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霊界物語
真善美愛(第49~60巻)
第57巻(申の巻)
序文
総説歌
第1篇 照門山颪
第1章 大山
第2章 煽動
第3章 野探
第4章 妖子
第5章 糞闘
第6章 強印
第7章 暗闇
第8章 愚摺
第2篇 顕幽両通
第9章 婆娑
第10章 転香
第11章 鳥逃し
第12章 三狂
第13章 悪酔怪
第14章 人畜
第15章 糸瓜
第16章 犬労
第3篇 天上天下
第17章 涼窓
第18章 翼琴
第19章 抱月
第20章 犬闘
第21章 言触
第22章 天葬
第23章 薬鑵
第24章 空縛
第25章 天声
余白歌
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第57巻(申の巻)
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<<< 野探
(B)
(N)
糞闘 >>>
第四章
妖子
(
えうし
)
〔一四五四〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第57巻 真善美愛 申の巻
篇:
第1篇 照門山颪
よみ(新仮名遣い):
てるもんざんおろし
章:
第4章 妖子
よみ(新仮名遣い):
ようし
通し章番号:
1454
口述日:
1923(大正12)年03月24日(旧02月8日)
口述場所:
皆生温泉 浜屋
筆録者:
加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1925(大正14)年5月24日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
家令のオールスチンは群衆に踏み倒されて館にかつぎこまれ、日夜苦悶を続けていた。小国別は仮死状態に陥り、デビスとケリナの二人の娘は帰ってこず、三千彦の行方もわからなくなり、小国姫は悲痛の淵に沈んでいた。
館の中にはオークス、ビルマの二人が切り盛りをしていた。小国姫は二人を招いて相談をした。オークスとビルマは、三千彦をけなし、しきりにワックスを跡取りとするよう小国姫に勧めた。そして自分たちを家令とするよう小国姫に承諾させてしまった。
そこへ小国別の容態が変わったと知らせが来たため、小国姫、オークス、ビルマの三人は急ぎ病床へ向かった。小国別はむっくと起き上がり、三千彦とオールスチンに会いたいと告げた。
オークスは、三千彦は町民の怒りの的となり、オールスチンは踏み倒されて、両人とも頼りにできないため、自分たちが家令に任命されたと小国別に報告した。小国別は、家令職はオールスチンの認可を得た上で、ハルナの都の大黒主の許可を得なければ任命することはできないと叱りつけた。
オークスは、三五教の三千彦を館に引き入れた罪を大黒主に注進すると小国別夫婦を脅しつける。小国別は、このような悪人を決して使ってはならぬと怒気を含んで怒鳴りたてると、昏睡状態に陥った。
小国姫は、小国別の命令だからこれきり館への出入りを禁じるとオークスとビルマに申し渡した。オークスは、小国別夫婦を国敵として訴えると脅し文句を居丈高に述べ立てると、ビルマと共に表に駆けだした。
牛にぶつかって養生していたエルは、ようやく館に戻ってきた。玄関にてふと走り出てくるオークスとビルマに出会った。エルは二人の相好がただ事ならないのに不審を起こして声をかけた。
オークスとビルマは、小国別夫婦に脅迫的に迫ってここまで来たが、うっかり町民に妙なことをしゃべって後の取りまとめに困ってはならないと思っていたので、これ幸いとエルの呼びかけに応じて受付に座り、ひそびそ話にふけった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm5704
愛善世界社版:
45頁
八幡書店版:
第10輯 274頁
修補版:
校定版:
47頁
普及版:
19頁
初版:
ページ備考:
001
館
(
やかた
)
の
家令
(
かれい
)
オールスチンは、
002
老齢
(
らうれい
)
衰弱
(
すゐじやく
)
の
身
(
み
)
を
大勢
(
おほぜい
)
の
荒男
(
あらをとこ
)
に
所
(
ところ
)
構
(
かま
)
はず
踏
(
ふ
)
み
倒
(
たふ
)
され、
003
ワックスの
介抱
(
かいはう
)
に
依
(
よ
)
りて
再
(
ふたた
)
び
息
(
いき
)
は
吹
(
ふ
)
き
返
(
かへ
)
したものの、
004
苦
(
くる
)
しみに
堪
(
た
)
えず、
005
吾
(
わが
)
館
(
やかた
)
に
舁
(
か
)
つぎ
込
(
こ
)
まれ、
006
発熱
(
はつねつ
)
甚
(
はなは
)
だしく、
007
日夜
(
にちや
)
苦悶
(
くもん
)
を
続
(
つづ
)
けて
居
(
ゐ
)
た。
008
一方
(
いつぱう
)
館
(
やかた
)
に
於
(
おい
)
ては
小国別
(
をくにのわけ
)
は
仮死
(
かし
)
状態
(
じやうたい
)
に
陥
(
おちい
)
り、
009
囈言
(
うはごと
)
計
(
ばか
)
り
云
(
い
)
うて
居
(
ゐ
)
る。
010
さうしてデビス、
011
ケリナの
両女
(
りやうぢよ
)
は
行衛
(
ゆくゑ
)
は
容易
(
ようい
)
に
分
(
わか
)
らず、
012
又
(
また
)
力
(
ちから
)
と
頼
(
たの
)
む
三千彦
(
みちひこ
)
の
行衛
(
ゆくゑ
)
も
分
(
わか
)
らなくなり、
013
小国姫
(
をくにひめ
)
は
悲痛
(
ひつう
)
の
淵
(
ふち
)
に
沈
(
しづ
)
み、
014
身
(
み
)
をワナワナと
慄
(
ふる
)
はせ
乍
(
なが
)
ら、
015
世
(
よ
)
を
果敢
(
はか
)
なみ、
016
生
(
いき
)
たる
心地
(
ここち
)
はせなかつた。
017
されど
如何
(
いか
)
にもして
一
(
いち
)
時
(
じ
)
なりとも
夫
(
をつと
)
の
病
(
やまひ
)
を
長引
(
ながびか
)
せ
二人
(
ふたり
)
の
娘
(
むすめ
)
に
会
(
あ
)
はせたきものと、
018
夫
(
それ
)
のみ
力
(
ちから
)
に
日
(
ひ
)
を
送
(
おく
)
つて
居
(
ゐ
)
た。
019
館
(
やかた
)
の
中
(
なか
)
はオークス、
020
ビルマの
両人
(
りやうにん
)
が
万事
(
ばんじ
)
切
(
き
)
り
廻
(
まは
)
して
居
(
ゐ
)
る。
021
受付
(
うけつけ
)
のエルは
牛
(
うし
)
に
睾丸
(
きんたま
)
を
潰
(
つぶ
)
されたきり、
022
綿屋
(
わたや
)
の
奥
(
おく
)
の
間
(
ま
)
で
高枕
(
たかまくら
)
をして
苦
(
くる
)
しんで
居
(
ゐ
)
る。
023
小国姫
(
をくにひめ
)
はオークス、
024
ビルマを
居間
(
ゐま
)
に
招
(
まね
)
き、
025
種々
(
いろいろ
)
と
相談
(
さうだん
)
をかけた。
026
二人
(
ふたり
)
は
時節
(
じせつ
)
到来
(
たうらい
)
、
027
ワックスの
思惑
(
おもわく
)
を
成就
(
じやうじゆ
)
させ、
028
甘
(
うま
)
い
汁
(
しる
)
を
吸
(
す
)
はむものと
胸
(
むね
)
を
躍
(
をど
)
らせながら、
029
素知
(
そし
)
らぬ
顔
(
かほ
)
して
心配気
(
しんぱいげ
)
に
俯向
(
うつむ
)
いて
居
(
ゐ
)
る。
030
小国姫
(
をくにひめ
)
『オークス、
031
お
前
(
まへ
)
に
折
(
を
)
り
入
(
い
)
つて
相談
(
さうだん
)
したい
事
(
こと
)
がある。
032
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
はあの
通
(
とほ
)
り
何時
(
いつ
)
お
帰幽
(
くにがへ
)
なさるか
知
(
し
)
れぬ
御
(
ご
)
容態
(
ようだい
)
、
033
又
(
また
)
家令
(
かれい
)
のオールスチンは
重病
(
ぢゆうびやう
)
で
苦
(
くる
)
しんで
居
(
ゐ
)
るなり、
034
ワックスは
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
や、
035
オールスチンの
病気
(
びやうき
)
平癒
(
へいゆ
)
のために
荒行
(
あらぎやう
)
に
行
(
ゆ
)
くと
云
(
い
)
つて
出
(
で
)
たきり
顔
(
かほ
)
を
見
(
み
)
せないし、
036
二人
(
ふたり
)
の
娘
(
むすめ
)
は
未
(
ま
)
だ
帰
(
かへ
)
つて
来
(
こ
)
ず、
037
若
(
もし
)
もの
事
(
こと
)
があつたら、
038
如何
(
どう
)
したら
好
(
よ
)
からうか、
039
お
前
(
まへ
)
も
一
(
ひと
)
つ
考
(
かんが
)
へて
貰
(
もら
)
ひ
度
(
た
)
いものだがなア』
040
オークス『
実
(
まこと
)
にお
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
な
事
(
こと
)
が
出来
(
しゆつたい
)
したもので
厶
(
ござ
)
いますワイ。
041
お
館
(
やかた
)
計
(
ばかり
)
の
難儀
(
なんぎ
)
ではなく
宮町
(
みやまち
)
一統
(
いつとう
)
の
難儀
(
なんぎ
)
で
厶
(
ござ
)
います。
042
貴女
(
あなた
)
はバラモン
教
(
けう
)
の
館
(
やかた
)
を
守護
(
しゆご
)
する
役
(
やく
)
であり
乍
(
なが
)
ら、
043
素性
(
すじやう
)
の
分
(
わか
)
らぬ
三五教
(
あななひけう
)
の
魔法使
(
まはふつかひ
)
を
町民
(
ちやうみん
)
に
内証
(
ないしよう
)
で
引
(
ひ
)
き
入
(
い
)
れなさつたものですから、
044
此
(
この
)
様
(
やう
)
な
惨
(
むご
)
い
目
(
め
)
に
会
(
あ
)
はされたのです。
045
これからは
些
(
ちつ
)
と
吾々
(
われわれ
)
の
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
も
聞
(
き
)
いて
貰
(
もら
)
はなくてはなりませぬ。
046
町中
(
まちぢう
)
の
噂
(
うはさ
)
によれば、
047
あの
三千彦
(
みちひこ
)
と
云
(
い
)
ふ
奴
(
やつ
)
は、
048
三五教
(
あななひけう
)
きつての
魔法使
(
まはふつかひ
)
で、
049
お
館
(
やかた
)
に
最
(
もつと
)
も
大切
(
たいせつ
)
な
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
の
玉
(
たま
)
を
忍術
(
にんじゆつ
)
をもつて
奪
(
うば
)
ひ
取
(
と
)
り、
050
お
館
(
やかた
)
に
有
(
あ
)
るにあられぬ
心配
(
しんぱい
)
をかけて
置
(
お
)
き、
051
進退
(
しんたい
)
維谷
(
これきは
)
まる
場合
(
ばあひ
)
を
考
(
かんが
)
へ
澄
(
す
)
まし、
052
バラモン
教
(
けう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
に
化
(
ば
)
けて
這入
(
はい
)
つて
来
(
き
)
よつたので
厶
(
ござ
)
います。
053
夫
(
それ
)
故
(
ゆゑ
)
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
家
(
いへ
)
に
厶
(
ござ
)
つたデビス
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
迄
(
まで
)
お
行方
(
ゆくへ
)
は
分
(
わか
)
らぬ
様
(
やう
)
になり、
054
此
(
この
)
町中
(
まちぢう
)
は
大切
(
たいせつ
)
な
御
(
ご
)
神具
(
しんぐ
)
を
残
(
のこ
)
らず
盗
(
ぬす
)
まれ、
055
大変
(
たいへん
)
な
大騒動
(
おほさうどう
)
で
厶
(
ござ
)
います。
056
こんな
事
(
こと
)
が
町民
(
ちやうみん
)
に
分
(
わか
)
らうものなら、
057
夫
(
それ
)
こそ
貴女
(
あなた
)
の
御
(
おん
)
身
(
み
)
の
大事
(
だいじ
)
、
058
大
(
おほ
)
きな
顔
(
かほ
)
して
此
(
この
)
お
館
(
やかた
)
には
居
(
を
)
られますまい。
059
そつと
早馬
(
はやうま
)
でハルナの
都
(
みやこ
)
に
報告
(
はうこく
)
でもしようものなら、
060
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
は
病気
(
びやうき
)
で
亡
(
な
)
くなられたとした
所
(
ところ
)
で、
061
お
前
(
まへ
)
さまは
逆磔刑
(
さかはりつけ
)
にあはされるでせう。
062
大変
(
たいへん
)
な
事
(
こと
)
をして
下
(
くだ
)
さつた。
063
私
(
わたし
)
は
貴女
(
あなた
)
の
境遇
(
きやうぐう
)
に
御
(
ご
)
同情
(
どうじやう
)
をすると
共
(
とも
)
に、
064
貴女
(
あなた
)
の
御
(
ご
)
処置
(
しよち
)
を
恨
(
うら
)
んで
居
(
ゐ
)
ます。
065
もし
斯
(
こ
)
んな
事
(
こと
)
が
大黒主
(
おほくろぬし
)
様
(
さま
)
のお
耳
(
みみ
)
に
入
(
はい
)
らうものなら、
066
吾々
(
われわれ
)
もどんな
刑罰
(
けいばつ
)
に
会
(
あ
)
はされるかも
知
(
し
)
れませぬ。
067
今後
(
こんご
)
はちつとオークスの
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
も
聞
(
き
)
いて
貰
(
もら
)
ひ
度
(
た
)
いものです』
068
小国姫
(
をくにひめ
)
『あの
三千彦
(
みちひこ
)
さまに
限
(
かぎ
)
つてそんな
悪党
(
あくたう
)
な
方
(
かた
)
では
有
(
あ
)
りませぬぞや、
069
夫
(
それ
)
は
何
(
なに
)
かの
間違
(
まちが
)
ひでせう。
070
金剛
(
こんがう
)
不壊
(
ふえ
)
の
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
を
隠
(
かく
)
したのは
決
(
けつ
)
して
三千彦
(
みちひこ
)
さまぢやない、
071
家令
(
かれい
)
の
悴
(
せがれ
)
のワックスに
間違
(
まちが
)
ひないのだ。
072
あれが
吾
(
わが
)
娘
(
むすめ
)
デビス
姫
(
ひめ
)
を
無理
(
むり
)
往生
(
わうじやう
)
に
娶
(
めと
)
らむとして
種々
(
しゆじゆ
)
とエキス、
073
ヘルマンなどを
使
(
つか
)
ひ
企
(
たく
)
んだと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
は
明瞭
(
はつき
)
り
分
(
わか
)
つて
居
(
を
)
るのだよ。
074
勿体
(
もつたい
)
ない、
075
誠
(
まこと
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
にそんな
罪
(
つみ
)
を
被
(
き
)
せるものぢやありませぬ』
076
オークス『
奥様
(
おくさま
)
、
077
夫
(
それ
)
が
第一
(
だいいち
)
貴女
(
あなた
)
のお
考
(
かんが
)
へ
違
(
ちが
)
ひです。
078
ワックスさまは
何
(
なに
)
を
云
(
い
)
うても
家令
(
かれい
)
の
悴
(
せがれ
)
、
079
このお
館
(
やかた
)
が
立
(
た
)
ち
行
(
ゆ
)
かねば
自分
(
じぶん
)
の
家
(
いへ
)
も
立
(
た
)
ち
行
(
ゆ
)
かないのですから、
080
よう
考
(
かんが
)
へて
御覧
(
ごらん
)
なさい、
081
そんな
不利益
(
ふりえき
)
の
事
(
こと
)
をなさいますか。
082
そこが
三五教
(
あななひけう
)
の
魔法使
(
まはふつかひ
)
の
甘
(
うま
)
い
所
(
ところ
)
で……ワックスさまは
人
(
ひと
)
がよいから、
083
塗
(
ぬ
)
りつけられたのですよ。
084
奥
(
おく
)
の
奥
(
おく
)
を
考
(
かんが
)
へて
貰
(
もら
)
はねば
実
(
まこと
)
にワックスさまに
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
で
厶
(
ござ
)
いますワ。
085
よく
考
(
かんが
)
へて
御覧
(
ごらん
)
なさいませ。
086
三千彦
(
みちひこ
)
と
云
(
い
)
ふ
魔法使
(
まはふつかひ
)
は、
087
町民
(
ちやうみん
)
の
鬨
(
とき
)
の
声
(
こゑ
)
に
驚
(
おどろ
)
かされて
雲
(
くも
)
を
霞
(
かすみ
)
と
逃
(
に
)
げ
失
(
う
)
せ、
088
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
はどう
贔屓目
(
ひいきめ
)
に
見
(
み
)
ても
御
(
ご
)
養生
(
やうじやう
)
は
叶
(
かな
)
ひますまい。
089
そして
家令
(
かれい
)
のオールスチンさまも
御
(
ご
)
本復
(
ほんぷく
)
は
難
(
むつかし
)
いこの
場合
(
ばあひ
)
、
090
此
(
この
)
お
館
(
やかた
)
のお
力
(
ちから
)
になる
者
(
もの
)
は
誰
(
たれ
)
だと
思召
(
おぼしめ
)
す。
091
ワックスさまより
外
(
ほか
)
無
(
な
)
いぢやありませぬか。
092
貴女
(
あなた
)
はワックスさまをお
疑
(
うたが
)
ひなさると、
093
これ
程
(
ほど
)
人気
(
にんき
)
の
有
(
あ
)
るワックスさまの
為
(
ため
)
に
町民
(
ちやうみん
)
が
承知
(
しようち
)
致
(
いた
)
しませぬぞや。
094
よく
胸
(
むね
)
に
手
(
て
)
を
当
(
あ
)
ててお
考
(
かんが
)
へにならないと、
095
お
館
(
やかた
)
の
一大事
(
いちだいじ
)
で
厶
(
ござ
)
います』
096
小国姫
(
をくにひめ
)
『ハテ
合点
(
がつてん
)
のゆかぬ
事
(
こと
)
だなア、
097
ビルマ
其方
(
そなた
)
は
何
(
なん
)
と
思
(
おも
)
ふか』
098
ビルマ『ハイ
私
(
わたし
)
は
町内
(
ちやうない
)
の
噂
(
うはさ
)
を
調
(
しら
)
べて
見
(
み
)
ましたが、
099
ワックスさまは
本当
(
ほんたう
)
に
偉
(
えら
)
い
人
(
ひと
)
ですよ。
100
三五教
(
あななひけう
)
の
魔法使
(
まはふつかひ
)
が
隠
(
かく
)
して
置
(
お
)
いた
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
をも、
101
甘
(
うま
)
く
自分
(
じぶん
)
が
罪
(
つみ
)
を
負
(
お
)
ふと
云
(
い
)
うて
吐
(
は
)
き
出
(
だ
)
させなさつたので
厶
(
ござ
)
います。
102
真実
(
ほんとう
)
の
忠臣
(
ちうしん
)
義士
(
ぎし
)
と
云
(
い
)
ふのは、
103
あのワックスさまで
厶
(
ござ
)
います。
104
あの
宝
(
たから
)
が
無
(
な
)
かつたらお
館
(
やかた
)
は
勿論
(
もちろん
)
、
105
宮町
(
みやまち
)
一同
(
いちどう
)
が
大黒主
(
おほくろぬし
)
様
(
さま
)
から
所刑
(
おしおき
)
に
遇
(
あ
)
はねばならぬ
所
(
ところ
)
を
助
(
たす
)
けて
下
(
くだ
)
さつたのだから、
106
テルモン
国
(
こく
)
の
救世主
(
きうせいしゆ
)
だと
云
(
い
)
つて
居
(
ゐ
)
ます。
107
どうしてもデビス
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
養子
(
やうし
)
になさつて
此
(
この
)
国
(
くに
)
を
治
(
をさ
)
めねば
町民
(
ちやうみん
)
が
承知
(
しようち
)
しませぬ。
108
私
(
わたし
)
は
別
(
べつ
)
にワックスさまがお
世継
(
よつぎ
)
にならうとなるまいと
利害
(
りがい
)
関係
(
くわんけい
)
はないのですから、
109
ワックスさまの
為
(
ため
)
に
弁護
(
べんご
)
は
致
(
いた
)
しませぬ。
110
中立
(
ちうりつ
)
地帯
(
ちたい
)
に
身
(
み
)
を
置
(
お
)
いて、
111
自分
(
じぶん
)
の
所信
(
しよしん
)
を
包
(
つつ
)
まず
隠
(
かく
)
さず
申上
(
まをしあ
)
げます』
112
小国姫
(
をくにひめ
)
『
町民
(
ちやうみん
)
迄
(
まで
)
がさう
信
(
しん
)
じて
居
(
ゐ
)
る
以上
(
いじやう
)
は、
113
どうも
仕方
(
しかた
)
がない。
114
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
今日
(
こんにち
)
の
場合
(
ばあひ
)
、
115
養子
(
やうし
)
にするせぬは
後
(
あと
)
の
事
(
こと
)
として、
116
一度
(
いちど
)
ワックスさまに
来
(
き
)
て
貰
(
もら
)
ひ
度
(
た
)
いものだなア』
117
オークス『それは
結構
(
けつこう
)
で
厶
(
ござ
)
いますが、
118
ワックスさまは
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
為
(
た
)
め、
119
お
館
(
やかた
)
の
為
(
ため
)
、
120
町民
(
ちやうみん
)
の
為
(
た
)
め、
121
命
(
いのち
)
がけの
業
(
げふ
)
をすると
云
(
い
)
うて
出
(
で
)
かけられましたから、
122
お
行衛
(
ゆくゑ
)
が
分
(
わか
)
らず、
123
何時
(
いつ
)
帰
(
かへ
)
らるるとも
見当
(
けんたう
)
が
付
(
つ
)
きませぬ。
124
就
(
つい
)
ては
家事
(
かじ
)
万端
(
ばんたん
)
を
処理
(
しより
)
する
役員
(
やくゐん
)
が
無
(
な
)
ければ
不都合
(
ふつがふ
)
で
厶
(
ござ
)
いませう。
125
家令
(
かれい
)
はあの
通
(
とほ
)
り
胸板
(
むないた
)
を
踏
(
ふ
)
まれ、
126
恢復
(
くわいふく
)
の
見込
(
みこ
)
みは
立
(
た
)
ちませぬ、
127
二人
(
ふたり
)
の
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
は
行方
(
ゆくへ
)
が
分
(
わか
)
らず、
128
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
は
御
(
ご
)
重病
(
ぢゆうびやう
)
、
129
誰
(
たれ
)
か
家令
(
かれい
)
を
新
(
あらた
)
にお
命
(
めい
)
じなさらなくては、
130
一
(
いち
)
日
(
にち
)
も
館
(
やかた
)
の
事務
(
じむ
)
が
執
(
と
)
れますまい。
131
私
(
わたし
)
も
門番
(
もんばん
)
位
(
くらゐ
)
勤
(
つと
)
めて
居
(
を
)
つては
大奥
(
おほおく
)
の
御用
(
ごよう
)
は
出来
(
でき
)
ませぬしなア』
132
小国姫
(
をくにひめ
)
『アアそんなら、
133
順々
(
じゆんじゆん
)
に
抜擢
(
ばつてき
)
してお
世話
(
せわ
)
にならう。
134
受付
(
うけつけ
)
のエルを
臨時
(
りんじ
)
家令
(
かれい
)
となし、
135
お
前
(
まへ
)
は
受付
(
うけつけ
)
になつて
貰
(
もら
)
はう、
136
さうすれば
万事
(
ばんじ
)
万端
(
ばんたん
)
都合
(
つがふ
)
よく
運
(
はこ
)
ぶであらう』
137
オークス『
成程
(
なるほど
)
それは
順当
(
じゆんたう
)
で
至極
(
しごく
)
結構
(
けつこう
)
でせう。
138
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら、
139
エルさまの
慌者
(
あわてもの
)
、
140
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
が、
141
まだ
命
(
いのち
)
のある
中
(
うち
)
から
御
(
ご
)
帰幽
(
きいう
)
になつたと
云
(
い
)
うて
町中
(
まちぢう
)
を
触
(
ふ
)
れ
歩
(
ある
)
き、
142
大勢
(
おほぜい
)
を
騒
(
さわ
)
がし、
143
お
負
(
まけ
)
に
牛
(
うし
)
の
尻
(
しり
)
に
突
(
つ
)
き
当
(
あた
)
り
睾丸
(
きんたま
)
を
踏
(
ふ
)
み
潰
(
つぶ
)
され、
144
綿屋
(
わたや
)
の
離室
(
はなれ
)
に
有
(
あ
)
らむ
限
(
かぎ
)
りの
苦
(
くる
)
しみをして
居
(
を
)
ります。
145
さうして
道端
(
みちばた
)
に
繋
(
つな
)
いであるあれ
程
(
ほど
)
大
(
おほ
)
きな
牛
(
うし
)
が
目
(
め
)
に
付
(
つ
)
かないやうな
事
(
こと
)
では
門番
(
もんばん
)
も
出来
(
でき
)
ないと
云
(
い
)
うて、
146
町中
(
まちぢう
)
の
笑
(
わら
)
はれ
者
(
もの
)
になつて
居
(
を
)
りますよ。
147
あんな
慌者
(
あわてもの
)
が
家令
(
かれい
)
にでもならうものなら、
148
お
館
(
やかた
)
の
威勢
(
ゐせい
)
は
申
(
まを
)
すに
及
(
およ
)
ばず、
149
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
威勢
(
ゐせい
)
迄
(
まで
)
も
落
(
お
)
ちると
云
(
い
)
つて、
150
町中
(
まちぢう
)
の
大反対
(
だいはんたい
)
で
厶
(
ござ
)
います。
151
夫
(
それ
)
はおよしになつた
方
(
はう
)
がお
為
(
ため
)
で
厶
(
ござ
)
いませう』
152
小国姫
(
をくにひめ
)
『ハテ
困
(
こま
)
つた
事
(
こと
)
だなア。
153
そんならワックスが
帰
(
かへ
)
つて
来
(
き
)
たら、
154
暫
(
しば
)
し
親父
(
おやぢ
)
の
代理
(
だいり
)
を
勤
(
つと
)
めさす
事
(
こと
)
に
致
(
いた
)
しませう。
155
夫
(
それ
)
迄
(
まで
)
お
前
(
まへ
)
は
臨時
(
りんじ
)
家令
(
かれい
)
の
役
(
やく
)
をやつて
貰
(
もら
)
ひ
度
(
た
)
い』
156
オークス『
私
(
わたし
)
のやうな
不都合
(
ふつがふ
)
な
者
(
もの
)
は、
157
到底
(
たうてい
)
臨時
(
りんじ
)
家令
(
かれい
)
のやうな
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ませぬ。
158
平
(
ひら
)
にお
断
(
ことわ
)
り
申
(
まを
)
します、
159
却
(
かへつ
)
てお
館
(
やかた
)
の
不都合
(
ふつがふ
)
な
事
(
こと
)
を
仕出
(
しで
)
かすといけませぬから。
160
総
(
すべ
)
て
臨時
(
りんじ
)
と
云
(
い
)
ふものは
水臭
(
みづくさ
)
い
文字
(
もじ
)
で、
161
本気
(
ほんき
)
にお
館
(
やかた
)
の
為
(
ため
)
に
尽
(
つく
)
すと
云
(
い
)
ふ
気
(
き
)
が
出
(
で
)
て
来
(
き
)
ませぬワ』
162
ビルマ『
一層
(
いつそう
)
の
事
(
こと
)
、
163
ドツと
張
(
は
)
り
込
(
こ
)
んで、
164
オークスさまを
家令
(
かれい
)
に
任命
(
にんめい
)
なさつたらどうでせう、
165
屹度
(
きつと
)
それ
丈
(
だけ
)
の
腕前
(
うでまへ
)
は
厶
(
ござ
)
いますよ。
166
貴女
(
あなた
)
は
奥
(
おく
)
にばかり
厶
(
ござ
)
るから
外
(
そと
)
の
事情
(
じじやう
)
は
分
(
わか
)
りますまいが、
167
私
(
わたし
)
が
証明
(
しようめい
)
致
(
いた
)
します。
168
町民
(
ちやうみん
)
一同
(
いちどう
)
の
希望
(
きばう
)
はワックス
様
(
さま
)
を
御
(
ご
)
養子
(
やうし
)
となし、
169
オークスさまを
家令
(
かれい
)
と
遊
(
あそ
)
ばし、
170
さうして○○を
家扶
(
かふ
)
にお
命
(
めい
)
じになれば、
171
お
嬢様
(
ぢやうさま
)
も
帰
(
かへ
)
られ、
172
お
妹御
(
いもうとご
)
のケリナさまも
無事
(
ぶじ
)
帰
(
かへ
)
られると
云
(
い
)
ふ
噂
(
うはさ
)
で
厶
(
ござ
)
います。
173
世間
(
せけん
)
の
噂
(
うはさ
)
と
云
(
い
)
ふものは
余
(
あんま
)
り
馬鹿
(
ばか
)
にはならぬもので
厶
(
ござ
)
いますよ。
174
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
為
(
た
)
め、
175
お
館
(
やかた
)
の
為
(
た
)
め、
176
それが
最善
(
さいぜん
)
の
方法
(
はうはふ
)
と
私
(
わたし
)
は
考
(
かんが
)
へます』
177
小国姫
(
をくにひめ
)
『○○を
家扶
(
かふ
)
にせいとは
誰
(
たれ
)
の
事
(
こと
)
だい、
178
もつと
明瞭
(
はつき
)
りと
云
(
い
)
うて
貰
(
もら
)
はなくては
分
(
わか
)
らぬぢやないか』
179
ビルマ『ヘイ、
180
到底
(
たうてい
)
申
(
まを
)
し
上
(
あ
)
げた
所
(
ところ
)
で
門番
(
もんばん
)
位
(
ぐらゐ
)
が
家扶
(
かふ
)
には
成
(
な
)
れますまい。
181
云
(
い
)
はぬが
花
(
はな
)
で
厶
(
ござ
)
いませう』
182
小国姫
(
をくにひめ
)
『ホホホホホ、
183
ビルマ、
184
自分
(
じぶん
)
を
推薦
(
すゐせん
)
して
居
(
ゐ
)
るのだらう。
185
お
前
(
まへ
)
も
抜目
(
ぬけめ
)
の
無
(
な
)
い
男
(
をとこ
)
だなア』
186
ビルマ『
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
の
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は
盲人
(
めくら
)
計
(
ばか
)
りで
厶
(
ござ
)
いますから、
187
自分
(
じぶん
)
から
自分
(
じぶん
)
の
技能
(
ぎのう
)
を
発表
(
はつぺう
)
しなくては、
188
何時
(
いつ
)
になつても
金槌
(
かなづち
)
の
川
(
かは
)
流
(
なが
)
れ、
189
栄達
(
えいだつ
)
の
道
(
みち
)
はつきませぬ。
190
正真
(
しやうしん
)
正銘
(
しやうめい
)
のネットプライスの
技量
(
ぎりやう
)
を
放
(
ほ
)
り
出
(
だ
)
して、
191
それをお
認
(
みと
)
めになる
御
(
ご
)
器量
(
きりやう
)
があればよし、
192
無
(
な
)
ければ
時節
(
じせつ
)
到
(
いた
)
らぬと
覚悟
(
かくご
)
するより
外
(
ほか
)
は
厶
(
ござ
)
いませぬ。
193
私
(
わたし
)
を
御
(
ご
)
採用
(
さいよう
)
なければオークスだつて
決
(
けつ
)
して
家令
(
かれい
)
の
職
(
しよく
)
に
置
(
お
)
きませぬ。
194
此
(
この
)
男
(
をとこ
)
も
今度
(
こんど
)
の
事件
(
じけん
)
については、
195
チと
弱点
(
じやくてん
)
……いや
弱点
(
じやくてん
)
は
無
(
な
)
いのです。
196
貴女
(
あなた
)
がそつと
魔法使
(
まはふつかひ
)
を
引
(
ひ
)
き
入
(
い
)
れなさつたのが
弱点
(
じやくてん
)
ですから、
197
吾々
(
われわれ
)
二人
(
ふたり
)
が
揉
(
も
)
み
消
(
け
)
し
運動
(
うんどう
)
をやつたので、
198
町内
(
ちやうない
)
の
騒
(
さわ
)
ぎがやつと
治
(
をさ
)
まつたので
厶
(
ござ
)
いますからなア』
199
小国姫
(
をくにひめ
)
『そんなら
仕方
(
しかた
)
がありませぬ。
200
お
前
(
まへ
)
を
臨時
(
りんじ
)
家扶
(
かふ
)
に
命
(
めい
)
じませう』
201
ビルマ『モシ
奥様
(
おくさま
)
、
202
臨時
(
りんじ
)
家扶
(
かふ
)
と
云
(
い
)
ふのは
釜焚
(
かまた
)
きとは
違
(
ちが
)
ひますよ。
203
家令
(
かれい
)
の
次
(
つぎ
)
の
職
(
しよく
)
、
204
重職
(
ぢうしよく
)
で
厶
(
ござ
)
いますよ。
205
念
(
ねん
)
の
為
(
た
)
め
一寸
(
ちよつと
)
申上
(
まをしあ
)
げて
置
(
お
)
きます』
206
小国姫
(
をくにひめ
)
『
門番
(
もんばん
)
が
家扶
(
かふ
)
に
出世
(
しゆつせ
)
したら
結構
(
けつこう
)
ぢやないか。
207
此
(
この
)
館
(
やかた
)
は
大黒主
(
おほくろぬし
)
様
(
さま
)
の
命令
(
めいれい
)
で
家令
(
かれい
)
一人
(
ひとり
)
と
定
(
きま
)
つて
居
(
ゐ
)
るが、
208
家扶
(
かふ
)
を
置
(
お
)
く
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ないのだから、
209
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
乍
(
なが
)
らお
前
(
まへ
)
は
門番頭
(
もんばんがしら
)
で
辛抱
(
しんばう
)
して
下
(
くだ
)
さい』
210
かかる
所
(
ところ
)
へ
一人
(
ひとり
)
の
看護婦
(
かんごふ
)
が
慌
(
あわただ
)
しく
入
(
い
)
り
来
(
きた
)
り、
211
『
奥様
(
おくさま
)
早
(
はや
)
く
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さいませ、
212
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
は
御
(
ご
)
臨終
(
りんじう
)
と
見
(
み
)
えまして、
213
大変
(
たいへん
)
御
(
ご
)
様子
(
やうす
)
が
変
(
かは
)
つて
参
(
まゐ
)
りました』
214
と
心配
(
しんぱい
)
さうに
云
(
い
)
ふ。
215
小国姫
(
をくにひめ
)
は
胸
(
むね
)
を
撫
(
な
)
でながら
慌
(
あわただ
)
しく
主人
(
しゆじん
)
の
病室
(
びやうしつ
)
に
駆
(
か
)
けり
行
(
ゆ
)
く。
216
オークスはビルマと
共
(
とも
)
に
小国姫
(
をくにひめ
)
の
後
(
あと
)
に
従
(
したが
)
ひ
病室
(
びやうしつ
)
に
入
(
い
)
る。
217
小国別
(
をくにわけ
)
は
俄
(
にはか
)
にムクムクと
起
(
お
)
き
上
(
あが
)
り、
218
痩
(
やせ
)
こけた
顔
(
かほ
)
の
窪
(
くぼ
)
んだ
目
(
め
)
を
光
(
ひか
)
らせ
乍
(
なが
)
ら、
219
小国別
(
をくにわけ
)
『
女房
(
にようばう
)
お
前
(
まへ
)
は
何処
(
どこ
)
に
行
(
い
)
つて
居
(
ゐ
)
た。
220
最前
(
さいぜん
)
から
大変
(
たいへん
)
待
(
ま
)
ち
兼
(
か
)
ねて
居
(
ゐ
)
たぞよ、
221
さうして
二人
(
ふたり
)
の
娘
(
むすめ
)
はまだ
帰
(
かへ
)
つて
来
(
こ
)
ぬかノウ』
222
小国姫
(
をくにひめ
)
『ハイもう
軈
(
やが
)
て
帰
(
かへ
)
るで
厶
(
ござ
)
いませう。
223
まだ
何
(
なん
)
とも
便
(
たよ
)
りが
厶
(
ござ
)
いませぬ』
224
小国別
(
をくにわけ
)
『ハテ
困
(
こま
)
つた
事
(
こと
)
だなア、
225
此
(
この
)
世
(
よ
)
ではもう
娘
(
むすめ
)
に
遇
(
あ
)
ふ
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
んのかなア。
226
エエ
残念
(
ざんねん
)
ぢや』
227
小国姫
(
をくにひめ
)
『
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
、
228
何卒
(
どうぞ
)
気
(
き
)
を
落
(
おと
)
さないやうにして
下
(
くだ
)
さい、
229
屹度
(
きつと
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のお
蔭
(
かげ
)
で
会
(
あ
)
はして
下
(
くだ
)
さるでせう』
230
小国別
(
をくにわけ
)
『
三千彦
(
みちひこ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
や
家令
(
かれい
)
は
何処
(
どこ
)
へ
行
(
い
)
つたかなア、
231
早
(
はや
)
く
会
(
あ
)
ひたいものだ』
232
小国姫
(
をくにひめ
)
『
三千彦
(
みちひこ
)
様
(
さま
)
は
俄
(
にはか
)
にお
行衛
(
ゆくゑ
)
が
分
(
わか
)
らぬやうになりました。
233
屹度
(
きつと
)
娘
(
むすめ
)
二人
(
ふたり
)
を
迎
(
むか
)
ひに
行
(
い
)
つて
下
(
くだ
)
さつたのでせう』
234
小国別
(
をくにわけ
)
『ウン
夫
(
そ
)
れは
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
だなア。
235
屹度
(
きつと
)
会
(
あ
)
はして
下
(
くだ
)
さるだらう。
236
家令
(
かれい
)
のオールスチンはまだ
来
(
こ
)
ぬか、
237
何
(
なに
)
をして
居
(
ゐ
)
るのだらう』
238
小国姫
(
をくにひめ
)
『ハイ、
239
一寸
(
ちよつと
)
用
(
よう
)
が
厶
(
ござ
)
いますので、
240
つひ
遅
(
おく
)
れて
居
(
ゐ
)
ます、
241
やがて
参
(
まゐ
)
るで
厶
(
ござ
)
いませう』
242
オークス『モシ
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
、
243
家令
(
かれい
)
のオールスチンは
町民
(
ちやうみん
)
に
胸板
(
むないた
)
を
踏
(
ふ
)
み
折
(
を
)
られ、
244
九死
(
きうし
)
一生
(
いつしやう
)
の
苦
(
くる
)
しみを
受
(
う
)
け
自館
(
やかた
)
に
帰
(
かへ
)
つて
居
(
を
)
られます。
245
そして
町中
(
まちぢう
)
は
三五教
(
あななひけう
)
の
魔法使
(
まはふつかひ
)
をお
館
(
やかた
)
へお
入
(
い
)
れなさつたと
云
(
い
)
うて、
246
鼎
(
かなへ
)
の
沸
(
わ
)
くやうな
騒
(
さわ
)
ぎで
厶
(
ござ
)
います。
247
そこを
私
(
わたし
)
等
(
たち
)
二人
(
ふたり
)
が
鎮定
(
ちんてい
)
致
(
いた
)
し、
248
今
(
いま
)
奥様
(
おくさま
)
と
御
(
ご
)
相談
(
さうだん
)
の
上
(
うへ
)
、
249
私
(
わたし
)
がたつた
今
(
いま
)
家令
(
かれい
)
となりましたから、
250
何分
(
なにぶん
)
宜敷
(
よろし
)
くお
願
(
ねが
)
ひ
申
(
まを
)
します。
251
今後
(
こんご
)
は
粉骨
(
ふんこつ
)
砕身
(
さいしん
)
、
252
十二分
(
じふにぶん
)
の
成績
(
せいせき
)
を
挙
(
あ
)
げてお
目
(
め
)
にかけますから
御
(
ご
)
安心
(
あんしん
)
下
(
くだ
)
さいませ』
253
小国別
(
をくにわけ
)
『お
前
(
まへ
)
は
門番
(
もんばん
)
のオークスぢやないか。
254
何程
(
なにほど
)
人望
(
じんばう
)
があると
云
(
い
)
つても、
255
さう
一足飛
(
いつそくと
)
びに
門番
(
もんばん
)
が
家令
(
かれい
)
になると
云
(
い
)
ふ
訳
(
わけ
)
にはゆくまい。
256
奥
(
おく
)
、
257
お
前
(
まへ
)
はそんな
事
(
こと
)
を
許
(
ゆる
)
したのか』
258
小国姫
(
をくにひめ
)
『ハイ、
259
……イイエ』
260
とモジモジして
居
(
ゐ
)
る。
261
小国別
(
をくにわけ
)
『
家令
(
かれい
)
を
任命
(
にんめい
)
するには
何
(
ど
)
うしてもオールスチンの
承諾
(
しようだく
)
を
得
(
え
)
、
262
彼
(
かれ
)
が
辞表
(
じへう
)
を
出
(
だ
)
した
上
(
うへ
)
でハルナの
都
(
みやこ
)
に
伺
(
うかが
)
ひを
立
(
た
)
て、
263
其
(
その
)
上
(
うへ
)
でなくてはならぬ。
264
さう
勝手
(
かつて
)
に
定
(
き
)
める
訳
(
わけ
)
にはいけぬ。
265
この
館
(
やかた
)
は
特別
(
とくべつ
)
だから
何事
(
なにごと
)
も
大黒主
(
おほくろぬし
)
様
(
さま
)
に
伺
(
うかが
)
はねばならぬ。
266
よもや
真実
(
ほんとう
)
ではあるまい。
267
奥
(
おく
)
、
268
お
前
(
まへ
)
は
当座
(
たうざ
)
の
冗談
(
てんご
)
を
云
(
い
)
ふたのであらう』
269
小国姫
(
をくにひめ
)
はモジモジしながら
幽
(
かす
)
かな
声
(
こゑ
)
で『ハイ』と
一言
(
ひとこと
)
、
270
俯向
(
うつむ
)
いて
居
(
ゐ
)
る。
271
オークス『
苟
(
いやし
)
くも
館
(
やかた
)
の
主人
(
あるじ
)
の
奥様
(
おくさま
)
とも
在
(
あ
)
らう
方
(
かた
)
が、
272
冗談
(
てんご
)
を
仰有
(
おつしや
)
らう
筈
(
はず
)
はありますまい。
273
奥様
(
おくさま
)
のお
言葉
(
ことば
)
は
金鉄
(
きんてつ
)
よりも
重
(
おも
)
いものと
信
(
しん
)
じて
居
(
を
)
ります。
274
何
(
なん
)
と
仰有
(
おつしや
)
つてもオークスは
当家
(
たうけ
)
の
家令
(
かれい
)
で
厶
(
ござ
)
います。
275
万事
(
ばんじ
)
万端
(
ばんたん
)
館
(
やかた
)
の
事務
(
じむ
)
を
取調
(
とりしら
)
べ、
276
ハルナの
都
(
みやこ
)
に
報告
(
はうこく
)
を
致
(
いた
)
さねばなりませぬ。
277
何処
(
どこ
)
迄
(
まで
)
も
此
(
この
)
オークスを
排斥
(
はいせき
)
なさるならば、
278
三五教
(
あななひけう
)
の
魔法使
(
まはふつかひ
)
をお
館
(
やかた
)
へお
入
(
い
)
れなさつた
事
(
こと
)
を
大黒主
(
おほくろぬし
)
様
(
さま
)
に
注進
(
ちゆうしん
)
致
(
いた
)
しませうか、
279
それでも
苦
(
くる
)
しうは
厶
(
ござ
)
いませぬか』
280
と
命
(
めい
)
旦夕
(
たんせき
)
に
迫
(
せま
)
つて
居
(
ゐ
)
るのにつけ
込
(
こ
)
んで
無理
(
むり
)
やりに
頑張
(
ぐわんば
)
つて
居
(
を
)
る
極悪
(
ごくあく
)
無道
(
ぶだう
)
の
曲者
(
くせもの
)
である。
281
小国別
(
をくにわけ
)
『これ
奥
(
おく
)
、
282
私
(
わし
)
はお
前
(
まへ
)
の
見
(
み
)
る
通
(
とほ
)
り、
283
今度
(
こんど
)
はどうも
本復
(
ほんぷく
)
せないやうだ。
284
何
(
ど
)
うか
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
三千彦
(
みちひこ
)
さまを
尋
(
たづ
)
ね
出
(
だ
)
し、
285
此
(
この
)
館
(
やかた
)
のお
力
(
ちから
)
となつて
頂
(
いただ
)
け。
286
あの
御
(
ご
)
神力
(
しんりき
)
をもつて
守
(
まも
)
つて
頂
(
いただ
)
けば、
287
如何
(
いか
)
に
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
神
(
かみ
)
、
288
数万
(
すうまん
)
の
軍勢
(
ぐんぜい
)
をもつて
攻
(
せ
)
め
寄
(
よ
)
せ
来
(
きた
)
るとも
恐
(
おそ
)
るる
事
(
こと
)
は
要
(
い
)
らぬ、
289
かやうな
悪人
(
あくにん
)
を
決
(
けつ
)
して
吾
(
わが
)
死後
(
しご
)
用
(
もち
)
ひてはならぬ。
290
今日
(
けふ
)
から
門番
(
もんばん
)
を
免職
(
めんしよく
)
して
呉
(
く
)
れ。
291
エエ
穢
(
けが
)
らはしい』
292
と
衰弱
(
すゐじやく
)
の
身心
(
しんしん
)
に
怒気
(
どき
)
を
含
(
ふく
)
み、
293
呶鳴
(
どな
)
り
立
(
た
)
てた。
294
それつきり
又
(
また
)
もやグタリと
弱
(
よわ
)
り、
295
忽
(
たちま
)
ち
昏睡
(
こんすゐ
)
状態
(
じやうたい
)
に
陥
(
おちい
)
つた。
296
小国姫
(
をくにひめ
)
は、
297
身
(
み
)
も
世
(
よ
)
もあらぬ
悲
(
かな
)
しみに
浸
(
ひた
)
されながら、
298
故意
(
わざ
)
とに
涙
(
なみだ
)
を
隠
(
かく
)
し
容
(
かたち
)
を
改
(
あらた
)
め、
299
両人
(
りやうにん
)
に
向
(
むか
)
ひ、
300
『オークス、
301
ビルマの
両人
(
りやうにん
)
、
302
其
(
その
)
方
(
はう
)
は
御
(
ご
)
主人
(
しゆじん
)
様
(
さま
)
の
命令
(
めいれい
)
だから、
303
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
乍
(
なが
)
ら
只今
(
ただいま
)
限
(
かぎ
)
り
此
(
この
)
館
(
やかた
)
を
帰
(
かへ
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
304
仮令
(
たとへ
)
どうならうとも
其
(
その
)
方
(
はう
)
のやうな
傲慢
(
がうまん
)
無礼
(
ぶれい
)
な
僕
(
しもべ
)
に
厄介
(
やくかい
)
にならうとは
思
(
おも
)
はないから、
305
……モシ
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
何卒
(
どうぞ
)
御
(
ご
)
安心
(
あんしん
)
下
(
くだ
)
さいませ』
306
と
耳
(
みみ
)
に
口
(
くち
)
を
寄
(
よ
)
せて
声
(
こゑ
)
を
限
(
かぎ
)
りに
涙交
(
なみだまじ
)
りに
述
(
の
)
べ
立
(
た
)
てた。
307
小国別
(
をくにわけ
)
は
幽
(
かす
)
かにこの
声
(
こゑ
)
が
耳
(
みみ
)
に
入
(
はい
)
つたと
見
(
み
)
え、
308
力無
(
ちからな
)
げにニタリと
笑
(
わら
)
ふ。
309
オークスは
横柄面
(
わうへいづら
)
を
曝
(
さら
)
し
乍
(
なが
)
ら
威猛高
(
ゐたけだか
)
になり、
310
『モシ
奥様
(
おくさま
)
、
311
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
は
大病
(
たいびやう
)
に
悩
(
なや
)
み
耄
(
ほう
)
けて
居
(
ゐ
)
らつしやいます。
312
決
(
けつ
)
して
仰有
(
おつしや
)
る
事
(
こと
)
は
真
(
まこと
)
ぢやありませぬ。
313
熱
(
ねつ
)
に
浮
(
うか
)
されたお
言葉
(
ことば
)
、
314
左様
(
さやう
)
な
事
(
こと
)
を
本当
(
ほんたう
)
になさるやうでは
此
(
この
)
お
館
(
やかた
)
は
大騒動
(
おほさうどう
)
が
起
(
おこ
)
りますよ。
315
今日
(
こんにち
)
此
(
この
)
お
館
(
やかた
)
を
双肩
(
さうけん
)
に
担
(
にな
)
うて
立
(
た
)
つものは、
316
ワックスや
吾々
(
われわれ
)
二人
(
ふたり
)
の
外
(
ほか
)
に
誰
(
たれ
)
がありませうか。
317
克
(
よ
)
くお
考
(
かんが
)
へなされませ。
318
門番
(
もんばん
)
は
家令
(
かれい
)
になれないと
仰有
(
おつしや
)
いましたが、
319
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ふ
階級
(
かいきふ
)
的
(
てき
)
の
考
(
かんが
)
へに
捉
(
とら
)
はれて
居
(
ゐ
)
らつしやるのですか。
320
昔
(
むかし
)
常世城
(
とこよじやう
)
の
門番
(
もんばん
)
は、
321
直
(
ただち
)
に
抜擢
(
ばつてき
)
されて
右守
(
うもり
)
の
司
(
かみ
)
になつたぢやありませぬか。
322
それも
失敗
(
しつぱい
)
の
結果
(
けつくわ
)
でせう。
323
吾々
(
われわれ
)
はお
館
(
やかた
)
の
危急
(
ききふ
)
を
救
(
すく
)
つた
殊勲者
(
しゆくんしや
)
です。
324
若
(
も
)
しお
気
(
き
)
に
入
(
い
)
らねば
仕方
(
しかた
)
はありませぬ、
325
吾々
(
われわれ
)
は
吾々
(
われわれ
)
としての
一
(
ひと
)
つの
考
(
かんが
)
へが
厶
(
ござ
)
います、
326
後
(
あと
)
で
後悔
(
こうくわい
)
なさいますなよ。
327
町民
(
ちやうみん
)
一般
(
いつぱん
)
が
大切
(
たいせつ
)
な
宝
(
たから
)
を
盗
(
ぬす
)
まれたのも、
328
みんな
三千彦
(
みちひこ
)
の
魔法使
(
まはふつかひ
)
によつて
大勢
(
おほぜい
)
の
者
(
もの
)
が
難儀
(
なんぎ
)
をして
居
(
を
)
るので
厶
(
ござ
)
います。
329
云
(
い
)
はば
三千彦
(
みちひこ
)
は
町民
(
ちやうみん
)
の
敵
(
てき
)
で
厶
(
ござ
)
います。
330
其
(
その
)
敵
(
てき
)
を
何時
(
いつ
)
迄
(
まで
)
もお
構
(
かま
)
ひなさるのならば、
331
矢張
(
やはり
)
貴方
(
あなた
)
方
(
がた
)
御
(
ご
)
夫婦
(
ふうふ
)
は
国敵
(
こくてき
)
と
認
(
みと
)
めます。
332
大黒主
(
おほくろぬし
)
のお
開
(
ひら
)
きなされた
此
(
この
)
霊場
(
れいぢやう
)
を、
333
みすみす
三五教
(
あななひけう
)
の
奴
(
やつ
)
に
蹂躙
(
じうりん
)
せられるとは、
334
町民
(
ちやうみん
)
一般
(
いつぱん
)
の
忍
(
しの
)
び
難
(
がた
)
い
所
(
ところ
)
でせう。
335
私
(
わたし
)
を
家令
(
かれい
)
にお
使
(
つか
)
ひなさらぬなら、
336
たつては
頼
(
たの
)
みませぬ。
337
此
(
この
)
始末
(
しまつ
)
を
町民
(
ちやうみん
)
に
報告
(
はうこく
)
致
(
いた
)
します。
338
さうすれば
町民
(
ちやうみん
)
は、
339
貴方
(
あなた
)
方
(
がた
)
をバラモン
教
(
けう
)
の
仇
(
あだ
)
、
340
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
敵
(
てき
)
として
押
(
お
)
し
寄
(
よ
)
せて
参
(
まゐ
)
ります。
341
お
覚悟
(
かくご
)
なさいませ』
342
と
云
(
い
)
ひ
放
(
はな
)
ち、
343
勢
(
いきほひ
)
鋭
(
するど
)
く
表
(
おもて
)
へ
駆
(
か
)
け
出
(
だ
)
す。
344
睾丸
(
きんたま
)
を
牛
(
うし
)
に
踏
(
ふ
)
み
潰
(
つぶ
)
され、
345
綿屋
(
わたや
)
の
離室
(
はなれ
)
に
養生
(
やうじやう
)
して
居
(
ゐ
)
たエルは
漸
(
やうや
)
う
二三
(
にさん
)
人
(
にん
)
の
子供
(
こども
)
に
送
(
おく
)
られて
玄関
(
げんくわん
)
に
帰
(
かへ
)
つて
来
(
き
)
た。
346
オークス、
347
ビルマの
二人
(
ふたり
)
は
玄関
(
げんくわん
)
にてふと
出会
(
であ
)
うた。
348
エルは
二人
(
ふたり
)
の
相好
(
さうがう
)
の
唯事
(
ただごと
)
ならぬに
不審
(
ふしん
)
を
起
(
おこ
)
し、
349
エル『オイ、
350
両人
(
りやうにん
)
、
351
血相
(
けつさう
)
変
(
か
)
へて
何処
(
どこ
)
へ
行
(
ゆ
)
くのだ。
352
是
(
これ
)
には
何
(
なに
)
か
様子
(
やうす
)
があるであらう、
353
まづ
俺
(
おれ
)
に
聞
(
き
)
かして
呉
(
く
)
れ。
354
何
(
なん
)
とか
仲裁
(
ちうさい
)
してやるから』
355
オークス、
356
ビルマの
両人
(
りやうにん
)
は
脅迫
(
けふはく
)
的
(
てき
)
に
此処
(
ここ
)
迄
(
まで
)
来
(
き
)
たのだが、
357
うつかり
町民
(
ちやうみん
)
に
妙
(
めう
)
な
事
(
こと
)
を
喋
(
しやべ
)
つて、
358
後
(
あと
)
の
取纒
(
とりまと
)
めに
困
(
こま
)
つてはならぬと
思
(
おも
)
つて
居
(
ゐ
)
た
矢先
(
やさき
)
、
359
エルに
止
(
と
)
められたので、
360
これ
幸
(
さいはひ
)
と
二人
(
ふたり
)
は
受付
(
うけつけ
)
にドツカと
坐
(
ざ
)
し、
361
密々話
(
ひそびそばなし
)
に
耽
(
ふけ
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
362
(
大正一二・三・二四
旧二・八
於皆生温泉浜屋
加藤明子
録)
Δこのページの一番上に戻るΔ
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