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霊界物語
舎身活躍(第37~48巻)
第39巻(寅の巻)
序歌
総説
第1篇 伊祖の神風
第1章 大黒主
第2章 評定
第3章 出師
第2篇 黄金清照
第4章 河鹿越
第5章 人の心
第6章 妖霧
第7章 都率天
第8章 母と娘
第3篇 宿世の山道
第9章 九死一生
第10章 八の字
第11章 鼻摘
第12章 種明志
第4篇 浮木の岩窟
第13章 浮木の森
第14章 清春山
第15章 焼糞
第16章 親子対面
第5篇 馬蹄の反影
第17章 テームス峠
第18章 関所守
第19章 玉山嵐
附録 大祓祝詞解
余白歌
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霊界物語
>
舎身活躍(第37~48巻)
>
第39巻(寅の巻)
> 第4篇 浮木の岩窟 > 第16章 親子対面
<<< 焼糞
(B)
(N)
テームス峠 >>>
第一六章
親子
(
おやこ
)
対面
(
たいめん
)
〔一〇八一〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第39巻 舎身活躍 寅の巻
篇:
第4篇 浮木の岩窟
よみ(新仮名遣い):
うききのがんくつ
章:
第16章 親子対面
よみ(新仮名遣い):
おやこたいめん
通し章番号:
1081
口述日:
1922(大正11)年10月28日(旧09月9日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年5月5日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
バラモン教のポーロは、セームとシャムに命じて宣伝使の応対をさせた。セームとシャムは慇懃に宣伝使たちを出迎え、丁重に帰ってもらおうとするが、照国別は聞かずに岩窟に入ろうとする。
シャムの注進にポーロ自らが出て宣伝使の応対をし、確かに照国別の両親・樫谷彦と樫谷姫がこの岩窟にいることを明かした。
ポーロは下手に出て照国別一行を案内し、岩窟の中の落とし穴にまんまと落とし込んでしまった。バラモン教徒たちは宣伝使たちをやっつけて気が緩み、酒を持ち出しての眼や歌えの大宴会を始めた。
一同がへべれけになって足腰が立たなくなったとき、留守役の一人・ヤッコスは突如、自分は三五教の宣伝使・岩彦であると明かし、照国別たちを助けようとした。
レールは岩彦の足にしがみついて、命乞いをする。そこへキルクがやってきて、三五教の宣伝使がやってきたと注進した。これは国彦がハム、タール、イール、ヨセフを従えてやってきたのであった。
岩彦は自ら国彦一行を迎え入れ、協力して落とし穴にはまっていた照国別たちを助け出した。捕えられていた照国別の両親は、岩彦がひそかに世話をしていたおかげで健全だった。
照国別と菖蒲は、両親と再会を果たした。宣伝使たちは岩窟のバラモン教徒たちの罪をゆるし、照国別は国彦に命じて、ハム、タール、イール、ヨセフとともに、両親と菖蒲をアーメニヤに送らせた。
自らは岩彦とともに、梅公、照公を連れて出立し、フサの国を目指した。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-11-22 11:50:14
OBC :
rm3916
愛善世界社版:
221頁
八幡書店版:
第7輯 359頁
修補版:
校定版:
232頁
普及版:
96頁
初版:
ページ備考:
001
セーム、
002
シヤムの
二人
(
ふたり
)
は
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
の
尋
(
たづ
)
ね
来
(
きた
)
りしと
聞
(
き
)
くより、
003
ポーロの
命
(
めい
)
に
依
(
よ
)
つて
岩窟
(
がんくつ
)
の
入口
(
いりぐち
)
に
揉手
(
もみて
)
し
乍
(
なが
)
ら
米
(
こめ
)
つきバツタのやうに
頭
(
あたま
)
や
腰
(
こし
)
をピヨコピヨコ
屈
(
かが
)
め、
004
セーム『エーこれはこれは
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
、
005
よくこそ
御
(
ご
)
入来
(
じゆらい
)
下
(
くだ
)
さいました。
006
折角
(
せつかく
)
遠路
(
ゑんろ
)
の
所
(
ところ
)
、
007
お
越
(
こ
)
し
下
(
くだ
)
さつて、
008
何
(
なん
)
とも
早
(
はや
)
御
(
おん
)
礼
(
れい
)
の
申上
(
まをしあ
)
げやうも
厶
(
ござ
)
いませぬ。
009
生憎
(
あいにく
)
主人
(
しゆじん
)
は
御
(
お
)
不在
(
るす
)
で、
010
大教主
(
だいけうしゆ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
命令
(
めいれい
)
を
奉
(
ほう
)
じ、
011
デカタン
高原
(
かうげん
)
まで
出陣
(
しゆつぢん
)
なさいました。
012
其
(
その
)
不在中
(
るすちう
)
は
何人
(
なにびと
)
たり
共
(
とも
)
、
013
ここへ
入
(
い
)
れてはならぬとの
厳
(
きび
)
しき
命令
(
めいれい
)
、
014
折角
(
せつかく
)
乍
(
なが
)
ら、
015
どうぞお
帰
(
かへ
)
り
下
(
くだ
)
さいませ。
016
なあシヤム、
017
俺
(
おれ
)
の
言
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
は
決
(
けつ
)
して
嘘
(
うそ
)
ぢやあろまい。
018
セームが
佝僂
(
せむし
)
になる
所
(
ところ
)
まで
頭
(
あたま
)
をピヨコピヨコ、
019
腰
(
こし
)
をペコペコさせて
御
(
お
)
願
(
ねがひ
)
してゐるのだから、
020
そこはどうぞ
宣伝使
(
せんでんし
)
の
雅量
(
がりやう
)
を
以
(
もつ
)
てお
帰
(
かへ
)
り
下
(
くだ
)
さらば
誠
(
まこと
)
に
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
います。
021
ヘヽヽヽ
決
(
けつ
)
して
決
(
けつ
)
して
悪意
(
あくい
)
で
申
(
まを
)
すのでは
厶
(
ござ
)
いませぬ、
022
又
(
また
)
三五教
(
あななひけう
)
の
老夫婦
(
らうふうふ
)
は
決
(
けつ
)
して
此
(
この
)
岩窟
(
いはや
)
の
中
(
なか
)
に
閉
(
と
)
ぢ
込
(
こ
)
めては
厶
(
ござ
)
いませぬから、
023
折角
(
せつかく
)
お
査
(
しら
)
べ
下
(
くだ
)
さいましても
徒労
(
とらう
)
で
厶
(
ござ
)
います。
024
トツトと
御
(
ご
)
退却
(
たいきやく
)
を、
025
偏
(
ひとへ
)
に
願
(
ねが
)
ひ
奉
(
たてまつ
)
ります』
026
照国別
(
てるくにわけ
)
『イヤ
今日
(
けふ
)
はどうしても
此
(
この
)
儘
(
まま
)
では
帰
(
かへ
)
る
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ないのだ。
027
アーメニヤから
樫谷彦
(
かしやひこ
)
樫谷姫
(
かしやひめ
)
といふ
二人
(
ふたり
)
の
夫婦
(
ふうふ
)
が
捉
(
とら
)
へられて
来
(
き
)
てゐる
筈
(
はず
)
だ』
028
セーム『
滅相
(
めつさう
)
もないことを
仰有
(
おつしや
)
いませ。
029
こんな
山奥
(
やまおく
)
にアーメニヤなんぞからお
出
(
い
)
でる
物好
(
ものずき
)
がどこに
厶
(
ござ
)
いませう、
030
ソリヤ
何
(
なに
)
かのお
間違
(
まちがひ
)
でせう』
031
菖蒲
(
あやめ
)
『
何
(
なん
)
と
言
(
い
)
はれても、
032
私
(
わたし
)
は
両親
(
りやうしん
)
に
会
(
あ
)
はねばならぬ。
033
お
邪魔
(
じやま
)
なさると
却
(
かへつ
)
てお
為
(
ため
)
になりませぬぞえ』
034
セーム『ヤア
此奴
(
こいつ
)
ア
手
(
て
)
ごはい
談判
(
だんぱん
)
だ、
035
到底
(
たうてい
)
俺
(
おれ
)
の
一力
(
いちりき
)
では
行
(
ゆ
)
きかねる。
036
オイ、
037
シヤム、
038
奥
(
おく
)
へ
行
(
い
)
つて
此
(
この
)
由
(
よし
)
をポーロさまに
早
(
はや
)
く
注進
(
ちゆうしん
)
せぬかい。
039
そして
今
(
いま
)
の
何々
(
なになに
)
を
何々
(
なになに
)
しておくのだぞ』
040
照国別
(
てるくにわけ
)
『
一刻
(
いつこく
)
の
間
(
ま
)
も
猶予
(
いうよ
)
はならぬ、
041
罷
(
まか
)
り
通
(
とほ
)
るから
案内
(
あんない
)
を
致
(
いた
)
せ』
042
セーム『
一寸
(
ちよつと
)
待
(
ま
)
つて
下
(
くだ
)
さいませ。
043
不在
(
るす
)
師団長
(
しだんちやう
)
のポーロの
御
(
ご
)
意見
(
いけん
)
を
伺
(
うかが
)
つた
上
(
うへ
)
にして
貰
(
もら
)
はねば
岩窟
(
がんくつ
)
侵入罪
(
しんにふざい
)
になりますから』
044
照国別
(
てるくにわけ
)
『ハヽヽヽヽ
大変
(
たいへん
)
なうろたへ
方
(
かた
)
だな。
045
此
(
この
)
様子
(
やうす
)
ではキツと
碌
(
ろく
)
な
事
(
こと
)
ではあるまい。
046
両親
(
りやうしん
)
の
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
が
案
(
あん
)
じられる。
047
サア
早
(
はや
)
く
菖蒲殿
(
あやめどの
)
、
048
奥
(
おく
)
へ
進
(
すす
)
みませう』
049
セーム『あゝモシモシ
一寸
(
ちよつと
)
待
(
ま
)
つて
下
(
くだ
)
さい、
050
御
(
ご
)
夫婦
(
ふうふ
)
は
至極
(
しごく
)
御
(
ご
)
健全
(
けんぜん
)
に
御
(
ご
)
安泰
(
あんたい
)
に
御座
(
ござ
)
遊
(
あそ
)
ばします。
051
決
(
けつ
)
して
虐待
(
ぎやくたい
)
なんかしてはをりませぬ』
052
照国別
(
てるくにわけ
)
『アハヽヽヽ、
053
さうだらう。
054
蚋
(
ぶと
)
一疋
(
いつぴき
)
通
(
かよ
)
はないやうな
要心
(
えうじん
)
堅固
(
けんご
)
な
岩窟内
(
がんくつない
)
へ
御
(
ご
)
保護
(
ほご
)
を
申上
(
まをしあ
)
げてゐると
見
(
み
)
えるワイ。
055
イヤ
御
(
ご
)
好意
(
かうい
)
は
後
(
あと
)
から
御
(
お
)
礼
(
れい
)
申
(
まを
)
す』
056
話
(
はなし
)
変
(
かは
)
つて
奥
(
おく
)
の
一間
(
ひとま
)
では
今迄
(
いままで
)
酔
(
よ
)
ひつぶれてゐた
酒
(
さけ
)
も
俄
(
にはか
)
にさめ、
057
蒼白
(
まつさを
)
な
顔
(
かほ
)
をして
岩窟
(
がんくつ
)
の
戸
(
と
)
をあけ、
058
夫婦
(
ふうふ
)
を
引張
(
ひつぱ
)
り
出
(
だ
)
すやら
丼鉢
(
どんぶりばち
)
を
抱
(
かか
)
へて
逃
(
に
)
げ
廻
(
まは
)
るやら、
059
大
(
だい
)
乱痴気
(
らんちき
)
騒
(
さわ
)
ぎの
真最中
(
まつさいちう
)
である。
060
そこへシヤムが
飛
(
と
)
んで
来
(
き
)
て、
061
息
(
いき
)
を
喘
(
はづ
)
ませながら、
062
シャム
『タヽヽヽ
大変
(
たいへん
)
々々
(
たいへん
)
、
063
これこれポーロの
大将
(
たいしやう
)
、
064
レールさま、
065
どうしたら
宜
(
よ
)
からうか、
066
思案
(
しあん
)
を
貸
(
か
)
して
下
(
くだ
)
さい』
067
と
頻
(
しき
)
りに
地
(
ち
)
を
両手
(
りやうて
)
でパタパタと
叩
(
たた
)
きもがく。
068
ポーロ『
何
(
なん
)
だ、
069
あわただしい
其
(
その
)
騒
(
さわ
)
ぎ
方
(
かた
)
、
070
どうしたといふのだ』
071
シヤム『
何
(
ど
)
うも
斯
(
か
)
うもあつたものですか、
072
息子
(
むすこ
)
が
来
(
き
)
たのですよ。
073
ソレあの
娘
(
むすめ
)
が、
074
何
(
ど
)
うしても
斯
(
か
)
うしても、
075
強
(
た
)
つて
入
(
はい
)
らうと
致
(
いた
)
します』
076
ポーロ『
立
(
た
)
つて
入
(
はい
)
らうと
這
(
は
)
うて
入
(
はい
)
らうと、
077
そんな
事
(
こと
)
は
頓着
(
とんちやく
)
ないが、
078
息子
(
むすこ
)
娘
(
むすめ
)
とは
何
(
なん
)
の
事
(
こと
)
だ』
079
シヤム『あの
奥
(
おく
)
に
隠
(
かく
)
してあつた
老夫婦
(
らうふうふ
)
の
伜
(
せがれ
)
と
娘
(
むすめ
)
がやつて
来
(
き
)
たのですよ。
080
カヽ
敵討
(
かたきうち
)
だと
云
(
い
)
つて、
081
数十万
(
すうじふまん
)
の
軍勢
(
ぐんぜい
)
を
引連
(
ひきつ
)
れ、
082
先頭
(
せんとう
)
に
立
(
た
)
つて
立向
(
たちむか
)
ひました』
083
ポーロ『
此
(
こ
)
の
細谷路
(
ほそたにみち
)
を
数十万
(
すうじふまん
)
の
軍勢
(
ぐんぜい
)
がどうして
来
(
こ
)
られるものか』
084
シヤム『
何
(
なん
)
だか
知
(
し
)
りませぬが、
085
随分
(
ずゐぶん
)
沢山
(
たくさん
)
な
白衣
(
びやくい
)
の
軍卒
(
ぐんそつ
)
が
中空
(
ちうくう
)
からやつて
来
(
き
)
ました。
086
モシモシ
大将
(
たいしやう
)
、
087
グヅグヅしてゐると
岩窟
(
いはや
)
退治
(
たいぢ
)
が
始
(
はじ
)
まります。
088
何
(
なん
)
とか
用意
(
ようい
)
をなされませ』
089
ポーロ『エヽ
仕方
(
しかた
)
がない、
090
俺
(
おれ
)
が
一先
(
ひとま
)
づ
表口
(
おもてぐち
)
に
立向
(
たちむか
)
ひ、
091
掛合
(
かけあ
)
つて
見
(
み
)
よう』
092
と
言
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
093
レールに
何
(
なに
)
か
囁
(
ささや
)
きつつ、
094
表口
(
おもてぐち
)
に
駆
(
か
)
け
出
(
だ
)
し、
095
叮嚀
(
ていねい
)
に
腰
(
こし
)
を
屈
(
かが
)
めて、
096
ポーロ『
私
(
わたし
)
は
此
(
この
)
岩窟
(
がんくつ
)
を
預
(
あづか
)
つて
居
(
を
)
りまするポーロと
申
(
まを
)
す
はした
者
(
もの
)
、
097
何卒
(
なにとぞ
)
お
見知
(
みし
)
りおかれまして
今後
(
こんご
)
御
(
ご
)
贔屓
(
ひいき
)
にお
願
(
ねがひ
)
いたします。
098
サアどうぞ、
099
お
見
(
み
)
かけ
通
(
どほり
)
の
茅屋
(
ばうをく
)
なれど、
100
御
(
ご
)
遠慮
(
ゑんりよ
)
なく、
101
トツトとお
入
(
はい
)
り
下
(
くだ
)
さいませ』
102
照国別
(
てるくにわけ
)
『
当
(
たう
)
岩窟
(
がんくつ
)
内
(
ない
)
に
樫谷彦
(
かしやひこ
)
樫谷姫
(
かしやひめ
)
の
夫婦
(
ふうふ
)
の
方
(
かた
)
はお
見
(
み
)
えになつてをるか』
103
ポーロ『ハイお
見
(
み
)
えになつて
居
(
を
)
ります。
104
それはそれは
御
(
ご
)
機嫌
(
きげん
)
麗
(
うるは
)
しく、
105
あなた
方
(
がた
)
のお
出
(
い
)
でを、
106
欣喜
(
きんき
)
雀躍
(
じやくやく
)
の
体
(
てい
)
でお
待
(
ま
)
ちかねで
厶
(
ござ
)
います。
107
サア
早
(
はや
)
くお
通
(
とほ
)
りあつて、
108
御
(
ご
)
対面
(
たいめん
)
の
程
(
ほど
)
をお
願
(
ねがひ
)
致
(
いた
)
します』
109
照国別
(
てるくにわけ
)
『
何
(
なに
)
を
言
(
い
)
つても
不案内
(
ふあんない
)
なる
岩窟
(
がんくつ
)
、
110
如何
(
いか
)
なる
計略
(
けいりやく
)
の
罠
(
わな
)
に
陥
(
おちい
)
らむも
計
(
ばか
)
り
難
(
がた
)
い、
111
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
ながら、
112
其
(
その
)
夫婦
(
ふうふ
)
の
方
(
かた
)
をここ
迄
(
まで
)
案内
(
あんない
)
して
来
(
き
)
てくれ。
113
吾々
(
われわれ
)
は
此処
(
ここ
)
にて
御
(
ご
)
対面
(
たいめん
)
申上
(
まをしあ
)
ぐるから』
114
ポーロ『それも
御尤
(
ごもつと
)
も
乍
(
なが
)
ら、
115
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
は
御
(
おん
)
大将
(
たいしやう
)
の
大足別
(
おほだるわけ
)
様
(
さま
)
が、
116
ハルナの
都
(
みやこ
)
より、
117
大教主
(
だいけうしゆ
)
のお
召
(
め
)
しにより、
118
数万
(
すうまん
)
の
軍卒
(
ぐんそつ
)
を
引率
(
いんそつ
)
して、
119
デカタン
高原
(
かうげん
)
へ
出陣
(
しゆつぢん
)
された
御
(
お
)
不在中
(
るすちう
)
故
(
ゆゑ
)
、
120
残
(
のこ
)
りの
人間
(
にんげん
)
は
僅
(
わづ
)
かに
二十
(
にじふ
)
有余
(
いうよ
)
人
(
にん
)
、
121
朝
(
あさ
)
から
晩
(
ばん
)
まで
留守事
(
るすごと
)
に
酒
(
さけ
)
を
呑
(
の
)
み、
122
他愛
(
たあい
)
なく
酔
(
よ
)
ひ
潰
(
つぶ
)
れて
居
(
を
)
りますから、
123
決
(
けつ
)
して
計略
(
けいりやく
)
などは
致
(
いた
)
して
御座
(
ござ
)
いませぬ。
124
どうぞお
入
(
はい
)
り
下
(
くだ
)
さいませ』
125
菖蒲
(
あやめ
)
『モシ
兄上
(
あにうへ
)
様
(
さま
)
、
126
ウツカリ
進
(
すす
)
んではなりませぬぞ。
127
コレコレここの
番人
(
ばんにん
)
とやら、
128
早
(
はや
)
く
妾
(
わらは
)
が
父母
(
ふぼ
)
をここへお
伴
(
つ
)
れ
申
(
まを
)
して
来
(
く
)
るがよい。
129
グヅグヅ
致
(
いた
)
すと、
130
お
前
(
まへ
)
さまたちの
御
(
お
)
為
(
ため
)
にはなりますまいぞや』
131
ポーロは
頭
(
あたま
)
をかき
乍
(
なが
)
ら、
132
ポーロ
『エー
御
(
お
)
説
(
せつ
)
御尤
(
ごもつと
)
もながら
御
(
ご
)
夫婦
(
ふうふ
)
は
持病
(
ぢびやう
)
が
起
(
おこ
)
り、
133
脚気
(
かつけ
)
が
起
(
おこ
)
つて、
134
足
(
あし
)
に
頭痛
(
づつう
)
がすると
仰有
(
おつしや
)
り、
135
チヨツとも
動
(
うご
)
けませぬ。
136
又
(
また
)
奥
(
おく
)
さまの
方
(
はう
)
は
産後
(
さんご
)
の
血
(
ち
)
の
道
(
みち
)
とか、
137
尾
(
を
)
の
道
(
みち
)
とかが
目
(
め
)
を
出
(
だ
)
して、
138
ウンウン キヤツキヤツ
唸
(
うな
)
つてばかり、
139
身動
(
みうご
)
きもならぬ
御
(
ご
)
不自由
(
ふじゆう
)
さ、
140
どうぞあなたの
方
(
はう
)
から
進
(
すす
)
んで
御
(
ご
)
面会
(
めんくわい
)
を
願
(
ねが
)
ひたう
存
(
ぞん
)
じます』
141
照国別
(
てるくにわけ
)
『そんなら
仕方
(
しかた
)
がない、
142
案内
(
あんない
)
を
致
(
いた
)
せ』
143
ポーロ『サア
斯
(
か
)
うお
出
(
い
)
でなさいませ』
144
と
言
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
先
(
さき
)
に
立
(
た
)
つ。
145
一行
(
いつかう
)
四
(
よ
)
人
(
にん
)
は
後
(
あと
)
に
従
(
したが
)
ひ、
146
あたりに
心
(
こころ
)
を
配
(
くば
)
りつつ、
147
奥
(
おく
)
へ
奥
(
おく
)
へと
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
148
忽
(
たちま
)
ちカラクリ
仕掛
(
じかけ
)
の
板
(
いた
)
の
間
(
ま
)
はクレンと
引繰
(
ひつくり
)
返
(
かへ
)
り、
149
四
(
よ
)
人
(
にん
)
はドツと
一度
(
いちど
)
に
暗
(
くら
)
き
陥穽
(
おとしあな
)
に
落
(
お
)
ち
込
(
こ
)
んで
了
(
しま
)
つた。
150
ポーロはしすましたりと、
151
返
(
かへ
)
し
戸
(
ど
)
に
錠
(
ぢやう
)
を
卸
(
おろ
)
し、
152
重
(
おも
)
き
石
(
いし
)
を
二
(
ふた
)
つ
三
(
み
)
つのせて、
153
ホツと
一息
(
ひといき
)
胸
(
むね
)
撫
(
な
)
でおろし、
154
ポーロ
『オイ
皆
(
みな
)
の
奴
(
やつ
)
、
155
モウ
安心
(
あんしん
)
だ。
156
気
(
き
)
をおちつけよ。
157
彼奴
(
あいつ
)
は
大足別
(
おほだるわけ
)
様
(
さま
)
の
恋慕
(
れんぼ
)
して
厶
(
ござ
)
つた
菖蒲
(
あやめ
)
といふナイスだ。
158
そして
一人
(
ひとり
)
は
兄
(
あに
)
の
照国別
(
てるくにわけ
)
といふ
三五教
(
あななひけう
)
の
有名
(
いうめい
)
な
豪傑
(
がうけつ
)
宣伝使
(
せんでんし
)
だ。
159
彼奴
(
あいつ
)
の
言霊
(
ことたま
)
にかかつたが
最後
(
さいご
)
、
160
手足
(
てあし
)
も
何
(
なに
)
もビリビリとしびれて
了
(
しま
)
ふ
無双
(
むさう
)
の
神力
(
しんりき
)
がある。
161
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
らかうやつて
奈落
(
ならく
)
の
底
(
そこ
)
へおとして
置
(
お
)
けば、
162
最早
(
もはや
)
此
(
この
)
岩窟内
(
がんくつない
)
は
無事
(
ぶじ
)
安穏
(
あんをん
)
だ。
163
モ
一
(
ひと
)
つ
祝
(
いはひ
)
に
二次会
(
にじくわい
)
を
開
(
ひら
)
かうぢやないか』
164
とニコニコとして
喚
(
わめ
)
き
立
(
た
)
てる。
165
レール、
166
シヤム、
167
ハールは
嬉々
(
きき
)
として
集
(
あつ
)
まり
来
(
きた
)
り、
168
レール『
流石
(
さすが
)
はポーロさま、
169
留守
(
るす
)
師団長
(
しだんちやう
)
丈
(
だけ
)
の
資格
(
しかく
)
は
十分
(
じふぶん
)
に
具備
(
ぐび
)
してゐる。
170
ヤア
天晴
(
あつぱ
)
れ
天晴
(
あつぱ
)
れかくなる
上
(
うへ
)
は
何
(
なに
)
をか
恐
(
おそ
)
れむ、
171
飲
(
の
)
んで
飲
(
の
)
んで、
172
飲
(
の
)
み
倒
(
たふ
)
し、
173
蛇
(
じや
)
の
子
(
こ
)
になるか、
174
虎
(
とら
)
になる
所
(
ところ
)
まで、
175
お
神酒
(
みき
)
をあがらうかい』
176
と、
177
又
(
また
)
もや
酒徳利
(
さけどつくり
)
を
穴倉
(
あなぐら
)
より
運
(
はこ
)
び
出
(
だ
)
し、
178
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
歌
(
うた
)
を
唄
(
うた
)
つて、
179
悪事
(
あくじ
)
災難
(
さいなん
)
を
逃
(
のが
)
れたる
祝宴
(
しゆくえん
)
を
張
(
は
)
り
出
(
だ
)
した。
180
一旦
(
いつたん
)
驚
(
おどろ
)
きの
余
(
あま
)
り、
181
さめかけてゐた
酒
(
さけ
)
は
再
(
ふたたび
)
まはり
出
(
だ
)
した。
182
其
(
その
)
上
(
うへ
)
に
又
(
また
)
もやガブガブとやつたものだから
堪
(
たま
)
らない。
183
何奴
(
どいつ
)
も
此奴
(
こいつ
)
もグタグタになつて
無我
(
むが
)
夢中
(
むちう
)
に
下
(
くだ
)
らぬ
事
(
こと
)
を
喋舌
(
しやべ
)
り
出
(
だ
)
した。
184
レール『コレコレポーロさま、
185
随分
(
ずゐぶん
)
ポーロい
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
たぢやないか、
186
酒
(
さけ
)
は
鱈腹
(
たらふく
)
呑
(
の
)
めるなり、
187
爺
(
ぢぢ
)
イ
婆
(
ばば
)
アの
仇
(
かたき
)
を
討
(
う
)
ちに
来
(
き
)
たと
思
(
おも
)
うた
息子
(
むすこ
)
娘
(
むすめ
)
は
奈落
(
ならく
)
の
底
(
そこ
)
へ
落
(
おと
)
し
込
(
こ
)
んだなり、
188
最早
(
もはや
)
天
(
あめ
)
が
下
(
した
)
に
恐
(
おそ
)
るべき
者
(
もの
)
は
一人
(
ひとり
)
もなくなつて
了
(
しま
)
つた。
189
サアこれから
爺
(
ぢぢ
)
イ
婆
(
ばば
)
アをここへ
連
(
つ
)
れ
出
(
だ
)
して
来
(
き
)
てお
酌
(
しやく
)
をさそうかい。
190
オイ
皆
(
みな
)
の
奴
(
やつ
)
、
191
婆
(
ばば
)
アでも
女
(
をんな
)
だぞ、
192
男
(
をとこ
)
ばかりの
此
(
この
)
岩窟
(
いはや
)
、
193
滅多
(
めつた
)
に
不足
(
ふそく
)
はあろまいがな、
194
アーン』
195
シヤム『
何
(
なん
)
ぼ
女
(
をんな
)
だつて、
196
婆
(
ばば
)
アでは
はづ
まぬぢやないか。
197
俺
(
おれ
)
は
今
(
いま
)
来
(
き
)
た
菖蒲
(
あやめ
)
とか
さつき
とかいふナイスを
引張
(
ひつぱ
)
り
出
(
だ
)
して、
198
酌
(
しやく
)
をさしたら
如何
(
どう
)
だらうかと
思
(
おも
)
つてるのだ』
199
レール『
馬鹿
(
ばか
)
を
言
(
い
)
ふな、
200
あんな
奴
(
やつ
)
を
引張
(
ひつぱ
)
り
出
(
だ
)
して
来
(
こ
)
ようものなら、
201
丸
(
まる
)
で
爆裂弾
(
ばくれつだん
)
を
投
(
な
)
げたやうなものだ。
202
恐
(
おそ
)
ろしい
代物
(
しろもの
)
だぞ。
203
オイ、
204
ヤツコス、
205
何
(
なに
)
をグヅグヅしてるのだ。
206
爺
(
ぢぢ
)
イ
婆
(
ばば
)
アをここへ
引張
(
ひつぱ
)
つて
来
(
こ
)
ぬかい』
207
ヤツコス『
喧
(
やかま
)
し
言
(
い
)
ふない、
208
あんな
目汁
(
めしる
)
水
(
みづ
)
ばな
を
垂
(
た
)
れてる
汚
(
きたな
)
い
爺婆
(
ぢぢばば
)
をこんな
所
(
ところ
)
へ
連
(
つ
)
れて
来
(
き
)
ちや、
209
酒
(
さけ
)
の
御
(
お
)
座
(
ざ
)
がさめて
了
(
しま
)
うぞ。
210
それよりも
俺
(
おれ
)
が
一
(
ひと
)
つ
品
(
しな
)
よう
踊
(
をど
)
つて
見
(
み
)
せてやるからそれで
辛抱
(
しんばう
)
せい』
211
と、
212
早
(
はや
)
くも
手拭
(
てぬぐひ
)
を
姐
(
ねえ
)
さんかぶりにして、
213
一寸
(
ちよつと
)
裾
(
すそ
)
をからげ、
214
手
(
て
)
や
尻
(
しり
)
をふりピシヤピシヤと
時々
(
ときどき
)
手
(
て
)
を
叩
(
たた
)
き、
215
ヤッコス
『
私
(
わたし
)
が
在所
(
ざいしよ
)
はコーカス
山
(
ざん
)
の
216
麓
(
ふもと
)
の
麓
(
ふもと
)
のその
麓
(
ふもと
)
217
ヤツトコセー ドツコイシヨ
218
樫谷
(
かしや
)
の
彦
(
ひこ
)
や
樫谷姫
(
かしやひめ
)
219
ウラルの
神
(
かみ
)
の
御
(
お
)
取次
(
とりつぎ
)
220
こんな
牢屋
(
らうや
)
へ
突
(
つ
)
つ
込
(
こ
)
まれ
221
ヨーイトサー ヨーイトサー
222
朝
(
あさ
)
から
晩
(
ばん
)
まで
娘
(
むすめ
)
をくれいと
責
(
せ
)
められる
223
どうして
娘
(
むすめ
)
がやられようか
224
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
の
眷族
(
けんぞく
)
に
225
ドツコイシヨー ドツコイシヨー』
226
レール『オイ
貴様
(
きさま
)
、
227
人
(
ひと
)
の
代理
(
だいり
)
をするのか、
228
しやうもない、
229
モツと
気
(
き
)
の
利
(
き
)
いた
事
(
こと
)
を
唄
(
うた
)
はぬかい』
230
ヤツコス『
老人
(
らうじん
)
夫婦
(
ふうふ
)
の
守護神
(
しゆごじん
)
が
憑
(
うつ
)
つて
唄
(
うた
)
つてゐるのだ。
231
サアこれから、
232
又
(
また
)
一
(
ひと
)
つ
憑
(
うつ
)
られてやらうかな。
233
今度
(
こんど
)
は
大足別
(
おほだるわけ
)
ぢや、
234
ウツフヽヽヽ、
235
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
の
大将
(
たいしやう
)
が
236
イホの
都
(
みやこ
)
を
追
(
お
)
ひまくられて
237
ヤツトコサー ヤツトコサー
238
メソポタミヤの
顕恩郷
(
けんおんきやう
)
に
239
ヤツとお
尻
(
しり
)
をすゑた
時
(
とき
)
240
ヤートサー ヤートサー
241
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
242
肝太玉
(
きもふとだま
)
の
神司
(
かむづかさ
)
243
家来
(
けらい
)
をつれてやつて
来
(
き
)
て
244
大
(
おほ
)
きな
目玉
(
めだま
)
をむきよつた
245
ドツコイシヨー ドツコイシヨー
246
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
の
大将
(
たいしやう
)
は
247
大蛇
(
をろち
)
の
姿
(
すがた
)
を
現
(
あら
)
はして
248
一目散
(
いちもくさん
)
に
自転倒
(
おのころ
)
の
249
大江
(
おほえ
)
の
山
(
やま
)
へ
とつ
走
(
ぱし
)
り
250
又
(
また
)
もやここを
追
(
お
)
ひまくられて
251
命
(
いのち
)
カラガラ フサの
国
(
くに
)
252
逃
(
に
)
げ
帰
(
かへ
)
りたる
弱虫
(
よわむし
)
が
253
時世
(
ときよ
)
時節
(
じせつ
)
の
力
(
ちから
)
にて
254
再
(
ふたた
)
び
大黒主
(
おほくろぬし
)
となり
255
羽
(
は
)
ぶりを
利
(
き
)
かしてゐた
所
(
とこ
)
へ
256
尾
(
を
)
をふり
頭
(
あたま
)
を
下
(
さ
)
げ
乍
(
なが
)
ら
257
追従
(
つゐしよう
)
タラダラお
髯
(
ひげ
)
の
塵
(
ちり
)
を
258
払
(
はら
)
つてのけた
利巧者
(
りかうもの
)
259
ヨーイトサー ヨーイトサー
260
それが
誰
(
たれ
)
やと
尋
(
たづ
)
ねたら
261
清春山
(
きよはるやま
)
の
岩窟
(
がんくつ
)
に
262
時
(
とき
)
めき
玉
(
たま
)
ふ
御
(
おん
)
大将
(
たいしやう
)
263
大足別
(
おほだるわけ
)
の
醜神
(
しこがみ
)
だ
264
オツトドツコイ コラしまうた
265
大足別
(
おほだるわけ
)
の
神司
(
かむづかさ
)
266
大樽
(
おほたる
)
あけて
燗
(
かん
)
をして
267
何奴
(
どいつ
)
も
此奴
(
こいつ
)
も
呑
(
の
)
むがよい
268
呑
(
の
)
めよ
呑
(
の
)
め
呑
(
の
)
め
山
(
やま
)
も
田
(
た
)
も
269
家
(
いへ
)
倉
(
くら
)
屋敷
(
やしき
)
に
至
(
いた
)
るまで
270
呑
(
の
)
んで
並
(
なら
)
べたフラスコの
271
徳利
(
とつくり
)
トンのトントコトン
272
面白
(
おもしろ
)
うなつておいでたな
273
俺
(
おれ
)
は
酒
(
さけ
)
は
呑
(
の
)
まないが
274
けたいな
匂
(
にほ
)
ひで
酔
(
よ
)
うて
来
(
き
)
た
275
レール ポーロの
両人
(
りやうにん
)
が
276
尋
(
たづ
)
ねてうせた
神司
(
かむづかさ
)
277
照国別
(
てるくにわけ
)
といふ
奴
(
やつ
)
に
278
肝
(
きも
)
を
潰
(
つぶ
)
して
陥穽
(
おとしあな
)
279
卑怯
(
ひけふ
)
未練
(
みれん
)
と
知
(
し
)
り
乍
(
なが
)
ら
280
甘
(
うま
)
くやつたる
御
(
おん
)
手柄
(
てがら
)
281
天地
(
てんち
)
の
神
(
かみ
)
も
御
(
ご
)
照覧
(
せうらん
)
282
梵天王
(
ぼんてんわう
)
の
自在天
(
じざいてん
)
283
大国彦
(
おほくにひこ
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
も
284
さぞやさぞさぞ
喜
(
よろこ
)
んで
285
泣
(
な
)
いて
厶
(
ござ
)
るに
違
(
ちがひ
)
ない
286
泣
(
な
)
いたり
笑
(
わら
)
うたり
怒
(
おこ
)
つたり
287
お
前
(
まへ
)
ら
一体
(
いつたい
)
酒
(
さけ
)
食
(
くら
)
うて
288
何
(
なに
)
が
不足
(
ふそく
)
で
怒
(
おこ
)
るのか
289
泣
(
な
)
いて
明石
(
あかし
)
の
浜千鳥
(
はまちどり
)
290
泣
(
な
)
いた
序
(
ついで
)
に
可哀相
(
かあいさう
)
な
291
さぞ
今頃
(
いまごろ
)
は
菖蒲子
(
あやめこ
)
が
292
奈落
(
ならく
)
の
底
(
そこ
)
でベソベソと
293
泣
(
な
)
いて
厶
(
ござ
)
るに
違
(
ちがひ
)
ない
294
それを
思
(
おも
)
へば
俺
(
おれ
)
だとて
295
チツとは
泣
(
な
)
かずにや
居
(
を
)
られない
296
ウントコドツコイ ドツコイシヨ
297
呑
(
の
)
めよ
呑
(
の
)
め
呑
(
の
)
め
騒
(
さわ
)
げよ
騒
(
さわ
)
げ
298
一寸先
(
いつすんさき
)
は
真
(
しん
)
の
暗
(
やみ
)
299
後
(
あと
)
から
月
(
つき
)
が
出
(
で
)
るけれど
300
其
(
その
)
月
(
つき
)
こそは
運
(
うん
)
の
つき
301
うろ
つき
間誤
(
まご
)
つき
ウソ
つき
の
302
ヤクザばかりが
寄
(
よ
)
り
合
(
あ
)
うて
303
バラモン
教
(
けう
)
を
開
(
ひら
)
くとは
304
呆
(
あき
)
れて
物
(
もの
)
が
言
(
い
)
はれない
305
ウントコドツコイ ドツコイシヨー
306
照国別
(
てるくにわけ
)
や
菖蒲子
(
あやめこ
)
を
307
甘
(
うま
)
くおとして
喜
(
よろこ
)
んで
308
酒
(
さけ
)
にくらひ
酔
(
よ
)
て
居
(
ゐ
)
る
内
(
うち
)
に
309
剛力
(
がうりき
)
無双
(
むさう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
310
又
(
また
)
もや
現
(
あら
)
はれ
来
(
き
)
たならば
311
何奴
(
どいつ
)
も
此奴
(
こいつ
)
もうろたへて
312
一泡
(
ひとあわ
)
吹
(
ふ
)
くに
違
(
ちがひ
)
ない
313
あゝ
面白
(
おもしろ
)
い
面白
(
おもしろ
)
い
314
俺
(
おれ
)
は
高見
(
たかみ
)
で
見物
(
けんぶつ
)
だ
315
大足別
(
おほだるわけ
)
の
腰抜
(
こしぬけ
)
が
316
さぞ
今頃
(
いまごろ
)
は
馬
(
うま
)
に
乗
(
の
)
り
317
デカタン
高原
(
かうげん
)
トボトボと
318
数多
(
あまた
)
の
軍勢
(
ぐんぜい
)
を
引
(
ひき
)
つれて
319
冥途
(
めいど
)
の
旅
(
たび
)
とは
知
(
し
)
らずして
320
歩
(
ある
)
いて
居
(
ゐ
)
るか
情
(
なさけ
)
ない
321
とは
云
(
い
)
ふものの
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
は
322
チツとも
苦
(
くる
)
しうない
程
(
ほど
)
に
323
其
(
そ
)
れの
乾児
(
こぶん
)
と
選
(
えら
)
まれた
324
レール ポーロやシヤム ハール
325
其
(
その
)
外
(
ほか
)
百
(
もも
)
のガラクタが
326
やりをる
事
(
こと
)
が
面
(
つら
)
にくい
327
ホンに
呆
(
あき
)
れた
奴
(
やつ
)
ばかり
328
神
(
かみ
)
の
布教
(
ふけう
)
を
楯
(
たて
)
となし
329
其
(
その
)
内実
(
ないじつ
)
は
泥坊
(
どろばう
)
を
330
本職
(
ほんしよく
)
とする
奴
(
やつ
)
ばかり
331
此
(
この
)
岩窟
(
がんくつ
)
は
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
332
聖場
(
せいぢやう
)
どころか
狼
(
おほかみ
)
や
333
獅子
(
しし
)
熊
(
くま
)
大蛇
(
をろち
)
の
跳梁場
(
てうりやうば
)
334
早
(
はや
)
く
尊
(
たふと
)
い
神
(
かみ
)
が
来
(
き
)
て
335
此奴
(
こいつ
)
ら
一同
(
いちどう
)
悉
(
ことごと
)
く
336
平
(
たひら
)
げくれればよいものに
337
あゝ
叶
(
かな
)
はむからたまらない
338
かんかんチキチン カンチキチン
339
ドツコイドツコイドツコイシヨー
340
ホンに
困
(
こま
)
つた
奴
(
やつ
)
ばかり
341
顔
(
かほ
)
見
(
み
)
てさへも
腹
(
はら
)
が
立
(
た
)
つ』
342
レール『コラコラ
怪
(
け
)
しからぬ
事
(
こと
)
を
吐
(
ほざ
)
く
奴
(
やつ
)
だ。
343
貴様
(
きさま
)
は
三五教
(
あななひけう
)
の
間者
(
まはしもの
)
だらう、
344
コーカス
山
(
ざん
)
のヤツコスの
子孫
(
しそん
)
だなんて
吐
(
ぬか
)
してけつかつたが、
345
貴様
(
きさま
)
はウラル
教
(
けう
)
をすてて、
346
とうとう
三五教
(
あななひけう
)
に
沈没
(
ちんぼつ
)
してケツカルのに
違
(
ちがひ
)
ない。
347
サア
有体
(
ありてい
)
に
白状
(
はくじやう
)
せい、
348
蛙
(
かはづ
)
は
口
(
くち
)
からだ、
349
大黒主
(
おほくろぬし
)
様
(
さま
)
や
大足別
(
おほだるわけ
)
の
大将
(
たいしやう
)
の
悪口
(
わるくち
)
ばかり
吐
(
ほざ
)
きやがつたぢやないか』
350
ヤツコス『
馬鹿
(
ばか
)
だなア、
351
俺
(
おれ
)
の
素性
(
すじやう
)
を
今迄
(
いままで
)
知
(
し
)
らなかつたのか。
352
俺
(
おれ
)
は
三五教
(
あななひけう
)
の
岩彦
(
いはひこ
)
といふ
宣伝使
(
せんでんし
)
だ。
353
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
内命
(
ないめい
)
に
依
(
よ
)
つて
貴様
(
きさま
)
等
(
ら
)
の
行動
(
かうどう
)
を
調査
(
てうさ
)
してゐるのを
知
(
し
)
らぬのかい。
354
サア
何
(
なん
)
ぼなつともがけ、
355
アタいやらしい、
356
ドツサリ
盗
(
ぬす
)
み
酒
(
ざけ
)
に
喰
(
くら
)
ひ
酔
(
よ
)
うて、
357
脛腰
(
すねこし
)
も
立
(
た
)
たぬ
態
(
ざま
)
して、
358
如何
(
どう
)
して
俺
(
おれ
)
に
手向
(
たむか
)
ふ
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ようか。
359
丸
(
まる
)
で
躄
(
ゐざり
)
の
病院
(
びやうゐん
)
へ
来
(
き
)
たやうなものだ。
360
サアこれから
此
(
この
)
岩彦
(
いはひこ
)
さまが、
361
此
(
この
)
出刃
(
でば
)
庖丁
(
ぼうちやう
)
で、
362
親
(
おや
)
ゆづりの
裘
(
かはごろも
)
を
一人
(
ひとり
)
も
残
(
のこ
)
らず
剥
(
は
)
いでやらう、
363
覚悟
(
かくご
)
を
致
(
いた
)
せ。
364
アハヽヽヽ』
365
と
出刃
(
でば
)
庖丁
(
ぼうちやう
)
をグツと
握
(
にぎ
)
つてレールの
前
(
まへ
)
に
突
(
つ
)
き
出
(
だ
)
した。
366
レールは
逃
(
に
)
げようとすれ
共
(
ども
)
、
367
余
(
あま
)
りの
泥酔
(
でいすゐ
)
に
口
(
くち
)
ばかり
達者
(
たつしや
)
で、
368
手足
(
てあし
)
の
自由
(
じいう
)
を
失
(
うしな
)
つてゐた。
369
レール『オイ、
370
ポーロ、
371
シヤム、
372
ハール、
373
何
(
なに
)
してゐるのだ。
374
此
(
この
)
ヤツコスを
貴様
(
きさま
)
等
(
ら
)
寄
(
よ
)
つて
叩
(
たた
)
き
殺
(
ころ
)
して
了
(
しま
)
へ』
375
ポーロ、
376
ヘベレケになつて、
377
ポーロ
『オイ、
378
レール、
379
貴様
(
きさま
)
のいふこた、
380
一体
(
いつたい
)
、
381
一寸
(
ちよつと
)
も
分
(
わか
)
らぬぢやないか。
382
殺
(
ころ
)
すとか
殺
(
ころ
)
さぬとかぬかして
居
(
ゐ
)
るが、
383
あゝしておけば
四
(
よ
)
人
(
にん
)
の
奴
(
やつ
)
ア、
384
そんなに
骨
(
ほね
)
を
折
(
を
)
らなくても、
385
ひとり
木乃伊
(
みいら
)
になつて
了
(
しま
)
ふワ。
386
マア
酒
(
さけ
)
でもゆつくり
呑
(
の
)
め、
387
俺
(
おれ
)
やモウ
一足
(
ひとあし
)
も
立
(
た
)
つ
事
(
こと
)
も
出来
(
でき
)
やしないワ、
388
アーア
苦
(
くる
)
しい、
389
酒
(
さけ
)
と
云
(
い
)
ふ
奴
(
やつ
)
ア、
390
呑
(
の
)
まれる
時
(
とき
)
にや
甘
(
うま
)
い
味
(
あぢ
)
をしてゐやがるが、
391
腹中
(
はらんなか
)
に
這入
(
はい
)
つてから
盛
(
さかん
)
に
活動
(
くわつどう
)
しやがるとみえて、
392
何
(
ど
)
うにも
斯
(
か
)
うにも
苦
(
くるし
)
くて
仕方
(
しかた
)
がない。
393
ゲー、
394
ガラガラ ガラガラ、
395
ウツプー』
396
レール『エヽ
何奴
(
どいつ
)
も
此奴
(
こいつ
)
も、
397
酔
(
よひ
)
どればかりぢやなア。
398
さうぢやから
酒
(
さけ
)
を
身知
(
みし
)
らずに
食
(
くら
)
ふなというて
聞
(
き
)
かしてあるのだ』
399
シヤム『オイ、
400
レール、
401
偉相
(
えらさう
)
に
言
(
い
)
ふない、
402
お
前
(
まへ
)
だつて、
403
脛腰
(
すねこし
)
が
立
(
た
)
たぬとこまで
酔
(
よ
)
うてゐるぢやないか』
404
レール『
俺
(
おれ
)
は
俺
(
おれ
)
で
特別
(
とくべつ
)
だ。
405
俺
(
おれ
)
の
真似
(
まね
)
をすると
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
があるものかい。
406
アーン、
407
コレコレお
化
(
ば
)
けのヤツコスさま、
408
そんな
出刃
(
でば
)
のやうな
危
(
あぶな
)
いものをふりまはさずに
早
(
はや
)
く
陥穽
(
おとしあな
)
の
戸
(
と
)
をあけ、
409
早
(
はや
)
く
四
(
よ
)
人
(
にん
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
を
助
(
たす
)
けぬかい。
410
そして
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
の
代表者
(
だいへうしや
)
となつて、
411
御
(
ご
)
無礼
(
ぶれい
)
をお
詫
(
わ
)
びしてくれないか。
412
ナア、
413
イワイワ
岩彦
(
いはひこ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
、
414
お
前
(
まへ
)
も
中々
(
なかなか
)
ぬかりのない
男
(
をとこ
)
だ。
415
俺
(
おれ
)
もカンチンした、
416
流石
(
さすが
)
は
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
だワイ。
417
アーン』
418
ヤツコス『オヽ
貴様
(
きさま
)
のいふ
通
(
とほ
)
り、
419
早
(
はや
)
く
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
をお
助
(
たす
)
け
致
(
いた
)
さねばならぬ。
420
シツカリ
顔
(
かほ
)
を
見
(
み
)
なかつたが、
421
何
(
なん
)
でも
梅彦
(
うめひこ
)
によく
似
(
に
)
て
居
(
を
)
つたやうだ。
422
ドレこれから
四
(
よ
)
人
(
にん
)
を
救
(
すく
)
ひあげて、
423
貴様
(
きさま
)
等
(
ら
)
一同
(
いちどう
)
を
其
(
その
)
後
(
あと
)
へほり
込
(
こ
)
んでやらうか。
424
此奴
(
こいつ
)
ア
面白
(
おもしろ
)
い』
425
と
立上
(
たちあが
)
らうとするのを、
426
レールは
矢庭
(
やには
)
にヤツコスの
足
(
あし
)
にくらひつき、
427
レール
『
俺
(
おれ
)
はレール
酔
(
よ
)
うたのだから、
428
寝鳥
(
ねとり
)
の
首
(
くび
)
を
締
(
し
)
めるやうな
事
(
こと
)
をやられちや
浮
(
うか
)
む
瀬
(
せ
)
がないワ。
429
マアマア
一
(
ひと
)
つ
鍋
(
なべ
)
を
食
(
く
)
た
仲
(
なか
)
だから、
430
其
(
その
)
誼
(
よし
)
みで
俺
(
おれ
)
丈
(
だけ
)
は
免除
(
めんぢよ
)
してくれ。
431
其
(
その
)
代
(
かは
)
りにポーロ、
432
シヤム、
433
ハール、
434
エルマ、
435
エム
等
(
など
)
は
一寸
(
ちよつと
)
も
遠慮
(
ゑんりよ
)
いらぬから、
436
ドシドシと
放
(
ほ
)
り
込
(
こ
)
んでくれ。
437
モウ
斯
(
か
)
うなると
吾
(
わが
)
身
(
み
)
が
大事
(
だいじ
)
ぢや、
438
人
(
ひと
)
が
死
(
し
)
なうが
倒
(
たふ
)
れやうが、
439
吾
(
われ
)
さへ
良
(
よ
)
けらよい
時節
(
じせつ
)
だ。
440
コレ
丈
(
だけ
)
道理
(
だうり
)
を
解
(
わ
)
けて
頼
(
たの
)
むのにお
前
(
まへ
)
は
聞
(
き
)
いてくれぬのか。
441
アーン』
442
斯
(
か
)
かる
所
(
ところ
)
へキルクは
慌
(
あわただ
)
しくやつて
来
(
き
)
た。
443
キルク『オイオイポーロ、
444
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
がタール、
445
ハム、
446
イール、
447
ヨセフを
供
(
とも
)
としてやつて
来
(
き
)
ました。
448
如何
(
どう
)
致
(
いた
)
しませうかな』
449
ポーロ『ナニ、
450
又
(
また
)
宣伝使
(
せんでんし
)
がやつて
来
(
き
)
た? そしてハムの
兄哥
(
あにき
)
が
居
(
を
)
るといふのか、
451
ソラ
洒落
(
しやれ
)
てる、
452
流石
(
さすが
)
はハムだ。
453
甘
(
うま
)
く
引張
(
ひつぱ
)
り
込
(
こ
)
んで
来
(
き
)
やがつたな』
454
キルク『イエイエ
滅相
(
めつさう
)
もない。
455
ハム、
456
タール、
457
イール、
458
ヨセフはスツカリ
三五教
(
あななひけう
)
の
味方
(
みかた
)
をして、
459
ここへやつて
来
(
き
)
よつたのだ』
460
ポーロ『ハハー
彼奴
(
あいつ
)
ア
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
さまの
子分
(
こぶん
)
だけれど、
461
同
(
おな
)
じ
教
(
をしへ
)
だと
思
(
おも
)
つて、
462
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
に
手柄
(
てがら
)
をさそうと
連
(
つ
)
れて
来
(
き
)
たのだらう。
463
本当
(
ほんたう
)
に
気
(
き
)
の
利
(
き
)
いた
奴
(
やつ
)
だ』
464
ヤツコス『ナニ、
465
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
が
来
(
き
)
たか、
466
其奴
(
そいつ
)
ア
面白
(
おもしろ
)
い、
467
何奴
(
どいつ
)
も
此奴
(
こいつ
)
も
一人
(
ひとり
)
も
残
(
のこ
)
らず
酔
(
よ
)
ひつぶれて
居
(
ゐ
)
やがる、
468
決
(
けつ
)
して
老人
(
らうじん
)
夫婦
(
ふうふ
)
に
対
(
たい
)
し
後顧
(
こうこ
)
の
憂
(
うれ
)
ひがないから、
469
俺
(
おれ
)
が
一
(
ひと
)
つ
出迎
(
でむか
)
へに
行
(
い
)
て
来
(
こ
)
う』
470
と、
471
岩戸
(
いはと
)
の
入口
(
いりぐち
)
に
走
(
はし
)
り
出
(
い
)
で、
472
ヤッコス
『これはこれは
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
、
473
お
名
(
な
)
は
存
(
ぞん
)
じませぬが、
474
マア
奥
(
おく
)
へお
入
(
はい
)
り
下
(
くだ
)
さい。
475
照国別
(
てるくにわけ
)
一行
(
いつかう
)
が
今
(
いま
)
陥穽
(
おとしあな
)
へおとされて
困
(
こま
)
つてゐる
所
(
ところ
)
です。
476
サア
早
(
はや
)
く
飛込
(
とびこ
)
んで
岩窟
(
いはや
)
征伐
(
せいばつ
)
をして
下
(
くだ
)
さい。
477
吾々
(
われわれ
)
もお
手伝
(
てつだ
)
ひを
致
(
いた
)
しませう』
478
国公
(
くにこう
)
『ハテ、
479
合点
(
がつてん
)
のいかぬ
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
ふぢやないか、
480
お
前
(
まへ
)
はバラモン
教
(
けう
)
の
眷族
(
けんぞく
)
だらう』
481
ヤツコス『
実
(
じつ
)
の
所
(
ところ
)
は
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
岩彦
(
いはひこの
)
命
(
みこと
)
だ。
482
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
の
内命
(
ないめい
)
に
依
(
よ
)
つて、
483
此
(
この
)
岩窟
(
がんくつ
)
へ
信者
(
しんじや
)
と
化
(
ば
)
けこみ、
484
今迄
(
いままで
)
時
(
とき
)
を
待
(
ま
)
つてゐたのだ。
485
お
前
(
まへ
)
もまだ
新米
(
しんまい
)
と
見
(
み
)
えるが、
486
ナーニ
案
(
あん
)
じる
事
(
こと
)
はない。
487
トツトと
這入
(
はい
)
つてくれ、
488
随分
(
ずゐぶん
)
面白
(
おもしろ
)
い
事
(
こと
)
が
始
(
はじ
)
まつてゐるから』
489
と
鷹揚
(
おうやう
)
に
言
(
い
)
ひ
放
(
はな
)
ち、
490
ニコニコとして
奥
(
おく
)
に
入
(
い
)
る。
491
国公
(
くにこう
)
は
合点
(
がつてん
)
行
(
ゆ
)
かず、
492
四
(
よ
)
人
(
にん
)
を
従
(
したが
)
へ
奥深
(
おくふか
)
く
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
り、
493
酔
(
よ
)
ひどれの
姿
(
すがた
)
を
見
(
み
)
て、
494
顔
(
かほ
)
をしかめ、
495
国公
『アヽいやな
匂
(
にほひ
)
がするぢやないか、
496
何
(
なん
)
だムサ
苦
(
くる
)
しい、
497
そこら
中
(
ぢう
)
に
店出
(
みせだ
)
しをしよつて、
498
オイ
何
(
なに
)
か
芳香水
(
はうかうすゐ
)
がないか、
499
イヤ
防臭液
(
ばうしうえき
)
でもいい、
500
チトふりかけてくれ』
501
岩彦
(
いはひこ
)
『それは
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
、
502
照国別
(
てるくにわけ
)
外
(
ほか
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
を
救
(
すく
)
ひ
上
(
あ
)
げねばならぬ。
503
そんな
末梢
(
まつせう
)
的
(
てき
)
問題
(
もんだい
)
はどうでもいい、
504
中々
(
なかなか
)
戸
(
と
)
が
重
(
おも
)
たくて
俺
(
おれ
)
一人
(
ひとり
)
では
如何
(
いかん
)
ともする
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ない。
505
ヤイ、
506
一同
(
いちどう
)
の
連中
(
れんちう
)
さま、
507
俺
(
おれ
)
に
力
(
ちから
)
を
貸
(
か
)
してくれ、
508
ここだ
此
(
この
)
丸
(
まる
)
い
穴
(
あな
)
へ
一人
(
ひとり
)
づつ
指
(
ゆび
)
を
突込
(
つつこ
)
んでグイと
引上
(
ひきあ
)
げてくれ』
509
国公
(
くにこう
)
は『ヨシ
来
(
き
)
た』と
言
(
い
)
ひながら
六
(
ろく
)
人
(
にん
)
力
(
ちから
)
を
併
(
あは
)
せて、
510
非常
(
ひじやう
)
に
重
(
おも
)
たい
板
(
いた
)
の
戸
(
と
)
を
引
(
ひ
)
きあけた。
511
中
(
なか
)
には
四
(
よ
)
人
(
にん
)
の
男女
(
だんぢよ
)
が
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
してゐた。
512
国公
(
くにこう
)
は
穴
(
あな
)
を
覗
(
のぞ
)
いて、
513
国公
『ヤア
照国別
(
てるくにわけ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
、
514
危
(
あぶな
)
い
所
(
ところ
)
でありました。
515
黄金姫
(
わうごんひめ
)
様
(
さま
)
、
516
清照姫
(
きよてるひめ
)
様
(
さま
)
の
命令
(
めいれい
)
に
依
(
よ
)
つて、
517
あなた
方
(
がた
)
をお
助
(
たす
)
けに
参
(
まゐ
)
りました』
518
照国別
(
てるくにわけ
)
『ヤアそれは
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
だつた、
519
曲津
(
まがつ
)
神
(
かみ
)
奴
(
め
)
、
520
とうとうこんな
所
(
ところ
)
へおとしよつて
流石
(
さすが
)
の
俺
(
おれ
)
も
如何
(
どう
)
なる
事
(
こと
)
かと、
521
聊
(
いささ
)
か
心配
(
しんぱい
)
してゐた。
522
持
(
も
)
つべき
者
(
もの
)
は
家来
(
けらい
)
なりけりだ。
523
早
(
はや
)
く
縄梯子
(
なはばしご
)
でもおろしてくれないか』
524
岩彦
(
いはひこ
)
は
何処
(
いづこ
)
よりか
縄梯子
(
なはばしご
)
を
持来
(
もちきた
)
り、
525
バラリとかけ
下
(
お
)
ろした。
526
照国別
(
てるくにわけ
)
を
初
(
はじ
)
め、
527
菖蒲
(
あやめ
)
、
528
照公
(
てるこう
)
、
529
梅公
(
うめこう
)
は
猿
(
ましら
)
の
如
(
ごと
)
く
縄梯子
(
なはばしご
)
を
伝
(
つた
)
うてかけ
上
(
のぼ
)
り、
530
国公
(
くにこう
)
の
前
(
まへ
)
に
首
(
くび
)
を
一寸
(
ちよつと
)
下
(
さ
)
げ、
531
『ヤア
有難
(
ありがた
)
う』
532
と
挨拶
(
あいさつ
)
する。
533
岩彦
(
いはひこ
)
は
照国別
(
てるくにわけ
)
の
背
(
せな
)
を
二
(
ふた
)
つ
三
(
み
)
つポンポンと
叩
(
たた
)
き、
534
岩彦
『ヤア
梅彦
(
うめひこ
)
、
535
久
(
ひさ
)
し
振
(
ぶり
)
だつたねい、
536
こんな
所
(
ところ
)
で
会
(
あ
)
はうとは
夢
(
ゆめ
)
にも
思
(
おも
)
はなかつたよ』
537
照国別
(
てるくにわけ
)
『ヨーお
前
(
まへ
)
は
岩彦
(
いはひこ
)
だつたか、
538
何
(
なん
)
と
不思議
(
ふしぎ
)
な
所
(
ところ
)
で
会
(
あ
)
うたものだ。
539
併
(
しか
)
し
老人
(
らうじん
)
夫婦
(
ふうふ
)
はどうしてゐるか、
540
聞
(
き
)
かしてくれ』
541
岩彦
(
いはひこ
)
『
心配
(
しんぱい
)
すな、
542
俺
(
おれ
)
がいつもかくれ
忍
(
しの
)
んで
十分
(
じふぶん
)
の
御
(
ご
)
馳走
(
ちそう
)
を
与
(
あた
)
へ、
543
大切
(
たいせつ
)
に
守
(
まも
)
つてゐたから、
544
お
二人
(
ふたり
)
共
(
とも
)
至極
(
しごく
)
健全
(
けんぜん
)
だ。
545
聞
(
き
)
けばお
前
(
まへ
)
の
両親
(
りやうしん
)
だつたさうだねい』
546
照国別
(
てるくにわけ
)
『
両親
(
りやうしん
)
はどこにゐられるか、
547
案内
(
あんない
)
してくれないか』
548
岩彦
(
いはひこ
)
『ヨシ
俺
(
おれ
)
に
従
(
つ
)
いて
来
(
こ
)
い、
549
陥穽
(
おとしあな
)
はモウこれ
丈
(
だけ
)
だ』
550
と
言
(
い
)
ひつつ、
551
牢屋
(
らうや
)
の
前
(
まへ
)
に
導
(
みちび
)
いた。
552
見
(
み
)
れば
牢獄
(
らうごく
)
の
戸
(
と
)
はパツと
開
(
ひら
)
いてある。
553
照国別
(
てるくにわけ
)
がここへ
来
(
き
)
た
時
(
とき
)
にシヤムの
奴
(
やつ
)
、
554
驚
(
おどろ
)
いて
戸
(
と
)
を
開
(
あ
)
けておいたからである。
555
されど
老人
(
らうじん
)
夫婦
(
ふうふ
)
は
仮令
(
たとへ
)
此
(
この
)
牢獄
(
ひとや
)
を
出
(
で
)
た
所
(
ところ
)
で、
556
ヤツパリ
岩窟
(
がんくつ
)
の
中
(
なか
)
だ、
557
どんな
目
(
め
)
に
会
(
あ
)
はされるか
知
(
し
)
れないと、
558
小隅
(
こすみ
)
に
夫婦
(
ふうふ
)
は
抱合
(
だきあ
)
つて、
559
震
(
ふる
)
うてゐた。
560
照国別
(
てるくにわけ
)
は
声
(
こゑ
)
をくもらせ、
561
照国別
『モシお
父
(
とう
)
さま、
562
お
母
(
か
)
アさま、
563
私
(
わたし
)
は
梅彦
(
うめひこ
)
で
御座
(
ござ
)
います、
564
妹
(
いもうと
)
の
菖蒲
(
あやめ
)
もここに
参
(
まゐ
)
つて
居
(
を
)
ります。
565
どうぞ
御
(
ご
)
安心
(
あんしん
)
下
(
くだ
)
さいませ』
566
此
(
この
)
声
(
こゑ
)
を
聞
(
き
)
くより
老人
(
らうじん
)
夫婦
(
ふうふ
)
は
牢獄
(
ひとや
)
を
飛
(
と
)
び
出
(
い
)
で、
567
樫谷彦
(
かしやひこ
)
は
菖蒲
(
あやめ
)
に
樫谷姫
(
かしやひめ
)
は
照国別
(
てるくにわけ
)
に
抱
(
だき
)
つき、
568
嬉
(
うれ
)
し
涙
(
なみだ
)
にかきくれ、
569
暫
(
しば
)
しは
無言
(
むごん
)
の
幕
(
まく
)
をつづけて、
570
熱
(
あつ
)
き
涙
(
なみだ
)
を
滝
(
たき
)
の
如
(
ごと
)
くに
流
(
なが
)
すのみなり。
571
これよりポーロ、
572
レールを
初
(
はじ
)
め
一同
(
いちどう
)
の
罪
(
つみ
)
を
赦
(
ゆる
)
し、
573
照国別
(
てるくにわけ
)
は
両親
(
りやうしん
)
を
初
(
はじ
)
め、
574
妹
(
いもうと
)
菖蒲
(
あやめ
)
を
国公
(
くにこう
)
に
守
(
まも
)
らせ、
575
タール、
576
イール、
577
ハム、
578
ヨセフも
前後
(
あとさき
)
を
守
(
まも
)
つて、
579
アーメニヤの
故郷
(
こきやう
)
へ
帰
(
かへ
)
らしめ、
580
自分
(
じぶん
)
は
大神
(
おほかみ
)
の
使命
(
しめい
)
を
果
(
はた
)
すべく、
581
照公
(
てるこう
)
、
582
梅公
(
うめこう
)
及
(
および
)
岩彦
(
いはひこ
)
を
伴
(
ともな
)
ひ、
583
岩窟
(
いはや
)
を
後
(
あと
)
にフサの
国
(
くに
)
をさして、
584
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
歌
(
うた
)
ひつつ、
585
勇
(
いさ
)
み
進
(
すす
)
んで
出
(
い
)
でて
行
(
ゆ
)
く。
586
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
。
587
(
大正一一・一〇・二八
旧九・九
松村真澄
録)
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