霊界物語.ネット
~出口王仁三郎 大図書館~
設定
|
ヘルプ
ホーム
霊界物語
真善美愛(第49~60巻)
第51巻(寅の巻)
序文
総説
第1篇 霊光照魔
第1章 春の菊
第2章 怪獣策
第3章 犬馬の労
第4章 乞食劇
第5章 教唆
第6章 舞踏怪
第2篇 夢幻楼閣
第7章 曲輪玉
第8章 曲輪城
第9章 鷹宮殿
第10章 女異呆醜
第3篇 鷹魅艶態
第11章 乙女の遊
第12章 初花姫
第13章 槍襖
第14章 自惚鏡
第15章 餅の皮
第4篇 夢狸野狸
第16章 暗闘
第17章 狸相撲
第18章 糞奴使
第19章 偽強心
第20章 狸姫
第21章 夢物語
余白歌
×
設定
この文献を王仁DBで開く
印刷用画面を開く
[?]
プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。
[×閉じる]
話者名の追加表示
[?]
セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。
[×閉じる]
追加表示する
追加表示しない
【標準】
表示できる章
テキストのタイプ
[?]
ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。
[×閉じる]
通常のテキスト
【標準】
コピー用のテキスト
文字サイズ
S
【標準】
M
L
ルビの表示
通常表示
【標準】
括弧の中に表示
表示しない
アンカーの表示
[?]
本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。
[×閉じる]
左側だけに表示する
【標準】
表示しない
全てのアンカーを表示
宣伝歌
[?]
宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。
[×閉じる]
一段組
【標準】
二段組
脚注[※]用語解説
[?]
[※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。
[×閉じる]
脚注マークを表示する
【標準】
脚注マークを表示しない
脚注[*]編集用
[?]
[※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。
[×閉じる]
脚注マークを表示する
脚注マークを表示しない
【標準】
外字の外周色
[?]
一般のフォントに存在しない文字は専用の外字フォントを使用しています。目立つようにその文字の外周の色を変えます。
[×閉じる]
無色
【標準】
赤色
現在のページには外字は使われていません
表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。
【新着情報】
サイトをリニューアルしました。不具合がある場合は
従来バージョン
をお使い下さい|
サブスク
のお知らせ
霊界物語
>
真善美愛(第49~60巻)
>
第51巻(寅の巻)
> 第1篇 霊光照魔 > 第4章 乞食劇
<<< 犬馬の労
(B)
(N)
教唆 >>>
第四章
乞食劇
(
こじきげき
)
〔一三一九〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第51巻 真善美愛 寅の巻
篇:
第1篇 霊光照魔
よみ(新仮名遣い):
れいこうしょうま
章:
第4章 乞食劇
よみ(新仮名遣い):
こじきげき
通し章番号:
1319
口述日:
1923(大正12)年01月25日(旧12月9日)
口述場所:
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年12月29日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
[×閉じる]
:
松姫は封を切って手紙を読み始めた。おいおい顔色が変わり両手はふるえだし、容易ならない内容のように見えたが、読み終わるとほっと溜息をついた。
お千代は、悪魔が上のお宮の扉を開いたらきっとびっくりして逃げるだろうとエンゼルが仰ったので心配はいらないと松姫を励ました。松姫は、二人に会って高姫を説得するのにお千代がいては都合が悪いと、しばらくスマートと一緒に遊んでくるようにいいつけた。
お千代がスマートと外に出かけた後、松姫は高姫が曲津の入れ物になり、妖幻坊にたぶらかされているという事態を憂いながらも、今は自分がしっかり小北山を守らなければならないと思い直し、神に祈りを捧げていた。
そこへ酔った初と徳がやってきて、松姫がなかなかやってこないので高姫が立腹していると伝えた。そして、今日から高姫が小北山の教主で杢助が監督するのだ、と松姫に伝えた。
松姫は、たとえ高姫が教主だろうと、事務を引き継がないうちはまだ自分がここの教主であり、その間は自分の裁量で事を進めると言い返し、こちらから会うと言ったがそれはできなくなったので、向こうから挨拶に来るように、と申し渡した。
初と徳は、自分たちは斎苑の館の総務・杢助の家来になったのだ、と権威をかさに着て松姫を脅しにかかった。しかし松姫はここの教主は自分だと言ってきかず、初と徳が威張り散らす姿をからかった。
初と徳は怒り、杢助の命令だと松姫に打ってかかろうとした。初と徳は、松姫の体から光が出ているような気がして、その場に霊縛されてしまった。
松姫は泰然自若として心静かに歌を歌い、杢助の正体を暴き二人に改心を促す歌を歌っている。松姫が歌い終わると、初と徳は涙を流して改心の意を表した。松姫が霊縛を解くと、二人はぱたぱたと表へ駆け出して行ってしまった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2023-08-04 09:39:17
OBC :
rm5104
愛善世界社版:
57頁
八幡書店版:
第9輯 286頁
修補版:
校定版:
59頁
普及版:
27頁
初版:
ページ備考:
001
松姫
(
まつひめ
)
は
静
(
しづか
)
に
封
(
ふう
)
を
押切
(
おしき
)
り
押戴
(
おしいただ
)
いて
読
(
よ
)
み
行
(
ゆ
)
く。
002
おひおひと
顔色
(
かほいろ
)
変
(
かは
)
り
両手
(
りやうて
)
は
慄
(
ふる
)
ひ、
003
容易
(
ようい
)
ならざる
文面
(
ぶんめん
)
の
如
(
ごと
)
く
思
(
おも
)
はれた。
004
そして
松姫
(
まつひめ
)
は
手紙
(
てがみ
)
を
読
(
よ
)
み
了
(
をは
)
りホツと
溜息
(
ためいき
)
をついた。
005
千代
(
ちよ
)
『お
母
(
かあ
)
さま、
006
私
(
わたし
)
の
云
(
い
)
つた
事
(
こと
)
違
(
ちが
)
やしますまいがな。
007
高姫
(
たかひめ
)
は
斎苑
(
いそ
)
の
館
(
やかた
)
からの
命令
(
めいれい
)
ぢやありますまい。
008
そしてあの
杢助
(
もくすけ
)
と
云
(
い
)
つてるのは
化物
(
ばけもの
)
でせうがな。
009
此
(
この
)
犬
(
いぬ
)
は
初稚姫
(
はつわかひめ
)
様
(
さま
)
の
愛犬
(
あいけん
)
でスマートと
書
(
か
)
いてありませう』
010
松姫
『あああ、
011
油断
(
ゆだん
)
のならぬ
魔
(
ま
)
の
世界
(
せかい
)
だな。
012
こりや
斯
(
か
)
うしては
居
(
を
)
られますまい。
013
併
(
しか
)
しながら
初稚姫
(
はつわかひめ
)
様
(
さま
)
の
仰
(
おほ
)
せ、
014
何処
(
どこ
)
までも
善
(
ぜん
)
一
(
ひと
)
つで
高姫
(
たかひめ
)
様
(
さま
)
を
改心
(
かいしん
)
させにやならぬ。
015
然
(
しか
)
し
初稚姫
(
はつわかひめ
)
様
(
さま
)
のお
言葉
(
ことば
)
に……お
前
(
まへ
)
は
小北山
(
こぎたやま
)
の
神司
(
かむつかさ
)
だから、
016
何処
(
どこ
)
までも
此処
(
ここ
)
を
動
(
うご
)
いてはいかぬ……と
書
(
か
)
いてある。
017
もしも
高姫
(
たかひめ
)
さまが
何処
(
どこ
)
までも
此処
(
ここ
)
の
教主
(
けうしゆ
)
と
頑張
(
ぐわんば
)
つたら、
018
何
(
ど
)
うしようかな。
019
せめて
魔我彦
(
まがひこ
)
さまでも
居
(
を
)
つてくれたら、
020
何
(
なん
)
とかいい
相談
(
さうだん
)
が
出来
(
でき
)
るだらうに、
021
困
(
こま
)
つた
事
(
こと
)
だ』
022
お千代
『お
母
(
かあ
)
さま、
023
決
(
けつ
)
して
心配
(
しんぱい
)
要
(
い
)
りませぬ。
024
どうせ
一度
(
いちど
)
はお
宮
(
みや
)
さまを
巡拝
(
じゆんぱい
)
するでせうから、
025
上
(
うへ
)
のお
宮
(
みや
)
のお
扉
(
とびら
)
を
開
(
ひら
)
いたら、
026
屹度
(
きつと
)
ビツクリして
逃
(
に
)
げるでせうよ。
027
エンゼルさまが
私
(
わたし
)
にさう
仰有
(
おつしや
)
いました』
028
松姫
『ああさうかな。
029
何卒
(
どうぞ
)
まア
都合
(
つがふ
)
よくやりたいものだ。
030
然
(
しか
)
しお
前
(
まへ
)
も
此
(
この
)
スマートさまを
連
(
つ
)
れて
高姫
(
たかひめ
)
さまの
目
(
め
)
にかからぬ
処
(
ところ
)
へ
暫
(
しばら
)
く
遊
(
あそ
)
びに
行
(
い
)
つて
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さい。
031
お
前
(
まへ
)
が
居
(
を
)
ると
都合
(
つがふ
)
が
悪
(
わる
)
いからな』
032
お千代
『それならお
母
(
かあ
)
さま、
033
確
(
しつか
)
りなさいませや。
034
何卒
(
どうぞ
)
巻
(
ま
)
き
込
(
こ
)
まれぬ
様
(
やう
)
になさいませ。
035
これ、
036
スマートさま、
037
お
前
(
まへ
)
は
可愛
(
かあい
)
い
犬
(
いぬ
)
ね』
038
と
云
(
い
)
ひながら
首
(
くび
)
たまに
抱付
(
だきつ
)
いた。
039
スマートは
薄
(
うす
)
い
平
(
ひら
)
たい
舌
(
した
)
でお
千代
(
ちよ
)
の
頬
(
ほほ
)
をペラツと
舐
(
な
)
めた。
040
お
千代
(
ちよ
)
はビツクリしてスマートを
庭
(
には
)
に
押
(
お
)
し
倒
(
こか
)
した。
041
スマートは
仰向
(
あふむけ
)
に
転
(
こ
)
けたまま
呑気
(
のんき
)
な
風
(
ふう
)
で
足
(
あし
)
で
空
(
くう
)
をかいて
居
(
ゐ
)
る。
042
お千代
『ア、
043
此
(
この
)
犬
(
いぬ
)
は
牝
(
めす
)
だわ。
044
さアおスマちやま、
045
お
千代
(
ちよ
)
と
春先
(
はるさき
)
でもあり、
046
陽気
(
やうき
)
がいいから、
047
林
(
はやし
)
の
中
(
なか
)
へ
行
(
い
)
つて
遊
(
あそ
)
んで
来
(
き
)
ませう。
048
兎
(
うさぎ
)
でも
居
(
を
)
つたら
脅
(
おど
)
してやりませうね』
049
と
云
(
い
)
ひながら
頭
(
あたま
)
を
撫
(
な
)
でる。
050
スマートはムツクと
起
(
お
)
き
上
(
あが
)
り、
051
お
千代
(
ちよ
)
の
後
(
あと
)
について
山林
(
さんりん
)
の
中
(
なか
)
へ
遊
(
あそ
)
びに
行
(
ゆ
)
く。
052
後
(
あと
)
に
松姫
(
まつひめ
)
は
只
(
ただ
)
一人
(
ひとり
)
手
(
て
)
を
組
(
く
)
んで
思案
(
しあん
)
にくれてゐた。
053
松姫
『あああ、
054
高姫
(
たかひめ
)
さまは
困
(
こま
)
つた
方
(
かた
)
だな。
055
どうしたら
本当
(
ほんたう
)
の
御
(
ご
)
改心
(
かいしん
)
が
出来
(
でき
)
るのだらう。
056
初稚姫
(
はつわかひめ
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
手紙
(
てがみ
)
によれば、
057
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
はスツカリ
精神
(
せいしん
)
乱
(
みだ
)
れ、
058
金毛
(
きんまう
)
九尾
(
きうび
)
の
悪狐
(
あくこ
)
や
蟇
(
がま
)
や
蛇
(
へび
)
や
狸
(
たぬき
)
、
059
鼬
(
いたち
)
などの
無料
(
むれう
)
合宿所
(
がつしゆくしよ
)
になつてゐられるとの
事
(
こと
)
、
060
それに
又
(
また
)
杢助
(
もくすけ
)
と
名告
(
なの
)
つてるのは、
061
初稚姫
(
はつわかひめ
)
様
(
さま
)
のお
父
(
とう
)
さまでなくて
大雲山
(
たいうんざん
)
の
妖幻坊
(
えうげんばう
)
だとか、
062
ほんとにいやらしい
化物
(
ばけもの
)
をつれて、
063
夫婦
(
ふうふ
)
気取
(
きど
)
りで、
064
こんな
処
(
ところ
)
に
出
(
で
)
て
来
(
き
)
て
松姫
(
まつひめ
)
を
追
(
お
)
ひ
出
(
だ
)
し、
065
自分
(
じぶん
)
が
教主
(
けうしゆ
)
にならうとは、
066
どうした
事
(
こと
)
だらう。
067
私
(
わたし
)
は
別
(
べつ
)
に
此処
(
ここ
)
の
神司
(
かむつかさ
)
に
執着心
(
しふちやくしん
)
はないのだけれど、
068
悪神
(
あくがみ
)
にみすみす
此処
(
ここ
)
を
開
(
あ
)
け
渡
(
わた
)
して
出
(
で
)
る
訳
(
わけ
)
にも
行
(
ゆ
)
かない。
069
そんな
事
(
こと
)
しては
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
にも
済
(
す
)
まない。
070
ここは
何処
(
どこ
)
までも
孤軍
(
こぐん
)
奮闘
(
ふんとう
)
の
覚悟
(
かくご
)
でなければならない。
071
ああ
国治立
(
くにはるたちの
)
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
、
072
豊国姫
(
とよくにひめの
)
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
、
073
木花姫
(
このはなひめの
)
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
、
074
金勝要
(
きんかつかねの
)
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
、
075
守
(
まも
)
り
給
(
たま
)
へ
幸
(
さきは
)
へ
給
(
たま
)
へ、
076
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
』
077
と
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
祈
(
いの
)
つてゐる。
078
そこへバラバラとやつて
来
(
き
)
たのは
初
(
はつ
)
、
079
徳
(
とく
)
の
両人
(
りやうにん
)
であつた。
080
足許
(
あしもと
)
もヨロヨロしながら
両人
(
りやうにん
)
は、
081
初、徳
『
松姫
(
まつひめ
)
さま、
082
エー、
083
一寸
(
ちよつと
)
御
(
ご
)
報告
(
ほうこく
)
に
来
(
き
)
ましたが、
084
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
、
085
ウラナイ
教
(
けう
)
の
元
(
もと
)
の
教祖
(
けうそ
)
高姫
(
たかひめ
)
さまがお
越
(
こ
)
しになつて
居
(
を
)
ります。
086
そして
松姫
(
まつひめ
)
は
何故
(
なぜ
)
私
(
わたし
)
が
来
(
き
)
てゐるのが
分
(
わか
)
つてゐるのに
挨拶
(
あいさつ
)
に
来
(
こ
)
ないのか。
087
御用
(
ごよう
)
が
済
(
す
)
んだら
出
(
で
)
て
来
(
く
)
ると
云
(
い
)
つておきながら、
088
まだ
出
(
で
)
て
来
(
こ
)
ないと
云
(
い
)
つて、
089
大変
(
たいへん
)
な
立腹
(
りつぷく
)
で
厶
(
ござ
)
ります。
090
そして
此
(
この
)
館
(
やかた
)
は
今日
(
けふ
)
から
高姫
(
たかひめ
)
が
教主
(
けうしゆ
)
だ。
091
杢助
(
もくすけ
)
様
(
さま
)
が
監督
(
かんとく
)
に
来
(
き
)
たのだと、
092
それはそれはえらい
御
(
ご
)
権幕
(
けんまく
)
で
厶
(
ござ
)
りますよ。
093
早
(
はや
)
く
御
(
ご
)
挨拶
(
あいさつ
)
においで
下
(
くだ
)
さいませぬと、
094
貴女
(
あなた
)
のお
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
に
関
(
くわん
)
した
一大事
(
いちだいじ
)
が
出来
(
しゆつたい
)
致
(
いた
)
しますから、
095
ソツと
御
(
ご
)
注意
(
ちゆうい
)
に
参
(
まゐ
)
りました』
096
松姫
『
仮令
(
たとへ
)
高姫
(
たかひめ
)
さまが
此処
(
ここ
)
の
教主
(
けうしゆ
)
になられようが、
097
事務
(
じむ
)
を
引継
(
ひきつ
)
がぬ
間
(
うち
)
は
此処
(
ここ
)
は
松姫
(
まつひめ
)
の
管轄権
(
くわんかつけん
)
内
(
ない
)
にあるのだから、
098
折角
(
せつかく
)
伺
(
うかが
)
ふと
云
(
い
)
つたけど、
099
私
(
わたし
)
の
方
(
はう
)
からよう
伺
(
うかが
)
はないから、
100
高姫
(
たかひめ
)
さまと
杢助
(
もくすけ
)
さまに、
101
此方
(
こちら
)
へ
出
(
で
)
て
来
(
き
)
て
貰
(
もら
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
102
それが
至当
(
したう
)
だからな』
103
初
(
はつ
)
『
松姫
(
まつひめ
)
さま、
104
何
(
なん
)
とえらい
勢
(
いきほひ
)
ですな。
105
泣
(
な
)
く
子
(
こ
)
と
地頭
(
ぢとう
)
とには
勝
(
か
)
たれないと
云
(
い
)
つて、
106
そこは
貴女
(
あなた
)
の
方
(
はう
)
から
折
(
を
)
れてかかりなさるがお
得
(
とく
)
かも
知
(
し
)
れませぬよ。
107
きつと
悪
(
わる
)
い
事
(
こと
)
は
申
(
まを
)
しませぬ。
108
貴女
(
あなた
)
も
足掛
(
あしか
)
け
首掛
(
くびか
)
け
四年振
(
よねんぶり
)
此処
(
ここ
)
に
厶
(
ござ
)
つたのだから、
109
今日
(
けふ
)
俄
(
にはか
)
に
立退
(
たちの
)
き
命令
(
めいれい
)
を
下
(
くだ
)
されては
面白
(
おもしろ
)
う
厶
(
ござ
)
りますまい。
110
それは
私
(
わたし
)
もお
察
(
さつ
)
し
申
(
まを
)
して
居
(
を
)
ります。
111
併
(
しか
)
しながら、
112
これも
因縁
(
いんねん
)
だと
諦
(
あきら
)
めて、
113
素直
(
すなほ
)
に
高姫
(
たかひめ
)
さまや
杢助
(
もくすけ
)
さまに
御
(
ご
)
面会
(
めんくわい
)
をなさるが
宜
(
よろ
)
しい。
114
そしたら
又
(
また
)
何
(
なん
)
とか
貴女
(
あなた
)
の
都合
(
つがふ
)
のいいやう
取計
(
とりはか
)
らつて
下
(
くだ
)
さるでせうからな』
115
松姫
『
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても、
116
そんな
理由
(
りいう
)
はありませぬから、
117
高姫
(
たかひめ
)
さまに
私交
(
しかう
)
上
(
じやう
)
としては
私
(
わたし
)
の
師匠
(
ししやう
)
だから
済
(
す
)
まないが、
118
公
(
おほやけ
)
の
道
(
みち
)
から
行
(
い
)
けば
私
(
わたし
)
は
此処
(
ここ
)
の
神司
(
かむつかさ
)
、
119
何
(
なん
)
の
遠慮
(
ゑんりよ
)
もありませぬから、
120
何卒
(
どうぞ
)
私
(
わたし
)
の
職務
(
しよくむ
)
として
調
(
しら
)
べたい
事
(
こと
)
がある、
121
よつて
直様
(
すぐさま
)
御
(
ご
)
両人
(
りやうにん
)
に
此方
(
こちら
)
へ
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さる
様
(
やう
)
に
伝達
(
でんたつ
)
して
下
(
くだ
)
さい』
122
初
『それでも
大変
(
たいへん
)
な
権幕
(
けんまく
)
で、
123
動
(
うご
)
きさうにや
厶
(
ござ
)
りませぬ。
124
そんな
事
(
こと
)
をお
伝
(
つた
)
へしようものなら、
125
私
(
わたし
)
は
折角
(
せつかく
)
杢助
(
もくすけ
)
さまの
片腕
(
かたうで
)
になつた
職務
(
しよくむ
)
まで
剥奪
(
はくだつ
)
されて
了
(
しま
)
ひます。
126
のう
徳
(
とく
)
よ、
127
さうぢやないか』
128
徳
(
とく
)
『ウン』
129
松姫
(
まつひめ
)
『これ、
130
初
(
はつ
)
さま、
131
お
前
(
まへ
)
さまは
杢助
(
もくすけ
)
さまの
片腕
(
かたうで
)
になつたと
今
(
いま
)
云
(
い
)
ひましたね』
132
初
(
はつ
)
『ハイ、
133
確
(
たしか
)
に
申
(
まを
)
しました。
134
新教主
(
しんけうしゆ
)
高姫
(
たかひめ
)
殿
(
どの
)
の
夫
(
をつと
)
杢助
(
もくすけ
)
、
135
又
(
また
)
の
御名
(
みな
)
は
時置師
(
ときおかし
)
の
神
(
かみ
)
、
136
斎苑
(
いそ
)
の
館
(
やかた
)
の
総務
(
そうむ
)
を
遊
(
あそ
)
ばす
杢助
(
もくすけ
)
様
(
さま
)
の
両腕
(
りやううで
)
と
両人
(
りやうにん
)
がなつたのだから、
137
凡
(
すべ
)
ての
宣伝使
(
せんでんし
)
を
頤
(
あご
)
で
使
(
つか
)
ふ
初
(
はつ
)
さま、
138
徳
(
とく
)
さまですよ。
139
如何
(
いか
)
に
松姫
(
まつひめ
)
さまだつて、
140
もう
斯
(
か
)
うなつた
上
(
うへ
)
は
此
(
この
)
初
(
はつ
)
さま、
141
徳
(
とく
)
さまの
命令
(
めいれい
)
を
聞
(
き
)
かずには
居
(
を
)
られますまい。
142
如何
(
いかが
)
で
厶
(
ござ
)
る。
143
返答
(
へんたふ
)
承
(
うけたま
)
はりませう』
144
松姫
『ホホホホホ
愈
(
いよいよ
)
三助
(
さんすけ
)
人形
(
にんぎやう
)
か
痩
(
やせ
)
バツタの
様
(
やう
)
なスタイルをして、
145
よくも
威張
(
ゐば
)
つたものだね。
146
お
前
(
まへ
)
さまは
杢助
(
もくすけ
)
さまの
両腕
(
りやううで
)
になつたか
知
(
し
)
らないが、
147
此処
(
ここ
)
に
居
(
を
)
る
間
(
あひだ
)
は
此
(
この
)
松姫
(
まつひめ
)
の
命令
(
めいれい
)
を
聞
(
き
)
かなくちやなりますまい。
148
魔我彦
(
まがひこ
)
からお
役目
(
やくめ
)
解除
(
かいぢよ
)
の
辞令
(
じれい
)
でも
受
(
う
)
けた
上
(
うへ
)
、
149
杢助
(
もくすけ
)
さまの
推薦
(
すいせん
)
によつて、
150
八島主
(
やしまぬし
)
さまから
立派
(
りつぱ
)
な
辞令
(
じれい
)
を
頂
(
いただ
)
いて
来
(
こ
)
なくちや
駄目
(
だめ
)
ですよ。
151
そんな
夢
(
ゆめ
)
なんか、
152
いい
加減
(
かげん
)
にお
覚
(
さ
)
ましなさるが
宜
(
よ
)
からうぞや』
153
初
『
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
駄目
(
だめ
)
ですよ。
154
現
(
げん
)
に
杢助
(
もくすけ
)
様
(
さま
)
の
口
(
くち
)
から
仰有
(
おつしや
)
つたのですもの。
155
そして
高姫
(
たかひめ
)
さまが
証拠人
(
しようこにん
)
ですもの。
156
ヘン、
157
之
(
これ
)
が
違
(
ちが
)
ひつこはありませぬわい、
158
のう
徳公
(
とくこう
)
』
159
と
初公
(
はつこう
)
は、
160
初
『ウン ウン ウン』
161
と
拳
(
こぶし
)
を
握
(
にぎ
)
り
反身
(
そりみ
)
となり、
162
稍
(
やや
)
酒気
(
しゆき
)
を
帯
(
お
)
びし
事
(
こと
)
とて、
163
高慢面
(
かうまんづら
)
をして
得意気
(
とくいげ
)
に
雄猛
(
をたけ
)
びして
見
(
み
)
せた。
164
松姫
(
まつひめ
)
はあまりの
可笑
(
をか
)
しさに
吹
(
ふ
)
き
出
(
だ
)
し、
165
松姫
『ホホホホホ』
166
と
笑
(
わら
)
ひ
転
(
こ
)
けた。
167
初公
(
はつこう
)
は
大
(
おほ
)
いに
怒
(
いか
)
り、
168
初
『こりや、
169
松姫
(
まつひめ
)
、
170
無礼
(
ぶれい
)
千万
(
せんばん
)
な、
171
勿体
(
もつたい
)
なくも
総務
(
そうむ
)
の
片腕
(
かたうで
)
と
聞
(
きこ
)
えたる、
172
斎苑
(
いそ
)
の
館
(
やかた
)
の
二
(
に
)
の
番頭
(
ばんとう
)
さまだ。
173
某
(
それがし
)
の
面体
(
めんてい
)
を
見
(
み
)
て
笑
(
わら
)
ふと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
があるものか、
174
いや
軽蔑
(
けいべつ
)
致
(
いた
)
すと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
があるか。
175
公私
(
こうし
)
本末
(
ほんまつ
)
、
176
自他
(
じた
)
の
区別
(
くべつ
)
を
知
(
し
)
らねば
決
(
けつ
)
して
神司
(
かむつかさ
)
たる
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ませぬぞ。
177
実
(
じつ
)
の
所
(
ところ
)
は
杢助
(
もくすけ
)
さまが、
178
お
酒
(
さけ
)
の
上
(
うへ
)
ではあるが、
179
私
(
わし
)
等
(
ら
)
に
全権
(
ぜんけん
)
を
任
(
まか
)
すから
松姫
(
まつひめ
)
をボツ
払
(
ぱら
)
へとの
仰
(
おほ
)
せ、
180
さア
初公
(
はつこう
)
の
言葉
(
ことば
)
は
杢助
(
もくすけ
)
の
言葉
(
ことば
)
だ。
181
さア
尻
(
しり
)
を
紮
(
から
)
げてトツトと
出
(
で
)
て
行
(
ゆ
)
け。
182
猶予
(
いうよ
)
に
及
(
およ
)
ばば
了簡
(
れうけん
)
致
(
いた
)
さぬぞや』
183
松姫
『ウツフフフフあのまア、
184
乞食
(
こじき
)
芝居
(
しばゐ
)
が
上手
(
じやうず
)
なこと。
185
さア
一文
(
いちもん
)
あげるから
帰
(
い
)
んで
下
(
くだ
)
さい。
186
もう
沢山
(
たくさん
)
拝見
(
はいけん
)
致
(
いた
)
しました』
187
初
『
愈
(
いよいよ
)
以
(
もつ
)
て
怪
(
け
)
しからぬ
事
(
こと
)
を
申
(
まを
)
す。
188
松姫
(
まつひめ
)
の
阿女奴
(
あまつちよ
)
、
189
さア
只今
(
ただいま
)
限
(
かぎ
)
り
事務
(
じむ
)
を
引渡
(
ひきわた
)
しトツトと
出
(
で
)
て
失
(
う
)
せう。
190
最早
(
もはや
)
其
(
その
)
方
(
はう
)
は
小北山
(
こぎたやま
)
には
何一
(
なにひと
)
つ
用
(
よう
)
もなければ
権利
(
けんり
)
もない。
191
おい
徳公
(
とくこう
)
、
192
貴様
(
きさま
)
は
高姫
(
たかひめ
)
さまの
代理
(
だいり
)
ぢやないか。
193
何故
(
なぜ
)
黙
(
だま
)
つてゐるか』
194
徳公
(
とくこう
)
は
高姫
(
たかひめ
)
気分
(
きぶん
)
になり、
195
肩
(
かた
)
を
揺
(
ゆす
)
り
首
(
くび
)
をふり
婆声
(
ばばごゑ
)
を
出
(
だ
)
して、
196
徳
『これ
松姫
(
まつひめ
)
さま、
197
私
(
わたし
)
は
高姫
(
たかひめ
)
の
代理
(
だいり
)
ぢやぞえ。
198
長
(
なが
)
らく
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
で
厶
(
ござ
)
りました。
199
併
(
しか
)
しながら
今日
(
けふ
)
迄
(
まで
)
お
前
(
まへ
)
さまは
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
都合
(
つがふ
)
で
御用
(
ごよう
)
をさせてあつたのだ。
200
然
(
しか
)
し
上義姫
(
じやうぎひめ
)
はもう
此処
(
ここ
)
に
用事
(
ようじ
)
はない。
201
之
(
これ
)
から
義理
(
ぎり
)
天上
(
てんじやう
)
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
が
此処
(
ここ
)
を
構
(
かま
)
ふによつて、
202
お
前
(
まへ
)
はトツトと
出
(
で
)
て
行
(
い
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
203
それとも
十分
(
じふぶん
)
改悪
(
かいあく
)
して、
204
杢助
(
もくすけ
)
や
高姫
(
たかひめ
)
の
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
を
聞
(
き
)
くなら、
205
炊事場
(
すゐじば
)
のおサンどんに
使
(
つか
)
つて
上
(
あ
)
げぬ
事
(
こと
)
もない。
206
然
(
しか
)
しお
前
(
まへ
)
も
此処
(
ここ
)
に
住
(
す
)
み
慣
(
な
)
れて
来
(
き
)
たのだから、
207
此処
(
ここ
)
を
追
(
お
)
ひ
出
(
だ
)
されるのは
残念
(
ざんねん
)
だらう。
208
それは
高姫
(
たかひめ
)
もよく
分
(
わか
)
つてる。
209
それでお
前
(
まへ
)
さまは、
210
どんと、
211
かばちを
下
(
さ
)
げて
炊事
(
すゐじ
)
の
御用
(
ごよう
)
か
雪隠
(
せつちん
)
の
掃除
(
さうぢ
)
をなさいませ。
212
そこまで
苦労
(
くらう
)
をなさらぬと、
213
今
(
いま
)
から
偉
(
えら
)
さうに
教主
(
けうしゆ
)
だなんて
威張
(
ゐば
)
つて
居
(
を
)
ると、
214
猿
(
さる
)
も
木
(
き
)
からバツサリ
落
(
お
)
ちる
例
(
れい
)
もありますぞや。
215
サアサア、
216
返答
(
へんたふ
)
々々
(
へんたふ
)
、
217
如何
(
いかが
)
で
厶
(
ござ
)
る。
218
高姫
(
たかひめ
)
の
代理
(
だいり
)
が
此処
(
ここ
)
でキツパリと
承
(
うけたまは
)
りませう。
219
さてもさても
残念
(
ざんねん
)
さうなお
顔
(
かほ
)
だな。
220
他人
(
たにん
)
の
俺
(
わし
)
でさへ
涙
(
なみだ
)
が
零
(
こぼ
)
れませぬわい。
221
アーン、
222
アーンアーンアーンアーン アハハハハハ、
223
泣
(
な
)
くのか
笑
(
わら
)
ふのか、
224
いやもう
訳
(
わけ
)
がわかりませぬ。
225
松姫
(
まつひめ
)
さまの
事
(
こと
)
を
思
(
おも
)
へば
泣
(
な
)
きたくなり、
226
高姫
(
たかひめ
)
さまの
事
(
こと
)
は
思
(
おも
)
へば
笑
(
わら
)
ひたくなる。
227
悲
(
かな
)
しい
事
(
こと
)
と
嬉
(
うれ
)
しい
事
(
こと
)
と
一度
(
いちど
)
になつて
来
(
き
)
た。
228
親
(
おや
)
の
死
(
し
)
んだ
処
(
ところ
)
へ
花嫁
(
はなよめ
)
が
出
(
で
)
て
来
(
き
)
た
様
(
やう
)
な
心持
(
こころもち
)
だ。
229
悲喜
(
ひき
)
交々
(
こもごも
)
相混
(
あひまじ
)
り
苦楽
(
くらく
)
一度
(
いちど
)
に
到来
(
たうらい
)
す。
230
上
(
のぼ
)
る
人
(
ひと
)
と
下
(
くだ
)
る
人
(
ひと
)
、
231
ほんに
浮世
(
うきよ
)
は
儘
(
まま
)
ならぬものだな。
232
アツハハハハ「アーンアーンアーンオーンオーンオーン
如何
(
どう
)
しようぞいなー
如何
(
どう
)
しようぞいなー。
233
此
(
この
)
行先
(
ゆくさき
)
はお
千代
(
ちよ
)
を
連
(
つ
)
れて
袖乞
(
そでご
)
ひ、
234
物貰
(
ものもら
)
ひに
歩
(
ある
)
かにやならぬと
思
(
おも
)
や、
235
俺
(
わし
)
は
胸
(
むね
)
が
引裂
(
ひきさ
)
けるやうに
思
(
おも
)
ふワイのー……(義太夫)
之
(
これ
)
と
云
(
い
)
ふのも
前
(
さき
)
の
世
(
よ
)
で、
236
如何
(
いか
)
なる
事
(
こと
)
の
罪
(
つみ
)
せしか、
237
悲
(
かな
)
しさ
辛
(
つら
)
さ、
238
身
(
み
)
も
世
(
よ
)
もあられぬ
憂
(
う
)
き
思
(
おも
)
ひ、
239
エエヘヘヘヘンエーーーー、
240
如何
(
どう
)
しようぞいなー」エーエ、
241
到頭
(
たうとう
)
俺
(
わし
)
の
体
(
からだ
)
に
松姫
(
まつひめ
)
さまの
副
(
ふく
)
守護神
(
しゆごじん
)
がのり
憑
(
うつ
)
りやがつて、
242
泣
(
な
)
いたり
笑
(
わら
)
つたり、
243
いやもううつり
易
(
やす
)
い
水晶魂
(
すいしやうみたま
)
は
斯
(
こ
)
んなに
苦
(
くる
)
しいものかなア。
244
のう
初公
(
はつこう
)
、
245
俺
(
おれ
)
等
(
たち
)
もヤツパリ
春
(
はる
)
が
来
(
き
)
たぢやないか。
246
此
(
この
)
好機
(
かうき
)
を
逸
(
いつ
)
して、
247
何時
(
いつ
)
の
日
(
ひ
)
か、
248
出世
(
しゆつせ
)
の
時
(
とき
)
を
得
(
え
)
むやだ。
249
おい、
250
有力
(
いうりよく
)
なる
後援者
(
こうゑんしや
)
が
出来
(
でき
)
たのだから、
251
チツとは
無理
(
むり
)
でも
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
でも、
252
奴隷
(
どれい
)
的
(
てき
)
道徳
(
だうとく
)
は
廃
(
や
)
めにして
権利
(
けんり
)
義務
(
ぎむ
)
を
主張
(
しゆちやう
)
し、
253
自分
(
じぶん
)
の
位地
(
ゐち
)
を
高
(
たか
)
めるのが
一等
(
いつとう
)
だぞ。
254
のう
初公
(
はつこう
)
、
255
確
(
しつか
)
りやつてくれ。
256
俺
(
おれ
)
も
今度
(
こんど
)
は
大車輪
(
だいしやりん
)
だから、
257
イツヒヒヒヒヒ』
258
松姫
『ホホホホホ、
259
あのまアお
二人
(
ふたり
)
さま、
260
揃
(
そろ
)
ひも
揃
(
そろ
)
うて、
261
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
に、
262
そんな
芝居
(
しばゐ
)
を
覚
(
おぼ
)
えて
来
(
き
)
たの。
263
犬
(
いぬ
)
が
笑
(
わら
)
ひますよ』
264
初
(
はつ
)
『こりや、
265
松姫
(
まつひめ
)
、
266
何処
(
どこ
)
までも
教主面
(
けうしゆづら
)
をさげやがつて、
267
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
二人
(
ふたり
)
を
何
(
なん
)
と
心得
(
こころえ
)
てる。
268
無礼
(
ぶれい
)
ぢやないか。
269
左様
(
さやう
)
な
失礼
(
しつれい
)
なことを
申
(
まを
)
すと、
270
此
(
この
)
儘
(
まま
)
には
差許
(
さしゆる
)
さぬぞ』
271
徳
(
とく
)
『こーりや
松姫
(
まつひめ
)
、
272
何
(
なん
)
と
心得
(
こころえ
)
てる。
273
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
の
徳
(
とく
)
さまや
初
(
はつ
)
さまとはチツと
値段
(
ねだん
)
が
違
(
ちが
)
ふのだ。
274
エー、
275
俄
(
にはか
)
仕入
(
しい
)
れのバチ
者
(
もの
)
とは
違
(
ちが
)
つて
上等
(
じやうとう
)
舶来品
(
はくらいひん
)
だ。
276
あまり
見違
(
みちが
)
へを
致
(
いた
)
して
貰
(
もら
)
はうまいかい』
277
松姫
『ホホホホホ、
278
虎
(
とら
)
の
威
(
ゐ
)
をかる
糞喰
(
くそく
)
ひ
狐
(
ぎつね
)
とはお
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
の
事
(
こと
)
だよ。
279
もう
斯
(
か
)
うなつちや
松姫
(
まつひめ
)
も
了簡
(
れうけん
)
なりませぬ。
280
さア
今日
(
けふ
)
只今
(
ただいま
)
から
暇
(
ひま
)
をつかはすによつてお
帰
(
かへ
)
りなさい。
281
一
(
いつ
)
分間
(
ぷんかん
)
も
此
(
この
)
聖場
(
せいぢやう
)
にはお
前
(
まへ
)
の
様
(
やう
)
な
薄情者
(
はくじやうもの
)
置
(
お
)
く
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ませぬ』
282
初
(
はつ
)
『ヘン、
283
馬鹿
(
ばか
)
にすない。
284
もう
此
(
この
)
小北山
(
こぎたやま
)
は
貴様
(
きさま
)
の
権利
(
けんり
)
ぢやないぞ。
285
勿体
(
もつたい
)
なくも
杢助
(
もくすけ
)
さまの
御
(
ご
)
監督
(
かんとく
)
の
許
(
もと
)
に
高姫
(
たかひめ
)
さまの
御
(
ご
)
管轄
(
くわんかつ
)
区域
(
くゐき
)
だ。
286
お
前
(
まへ
)
の
方
(
はう
)
から
暇
(
ひま
)
を
貰
(
もら
)
ふよりも、
287
こつちの
方
(
はう
)
から
暇
(
ひま
)
をくれてやるのだ。
288
有難
(
ありがた
)
く
思
(
おも
)
へ。
289
さアさア
出
(
で
)
て
行
(
ゆ
)
かう
出
(
で
)
て
行
(
ゆ
)
かう。
290
グヅグヅして
居
(
ゐ
)
ると
邪魔
(
じやま
)
になるわい』
291
徳
(
とく
)
『おい、
292
こんな
分
(
わか
)
らぬ
女
(
をんな
)
に
何時
(
いつ
)
まで
掛合
(
かけあ
)
つた
所
(
ところ
)
が
駄目
(
だめ
)
だ。
293
杢助
(
もくすけ
)
さまがやつつけて
了
(
しま
)
へと
仰有
(
おつしや
)
つたぢやないか。
294
おい、
295
やつつけろ やつつけろ』
296
初
『よし
来
(
き
)
た』
297
と
二人
(
ふたり
)
は
仁王立
(
にわうだち
)
となり、
298
松姫
(
まつひめ
)
を
中
(
なか
)
に
置
(
お
)
いて、
299
今
(
いま
)
や
拳骨
(
げんこつ
)
を
固
(
かた
)
めて
飛鳥
(
ひてう
)
の
如
(
ごと
)
く
飛
(
と
)
びかからむとしてゐる。
300
松姫
(
まつひめ
)
は
泰然
(
たいぜん
)
自若
(
じじやく
)
として
少
(
すこ
)
しも
騒
(
さわ
)
がず、
301
二人
(
ふたり
)
の
目
(
め
)
を
見
(
み
)
つめてゐる。
302
両人
(
りやうにん
)
は
打掛
(
うちかか
)
らうとすれども、
303
何故
(
なにゆゑ
)
か、
304
松姫
(
まつひめ
)
の
身体
(
からだ
)
から
光
(
ひかり
)
が
出
(
で
)
る
様
(
やう
)
に
思
(
おも
)
はれて、
305
目
(
め
)
が
眩
(
くら
)
み
飛
(
と
)
びつく
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ない。
306
松姫
(
まつひめ
)
は
心
(
こころ
)
静
(
しづ
)
かに
歌
(
うた
)
を
歌
(
うた
)
つてゐる。
307
松姫
『
虎
(
とら
)
の
威
(
ゐ
)
をかる
古狐
(
ふるぎつね
)
308
小北
(
こぎた
)
の
山
(
やま
)
に
現
(
あら
)
はれて
309
松姫館
(
まつひめやかた
)
に
侵入
(
しんにふ
)
し
310
無道
(
ぶだう
)
の
難題
(
なんだい
)
吹
(
ふ
)
きかけて
311
卑怯
(
ひけふ
)
未練
(
みれん
)
に
両人
(
りやうにん
)
が
312
嚇
(
おど
)
し
文句
(
もんく
)
を
並
(
なら
)
べ
立
(
た
)
て
313
木偶坊
(
でくばう
)
の
様
(
やう
)
なその
姿
(
なり
)
で
314
握
(
にぎ
)
り
拳
(
こぶし
)
を
固
(
かた
)
めつつ
315
慄
(
ふる
)
ひゐるこそ
可笑
(
をか
)
しけれ
316
初公
(
はつこう
)
、
徳公
(
とくこう
)
よく
聞
(
き
)
けよ
317
杢助司
(
もくすけつかさ
)
と
名告
(
なの
)
りゐる
318
彼
(
かれ
)
は
誠
(
まこと
)
の
人
(
ひと
)
でない
319
大雲山
(
たいうんざん
)
に
蟠
(
わだか
)
まる
320
八岐
(
やまた
)
大蛇
(
をろち
)
の
片腕
(
かたうで
)
と
321
兇党界
(
きようたうかい
)
にて
幅
(
はば
)
利
(
き
)
かす
322
妖幻坊
(
えうげんばう
)
の
曲津
(
まがつ
)
ぞや
323
高姫司
(
たかひめつかさ
)
は
恋淵
(
こひぶち
)
に
324
知
(
し
)
らず
知
(
し
)
らずに
陥
(
おちい
)
りて
325
妖怪
(
えうくわい
)
変化
(
へんげ
)
と
知
(
し
)
らずして
326
杢助司
(
もくすけつかさ
)
と
思
(
おも
)
ひつめ
327
得意
(
とくい
)
になつて
今
(
いま
)
此処
(
ここ
)
に
328
夫婦
(
ふうふ
)
気取
(
きど
)
りで
来
(
き
)
たなれど
329
決
(
けつ
)
して
誠
(
まこと
)
の
三五
(
あななひ
)
の
330
八島
(
やしま
)
の
主
(
ぬし
)
のお
言葉
(
ことば
)
に
331
従
(
したが
)
ひ
来
(
きた
)
りしものでない
332
これの
館
(
やかた
)
を
奪
(
うば
)
はむと
333
曲津
(
まがつ
)
の
神
(
かみ
)
に
唆
(
そそ
)
られて
334
悪逆
(
あくぎやく
)
無道
(
ぶだう
)
の
企
(
たく
)
みをば
335
敢行
(
かんかう
)
せむとするものぞ
336
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
二人
(
ふたり
)
は
曲神
(
まがかみ
)
に
337
魂
(
たま
)
をぬかれて
目
(
め
)
が
眩
(
くら
)
み
338
名利
(
めいり
)
の
欲
(
よく
)
に
迷
(
まよ
)
ひつつ
339
見
(
み
)
るに
堪
(
た
)
へざる
狂態
(
きやうたい
)
を
340
演
(
えん
)
ずるものぞ、いと
惜
(
を
)
しや
341
早
(
はや
)
く
心
(
こころ
)
を
改
(
あらた
)
めて
342
此
(
この
)
松姫
(
まつひめ
)
が
言
(
こと
)
の
葉
(
は
)
を
343
完全
(
うまら
)
に
委曲
(
つばら
)
に
聞
(
き
)
くがよい
344
早
(
はや
)
目
(
め
)
を
覚
(
さ
)
ませ
目
(
め
)
を
覚
(
さ
)
ませ
345
神
(
かみ
)
は
汝
(
なんぢ
)
と
倶
(
とも
)
にあり
346
汝
(
なんぢ
)
も
神
(
かみ
)
の
子
(
こ
)
神
(
かみ
)
の
宮
(
みや
)
347
恵
(
めぐ
)
みの
光
(
ひかり
)
に
照
(
てら
)
されて
348
正
(
ただ
)
しき
神
(
かみ
)
の
御子
(
みこ
)
となり
349
吾
(
われ
)
に
犯
(
おか
)
せし
罪科
(
つみとが
)
を
350
此
(
この
)
場
(
ば
)
で
直
(
すぐ
)
に
悔悟
(
くわいご
)
せば
351
許
(
ゆる
)
してやらむ
惟神
(
かむながら
)
352
神
(
かみ
)
に
誓
(
ちか
)
ひて
両人
(
りやうにん
)
に
353
完全
(
うまら
)
に
委曲
(
つばら
)
に
宣
(
の
)
り
伝
(
つた
)
ふ
354
ああ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
355
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はひましませよ』
356
と
歌
(
うた
)
ひ
終
(
をは
)
るや、
357
両人
(
りやうにん
)
は
両眼
(
りやうがん
)
より
涙
(
なみだ
)
をハラハラと
流
(
なが
)
した。
358
そして
少
(
すこ
)
しく
首
(
くび
)
を
動
(
うご
)
かし
改心
(
かいしん
)
の
意
(
い
)
を
表
(
へう
)
した。
359
松姫
(
まつひめ
)
は
忽
(
たちま
)
ち
霊縛
(
れいばく
)
を
解
(
と
)
いた。
360
二人
(
ふたり
)
は
身体
(
しんたい
)
もとの
如
(
ごと
)
くになり、
361
パタパタと
表
(
おもて
)
へ
駆
(
か
)
け
出
(
だ
)
した。
362
果
(
はた
)
して
彼
(
かれ
)
等
(
ら
)
両人
(
りやうにん
)
は
改心
(
かいしん
)
したであらうか。
363
但
(
ただし
)
は
再
(
ふたた
)
び
悪意
(
あくい
)
を
起
(
おこ
)
して、
364
松姫
(
まつひめ
)
に
対
(
たい
)
し
如何
(
いか
)
なる
危害
(
きがい
)
を
与
(
あた
)
へむとするであらうか。
365
後節
(
こうせつ
)
に
於
(
おい
)
て
審
(
つまび
)
らかになるであらう。
366
ああ
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
。
367
(
大正一二・一・二五
旧一一・一二・九
北村隆光
録)
Δこのページの一番上に戻るΔ
<<< 犬馬の労
(B)
(N)
教唆 >>>
霊界物語
>
真善美愛(第49~60巻)
>
第51巻(寅の巻)
> 第1篇 霊光照魔 > 第4章 乞食劇
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【
メールアドレス
】
【第4章 乞食劇|第51巻|真善美愛|霊界物語|/rm5104】
合言葉「みろく」を入力して下さい→