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霊界物語
真善美愛(第49~60巻)
第51巻(寅の巻)
序文
総説
第1篇 霊光照魔
第1章 春の菊
第2章 怪獣策
第3章 犬馬の労
第4章 乞食劇
第5章 教唆
第6章 舞踏怪
第2篇 夢幻楼閣
第7章 曲輪玉
第8章 曲輪城
第9章 鷹宮殿
第10章 女異呆醜
第3篇 鷹魅艶態
第11章 乙女の遊
第12章 初花姫
第13章 槍襖
第14章 自惚鏡
第15章 餅の皮
第4篇 夢狸野狸
第16章 暗闘
第17章 狸相撲
第18章 糞奴使
第19章 偽強心
第20章 狸姫
第21章 夢物語
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霊界物語
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真善美愛(第49~60巻)
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第51巻(寅の巻)
> 第2篇 夢幻楼閣 > 第9章 鷹宮殿
<<< 曲輪城
(B)
(N)
女異呆醜 >>>
第九章
鷹宮
(
たかみや
)
殿
(
どの
)
〔一三二四〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第51巻 真善美愛 寅の巻
篇:
第2篇 夢幻楼閣
よみ(新仮名遣い):
むげんろうかく
章:
第9章 鷹宮殿
よみ(新仮名遣い):
たかみやどの
通し章番号:
1324
口述日:
1923(大正12)年01月26日(旧12月10日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年12月29日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
高姫は妖幻坊を杢助だと固く信じていた。そして金剛不壊の如意宝珠の力によって、このような広大な楼閣ができたのだと思っている。
高姫は、これほど神力がある男であれば、他の美人に取られて自分がお払い箱になる可能性があると心配し、如意宝珠の玉を奪ってふたたび飲み込み、杢助の喉首を抑えてしまおうと思いながら妖幻坊についていく。
妖幻坊は高姫を大きな鏡の前に導いた。そこには十七八才の妙齢の美人が、立派な錦の衣服を着流して立っていた。高姫はその美人に嫉妬するが、妖幻坊は、これは如意宝珠の神力で若返らせた高姫自身の姿だと高姫に取り入った。
高姫は若いころの名前・高宮姫に改名し、妖幻坊は高宮彦と名乗ることになった。そして高姫に豪華な一室をあてがうと、後で腰元を付けると言い残して奥殿へ消えて行った。
妖魅は変相するときは非常に苦しいので、ときどき人に見られないところで体を休める必要があるのであった。高姫の居室と見えたのは、その実、浮木の森の大きな狸穴であった。妖幻坊は奥の楠の根元の大洞穴の中に身を隠し、寝てしまった。
妖幻坊は自分の眷属・幻相坊と幻魔坊を美しい少女に変装させて、高子・宮子として高姫の侍女としてあてがった。高姫は二人の美しさに嫉妬を覚えたが、高子と宮子が自分たちは如意宝珠の玉から生まれた火と水の霊だと説明し、人間ではないことがわかると機嫌を直した。
高姫は二人を呼び入れた。高子と宮子はぱっと室内に入って左右から高姫に飛びついた。高子は火のように熱く、宮子は水のように冷たかった。高姫は寒熱に苦しんで、たちまちその場に倒れてしまった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2024-05-24 12:18:25
OBC :
rm5109
愛善世界社版:
135頁
八幡書店版:
第9輯 314頁
修補版:
校定版:
138頁
普及版:
63頁
初版:
ページ備考:
001
高姫
(
たかひめ
)
は
妖幻坊
(
えうげんばう
)
を
何処
(
どこ
)
までも
杢助
(
もくすけ
)
と
固
(
かた
)
く
信
(
しん
)
じてゐた。
002
而
(
しか
)
して
金剛
(
こんがう
)
不壊
(
ふゑ
)
の
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
の
力
(
ちから
)
に
依
(
よ
)
つて、
003
かかる
広大
(
くわうだい
)
なる
楼閣
(
ろうかく
)
が
出来
(
でき
)
たのだと
思
(
おも
)
つてゐる。
004
高姫
『ああ、
005
私
(
わたし
)
が
秋山彦
(
あきやまひこ
)
の
館
(
やかた
)
で
腹
(
はら
)
へ
呑
(
の
)
んだ
時
(
とき
)
には、
006
これだけ
威力
(
ゐりよく
)
のあるものとは
思
(
おも
)
はなかつた。
007
ヤツパリ
私
(
わたし
)
は
神力
(
しんりき
)
が
足
(
た
)
らなかつたのだなア。
008
小人
(
せうじん
)
玉
(
たま
)
を
抱
(
いだ
)
いて
罪
(
つみ
)
ありといふ
事
(
こと
)
は
私
(
わたし
)
の
事
(
こと
)
か、
009
同
(
おな
)
じ
玉
(
たま
)
でも
杢助
(
もくすけ
)
さまがお
使
(
つか
)
ひになると、
010
こんなに
立派
(
りつぱ
)
に
其
(
その
)
神力
(
しんりき
)
が
現
(
あら
)
はれるのだ。
011
阿呆
(
あはう
)
と
鋏
(
はさみ
)
は
使
(
つか
)
ひやうで
切
(
き
)
れるといふ
事
(
こと
)
がある。
012
使手
(
つかひて
)
がよければ
阿呆
(
あはう
)
も
間
(
ま
)
に
合
(
あ
)
ふ、
013
竹光
(
たけみつ
)
の
刀
(
かたな
)
でも
正宗
(
まさむね
)
に
優
(
まさ
)
るものだ。
014
ヤア
私
(
わたし
)
もこれから
改心
(
かいしん
)
をしませう……イヤ
改悪
(
かいあく
)
をしませう。
015
杢助
(
もくすけ
)
さまに
使
(
つか
)
はれる
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
は
仕合
(
しあは
)
せだなア。
016
併
(
しか
)
しながら、
017
是
(
これ
)
だけ
自由
(
じいう
)
自在
(
じざい
)
に
神力
(
しんりき
)
を
持
(
も
)
つてゐる
男
(
をとこ
)
だから、
018
天下
(
てんか
)
の
美人
(
びじん
)
は
此
(
この
)
神力
(
しんりき
)
を
見
(
み
)
たならば、
019
キツと
惚
(
ほ
)
れるであらう。
020
さうなつた
時
(
とき
)
は
年
(
とし
)
の
寄
(
よ
)
つた
此
(
この
)
高姫
(
たかひめ
)
は、
021
折角
(
せつかく
)
結構
(
けつこう
)
な
楼閣
(
ろうかく
)
に
住
(
す
)
みながら、
022
お
払
(
はら
)
ひ
箱
(
ばこ
)
になつてはつまらない。
023
どうかして
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
を
杢助
(
もくすけ
)
さまの
隙
(
すき
)
を
伺
(
うかが
)
つて
吾
(
わが
)
懐
(
ふところ
)
に
入
(
い
)
れるか、
024
但
(
ただし
)
は
呑込
(
のみこ
)
んで
了
(
しま
)
つて、
025
まさかの
時
(
とき
)
の
権利
(
けんり
)
を
握
(
にぎ
)
り、
026
杢助
(
もくすけ
)
さまの
喉首
(
のどくび
)
を
押
(
おさ
)
へ、
027
睾丸
(
きんたま
)
を
握
(
にぎ
)
つておかねば、
028
此
(
この
)
高姫
(
たかひめ
)
は
安全
(
あんぜん
)
な
生涯
(
しやうがい
)
を
送
(
おく
)
る
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ぬ。
029
オオさうだ さうだ、
030
それが
上分別
(
じやうふんべつ
)
だ。
031
鎌
(
かま
)
の
柄
(
え
)
を
向
(
むか
)
ふに
握
(
にぎ
)
られて、
032
こつちが
切
(
き
)
れる
方
(
はう
)
を
握
(
にぎ
)
つてるやうな
事
(
こと
)
では、
033
到底
(
たうてい
)
生存
(
せいぞん
)
競争
(
きやうそう
)
の
激甚
(
げきじん
)
なる
世
(
よ
)
に
立
(
た
)
つことは
出来
(
でき
)
ない。
034
杢助
(
もくすけ
)
さまも
偉
(
えら
)
い
人
(
ひと
)
だ、
035
併
(
しか
)
し
又
(
また
)
女
(
をんな
)
にかけてはズルイ
男
(
をとこ
)
だから、
036
これからあらむ
限
(
かぎ
)
りの
身
(
み
)
だしなみをして、
037
充分
(
じうぶん
)
に
蘯
(
とろ
)
かしてやらねばならうまい』
038
と
堅
(
かた
)
く
決心
(
けつしん
)
しながら、
039
杢助
(
もくすけ
)
の
後
(
うしろ
)
に
従
(
つ
)
いて
行
(
ゆ
)
く。
040
奥殿
(
おくでん
)
深
(
ふか
)
く
進
(
すす
)
んで
見
(
み
)
れば、
041
金
(
きん
)
、
042
銀
(
ぎん
)
、
043
瑠璃
(
るり
)
、
044
玻璃
(
はり
)
、
045
硨磲
(
しやこ
)
、
046
珊瑚珠
(
さんごじゆ
)
等
(
など
)
にてちりばめられたる
立派
(
りつぱ
)
な
宝座
(
ほうざ
)
がある。
047
妖幻坊
(
えうげんばう
)
は
高姫
(
たかひめ
)
を
顧
(
かへり
)
みて、
048
妖幻坊の杢助
『オイ
高
(
たか
)
さま、
049
杢助
(
もくすけ
)
の
腕前
(
うでまへ
)
は
分
(
わか
)
つたかなア。
050
サア、
051
之
(
これ
)
からお
前
(
まへ
)
と
俺
(
おれ
)
とが
此
(
この
)
宝座
(
ほうざ
)
に、
052
日々
(
にちにち
)
上
(
のぼ
)
つて、
053
万民
(
ばんみん
)
の
政治
(
せいぢ
)
をするのだ、
054
どうだ、
055
嬉
(
うれ
)
しうはないか』
056
高姫
『ハイ、
057
余
(
あま
)
りの
事
(
こと
)
で、
058
あいた
口
(
くち
)
がすぼまりませぬ』
059
と
云
(
い
)
ひながら
半信
(
はんしん
)
半疑
(
はんぎ
)
の
念
(
ねん
)
に
打
(
う
)
たれ、
060
宝座
(
ほうざ
)
を
押
(
おさ
)
へて
見
(
み
)
たり、
061
柱
(
はしら
)
を
押
(
お
)
して
見
(
み
)
たり、
062
足元
(
あしもと
)
が
若
(
も
)
しや
草
(
くさ
)
ぼうぼう
たる
田圃
(
たんぼ
)
ではあるまいかと、
063
探
(
さぐ
)
つてみたり、
064
いろいろ
雑多
(
ざつた
)
と
調
(
しら
)
べてゐる。
065
けれども
何
(
ど
)
うしても
疑
(
うたが
)
ふ
余地
(
よち
)
がない。
066
高姫
(
たかひめ
)
はますます
笑壺
(
ゑつぼ
)
に
入
(
い
)
り、
067
高姫
『
俄
(
にはか
)
に
私
(
わたし
)
も
出世
(
しゆつせ
)
したものだ、
068
三千
(
さんぜん
)
世界
(
せかい
)
に
高姫
(
たかひめ
)
位
(
くらゐ
)
仕合
(
しあは
)
せな
者
(
もの
)
があらうか、
069
ヤツパリ
義理
(
ぎり
)
天上
(
てんじやう
)
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
様
(
さま
)
のお
蔭
(
かげ
)
だなア』
070
と
小声
(
こごゑ
)
に
言
(
い
)
つてゐる。
071
妖幻坊
(
えうげんばう
)
は
高姫
(
たかひめ
)
の
背
(
せな
)
を
二
(
ふた
)
つ
三
(
みつ
)
つ
叩
(
たた
)
きながら、
072
妖幻坊の杢助
『オイ
高姫
(
たかひめ
)
、
073
どうだ、
074
違
(
ちが
)
ひますかなア。
075
蜃気楼
(
しんきろう
)
的
(
てき
)
城廓
(
じやうくわく
)
か、
076
或
(
あるひ
)
は
現実
(
げんじつ
)
的
(
てき
)
城廓
(
じやうくわく
)
か、
077
よくお
調
(
しら
)
べなさい。
078
之
(
これ
)
でも
杢助
(
もくすけ
)
の
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
に
反
(
そむ
)
きますか』
079
高姫
『イヤ、
080
モウモウ
感心
(
かんしん
)
致
(
いた
)
しました。
081
何処
(
どこ
)
までも
絶対
(
ぜつたい
)
服従
(
ふくじゆう
)
を
致
(
いた
)
しませう』
082
妖幻坊の杢助
『
高姫
(
たかひめ
)
、
083
お
前
(
まへ
)
の
姿
(
すがた
)
を
一寸
(
ちよつと
)
見
(
み
)
てみよ、
084
それそこに
玻璃鏡
(
はりかがみ
)
が
懸
(
かか
)
つてゐる。
085
其
(
その
)
前
(
まへ
)
に
立
(
た
)
つてみなさい』
086
と
指示
(
ゆびさ
)
す。
087
高姫
(
たかひめ
)
は
玻璃鏡
(
はりかがみ
)
の
前
(
まへ
)
に
現
(
あら
)
はれると、
088
鏡面
(
きやうめん
)
には
十七八
(
じふしちはつ
)
才
(
さい
)
の
妙齢
(
めうれい
)
の
美人
(
びじん
)
、
089
金襴
(
きんらん
)
綾錦
(
あやにしき
)
の
立派
(
りつぱ
)
な
衣服
(
いふく
)
を
着流
(
きなが
)
し、
090
色
(
いろ
)
あくまで
白
(
しろ
)
く、
091
頭
(
かしら
)
に
七宝
(
しつぱう
)
の
纓絡
(
えいらく
)
の
垂
(
た
)
らした
冠
(
かむり
)
を
戴
(
いただ
)
き、
092
裾
(
すそ
)
を
一丈
(
いちぢやう
)
許
(
ばか
)
り
後
(
うしろ
)
に
垂
(
た
)
らした
美人
(
びじん
)
が
立
(
た
)
つてゐる。
093
高姫
(
たかひめ
)
はハツと
驚
(
おどろ
)
き、
094
心
(
こころ
)
の
中
(
うち
)
に
思
(
おも
)
ふ
様
(
やう
)
……ハハー、
095
杢助
(
もくすけ
)
さまは
腹
(
はら
)
の
悪
(
わる
)
い
男
(
をとこ
)
だなア。
096
こんな
結構
(
けつこう
)
な
館
(
やかた
)
を
持
(
も
)
ち、
097
こんな
美人
(
びじん
)
をかくまうておき、
098
私
(
わたし
)
のやうな
婆
(
ばば
)
を、
099
此処
(
ここ
)
へ
連
(
つ
)
れて
来
(
き
)
て、
100
恥
(
はぢ
)
をかかし、
101
悋気
(
りんき
)
をささうと
企
(
たく
)
んでゐるのだらう。
102
エエ
悔
(
くや
)
しい……と
鏡
(
かがみ
)
に
映
(
うつ
)
つた
天女
(
てんによ
)
のやうな
美人
(
びじん
)
に
打
(
う
)
つてかかる。
103
妖幻坊
(
えうげんばう
)
は
高姫
(
たかひめ
)
の
手
(
て
)
をグツと
握
(
にぎ
)
り、
104
妖幻坊の杢助
『アハハハハ、
105
オイ
高
(
たか
)
ちやま、
106
あれはお
前
(
まへ
)
の
姿
(
すがた
)
だよ。
107
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
の
神力
(
しんりき
)
によつて、
108
三十三
(
さんじふさん
)
年
(
ねん
)
許
(
ばか
)
り
元
(
もと
)
へ
戻
(
もど
)
したのだ。
109
お
前
(
まへ
)
が
十八
(
じふはち
)
の
時
(
とき
)
の
姿
(
すがた
)
は
即
(
すなは
)
ちこれだ。
110
まだ
十八
(
じふはち
)
の
時
(
とき
)
は、
111
こんな
立派
(
りつぱ
)
な
装束
(
しやうぞく
)
を
着
(
き
)
てゐなかつたから
別人
(
べつじん
)
のやうに
見
(
み
)
えるが、
112
これが
正真
(
しやうまつ
)
の
高宮姫
(
たかみやひめ
)
時代
(
じだい
)
だ。
113
此
(
この
)
杢助
(
もくすけ
)
はお
前
(
まへ
)
の
皺
(
しわ
)
のよつた
現界
(
げんかい
)
的
(
てき
)
肉体
(
にくたい
)
に
惚
(
ほ
)
れたのぢやない、
114
霊界
(
れいかい
)
で
見
(
み
)
たお
前
(
まへ
)
に
惚
(
ほ
)
れたのだ。
115
随分
(
ずいぶん
)
綺麗
(
きれい
)
なものだらう。
116
それだから、
117
高
(
たか
)
ちやまに
杢助
(
もくすけ
)
が
現
(
うつつ
)
をぬかすも
無理
(
むり
)
ではあるまいがなア。
118
もしも
疑
(
うたが
)
はしいと
思
(
おも
)
ふなら、
119
お
前
(
まへ
)
が
目
(
め
)
を
剥
(
む
)
けば
目
(
め
)
を
剥
(
む
)
く、
120
口
(
くち
)
を
開
(
あ
)
くれば
口
(
くち
)
を
開
(
あ
)
く、
121
お
前
(
まへ
)
の
姿
(
すがた
)
其
(
その
)
儘
(
まま
)
だから、
122
一
(
ひと
)
つ
調
(
しら
)
べてみたら
何
(
ど
)
うだ』
123
高姫
『イヤもう
疑
(
うたがひ
)
の
余地
(
よち
)
はありませぬ。
124
何
(
なん
)
と
立派
(
りつぱ
)
な
美
(
い
)
い
女
(
をんな
)
だこと、
125
われながら
見
(
み
)
とれますワ。
126
之
(
これ
)
では
高姫
(
たかひめ
)
といはずに
高宮姫
(
たかみやひめ
)
と
旧
(
もと
)
の
名
(
な
)
に
帰
(
かへ
)
りませうか』
127
妖幻坊の杢助
『ウンさうだ、
128
高宮姫
(
たかみやひめ
)
の
方
(
はう
)
が、
129
余程
(
よほど
)
優雅
(
みやび
)
で
崇高
(
すうかう
)
で、
130
何
(
なん
)
となく
雲上
(
うんじやう
)
の
人
(
ひと
)
のやうに
聞
(
きこ
)
えて
床
(
ゆか
)
しいやうだ』
131
高姫
『それなら、
132
これから
高宮姫
(
たかみやひめ
)
と
改
(
あらた
)
めます。
133
何卒
(
どうぞ
)
杢助
(
もくすけ
)
さま、
134
旧
(
もと
)
の
名
(
な
)
を
呼
(
よ
)
んで
下
(
くだ
)
さいや』
135
妖幻坊の杢助
『ウンよしよし、
136
就
(
つ
)
いては
俺
(
おれ
)
も
杢助
(
もくすけ
)
々々
(
もくすけ
)
と
言
(
い
)
はれるのは、
137
何
(
なん
)
だか
毘舎
(
びしや
)
か
首陀
(
しゆだ
)
の
様
(
やう
)
だ。
138
刹帝利
(
せつていり
)
に
斉
(
ひと
)
しき
名
(
な
)
をつけねばならうまい……ウン、
139
お
前
(
まへ
)
の
高宮姫
(
たかみやひめ
)
の
夫
(
をつと
)
だから、
140
今日
(
けふ
)
から
高宮彦
(
たかみやひこ
)
と
改名
(
かいめい
)
しよう』
141
高姫
『それなら
高宮彦
(
たかみやひこ
)
様
(
さま
)
、
142
何卒
(
なにとぞ
)
天地
(
てんち
)
に
誓
(
ちか
)
つて、
143
どこどこまでも
夫婦
(
ふうふ
)
だといふ
事
(
こと
)
を
守
(
まも
)
つて
下
(
くだ
)
さいますなア』
144
妖幻坊の杢助
『
天
(
てん
)
に
在
(
あ
)
つては
比翼
(
ひよく
)
の
鳥
(
とり
)
、
145
地
(
ち
)
にあつては
連理
(
れんり
)
の
枝
(
えだ
)
、
146
梅
(
うめ
)
に
鶯
(
うぐひす
)
、
147
仮令
(
たとへ
)
幾万劫
(
いくまんがふ
)
の
末
(
すゑ
)
までも、
148
忘
(
わす
)
れてくれな、
149
忘
(
わす
)
れはせぬぞや。
150
サアサア
之
(
これ
)
から
其方
(
そなた
)
の
居間
(
ゐま
)
を
案内
(
あんない
)
致
(
いた
)
さう』
151
高姫
『ハイ
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
います』
152
と
妖幻坊
(
えうげんばう
)
に
跟
(
つ
)
いて、
153
ピカピカ
光
(
ひか
)
る
瑪瑙
(
めなう
)
の
板
(
いた
)
を
以
(
もつ
)
て
造
(
つく
)
られたる
長
(
なが
)
い
廊下
(
らうか
)
を
渡
(
わた
)
り、
154
金銀
(
きんぎん
)
の
色
(
いろ
)
をなせる
庭園
(
ていゑん
)
の
樹木
(
じゆもく
)
を
眺
(
なが
)
めながら、
155
えも
言
(
い
)
はれぬ
美
(
うる
)
はしき
居間
(
ゐま
)
に
案内
(
あんない
)
された。
156
高姫
(
たかひめ
)
は
既
(
すで
)
に
十八
(
じふはつ
)
才
(
さい
)
の
娘気分
(
むすめきぶん
)
になつて
居
(
ゐ
)
た。
157
妖幻坊の杢助
『サ、
158
これが
奥様
(
おくさま
)
のお
居間
(
ゐま
)
、
159
随分
(
ずいぶん
)
整頓
(
せいとん
)
して
居
(
を
)
りませうがなア』
160
高姫
『
成程
(
なるほど
)
鏡台
(
きやうだい
)
から
化粧
(
けしやう
)
道具
(
だうぐ
)
、
161
絹夜具
(
きぬやぐ
)
から
絹
(
きぬ
)
座布団
(
ざぶとん
)
、
162
金銀
(
きんぎん
)
瑪瑙
(
めなう
)
の
火鉢
(
ひばち
)
、
163
硨磲
(
しやこ
)
の
脇息
(
けふそく
)
、
164
紫檀
(
したん
)
の
机
(
つくゑ
)
、
165
黒檀
(
こくたん
)
の
障子
(
しやうじ
)
の
骨
(
ほね
)
、
166
玻璃
(
はり
)
の
瓶
(
びん
)
、
167
白檀
(
たがやさん
)
の
水屋
(
みづや
)
、
168
何
(
なに
)
から
何
(
なに
)
まで
立派
(
りつぱ
)
な
物
(
もの
)
で
厶
(
ござ
)
いますなア』
169
妖幻坊の杢助
『お
前
(
まへ
)
は
此
(
この
)
城廓
(
じやうくわく
)
の
城主
(
じやうしゆ
)
の
奥様
(
おくさま
)
だ、
170
随分
(
ずいぶん
)
出世
(
しゆつせ
)
をしたものだらう。
171
之
(
これ
)
から
高宮彦
(
たかみやひこ
)
は
自分
(
じぶん
)
の
居間
(
ゐま
)
に
行
(
い
)
つて
休息
(
きうそく
)
するから、
172
其方
(
そなた
)
は
此処
(
ここ
)
で、
173
今日
(
けふ
)
一日
(
いちじつ
)
はゆつくりと
寛
(
くつろ
)
いだがよからう』
174
高姫
『
私
(
わたし
)
と
一緒
(
いつしよ
)
に、
175
なぜ
居
(
を
)
つて
下
(
くだ
)
さりませぬ。
176
何程
(
なにほど
)
立派
(
りつぱ
)
でも
只
(
たつた
)
一人
(
ひとり
)
こんな
所
(
ところ
)
におかれては、
177
たまらぬぢやありませぬか』
178
妖幻坊の杢助
『お
前
(
まへ
)
は
義理
(
ぎり
)
天上
(
てんじやう
)
さまで
厶
(
ござ
)
るなり、
179
金毛
(
きんまう
)
九尾
(
きうび
)
様
(
さま
)
も
狸
(
たぬき
)
、
180
狼
(
おほかみ
)
、
181
大蛇
(
をろち
)
、
182
蟇
(
がま
)
其
(
その
)
他
(
ほか
)
いろいろのお
客
(
きやく
)
さまも
厶
(
ござ
)
るのだから、
183
別
(
べつ
)
に
淋
(
さび
)
しい
事
(
こと
)
はなからうに……』
184
高姫
『ソリヤ
居
(
を
)
ります。
185
けれども、
186
声
(
こゑ
)
がするばかりで、
187
チツトも
形
(
かたち
)
を
現
(
あら
)
はしませぬから、
188
つまりませぬワ』
189
妖幻坊の杢助
『それなら、
190
二人
(
ふたり
)
程
(
ほど
)
腰元
(
こしもと
)
を、
191
後
(
あと
)
からつけるやうに
取計
(
とりはか
)
らつてやる。
192
こんな
立派
(
りつぱ
)
な
城内
(
じやうない
)
に
主人
(
あるじ
)
となつた
者
(
もの
)
は、
193
普通
(
ふつう
)
の
毘舎
(
びしや
)
や
首陀
(
しゆだ
)
のやうに、
194
一間
(
ひとま
)
に
同棲
(
どうせい
)
することは
体面
(
たいめん
)
上
(
じやう
)
出来
(
でき
)
るものでない。
195
いざ
高宮姫
(
たかみやひめ
)
、
196
ゆつくりなされ、
197
高宮彦
(
たかみやひこ
)
は
吾
(
わが
)
居間
(
ゐま
)
に
入
(
はい
)
つて、
198
暫
(
しばら
)
く
休息
(
きうそく
)
を
致
(
いた
)
す』
199
と
言
(
い
)
ひすてて、
200
ドアを
開
(
ひら
)
き、
201
悠々
(
いういう
)
として、
202
奥
(
おく
)
へ
奥
(
おく
)
へと
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
る。
203
高宮姫
(
たかみやひめ
)
は
声
(
こゑ
)
を
限
(
かぎ
)
りに、
204
高姫
『モシ
杢助
(
もくすけ
)
さま、
205
モウ
一言
(
ひとこと
)
お
尋
(
たづ
)
ね
致
(
いた
)
したい
事
(
こと
)
が
厶
(
ござ
)
います。
206
此
(
この
)
お
城
(
しろ
)
は
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ひますか』
207
妖幻坊
(
えうげんばう
)
は
後
(
あと
)
ふり
向
(
む
)
いて、
208
妖幻坊の杢助
『ここは
今
(
いま
)
まで
鶏頭城
(
けいとうじやう
)
と
申
(
まを
)
したが、
209
今日
(
けふ
)
より
改
(
あらた
)
めて
高宮城
(
たかみやじやう
)
と
命名
(
めいめい
)
致
(
いた
)
す』
210
高姫
『ハイ、
211
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
いました。
212
高宮城
(
たかみやじやう
)
に
高宮彦
(
たかみやひこ
)
、
213
高宮姫
(
たかみやひめ
)
、
214
何
(
なん
)
とゆかしい
名
(
な
)
で
厶
(
ござ
)
いますな、
215
ホホホホ』
216
妖幻坊
(
えうげんばう
)
は、
217
妖幻坊の杢助
『
左様
(
さやう
)
なら』
218
と
云
(
い
)
ひすて、
219
ドンドンと
奥
(
おく
)
に
入
(
はい
)
つた。
220
すべて
妖魅
(
えうみ
)
は
変相
(
へんさう
)
する
時
(
とき
)
は
非常
(
ひじやう
)
に
苦
(
くる
)
しいものである。
221
それ
故
(
ゆゑ
)
時々
(
ときどき
)
人
(
ひと
)
に
見
(
み
)
られない
所
(
ところ
)
で
体
(
からだ
)
を
休
(
やす
)
める
必要
(
ひつえう
)
がある。
222
高姫
(
たかひめ
)
の
今
(
いま
)
入
(
はい
)
つて
居
(
を
)
つた
一間
(
ひとま
)
は、
223
其
(
その
)
実
(
じつ
)
浮木
(
うきき
)
の
森
(
もり
)
の
可
(
か
)
なり
大
(
おほ
)
きな
狸穴
(
まみあな
)
であつた。
224
妖幻坊
(
えうげんばう
)
はモ
一
(
ひと
)
つ
奥
(
おく
)
の
楠
(
くす
)
の
根元
(
ねもと
)
の
大洞穴
(
おほほらあな
)
の
中
(
なか
)
に
身
(
み
)
を
隠
(
かく
)
し、
225
他愛
(
たあい
)
もなく
寝
(
ね
)
て
了
(
しま
)
つたのである。
226
妖幻坊
(
えうげんばう
)
には
幻相坊
(
げんさうばう
)
、
227
幻魔坊
(
げんまばう
)
といふ
二人
(
ふたり
)
の
眷属
(
けんぞく
)
があつた。
228
而
(
しか
)
して
幻相坊
(
げんさうばう
)
は
火
(
ひ
)
の
術
(
じゆつ
)
をよく
使
(
つか
)
ひ、
229
幻魔坊
(
げんまばう
)
は
水
(
みづ
)
の
術
(
じゆつ
)
を
使
(
つか
)
ふに
長
(
ちやう
)
じてゐた。
230
又
(
また
)
妖幻坊
(
えうげんばう
)
は
幻術
(
げんじゆつ
)
を
以
(
もつ
)
て、
231
一
(
いち
)
時
(
じ
)
に
数百
(
すうひやく
)
数千
(
すうせん
)
の
軍人
(
ぐんじん
)
を
現
(
あら
)
はしたり、
232
妙齢
(
めうれい
)
の
美人
(
びじん
)
を
現
(
あら
)
はしたり、
233
或
(
ある
)
時
(
とき
)
は
老翁
(
らうをう
)
、
234
或
(
ある
)
時
(
とき
)
は
老婆
(
らうば
)
を
忽
(
たちま
)
ち
現
(
あら
)
はして、
235
世人
(
せじん
)
を
騙
(
たばか
)
る
事
(
こと
)
を
楽
(
たの
)
しみとしてゐた。
236
而
(
しか
)
して
妖幻坊
(
えうげんばう
)
は
日々
(
にちにち
)
獣
(
けだもの
)
の
肉
(
にく
)
を
喰
(
く
)
はなくては、
237
体
(
からだ
)
がもえて
仕方
(
しかた
)
がなかつた。
238
又
(
また
)
時々
(
ときどき
)
人肉
(
じんにく
)
をも、
239
殊更
(
ことさら
)
喜
(
よろこ
)
んで
喰
(
く
)
ふのである。
240
高姫
(
たかひめ
)
は
一人
(
ひとり
)
美
(
うる
)
はしき
座敷
(
ざしき
)
を
与
(
あた
)
へられた
事
(
こと
)
を
非常
(
ひじやう
)
に
喜
(
よろこ
)
び、
241
知
(
し
)
らず
知
(
し
)
らずに
鼻唄
(
はなうた
)
さへ
歌
(
うた
)
つてゐた。
242
そこへドアを
開
(
ひら
)
ひて、
243
淑
(
しと
)
やかに
十四五
(
じふしご
)
才
(
さい
)
の
女
(
をんな
)
が
二人
(
ふたり
)
、
244
白綸子
(
しろりんず
)
の
着物
(
きもの
)
に
紫縮緬
(
むらさきちりめん
)
の
袴
(
はかま
)
を
穿
(
うが
)
ち、
245
美
(
うる
)
はしき
漆
(
うるし
)
のやうな
下
(
さ
)
げ
髪
(
がみ
)
を
紫
(
むらさき
)
の
紐
(
ひも
)
にてしばり、
246
上
(
うへ
)
に
桃色
(
ももいろ
)
の
㎏
衣
(
かくい
)
を
着
(
き
)
て、
247
高子
『
御免
(
ごめん
)
なさいませ、
248
奥様
(
おくさま
)
のお
居間
(
ゐま
)
はここで
厶
(
ござ
)
いますか。
249
私
(
わたし
)
は
高子
(
たかこ
)
と
申
(
まを
)
します、
250
妹
(
いもうと
)
は
宮子
(
みやこ
)
と
申
(
まを
)
します。
251
今日
(
けふ
)
から
高宮彦
(
たかみやひこ
)
様
(
さま
)
のお
指図
(
さしづ
)
によりまして、
252
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
のお
小間使
(
こまづかひ
)
を
仰
(
おほ
)
せ
付
(
つ
)
けられました。
253
何分
(
なにぶん
)
不束
(
ふつつか
)
な
者
(
もの
)
で
厶
(
ござ
)
いますれば、
254
何卒
(
どうぞ
)
叱
(
しか
)
つてお
使
(
つか
)
ひ
下
(
くだ
)
さいませ』
255
と
優
(
やさ
)
しい
手
(
て
)
をついて、
256
頭
(
あたま
)
を
下
(
さ
)
げ
挨拶
(
あいさつ
)
をする。
257
高姫
(
たかひめ
)
は
二人
(
ふたり
)
の
姿
(
すがた
)
を
見
(
み
)
て、
258
高姫
『ああ
何
(
なん
)
と、
259
揃
(
そろ
)
ひも
揃
(
そろ
)
つて
美
(
うつく
)
しい
娘
(
むすめ
)
だなア。
260
併
(
しか
)
しながら
今
(
いま
)
はまだ
年
(
とし
)
が
若
(
わか
)
くて
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
だが、
261
此
(
この
)
女
(
をんな
)
が
二三
(
にさん
)
年
(
ねん
)
もたつたら、
262
丁度
(
ちやうど
)
私
(
わたし
)
のやうな
姿
(
すがた
)
になるだらう。
263
そした
時
(
とき
)
は、
264
又
(
また
)
杢助
(
もくすけ
)
さまが
変
(
へん
)
な
心
(
こころ
)
を
起
(
おこ
)
しはすまいか』
265
と
思
(
おも
)
ふと、
266
俄
(
にはか
)
に
此
(
この
)
二人
(
ふたり
)
が、
267
何処
(
どこ
)
ともなく
憎
(
にく
)
らしいやうな
気
(
き
)
になつて
了
(
しま
)
つた。
268
高姫
(
たかひめ
)
は
舌長
(
したなが
)
に、
269
高姫
『ハイ、
270
お
前
(
まへ
)
は
高宮彦
(
たかみやひこ
)
さまの
身内
(
みうち
)
の
者
(
もの
)
か、
271
但
(
ただし
)
は、
272
どつからか
頼
(
たの
)
まれて
御
(
ご
)
奉公
(
ほうこう
)
にあがつてゐるのか、
273
それが
聞
(
き
)
かして
欲
(
ほ
)
しい、
274
其
(
その
)
上
(
うへ
)
でお
世話
(
せわ
)
になりませう』
275
高子
(
たかこ
)
『ハイ、
276
妾
(
わらは
)
は
父
(
ちち
)
もなければ
母
(
はは
)
も
厶
(
ござ
)
いませぬ』
277
高姫
『
父母
(
ふぼ
)
もない
子
(
こ
)
が
何処
(
どこ
)
にあるものか、
278
ハハー、
279
さうすると、
280
お
前
(
まへ
)
は
捨児
(
すてご
)
だなア。
281
そして
宮子
(
みやこ
)
、
282
お
前
(
まへ
)
の
父母
(
ふぼ
)
は
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ふかな』
283
宮子
『ハイ、
284
妾
(
わらは
)
も
両親
(
りやうしん
)
が
厶
(
ござ
)
いませぬ』
285
高姫
『
両親
(
りやうしん
)
の
分
(
わか
)
らぬやうな
子供
(
こども
)
は
要
(
い
)
りませぬ。
286
何処
(
どこ
)
の
馬
(
うま
)
の
骨
(
ほね
)
か
牛
(
うし
)
の
骨
(
ほね
)
か
分
(
わか
)
らぬ、
287
女
(
あま
)
つちよを、
288
ヘン、
289
此
(
この
)
素性
(
すじやう
)
の
高
(
たか
)
き
高宮姫
(
たかみやひめ
)
の、
290
お
小間使
(
こまづかひ
)
なんて、
291
高宮彦
(
たかみやひこ
)
さまも
余
(
あま
)
りだ。
292
コレ
両人
(
りやうにん
)
、
293
こちらに
用
(
よう
)
はないから、
294
トツトと
帰
(
かへ
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
295
そして
此
(
この
)
城内
(
じやうない
)
には、
296
高宮姫
(
たかみやひめ
)
が
今日
(
けふ
)
限
(
かぎ
)
りおきませぬぞや』
297
高子
(
たかこ
)
『
左様
(
さやう
)
なれば、
298
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
、
299
是非
(
ぜひ
)
が
厶
(
ござ
)
いませぬ。
300
妾
(
わらは
)
と
妹
(
いもうと
)
が
両親
(
りやうしん
)
がないと
云
(
い
)
つたのは
外
(
ほか
)
でも
厶
(
ござ
)
いませぬ、
301
実
(
じつ
)
は
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
から
生
(
うま
)
れた
者
(
もの
)
で
厶
(
ござ
)
います。
302
妾
(
わらは
)
は
火
(
ひ
)
を
守護
(
しゆご
)
し、
303
妹
(
いもうと
)
は
水
(
みづ
)
を
守護
(
しゆご
)
する
霊
(
みたま
)
で
厶
(
ござ
)
います。
304
貴女
(
あなた
)
は
火
(
ひ
)
と
水
(
みづ
)
がいらないとみえますな。
305
左様
(
さやう
)
なれば
仰
(
おほせ
)
に
従
(
したが
)
ひ
帰
(
かへ
)
ります』
306
と
足早
(
あしばや
)
に
室外
(
しつぐわい
)
へ
出
(
で
)
ようとする。
307
高姫
(
たかひめ
)
は
驚
(
おどろ
)
いて、
308
高姫
『マママ
待
(
ま
)
つて
下
(
くだ
)
さい、
309
ヤ、
310
小母
(
をば
)
さまが
悪
(
わる
)
かつた。
311
つい
何
(
ど
)
う
仰有
(
おつしや
)
るかと
思
(
おも
)
うて、
312
お
前
(
まへ
)
さまの
気
(
き
)
をひいてみたのだ。
313
潮干
(
しほひる
)
潮満
(
しほみつ
)
の、
314
お
前
(
まへ
)
は
玉
(
たま
)
だつたな。
315
どうもそれに
違
(
ちが
)
ひないと
思
(
おも
)
つたけれど、
316
それとはなしに
小母
(
をば
)
さまが
探
(
さぐ
)
つて
見
(
み
)
たのだから、
317
何卒
(
どうぞ
)
悪
(
わる
)
く
思
(
おも
)
つて
下
(
くだ
)
さるな』
318
高子
(
たかこ
)
『ハイ、
319
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
います、
320
併
(
しか
)
しながら
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
から
一遍
(
いつぺん
)
追
(
お
)
つ
立
(
た
)
てをくつたので
御座
(
ござ
)
いますから、
321
私
(
わたし
)
は
火
(
ひ
)
で
厶
(
ござ
)
います。
322
何卒
(
どうぞ
)
お
暇
(
ひま
)
を
下
(
くだ
)
さいませ。
323
なア
宮
(
みや
)
ちやま、
324
お
前
(
まへ
)
さまだつて、
325
さうでせうね』
326
宮子
(
みやこ
)
『
私
(
わたし
)
小母
(
をば
)
さまには
追
(
お
)
ひ
出
(
だ
)
され、
327
小父
(
をぢ
)
さまの
所
(
ところ
)
へ
行
(
い
)
つては
叱
(
しか
)
られちや、
328
立
(
た
)
つ
瀬
(
せ
)
がありませぬワ。
329
私
(
わたし
)
は
水
(
みづ
)
の
精
(
せい
)
だから、
330
川
(
かは
)
の
瀬
(
せ
)
へでも
行
(
い
)
つて
流
(
なが
)
れませうよ』
331
高姫
『コレコレ、
332
高
(
たか
)
さま、
333
宮
(
みや
)
さま、
334
何卒
(
どうぞ
)
、
335
さう
言
(
い
)
はずに、
336
私
(
わたし
)
の
所
(
ところ
)
に
居
(
を
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
337
余
(
あま
)
り
気儘
(
きまま
)
な
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
つたと
云
(
い
)
つて、
338
高宮彦
(
たかみやひこ
)
さまに
此
(
この
)
小母
(
をば
)
さまも
叱
(
しか
)
られる。
339
又
(
また
)
お
前
(
まへ
)
たちも
叱
(
しか
)
られちや
大変
(
たいへん
)
だぜ。
340
サアサア、
341
小母
(
をば
)
さまが
大切
(
たいせつ
)
にして
上
(
あ
)
げるから、
342
機嫌
(
きげん
)
を
直
(
なほ
)
してくるのだよ』
343
二人
(
ふたり
)
は、
344
高子、宮子
『アーイ』
345
と
細
(
ほそ
)
い
涼
(
すず
)
しい
声
(
こゑ
)
を
揃
(
そろ
)
へて
云
(
い
)
ふかと
思
(
おも
)
へば、
346
光線
(
くわうせん
)
の
如
(
ごと
)
くパツと
室内
(
しつない
)
に
入
(
い
)
り
来
(
きた
)
り、
347
右
(
みぎ
)
と
左
(
ひだり
)
から
高姫
(
たかひめ
)
に
飛
(
と
)
び
付
(
つ
)
いて、
348
高子、宮子
『
小母
(
をば
)
さま、
349
姫
(
ひめ
)
さま』
350
と
嬉
(
うれ
)
しさうに
叫
(
さけ
)
んだ。
351
高子
(
たかこ
)
は
火
(
ひ
)
の
如
(
ごと
)
く
熱
(
あつ
)
く、
352
宮子
(
みやこ
)
は
水
(
みづ
)
の
如
(
ごと
)
く
冷
(
つめ
)
たい。
353
高姫
(
たかひめ
)
は
火
(
ひ
)
と
水
(
みづ
)
に
責
(
せ
)
められ、
354
寒熱
(
かんねつ
)
に
苦
(
くる
)
しんで、
355
忽
(
たちま
)
ち
其
(
その
)
場
(
ば
)
に
目
(
め
)
をマハして
了
(
しま
)
つた。
356
(
大正一二・一・二六
旧一一・一二・一〇
松村真澄
録)
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