霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第二〇章 狸姫(たぬきひめ)〔一三三五〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第51巻 真善美愛 寅の巻 篇:第4篇 夢狸野狸 よみ(新仮名遣い):むりやり
章:第20章 狸姫 よみ(新仮名遣い):たぬきひめ 通し章番号:1335
口述日:1923(大正12)年01月27日(旧12月11日) 口述場所: 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年12月29日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一部の章はAIによって要約を作成しています。[×閉じる]:
四人は城の大門をくぐった。八人の天女のような美人の中で、一番年かさと思しき女が進み出て、自分はコーラン国如意王の王女・初花姫だと名乗った。そして、コーラン国はにわかにここに国替えをして、初稚姫によって三五教に変わったところだと四人を城に招いた。
初は、初花姫に杢助・高姫という二人組が来なかったかと尋ねた。初花姫は、杢助と高姫も教えを説いており、初稚姫よりも細かく教えてくれるのでとてもお世話になっていると答えた。
そして、松姫がここにやってきて高姫、杢助と大変な争論が起こったことは事実だが、松姫がその後どうなったかは自分は知らないと答えた。
お千代は、自分の母は確かに牢にぶちこまれたと抗弁した。初花姫は妖幻坊の眷属が化けているのだ、そして自分もこの通り、と言うと、お千代とお菊は大きな古狸となって城の奥に這いこんでしまった。
四人は不審に堪えず、初花姫の正体を見届けてくれようとにらんでいる。初花姫は、四人の神力によってあの女たちの正体が割れたのだと答えた。そして城には悪い狸がたくさんいるから神力の強い方々に退治してほしいと四人を招き入れた。
初花姫は、以前ランチと片彦を招き入れた部屋に四人を案内し、おのおの椅子につかせた。初花姫は父に報告してくると言って、侍女を伴って立ち去った。四人は初花姫と侍女たちの美しさを涎を垂らして語り合っている。
すると光ったものを衣服一面にちりばめた妙齢の美人が入ってきて、自分は初稚姫だと名乗った。そして杢助と高姫という三五教の裏切り者がこの館に入り込み、自分の説を攻撃し、ランチと片彦を捕え、松姫をどこかに隠してしまったという。初稚姫は四人に、杢助と高姫の魔法を打ち破るために力を貸してほしいと頼み込んだ。
一同が杢助と高姫の調伏と、ランチ・片彦・松姫救出の相談をしていると、杢助と高姫がドアを押しあけて入ってきた。杢助と高姫は、初稚姫に打ってかかる。初稚姫は椅子を取って渡り合っている。四人も椅子を取って杢助と高姫に打ってかかった。
杢助と高姫は棍棒を投げつけてこの場を逃げ出した。初稚姫は、急場をすくわれたことを四人に感謝した。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2023-09-18 16:38:11 文字数:4241 OBC :rm5120
愛善世界社版:281頁 八幡書店版:第9輯 368頁 修補版: 校定版:288頁 普及版:130頁 初版: ページ備考:
001 ガリヤ、002ケース他(ほか)四(よ)人(にん)は大門(おほもん)を潜(くぐ)つた。003さうして天女(てんによ)のやうな八(はち)人(にん)の美人(びじん)の姿(すがた)に見惚(みと)れて居(ゐ)た。004その中(なか)で一番(いちばん)年(とし)かさと思(おぼ)しき女(をんな)、005揉(も)み手(て)をしながら言葉(ことば)優(やさ)しく、
006(初花姫)『これはこれは三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)様(さま)、007ようこそお出(い)で下(くだ)さいました。008妾(わらは)は如意王(によいわう)の娘(むすめ)初花姫(はつはなひめ)と申(まを)します』
009ガリヤ『イヤ吾々(われわれ)は宣伝使(せんでんし)では厶(ござ)いませぬ。010これより斎苑(いそ)の館(やかた)に修業(しゆげふ)に参(まゐ)り、011旨(うま)く合格(がふかく)すれば初(はじ)めて宣伝使(せんでんし)になるので厶(ござ)います。012さうして私(わたし)が三五教(あななひけう)だと云(い)ふ事(こと)は、013どうしてお分(わか)りになりましたか』
014初花姫『ハイ、015四(し)ケ月(げつ)以前(いぜん)より月(つき)の国(くに)コーラン国(ごく)から此処(ここ)まで国替(くにがへ)を致(いた)しまして、016俄造(にはかづく)りの城廓(じやうくわく)を拵(こしら)へ住(す)まつて居(を)ります。017今(いま)まではウラル教(けう)で厶(ござ)いましたが、018バラモン教(けう)に追立(おひた)てられ此方(こちら)に参(まゐ)りました所(ところ)、019三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)初稚姫(はつわかひめ)様(さま)がお出(いで)になり、020いろいろと御(ご)教訓(けうくん)下(くだ)さいましたので、021両親(りやうしん)は直(ただ)ちに三五教(あななひけう)に帰順(きじゆん)し、022今(いま)は熱心(ねつしん)な信者(しんじや)で厶(ござ)います。023さうして初稚姫(はつわかひめ)様(さま)が奥殿(おくでん)にお留(とど)まりになり、024結構(けつこう)なお話(はなし)を聞(き)かして下(くだ)さるのだから、025城内(じやうない)一般(いつぱん)の喜(よろこ)びは譬(たとへ)がたない程(ほど)で厶(ござ)います。026さうして初稚姫(はつわかひめ)様(さま)のお言葉(ことば)には、027三五教(あななひけう)の方(かた)が三四(さんよ)人(にん)見(み)えると云(い)ふ事(こと)で厶(ござ)いましたから、028侍女(じぢよ)を連(つ)れ、029此処(ここ)までお迎(むか)へ旁(かたがた)遊(あそ)びながら参(まゐ)りました。030サア御(ご)遠慮(ゑんりよ)はいりませぬ、031何卒(どうぞ)お通(とほ)り下(くだ)さいませ』
032ガリヤ『ヤアそれは願(ねが)うてもない事(こと)で厶(ござ)る。033初稚姫(はつわかひめ)様(さま)は既(すで)に宣伝(せんでん)の途(と)に上(のぼ)られ、034斎苑(いそ)の館(やかた)へ参(まゐ)つても到底(たうてい)御(ご)面会(めんくわい)は叶(かな)ふまいと覚悟(かくご)をして居(ゐ)ました。035此処(ここ)で御(お)目(め)に懸(かか)れるとは全(まつた)く神(かみ)様(さま)の御(お)引(ひ)き合(あは)せ、036イヤ是非(ぜひ)ともお世話(せわ)に預(あづ)かりませう』
037ケース『吾々(われわれ)両人(りやうにん)は四(し)ケ月(げつ)前(ぜん)まで、038バラモン軍(ぐん)の棟梁(とうりやう)ランチ将軍(しやうぐん)の副官(ふくくわん)を致(いた)して居(を)りましたガリヤ、039ケースで厶(ござ)ります。040何時(いつ)の間(ま)にか立派(りつぱ)な建築(けんちく)が出来(でき)たぢやありませぬか』
041初花姫『昼夜(ちうや)兼行(けんかう)で数万(すうまん)の人夫(にんぷ)を使役(しえき)し、042やつと此(この)頃(ごろ)出来上(できあが)つた所(ところ)です。043御覧(ごらん)の通(とほ)りまだ壁(かべ)も乾(かわ)いて居(を)りませぬ』
044ケース『成程(なるほど)さう承(うけたま)はれば、045どこともなしに生々(なまなま)しいやうな気分(きぶん)がする。046併(しか)しながら昨冬(さくとう)此処(ここ)に陣取(ぢんど)つて居(ゐ)た事(こと)を思(おも)へば、047木(き)の芽(め)はめぐみ、048草(くさ)は萌(も)え、049まるで地獄(ぢごく)から天国(てんごく)へ行(い)つたやうな気(き)が致(いた)します』
050初花姫『サア皆(みな)さま、051私(わたし)が御(ご)案内(あんない)致(いた)しませう』
052初(はつ)『もし姫(ひめ)様(さま)、053折角(せつかく)機嫌(きげん)よくお遊(あそ)びの途中(とちう)になつては済(す)みませぬ。054放(ほ)つて置(お)いて下(くだ)さいませ。055併(しか)し一寸(ちよつと)物(もの)をお尋(たづ)ね致(いた)しますが、056このお館(やかた)には高姫(たかひめ)、057杢助(もくすけ)と云(い)ふ両人(りやうにん)が大将(たいしやう)となつて頑張(ぐわんば)つて居(ゐ)ると聞(き)きましたが、058如何(いかが)で厶(ござ)いませうか』
059初花姫『ハイ、060杢助(もくすけ)様(さま)と高姫(たかひめ)様(さま)がお越(こ)しになり、061ウラナイ教(けう)とやらを非常(ひじやう)にお説(と)きになつて居(ゐ)ます。062初稚姫(はつわかひめ)様(さま)のお話(はなし)を聞(き)いて、063次(つぎ)に御(ご)両人(りやうにん)のお話(はなし)を聞(き)きますと、064それはそれは詳(くは)しう分(わか)ります。065つまり初稚姫(はつわかひめ)様(さま)は、066ほんの概略(あらまし)を仰有(おつしや)るなり、067杢助(もくすけ)、068高姫(たかひめ)様(さま)は噛(か)んで含(ふく)めるやうに細(こま)かう説(と)いて聞(き)かして下(くだ)さるので、069どちらの方(かた)にもお世話(せわ)になつて居(を)ります』
070徳(とく)『エエ一寸(ちよつと)承(うけたま)はりたいですが、071此(この)お館(やかた)に小北山(こぎたやま)の教主(けうしゆ)松姫(まつひめ)様(さま)が、072牢獄(らうごく)に打(う)ち込(こ)まれお苦(くる)しみとの事(こと)、073それは事実(じじつ)で厶(ござ)いますか。074今(いま)ここに松姫(まつひめ)の娘(むすめ)、075お千代(ちよ)さまと云(い)ふのが、076泣(な)いて吾々(われわれ)に頼(たの)まれましたから、077実否(じつぴ)を探(さぐ)らむと参(まゐ)つたのです。078何卒(どうぞ)包(つつ)み匿(かく)さず事実(じじつ)を仰有(おつしや)つて貰(もら)ひたいものですな』
079初花姫『ハイ、080何(なん)でも松姫(まつひめ)さまとかが見(み)えまして、081大変(たいへん)な、082高姫(たかひめ)様(さま)、083杢助(もくすけ)様(さま)との間(あひだ)に争論(さうろん)が起(おこ)つて居(ゐ)たやうです。084其(その)後(ご)は、085どうなつたか妾(わらは)は存(ぞん)じませぬ。086大方(おほかた)仲直(なかなほ)りが出来(でき)たかと存(ぞん)じます』
087千代(ちよ)『イエ皆(みな)さま、088お母(かあ)さまは牢(らう)の中(なか)へ打(ぶ)ち込(こ)まれたのよ。089さうして此(この)初花姫(はつはなひめ)さまに化(ば)けて居(ゐ)るのは、090妖幻坊(えうげんばう)の眷族(けんぞく)ですから用心(ようじん)なさいませ。091私(わたし)だつてこんなものよ』
092と云(い)ふより早(はや)く獅子(しし)のやうな古狸(ふるだぬき)となつて、093ノソリノソリと奥(おく)を目蒐(めが)けて這(は)ひ込(こ)んで了(しま)つた。094お菊(きく)は又(また)もや、
095お菊『をぢさま左様(さやう)なら、096私(わたし)の正体(しやうたい)はこれだわ』
097と云(い)ふより早(はや)く、098以前(いぜん)のやうな大狸(おほだぬき)となつて又(また)もや駆(か)け込(こ)んで了(しま)ふ。
099 四(よ)人(にん)の男(をとこ)は不審(ふしん)に堪(た)へず、100初花姫(はつはなひめ)の正体(しやうたい)を見届(みとど)け呉(く)れむと、101眼(まなこ)を怒(いか)らして目(め)ばなしもせず睨(にら)んで居(ゐ)た。
102初花姫『ホホホホ、103まア皆(みな)さまの六(む)つかしいお顔(かほ)、104サウ睨(にら)んで頂(いただ)くと私(わたし)の顔(かほ)に穴(あな)があきますよ。105この浮木(うきき)の森(もり)には古狸(ふるだぬき)が居(ゐ)まして、106チヨイチヨイ ワザを致(いた)しますので、107それを防(ふせ)ぐために三五教(あななひけう)の神(かみ)様(さま)をお祀(まつ)りして居(を)るので厶(ござ)いますよ。108貴方(あなた)等(がた)の御(ご)神力(しんりき)によつてあの可愛(かあい)らしい女(をんな)の正体(しやうたい)が現(あら)はれたのですよ。109何(なに)が化(ば)けて居(ゐ)るのか分(わか)つたものぢやありませぬ。110ほんに化物(ばけもの)の世(よ)の中(なか)ですからな。111妾(わらは)も何(なに)かの変化(へんげ)ぢやないか、112よく調(しら)べて下(くだ)さい』
113ガリヤ『イヤ決(けつ)して決(けつ)して貴女(あなた)は疑(うたが)ひませぬ。114併(しか)し浮木(うきき)の森(もり)は妖怪(えうくわい)の巣窟(さうくつ)ですから、115斯様(かやう)な所(ところ)へお館(やかた)をお建(た)てになれば、116随分(ずいぶん)狸(たぬき)の巣(す)がなくなるから、117ワザを致(いた)しませう』
118初花姫『ハイ父(ちち)も困(こま)つて居(ゐ)ますの、119自分(じぶん)の小間使(こまづかひ)だと思(おも)つて居(を)れば、120毛(け)だらけの手(て)を出(だ)したりして仕方(しかた)がありませぬ。121何卒(どうぞ)初稚姫(はつわかひめ)様(さま)が居(ゐ)られますから、122あの方(かた)と力(ちから)を合(あは)せて妖怪(えうくわい)退治(たいぢ)をして下(くだ)さい。123高姫(たかひめ)さま、124杢助(もくすけ)さまも何(なん)だか怪(あや)しいやうな気(き)がします。125中(なか)にも杢助(もくすけ)さまなぞは耳(みみ)がペロペロ動(うご)くのですもの』
126ケース『成程(なるほど)、127吾々(われわれ)も実(じつ)は狸(たぬき)に化(ば)かされ、128真裸(まつぱだか)になつて相撲(すまう)を取(と)らされて来(き)ましたよ、129なア初(はつ)さま、130徳(とく)さま、131アハハハハハ』
132初花姫『ホホホホ、133本当(ほんたう)に悪(わる)い狸(たぬき)が沢山(たくさん)居(ゐ)ますので、134何(なん)とかして退治(たいぢ)せねばならないと申(まを)して沢山(たくさん)の家来(けらい)を四方(よも)に遣(つか)はし狩立(かりた)てましたけれど、135到底(たうてい)人間(にんげん)の力(ちから)ではいけませぬ。136神力(しんりき)高(たか)き御(お)方(かた)の法力(ほふりき)に依(よ)らねば駄目(だめ)だと申(まを)し、137俄(にはか)に信仰(しんかう)を致(いた)したので厶(ござ)います。138サア斯様(かやう)な所(ところ)で立話(たちばなし)をして居(ゐ)ては詮(つま)りませぬ。139何卒(どうぞ)奥(おく)へ行(い)つて休息(きうそく)して下(くだ)さいませ』
140ガリヤ『然(しか)らば遠慮(ゑんりよ)なく御(ご)厄介(やつかい)になりませう』
141と幾(いく)つかの門(もん)を潜(くぐ)つて玄関口(げんくわんぐち)についた。
142初花姫『サア何卒(どうぞ)お入(はい)り下(くだ)さいませ。143俄作(にはかづく)りで準備(じゆんび)も整(ととの)はず、144不都合(ふつがふ)の家(いへ)で厶(ござ)います』
145ケース『いやどうも有難(ありがた)う、146実(じつ)に立派(りつぱ)な御殿(ごてん)で厶(ござ)います。147以前(いぜん)とは面目(めんぼく)を一新(いつしん)し、148吾々(われわれ)が駐屯(ちゆうとん)して居(ゐ)た時(とき)の面影(おもかげ)は少(すこ)しも厶(ござ)いませぬ。149まるで別世界(べつせかい)へ行(い)つたやうで厶(ござ)います』
150ガリヤ『サア皆(みな)さま、151御免(ごめん)を蒙(かうむ)つて通(とほ)らして頂(いただ)きませう』
152『ハイ』
153と一同(いちどう)は初花姫(はつはなひめ)他(ほか)七(しち)人(にん)の美女(びぢよ)に後先(あとさき)を守(まも)られて、154奥(おく)へ奥(おく)へと進(すす)み行(ゆ)く。155観音開(くわんのんびら)きの庫(くら)のやうな一室(いつしつ)に請(しやう)ぜられた。156以前(いぜん)にランチ、157片彦(かたひこ)両人(りやうにん)が請(しやう)ぜられた居間(ゐま)である。158五脚(ごきやく)の椅子(いす)が丸(まる)いテーブルを中(なか)にして行儀(ぎやうぎ)よく並(なら)べてある。159さうして随分(ずいぶん)広(ひろ)い居間(ゐま)であつた。160初花姫(はつはなひめ)は四(よ)人(にん)を案内(あんない)し各(おのおの)椅子(いす)に着(つ)かしめた。161四(よ)人(にん)は何(なん)とはなしに気分(きぶん)のよい居間(ゐま)だと、162満足(まんぞく)の体(てい)で安全(あんぜん)椅子(いす)に凭(もた)れかかり、163欄間(らんま)の彫刻(てうこく)などを眺(なが)めて頻(しき)りに褒(ほ)めちぎつて居(ゐ)る。164初花姫(はつはなひめ)は、
165初花姫『一寸(ちよつと)父(ちち)に報告(はうこく)を致(いた)して来(き)ますから、166皆(みな)さま此処(ここ)で御(ご)休息(きうそく)を願(ねが)ひます。167左様(さやう)なら』
168と軽(かる)く挨拶(あいさつ)して七(しち)人(にん)の侍女(こしもと)を伴(ともな)ひ此(この)場(ば)を立(た)ち去(さ)つた。169四(よ)人(にん)は八(はち)人(にん)の女(をんな)の綺麗(きれい)な事(こと)や、170何(なん)ともなしに淑(しと)やかな事(こと)、171どれもこれも優劣(いうれつ)のない美人(びじん)なる事(こと)などを涎(よだれ)を垂(た)らして語(かた)り合(あ)つて居(ゐ)る。172初公(はつこう)は思(おも)ひだしたやうに、
173初『皆(みな)さま、174吾々(われわれ)はかうして結構(けつこう)な座敷(ざしき)に休(やす)んで居(ゐ)るのもよいが、175此処(ここ)へ来(き)た目的(もくてき)は松姫(まつひめ)さまを救(すく)ひ出(だ)す為(ため)ではなかつたかなア』
176ガリヤ『そりやさうだつた。177併(しか)しお千代(ちよ)、178お菊(きく)と云(い)ふ奴(やつ)、179劫(ごふ)経(へ)た狸(たぬき)の正体(しやうたい)を現(あら)はしよつたぢやないか。180あれから見(み)ると吾々(われわれ)は一寸(ちよつと)狸(たぬき)に騙(だま)されよつたのだ。181さうすると、182あいつの云(い)ふ事(こと)は当(あて)にならぬ。183松姫(まつひめ)様(さま)の此処(ここ)に囚(とら)はれて居(ゐ)るのは全(まつた)く嘘(うそ)だと思(おも)ふが、184君(きみ)達(たち)はどう思(おも)ふ』
185『サア』
186と三(さん)人(にん)は首(くび)を捻(ひね)つて居(ゐ)る。187そこへ光(ひか)つたものを衣服(いふく)一面(いちめん)に鏤(ちりば)めた妙麗(めうれい)の美人(びじん)が、188ドアを開(ひら)いてニコニコしながらやつて来(き)た。189最前(さいぜん)見(み)た初花姫(はつはなひめ)以下(いか)も美(うつく)しかつたが、190これは又(また)素的(すてき)滅法界(めつぽふかい)のナイスである。191そして背(せ)は少(すこ)し高(たか)く、192どこともなしに犯(おか)すべからざる威厳(ゐげん)が備(そな)はつてゐる。193四(よ)人(にん)は思(おも)はずハツと頭(かしら)を下(さ)げ敬意(けいい)を表(へう)した。194美人(びじん)は一脚(いつきやく)の空椅子(からいす)に腰(こし)を下(おろ)し淑(しと)やかに、
195(初稚姫)『妾(わらは)は三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)初稚姫(はつわかひめ)で厶(ござ)います。196よくまアお越(こ)し下(くだ)さいましたなア』
197ガリヤ『拙者(せつしや)は治国別(はるくにわけ)様(さま)の弟子(でし)でガリヤと申(まを)します。198何卒(どうぞ)お見知(みし)りおかれまして御(ご)指導(しだう)を願(ねが)ひます』
199ケース『拙者(せつしや)はケースと申(まを)します、200何分(なにぶん)宜敷(よろし)くお願(ねが)ひ申(まを)します』
201初『某(それがし)は初公別(はつこうわけ)と申(まを)します』
202徳『拙者(せつしや)は徳公別(とくこうわけ)と申(まを)す、203未来(みらい)の宣伝使(せんでんし)で厶(ござ)います。204何分(なにぶん)宜敷(よろし)く、205万事(ばんじ)お引(ひ)き立(た)てを願上(ねがひあ)げ奉(たてまつ)ります』
206と、207ド拍子(びやうし)のぬけた声(こゑ)で挨拶(あいさつ)をする。
208初稚姫『早速(さつそく)ながら貴方(あなた)等(がた)にお願(ねが)ひ致(いた)したい事(こと)が厶(ござ)います。209それは外(ほか)の事(こと)では厶(ござ)いませぬ。210杢助(もくすけ)、211高姫(たかひめ)と云(い)ふ三五教(あななひけう)に於(お)けるユダがこのお館(やかた)へ旨(うま)く入(い)り込(こ)みまして、212妾(わらは)の説(せつ)を極力(きよくりよく)攻撃(こうげき)致(いた)し、213又(また)ランチ、214片彦(かたひこ)の両人(りやうにん)を石牢(いしらう)に打(ぶ)ち込(こ)み、215その上(うへ)松姫(まつひめ)様(さま)まで何処(どこ)かへ匿(かく)して仕舞(しま)つたので厶(ござ)います。216彼(かれ)高姫(たかひめ)、217杢助(もくすけ)は狸(たぬき)を使(つか)ひまして人(ひと)の目(め)をくらまし、218変幻(へんげん)出没(しゆつぼつ)自在(じざい)の魔力(まりよく)を発揮(はつき)致(いた)しますれば、219妾(わらは)一人(ひとり)のみにては如何(いかん)ともする事(こと)が出来(でき)ませぬ。220誰(たれ)かのお助(たす)けを借(か)りたいと大神(おほかみ)様(さま)を念(ねん)じて居(ゐ)ました。221所(ところ)が明日(あす)は三五教(あななひけう)の信者(しんじや)を四(よ)人(にん)ばかり寄(よ)こしてやらうと仰有(おつしや)つたので、222首(くび)を長(なが)くして待(ま)つて居(ゐ)ました。223城主(じやうしゆ)如意王(によいわう)様(さま)も初花姫(はつはなひめ)様(さま)も大変(たいへん)な御(ご)心配(しんぱい)で厶(ござ)います。224どうかお力(ちから)をお貸(か)し下(くだ)さいますまいか』
225ガリヤ『ハイ、226お頼(たの)みまでもなく吾々(われわれ)は一旦(いつたん)主人(しゆじん)と仰(あふ)いだランチ、227片彦(かたひこ)様(さま)の御(ご)遭難(さうなん)を聞(き)いて、228これが黙(だま)つて居(を)られませうか。229最早(もはや)義(ぎ)のためには命(いのち)を捨(す)てます。230なあケース、231一(ひと)つ獅子(しし)奮迅(ふんじん)の活動(くわつどう)をやらうではないか』
232ケース『イヤやりませう、233姫(ひめ)様(さま)、234御(ご)心配(しんぱい)なさいますな。235きつと悪魔(あくま)を退治(たいぢ)してお目(め)にかけませう。236高姫(たかひめ)、237杢助(もくすけ)、238如何(いか)に妖術(えうじゆつ)を使(つか)ひましても、239此方(こちら)には正義(せいぎ)の刃(やいば)がありますから、240大神(おほかみ)の愛善(あいぜん)の徳(とく)と信真(しんしん)の光(ひかり)によつて、241見事(みんごと)化(ばけ)を現(あら)はしてお目(め)にかけませう』
242初稚姫『何卒(なにとぞ)宜(よろ)しくお願(ねが)ひ致(いた)します』
243初(はつ)『吾々(われわれ)と雖(いへど)もお師匠(ししやう)様(さま)の松姫(まつひめ)様(さま)を、244どうしても取返(とりかへ)さなくてはなりませぬ。245徳公(とくこう)と両人(りやうにん)力(ちから)を協(あは)せて高姫(たかひめ)、246杢助(もくすけ)の魔法(まはふ)を破(やぶ)つて御覧(ごらん)に入(い)れませう』
247初稚姫『館(やかた)の様子(やうす)はほぼ呑(の)み込(こ)んで居(を)りますれば、248ランチ、249片彦(かたひこ)様(さま)初(はじ)め松姫(まつひめ)様(さま)の在処(ありか)を力(ちから)を協(あは)せて探(さが)し出(だ)し救(すく)ひ出(だ)して頂(いただ)きませう。250唯(ただ)些(すこ)し心配(しんぱい)なのは松姫(まつひめ)様(さま)の事(こと)で厶(ござ)います。251何(なん)でも水牢(すゐらう)に放(はふ)り込(こ)んだのではあるまいかと存(ぞん)じます』
252初(はつ)『猪口才(ちよこざい)な高姫(たかひめ)、253杢助(もくすけ)、254今(いま)に見(み)よ、255思(おも)ひ知(し)らして呉(く)れるぞ』
256と思(おも)はず知(し)らず大音声(だいおんじやう)に呼(よ)ばはつた。257慌(あわただ)しくドアを押開(おしあ)けて入(はい)つて来(き)たのは杢助(もくすけ)、258高姫(たかひめ)の両人(りやうにん)であつた。259両人(りやうにん)は棒千切(ぼうちぎれ)を振(ふ)り上(あ)げ、260初稚姫(はつわかひめ)の左右(さいう)より目(め)を怒(いか)らせながら、
261杢助(もくすけ)『ヤア初稚姫(はつわかひめ)、262よくも吾々(われわれ)が計略(けいりやく)の穴(あな)に陥(おちい)つたなア、263覚悟(かくご)致(いた)せ』
264と打(う)つてかかる。265初稚姫(はつわかひめ)は椅子(いす)を取(と)つて受(う)け留(と)める、266高姫(たかひめ)は又(また)棍棒(こんぼう)にて空気(くうき)を切(き)りブンブン唸(うな)らせながら、
267高姫『ヤア初稚姫(はつわかひめ)、268覚悟(かくご)を致(いた)せ、269観念(くわんねん)せい』
270と一人(ひとり)の女(をんな)に二人(ふたり)の男女(だんぢよ)が渡(わた)り合(あ)ひ、271互(たがひ)に秘術(ひじゆつ)を尽(つく)して戦(たたか)ふ。272四(よ)人(にん)は黙視(もくし)するに忍(しの)びず、273各(おのおの)椅子(いす)を取(と)つて、274杢助(もくすけ)、275高姫(たかひめ)に打(う)つてかかる。276七(しち)人(にん)は渦(うづ)をまいて室内(しつない)を荒(あ)れ狂(くる)ひ、277漸(やうや)くにして高姫(たかひめ)、278杢助(もくすけ)は隙(すき)を窺(うかが)ひ棍棒(こんぼう)をなげつけ、279雲(くも)を霞(かすみ)と此(この)場(ば)を逃(に)げ出(だ)した。
280 初稚姫(はつわかひめ)は涙(なみだ)ながらに四(よ)人(にん)に向(むか)ひ、281急場(きふば)を救(すく)はれし事(こと)を感謝(かんしや)した。
282(大正一二・一・二七 旧一一・一二・一一 加藤明子録)
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