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霊界物語
真善美愛(第49~60巻)
第51巻(寅の巻)
序文
総説
第1篇 霊光照魔
第1章 春の菊
第2章 怪獣策
第3章 犬馬の労
第4章 乞食劇
第5章 教唆
第6章 舞踏怪
第2篇 夢幻楼閣
第7章 曲輪玉
第8章 曲輪城
第9章 鷹宮殿
第10章 女異呆醜
第3篇 鷹魅艶態
第11章 乙女の遊
第12章 初花姫
第13章 槍襖
第14章 自惚鏡
第15章 餅の皮
第4篇 夢狸野狸
第16章 暗闘
第17章 狸相撲
第18章 糞奴使
第19章 偽強心
第20章 狸姫
第21章 夢物語
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第51巻(寅の巻)
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<<< 餅の皮
(B)
(N)
狸相撲 >>>
第一六章
暗闘
(
あんとう
)
〔一三三一〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第51巻 真善美愛 寅の巻
篇:
第4篇 夢狸野狸
よみ(新仮名遣い):
むりやり
章:
第16章 暗闘
よみ(新仮名遣い):
あんとう
通し章番号:
1331
口述日:
1923(大正12)年01月27日(旧12月11日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年12月29日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
小北山では、初と徳の両人が文助に乱暴して、杢助が落としたブンブン玉を奪って行ったことでちょっとした騒ぎになっていた。お菊は文助からその話を聞いて怒り、お千代に文助の介抱を任せると、初と徳を追いかけて飛び出した。
怪志の森に来てみると日が暮れてあたりは闇に包まれた。お菊は森の入り口にたたずんで思案にくれていると、ほど遠くない暗がりにウンウンとうめき声が聞こえる。
初と徳は、眼が覚めてみると玉を奪って逃げてきたときの動悸はまだ止まず、痛みも軽減していない。あたりを見れば、高姫と杢助は、自分たちを置いてどこかへ立ち去ってしまった様子である。
お菊は二人の話をすっかり聞いて、高姫と杢助が、曲輪の玉を持って逃げてしまったことを悟った。お菊は文助の声色を使い、幽霊のふりをして二人をおどかしにかかった。
初と徳は、高姫がまだその辺にいて、おどかしているのだと勘違いした。お菊は今度は高姫と杢助の声色を使い、高姫と杢助が二人を使い捨てにしたことをなぞって二人をたきつけた。そして高姫のふりをして、暗闇の中から杖で二人を殴りつけた。
二人は、高姫が暗がりから叩いているのだと思って怒り散らしながら右往左往している。お菊は杖を打ち振って手当たり次第に殴り倒し、笑い声を残すと森を立ち出で、息を殺して二人の様子を考えていた。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2019-01-16 00:55:39
OBC :
rm5116
愛善世界社版:
233頁
八幡書店版:
第9輯 350頁
修補版:
校定版:
239頁
普及版:
107頁
初版:
ページ備考:
001
春風
(
はるかぜ
)
かをる
小北山
(
こぎたやま
)
002
木々
(
きぎ
)
の
梢
(
こずゑ
)
も
緑
(
みどり
)
して
003
梅
(
うめ
)
散
(
ち
)
り
桃
(
もも
)
は
紫
(
むらさき
)
の
004
花
(
はな
)
を
梢
(
こずゑ
)
に
飾
(
かざ
)
りつつ
005
神
(
かみ
)
の
御稜威
(
みいづ
)
も
灼然
(
いやちこ
)
に
006
老若
(
らうにやく
)
男女
(
なんによ
)
の
朝夕
(
あさゆふ
)
に
007
足跡
(
そくせき
)
たえぬ
神
(
かみ
)
の
庭
(
には
)
008
訪
(
たづ
)
ね
来
(
きた
)
りし
高姫
(
たかひめ
)
や
009
妖幻坊
(
えうげんばう
)
の
杢助
(
もくすけ
)
は
010
神
(
かみ
)
の
御稜威
(
みいづ
)
に
照
(
て
)
らされて
011
醜
(
しこ
)
の
企
(
たく
)
みは
忽
(
たちま
)
ちに
012
露顕
(
ろけん
)
し
岩下
(
がんか
)
に
投
(
な
)
げられて
013
コリヤたまらぬと
尻
(
しり
)
からげ
014
痛
(
いた
)
さをこらへてスタスタと
015
雲
(
くも
)
を
霞
(
かすみ
)
と
逃
(
に
)
げ
下
(
くだ
)
る
016
折柄
(
をりから
)
ヨボヨボ
登
(
のぼ
)
り
来
(
く
)
る
017
盲爺
(
めくらおやぢ
)
の
文助
(
ぶんすけ
)
と
018
衝突
(
しようとつ
)
したる
其
(
その
)
はづみ
019
曲輪
(
まがわ
)
の
玉
(
たま
)
を
遺失
(
ゐしつ
)
して
020
コハさに
慄
(
ふる
)
ひ
戦
(
をのの
)
きつ
021
一目散
(
いちもくさん
)
に
逃
(
に
)
げて
行
(
ゆ
)
く
022
後
(
あと
)
追
(
お
)
つかけて
出
(
い
)
で
来
(
きた
)
る
023
初
(
はつ
)
、
徳
(
とく
)
二人
(
ふたり
)
に
命令
(
めいれい
)
し
024
小北
(
こぎた
)
の
山
(
やま
)
へ
引返
(
ひつかへ
)
し
025
曲輪
(
まがわ
)
の
宝
(
たから
)
を
取返
(
とりかへ
)
し
026
文助
(
ぶんすけ
)
爺
(
おやぢ
)
を
突倒
(
つきたふ
)
し
027
又
(
また
)
もスタスタ
逃
(
に
)
げて
行
(
ゆ
)
く
028
所
(
ところ
)
構
(
かま
)
はず
打撲
(
だぼく
)
され
029
苦
(
くるし
)
み
悶
(
もだ
)
え
文助
(
ぶんすけ
)
は
030
力
(
ちから
)
限
(
かぎ
)
りに
人殺
(
ひとごろ
)
し
031
誰
(
たれ
)
か
出
(
で
)
て
来
(
き
)
て
助
(
たす
)
けよと
032
叫
(
さけ
)
びし
声
(
こゑ
)
に
驚
(
おどろ
)
いて
033
忽
(
たちま
)
ちかけ
来
(
く
)
る
数十
(
すうじふ
)
人
(
にん
)
034
老若
(
ろうにやく
)
男女
(
なんによ
)
の
信徒
(
まめひと
)
は
035
右往
(
うわう
)
左往
(
さわう
)
に
彷徨
(
さまよ
)
ひつ
036
こは
何者
(
なにもの
)
の
仕業
(
しわざ
)
ぞと
037
皆
(
みな
)
とりどりに
話
(
はな
)
しゐる
038
かかる
所
(
ところ
)
へ
階段
(
かいだん
)
を
039
下
(
くだ
)
り
来
(
きた
)
れる
二人
(
ふたり
)
の
女
(
をんな
)
040
お
千代
(
ちよ
)
お
菊
(
きく
)
は
立寄
(
たちよ
)
つて
041
いろいろ
雑多
(
ざつた
)
と
介抱
(
かいはう
)
し
042
文助
(
ぶんすけ
)
爺
(
ぢ
)
さまに
其
(
その
)
由
(
わけ
)
を
043
承
(
うけたま
)
はれば
初
(
はつ
)
、
徳
(
とく
)
の
044
二人
(
ふたり
)
がわれを
突
(
つ
)
き
倒
(
たふ
)
し
045
ブンブン
玉
(
だま
)
の
神宝
(
しんぽう
)
を
046
奪
(
うば
)
つて
直様
(
すぐさま
)
逃
(
に
)
げ
行
(
ゆ
)
きし
047
其
(
その
)
物語
(
ものがたり
)
聞
(
き
)
くよりも
048
侠客育
(
けふかくそだ
)
ちの
両人
(
りやうにん
)
は
049
何条
(
なにでう
)
以
(
もつ
)
て
許
(
ゆる
)
すべき
050
お
千代
(
ちよ
)
を
後
(
あと
)
に
残
(
のこ
)
しおき
051
文助
(
ぶんすけ
)
爺
(
おやぢ
)
の
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
を
052
依頼
(
いらい
)
しおきてお
菊
(
きく
)
嬢
(
ぢやう
)
053
二人
(
ふたり
)
の
後
(
あと
)
を
追
(
お
)
ひかけて
054
雲
(
くも
)
を
霞
(
かすみ
)
と
走
(
はし
)
り
行
(
ゆ
)
く
055
怪志
(
あやし
)
の
森
(
もり
)
に
来
(
き
)
て
見
(
み
)
れば
056
永
(
なが
)
き
春日
(
はるひ
)
も
暮
(
く
)
れはてて
057
あたりは
暗
(
やみ
)
に
包
(
つつ
)
まれぬ
058
お
菊
(
きく
)
は
森
(
もり
)
の
入口
(
いりぐち
)
に
059
佇
(
たたず
)
み
思案
(
しあん
)
にくるる
折
(
をり
)
060
程
(
ほど
)
遠
(
とほ
)
からぬ
暗
(
くら
)
がりに
061
ウンウンウンと
呻
(
うめ
)
き
声
(
ごゑ
)
062
ハテ
訝
(
いぶ
)
かしと
耳
(
みみ
)
すませ
063
腕
(
うで
)
をば
組
(
く
)
みて
聞
(
き
)
きゐたり。
064
初
(
はつ
)
『あああ、
065
余
(
あま
)
り
草臥
(
くたび
)
れて、
066
何時
(
いつ
)
とはなしに
夢路
(
ゆめぢ
)
に
入
(
い
)
つて
了
(
しま
)
つた。
067
併
(
しか
)
しあまり
時間
(
じかん
)
も
経
(
た
)
つてゐないやうだ。
068
其
(
その
)
証拠
(
しようこ
)
には
走
(
はし
)
つて
来
(
き
)
た
時
(
とき
)
の
動悸
(
どうき
)
はまだ
止
(
や
)
まず、
069
痛
(
いた
)
みはチツとも
軽減
(
けいげん
)
してゐないし、
070
汗
(
あせ
)
も
乾
(
かわ
)
いてをらぬ。
071
なア
徳
(
とく
)
、
072
暗
(
くら
)
いと
云
(
い
)
つても、
073
これだけ
暗
(
くら
)
い
夜
(
よ
)
さはないぢやないか。
074
ヤツパリ
怪志
(
あやし
)
の
森
(
もり
)
だな』
075
徳
(
とく
)
『ウーン、
076
俺
(
おれ
)
もまだ
半眠
(
はんみん
)
半醒
(
はんせい
)
状態
(
じやうたい
)
で、
077
トツクリ
寝
(
ね
)
られないワ。
078
何
(
なん
)
だか
胸
(
むね
)
がドキドキして
仕方
(
しかた
)
がない。
079
モシ
高姫
(
たかひめ
)
さま、
080
杢助
(
もくすけ
)
さま、
081
チツと
起
(
お
)
きて
下
(
くだ
)
さいな、
082
ああ
首筋元
(
くびすぢもと
)
がゾクゾクとして
来
(
き
)
ました。
083
あああ、
084
返辞
(
へんじ
)
をして
下
(
くだ
)
さらぬぞ、
085
ヤツパリ
御
(
ご
)
両人
(
りやうにん
)
さまも
草臥
(
くたび
)
れて
寝
(
ね
)
て
厶
(
ござ
)
ると
見
(
み
)
えるな、
086
夜逃
(
よにげ
)
同様
(
どうやう
)
に
撤兵
(
てつぺい
)
して
来
(
き
)
たのだから、
087
草臥
(
くたび
)
れるのも
無理
(
むり
)
はないワイ。
088
何
(
なん
)
せよ
高姫
(
たかひめ
)
さまの
外交
(
ぐわいかう
)
がなつてゐないものだから、
089
こんなヘマを
見
(
み
)
るのだよ。
090
グヅグヅしてると、
091
ここらあたりにバルチザンが
襲来
(
しゆうらい
)
するかも
知
(
し
)
れないよ。
092
其
(
その
)
日
(
ひ
)
暮
(
ぐら
)
しの
日傭
(
ひやと
)
ひ
外交
(
ぐわいかう
)
だからなア。
093
吾々
(
われわれ
)
国民
(
こくみん
)
は
枕
(
まくら
)
を
高
(
たか
)
うして
寝
(
ね
)
られないワ。
094
どう
考
(
かんが
)
へても
真
(
しん
)
から
寝
(
ね
)
つかれないからなア』
095
初
『どうやら、
096
高姫
(
たかひめ
)
さまは
杢助
(
もくすけ
)
と、
097
吾々
(
われわれ
)
雑兵
(
ざふひやう
)
を
放
(
ほ
)
つたらかして、
098
満鉄
(
まんてつ
)
で
逸早
(
いちはや
)
く
逃帰
(
にげかへ
)
つたらしいぞ。
099
併
(
しか
)
し
幽霊
(
いうれい
)
内閣
(
ないかく
)
の
立去
(
たちさ
)
つた
後
(
あと
)
は、
100
何
(
なに
)
が
出
(
で
)
るか
知
(
し
)
れたものぢやないワ。
101
どうしてもコリヤ
吾々
(
われわれ
)
国民
(
こくみん
)
が
腹帯
(
はらおび
)
を
締
(
し
)
め、
102
国民
(
こくみん
)
外交
(
ぐわいかう
)
をやる
気
(
き
)
でないと、
103
当局者
(
たうきよくしや
)
に
任
(
まか
)
しておいても、
104
肝腎
(
かんじん
)
の
時
(
とき
)
になつたら
逃
(
に
)
げられて
了
(
しま
)
ふからなア』
105
徳
『さうだなア、
106
一体
(
いつたい
)
何処
(
どこ
)
まで
逃
(
に
)
げたのだらう』
107
初
『
逃
(
に
)
げるのに、
108
定
(
きま
)
つた
場所
(
ばしよ
)
があるかい。
109
其
(
その
)
時
(
とき
)
の
御
(
ご
)
都合主義
(
つがふしゆぎ
)
だ。
110
敵
(
てき
)
が
遠
(
とほ
)
く
追
(
お
)
つかければ
遠
(
とほ
)
く
逃
(
に
)
げるだけのものだ。
111
今日
(
こんにち
)
の
国際
(
こくさい
)
的
(
てき
)
外交
(
ぐわいかう
)
は、
112
朝
(
あした
)
に
一城
(
いちじやう
)
を
譲
(
ゆづ
)
り
夕
(
ゆふべ
)
に
一塁
(
いちるゐ
)
を
与
(
あた
)
へて、
113
十万
(
じふまん
)
億土
(
おくど
)
のドン
底
(
ぞこ
)
まで
譲歩
(
じやうほ
)
するのだからなア。
114
それが
所謂
(
いはゆる
)
宋襄
(
そうじやう
)
仁者
(
じんしや
)
の
唯一
(
ゆゐいつ
)
の
武器
(
ぶき
)
だ、
115
最善
(
さいぜん
)
の
方法
(
はうはふ
)
だ。
116
弱
(
よわ
)
い
者
(
もの
)
には
何処
(
どこ
)
までも
追
(
お
)
つかけて
行
(
ゆ
)
く
程
(
ほど
)
利益
(
りえき
)
だが、
117
強
(
つよ
)
い
奴
(
やつ
)
には
逃
(
に
)
げるのが
最
(
もつと
)
も
賢明
(
けんめい
)
な
行方
(
やりかた
)
だ。
118
併
(
しか
)
し
斯
(
か
)
う
淋
(
さび
)
しくつては
仕方
(
しかた
)
がないぢやないか。
119
オイ、
120
一
(
ひと
)
つ
歌
(
うた
)
でも
歌
(
うた
)
つて
気
(
き
)
をまぎらさうぢやないか。
121
……
折角
(
せつかく
)
文助
(
ぶんすけ
)
のドタマを
擲
(
なぐ
)
り
倒
(
たふ
)
して、
122
ウマウマとブンブン
玉
(
だま
)
をひつたくり、
123
此処
(
ここ
)
まで
持
(
も
)
つて
来
(
き
)
て
杢助
(
もくすけ
)
さまに
渡
(
わた
)
し、
124
喜
(
よろこ
)
んでは
貰
(
もら
)
つたが、
125
余
(
あま
)
り
八百長
(
やほちやう
)
芝居
(
しばゐ
)
がすぎて、
126
足腰
(
あしこし
)
が
立
(
た
)
たぬ
程
(
ほど
)
打
(
う
)
ちのめされ、
127
動
(
うご
)
きのとれぬ
所
(
ところ
)
を
見
(
み
)
すまして、
128
此
(
この
)
暗
(
くら
)
がりに
置去
(
おきざ
)
りするとは、
129
誠
(
まこと
)
に
残酷
(
ざんこく
)
ぢやないか。
130
これでは
吾々
(
われわれ
)
下
(
しも
)
人民
(
じんみん
)
は、
131
やりきれない。
132
どうしたらよからうかなア』
133
徳
『
小鳥
(
ことり
)
つきて
鷹
(
たか
)
喰
(
くら
)
はれ、
134
兎
(
うさぎ
)
つきて
良狗
(
りやうく
)
煮
(
に
)
らるとは
俺
(
おれ
)
たちの
事
(
こと
)
だ。
135
あれだけ
吾々
(
われわれ
)
が
血
(
ち
)
を
流
(
なが
)
してやつと
奪
(
と
)
つた
曲輪
(
まがわ
)
の
玉
(
たま
)
を、
136
又
(
また
)
強者
(
きやうしや
)
に
掠奪
(
りやくだつ
)
されて
了
(
しま
)
ふと
云
(
い
)
ふのは、
137
ヤツパリ
未来
(
みらい
)
の
何処
(
どこ
)
かの
外交
(
ぐわいかう
)
手腕
(
しゆわん
)
が
映
(
うつ
)
つてゐるのだよ。
138
手腕
(
しゆわん
)
のワンは
犬
(
いぬ
)
の
鳴
(
な
)
き
声
(
ごゑ
)
だが、
139
本当
(
ほんたう
)
に
尾
(
を
)
を
股
(
また
)
へはさんで、
140
シヨゲ シヨゲと
逃
(
に
)
げ
帰
(
かへ
)
る
喪家
(
さうか
)
の
犬
(
いぬ
)
のやうな
手腕
(
しゆわん
)
だからな。
141
しまひには、
142
只
(
ただ
)
一
(
ひと
)
つよりない
大椀
(
たいはん
)
(
台湾
(
たいわん
)
)まで
逃出
(
にげだ
)
すかも
知
(
し
)
れぬぞ。
143
何程
(
なにほど
)
琉球
(
りうきう
)
そに
言
(
い
)
うても、
144
骨
(
ほね
)
のない
蒟蒻腰
(
こんにやくごし
)
では
駄目
(
だめ
)
だ。
145
貴様
(
きさま
)
だつて
俺
(
おれ
)
だつて、
146
半身
(
はんしん
)
不随
(
ふずい
)
だから、
147
腹中
(
ふくちう
)
の
副守
(
ふくしゆ
)
、
148
ガラクタ
連中
(
れんちう
)
には、
149
うまく
誤魔化
(
ごまくわ
)
しておいて、
150
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
、
151
自分
(
じぶん
)
の
身体
(
しんたい
)
回復
(
くわいふく
)
を
待
(
ま
)
たねばなるまいぞ。
152
何程
(
なにほど
)
人
(
ひと
)
の
為
(
ため
)
だの、
153
刻下
(
こくか
)
の
急務
(
きふむ
)
だのといつた
所
(
ところ
)
で、
154
ドドのつまりは、
155
自分
(
じぶん
)
が
大切
(
たいせつ
)
だからな、
156
ハハハハハ』
157
お
菊
(
きく
)
は
二人
(
ふたり
)
の
話
(
はなし
)
をスツカリ
聞
(
き
)
いて
了
(
しま
)
つた。
158
そして
高姫
(
たかひめ
)
、
159
杢助
(
もくすけ
)
の
両人
(
りやうにん
)
は
曲輪
(
まがわ
)
の
玉
(
たま
)
を、
160
此奴
(
こいつ
)
等
(
ら
)
両人
(
りやうにん
)
の
手
(
て
)
から
引
(
ひ
)
つたくり、
161
逃
(
に
)
げて
了
(
しま
)
つた
事
(
こと
)
を
悟
(
さと
)
つた。
162
……
此奴
(
こいつ
)
ア
一
(
ひと
)
つ、
163
文助
(
ぶんすけ
)
の
声色
(
こわいろ
)
を
使
(
つか
)
つておどかしてやらうか……と
横着
(
わうちやく
)
なお
菊
(
きく
)
は
暗
(
くら
)
がりを
幸
(
さいはひ
)
に、
164
お菊
『ヒヤー、
165
恨
(
うら
)
めしやなア、
166
初公
(
はつこう
)
、
167
徳公
(
とくこう
)
の
両人
(
りやうにん
)
に
頭
(
あたま
)
をコツかれ、
168
ブンブン
玉
(
だま
)
をボツたくられ、
169
其
(
その
)
上
(
うへ
)
命
(
いのち
)
までも
取
(
と
)
られたわいのう、
170
ヤイ、
171
初
(
はつ
)
、
172
徳
(
とく
)
の
両人
(
りやうにん
)
、
173
冥途
(
めいど
)
の
道伴
(
みちづ
)
れ、
174
其
(
その
)
方
(
はう
)
の
生首
(
なまくび
)
を
貰
(
もら
)
うて
帰
(
かへ
)
るぞよ』
175
初
(
はつ
)
『コリヤ
徳
(
とく
)
、
176
此
(
この
)
厭
(
いや
)
らしい
森
(
もり
)
の
中
(
なか
)
で、
177
馬鹿
(
ばか
)
な
真似
(
まね
)
をするない。
178
何
(
なん
)
だ、
179
爺
(
おやぢ
)
の
声
(
こゑ
)
を
出
(
だ
)
しやがつて……』
180
徳
(
とく
)
『ヘン、
181
貴様
(
きさま
)
が
真似
(
まね
)
をしたぢやないか、
182
怪体
(
けたい
)
な
奴
(
やつ
)
だなア』
183
初
『
何
(
なに
)
、
184
貴様
(
きさま
)
が
妙
(
めう
)
な
声
(
こゑ
)
を
出
(
だ
)
したのだらう』
185
徳
『
俺
(
おれ
)
は
決
(
けつ
)
してそんなこた、
186
言
(
い
)
うた
覚
(
おぼえ
)
がない。
187
貴様
(
きさま
)
も
言
(
い
)
はないとすれば、
188
どつか
他
(
ほか
)
に
人間
(
にんげん
)
が
一匹
(
いつぴき
)
来
(
き
)
てゐるに
違
(
ちが
)
ひない。
189
暗
(
くら
)
がりを
幸
(
さいはひ
)
に、
190
ヤツパリ
杢助
(
もくすけ
)
さまが
隠
(
かく
)
れた
真似
(
まね
)
をして、
191
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
の
話
(
はなし
)
を
聞
(
き
)
いてゐたのかも
知
(
し
)
れぬぞ。
192
ハテ
困
(
こま
)
つたのう』
193
初
『モシ、
194
杢助
(
もくすけ
)
さま、
195
此
(
この
)
厭
(
いや
)
らしい
夜
(
よ
)
さに、
196
そんな
悪戯
(
いたづら
)
はやめて
下
(
くだ
)
さいな。
197
困
(
こま
)
るぢやありませぬか』
198
お
菊
(
きく
)
『ホホホホホ』
199
徳
(
とく
)
『
高姫
(
たかひめ
)
さま、
200
腹
(
はら
)
の
悪
(
わる
)
い、
201
そんな
厭
(
いや
)
らしい
声
(
こゑ
)
を
出
(
だ
)
したつて、
202
吾々
(
われわれ
)
はビクともしませぬぞや』
203
お菊
『
尻
(
しり
)
を
叩
(
たた
)
かれ、
204
骨
(
ほね
)
まで
腫上
(
はれあが
)
り、
205
ビクとも
出来
(
でき
)
ぬだらう。
206
実
(
じつ
)
に
憐
(
あは
)
れなものだのう、
207
オホホホホホ』
208
徳
『コリヤ
高姫
(
たかひめ
)
、
209
馬鹿
(
ばか
)
にすない、
210
人
(
ひと
)
をよい
程
(
ほど
)
使
(
つか
)
うておいて、
211
こんな
苦
(
くる
)
しい
目
(
め
)
に
遇
(
あ
)
はして、
212
其
(
その
)
上
(
うへ
)
可笑
(
をか
)
しさうに
笑
(
わら
)
ふなんて、
213
チツとは
人情
(
にんじやう
)
を
弁
(
わきま
)
へたらどうだ』
214
お菊
『
此
(
この
)
高姫
(
たかひめ
)
は
人情
(
にんじやう
)
なんか、
215
嫌
(
いや
)
だツ、
216
よく
考
(
かんが
)
へて
見
(
み
)
よ。
217
今日
(
こんにち
)
の
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
に
人情
(
にんじやう
)
を
知
(
し
)
つた
奴
(
やつ
)
が
一人
(
ひとり
)
でもあるか。
218
ニンジヨウといへば
松
(
まつ
)
の
廊下
(
らうか
)
で
塩谷
(
えんや
)
判官
(
はんぐわん
)
が
師直
(
もろなほ
)
に
斬
(
き
)
りかけた
位
(
くらゐ
)
なものだ。
219
人情
(
にんじやう
)
なんか
守
(
まも
)
つて
居
(
を
)
らうものなら、
220
お
家
(
いへ
)
は
断絶
(
だんぜつ
)
、
221
其
(
その
)
身
(
み
)
は
切腹
(
せつぷく
)
、
222
家来
(
けらい
)
は
浪人
(
らうにん
)
、
223
しまひの
果
(
はて
)
には
泉岳寺
(
せんがくじ
)
で
腹
(
はら
)
を
切
(
き
)
らねばならぬぞや。
224
そんな
馬鹿
(
ばか
)
が
今日
(
こんにち
)
の
開
(
ひら
)
けた
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
にあるものかい。
225
時代遅
(
じだいおく
)
れの
馬鹿
(
ばか
)
だなア、
226
オツホホホホ、
227
いい
気味
(
きみ
)
だこと、
228
杢助
(
もくすけ
)
さまと
実
(
じつ
)
の
所
(
ところ
)
は、
229
小北山
(
こぎたやま
)
を
占領
(
せんりやう
)
し、
230
貴様
(
きさま
)
等
(
ら
)
両人
(
りやうにん
)
をウマウマ チヨロまかして
使
(
つか
)
つてやらうと
思
(
おも
)
うたなれど、
231
樫
(
かし
)
の
棒
(
ぼう
)
で
二十
(
にじふ
)
や
三十
(
さんじふ
)
撲
(
なぐ
)
られて、
232
悲鳴
(
ひめい
)
をあげ、
233
歩
(
ある
)
けないのなぞと
弱音
(
よわね
)
を
吹
(
ふ
)
くやうな
奴
(
やつ
)
は、
234
高姫
(
たかひめ
)
も
愛想
(
あいさう
)
がつきた。
235
そんな
事
(
こと
)
で、
236
どうして
悪
(
あく
)
の
企
(
たく
)
みが
成就
(
じやうじゆ
)
すると
思
(
おも
)
ふか、
237
馬鹿
(
ばか
)
だなア、
238
オホホホホ』
239
初
(
はつ
)
『エー、
240
胸
(
むね
)
クソの
悪
(
わる
)
い、
241
もう
斯
(
か
)
うなれば
馬鹿
(
ばか
)
らして
小北山
(
こぎたやま
)
へ
帰
(
かへ
)
る
訳
(
わけ
)
にゆかず、
242
又
(
また
)
そんな
悪人
(
あくにん
)
の
後
(
あと
)
へついて
行
(
い
)
つたつて
駄目
(
だめ
)
だし、
243
進退
(
しんたい
)
惟
(
これ
)
谷
(
きは
)
まつたなア、
244
のう
徳
(
とく
)
、
245
これから
一
(
ひと
)
つ
善後策
(
ぜんごさく
)
を
考
(
かんが
)
へなくちやなるまいぞ』
246
徳
(
とく
)
『さうだなア、
247
マア
此処
(
ここ
)
で
足
(
あし
)
の
直
(
なほ
)
るまで、
248
ゆつくり
養生
(
やうじやう
)
して、
249
トクと
考
(
かんが
)
へようかい。
250
コリヤ
杢助
(
もくすけ
)
、
251
覚
(
おぼ
)
えてけつかれ、
252
貴様
(
きさま
)
の
企
(
たく
)
みは
何処
(
どこ
)
までも
邪魔
(
じやま
)
してやるから、
253
一寸
(
いつすん
)
の
虫
(
むし
)
も
五分
(
ごぶ
)
の
魂
(
たましひ
)
だぞ』
254
お菊
『
此
(
この
)
杢助
(
もくすけ
)
は
貴様
(
きさま
)
のやうな
小童
(
こつぱ
)
武者
(
むしや
)
の
百匹
(
ひやつぴき
)
千匹
(
せんびき
)
、
255
束
(
そく
)
に
結
(
ゆ
)
うて
来
(
き
)
てもビクとも
致
(
いた
)
さぬ
英雄
(
えいゆう
)
豪傑
(
がうけつ
)
だ。
256
ましてや
尻
(
しり
)
をひつぱたかれ、
257
骨
(
ほね
)
を
挫
(
くじ
)
き、
258
体
(
からだ
)
の
自由
(
じいう
)
にならぬ
奴
(
やつ
)
が、
259
仮令
(
たとへ
)
万
(
まん
)
人
(
にん
)
攻
(
せ
)
め
来
(
きた
)
るとも、
260
決
(
けつ
)
して
驚
(
おどろ
)
く
者
(
もの
)
でない。
261
又
(
また
)
仮令
(
たとへ
)
体
(
からだ
)
の
自由
(
じいう
)
が
利
(
き
)
く
代物
(
しろもの
)
でも、
262
今
(
いま
)
の
人間
(
にんげん
)
は
金輪
(
かなわ
)
の
魔術
(
まじゆつ
)
を
以
(
もつ
)
て
口
(
くち
)
にはましたならば、
263
どれもこれも
皆
(
みな
)
往生
(
わうじやう
)
致
(
いた
)
す
代物
(
しろもの
)
ばかりだ、
264
アハハハハ』
265
徳
『コリヤ
杢助
(
もくすけ
)
、
266
俺
(
おれ
)
は
斯
(
か
)
うして、
267
腰
(
こし
)
が
立
(
た
)
たぬと
云
(
い
)
つて、
268
貴様
(
きさま
)
の
様子
(
やうす
)
を
考
(
かんが
)
へてゐたのだ。
269
本当
(
ほんたう
)
の
事
(
こと
)
は
此処
(
ここ
)
まで
走
(
はし
)
つて
来
(
き
)
た
位
(
くらゐ
)
だから、
270
自由
(
じいう
)
自在
(
じざい
)
に
立
(
た
)
つのだ、
271
サア
来
(
こ
)
い
勝負
(
しようぶ
)
だ。
272
貴様
(
きさま
)
のやうな
冷酷
(
れいこく
)
な
餓鬼
(
がき
)
の
後
(
あと
)
を
追
(
お
)
つて
行
(
い
)
た
所
(
とこ
)
で
仕方
(
しかた
)
がない。
273
それよりも
貴様
(
きさま
)
の
生首
(
なまくび
)
を
引抜
(
ひきぬ
)
いて
持
(
も
)
ち
帰
(
かへ
)
り、
274
松姫
(
まつひめ
)
様
(
さま
)
にお
詫
(
わび
)
の
印
(
しるし
)
にするのだ。
275
オイ
初
(
はつ
)
、
276
貴様
(
きさま
)
もいい
加減
(
かげん
)
に
起
(
お
)
きぬかい』
277
初
『ウン、
278
モウそろそろ
活動
(
くわつどう
)
しても
可
(
い
)
い
時分
(
じぶん
)
だ。
279
俺
(
おれ
)
も
何
(
なん
)
だか、
280
此
(
この
)
先
(
さき
)
の
浮木
(
うきき
)
の
里
(
さと
)
が
気
(
き
)
にくはぬので、
281
一寸
(
ちよつと
)
作病
(
さくびやう
)
を
起
(
おこ
)
してみたのだが、
282
つひグツと
寝
(
ね
)
て
了
(
しま
)
ひ、
283
其
(
その
)
間
(
あひだ
)
に
高姫
(
たかひめ
)
、
284
杢助
(
もくすけ
)
に
逃
(
に
)
げられたと
思
(
おも
)
つて
残念
(
ざんねん
)
でたまらず、
285
副守
(
ふくしゆ
)
の
奴
(
やつ
)
と
作戦
(
さくせん
)
計画
(
けいくわく
)
をやつてゐた
所
(
ところ
)
、
286
神
(
かみ
)
の
神力
(
しんりき
)
に
照
(
て
)
らされて、
287
高姫
(
たかひめ
)
、
288
杢助
(
もくすけ
)
の
奴
(
やつ
)
、
289
後
(
うしろ
)
へ
引寄
(
ひきよ
)
せられよつたのだなア。
290
何
(
なん
)
と
神力
(
しんりき
)
は
偉
(
えら
)
いものだ。
291
サア
杢助
(
もくすけ
)
、
292
高姫
(
たかひめ
)
、
293
汝
(
なんぢ
)
が
如
(
ごと
)
き
老
(
おい
)
ぼれの
五匹
(
ごひき
)
や
十匹
(
じつぴき
)
、
294
束
(
そく
)
に
結
(
ゆ
)
うて
掛
(
かか
)
らうとも
食
(
く
)
ひ
足
(
た
)
らぬ
某
(
それがし
)
だ、
295
サア
来
(
こ
)
い』
296
お菊
『オツホホホホ、
297
此
(
この
)
暗
(
くら
)
がりに
目
(
め
)
が
見
(
み
)
えるのか、
298
喧
(
やかま
)
し
吐
(
ぬか
)
すと、
299
声
(
こゑ
)
をしるべに
撲
(
なぐ
)
りつけてやらうか。
300
暗
(
やみ
)
の
晩
(
ばん
)
に
囀
(
さへづ
)
る
奴
(
やつ
)
位
(
くらゐ
)
馬鹿
(
ばか
)
はないぞ』
301
初
『オイ
徳
(
とく
)
、
302
確
(
しつか
)
りせぬかい、
303
益々
(
ますます
)
怪
(
け
)
しからぬ
事
(
こと
)
を
吐
(
ぬか
)
すぢやないか』
304
お
菊
(
きく
)
は
足音
(
あしおと
)
を
忍
(
しの
)
ばせ、
305
声
(
こゑ
)
をしるべに、
306
ついて
来
(
き
)
た
杖
(
つゑ
)
で
暗
(
やみ
)
をポンと
打
(
う
)
つた。
307
都合
(
つがふ
)
よく
二人
(
ふたり
)
の
頭
(
あたま
)
に
橋
(
はし
)
をかけたやうに、
308
カツンと
当
(
あた
)
つた。
309
二人
(
ふたり
)
は
一度
(
いちど
)
に、
310
徳
『アイタタタ、
311
コラ
初
(
はつ
)
、
312
馬鹿
(
ばか
)
にすない』
313
初
『ナアニ
徳
(
とく
)
の
奴
(
やつ
)
、
314
人
(
ひと
)
の
頭
(
あたま
)
をなぐりやがつて、
315
馬鹿
(
ばか
)
も
糞
(
くそ
)
もあるかい』
316
徳
『それでも
貴様
(
きさま
)
、
317
俺
(
おれ
)
を
撲
(
なぐ
)
つたぢやないか』
318
初
『ナアニ、
319
俺
(
おれ
)
やチツとも
撲
(
なぐ
)
つた
覚
(
おぼえ
)
がない』
320
お菊
『ホホホホホ、
321
同士打
(
どうしうち
)
喧嘩
(
げんくわ
)
は
面白
(
おもしろ
)
い
面白
(
おもしろ
)
い、
322
向
(
むか
)
ふ
見
(
み
)
ずの
途中
(
とちう
)
の
鼻高
(
はなだか
)
が、
323
暗雲
(
やみくも
)
で、
324
欲
(
よく
)
ばかり
考
(
かんが
)
へ、
325
吾
(
われ
)
程
(
ほど
)
偉
(
えら
)
い
者
(
もの
)
はないと
思
(
おも
)
うて
慢心
(
まんしん
)
致
(
いた
)
すと、
326
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
にやら
鼻
(
はな
)
が
高
(
たか
)
うなり、
327
鼻
(
はな
)
と
鼻
(
はな
)
とがつき
合
(
あ
)
うて、
328
しまひには
一
(
いち
)
も
取
(
と
)
らず
二
(
に
)
も
取
(
と
)
らず、
329
大騒動
(
おほさうどう
)
を
起
(
おこ
)
すぞよ。
330
可哀相
(
かあいさう
)
な
者
(
もの
)
であるぞよ。
331
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
うても
暗
(
くら
)
がりの
人民
(
じんみん
)
を
助
(
たす
)
けるのであるから、
332
頭
(
あたま
)
の
一
(
ひと
)
つや
二
(
ふた
)
つは
叩
(
たた
)
いてやらねば
目
(
め
)
がさめぬぞよ。
333
神
(
かみ
)
も
中々
(
なかなか
)
骨
(
ほね
)
が
折
(
を
)
れるぞよ、
334
早
(
はや
)
く
改心
(
かいしん
)
致
(
いた
)
されよ。
335
神
(
かみ
)
の
申
(
まを
)
す
事
(
こと
)
を
素直
(
すなほ
)
に
聞
(
き
)
く
人民
(
じんみん
)
は
結構
(
けつこう
)
なれど、
336
今
(
いま
)
の
世
(
よ
)
はサツパリ
鬼
(
おに
)
と
賊
(
ぞく
)
と
悪魔
(
あくま
)
との
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
であるから、
337
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
を
聞
(
き
)
く
奴
(
やつ
)
はチツともないぞよ。
338
余
(
あま
)
り
改心
(
かいしん
)
が
出来
(
でき
)
ぬと、
339
スコタンくらふぞよ』
340
と
云
(
い
)
ひながら、
341
又
(
また
)
カツンとやつた。
342
初公
(
はつこう
)
は
前額部
(
ぜんがくぶ
)
をシタタカ
打
(
う
)
たれ、
343
初
『アイタア』
344
と
云
(
い
)
つたきり、
345
すくんで
了
(
しま
)
つた。
346
徳
(
とく
)
は、
347
徳
『
何
(
なん
)
でも
近
(
ちか
)
くに
声
(
こゑ
)
がした、
348
高姫
(
たかひめ
)
の
奴
(
やつ
)
、
349
ここらに
居
(
ゐ
)
やがるに
違
(
ちが
)
ひない……』
350
と
四這
(
よつばひ
)
になり、
351
手
(
て
)
をふりまはして
探
(
さぐ
)
つてゐる。
352
もし
足
(
あし
)
にでもさはつた
位
(
くらゐ
)
なら、
353
ひつくり
返
(
かへ
)
してやらうと
思
(
おも
)
つたからである。
354
お
菊
(
きく
)
は
何
(
なん
)
だか
自分
(
じぶん
)
の
足許
(
あしもと
)
に
這
(
は
)
ふものがあるやうな
気
(
き
)
がしたので、
355
杖
(
つゑ
)
を
以
(
もつ
)
て
力
(
ちから
)
限
(
かぎ
)
り、
356
足許
(
あしもと
)
を
払
(
はら
)
うた。
357
途端
(
とたん
)
にただれた
尻
(
しり
)
のあたりをピシヤツと
打
(
う
)
つた。
358
徳
(
とく
)
『アイタタ、
359
コリヤ、
360
尻叩
(
しりたた
)
きはモウすんだ
筈
(
はず
)
だ。
361
まだこんなとこまで
来
(
き
)
て
叩
(
たた
)
くといふ
事
(
こと
)
があるかい』
362
お
菊
(
きく
)
『
約束
(
やくそく
)
の
三百
(
さんびやく
)
がまだ
二百
(
にひやく
)
許
(
ばか
)
り
残
(
のこ
)
つてゐるから、
363
これから
叩
(
たた
)
いてやるのだ』
364
徳
(
とく
)
『オイ
初
(
はつ
)
、
365
気
(
き
)
をつけよ、
366
馬鹿
(
ばか
)
にするぢやないか……コラ
高姫
(
たかひめ
)
、
367
杢助
(
もくすけ
)
、
368
サア
来
(
こ
)
い』
369
と
暗
(
くら
)
がりに、
370
どつちに
敵
(
てき
)
が
居
(
を
)
るか
分
(
わか
)
りもせぬのに、
371
空元気
(
からげんき
)
を
出
(
だ
)
して
気張
(
きば
)
つてゐる。
372
お
菊
(
きく
)
は
杖
(
つゑ
)
を
縦横
(
じうわう
)
無尽
(
むじん
)
に
打
(
う
)
ちふり、
373
二人
(
ふたり
)
の
頭
(
あたま
)
といはず
尻
(
しり
)
といはず、
374
手当
(
てあた
)
り
次第
(
しだい
)
にポンポンポンと
撲
(
なぐ
)
り
倒
(
たふ
)
し、
375
お菊
『ホツホホホホ』
376
と
厭
(
いや
)
らしい
笑
(
わら
)
ひを
残
(
のこ
)
し、
377
森
(
もり
)
を
立出
(
たちい
)
で、
378
息
(
いき
)
を
殺
(
ころ
)
して
二人
(
ふたり
)
の
様子
(
やうす
)
を
考
(
かんが
)
へてゐた。
379
(
大正一二・一・二七
旧一一・一二・一一
松村真澄
録)
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(B)
(N)
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