霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一一章 乙女(をとめ)(あそび)〔一三二六〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第51巻 真善美愛 寅の巻 篇:第3篇 鷹魅艶態 よみ(新仮名遣い):ようみえんたい
章:第11章 乙女の遊 よみ(新仮名遣い):おとめのあそび 通し章番号:1326
口述日:1923(大正12)年01月26日(旧12月10日) 口述場所: 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年12月29日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
高姫は二人の侍女と共に楽しく時を過ごし満悦の折から、立派な衣装に身を包んだ高宮彦が愉快気にやってきた。高宮彦は絹座布団の上にどっかと腰を下ろした。
高姫は、高宮彦の神力によって如意宝珠の分霊である高子と宮子をしたがえて素晴らしい御殿に住むことを得、また自分の姿が若返ったことにお礼を述べた。高宮彦は天極紫微宮の御殿を地上に引き写し、竜宮のもっとも美しいところを海底から引き揚げたのだ、と法螺を吹いている。
高宮彦は、自分たちの栄華を保つためには、三五教やウラナイ教のやつらを一人残らず城中に引き込み、霊肉ともに亡ぼさなければならないと高姫に持ちかけた。そしてもっとも恐ろしい敵として、三五教の主管・素盞嗚尊を挙げ、その配下である東野別命、八島主命、日の出別命、言依別命、天之目一箇命、初稚姫命らの名を挙げた。
高姫は、自ら高子と宮子を引き連れて城門の外で往来の人々を待ち伏せ、若返った美貌と弁舌で残らず城中に引き入れて見せようと悪計を練り、実行すべく場外へ出て行った。
高姫は二人の侍女とともに場外の野に出て、すみれやタンポポを余念なく摘んでいるようにみせかけていた。そこへ旅装束の二人の男が、三五教の宣伝歌を歌いながらやってきた。二人は元バラモン教軍の将軍であり、三五教に改心したランチと片彦であった。
二人はかつて自分たちの軍隊が駐屯していた浮木の森に、いつの間にか立派な都会ができていることを見て驚き、いぶかしんだ。二人は高姫たち三人の乙女を認め、城内の様子を聞き取るべく近づいて行った。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2023-09-05 17:41:13 OBC :rm5111
愛善世界社版:163頁 八幡書店版:第9輯 324頁 修補版: 校定版:167頁 普及版:74頁 初版: ページ備考:
001 高姫(たかひめ)二人(ふたり)侍女(じぢよ)(とも)満面(まんめん)(ゑみ)(たた)へ、002蓬莱山(ほうらいざん)()つて無上(むじやう)歓楽(くわんらく)()ひし(ごと)く、003恍惚(くわうこつ)として脇息(けふそく)(もた)れ、004わが(うん)(ひら)(ぐち)005宇宙(うちう)一切(いつさい)()(にぎ)るも()(たの)しくはあるまいと満悦(まんえつ)折柄(をりから)006ドアをパツと(ひら)いて足音(あしおと)(たか)()(きた)るは、007六角(ろくかく)金色(きんしよく)燦爛(さんらん)たる(かむり)(いただ)いた高宮彦(たかみやひこの)(みこと)が、008さも愉快気(ゆくわいげ)にやつて()た。009(たちま)(とこ)()にして、010ムクムクとした(あつ)(きぬ)座布団(ざぶとん)(うへ)(ひざ)()める(やう)にして(すわ)()んだ。011高姫(たかひめ)はさも(うれ)しげに()びを(てい)しながら、
012高姫『これはこれは(わが)(つま)013高宮彦(たかみやひこ)(さま)014よく(わが)居間(ゐま)()はせられました。015(いち)()千秋(せんしう)(おも)ひで、016(きみ)のお()でを()(こが)れて()りました。017(うれ)しう(ござ)ります』
018(なみだ)()む。019妖幻坊(えうげんばう)は、
020妖幻坊の杢助『いや高宮姫(たかみやひめ)殿(どの)021(なが)らく(かほ)()せず失礼(しつれい)(いた)した。022さぞ(さび)しかつたであらうな』
023高姫『はい、024(さいはひ)二人(ふたり)(むすめ)近侍(きんじ)してくれて()りますので、025あまり(さび)しいとは(ぞん)じませぬが、026(きみ)のお姿(すがた)()えませぬと、027何処(どこ)とはなしに、028ヤツパリ(さび)しう(ござ)ります』
029妖幻坊の杢助『アツハハハハハハ、030さうするとヤツパリ(この)高宮彦(たかみやひこ)(こひ)しいと()えるのう。031や、032さうなくては(かな)はぬ(こと)だ。033()うして(をつと)となり(つま)となるも、034(むかし)神代(かみよ)から()るにきられぬ因縁(いんねん)であらう』
035高姫(たふと)(かみ)(さま)御恵(みめぐみ)によりまして、036かかる(たふと)御殿(ごてん)(うち)(おい)親子(おやこ)夫婦(ふうふ)邂逅(めぐりあ)ひ、037(じつ)にこんな(うれ)しい(こと)(ござ)りませぬ。038貴方(あなた)()雄姿(ゆうし)()ひ、039高宮姫(たかみやひめ)若返(わかがへ)りと()ひ、040(この)金殿(きんでん)玉楼(ぎよくろう)()ひ、041(さら)錦上(きんじやう)(はな)()へたる(ごと)金剛(こんがう)不壊(ふゑ)如意(によい)宝珠(ほつしゆ)分霊(ぶんれい)042高子姫(たかこひめ)043宮子姫(みやこひめ)二人(ふたり)美女(びぢよ)044天極(てんごく)紫微宮(しびきう)壮観(さうくわん)竜宮城(りうぐうじやう)光景(くわうけい)も、045よもやこれ(ほど)までには(ござ)りますまい』
046妖幻坊の杢助『それは、047その(はず)だ。048金剛(こんがう)不壊(ふゑ)如意(によい)宝珠(ほつしゆ)不思議(ふしぎ)神力(しんりき)にて、049天極(てんきよく)紫微宮(しびきう)御殿(ごてん)地上(ちじやう)引移(ひきうつ)し、050(また)竜宮(りうぐう)(もつと)(うつく)しき(ところ)を、051海底(かいてい)より此処(ここ)引上(ひきあ)()(なら)べたる大城廓(だいじやうくわく)052(その)中心(ちうしん)金殿(きんでん)玉楼(ぎよくろう)053曲輪城(まがわじやう)高宮殿(たかみやでん)054綺麗(きれい)なのは(もつと)もだ、055アハハハハハ』
056高姫『あの(もく)……いやいや高宮彦(たかみやひこ)(さま)057(この)城廓(じやうくわく)広袤(くわうぼう)何程(なにほど)(ござ)りますか』第二版ではこのセリフの冒頭に話者名として「高子」と書いてあるが。しかし文脈上「高姫」のセリフではないか?
058妖幻坊の杢助『うん、059さうだ、060東西(とうざい)百町(ひやくちやう)061南北(なんぼく)百町(ひやくちやう)062中々(なかなか)(もつ)(ひろ)いものだぞや。063(その)中心(ちうしん)なる(この)御殿(ごてん)(おい)て、064(なんぢ)両人(りやうにん)065天下(てんか)(にぎ)愉快(ゆくわい)さは(また)格別(かくべつ)だ。066(しか)しながら高宮姫(たかみやひめ)067よつく()け、068昨日(きのふ)まではバラモン(ぐん)先鋒隊(せんぽうたい)ランチ、069片彦(かたひこ)両将軍(りやうしやうぐん)(たむろ)せる陣営(ぢんえい)(あと)070彼方(かなた)此方(こなた)散在(さんざい)し、071()(かげ)もなき荒野(あらの)なりしが、072神変(しんぺん)不思議(ふしぎ)魔法(まはふ)によつて、073田園(でんゑん)山林(さんりん)陋屋(ろうをく)(たちま)(くわ)して(はな)(みやこ)となり、074かく城廓(じやうくわく)(てん)より海底(かいてい)より引寄(ひきよ)せ、075天地(てんち)(すゐ)(つく)したる建物(たてもの)(やうや)()つたれど、076(これ)より(なんぢ)(われ)(ちから)(あは)せ、077第一(だいいち)吾々(われわれ)行動(かうどう)(さまた)ぐる三五教(あななひけう)(およ)びウラナイ(けう)奴輩(やつばら)を、078一人(ひとり)(のこ)らず(この)城中(じやうちう)手段(てだて)(もつ)引込(ひきこ)み、079霊肉(れいにく)(とも)(ほろ)ぼさねば、080万劫(まんごふ)末代(まつだい)(この)栄華(えいぐわ)(たも)(こと)(むつ)かしい。081(もつと)(おそ)るべきは三五教(あななひけう)主管(しゆくわん)(いた)素盞嗚(すさのをの)(みこと)だ。082それに(したが)東野別(あづまのわけの)(みこと)083八島主(やしまぬしの)(みこと)084()出別(でわけの)(みこと)085言依別(ことよりわけの)(みこと)086天之(あめの)目一箇(まひとつの)(みこと)087初稚姫(はつわかひめの)(みこと)088(その)()沢山(たくさん)あれども、089()吾々(われわれ)(てき)とするは以上(いじやう)人物(じんぶつ)だ。090それに(したが)奴輩(やつばら)一人(ひとり)(のこ)らず打亡(うちほろ)ぼさねば、091吾々(われわれ)夫婦(ふうふ)大望(たいまう)成就(じやうじゆ)(いた)さぬぞや。092高宮姫(たかみやひめ)093そなたが今後(こんご)()るべき手段(しゆだん)如何(いかが)(ござ)るか。094それを(うけたま)はりたいものだ、095アツハハハハハ』
096高姫『もし(わが)夫様(つまさま)097(いな)(わが)君様(きみさま)098(いま)となつて左様(さやう)(こと)099(たづ)ねまでも(ござ)りませぬ。100(わらは)(これ)より日々(ひび)(この)城門(じやうもん)(くぐ)()で、101二人(ふたり)(むすめ)引連(ひきつ)れ、102()()(やぐら)近辺(きんぺん)にて往来(ゆきき)(ひと)()()せ、103(この)美貌(びばう)弁舌(べんぜつ)にまかせ、104(のこ)らず(この)城内(じやうない)()()帰順(きじゆん)させてやりませう。105(かなら)ずやお気遣(きづか)ひなさいますな』
106妖幻坊の杢助『ヤ、107出来(でか)した出来(でか)した。108流石(さすが)高宮姫(たかみやひめ)殿(どの)109(しか)らば(われ)奥殿(おくでん)にて休息(きうそく)(いた)し、110日々(ひび)神務(しんむ)()るべければ、111(なんぢ)高子(たかこ)112宮子(みやこ)(ともな)ひ、113()()(やぐら)(まへ)にて往来(ゆきき)のものは()ふに(およ)ばず、114三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)(およ)三五教(あななひけう)帰順(きじゆん)して斎苑(いそ)(やかた)参拝(さんぱい)する奴輩(やつばら)(のこ)らず引捕(ひつとら)へ、115(わが)城内(じやうない)へつれ(かへ)られよ』
116高姫(おほ)せにや(およ)びませう。117高姫(たかひめ)もかく(わか)やいだ(うへ)は、118いろいろと(ちから)(つく)手段(てだて)(もつ)()()せませう、119(かなら)ずともに()安心(あんしん)(くだ)さいませ』
120妖幻坊の杢助『いやそれを()いて安心(あんしん)(いた)した。121兎角(とかく)浮世(うきよ)(いろ)(さけ)122(ひと)大切(たいせつ)なものは権勢(けんせい)だ。123何程(なにほど)智者(ちしや)学者(がくしや)(いへど)も、124聖人(せいじん)君子(くんし)(いへど)も、125権勢(けんせい)なければ()(とき)めき(わた)(こと)出来(でき)ない。126まづ三五教(あななひけう)崩壊(ほうくわい)し、127大黒主(おほくろぬし)(かみ)(さま)安心(あんしん)(あた)(たてまつ)らずば、128七千(ななせん)余国(よこく)(つき)(くに)()ふに(およ)ばず、129三千(さんぜん)世界(せかい)乱麻(らんま)(ごと)(みだ)れ、130(かつ)吾々(われわれ)悪霊(あくれい)世界(せかい)へ……(いな)悪霊(あくれい)世界(せかい)吾々(われわれ)滅亡(めつぼう)せむと(いた)すは()()るよりも(あきら)かだ。131(われ)より(さき)(すす)んで(やかた)(ほろ)ぼさなくては、132(われ)()(かれ)(ほろ)ぼさるるに(いた)らむ。133如何(いか)如意(によい)宝珠(ほつしゆ)妙力(めうりき)ありとも、134(てき)にも(また)(ひと)つの神宝(しんぱう)あり。135(かなら)油断(ゆだん)なく……いざ(これ)より初陣(うひぢん)功名(こうみやう)(あら)はすべく出門(しゆつもん)()されよ』
136(つね)(かは)言葉(ことば)荘重(さうちよう)儼然(げんぜん)として()(つた)へた。137高姫(たかひめ)は、
138高姫『はい、139承知(しようち)(いた)しました。140(かなら)手柄(てがら)をしてお()にかけませう。141さア高子(たかこ)142宮子(みやこ)143(はは)についておぢや』
144(にしき)(そで)間風(まかぜ)にひるがへし、145シヨナ シヨナと身振(みぶ)りしながら(すそ)()ち、146高宮彦(たかみやひこ)(わか)れて長廊下(ながらうか)(つた)ひ、147玄関口(げんくわんぐち)より黄金(こがね)足駄(あしだ)穿(うが)ち、148浮木(うきき)(もり)()()(やぐら)(ふもと)をさして、149シヨナリ シヨナリと太夫(たいふ)行列(ぎやうれつ)よろしくにじり()く。
150 高姫(たかひめ)二人(ふたり)侍女(じぢよ)(とも)襠衣(うちかけ)()ぎ、151()()(やぐら)(した)()(しま)()き、152長柄(ながえ)(かご)(おのおの)(たづさ)へて、153(すみれ)蒲公英(たんぽぽ)余念(よねん)なき(てい)(よそほ)ひつつ()んでゐた。154さうして其処(そこ)()(ほこ)つてる寒椿(かんつばき)(はな)自然(しぜん)()つるのを(なが)めて、155(むかし)のアーメニヤ時代(じだい)(おも)()かべ、
 
156高姫『おだやかな
157 初春(はつはる)
158 小庭(こには)にしよんぼりと
159 乙女(をとめ)(くちびる)(やう)
160 (ちひ)さき寒椿(かんつばき)
161 (したた)るばかりの緑葉(りよくえう)
162 昨晩(ゆうべ)から(あめ)にぬれた
163 病人(びやうにん)(ごと)
164 椿(つばき)(はな)(かす)かに(ふる)
165 (わらは)(いま)
166 ()恋男(こひをとこ)
167 痛々(いたいた)しい姿(すがた)
168 (なや)まされつつ
169 (むかし)(いま)(うつ)して
170 (あへ)いで()るのだ
171 (なみだ)ぐましい気分(きぶん)
172 四辺(あたり)(ただよ)
173 わが(ちひ)さき(むね)(おそ)()
174 これの椿(つばき)(はな)
175 (われ)姿(すがた)
176 わが(こひ)(おも)ひに()て』
 
177()んな(こと)()つてスツカリ十八(じふはち)気分(きぶん)になり、178ありし(むかし)追懐(つゐくわい)して(その)ローマンスを(ゆめ)(ごと)(うか)べて椿(つばき)(はな)(おも)ひを()せてゐた。179()風波(ふうは)にもまれ、180あらゆる権謀(けんぼう)(ろう)し、181(おに)(ごと)荒男(あらをとこ)(へこ)ませ、182神人(しんじん)をなやませたる高姫(たかひめ)言葉(ことば)とは、183()(かんが)へても(おも)はれない(ほど)の、184あどけなき姿(すがた)になりきつて()た。185されど潜竜(せんりう)(ふち)(しづ)むと(いへど)も、186一度(ひとたび)風雲(ふううん)際会(さいくわい)すれば、187天地(てんち)震撼(しんかん)し、188黒雲(こくうん)()(おこ)し、189億兆(おくてう)無数(むすう)星晨(せいしん)黒雲(こくうん)(もと)()(つく)(ごと)執着心(しふちやくしん)(ほのほ)(ごと)弁舌(べんぜつ)は、190遺憾(ゐかん)なく高姫(たかひめ)老躯(らうく)より(ほとばし)るのが不思議(ふしぎ)である。191高姫(たかひめ)があどけなき姿(すがた)になり、192(しろ)()()して(こは)さうに蒲公英(たんぽぽ)()んでゐると、193そこへ蓑笠(みのかさ)()草鞋(わらぢ)脚絆(きやはん)旅装束(たびしやうぞく)194金剛杖(こんがうづゑ)左手(ゆんで)(にぎ)り、195宣伝歌(せんでんか)(うた)ひながら(すす)()二人(ふたり)(をとこ)があつた。
196(ランチ、片彦)(かみ)(おもて)(あら)はれて
197善神(ぜんしん)邪神(じやしん)立別(たてわ)ける
198(この)()(つく)(たま)ひたる
199国治立(くにはるたち)大神(おほかみ)
200天地(あめつち)(もも)神人(しんじん)
201(しこ)罪科(つみとが)一身(いつしん)
202引受(ひきう)(たま)天界(てんかい)
203天極(てんごく)紫微宮(しびきう)(あと)にして
204根底(ねそこ)(くに)()ちましぬ
205ああさりながら大神(おほかみ)
206仁慈(じんじ)無限(むげん)御心(みこころ)
207(この)()(すく)(たす)けむと
208千々(ちぢ)(こころ)(なや)ませつ
209(おん)()(へん)遠近(をちこち)
210彷徨(さまよ)世人(よびと)(まも)りつつ
211(もも)(なや)みを()にもせず
212(まも)らせ(たま)有難(ありがた)
213バラモン(けう)(つか)へたる
214(われ)はランチの将軍(しやうぐん)
215(われ)片彦(かたひこ)将軍(しやうぐん)
216大黒主(おほくろぬし)(めい)()
217斎苑(いそ)(やかた)()れませる
218(かむ)素盞嗚(すさのを)大神(おほかみ)
219打亡(うちほろ)ぼして()(なか)
220(まが)をば(はら)(きよ)めむと
221数多(あまた)軍勢(ぐんぜい)引率(ひきつ)れて
222隊伍(たいご)(ととの)堂々(だうだう)
223浮木(うきき)(もり)河鹿山(かじかやま)
224(すす)(きた)りし(をり)もあれ
225三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)
226神力(しんりき)無双(むさう)神人(しんじん)
227()きつけられて三五(あななひ)
228(まこと)(みち)相悟(あひさと)
229武装(ぶさう)()てて治国(はるくに)
230(わけ)(みこと)弟子(でし)となり
231クルスの(もり)やテームスの
232(たうげ)(なが)らく(あし)()
233天国(てんごく)浄土(じやうど)御教(みをしへ)
234聴聞(ちやうもん)なして人生(じんせい)
235(その)本分(ほんぶん)(さと)りしゆ
236(わが)信仰(しんかう)はいや(かた)
237仮令(たとへ)巨万(きよまん)黄金(わうごん)
238天女(てんによ)(あざむ)美人(びじん)にも
239(きたな)(こころ)(おこ)さざる
240勇猛心(ゆうまうしん)となりにけり
241これぞ(まつた)皇神(すめかみ)
242(われ)()(すく)(たま)はむと
243(くだ)(たま)へる仁愛(じんあい)
244(めぐ)みの(あめ)賜物(たまもの)
245ああ惟神(かむながら)々々(かむながら)
246御霊(みたま)幸倍(さちはへ)ましませよ
247(むか)ふの(もり)(なが)むれば
248印象(いんしやう)(ふか)浮木原(うききはら)
249数多(あまた)軍勢(ぐんぜい)引率(ひきつ)れて
250滞陣(たいぢん)したる馴染(なじみ)()
251(しばら)月日(つきひ)()るままに
252うつて(かは)りしあの様子(やうす)
253如何(いか)なる偉人(ゐじん)(あら)はれて
254かくも立派(りつぱ)都会(とくわい)をば
255(つく)りしものか、あら不思議(ふしぎ)
256雲表(うんぺう)(たか)くきらめくは
257大廈(たいか)高楼(かうらう)金銀(きんぎん)
258(いらか)(かがや)()(ひかり)
259合点(がてん)()かぬ(この)始末(しまつ)
260(なんぢ)片彦(かたひこ)宣伝使(せんでんし)
261()光景(くわうけい)(なん)()
262(いぶ)かしさよ』と(たづ)ぬれば
263片彦(かたひこ)(くび)をかたげつつ
264口許(くちもと)(おも)(こた)へらく
265(きみ)()らする(その)(ごと)
266()にも不思議(ふしぎ)光景(くわうけい)
267いざ(これ)よりは逸早(いちはや)
268(あし)(はや)めて実否(じつぴ)をば
269調(しら)べて()むか、如何(いか)にぞや』
270反問(はんもん)すればまたランチ
271如何(いか)にも(もつと)探険(たんけん)』と
272(みち)()きつつ(かた)()
273()()(やぐら)(ふもと)まで
274二本(にほん)(つゑ)()(たた)
275しづしづ此処(ここ)()きにけり。
276 ランチ、277片彦(かたひこ)両人(りやうにん)自分(じぶん)()(げつ)以前(いぜん)駐屯(ちゆうとん)してゐた(とき)(おもかげ)(けむり)(ごと)()え、278()()はれぬ立派(りつぱ)城廓(じやうくわく)市街(しがい)立並(たちなら)び、279()()(やぐら)金色(きんしよく)燦然(さんぜん)として四辺(しへん)(かがや)かして()る。280二人(ふたり)不思議(ふしぎ)さうに立止(たちど)まり、281()(まる)くしながら無言(むごん)(まま)282四辺(あたり)キヨロキヨロみつめて()る。283ランチは(やうや)(くち)(ひら)き、
284ランチ『いや片彦(かたひこ)殿(どの)285(なん)不思議(ふしぎ)では(ござ)らぬか。286拙者(せつしや)将軍(しやうぐん)として貴殿(きでん)(とも)陣屋(ぢんや)(かま)へし(おもかげ)はなく、287(ほとん)(せん)(ねん)(みやこ)(ごと)(この)壮大(さうだい)なる(かま)へ、288繁華(はんくわ)なる市街(しがい)櫛比(しつぴ)する有様(ありさま)289(ゆめ)(やう)には(ござ)らぬか』
290片彦成程(なるほど)291貴殿(きでん)(まを)さるる(とほ)(じつ)不思議(ふしぎ)千万(せんばん)(ござ)る。292もしか悪神(あくがみ)()悪企(わるだく)みでは(ござ)るまいかな。293如何(いか)なる神人(しんじん)(いへど)も、294かくの(ごと)事業(じげふ)短日月(たんじつげつ)完成(くわんせい)すべしとは(おも)ひも()らぬ。295さてもさても不思議(ふしぎ)(こと)よ。296いや、297(むか)ふの椿(つばき)()根元(ねもと)妙齢(めうれい)(をんな)(さん)(にん)298(はな)()んでゐる(やう)です。299()(をんな)(とら)へ、300(この)城内(じやうない)様子(やうす)(うかが)つて()ようではありませぬか』
301ランチ成程(なるほど)302それも(よろ)しからう』
303()ひながら(さん)(にん)乙女(をとめ)(はう)へと()(すす)めた。
304 四辺(あたり)(はる)めきて、305去年(きよねん)のかたみの枯草(かれくさ)(あひだ)から、306青草(あをくさ)芽霧(めぎり)(ほそ)(やはら)かく()びて()る。307小鳥(ことり)(こゑ)音楽(おんがく)(やう)四辺(あたり)(ひび)いて()た。
308大正一二・一・二六 旧一一・一二・一〇 北村隆光録)
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