
跋渉
(
ばつせふ
)
する
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ますまい。
018
私
(
わたし
)
はこれから
此
(
この
)
峠
(
たうげ
)
を
渉
(
わた
)
りて
月
(
つき
)
の
国
(
くに
)
へ
帰
(
かへ
)
る
者
(
もの
)
、
019
どうぞ
此
(
この
)
馬
(
うま
)
に
乗
(
の
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
020
帰
(
かへ
)
りがけだから
何時
(
いつ
)
もとは
半分
(
はんぶん
)
の
賃金
(
ちんぎん
)
に
致
(
いた
)
しておきます』
021
黄金姫
(
わうごんひめ
)
『
折角
(
せつかく
)
なれど
吾々
(
われわれ
)
は
達者
(
たつしや
)
な
足
(
あし
)
を
持
(
も
)
つてゐるから
馬
(
うま
)
の
世話
(
せわ
)
になるのは
止
(
や
)
めておきませう』
022
馬方
(
うまかた
)
『エヽ
馬鹿
(
ばか
)
にすない。
023
足
(
あし
)
があるなんて、
024
分
(
わか
)
り
切
(
き
)
つた
事
(
こと
)
をいやがつて、
025
足
(
あし
)
のない
奴
(
やつ
)
が
旅
(
たび
)
する
筈
(
はず
)
があるかい。
026
いやなら
厭
(
いや
)
でいいワ。
027
乗
(
の
)
らぬと
吐
(
ぬか
)
しやがるが、
028
此方
(
こちら
)
の
方
(
はう
)
から
乗
(
の
)
せてやらぬワイ』
029
黄金姫
(
わうごんひめ
)
『オホヽヽこれ
馬方
(
うまかた
)
さま、
030
お
前
(
まへ
)
さまは
本当
(
ほんたう
)
の
馬方
(
うまかた
)
ぢやあるまいがな。
031
お
前
(
まへ
)
のひいてゐる
馬
(
うま
)
はそこらに
居
(
を
)
つた
野馬
(
やば
)
を
臨時
(
りんじ
)
引
(
ひつ
)
つかんで
来
(
き
)
た
証拠
(
しようこ
)
には
轡
(
くつは
)
も
無
(
な
)
し、
032
馬
(
うま
)
の
爪
(
つめ
)
が
大変
(
たいへん
)
に
伸
(
の
)
びてゐる、
033
そしてお
前
(
まへ
)
の
言葉
(
ことば
)
は
馬方
(
うまかた
)
言葉
(
ことば
)
ぢやない。
034
バラモン
教
(
けう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
の
供
(
とも
)
でもしてゐた
代物
(
しろもの
)
だろ。
035
そんな
事
(
こと
)
をして
吾々
(
われわれ
)
母娘
(
おやこ
)
を
馬
(
うま
)
に
乗
(
の
)
せ、
036
急坂
(
きふはん
)
になつた
所
(
ところ
)
で、
037
馬
(
うま
)
の
足
(
あし
)
を
叩
(
たた
)
き、
038
馬
(
うま
)
を
転倒
(
てんたう
)
させて、
039
吾々
(
われわれ
)
母娘
(
おやこ
)
を○○しようといふ
悪
(
わる
)
い
了見
(
れうけん
)
だろ、
040
お
前
(
まへ
)
の
顔
(
かほ
)
にチヤンと
書
(
か
)
いてある。
041
そんなウソツパチを
喰
(
く
)
ふやうな
婆
(
ばば
)
アぢやありませぬぞ。
042
又
(
また
)
河鹿
(
かじか
)
峠
(
たうげ
)
のやうに
谷底
(
たにそこ
)
へつまんで
放
(
ほ
)
つて
上
(
あ
)
げようか、
043
お
前
(
まへ
)
は
五
(
ご
)
人
(
にん
)
の
中
(
なか
)
の
一人
(
ひとり
)
、
044
運
(
うん
)
よく
助
(
たす
)
かつて
逃
(
に
)
げた
男
(
をとこ
)
だらう、
045
どこともなしに
面
(
おもて
)
に
見覚
(
みおぼ
)
えがあるから
騙
(
だま
)
したつて
駄目
(
だめ
)
だよ』
046
馬方
(
うまかた
)
『イヤもうそこ
迄
(
まで
)
看破
(
かんぱ
)
されては
仕方
(
しかた
)
がありませぬ。
047
実
(
じつ
)
の
所
(
ところ
)
はあの
時
(
とき
)
五
(
ご
)
人
(
にん
)
の
中
(
うち
)
に
加
(
くは
)
はつてゐたレーブといふ、
048
余
(
あま
)
りよくない
代物
(
しろもの
)
です。
049
お
前
(
まへ
)
さまが
大変
(
たいへん
)
な
神力
(
しんりき
)
を
現
(
あら
)
はして
自分
(
じぶん
)
の
同僚
(
どうれう
)
を
三
(
さん
)
人
(
にん
)
迄
(
まで
)
谷底
(
たにそこ
)
へ
投込
(
なげこ
)
んだ
時
(
とき
)
の
恐
(
おそ
)
ろしさ。
050
何
(
なん
)
とかしてお
前
(
まへ
)
さま
母娘
(
おやこ
)
を
亡
(
な
)
き
者
(
もの
)
に
致
(
いた
)
さねば、
051
吾々
(
われわれ
)
の
思惑
(
おもわく
)
は
何時
(
いつ
)
になつても
立
(
た
)
たない。
052
又
(
また
)
可哀
(
かあい
)
さうに
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
の
友達
(
ともだち
)
二人
(
ふたり
)
まで、
053
冥途
(
めいど
)
の
旅
(
たび
)
をしたのだから、
054
友
(
とも
)
の
仇敵
(
かたき
)
を
討
(
う
)
つてやらねばならぬ、
055
何
(
いづ
)
れ
此
(
この
)
峠
(
たうげ
)
を
越
(
こ
)
すに
違
(
ちがひ
)
ないと
思
(
おも
)
うて、
056
野馬
(
やば
)
を
引捉
(
ひつとら
)
へ、
057
道
(
みち
)
に
会
(
あ
)
うた
一人
(
ひとり
)
の
友達
(
ともだち
)
と、
058
一目散
(
いちもくさん
)
にここ
迄
(
まで
)
走
(
はし
)
つて
来
(
き
)
て、
059
待
(
ま
)
つてゐました。
060
併
(
しか
)
しながらお
前
(
まへ
)
さまが
私
(
わし
)
の
計略
(
けいりやく
)
を
看破
(
かんぱ
)
した
上
(
うへ
)
は、
061
手
(
て
)
も
足
(
あし
)
も
出
(
だ
)
すことは
出来
(
でき
)
ない。
062
そんなら
馬
(
うま
)
に
乗
(
の
)
るのは
止
(
や
)
めて
貰
(
もら
)
ひませう。
063
油断
(
ゆだん
)
をせない
旅人
(
たびびと
)
を
乗
(
の
)
せて
行
(
い
)
つたところで、
064
思惑
(
おもわく
)
は
立
(
た
)
ちませぬからな』
065
と
怖
(
こは
)
さうに
逃
(
に
)
げ
腰
(
ごし
)
になつて
喋
(
しやべ
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
066
黄金姫
(
わうごんひめ
)
『コレ、
067
レーブとやら、
068
お
前
(
まへ
)
は
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
さまの
部下
(
ぶか
)
ではないか。
069
但
(
ただし
)
は
臨時雇
(
りんじやとひ
)
で
働
(
はたら
)
いてゐるのか』
070
レーブ『ハイ、
071
三
(
さん
)
年
(
ねん
)
ばかり
前
(
まへ
)
から
結構
(
けつこう
)
なお
手当
(
てあて
)
を
頂戴
(
ちやうだい
)
して、
072
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
様
(
さま
)
の
奥様
(
おくさま
)
の
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
や
小糸姫
(
こいとひめ
)
さまの
所在
(
ありか
)
が
分
(
わか
)
らないので、
073
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
様
(
さま
)
も
今
(
いま
)
は
立派
(
りつぱ
)
な
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
にお
成
(
な
)
り
遊
(
あそ
)
ばし、
074
大黒主
(
おほくろぬし
)
様
(
さま
)
と
肩
(
かた
)
を
並
(
なら
)
べられ、
075
世間
(
せけん
)
の
信用
(
しんよう
)
は
大黒主
(
おほくろぬし
)
様
(
さま
)
よりもズツと
宜
(
よろ
)
しい。
076
それ
故
(
ゆゑ
)
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
様
(
さま
)
に
従
(
したが
)
ふ
者
(
もの
)
が
日
(
ひ
)
に
月
(
つき
)
に
増
(
ふ
)
えて
来
(
き
)
まして、
077
私
(
わたし
)
も
御
(
ご
)
恩顧
(
おんこ
)
を
蒙
(
かうむ
)
つてゐる
者
(
もの
)
、
078
奥様
(
おくさま
)
や
娘子
(
むすめご
)
の
所在
(
ありか
)
を
尋
(
たづ
)
ねむ
為
(
ため
)
に、
079
ハムを
初
(
はじ
)
め
吾々
(
われわれ
)
四
(
よ
)
人
(
にん
)
が
一隊
(
いつたい
)
となつて、
080
其
(
その
)
所在
(
ありか
)
を
尋
(
たづ
)
ねてゐました。
081
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
らいくら
尋
(
たづ
)
ねても
此
(
この
)
広
(
ひろ
)
い
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
自転倒
(
おのころ
)
島
(
じま
)
へはそれぞれ
手分
(
てわ
)
けをして
捜
(
さが
)
しに
行
(
い
)
つて
居
(
を
)
りますが、
082
今
(
いま
)
にお
行方
(
ゆくへ
)
は
分
(
わか
)
りませぬ。
083
噂
(
うはさ
)
に
聞
(
き
)
けば
三五教
(
あななひけう
)
に
入信
(
はい
)
られたとの
事
(
こと
)
、
084
ウブスナ
山
(
やま
)
の
斎苑
(
いそ
)
館
(
やかた
)
には
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
が
集
(
あつ
)
まつてゐられるといふ
話
(
はなし
)
なので、
085
河鹿
(
かじか
)
峠
(
たうげ
)
を
越
(
こ
)
えて
参
(
まゐ
)
る
途中
(
とちう
)
、
086
あなた
様
(
さま
)
に
出会
(
でつくは
)
し、
087
仮令
(
たとへ
)
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
でなくても
小糸姫
(
こいとひめ
)
でなくても、
088
丁度
(
ちやうど
)
都合
(
つがふ
)
のよい
婆
(
ば
)
アさまと
娘
(
むすめ
)
、
089
有無
(
うむ
)
をいはせず
伴
(
つ
)
れ
帰
(
かへ
)
り、
090
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
様
(
さま
)
にお
目
(
め
)
にかけたならば、
091
コリヤ
人違
(
ひとちがひ
)
だ、
092
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
らそれも
無理
(
むり
)
はない、
093
人相書
(
にんさうがき
)
位
(
くらゐ
)
では
分
(
わか
)
るものではないから、
094
併
(
しか
)
しよくマアここ
迄
(
まで
)
骨
(
ほね
)
を
折
(
を
)
つたと、
095
お
賞
(
ほ
)
めの
言
(
ことば
)
を
頂
(
いただ
)
かねば、
096
三
(
さん
)
年
(
ねん
)
も
手当
(
てあて
)
を
貰
(
もら
)
うて
居
(
を
)
つた
印
(
しるし
)
がないと
思
(
おも
)
ひ、
097
一寸
(
ちよつと
)
失礼
(
しつれい
)
をも
省
(
かへり
)
みず、
098
一狂言
(
ひときやうげん
)
をやつて
見
(
み
)
ました。
099
右様
(
みぎやう
)
の
次第
(
しだい
)
で
厶
(
ござ
)
いますから、
100
決
(
けつ
)
して
泥棒
(
どろばう
)
でも
何
(
なん
)
でも
厶
(
ござ
)
いませぬ。
101
只
(
ただ
)
お
手当
(
てあて
)
に
対
(
たい
)
する
義務
(
ぎむ
)
上
(
じやう
)
、
102
あなた
様
(
さま
)
を
犠牲
(
ぎせい
)
にしようとズルイ
考
(
かんが
)
へを
起
(
おこ
)
したので
厶
(
ござ
)
います。
103
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
私
(
わたし
)
はホンの
端
(
はし
)
くれ
役人
(
やくにん
)
、
104
これにはハムといふ
発頭人
(
ほつとうにん
)
が
厶
(
ござ
)
います。
105
到底
(
たうてい
)
あなた
母娘
(
おやこ
)
に
睨
(
にら
)
まれては
堪
(
たま
)
りませぬから、
106
どうぞ
三五教
(
あななひけう
)
ならば
神直日
(
かむなほひ
)
大直日
(
おほなほひ
)
に
見直
(
みなほ
)
し
聞直
(
ききなほ
)
し、
107
これも
神
(
かみ
)
の
御
(
ご
)
都合
(
つがふ
)
だと
宣
(
の
)
り
直
(
なほ
)
して
助
(
たす
)
けて
下
(
くだ
)
さいませ。
108
心
(
こころ
)
の
底
(
そこ
)
から
改心
(
かいしん
)
して
此
(
この
)
通
(
とほ
)
り
手
(
て
)
を
合
(
あは
)
してお
詫
(
わび
)
致
(
いた
)
します。
109
コリヤ、
110
テク、
111
貴様
(
きさま
)
もお
詫
(
わび
)
の
加勢
(
かせい
)
をしてくれぬか。
112
御
(
ご
)
立腹
(
りつぷく
)
がひどいと
見
(
み
)
えて、
113
容易
(
ようい
)
にお
気色
(
きしよく
)
が
直
(
なほ
)
らぬぢやないか』
114
黄金姫
(
わうごんひめ
)
『お
前
(
まへ
)
のいふ
事
(
こと
)
は
寸分
(
すんぶん
)
間違
(
まちがひ
)
はないか』
115
レーブ『ヘーヘー、
116
どうして
嘘
(
うそ
)
を
申
(
まを
)
しませう』
117
清照姫
(
きよてるひめ
)
『コレ、
118
レーブとやら、
119
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
様
(
さま
)
は
本当
(
ほんたう
)
に
御
(
ご
)
壮健
(
さうけん
)
でゐらせられますかなア。
120
綺麗
(
きれい
)
な
奥様
(
おくさま
)
を
迎
(
むか
)
へてゐられる
様
(
やう
)
な
事
(
こと
)
はないかな』
121
レーブ『どうしてどうして、
122
品行
(
ひんかう
)
方正
(
はうせい
)
な
慈悲
(
じひ
)
深
(
ぶか
)
いそれはそれは、
123
ハルナの
都
(
みやこ
)
でも
名
(
な
)
の
高
(
たか
)
い、
124
聖人
(
せいじん
)
君子
(
くんし
)
と、
125
バラモン
国
(
こく
)
一体
(
いつたい
)
に
仰
(
あふ
)
がれて
厶
(
ござ
)
るお
方
(
かた
)
で
厶
(
ござ
)
います』
126
清照姫
(
きよてるひめ
)
『
大黒主
(
おほくろぬし
)
様
(
さま
)
は
壮健
(
さうけん
)
でゐらせられますか』
127
レーブ『ヘーヘー、
128
壮健
(
さうけん
)
も
壮健
(
さうけん
)
、
129
先
(
さき
)
の
奥様
(
おくさま
)
が
古
(
ふる
)
くなつたというて、
130
小
(
ち
)
つぽけな
家
(
いへ
)
を
建
(
た
)
てて
隠居
(
いんきよ
)
をさせ、
131
其
(
その
)
後
(
あと
)
へ
天人
(
てんにん
)
のやうな
若
(
わか
)
い
女房
(
にようばう
)
を
据
(
す
)
ゑ、
132
沢山
(
たくさん
)
な
妾
(
めかけ
)
を
囲
(
かこ
)
つて、
133
朝
(
あさ
)
から
晩
(
ばん
)
まで
酒池
(
しゆち
)
肉林
(
にくりん
)
の
乱痴気
(
らんちき
)
騒
(
さわ
)
ぎ、
134
誰
(
たれ
)
も
彼
(
かれ
)
も
眉
(
まゆ
)
を
顰
(
ひそ
)
めて
居
(
を
)
りますけれど、
135
何
(
なに
)
を
云
(
い
)
うても
沢山
(
たくさん
)
の
軍隊
(
ぐんたい
)
を
抱
(
かか
)
へてゐる
英雄
(
えいゆう
)
豪傑
(
がうけつ
)
、
136
そして
梵天王
(
ぼんてんわう
)
の
御
(
ご
)
子孫
(
しそん
)
といふので、
137
何事
(
なにごと
)
をなさつても
御
(
ご
)
意見
(
いけん
)
申上
(
まをしあ
)
げる
者
(
もの
)
も
無
(
な
)
し、
138
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
様
(
さま
)
に
比
(
くら
)
ぶれば、
139
其
(
その
)
信用
(
しんよう
)
の
点
(
てん
)
に
於
(
おい
)
ても、
140
品行
(
ひんかう
)
の
点
(
てん
)
に
於
(
おい
)
ても
天地
(
てんち
)
黒白
(
こくびやく
)
の
相違
(
さうゐ
)
で
厶
(
ござ
)
います。
141
大黒主
(
おほくろぬし
)
様
(
さま
)
は
余
(
あま
)
り
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
信用
(
しんよう
)
が
高
(
たか
)
うなつたので、
142
少
(
すこ
)
しく
猜疑心
(
さいぎしん
)
が
起
(
おこ
)
り、
143
何
(
なに
)
かにつけて
御
(
ご
)
主人
(
しゆじん
)
様
(
さま
)
のなさる
事
(
こと
)
を、
144
ゴテゴテとケチをつけ、
145
無理
(
むり
)
難題
(
なんだい
)
を
吹
(
ふつ
)
かけ、
146
種々
(
しゆじゆ
)
雑多
(
ざつた
)
の
圧迫
(
あつぱく
)
を
加
(
くは
)
へられますが、
147
御
(
ご
)
忍耐
(
にんたい
)
の
強
(
つよ
)
い
私
(
わたし
)
の
御
(
ご
)
主人
(
しゆじん
)
は、
148
大黒主
(
おほくろぬし
)
様
(
さま
)
が
何
(
なん
)
と
仰有
(
おつしや
)
つても、
149
平気
(
へいき
)
な
顔
(
かほ
)
で
唯々
(
ゐゐ
)
諾々
(
だくだく
)
として
従
(
したが
)
うていらつしやいます。
150
家来
(
けらい
)
の
私
(
わたし
)
でさへも
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
でなりませぬ』
151
と
差俯
(
さしうつ
)
むいて
涙
(
なみだ
)
をハラハラと
流
(
なが
)
す、
152
其
(
その
)
涙
(
なみだ
)
に
真実
(
しんじつ
)
が
現
(
あら
)
はれてゐた。
153
黄金姫
(
わうごんひめ
)
『それを
聞
(
き
)
いて
私
(
わたし
)
も
安心
(
あんしん
)
した。
154
実
(
じつ
)
は
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
様
(
さま
)
の
女房
(
にようばう
)
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
は
私
(
わし
)
だよ』
155
レーブは
此
(
この
)
言
(
げん
)
に
驚
(
おどろ
)
いて
大地
(
だいち
)
に
平伏
(
ひれふ
)
し、
156
レーブ
『コレハコレハ
奥様
(
おくさま
)
で
御座
(
ござ
)
いましたか。
157
存
(
ぞん
)
ぜぬこととて
重々
(
ぢうぢう
)
の
御
(
ご
)
無礼
(
ぶれい
)
、
158
何卒
(
どうぞ
)
お
赦
(
ゆる
)
し
下
(
くだ
)
さいませ。
159
そんなら
此
(
この
)
娘
(
むすめ
)
様
(
さま
)
は
小糸姫
(
こいとひめ
)
様
(
さま
)
で
厶
(
ござ
)
いますか』
160
と
又
(
また
)
サメザメと
嬉
(
うれ
)
し
泣
(
な
)
きに
泣
(
な
)
く。
161
清照姫
(
きよてるひめ
)
『
私
(
わたし
)
は
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
様
(
さま
)
の
娘
(
むすめ
)
小糸姫
(
こいとひめ
)
だ。
162
十五
(
じふご
)
の
時
(
とき
)
に
心
(
こころ
)
の
曇
(
くも
)
りから
家
(
いへ
)
を
飛出
(
とびだ
)
し、
163
両親
(
りやうしん
)
に
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
をかけた
者
(
もの
)
だ。
164
お
前
(
まへ
)
は
私
(
わたし
)
の
来歴
(
らいれき
)
を
聞
(
き
)
いて
居
(
ゐ
)
るだらうな』
165
レーブ『ハイ
詳
(
くは
)
しい
事
(
こと
)
は
存
(
ぞん
)
じませぬが、
166
チヨイチヨイ、
167
同僚間
(
どうれうかん
)
の
話頭
(
わとう
)
に
上
(
のぼ
)
りますので、
168
ウスウス
承
(
うけたま
)
はつて
居
(
を
)
りました。
169
それを
聞
(
き
)
きます
上
(
うへ
)
は
奥様
(
おくさま
)
お
娘子
(
むすめご
)
に
違
(
ちがひ
)
は
厶
(
ござ
)
いませぬ。
170
どうぞ
御
(
ご
)
安心
(
あんしん
)
の
上
(
うへ
)
此
(
この
)
馬
(
うま
)
に
乗
(
の
)
つて、
171
私
(
わたし
)
にハルナの
都
(
みやこ
)
まで
送
(
おく
)
らせて
下
(
くだ
)
さいませ。
172
さうしますれば
御
(
ご
)
主人
(
しゆじん
)
様
(
さま
)
に
対
(
たい
)
しても
忠義
(
ちうぎ
)
が
立
(
た
)
つといふもの、
173
お
願
(
ねがひ
)
で
厶
(
ござ
)
います』
174
黄金姫
(
わうごんひめ
)
『アヽ
何
(
なん
)
と
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
は
水
(
みづ
)
も
洩
(
も
)
らさぬ
深
(
ふか
)
いお
仕組
(
しぐみ
)
、
175
到底
(
たうてい
)
凡人
(
ただびと
)
の
窺
(
うかが
)
ひ
知
(
し
)
る
所
(
ところ
)
でない。
176
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
吾
(
わが
)
夫
(
をつと
)
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
様
(
さま
)
は
其
(
その
)
様
(
やう
)
な
立派
(
りつぱ
)
な
御
(
お
)
方
(
かた
)
になつてゐられるか、
177
ホンに
嬉
(
うれ
)
しいことだ。
178
それ
丈
(
だけ
)
御
(
ご
)
忍耐
(
にんたい
)
の
深
(
ふか
)
い
神司
(
かむづかさ
)
とお
成
(
な
)
り
遊
(
あそ
)
ばした
以上
(
いじやう
)
は、
179
キツと
三五教
(
あななひけう
)
の
教
(
をしへ
)
をお
説
(
と
)
き
申
(
まを
)
したならば、
180
三五教
(
あななひけう
)
になつて
下
(
くだ
)
さるだらう。
181
アヽ
有難
(
ありがた
)
い
有難
(
ありがた
)
い……。
182
コレ
清照姫
(
きよてるひめ
)
、
183
モウ
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
だ
御
(
ご
)
安心
(
あんしん
)
なさい』
184
清照姫
(
きよてるひめ
)
『お
母
(
か
)
アさま、
185
本当
(
ほんたう
)
に
嬉
(
うれ
)
しう
厶
(
ござ
)
いますなア』
186
レーブ『モシモシ
奥様
(
おくさま
)
、
187
私
(
わたし
)
の
前
(
まへ
)
だから、
188
そんなことを
仰有
(
おつしや
)
つても
宜
(
よろ
)
しいが、
189
モウこれきり
三五教
(
あななひけう
)
の
事
(
こと
)
は
仰有
(
おつしや
)
らぬが
宜
(
よろ
)
しい、
190
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
迷惑
(
めいわく
)
になります。
191
それでなくても
奥様
(
おくさま
)
や
娘
(
むすめ
)
様
(
さま
)
が、
192
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
に
成
(
な
)
つてゐられるといふ
噂
(
うはさ
)
が、
193
大黒主
(
おほくろぬし
)
様
(
さま
)
の
耳
(
みみ
)
に
入
(
はい
)
つてからといふものは、
194
大変
(
たいへん
)
な、
195
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
に
対
(
たい
)
し、
196
圧迫
(
あつぱく
)
が
加
(
くは
)
はつて
来
(
き
)
てゐます。
197
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
は
聖人
(
せいじん
)
君子
(
くんし
)
、
198
兵馬
(
へいば
)
の
権
(
けん
)
は
少
(
すこ
)
しもお
握
(
にぎ
)
り
遊
(
あそ
)
ばさず、
199
大黒主
(
おほくろぬし
)
に
睨
(
にら
)
まれたが
最後
(
さいご
)
御
(
おん
)
身
(
み
)
の
破滅
(
はめつ
)
、
200
それ
故
(
ゆゑ
)
一切
(
いつさい
)
を
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
任
(
まか
)
して
御
(
ご
)
隠忍
(
いんにん
)
遊
(
あそ
)
ばして
厶
(
ござ
)
る
其
(
その
)
矢先
(
やさき
)
、
201
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
が
三五教
(
あななひけう
)
のお
話
(
はなし
)
をお
聞
(
き
)
きになつたといふことが
大黒主
(
おほくろぬし
)
に
聞
(
き
)
かれたが
最後
(
さいご
)
、
202
亡
(
ほろ
)
ぼされて
了
(
しま
)
ひます。
203
どうぞ
今日
(
けふ
)
限
(
かぎ
)
り
言
(
い
)
はない
様
(
やう
)
にして
下
(
くだ
)
さる
方
(
はう
)
が、
204
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
初
(
はじ
)
め
御
(
ご
)
両人
(
りやうにん
)
様
(
さま
)
のお
為
(
ため
)
で
厶
(
ござ
)
いませう』
205
黄金姫
(
わうごんひめ
)
は
心
(
こころ
)
の
裡
(
うち
)
に………ナーニ、
206
大黒主
(
おほくろぬし
)
何者
(
なにもの
)
ぞ、
207
何程
(
なにほど
)
兵馬
(
へいば
)
の
権
(
けん
)
を
握
(
にぎ
)
るとはいへ、
208
仁慈
(
じんじ
)
無限
(
むげん
)
の
三五
(
あななひ
)
の
言霊
(
ことたま
)
の
伊吹
(
いぶき
)
に
依
(
よ
)
つて
言向和
(
ことむけやは
)
すは
朝飯前
(
あさめしまへ
)
だ。
209
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
らこんな
奴
(
やつこ
)
にそんな
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
つて
気
(
き
)
を
揉
(
も
)
ますも
可哀相
(
かあいさう
)
だ………と
胸
(
むね
)
を
定
(
き
)
めて、
210
黄金姫
『お
前
(
まへ
)
のいふ
通
(
とほ
)
り、
211
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
難儀
(
なんぎ
)
になることだから、
212
モウ
三五教
(
あななひけう
)
のことは
云
(
い
)
ひますまい………ナア
清照姫
(
きよてるひめ
)
、
213
お
前
(
まへ
)
もこれきり
言
(
い
)
はない
様
(
やう
)
にして
下
(
くだ
)
さいや』
214
レーブ『アヽそれを
聞
(
き
)
いて
此
(
この
)
奴
(
やつこ
)
も
安心
(
あんしん
)
致
(
いた
)
しました。
215
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
らここに
一
(
ひと
)
つの
大心配
(
だいしんぱい
)
が
厶
(
ござ
)
います。
216
都
(
みやこ
)
の
入口
(
いりぐち
)
に
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
軍隊
(
ぐんたい
)
が
警護
(
けいご
)
し、
217
一々
(
いちいち
)
人物
(
じんぶつ
)
検
(
あらた
)
めを
致
(
いた
)
し、
218
信仰
(
しんかう
)
の
試験
(
しけん
)
をして
居
(
を
)
りますから、
219
其
(
その
)
時
(
とき
)
にどうぞ
三五教
(
あななひけう
)
の
教
(
をしへ
)
じみたことは
一
(
ひと
)
つも
言
(
い
)
はないやうにして
下
(
くだ
)
さらぬと、
220
九分
(
くぶ
)
九厘
(
くりん
)
で
失敗
(
しつぱい
)
してはなりませぬから……』
221
黄金姫
(
わうごんひめ
)
『あゝヨシヨシ、
222
安心
(
あんしん
)
しておくれ、
223
私
(
わたし
)
も
元
(
もと
)
はバラモン
教
(
けう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
だから、
224
そこは
如才
(
じよさい
)
なうやつてのけるから………』
225
レーブ『
誠
(
まこと
)
に
済
(
す
)
まないことで
厶
(
ござ
)
いますが、
226
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
にお
会
(
あ
)
ひなさる
迄
(
まで
)
、
227
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
であつたとか、
228
小糸姫
(
こいとひめ
)
であつたとか
云
(
い
)
ふやうなことを
仰有
(
おつしや
)
つてはなりませぬぞや。
229
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
は
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
で、
230
あなた
方
(
がた
)
を
恋慕
(
こひした
)
うて
私
(
ひそ
)
かに
呼
(
よ
)
び
寄
(
よ
)
せたいと
思召
(
おぼしめ
)
し、
231
吾々
(
われわれ
)
を
四方
(
よも
)
の
国
(
くに
)
にお
遣
(
つか
)
はしになり、
232
御
(
おん
)
行方
(
ゆくへ
)
を
探
(
さが
)
させてゐられますなり、
233
又
(
また
)
一方
(
いつぱう
)
の
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
方
(
はう
)
では……
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
様
(
さま
)
の
奥様
(
おくさま
)
娘子
(
むすめご
)
が
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
になつてゐるさうだから、
234
何時
(
いつ
)
かは
帰
(
かへ
)
つて
来
(
く
)
るだらう、
235
其
(
その
)
時
(
とき
)
に
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
が
三五教
(
あななひけう
)
に
帰順
(
きじゆん
)
しようものなら、
236
バラモン
教
(
けう
)
は
根底
(
こんてい
)
から
覆
(
かへ
)
つて
了
(
しま
)
ふ。
237
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
に
親子
(
おやこ
)
の
対面
(
たいめん
)
致
(
いた
)
させては
大変
(
たいへん
)
だ、
238
それ
以前
(
いぜん
)
に
取
(
と
)
つ
捉
(
つか
)
まへて
命
(
いのち
)
を
取
(
と
)
り、
239
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
様
(
さま
)
にソツと
内証
(
ないしよう
)
で
居
(
を
)
らうといふ
大将
(
たいしやう
)
のズルイお
考
(
かんが
)
へ、
240
かういふ
具合
(
ぐあひ
)
で、
241
大黒主
(
おほくろぬし
)
様
(
さま
)
と
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
様
(
さま
)
とは
始終
(
しじう
)
暗闘
(
あんとう
)
が
続
(
つづ
)
けられて
居
(
を
)
りますから、
242
中々
(
なかなか
)
都
(
みやこ
)
の
関門
(
くわんもん
)
をくぐることは
容易
(
ようい
)
なことでは
厶
(
ござ
)
いませぬ。
243
甚
(
はなは
)
だ
申
(
まをし
)
にくいこと
乍
(
なが
)
ら、
244
あなた
様
(
さま
)
母娘
(
おやこ
)
を
科人
(
とがにん
)
として
縛
(
しば
)
り
上
(
あ
)
げ、
245
馬
(
うま
)
の
背
(
せ
)
に
括
(
くく
)
りつけて
関門
(
くわんもん
)
をくぐりお
館
(
やかた
)
まで
送
(
おく
)
るより
手段
(
しゆだん
)
はないので
厶
(
ござ
)
います』
246
黄金姫
(
わうごんひめ
)
はニタリと
笑
(
わら
)
ひ、
247
心
(
こころ
)
の
中
(
うち
)
にて………ナニそれ
程
(
ほど
)
驚
(
おどろ
)
くことがあるものか、
248
吾々
(
われわれ
)
にはキツと
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
が
守護
(
しゆご
)
して
厶
(
ござ
)
る、
249
そんなことは
心配
(
しんぱい
)
すな……と
口
(
くち
)
まで
出
(
だ
)
さうとしたが、
250
俄
(
にはか
)
に
呑
(
の
)
み
込
(
こ
)
み、
251
ワザと
心配
(
しんぱい
)
さうに、
252
黄金姫
『
何
(
なに
)
から
何
(
なに
)
まで
気
(
き
)
をつけて
呉
(
く
)
れるお
前
(
まへ
)
の
親切
(
しんせつ
)
、
253
黄金姫
(
わうごんひめ
)
も
有難
(
ありがた
)
う
思
(
おも
)
ふぞや』
254
レーブ『ハイ、
255
勿体
(
もつたい
)
ない
其
(
その
)
お
言葉
(
ことば
)
、
256
左様
(
さやう
)
ならば
今夜
(
こんや
)
はここで
寝
(
やす
)
むことに
致
(
いた
)
しませう。
257
実
(
じつ
)
は
此
(
この
)
テームス
峠
(
たうげ
)
は
剣呑
(
けんのん
)
で
厶
(
ござ
)
います。
258
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
一派
(
いつぱ
)
の
奴
(
やつ
)
が
関所
(
せきしよ
)
を
構
(
かま
)
へて
往来
(
ゆきき
)
の
人
(
ひと
)
を
査
(
しら
)
べて
居
(
を
)
りますから、
259
夜分
(
やぶん
)
は
尚更
(
なほさら
)
剣呑
(
けんのん
)
なれば、
260
夜
(
よ
)
の
明
(
あ
)
けるのを
待
(
ま
)
ち、
261
姿
(
すがた
)
を
変
(
か
)
へて
此
(
この
)
峠
(
たうげ
)
を
越
(
こ
)
えることと
致
(
いた
)
しませう』
262
清照姫
(
きよてるひめ
)
『お
母
(
か
)
アさま、
263
昼
(
ひる
)
よりもそんな
危険
(
きけん
)
な
処
(
ところ
)
なら、
264
夜分
(
やぶん
)
の
方
(
はう
)
が
面白
(
おもしろ
)
いぢやありませぬか。
265
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
部下
(
ぶか
)
が
仮令
(
たとへ
)
何万
(
なんまん
)
押寄
(
おしよ
)
せ
来
(
きた
)
る
共
(
とも
)
、
266
言霊
(
ことたま
)
の
神力
(
しんりき
)
や、
267
生
(
うま
)
れつきの
吾
(
わが
)
武勇
(
ぶゆう
)
にて、
268
一人
(
ひとり
)
も
残
(
のこ
)
らず
谷底
(
たにそこ
)
へ
投
(
な
)
げやり、
269
懲
(
こら
)
しめてやつたら、
270
眠気
(
ねむけ
)
さましになつて
面白
(
おもしろ
)
いぢやありませぬか。
271
そんなことを
聞
(
き
)
くと、
272
如何
(
どう
)
してこんな
所
(
ところ
)
に、
273
夜明
(
よあ
)
かしが
出来
(
でき
)
ませう。
274
どうも
肉
(
にく
)
が
躍
(
をど
)
つて
腕
(
うで
)
が
鳴
(
な
)
り
堪
(
た
)
へられなくなつて
来
(
き
)
ました』
275
黄金姫
(
わうごんひめ
)
『コレコレ
清照姫
(
きよてるひめ
)
、
276
大事
(
だいじ
)
の
前
(
まへ
)
の
小事
(
せうじ
)
だ。
277
小童
(
こわつぱ
)
武者
(
むしや
)
に
相手
(
あひて
)
になり、
278
ハルナの
都
(
みやこ
)
へ
入城
(
にふじやう
)
の
妨害
(
ばうがい
)
になつては、
279
それこそ
大変
(
たいへん
)
だから、
280
レーブの
云
(
い
)
ふ
通
(
とほ
)
り、
281
都
(
みやこ
)
へ
着
(
つ
)
く
迄
(
まで
)
は
柔順
(
おとな
)
しうして
行
(
ゆ
)
きませう。
282
まして
無抵抗
(
むていかう
)
主義
(
しゆぎ
)
の
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
がそんな
事
(
こと
)
をしてはなりませぬぞや、
283
賢
(
かしこ
)
いやうでもまだ
年
(
とし
)
が
若
(
わか
)
いから、
284
……アヽ
困
(
こま
)
りますワイ、
285
かうなると
老人
(
としより
)
も
矢張
(
やつぱり
)
必要
(
ひつえう
)
だなア。
286
オホヽヽヽヽ』
287
清照姫
(
きよてるひめ
)
『
何事
(
なにごと
)
も
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
とお
母
(
か
)
ア
様
(
さま
)
にお
任
(
まか
)
せ
致
(
いた
)
しませう』
288
黄金姫
(
わうごんひめ
)
『アヽそれが
良
(
よ
)
い それが
良
(
よ
)
い。
289
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
も
嘸
(
さぞ
)
お
前
(
まへ
)
の
其
(
その
)
お
言
(
ことば
)
を
御
(
ご
)
満足
(
まんぞく
)
に
思召
(
おぼしめ
)
すであらう。
290
そんならレーブ、
291
今夜
(
こんや
)
はここで
夜
(
よ
)
を
明
(
あ
)
かすことにしよう』
292
レーブ『ハイ、
293
さうなされませ。
294
私
(
わたし
)
もこれで
安心
(
あんしん
)
を
致
(
いた
)
しました』
295
と
主従
(
しゆじゆう
)
四
(
よ
)
人
(
にん
)
は
岩
(
いは
)
の
上
(
うへ
)
に
蓑
(
みの
)
を
布
(
し
)
き、
296
一夜
(
いちや
)
を
明
(
あか
)
すこととなつた。
297
四辺
(
あたり
)
に
聞
(
きこ
)
ゆる
狼
(
おほかみ
)
の
唸
(
うな
)
り
声
(
ごゑ
)
、
298
凩
(
こがらし
)
の
声
(
こゑ
)
と
共
(
とも
)
に
物凄
(
ものすご
)
く
聞
(
きこ
)
え
来
(
き
)
たる。
299
(
大正一一・一〇・二九
旧九・一〇
松村真澄
録)
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