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霊界物語
真善美愛(第49~60巻)
第51巻(寅の巻)
序文
総説
第1篇 霊光照魔
第1章 春の菊
第2章 怪獣策
第3章 犬馬の労
第4章 乞食劇
第5章 教唆
第6章 舞踏怪
第2篇 夢幻楼閣
第7章 曲輪玉
第8章 曲輪城
第9章 鷹宮殿
第10章 女異呆醜
第3篇 鷹魅艶態
第11章 乙女の遊
第12章 初花姫
第13章 槍襖
第14章 自惚鏡
第15章 餅の皮
第4篇 夢狸野狸
第16章 暗闘
第17章 狸相撲
第18章 糞奴使
第19章 偽強心
第20章 狸姫
第21章 夢物語
余白歌
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真善美愛(第49~60巻)
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第51巻(寅の巻)
> 第3篇 鷹魅艶態 > 第12章 初花姫
<<< 乙女の遊
(B)
(N)
槍襖 >>>
第一二章
初花姫
(
はつはなひめ
)
〔一三二七〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第51巻 真善美愛 寅の巻
篇:
第3篇 鷹魅艶態
よみ(新仮名遣い):
ようみえんたい
章:
第12章 初花姫
よみ(新仮名遣い):
はつはなひめ
通し章番号:
1327
口述日:
1923(大正12)年01月26日(旧12月10日)
口述場所:
筆録者:
加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年12月29日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
片彦とランチは三人の乙女に声をかけた。三人は花摘みに夢中のふりをして驚いて見せ、二人の姓名を問うた。片彦は、二人は元バラモン軍の将軍であったが、今は軍服を脱いで三五教の宣伝使となっていることを語った。
高姫は、自分は月の国のコーラン国の王女・初花姫だと名乗った。そして、コーラン国はにわかに国替えを行い、昼夜兼行で四か月ほどにてようやく城郭が出来上がったのだと説明した。さらに高姫は、自分の父王は斎苑の館の宣伝使・初稚姫によってにわかに三五教に改心し、初稚姫も今城内に逗留していると偽って、二人を城内に誘い込んだ。
ランチは、忽然としてこのような立派な城郭が、噂も立たずにできるのは魔神の仕業ではないかとなおも疑いの目を向けていた。高子と宮子は芝居を打って、ランチがコーラン国の王家を魔神だと決めつけたかのような流れにしてしまった。
高姫は、侍女がこのように恐れをなしたのはランチのせいだと言い立て、責任をもって城内に自分たちを送るようにと二人を促した。ランチと片彦は、城内にいるというコーラン国王や初稚姫が本物かどうか調査するのも無駄ではないと決心し、一同は連れだって城の奥に進んで行った。
一同は麗しい門をいくつもくぐり、ようやく玄関口にたどり着いた。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2023-09-06 17:55:41
OBC :
rm5112
愛善世界社版:
175頁
八幡書店版:
第9輯 328頁
修補版:
校定版:
180頁
普及版:
79頁
初版:
ページ備考:
001
片彦
(
かたひこ
)
は
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
乙女
(
をとめ
)
に
向
(
むか
)
つて
言葉
(
ことば
)
優
(
やさ
)
しく、
002
片彦
『もし、
003
それなる
嬢様
(
ぢやうさま
)
達
(
たち
)
、
004
一寸
(
ちよつと
)
お
尋
(
たづ
)
ね
致
(
いた
)
しますが、
005
向
(
むか
)
ふに
見
(
み
)
えるあの
立派
(
りつぱ
)
な
城廓
(
じやうくわく
)
は、
006
何時
(
いつ
)
頃
(
ごろ
)
に
出来上
(
できあが
)
つたのですか』
007
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
女
(
をんな
)
は
些
(
すこ
)
しも
聞
(
きこ
)
えぬやうなふりをして、
008
頻
(
しき
)
りに
花
(
はな
)
を
摘
(
つ
)
んで
居
(
ゐ
)
る。
009
片彦
(
かたひこ
)
は
益々
(
ますます
)
傍
(
そば
)
に
寄
(
よ
)
つて、
010
一層
(
いつそう
)
声
(
こゑ
)
高
(
たか
)
く、
011
片彦
『お
嬢
(
ぢやう
)
さま、
012
一寸
(
ちよつと
)
物
(
もの
)
を
伺
(
うかが
)
ひます』
013
此
(
この
)
声
(
こゑ
)
に
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
驚
(
おどろ
)
いたやうな
顔
(
かほ
)
で、
014
片彦
(
かたひこ
)
、
015
ランチ
両人
(
りやうにん
)
の
顔
(
かほ
)
を
打
(
う
)
ち
守
(
まも
)
つた。
016
さうして
高姫
(
たかひめ
)
は、
017
高姫
『アヽ
吃驚
(
びつくり
)
したよ。
018
貴方
(
あなた
)
どこのお
方
(
かた
)
ですか』
019
片彦
(
かたひこ
)
『
拙者
(
せつしや
)
は
四
(
し
)
ケ
月
(
げつ
)
以前
(
いぜん
)
に
此
(
この
)
浮木
(
うきき
)
の
森
(
もり
)
にバラモン
軍
(
ぐん
)
を
引率
(
いんそつ
)
し、
020
滞陣
(
たいじん
)
して
居
(
ゐ
)
た
片彦
(
かたひこ
)
将軍
(
しやうぐん
)
の
成
(
な
)
れの
果
(
はて
)
で
厶
(
ござ
)
る。
021
此処
(
ここ
)
に
居
(
ゐ
)
られるのは
吾々
(
われわれ
)
の
上官
(
じやうくわん
)
ランチ
将軍
(
しやうぐん
)
で
厶
(
ござ
)
る。
022
此
(
この
)
方
(
かた
)
も
拙者
(
せつしや
)
と
同
(
おな
)
じく
軍服
(
ぐんぷく
)
を
脱
(
ぬ
)
ぎ
捨
(
す
)
て、
023
今
(
いま
)
は
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
で
厶
(
ござ
)
る』
024
高姫
(
たかひめ
)
は、
025
花
(
はな
)
の
唇
(
くちびる
)
をパツと
開
(
ひら
)
き、
026
媚
(
こ
)
びを
呈
(
てい
)
し
艶
(
なまめ
)
かしい
声
(
こゑ
)
で、
027
高姫
『アヽ、
028
左様
(
さやう
)
で
厶
(
ござ
)
いますか、
029
それは
尊
(
たふと
)
い
貴方
(
あなた
)
はお
役柄
(
やくがら
)
、
030
妾
(
わらは
)
は
如意王
(
によいわう
)
の
娘
(
むすめ
)
、
031
初花姫
(
はつはなひめ
)
と
申
(
まを
)
します』
032
片彦
(
かたひこ
)
『ハテ
不思議
(
ふしぎ
)
な
事
(
こと
)
も
厶
(
ござ
)
るものだ。
033
如意王
(
によいわう
)
様
(
さま
)
とは
月
(
つき
)
の
国
(
くに
)
コーラン
国
(
ごく
)
の
刹帝利
(
せつていり
)
様
(
さま
)
では
厶
(
ござ
)
りませぬか』
034
高姫
『ハイ、
035
左様
(
さやう
)
で
厶
(
ござ
)
います。
036
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
は
父
(
ちち
)
と
共
(
とも
)
に
数多
(
あまた
)
の
家来
(
けらい
)
を
引連
(
ひきつ
)
れ、
037
此方
(
こなた
)
に
国替
(
くにがへ
)
を
致
(
いた
)
しまして、
038
昼夜
(
ちうや
)
兼行
(
けんかう
)
で
漸
(
やうや
)
く
城廓
(
じやうくわく
)
が
建
(
た
)
ち
上
(
あが
)
つた
所
(
ところ
)
で
厶
(
ござ
)
ります』
039
片彦
『ハテ、
040
何
(
なん
)
と
不思議
(
ふしぎ
)
な
事
(
こと
)
だなア。
041
何程
(
なにほど
)
富貴
(
ふうき
)
なお
方
(
かた
)
でも、
042
斯様
(
かやう
)
な
短
(
たん
)
日月
(
じつげつ
)
間
(
かん
)
にかかる
城廓
(
じやうくわく
)
が
建
(
た
)
ち
上
(
あが
)
るとは、
043
ランチ
殿
(
どの
)
、
044
何
(
なん
)
と
不思議
(
ふしぎ
)
では
厶
(
ござ
)
らぬか』
045
ランチ『
如何
(
いか
)
にも
不思議
(
ふしぎ
)
千万
(
せんばん
)
で
厶
(
ござ
)
る』
046
高姫
『オホホホホホ、
047
あのまア、
048
あのお
二人
(
ふたり
)
様
(
さま
)
の
不思議
(
ふしぎ
)
さうなお
顔
(
かほ
)
……
吾
(
わが
)
父
(
ちち
)
如意王
(
によいわう
)
はコーラン
国
(
ごく
)
より
四
(
し
)
ケ
月
(
げつ
)
以前
(
いぜん
)
に
参
(
まゐ
)
りまして、
049
数万
(
すうまん
)
の
部下
(
ぶか
)
に
命
(
めい
)
じ、
050
漸
(
やうや
)
くこの
通
(
とほ
)
り
完成
(
くわんせい
)
致
(
いた
)
した
処
(
ところ
)
で
厶
(
ござ
)
ります。
051
吾
(
わが
)
父
(
ちち
)
は
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
を
所持
(
しよぢ
)
して
居
(
を
)
りますれば、
052
如何
(
いか
)
なる
事
(
こと
)
でも
出来
(
でき
)
ます。
053
さうして
貴方
(
あなた
)
は
今
(
いま
)
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
と
仰
(
おほ
)
せになりましたが、
054
私
(
わたし
)
の
父
(
ちち
)
も
俄
(
にはか
)
に
三五教
(
あななひけう
)
に
入信
(
にふしん
)
致
(
いた
)
しまして、
055
斎苑
(
いそ
)
の
館
(
やかた
)
からお
出
(
い
)
での
初稚姫
(
はつわかひめ
)
様
(
さま
)
を
御
(
ご
)
招待
(
せうたい
)
申
(
まを
)
し、
056
今
(
いま
)
奥
(
おく
)
に
御
(
ご
)
逗留
(
とうりう
)
で
厶
(
ござ
)
います。
057
何
(
ど
)
うかお
立寄
(
たちより
)
を
願
(
ねが
)
ひますれば
父
(
ちち
)
も
喜
(
よろこ
)
ぶ
事
(
こと
)
で
厶
(
ござ
)
いませう』
058
片彦
(
かたひこ
)
『
何
(
なん
)
と
仰
(
おほ
)
せられますか、
059
初稚姫
(
はつわかひめ
)
様
(
さま
)
が
此
(
この
)
御
(
ご
)
城内
(
じやうない
)
に
御
(
ご
)
逗留
(
とうりう
)
とは、
060
そりや
何時
(
いつ
)
からの
事
(
こと
)
で
厶
(
ござ
)
います』
061
高姫
『ハイ、
062
二三
(
にさん
)
日
(
にち
)
以前
(
いぜん
)
斎苑
(
いそ
)
の
館
(
やかた
)
から
祠
(
ほこら
)
の
森
(
もり
)
とやらに
御
(
ご
)
出張
(
しゆつちやう
)
になり、
063
それから
此
(
この
)
曲輪城
(
まがわじやう
)
をお
訪
(
たづ
)
ねになり、
064
吾
(
わが
)
両親
(
りやうしん
)
は
尊
(
たふと
)
きお
話
(
はなし
)
を
承
(
うけたま
)
はり、
065
今
(
いま
)
は
全
(
まつた
)
く
三五教
(
あななひけう
)
の
信者
(
しんじや
)
になりました。
066
初稚姫
(
はつわかひめ
)
様
(
さま
)
のお
言葉
(
ことば
)
には、
067
やがて
片彦
(
かたひこ
)
、
068
ランチと
云
(
い
)
ふ
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
がお
通
(
とほ
)
りになるであらうとのお
言葉
(
ことば
)
に、
069
かうして
二人
(
ふたり
)
の
侍女
(
こしもと
)
をつれ、
070
花
(
はな
)
を
摘
(
つ
)
みながら、
071
もしお
二人
(
ふたり
)
様
(
さま
)
がお
出
(
い
)
でになれば、
072
お
迎
(
むか
)
へ
申
(
まを
)
したいと
最前
(
さいぜん
)
から
此処
(
ここ
)
に
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
ました。
073
何卒
(
どうぞ
)
一寸
(
ちよつと
)
お
立寄
(
たちより
)
をお
願
(
ねが
)
ひ
申
(
まを
)
す
訳
(
わけ
)
には
参
(
まゐ
)
りますまいかなア』
074
片彦
(
かたひこ
)
は
少
(
すこ
)
しく
首
(
くび
)
を
傾
(
かた
)
げながら、
075
ランチに
向
(
むか
)
ひ、
076
片彦
『ランチ
殿
(
どの
)
、
077
貴殿
(
きでん
)
のお
考
(
かんが
)
へは
如何
(
いかが
)
で
厶
(
ござ
)
りますか。
078
初稚姫
(
はつわかひめ
)
様
(
さま
)
が
御
(
ご
)
逗留
(
とうりう
)
と
云
(
い
)
ひ、
079
斯
(
か
)
かる
麗
(
うるは
)
しき
乙女
(
をとめ
)
と
云
(
い
)
ひ、
080
いやもう
吾々
(
われわれ
)
は
一向
(
いつかう
)
合点
(
がてん
)
が
参
(
まゐ
)
りませぬ』
081
ランチ
『
成程
(
なるほど
)
、
082
拙者
(
せつしや
)
も
何
(
ど
)
うも
不思議
(
ふしぎ
)
で
厶
(
ござ
)
る。
083
斯
(
か
)
くも
立派
(
りつぱ
)
な
普請
(
ふしん
)
が
出来
(
でき
)
る
以上
(
いじやう
)
は、
084
少
(
すこ
)
しは
噂
(
うはさ
)
位
(
ぐらゐ
)
はありさうなもので
厶
(
ござ
)
るのに、
085
忽然
(
こつぜん
)
としてかかる
蜃気楼
(
しんきろう
)
的
(
てき
)
城廓
(
じやうくわく
)
が
出来
(
でき
)
るとは、
086
察
(
さつ
)
する
所
(
ところ
)
魔神
(
まがみ
)
の
仕様
(
しわざ
)
では
厶
(
ござ
)
いますまいかな』
087
高子
(
たかこ
)
はランチの
傍
(
そば
)
に
寄
(
よ
)
り、
088
高子
『モシ
小父
(
をぢ
)
さま、
089
魔神
(
まがみ
)
とは
如何
(
いか
)
なるもので
厶
(
ござ
)
りますか、
090
どうぞ
教
(
をし
)
へて
下
(
くだ
)
さいな』
091
ランチ
『ハハハハハ、
092
教
(
をし
)
へて
上
(
あ
)
げませう、
093
魔神
(
まがみ
)
と
申
(
まを
)
せば
悪魔
(
あくま
)
の
事
(
こと
)
です』
094
高子
『
貴方
(
あなた
)
は
此
(
この
)
立派
(
りつぱ
)
なお
屋敷
(
やしき
)
を、
095
さうすると
悪魔
(
あくま
)
の
住家
(
すみか
)
と
思
(
おも
)
うておいでになりますか。
096
それなら
妾
(
わらは
)
は
悪魔
(
あくま
)
の
虜
(
とりこ
)
になつて、
097
斯様
(
かやう
)
な
所
(
ところ
)
へ
連
(
つ
)
れて
来
(
こ
)
られたのでせうかなア』
098
宮子
(
みやこ
)
『
姉
(
ねえ
)
さま、
099
それなら
私
(
わたし
)
も
魔神
(
まがみ
)
とやらに
矢張
(
やつぱり
)
使
(
つか
)
はれて
居
(
ゐ
)
るのだわ。
100
もし
初花姫
(
はつはなひめ
)
様
(
さま
)
、
101
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
姉妹
(
きやうだい
)
に
何卒
(
どうぞ
)
お
暇
(
ひま
)
を
下
(
くだ
)
さいませ』
102
と
怖
(
こは
)
さうな
風
(
ふう
)
をして
慄
(
ふる
)
へながら
泣
(
な
)
く。
103
高姫
(
たかひめ
)
『これこれ
高子
(
たかこ
)
、
104
宮子
(
みやこ
)
、
105
畏
(
おそ
)
れ
多
(
おほ
)
くも
如意王
(
によいわう
)
様
(
さま
)
の
妾
(
わらは
)
は
娘
(
むすめ
)
、
106
左様
(
さやう
)
な
事
(
こと
)
を
申
(
まを
)
すと
承知
(
しようち
)
致
(
いた
)
しませぬぞや。
107
コーラン
国
(
ごく
)
の
刹帝利
(
せつていり
)
様
(
さま
)
のお
館
(
やかた
)
をさして、
108
魔神
(
まがみ
)
の
城
(
しろ
)
とは
以
(
もつ
)
ての
外
(
ほか
)
の
事
(
こと
)
、
109
も
一度
(
いちど
)
そんな
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
うて
御覧
(
ごらん
)
、
110
決
(
けつ
)
して
許
(
ゆる
)
しはしませぬぞや』
111
高子
(
たかこ
)
『それでも
嬢様
(
ぢやうさま
)
、
112
あの
小父
(
をぢ
)
さまが
魔神
(
まがみ
)
の
仕業
(
しわざ
)
と
仰有
(
おつしや
)
いました。
113
妾
(
わらは
)
姉妹
(
きやうだい
)
はそれを
聞
(
き
)
くと、
114
何
(
なん
)
だか
怖
(
おそ
)
ろしくなりました。
115
何卒
(
どうぞ
)
此処
(
ここ
)
でお
暇
(
ひま
)
を
下
(
くだ
)
さいませ。
116
さうして
妾
(
わらは
)
のお
友達
(
ともだち
)
がまだ
十
(
じふ
)
人
(
にん
)
ばかり
御
(
ご
)
厄介
(
やくかい
)
になつて
居
(
ゐ
)
ますが、
117
皆
(
みんな
)
許
(
ゆる
)
してやつて
下
(
くだ
)
さい、
118
お
願
(
ねが
)
ひ
致
(
いた
)
します』
119
宮子
(
みやこ
)
は
又
(
また
)
涙
(
なみだ
)
を
袖
(
そで
)
にぬぐひながら、
120
宮子
『もしお
嬢様
(
ぢやうさま
)
、
121
お
願
(
ねが
)
ひで
厶
(
ござ
)
います、
122
妾
(
わらは
)
は
仮令
(
たとへ
)
殺
(
ころ
)
されても
厭
(
いと
)
ひませぬが、
123
十
(
じふ
)
人
(
にん
)
の
友達
(
ともだち
)
を
何卒
(
どうぞ
)
助
(
たす
)
けて
下
(
くだ
)
さいませ。
124
其
(
その
)
代
(
かは
)
り
妾
(
わらは
)
は
此処
(
ここ
)
で
喉
(
のど
)
をついて
死
(
し
)
にます。
125
ああ
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
』
126
と
云
(
い
)
ふより
早
(
はや
)
く、
127
懐
(
ふところ
)
の
懐剣
(
くわいけん
)
を
抜
(
ぬ
)
いて
喉
(
のど
)
に
突
(
つ
)
き
立
(
た
)
てむとす。
128
高姫
(
たかひめ
)
は
慌
(
あわ
)
てて
飛
(
と
)
びつき
懐剣
(
くわいけん
)
をもぎ
取
(
と
)
り、
129
腹立
(
はらだ
)
たしげに、
130
高姫
『これ
宮子
(
みやこ
)
、
131
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ふ
不心得
(
ふこころえ
)
の
事
(
こと
)
をなさるのだ。
132
もし
旅
(
たび
)
の
方
(
かた
)
、
133
貴方
(
あなた
)
等
(
がた
)
が
何
(
なん
)
でもない
事
(
こと
)
を
仰有
(
おつしや
)
るものですから、
134
初花姫
(
はつはなひめ
)
の
迷惑
(
めいわく
)
、
135
どうか
二人
(
ふたり
)
の
侍女
(
こしもと
)
を
諭
(
さと
)
して
下
(
くだ
)
さいませ』
136
ランチ『イヤ、
137
お
子供衆
(
こどもしう
)
の
前
(
まへ
)
で
不謹慎
(
ふきんしん
)
な
事
(
こと
)
を
申
(
まを
)
しまして、
138
実
(
じつ
)
に
申訳
(
まをしわけ
)
が
厶
(
ござ
)
いませぬ。
139
これこれ
侍女殿
(
こしもとどの
)
、
140
決
(
けつ
)
して
私
(
わたし
)
の
云
(
い
)
うた
事
(
こと
)
を
真
(
ま
)
に
受
(
う
)
けて
貰
(
もら
)
つては
困
(
こま
)
ります。
141
あまり
立派
(
りつぱ
)
なから、
142
曲神
(
まがかみ
)
の
仕業
(
しわざ
)
ぢやあるまいかと
云
(
い
)
つただけです。
143
決
(
けつ
)
して
曲神
(
まがかみ
)
の
仕業
(
しわざ
)
であるとは
申
(
まを
)
しませぬ、
144
さう
早合点
(
はやがてん
)
しては
困
(
こま
)
ります』
145
宮子
(
みやこ
)
『いやいや
何
(
なん
)
と
仰有
(
おつしや
)
つても
貴方
(
あなた
)
の
仰有
(
おつしや
)
つた
事
(
こと
)
は
真実
(
ほんと
)
で
厶
(
ござ
)
います。
146
そんな
気休
(
きやす
)
めを
云
(
い
)
はずと、
147
何卒
(
どうぞ
)
死
(
し
)
なして
下
(
くだ
)
さいませ。
148
繊弱
(
かよわ
)
き
女
(
をんな
)
の
身
(
み
)
をもつて
曲神
(
まがかみ
)
の
擒
(
とりこ
)
で
居
(
を
)
らうより、
149
死
(
し
)
んだ
方
(
はう
)
が
増
(
まし
)
で
厶
(
ござ
)
ります』
150
と
泣
(
な
)
き
倒
(
たふ
)
れる。
151
片彦
(
かたひこ
)
は
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
で
堪
(
たま
)
らず、
152
傍
(
そば
)
へ
寄
(
よ
)
つて
宮子
(
みやこ
)
をなだめるやうに、
153
片彦
『もしお
嬢
(
ぢやう
)
さま、
154
どうも
済
(
す
)
みませなんだ。
155
皆
(
みな
)
嘘
(
うそ
)
ですから、
156
何卒
(
どうぞ
)
気
(
き
)
にかけて
下
(
くだ
)
さいますな』
157
宮子
『イエイエ
何
(
なん
)
と
仰有
(
おつしや
)
つても
貴方
(
あなた
)
の
気休
(
きやす
)
めと
思
(
おも
)
ひます。
158
よう
云
(
い
)
うて
下
(
くだ
)
さつた、
159
曲神
(
まがかみ
)
の
業
(
わざ
)
に
違
(
ちが
)
ひありませぬ、
160
サア
高子
(
たかこ
)
さま、
161
早
(
はや
)
く
逃
(
に
)
げませう』
162
と
早
(
はや
)
駆
(
か
)
け
出
(
だ
)
しさうにする。
163
高姫
(
たかひめ
)
『これ
高子
(
たかこ
)
、
164
宮子
(
みやこ
)
、
165
なんぼ
逃
(
に
)
げてもお
父
(
とう
)
さまが
馬
(
うま
)
で
追
(
お
)
つかけさせるから、
166
駄目
(
だめ
)
ですよ。
167
そんな
小父
(
をぢ
)
さまの
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
など
聞
(
き
)
かずに、
168
妾
(
わらは
)
と
一緒
(
いつしよ
)
に
帰
(
かへ
)
りませう。
169
お
前
(
まへ
)
は
主人
(
しゆじん
)
の
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
を
聞
(
き
)
きませぬか』
170
と
極
(
き
)
めつける。
171
高子
(
たかこ
)
は
涙
(
なみだ
)
を
袖
(
そで
)
に
拭
(
ぬぐ
)
ひながら、
172
高子
『
初稚姫
(
はつわかひめ
)
様
(
さま
)
のお
言葉
(
ことば
)
に……
宣伝使
(
せんでんし
)
は
決
(
けつ
)
して
嘘
(
うそ
)
や
偽
(
いつは
)
りは
云
(
い
)
はぬものだ……と
仰有
(
おつしや
)
いました。
173
このお
方
(
かた
)
は
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
、
174
どうして
嘘
(
うそ
)
など
仰有
(
おつしや
)
りませう、
175
妾
(
わらは
)
はどうしても
初
(
はじめ
)
のお
言葉
(
ことば
)
を
信
(
しん
)
じます』
176
片彦
(
かたひこ
)
『ああ
困
(
こま
)
つたことだなア、
177
どうしたらよからうか』
178
高子
『
何卒
(
どうぞ
)
小父
(
をぢ
)
さま、
179
一遍
(
いつぺん
)
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さい。
180
そして
果
(
はた
)
して
魔神
(
まがみ
)
の
館
(
やかた
)
なら、
181
何卒
(
どうぞ
)
妾
(
わらは
)
を
連
(
つ
)
れて
逃
(
に
)
げて
下
(
くだ
)
さい。
182
妾
(
わらは
)
のお
友達
(
ともだち
)
も
十
(
じふ
)
人
(
にん
)
許
(
ばか
)
り
来
(
き
)
て
居
(
ゐ
)
ますから』
183
高姫
(
たかひめ
)
『
貴方
(
あなた
)
は
元
(
もと
)
は
将軍
(
しやうぐん
)
で、
184
今
(
いま
)
は
立派
(
りつぱ
)
な
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
と
仰有
(
おつしや
)
つたぢやありませぬか。
185
それに
妾
(
わらは
)
の
迷惑
(
めいわく
)
になるやうな
事
(
こと
)
を
仰有
(
おつしや
)
つて、
186
それで
貴方
(
あなた
)
の
勤
(
つと
)
めがすみますか』
187
片彦
(
かたひこ
)
、
188
ランチ
両人
(
りやうにん
)
は
芝生
(
しばふ
)
の
上
(
うへ
)
に
手
(
て
)
をついて、
189
片彦、ランチ
『イヤ
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
、
190
誠
(
まこと
)
に
失礼
(
しつれい
)
を
致
(
いた
)
しました。
191
何卒
(
どうぞ
)
見直
(
みなほ
)
し
聞直
(
ききなほ
)
しを
願
(
ねが
)
ひます』
192
高姫
『
妾
(
わらは
)
は
初花姫
(
はつはなひめ
)
と
申
(
まを
)
すもの、
193
初稚姫
(
はつわかひめ
)
様
(
さま
)
とよく
似
(
に
)
た
名
(
な
)
で
厶
(
ござ
)
ります。
194
承
(
うけたま
)
はれば
霊
(
みたま
)
の
姉妹
(
きやうだい
)
だと
仰有
(
おつしや
)
いました。
195
サア
何卒
(
どうぞ
)
城内
(
じやうない
)
に
一度
(
いちど
)
宣伝
(
せんでん
)
の
為
(
ため
)
お
出
(
い
)
で
下
(
くだ
)
さいますまいかなア』
196
片彦
(
かたひこ
)
『ランチ
殿
(
どの
)
、
197
如何
(
いかが
)
致
(
いた
)
しませうか、
198
初稚姫
(
はつわかひめ
)
様
(
さま
)
が
御
(
ご
)
逗留
(
とうりう
)
とあれば、
199
お
目
(
め
)
にかかつて
置
(
お
)
くも
結構
(
けつこう
)
ぢやありませぬか』
200
ランチ
『
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
うても、
201
治国別
(
はるくにわけ
)
様
(
さま
)
が
道寄
(
みちより
)
をしてはならぬと
仰有
(
おつしや
)
つた
以上
(
いじやう
)
、
202
何事
(
なにごと
)
があつても
道寄
(
みちより
)
はなりますまい』
203
高姫
(
たかひめ
)
『モシ、
204
ランチ
様
(
さま
)
とやら、
205
侍女
(
こしもと
)
二人
(
ふたり
)
がこの
通
(
とほ
)
り
逃
(
に
)
げると
云
(
い
)
ひます。
206
妾
(
わらは
)
は
何
(
ど
)
うして
一人
(
ひとり
)
で
城内
(
じやうない
)
に
帰
(
かへ
)
れませう。
207
何卒
(
どうぞ
)
お
二人
(
ふたり
)
で
送
(
おく
)
つて
下
(
くだ
)
さいますまいか。
208
これと
申
(
まを
)
すも、
209
皆
(
みな
)
貴方
(
あなた
)
等
(
がた
)
から
起
(
おこ
)
つた
事
(
こと
)
、
210
宣伝使
(
せんでんし
)
の
職責
(
しよくせき
)
を
重
(
おも
)
んじて、
211
邪
(
じや
)
が
非
(
ひ
)
でもお
願
(
ねが
)
ひ
申
(
まを
)
します』
212
片彦
『ランチ
殿
(
どの
)
、
213
年
(
とし
)
にも
似合
(
にあ
)
はぬ
偉
(
えら
)
い
理窟
(
りくつ
)
をかますぢやないか、
214
驚
(
おどろ
)
いたなア』
215
ランチ
『
驚
(
おどろ
)
いたなア、
216
こりやうつかりしては
居
(
ゐ
)
られますまい。
217
併
(
しか
)
し
本当
(
ほんたう
)
の
初稚姫
(
はつわかひめ
)
様
(
さま
)
、
218
如意王
(
によいわう
)
か、
219
但
(
ただし
)
は
曲
(
まが
)
か、
220
調査
(
てうさ
)
するのも
強
(
あなが
)
ち
無駄
(
むだ
)
ではありますまい。
221
一層
(
いつそう
)
此
(
この
)
初花姫
(
はつはなひめ
)
の
言葉
(
ことば
)
に
従
(
したが
)
ひ、
222
城内
(
じやうない
)
を
探
(
さぐ
)
つて
見
(
み
)
ませうか』
223
片彦
『サア、
224
さう
致
(
いた
)
しませう』
225
と
二人
(
ふたり
)
は
茲
(
ここ
)
に
決心
(
けつしん
)
し、
226
口
(
くち
)
を
揃
(
そろ
)
へて
両人
(
りやうにん
)
は、
227
ランチ、片彦
『イヤお
供
(
とも
)
致
(
いた
)
しませう、
228
お
世話
(
せわ
)
に
預
(
あづか
)
りませう』
229
高姫
『それは
早速
(
さつそく
)
のお
聞
(
き
)
きずみ、
230
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
います。
231
初稚姫
(
はつわかひめ
)
は
申
(
まを
)
すに
及
(
およ
)
ばず、
232
父母
(
ふぼ
)
も
嘸
(
さぞ
)
喜
(
よろこ
)
びますで
厶
(
ござ
)
いませう。
233
サア
高子
(
たかこ
)
、
234
宮子
(
みやこ
)
、
235
もう
心配
(
しんぱい
)
には
及
(
およ
)
びませぬ。
236
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
が
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さいますから』
237
高子
(
たかこ
)
、
238
宮子
(
みやこ
)
はやつと
機嫌
(
きげん
)
を
直
(
なほ
)
し、
239
二男
(
になん
)
三女
(
さんぢよ
)
は
連
(
つ
)
れ
立
(
だ
)
つて、
240
金銀
(
きんぎん
)
珠玉
(
しゆぎよく
)
を
鏤
(
ちりば
)
めたる
楼門
(
ろうもん
)
を
潜
(
くぐ
)
り
奥
(
おく
)
へ
奥
(
おく
)
へと
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
る。
241
高姫
(
たかひめ
)
は
道々
(
みちみち
)
歌
(
うた
)
ふ。
242
高姫
『
七千
(
しちせん
)
余国
(
よこく
)
の
月
(
つき
)
の
国
(
くに
)
243
中
(
なか
)
にも
別
(
わ
)
けてコーランの
244
国
(
くに
)
の
王
(
こきし
)
とあれませる
245
妾
(
わらは
)
は
如意王
(
によいわう
)
の
子
(
こ
)
と
生
(
うま
)
れ
246
恋
(
こひ
)
しき
国
(
くに
)
を
立出
(
たちい
)
でて
247
はるばる
此処
(
ここ
)
に
引
(
ひ
)
き
移
(
うつ
)
り
248
十二
(
じふに
)
の
侍女
(
じぢよ
)
を
従
(
したが
)
へて
249
何
(
なん
)
の
不自由
(
ふじゆう
)
もなけれども
250
山河
(
さんか
)
風土
(
ふうど
)
の
変
(
かは
)
りたる
251
これの
都
(
みやこ
)
は
何
(
なん
)
となく
252
物淋
(
ものさび
)
しくぞ
思
(
おも
)
はれぬ
253
ウラルの
教
(
をしへ
)
を
守
(
まも
)
りたる
254
父
(
ちち
)
と
母
(
はは
)
とはバラモンの
255
神
(
かみ
)
の
軍
(
いくさ
)
に
降服
(
かうふく
)
し
256
コーラン
国
(
ごく
)
を
打
(
う
)
ち
捨
(
す
)
てて
257
漸
(
やうや
)
く
此処
(
ここ
)
に
逃
(
のが
)
れまし
258
安全
(
あんぜん
)
地帯
(
ちたい
)
に
都
(
みやこ
)
をば
259
造
(
つく
)
りて
永久
(
とは
)
の
住処
(
すみか
)
ぞと
260
定
(
さだ
)
め
玉
(
たま
)
ひし
尊
(
たふと
)
さよ
261
城
(
しろ
)
の
普請
(
ふしん
)
も
漸
(
やうや
)
くに
262
夜
(
よ
)
に
日
(
ひ
)
をついで
竣工
(
しゆんこう
)
し
263
いづれの
神
(
かみ
)
を
祀
(
まつ
)
らむと
264
考
(
かんが
)
へ
居
(
ゐ
)
ます
折
(
をり
)
もあれ
265
瑞
(
みづ
)
の
御霊
(
みたま
)
の
御教
(
みをしへ
)
を
266
四方
(
よも
)
に
伝
(
つた
)
ふる
宣伝使
(
せんでんし
)
267
初稚姫
(
はつわかひめ
)
が
現
(
あら
)
はれて
268
父
(
ちち
)
と
母
(
はは
)
とを
初
(
はじ
)
めとし
269
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
一同
(
いちどう
)
を
神国
(
かみくに
)
の
270
花
(
はな
)
咲
(
さ
)
く
園
(
その
)
に
誘
(
いざな
)
ひて
271
天国
(
てんごく
)
浄土
(
じやうど
)
の
楽
(
たのし
)
みを
272
諭
(
さと
)
したまひし
有難
(
ありがた
)
さ
273
父
(
ちち
)
と
母
(
はは
)
とは
勇
(
いさ
)
み
立
(
た
)
ち
274
名
(
な
)
さへ
目出度
(
めでた
)
き
三五
(
あななひ
)
の
275
教
(
をしへ
)
の
道
(
みち
)
に
帰順
(
きじゆん
)
して
276
朝
(
あさ
)
な
夕
(
ゆふ
)
なに
太祝詞
(
ふとのりと
)
277
上
(
あ
)
げさせ
給
(
たま
)
ふ
健気
(
けなげ
)
さよ
278
妾
(
わらは
)
は
未
(
いま
)
だ
十八
(
じふはち
)
の
279
蕾
(
つぼみ
)
の
花
(
はな
)
の
初心娘
(
うぶむすめ
)
280
二人
(
ふたり
)
の
侍女
(
じぢよ
)
を
引
(
ひ
)
き
連
(
つ
)
れて
281
春野
(
はるの
)
の
蝶
(
てふ
)
に
憧憬
(
あこが
)
れつ
282
菫
(
すみれ
)
タンポポ
摘
(
つ
)
まむとて
283
いつとはなしに
門外
(
もんぐわい
)
に
284
歩
(
あゆ
)
みを
運
(
はこ
)
び
湯津蔓
(
ゆづかづら
)
285
椿
(
つばき
)
の
下
(
もと
)
に
遊
(
あそ
)
ぶ
折
(
をり
)
286
遥
(
はるか
)
に
聞
(
きこ
)
ゆる
宣伝歌
(
せんでんか
)
287
よくよく
耳
(
みみ
)
を
澄
(
す
)
ますうち
288
初稚姫
(
はつわかひめ
)
の
宣
(
の
)
りたまふ
289
御歌
(
みうた
)
の
心
(
こころ
)
によく
似
(
に
)
たり
290
これぞ
全
(
まつた
)
く
三五
(
あななひ
)
の
291
教司
(
をしへつかさ
)
にますならむ
292
なぞと
心
(
こころ
)
を
動
(
うご
)
かしつ
293
花
(
はな
)
を
頻
(
しきり
)
に
摘
(
つ
)
み
居
(
を
)
れば
294
忽
(
たちま
)
ち
聞
(
きこ
)
ゆる
太
(
ふと
)
い
声
(
こゑ
)
295
頭
(
かしら
)
を
上
(
あ
)
げて
眺
(
なが
)
むれば
296
見
(
み
)
るも
凛々
(
りり
)
しき
宣伝使
(
せんでんし
)
297
妾
(
わらは
)
が
乞
(
こ
)
ひを
容
(
い
)
れたまひ
298
父
(
ちち
)
の
命
(
みこと
)
に
面会
(
めんくわい
)
し
299
初稚姫
(
はつわかひめ
)
の
御
(
おん
)
前
(
まへ
)
を
300
訪
(
たず
)
ねやらむと
宣
(
の
)
りたまふ
301
其
(
その
)
御
(
お
)
言葉
(
ことば
)
を
聞
(
き
)
くにつけ
302
天
(
てん
)
にも
昇
(
のぼ
)
る
心地
(
ここち
)
して
303
手
(
て
)
は
舞
(
ま
)
ひ
足
(
あし
)
は
自
(
おのづか
)
ら
304
踊
(
をど
)
るが
如
(
ごと
)
く
進
(
すす
)
むなり
305
春野
(
はるの
)
に
遊
(
あそ
)
ぶ
蝶
(
てふ
)
の
舞
(
まひ
)
306
花
(
はな
)
に
寄
(
よ
)
りくる
蜜蜂
(
みつばち
)
の
307
剣
(
けん
)
を
捨
(
す
)
てたる
宣伝使
(
せんでんし
)
308
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
三人
(
みたり
)
を
慇懃
(
いんぎん
)
に
309
送
(
おく
)
らせ
給
(
たま
)
ふ
嬉
(
うれ
)
しさよ
310
ああ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
311
尊
(
たふと
)
き
神
(
かみ
)
の
御
(
おん
)
恵
(
めぐみ
)
312
謹
(
つつし
)
み
感謝
(
かんしや
)
し
奉
(
たてまつ
)
る
313
朝日
(
あさひ
)
は
照
(
て
)
るとも
曇
(
くも
)
るとも
314
月
(
つき
)
は
盈
(
み
)
つとも
虧
(
か
)
くるとも
315
仮令
(
たとへ
)
大地
(
だいち
)
は
沈
(
しづ
)
むとも
316
三五教
(
あななひけう
)
は
世
(
よ
)
を
救
(
すく
)
ふ
317
救
(
すく
)
ひの
神
(
かみ
)
と
現
(
あ
)
れませる
318
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのを
)
の
大御神
(
おほみかみ
)
319
従
(
したが
)
ひませる
神司
(
かむつかさ
)
320
わけて
初稚姫
(
はつわかひめ
)
司
(
つかさ
)
321
ランチ、
片彦
(
かたひこ
)
宣伝使
(
せんでんし
)
322
揃
(
そろ
)
ひも
揃
(
そろ
)
うて
吾
(
わが
)
館
(
やかた
)
323
訪
(
おとづ
)
れ
給
(
たま
)
ふ
嬉
(
うれ
)
しさよ
324
嘸
(
さぞ
)
や
父上
(
ちちうへ
)
、
母君
(
ははぎみ
)
も
325
喜
(
よろこ
)
び
迎
(
むか
)
へ
給
(
たま
)
ふらむ
326
ああ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
327
神
(
かみ
)
の
御前
(
みまへ
)
に
願
(
ね
)
ぎまつる』
328
と
歌
(
うた
)
ひながら、
329
麗
(
うるは
)
しき
門
(
もん
)
を
幾
(
いく
)
つとなく
潜
(
くぐ
)
り
玄関口
(
げんくわんぐち
)
に
辿
(
たど
)
りついた。
330
(
大正一二・一・二六
旧一一・一二・一〇
加藤明子
録)
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(N)
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