霊界物語.ネット
~出口王仁三郎 大図書館~
設定
|
ヘルプ
ホーム
霊界物語
舎身活躍(第37~48巻)
第39巻(寅の巻)
序歌
総説
第1篇 伊祖の神風
第1章 大黒主
第2章 評定
第3章 出師
第2篇 黄金清照
第4章 河鹿越
第5章 人の心
第6章 妖霧
第7章 都率天
第8章 母と娘
第3篇 宿世の山道
第9章 九死一生
第10章 八の字
第11章 鼻摘
第12章 種明志
第4篇 浮木の岩窟
第13章 浮木の森
第14章 清春山
第15章 焼糞
第16章 親子対面
第5篇 馬蹄の反影
第17章 テームス峠
第18章 関所守
第19章 玉山嵐
附録 大祓祝詞解
余白歌
×
設定
この文献を王仁DBで開く
印刷用画面を開く
[?]
プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。
[×閉じる]
話者名の追加表示
[?]
セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。
[×閉じる]
追加表示する
追加表示しない
【標準】
表示できる章
テキストのタイプ
[?]
ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。
[×閉じる]
通常のテキスト
【標準】
コピー用のテキスト
文字サイズ
S
【標準】
M
L
ルビの表示
通常表示
【標準】
括弧の中に表示
表示しない
アンカーの表示
[?]
本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。
[×閉じる]
左側だけに表示する
【標準】
表示しない
全てのアンカーを表示
宣伝歌
[?]
宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。
[×閉じる]
一段組
【標準】
二段組
脚注[※]用語解説
[?]
[※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。
[×閉じる]
脚注マークを表示する
【標準】
脚注マークを表示しない
脚注[*]編集用
[?]
[※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。
[×閉じる]
脚注マークを表示する
脚注マークを表示しない
【標準】
外字の外周色
[?]
一般のフォントに存在しない文字は専用の外字フォントを使用しています。目立つようにその文字の外周の色を変えます。
[×閉じる]
無色
【標準】
赤色
現在のページには外字は使われていません
表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。
サイトをリニューアルしました(
従来バージョンはこちら
)【新着情報】
(
サブスク
のお知らせ)
霊界物語
>
舎身活躍(第37~48巻)
>
第39巻(寅の巻)
> 第4篇 浮木の岩窟 > 第15章 焼糞
<<< 清春山
(B)
(N)
親子対面 >>>
第一五章
焼糞
(
やけくそ
)
〔一〇八〇〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第39巻 舎身活躍 寅の巻
篇:
第4篇 浮木の岩窟
よみ(新仮名遣い):
うききのがんくつ
章:
第15章 焼糞
よみ(新仮名遣い):
やけくそ
通し章番号:
1080
口述日:
1922(大正11)年10月28日(旧09月9日)
口述場所:
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年5月5日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
[×閉じる]
:
清春山の岩窟では、大黒主の命により、大将の大足別が数百人の兵士を引き連れてデカタン高原に出陣した後であった。
大将がいなくなった後、二十人ばかりの留守番の者たちは朝から晩まで酒を飲んで酔いつぶれ、管を巻いていた。岩窟の奥には、照国別・菖蒲の両親が囚われていた。
留守番たちが宴会をしているところへ入り口の門番が慌てて入ってきて、門口に強そうな宣伝使三人と美しい女の一行が現れたと注進した。一同はあわてて右往左往する。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-11-21 10:16:53
OBC :
rm3915
愛善世界社版:
208頁
八幡書店版:
第7輯 355頁
修補版:
校定版:
219頁
普及版:
89頁
初版:
ページ備考:
001
梵天王
(
ぼんてんわう
)
の
自在天
(
じざいてん
)
002
バラモン
国
(
こく
)
に
名
(
な
)
も
高
(
たか
)
き
003
ハルナの
都
(
みやこ
)
に
現
(
あら
)
はれし
004
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
片腕
(
かたうで
)
と
005
選
(
えら
)
まれゐたる
神司
(
かむづかさ
)
006
大足別
(
おほだるわけ
)
はフサの
国
(
くに
)
007
印度
(
ツキ
)
の
御国
(
みくに
)
の
国境
(
くにざかひ
)
008
清春山
(
きよはるやま
)
の
岩窟
(
がんくつ
)
に
009
数多
(
あまた
)
の
部下
(
ぶか
)
を
呼
(
よ
)
び
集
(
つど
)
へ
010
暴威
(
ばうゐ
)
を
振
(
ふる
)
ふ
其
(
その
)
内
(
うち
)
に
011
三五教
(
あななひけう
)
の
神司
(
かむづかさ
)
012
照国別
(
てるくにわけ
)
の
妹
(
いもと
)
なる
013
菖蒲
(
あやめ
)
の
方
(
かた
)
に
目
(
め
)
をくれて
014
朝
(
あさ
)
な
夕
(
ゆふ
)
なに
諸人
(
もろびと
)
を
015
彼
(
かれ
)
が
館
(
やかた
)
に
遣
(
つか
)
はしつ
016
千言
(
せんげん
)
万語
(
ばんご
)
を
費
(
つひや
)
して
017
口説
(
くど
)
けど
説
(
と
)
けど
磐石
(
ばんじやく
)
の
018
揺
(
ゆる
)
がぬ
固
(
かた
)
き
決心
(
けつしん
)
に
019
流石
(
さすが
)
の
魔神
(
まがみ
)
も
辟易
(
へきえき
)
し
020
ここに
全
(
まつた
)
く
手
(
て
)
を
変
(
か
)
へて
021
レール(四郎)セーム(清六)や
022
シヤム(三六)ハール(八郎)
023
ポーロ(保道)の
五
(
ご
)
人
(
にん
)
を
河鹿山
(
かじかやま
)
024
麓
(
ふもと
)
の
道
(
みち
)
に
遣
(
つか
)
はして
025
菖蒲
(
あやめ
)
の
方
(
かた
)
がウブスナの
026
斎苑
(
いそ
)
の
館
(
やかた
)
に
行
(
ゆ
)
く
道
(
みち
)
を
027
取押
(
とりおさ
)
へむと
待
(
ま
)
ちゐたる
028
時
(
とき
)
しもあれや
三五
(
あななひ
)
の
029
教
(
をしへ
)
を
慕
(
した
)
ふ
梅彦
(
うめひこ
)
が
030
妹
(
いもと
)
と
生
(
うま
)
れし
花菖蒲
(
はなあやめ
)
031
女
(
をんな
)
の
繊弱
(
かよわ
)
き
一人旅
(
ひとりたび
)
032
来
(
き
)
かかる
前
(
まへ
)
に
塞
(
ふさ
)
がりて
033
有無
(
うむ
)
を
云
(
い
)
はせずフン
縛
(
じば
)
り
034
清春山
(
きよはるやま
)
の
谷間
(
たにあひ
)
に
035
引
(
ひき
)
つれ
来
(
きた
)
りて
各自
(
めいめい
)
に
036
大足別
(
おほだるわけ
)
の
望
(
のぞ
)
みをば
037
徹
(
とほ
)
さむものと
左右
(
さいう
)
より
038
嚇
(
おど
)
しつすかしつ
努
(
つと
)
むれど
039
信仰
(
しんかう
)
堅固
(
けんご
)
の
菖蒲子
(
あやめこ
)
は
040
頭
(
かうべ
)
を
左右
(
さいう
)
に
打
(
うち
)
ふりて
041
いつかな
動
(
うご
)
かぬ
権幕
(
けんまく
)
に
042
流石
(
さすが
)
の
曲津
(
まがつ
)
も
持
(
も
)
ちあぐみ
043
困
(
こま
)
りぬいたる
折柄
(
をりから
)
に
044
遥
(
はるか
)
に
聞
(
きこ
)
ゆる
宣伝歌
(
せんでんか
)
045
五
(
ご
)
人
(
にん
)
は
一度
(
いちど
)
に
肝冷
(
きもひや
)
し
046
逃
(
に
)
げ
隠
(
かく
)
れむとする
時
(
とき
)
に
047
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
りし
宣伝使
(
せんでんし
)
048
照国別
(
てるくにわけ
)
の
眼力
(
がんりき
)
に
049
睨
(
にら
)
まれ
恐
(
おそ
)
れて
雲
(
くも
)
霞
(
かすみ
)
050
逃
(
に
)
げ
行
(
ゆ
)
く
後
(
あと
)
に
菖蒲子
(
あやめこ
)
が
051
涙
(
なみだ
)
ながらの
物語
(
ものがたり
)
052
よくよく
聞
(
き
)
けば
両親
(
りやうしん
)
は
053
大足別
(
おほだるわけ
)
に
捕
(
とら
)
へられ
054
朝
(
あさ
)
な
夕
(
ゆふ
)
なの
責苦
(
せめく
)
をば
055
忍
(
しの
)
びゐますと
聞
(
き
)
きしより
056
照国別
(
てるくにわけ
)
は
驚
(
おどろ
)
いて
057
日頃
(
ひごろ
)
尋
(
たづ
)
ねし
父母
(
ちちはは
)
は
058
バラモン
教
(
けう
)
の
岩窟
(
がんくつ
)
に
059
囚
(
とら
)
はれ
給
(
たま
)
ふか いぢらしや
060
日頃
(
ひごろ
)
尋
(
たづ
)
ねし
妹
(
いもうと
)
は
061
汝
(
なんぢ
)
なりしや
嬉
(
うれ
)
しやと
062
心
(
こころ
)
も
勇
(
いさ
)
み
身
(
み
)
も
勇
(
いさ
)
み
063
照公
(
てるこう
)
梅公
(
うめこう
)
諸共
(
もろとも
)
に
064
清春山
(
きよはるやま
)
の
岩窟
(
がんくつ
)
に
065
登
(
のぼ
)
り
行
(
ゆ
)
くこそ
雄々
(
をを
)
しけれ。
066
清春山
(
きよはるやま
)
の
岩窟
(
がんくつ
)
には
大将
(
たいしやう
)
の
大足別
(
おほだるわけ
)
が
数百
(
すうひやく
)
人
(
にん
)
の
武卒
(
ぶそつ
)
を
率
(
ひき
)
ゐ、
067
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
命
(
めい
)
によつてデカタン
高原
(
かうげん
)
に
蟠居
(
ばんきよ
)
せるウラル
教
(
けう
)
の
集団
(
しふだん
)
を
勦滅
(
さうめつ
)
せむと
出陣
(
しゆつぢん
)
した
後
(
あと
)
であつた。
068
目
(
め
)
の
上
(
うへ
)
の
瘤
(
こぶ
)
と
嫌
(
いや
)
がつてゐた
大足別
(
おほだるわけ
)
の
大将
(
たいしやう
)
が
出陣
(
しゆつぢん
)
した
後
(
あと
)
は、
069
恐
(
こわ
)
い
者
(
もの
)
なしの
連中
(
れんちう
)
、
070
朝
(
あさ
)
から
晩
(
ばん
)
まで
酒
(
さけ
)
をとり
出
(
だ
)
し、
071
『
会
(
あ
)
ふた
時
(
とき
)
に
笠
(
かさ
)
ぬげ
式
(
しき
)
』で、
072
ビールやポートワインを
穴倉
(
あなぐら
)
より
取
(
と
)
り
出
(
だ
)
し、
073
朝
(
あさ
)
から
晩
(
ばん
)
まで
管
(
くだ
)
の
巻
(
ま
)
きつづけをやつてゐた。
074
二十
(
にじふ
)
人
(
にん
)
ばかりの
留守番
(
るすばん
)
は
各
(
おのおの
)
八畳
(
はちじやう
)
ばかりの
間
(
ま
)
に
胡坐
(
あぐら
)
をかき
乍
(
なが
)
ら、
075
遠慮
(
ゑんりよ
)
なしに
秘蔵
(
ひざう
)
の
酒
(
さけ
)
をとり
出
(
だ
)
しウラル
教
(
けう
)
式
(
しき
)
に、
076
飲
(
の
)
めよ
騒
(
さわ
)
げよ
一寸先
(
いつすんさき
)
や
暗
(
やみ
)
よ
077
暗
(
やみ
)
の
後
(
あと
)
には
月
(
つき
)
が
出
(
で
)
る
078
と
唄
(
うた
)
ひ
乍
(
なが
)
らヘベレケに
酔
(
よ
)
ひ
潰
(
つぶ
)
れ、
079
脱線
(
だつせん
)
振
(
ぶ
)
りを
盛
(
さか
)
んに
発揮
(
はつき
)
してゐる。
080
レール『オイ、
081
ポーロ、
082
貴様
(
きさま
)
は
何時
(
いつ
)
も
御
(
おん
)
大将
(
たいしやう
)
を
笠
(
かさ
)
に
着
(
き
)
て
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
を
腮
(
あご
)
の
先
(
さき
)
でコキ
使
(
つか
)
ひやがつたが、
083
もう
今日
(
けふ
)
となつては
駄目
(
だめ
)
だ。
084
これからレールさまが
留守
(
るす
)
師団長
(
しだんちやう
)
だから
其
(
その
)
命令
(
めいれい
)
を
遵奉
(
じゆんぽう
)
するのだよ。
085
万々一
(
まんまんいち
)
レールの
御
(
ご
)
命令
(
めいれい
)
に
服従
(
ふくじゆう
)
せないと、
086
此
(
この
)
間
(
あひだ
)
のタルチン(太郎吉)の
様
(
やう
)
に
岩上
(
がんじやう
)
から
深谷川
(
ふかたにがは
)
へ
空中
(
くうちう
)
滑走
(
くわつそう
)
の
曲芸
(
きよくげい
)
を
演
(
えん
)
じて
谷底
(
たにそこ
)
に
伏艇
(
ふくてい
)
し、
087
其
(
その
)
まま
三途
(
さんづ
)
の
川
(
かは
)
へタダ
走
(
ばし
)
りにならねばならぬから、
088
チツとは
神妙
(
しんめう
)
にしたが
宜
(
よ
)
からうぞ。
089
貴様
(
きさま
)
が
何時
(
いつ
)
も
飲食物
(
いんしよくぶつ
)
に
ケチ
をつけゴテゴテ
吐
(
ぬか
)
すものだから、
090
胃
(
ゐ
)
の
腑
(
ふ
)
の
格納庫
(
かくなふこ
)
は
空虚
(
くうきよ
)
になり、
091
碌
(
ろく
)
に
働
(
はたら
)
きも
出来
(
でき
)
やしない。
092
コンパスのプロペラがチツとも
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
をきかないから、
093
それで
是非
(
ぜひ
)
なく
斯
(
か
)
うしてヘタばつて
酒
(
さけ
)
を
飲
(
の
)
んで
居
(
ゐ
)
るのだ。
094
オイ、
095
皆
(
みな
)
の
奴
(
やつ
)
、
096
大将
(
たいしやう
)
は
印度
(
ツキ
)
の
国
(
くに
)
の
都
(
みやこ
)
まで
行
(
い
)
つて、
097
それから
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
軍隊
(
ぐんたい
)
と
合
(
がつ
)
し、
098
デカタン
高原
(
かうげん
)
へ
行
(
ゆ
)
くのだから、
099
先
(
ま
)
づ
一
(
いち
)
年
(
ねん
)
位
(
ぐらゐ
)
は
帰
(
かへ
)
つて
来
(
こ
)
ない
事
(
こと
)
は
請合
(
うけあひ
)
だ。
100
あるだけの
酒
(
さけ
)
を
飲
(
の
)
んでパンを
喰
(
く
)
ひ
尽
(
つく
)
し、
101
無
(
な
)
くなつたら
今度
(
こんど
)
はアーメニヤに
長駆
(
ちやうく
)
進撃
(
しんげき
)
してウラル
彦
(
ひこ
)
の
館
(
やかた
)
を
襲
(
おそ
)
ひ、
102
ここも
亦
(
また
)
蚕
(
かひこ
)
の
虫
(
むし
)
が
桑
(
くは
)
の
葉
(
は
)
を
喰
(
く
)
ふ
様
(
やう
)
に
喰
(
く
)
ひつぶしさへすれば
吾々
(
われわれ
)
の
天下
(
てんか
)
は
太平
(
たいへい
)
だ。
103
こんな
甘
(
うま
)
い
酒
(
さけ
)
も
飲
(
の
)
まずに
河鹿
(
かじか
)
峠
(
たうげ
)
を
痩馬
(
やせうま
)
追
(
お
)
ふ
様
(
やう
)
に
朝
(
あさ
)
から
晩
(
ばん
)
までハイハイと
云
(
い
)
つて
居
(
ゐ
)
るのも
気
(
き
)
が
利
(
き
)
かねい。
104
こんな
事
(
こと
)
が
出
(
で
)
て
来
(
く
)
ると
思
(
おも
)
つて
待
(
ま
)
つてゐたのだ。
105
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
は
大将
(
たいしやう
)
から
腰抜
(
こしぬけ
)
野郎
(
やらう
)
の、
106
裏返
(
うらがへ
)
り
者
(
もの
)
と
認識
(
にんしき
)
されてゐるのだから、
107
肝腎
(
かんじん
)
の
戦争
(
せんそう
)
にも
連
(
つ
)
れて
行
(
ゆ
)
きやがらなんだのだよ』
108
ポーロ『それが
却
(
かへつ
)
て
此方
(
こち
)
とらの
好都合
(
かうつがふ
)
だ。
109
俺
(
おれ
)
も
今迄
(
いままで
)
は
大将
(
たいしやう
)
の
命令
(
めいれい
)
で
威張
(
ゐば
)
つてゐたものの
心
(
こころ
)
の
底
(
そこ
)
をたたいたらヤツパリお
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
と
同一
(
どういつ
)
だ』
110
レール『さう
聞
(
き
)
けば
牛
(
うし
)
の
爪
(
つめ
)
だ、
111
先
(
さき
)
からよく
分
(
わか
)
つてる。
112
然
(
しか
)
し
分
(
わか
)
らぬのは
奥
(
おく
)
の
岩窟
(
がんくつ
)
に
隠
(
かく
)
してある
老夫婦
(
らうふうふ
)
ぢやないか。
113
あんな
柔順
(
おとなし
)
い
老人
(
らうじん
)
を
何故
(
なぜ
)
何時
(
いつ
)
までもあんな
暗室
(
あんしつ
)
に
突
(
つ
)
つ
込
(
こ
)
んでおくのだらう。
114
第一
(
だいいち
)
それが
俺
(
おれ
)
は
気
(
き
)
に
喰
(
く
)
はないのだ、
115
………ポーロ、
116
貴様
(
きさま
)
は
凡
(
すべ
)
ての
様子
(
やうす
)
を
知
(
し
)
つてゐる
筈
(
はず
)
だ。
117
キレイサツパリとここで
白状
(
はくじやう
)
して
了
(
しま
)
へ』
118
ポーロ『もう
斯
(
か
)
うなる
上
(
うへ
)
は
何
(
なに
)
をか
包
(
つつ
)
まむやだ。
119
大
(
おほ
)
きな
声
(
こゑ
)
では
云
(
い
)
はれぬが
此処
(
ここ
)
の
大将
(
たいしやう
)
は
天下
(
てんか
)
無類
(
むるゐ
)
のデレ
助
(
すけ
)
だ。
120
バラモン
教
(
けう
)
で
居
(
ゐ
)
乍
(
なが
)
らウラル
教
(
けう
)
の
娘
(
むすめ
)
にゾツコン
惚込
(
ほれこ
)
んで『
女房
(
にようばう
)
に
呉
(
く
)
れえ』と
掛合
(
かけあ
)
つた
所
(
ところ
)
、
121
宗旨
(
しうし
)
が
違
(
ちが
)
ふので
今
(
いま
)
幽閉
(
いうへい
)
されている
夫婦
(
ふうふ
)
が
容易
(
ようい
)
に
首
(
くび
)
を
縦
(
たて
)
にふらない。
122
そこで
大足別
(
おほだるわけ
)
の
大将
(
たいしやう
)
が
手
(
て
)
を
代
(
か
)
へ
品
(
しな
)
をかへ、
123
沢山
(
たくさん
)
な
贈物
(
おくりもの
)
をして
夫婦
(
ふうふ
)
を
説
(
と
)
きつけたけれども、
124
どうしても
駄目
(
だめ
)
だつた。
125
そこで
今度
(
こんど
)
は
焼糞
(
やけくそ
)
になつて
老夫婦
(
らうふうふ
)
がコーカス
山
(
ざん
)
に
参拝
(
さんぱい
)
する
途中
(
とちう
)
を
待
(
ま
)
ち
受
(
う
)
け
高手
(
たかて
)
小手
(
こて
)
に
縛
(
いま
)
しめ
象
(
ざう
)
の
背
(
せ
)
にフン
縛
(
じば
)
つて
亦
(
また
)
も
馬
(
うま
)
の
背
(
せ
)
にのせ
到頭
(
たうとう
)
此
(
この
)
岩窟
(
がんくつ
)
まで
連
(
つ
)
れ
帰
(
かへ
)
り、
126
朝
(
あさ
)
から
晩
(
ばん
)
まで『
姫
(
ひめ
)
を
渡
(
わた
)
すか、
127
渡
(
わた
)
せば
助
(
たす
)
けてやる、
128
嫌
(
いや
)
ぢや
何
(
なん
)
ぞと
吐
(
ぬか
)
すが
最後
(
さいご
)
、
129
貴様
(
きさま
)
の
素首
(
そつくび
)
を
引
(
ひき
)
ぬいてやらう』と
執念深
(
しふねんぶか
)
くも、
130
御
(
おん
)
大
(
たい
)
自
(
みづか
)
ら
幽閉室
(
いうへいしつ
)
の
前
(
まへ
)
に
現
(
あら
)
はれて
口説
(
くど
)
きたてるのだから
堪
(
たま
)
らない。
131
あんな
大将
(
たいしやう
)
に
見込
(
みこ
)
まれたら、
132
丸
(
まる
)
で
蛇
(
へび
)
に
狙
(
ねら
)
はれた
蛙
(
かへる
)
の
様
(
やう
)
なものだらう』
133
レール『
其
(
その
)
娘
(
むすめ
)
は
何処
(
どこ
)
に
居
(
ゐ
)
るのだ。
134
肝腎
(
かんじん
)
の
代物
(
しろもの
)
が
無
(
な
)
いのに
爺
(
ぢぢ
)
や
婆
(
ばば
)
を
苛
(
いぢ
)
めて
居
(
を
)
つても
仕方
(
しかた
)
がないぢやないか。
135
大足別
(
おほだるわけ
)
の
大将
(
たいしやう
)
も
余程
(
よほど
)
訳
(
わけ
)
の
分
(
わか
)
らぬ
ケレ
又
(
また
)
人足
(
にんそく
)
だのう』
136
ポーロ『オイ、
137
コラ、
138
そんな
事
(
こと
)
を
吐
(
ぬか
)
すと
剣呑
(
けんのん
)
だぞ。
139
此
(
この
)
中
(
なか
)
にも
矢張
(
やつぱり
)
犬
(
いぬ
)
が
潜
(
ひそ
)
んで
居
(
ゐ
)
るぞ。
140
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
の
行動
(
かうどう
)
を
密告
(
みつこく
)
する
代物
(
しろもの
)
が
何喰
(
なにく
)
はぬ
顔
(
かほ
)
して
潜入
(
せんにふ
)
してゐるのだから、
141
あんまりの
事
(
こと
)
は
言
(
い
)
はぬがよからう。
142
敵
(
てき
)
の
中
(
なか
)
にも
味方
(
みかた
)
があれば、
143
味方
(
みかた
)
の
中
(
なか
)
にも
敵
(
てき
)
がある
今
(
いま
)
の
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
、
144
チツト
気
(
き
)
をつけぬかい』
145
レール『その
犬
(
いぬ
)
と
云
(
い
)
ふのはチヤンと
俺
(
おれ
)
の
天眼通
(
てんがんつう
)
で
看破
(
かんぱ
)
してあるのだ。
146
大方
(
おほかた
)
エルマの
事
(
こと
)
だらう』
147
ポーロ『それさへ
分
(
わか
)
つて
居
(
を
)
れば
俺
(
おれ
)
も
安心
(
あんしん
)
だ。
148
此奴
(
こいつ
)
は
俺
(
おれ
)
等
(
たち
)
の
中
(
なか
)
に
身
(
み
)
を
低
(
ひく
)
うして
交
(
まじ
)
つてゐるが、
149
実
(
じつ
)
の
処
(
ところ
)
は
大足別
(
おほだるわけ
)
の
従弟
(
いとこ
)
に
当
(
あた
)
る
奴
(
やつ
)
だ。
150
然
(
しか
)
しながら
斯
(
か
)
うなつた
以上
(
いじやう
)
はエルマを
許
(
ゆる
)
しておく
訳
(
わけ
)
には
行
(
ゆ
)
くまい。
151
酒
(
さけ
)
に
酔
(
よ
)
うた
紛
(
まぎ
)
れに、
152
此奴
(
こいつ
)
をフン
縛
(
じば
)
つて
谷川
(
たにがは
)
へドブ
漬
(
づ
)
け
茄子
(
なすび
)
とやつてこまさうかい』
153
エルマ『コリヤコリヤ、
154
何
(
なに
)
を
吐
(
ぬか
)
すのだ。
155
間違
(
まちが
)
ふにも
程
(
ほど
)
があるぞ。
156
大将
(
たいしやう
)
の
従弟
(
いとこ
)
はポーロぢやないか』
157
レール『エルマとポーロと
間違
(
まちが
)
つた
所
(
ところ
)
でたつた
一人
(
ひとり
)
の
事
(
こと
)
だ。
158
もう
斯
(
か
)
う
酒
(
さけ
)
がまはつては
何
(
ど
)
ちらが
善
(
ぜん
)
か
悪
(
あく
)
か
分
(
わか
)
らない。
159
一層
(
いつそう
)
の
事
(
こと
)
二人
(
ふたり
)
ともドブンとやつて
了
(
しま
)
へばいいぢやないか、
160
一人
(
ひとり
)
の
奴
(
やつ
)
は
時
(
とき
)
の
災難
(
さいなん
)
ぢやと
思
(
おも
)
つて
諦
(
あきら
)
めさへすれば
宜
(
い
)
いのだ。
161
ウフヽヽヽ』
162
ポーロ『コラコラ、
163
味方
(
みかた
)
同志
(
どうし
)
が
内乱
(
ないらん
)
を
起
(
おこ
)
しちやつまらないぞ。
164
ここは
吾々
(
われわれ
)
一同
(
いちどう
)
が
腹帯
(
はらおび
)
をしめ
結束
(
けつそく
)
を
固
(
かた
)
くして
居
(
を
)
らねば、
165
主人
(
あるじ
)
の
留守
(
るす
)
を
考
(
かんが
)
へて
三五教
(
あななひけう
)
の
奴
(
やつ
)
が
襲撃
(
しふげき
)
して
来
(
き
)
たら
如何
(
どう
)
する。
166
「
兄弟
(
けいてい
)
牆
(
かき
)
に
鬩
(
せめ
)
ぐとも
外
(
そと
)
其
(
その
)
侮
(
あなどり
)
を
防
(
ふせ
)
ぐ」と
云
(
い
)
ふ
金言
(
きんげん
)
を
心得
(
こころえ
)
ぬかい』
167
レール『
金言
(
きんげん
)
も
心得
(
こころえ
)
もあつたものかい。
168
主人
(
あるじ
)
の
留守
(
るす
)
の
真鍋
(
まなべ
)
焚
(
た
)
き、
169
毎日
(
まいにち
)
日日
(
ひにち
)
無礼講
(
ぶれいかう
)
を
開
(
ひら
)
いて
各自
(
めいめい
)
心
(
こころ
)
の
塵芥
(
ごもくた
)
を
払
(
はら
)
ひ
出
(
だ
)
し
水晶魂
(
すゐしやうだま
)
となりさへすればバラモン
教
(
けう
)
の
御
(
ご
)
神慮
(
しんりよ
)
に
叶
(
かな
)
ふのだ。
170
酒
(
さけ
)
さへ
飲
(
の
)
めば
何
(
なん
)
でも
彼
(
かん
)
でも
腹
(
はら
)
の
底
(
そこ
)
まで
打明
(
うちあか
)
すものだから
酒
(
さけ
)
ほど
偉
(
えら
)
いものはない。
171
アヽ
酒
(
さけ
)
なる
哉
(
かな
)
酒
(
さけ
)
なる
哉
(
かな
)
だ。
172
さけ
もさけも
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
に
酒
(
さけ
)
ほど
愛嬌
(
あいけう
)
のものあろか、
173
イヒヽヽヽヽ。
174
何
(
なん
)
とうまい
酒
(
さけ
)
だのう、
175
こんな
時
(
とき
)
に
喧嘩
(
けんくわ
)
をする
様
(
やう
)
な
野暮
(
やぼ
)
が
何処
(
どこ
)
にあるかい。
176
酒
(
さけ
)
さへ
飲
(
の
)
めば
善
(
ぜん
)
もなければ
悪
(
あく
)
もない。
177
敵
(
てき
)
もなければ
味方
(
みかた
)
もない。
178
喧嘩
(
けんくわ
)
の
仲裁
(
ちうさい
)
する
奴
(
やつ
)
はヤツパリ
酒
(
さけ
)
だ。
179
仲裁
(
ちうさい
)
の
権威
(
けんゐ
)
を
保有
(
ほいう
)
する
酒
(
さけ
)
を
先
(
さき
)
に
飲
(
の
)
んで
置
(
お
)
き
乍
(
なが
)
ら
喧嘩
(
けんくわ
)
をすると
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
があるものけえ、
180
アーン』
181
エルマ『さうともさうとも
一切
(
いつさい
)
万事
(
ばんじ
)
酒
(
さけ
)
で
解決
(
かいけつ
)
のつく
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
だ。
182
(
歌口調
(
うたくてう
)
)「アヽ、
183
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
豊年
(
ほうねん
)
ぢや、
184
万作
(
まんさく
)
ぢや、
185
万作
(
まんさく
)
々々
(
まんさく
)
万作
(
まんさく
)
ぢや」(
都々逸
(
どどいつ
)
)「
酒
(
さけ
)
を
飲
(
の
)
む
人
(
ひと
)
心
(
しん
)
から
可愛
(
かあい
)
い、
186
酔
(
よ
)
うて
管巻
(
くだま
)
きやなほ
可愛
(
かあい
)
い」とけつかるワイ、
187
ウー、
188
ゲツプ、
189
ウーン、
190
酒
(
さけ
)
の
奴
(
やつ
)
、
191
不謹慎
(
ふきんしん
)
千万
(
せんばん
)
にも
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
の
密談
(
みつだん
)
を
聞
(
き
)
かうと
思
(
おも
)
うて
喉元
(
のどもと
)
から
一寸
(
ちよつと
)
覗
(
のぞ
)
きやがつた。
192
エー
不従順
(
ふじうじゆん
)
な
代物
(
しろもの
)
だなア』
193
ポーロ『コラ、
194
レール、
195
ポーロ ポーロと
涙
(
なみだ
)
をこぼしもつて
酒
(
さけ
)
を
喰
(
くら
)
ふ
奴
(
やつ
)
があるかい。
196
酒
(
さけ
)
を
飲
(
の
)
んだら
飲
(
の
)
んだらしう
何故
(
なぜ
)
勇
(
いさ
)
まぬのか。
197
貴様
(
きさま
)
は
泣上戸
(
なきじやうご
)
だな』
198
レール『あんまりの
酒
(
さけ
)
の
洪水
(
こうずゐ
)
でレールが
沈没
(
ちんぼつ
)
し
汽車
(
きしや
)
が
方向
(
はうかう
)
を
取違
(
とりちが
)
へて
脱線
(
だつせん
)
したのだ。
199
乗客
(
じやうきやく
)
は
忽
(
たちま
)
ち
顛覆
(
てんぷく
)
の
厄
(
やく
)
に
会
(
あ
)
ひ
阿鼻
(
あび
)
叫喚
(
けうくわん
)
恰
(
あだか
)
も
地獄
(
ぢごく
)
の
如
(
ごと
)
しだ。
200
其
(
その
)
惨状
(
さんじやう
)
を
見
(
み
)
るに
忍
(
しの
)
びず、
201
一掬
(
いつきく
)
同情
(
どうじやう
)
の
涙
(
なみだ
)
をそそいだのだ。
202
貴様
(
きさま
)
の
様
(
やう
)
な
奴
(
やつ
)
が
英雄
(
えいゆう
)
の
心事
(
しんじ
)
が
分
(
わか
)
つて
堪
(
たま
)
るかい。
203
えーウーゲツプウーン、
204
酒
(
さけ
)
の
奴
(
やつ
)
、
205
又
(
また
)
しても
法則
(
はふそく
)
を
破
(
やぶ
)
つて
秘密室
(
ひみつしつ
)
を
覗
(
のぞ
)
かうとしやがる。
206
怪
(
け
)
しからぬ
奴
(
やつ
)
だな。
207
こらヤツコス、
208
貴様
(
きさま
)
、
209
何
(
なん
)
だ、
210
真面目
(
まじめ
)
腐
(
くさ
)
つた
顔
(
かほ
)
しやがつて
貴様
(
きさま
)
こそ
剣呑
(
けんのん
)
だ。
211
これ
丈
(
だ
)
け
皆
(
みな
)
がうま
酒
(
ざけ
)
に
酔
(
よ
)
うて
居
(
ゐ
)
るのに
貴様
(
きさま
)
だけ
真面目
(
まじめ
)
な
顔
(
かほ
)
をしやがつて、
212
何
(
なん
)
の
事
(
こと
)
だい、
213
大方
(
おほかた
)
貴様
(
きさま
)
は
大将
(
たいしやう
)
が
帰
(
かへ
)
つて
来
(
き
)
たら
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
の
行動
(
かうどう
)
を
一々
(
いちいち
)
上申
(
じやうしん
)
するつもりだらう。
214
アーン』
215
ヤツコス『ヤイ、
216
レール、
217
そんな
殺生
(
せつしやう
)
な
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
つてくれるない。
218
俺
(
おれ
)
は
貴様
(
きさま
)
等
(
ら
)
の
知
(
し
)
つてる
通
(
とほ
)
り
極端
(
きよくたん
)
な
下戸
(
げこ
)
ぢやないか。
219
下戸
(
げこ
)
が
如何
(
どう
)
して
酒
(
さけ
)
が
飲
(
の
)
めるかい』
220
レール『
酒
(
さけ
)
好
(
この
)
む
人
(
ひと
)
が
奈良漬
(
ならづけ
)
食
(
く
)
はずして
酒
(
さけ
)
好
(
す
)
かぬ
人
(
ひと
)
が
粕汁
(
かすじる
)
を
喰
(
くら
)
ふ………と
云
(
い
)
ふことがある。
221
貴様
(
きさま
)
、
222
粕汁
(
かすじる
)
ならチツとばかり
喰
(
く
)
ふだらう。
223
粕汁
(
かすじる
)
でもあまり
馬鹿
(
ばか
)
にならないぞ。
224
ドツサリ
飲
(
の
)
めば
酔
(
よ
)
ふぞ。
225
貴様
(
きさま
)
も
粕汁
(
かすじる
)
でも
飲
(
の
)
んで
古今
(
ここん
)
独歩
(
どくぽ
)
珍無類
(
ちんむるゐ
)
の
管
(
くだ
)
を
巻
(
ま
)
いたら
如何
(
どう
)
だ(
歌口調
(
うたくてう
)
)「
酒
(
さけ
)
を
飲
(
の
)
まぬ
奴
(
やつ
)
ア
心
(
しん
)
から
憎
(
にく
)
い、
226
管
(
くだ
)
も
巻
(
ま
)
かぬ
奴
(
やつ
)
ア、
227
なほ
憎
(
にく
)
い」と
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
があるぞ、
228
ヤイ、
229
ヤツコス
奴
(
め
)
一
(
ひと
)
ツ
飲
(
の
)
んだら
如何
(
どう
)
だい。
230
酒
(
さけ
)
が
強
(
きつ
)
うて
飲
(
の
)
めなけりや
湯
(
ゆ
)
でもさして
緩
(
ゆる
)
うしてやらうか』
231
ヤツコス『イヤ、
232
もう
沢山
(
たくさん
)
だ。
233
決
(
けつ
)
してお
前
(
まへ
)
等
(
ら
)
の
行動
(
かうどう
)
を
上申
(
じやうしん
)
する
様
(
やう
)
な
不道徳
(
ふだうとく
)
な
事
(
こと
)
はせぬから
安心
(
あんしん
)
して
呉
(
く
)
れえ』
234
レール『
酒
(
さけ
)
の
席
(
せき
)
に
酒
(
さけ
)
飲
(
の
)
まぬ
奴
(
やつ
)
が
坐
(
すわ
)
つてると
何
(
なん
)
ともなしに
気
(
き
)
がひけて、
235
座
(
ざ
)
が
白
(
しら
)
けて
仕方
(
しかた
)
がないワ。
236
そして
女
(
をんな
)
のお
給仕
(
きふじ
)
がないと
云
(
い
)
ふから
殺風景
(
さつぷうけい
)
な
事
(
こと
)
此
(
この
)
上
(
うへ
)
なしだ。
237
時
(
とき
)
に
此処
(
ここ
)
の
大将
(
たいしやう
)
が
恋着
(
れんちやく
)
してる「アヤメ」と
云
(
い
)
ふナイスは
何処
(
どこ
)
に
居
(
ゐ
)
るだらうな。
238
俺
(
おれ
)
はそのナイスの
事
(
こと
)
が
苦
(
く
)
になつて
忘
(
わす
)
れられぬわいのう。
239
オヽヽヽヽ(
義太夫
(
ぎだいふ
)
)
思
(
おも
)
へば
思
(
おも
)
へば いぢらしいやあ、
240
父
(
ちち
)
と
母
(
はは
)
とは
名
(
な
)
も
高
(
たか
)
きコーカス
山
(
ざん
)
のお
宮詣
(
みやまう
)
での
其
(
その
)
砌
(
みぎり
)
、
241
バラモン
教
(
けう
)
の
曲津
(
まがつ
)
神
(
かみ
)
……………』
242
ポーロ『コリヤコリヤ、
243
曲津
(
まがつ
)
神
(
かみ
)
と
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
があるかい』
244
レール『(
義太夫
(
ぎだいふ
)
)バラモン
教
(
けう
)
の
神司
(
かむづかさ
)
、
245
大黒主
(
おほくろぬし
)
に
捕
(
とら
)
へられ
荒風
(
あらかぜ
)
すさぶ
山野
(
さんや
)
を
渡
(
わた
)
りやうやうに、
246
象
(
ざう
)
の
背中
(
せなか
)
に
乗
(
の
)
せられて、
247
ここまで
来
(
き
)
たのがアヽヽヽ
運
(
うん
)
の
尽
(
つ
)
き、
248
暗
(
くら
)
き
牢屋
(
らうや
)
に
投
(
な
)
げ
込
(
こ
)
まれ、
249
朝
(
あさ
)
な、
250
夕
(
ゆふ
)
なの
御飯
(
ごはん
)
さへ、
251
碌々
(
ろくろく
)
味
(
あぢ
)
はふ
事
(
こと
)
も
得
(
え
)
ず、
252
苦
(
くる
)
しみ
歎
(
なげ
)
く あゝゝゝり
様
(
さま
)
はアヽヽ、
253
よその
見
(
み
)
る
目
(
め
)
も
憐
(
あは
)
れなり、
254
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
吾
(
わが
)
娘
(
むすめ
)
、
255
ここに
尋
(
たづ
)
ねて
来
(
く
)
るなれば、
256
大足別
(
おほだるわけ
)
の
大将
(
たいしやう
)
も、
257
目
(
め
)
を
細
(
ほそ
)
うして
涎
(
よだれ
)
こき、
258
以
(
もつ
)
ての
外
(
ほか
)
の
御
(
ご
)
満足
(
まんぞく
)
、
259
とは
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
情
(
なさけ
)
なや、
260
三五教
(
あななひけう
)
の
司
(
つかさ
)
なら、
261
可愛
(
かあい
)
い
娘
(
むすめ
)
を
女房
(
にようばう
)
に、
262
熨斗
(
のし
)
までつけて
奉
(
たてまつ
)
らむと
思
(
おも
)
へども、
263
悪逆
(
あくぎやく
)
無道
(
ぶだう
)
の
大黒主
(
おほくろぬし
)
がオツトドツコイヽヽヽ
仁慈
(
じんじ
)
無限
(
むげん
)
の
大黒主
(
おほくろぬし
)
が、
264
左守
(
さもり
)
の
神
(
かみ
)
にも
譬
(
たと
)
ふべき、
265
清春山
(
きよはるやま
)
の
岩窟
(
がんくつ
)
に、
266
勢
(
いきほ
)
ひ
並
(
なら
)
ぶものもなき、
267
大足別
(
おほだるわけ
)
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
268
これが
女房
(
にようばう
)
にやられようか、
269
ほんに
思
(
おも
)
へば
前
(
さき
)
の
世
(
よ
)
で、
270
如何
(
いか
)
なる
事
(
こと
)
の
罪
(
つみ
)
せしか、
271
憐
(
あは
)
れみ
玉
(
たま
)
へや
三五
(
あななひ
)
の、
272
皇
(
すめ
)
大神
(
おほかみ
)
と
口説
(
くど
)
きたて、
273
くどき
立
(
た
)
つれエヽヽばアヽヽヽレールさま、
274
………と
云
(
い
)
ふ
様
(
やう
)
な
老夫婦
(
らうふうふ
)
の
心情
(
しんじやう
)
だ。
275
オイ
一
(
ひと
)
つ
脱線
(
だつせん
)
つづけに
婆
(
ばば
)
でも
女
(
をんな
)
に
違
(
ちが
)
ひないから
牢屋
(
らうや
)
から
引張
(
ひつぱ
)
り
出
(
だ
)
してお
給仕
(
きふじ
)
でもさしたらどうだ。
276
あまり
心持
(
こころもち
)
悪
(
わる
)
くはあるめいぞ。
277
アーン』
278
一同
(
いちどう
)
『イヒヽヽヽ』
279
と
歯
(
は
)
を
剥
(
む
)
き
出
(
だ
)
し
腮
(
あご
)
をシヤクつて
笑
(
わら
)
ふ
折
(
をり
)
しも、
280
入口
(
いりぐち
)
の
番
(
ばん
)
をして
居
(
ゐ
)
たキルク(喜久雄)は
宙
(
ちう
)
をとんで
馳
(
は
)
せ
来
(
きた
)
り、
281
キルク『モシモシ ポーロさま、
282
たゝゝゝゝ
大変
(
たいへん
)
だ
大変
(
たいへん
)
だ。
283
立派
(
りつぱ
)
な
美人
(
びじん
)
が
来
(
き
)
ましたぜ』
284
ポーロ『ナニ、
285
美人
(
びじん
)
が
来
(
き
)
た。
286
そりや
大変
(
たいへん
)
な
面白
(
おもしろ
)
い
事
(
こと
)
だ。
287
早
(
はや
)
く
引張
(
ひつぱ
)
つて
来
(
こ
)
い』
288
レール『それだから
時節
(
じせつ
)
は
待
(
ま
)
たねばならぬものだ。
289
別嬪
(
べつぴん
)
と
聞
(
き
)
いちや
俺
(
おれ
)
も
堪
(
たま
)
らないわ。
290
ヤツパリ
目
(
め
)
が
二
(
ふた
)
つあるだらうな、
291
アーン』
292
キルク『
別嬪
(
べつぴん
)
が
一人
(
ひとり
)
に、
293
強
(
つよ
)
い
怖
(
こは
)
さうな
宣伝使
(
せんでんし
)
が
三
(
さん
)
人
(
にん
)
です』
294
一同
『ヤア、
295
そりや
大変
(
たいへん
)
だ』
296
と
一同
(
いちどう
)
は
俄
(
にはか
)
に
酒
(
さけ
)
の
酔
(
よひ
)
も
醒
(
さ
)
め、
297
徳利
(
とくり
)
を
蹴飛
(
けと
)
ばし
鉢
(
はち
)
を
割
(
わ
)
り
乍
(
なが
)
ら
右往
(
うわう
)
左往
(
さわう
)
に
狼狽
(
うろた
)
へまはる。
298
(
大正一一・一〇・二八
旧九・九
北村隆光
録)
Δこのページの一番上に戻るΔ
<<< 清春山
(B)
(N)
親子対面 >>>
霊界物語
>
舎身活躍(第37~48巻)
>
第39巻(寅の巻)
> 第4篇 浮木の岩窟 > 第15章 焼糞
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【
メールアドレス
】
【第15章 焼糞|第39巻|舎身活躍|霊界物語|/rm3915】
合言葉「みろく」を入力して下さい→