妖幻坊の杢助と高姫の両人は、小北山の大門にやってきた。高姫は、桃の木の下にお菊とお千代が蝶を追って遊んでいるのを見て声をかけた。
お菊は、参拝者だと思って案内しようとするが、高姫は、自分はここのことはわかっている、お前が誰の娘か、ここの役員は誰なのか知りたいだけだと頭ごなしに言い返した。お菊はむっとして憎まれ口を返す。
お千代の口から魔我彦の名を聞いた高姫は、妖幻坊の杢助を連れて受付に赴き、ここの責任者に会いたいと呼ばわった。高姫は、受付にいた旧知の文助と挨拶を交わした。文助は、高姫が斎苑の館で出世したと聞いていたので、その祝を述べた。
文助から、かつての自分の弟子であった松姫が小北山の教主をしていると聞いて、居丈高に昔のことを話しだした。文助は、杢助ともども教主館に案内することになった。
教主館にやってきた三人は、お菊に出くわした。お菊は会うなり、やかましいおばさんを連れてくるのは嫌だ、エライ四つ足の霊が憑いてるようだから大広間で鎮魂してください、と高姫たちにつっかかる。
文助から、これがかつて皆があこがれていたウラナイ教教主の高姫その人だと聞かされたお菊は、聞くと見るとは大違いだとまた憎まれ口をたたき、蠑螈別は若い女と駆け落ちしたと高姫に知らせた。高姫は昔の愛人が若い女と駆け落ちしたと聞いて思わず悋気を出したが、杢助がいることに気づいてごまかそうとした。
時すでに遅く、杢助は、蠑螈別とやらの男振りを自分に見せつけようとしてわざわざここに連れて来たのかと駄々をこねだした。杢助は縁切りをほのめかし、その場を立ち去ろうとする。高姫は杢助の足にしがみついて、泣き声で杢助を留めようとする。
お菊はこの愁嘆場を手を打って笑いからかう。杢助はお菊の様子に、子供は正直だと近寄り、蠑螈別と高姫の関係を聞き出そうとする。お菊は無邪気に、自分の母と蠑螈別が喧嘩をしてその話を聞いたばかりだと杢助に語ると、面白い活劇を松姫やお千代にも見せるのだと、逃げるように石段を登って行った。
文助は、お菊はとんでもないお転婆で自分もいつもからかわれたりいたずらされたりしているから、言うことをいちいち気に留めないように、と杢助・高姫をなだめた。妖幻坊は、悪の見どころがあると喜んでいる。高姫は、改悪というのは悪を改めることだと杢助に理屈でごまかされ、やはり改善を勧める三五教は悪の教えだったと一人勝手に納得している。
お菊は戻ってきて、松姫が高姫の来訪を聞いてたいへんに喜び、丁重にもてなすように言いつけたと、言付けを文助に伝えた。文助は、ご飯やお酒の準備をさせるために受付に帰って行った。高姫は、ここの教主の松姫は自分の弟子だからと得意になり、自分が酌をすると妖幻坊の機嫌を取った。