霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第四章 妖子(えうし)〔一四五四〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第57巻 真善美愛 申の巻 篇:第1篇 照門山颪 よみ(新仮名遣い):てるもんざんおろし
章:第4章 妖子 よみ(新仮名遣い):ようし 通し章番号:1454
口述日:1923(大正12)年03月24日(旧02月8日) 口述場所:皆生温泉 浜屋 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年5月24日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
家令のオールスチンは群衆に踏み倒されて館にかつぎこまれ、日夜苦悶を続けていた。小国別は仮死状態に陥り、デビスとケリナの二人の娘は帰ってこず、三千彦の行方もわからなくなり、小国姫は悲痛の淵に沈んでいた。
館の中にはオークス、ビルマの二人が切り盛りをしていた。小国姫は二人を招いて相談をした。オークスとビルマは、三千彦をけなし、しきりにワックスを跡取りとするよう小国姫に勧めた。そして自分たちを家令とするよう小国姫に承諾させてしまった。
そこへ小国別の容態が変わったと知らせが来たため、小国姫、オークス、ビルマの三人は急ぎ病床へ向かった。小国別はむっくと起き上がり、三千彦とオールスチンに会いたいと告げた。
オークスは、三千彦は町民の怒りの的となり、オールスチンは踏み倒されて、両人とも頼りにできないため、自分たちが家令に任命されたと小国別に報告した。小国別は、家令職はオールスチンの認可を得た上で、ハルナの都の大黒主の許可を得なければ任命することはできないと叱りつけた。
オークスは、三五教の三千彦を館に引き入れた罪を大黒主に注進すると小国別夫婦を脅しつける。小国別は、このような悪人を決して使ってはならぬと怒気を含んで怒鳴りたてると、昏睡状態に陥った。
小国姫は、小国別の命令だからこれきり館への出入りを禁じるとオークスとビルマに申し渡した。オークスは、小国別夫婦を国敵として訴えると脅し文句を居丈高に述べ立てると、ビルマと共に表に駆けだした。
牛にぶつかって養生していたエルは、ようやく館に戻ってきた。玄関にてふと走り出てくるオークスとビルマに出会った。エルは二人の相好がただ事ならないのに不審を起こして声をかけた。
オークスとビルマは、小国別夫婦に脅迫的に迫ってここまで来たが、うっかり町民に妙なことをしゃべって後の取りまとめに困ってはならないと思っていたので、これ幸いとエルの呼びかけに応じて受付に座り、ひそびそ話にふけった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm5704
愛善世界社版:45頁 八幡書店版:第10輯 274頁 修補版: 校定版:47頁 普及版:19頁 初版: ページ備考:
001 (やかた)家令(かれい)オールスチンは、002老齢(らうれい)衰弱(すゐじやく)()大勢(おほぜい)荒男(あらをとこ)(ところ)(かま)はず()(たふ)され、003ワックスの介抱(かいはう)()りて(ふたた)(いき)()(かへ)したものの、004(くる)しみに()えず、005(わが)(やかた)()つぎ()まれ、006発熱(はつねつ)(はなは)だしく、007日夜(にちや)苦悶(くもん)(つづ)けて()た。
008 一方(いつぱう)(やかた)(おい)ては小国別(をくにのわけ)仮死(かし)状態(じやうたい)(おちい)り、009囈言(うはごと)(ばか)()うて()る。010さうしてデビス、011ケリナの両女(りやうぢよ)行衛(ゆくゑ)容易(ようい)(わか)らず、012(また)(ちから)(たの)三千彦(みちひこ)行衛(ゆくゑ)(わか)らなくなり、013小国姫(をくにひめ)悲痛(ひつう)(ふち)(しづ)み、014()をワナワナと(ふる)はせ(なが)ら、015()果敢(はか)なみ、016(いき)たる心地(ここち)はせなかつた。017されど如何(いか)にもして(いち)()なりとも(をつと)(やまひ)長引(ながびか)二人(ふたり)(むすめ)()はせたきものと、018(それ)のみ(ちから)()(おく)つて()た。019(やかた)(なか)はオークス、020ビルマの両人(りやうにん)万事(ばんじ)()(まは)して()る。021受付(うけつけ)のエルは(うし)睾丸(きんたま)(つぶ)されたきり、022綿屋(わたや)(おく)()高枕(たかまくら)をして(くる)しんで()る。023小国姫(をくにひめ)はオークス、024ビルマを居間(ゐま)(まね)き、025種々(いろいろ)相談(さうだん)をかけた。026二人(ふたり)時節(じせつ)到来(たうらい)027ワックスの思惑(おもわく)成就(じやうじゆ)させ、028(うま)(しる)()はむものと(むね)(をど)らせながら、029素知(そし)らぬ(かほ)して心配気(しんぱいげ)俯向(うつむ)いて()る。
030小国姫(をくにひめ)『オークス、031(まへ)()()つて相談(さうだん)したい(こと)がある。032旦那(だんな)(さま)はあの(とほ)何時(いつ)帰幽(くにがへ)なさるか()れぬ()容態(ようだい)033(また)家令(かれい)のオールスチンは重病(ぢゆうびやう)(くる)しんで()るなり、034ワックスは旦那(だんな)(さま)や、035オールスチンの病気(びやうき)平癒(へいゆ)のために荒行(あらぎやう)()くと()つて()たきり(かほ)()せないし、036二人(ふたり)(むすめ)()(かへ)つて()ず、037(もし)もの(こと)があつたら、038如何(どう)したら()からうか、039(まへ)(ひと)(かんが)へて(もら)()いものだがなア』
040オークス『(まこと)にお()(どく)(こと)出来(しゆつたい)したもので(ござ)いますワイ。041(やかた)(ばかり)難儀(なんぎ)ではなく宮町(みやまち)一統(いつとう)難儀(なんぎ)(ござ)います。042貴女(あなた)はバラモン(けう)(やかた)守護(しゆご)する(やく)であり(なが)ら、043素性(すじやう)(わか)らぬ三五教(あななひけう)魔法使(まはふつかひ)町民(ちやうみん)内証(ないしよう)()()れなさつたものですから、044(この)(やう)(むご)()()はされたのです。045これからは(ちつ)吾々(われわれ)()(こと)()いて(もら)はなくてはなりませぬ。046町中(まちぢう)(うはさ)によれば、047あの三千彦(みちひこ)()(やつ)は、048三五教(あななひけう)きつての魔法使(まはふつかひ)で、049(やかた)(もつと)大切(たいせつ)如意(によい)宝珠(ほつしゆ)(たま)忍術(にんじゆつ)をもつて(うば)()り、050(やかた)()るにあられぬ心配(しんぱい)をかけて()き、051進退(しんたい)維谷(これきは)まる場合(ばあひ)(かんが)()まし、052バラモン(けう)宣伝使(せんでんし)()けて這入(はい)つて()よつたので(ござ)います。053(それ)(ゆゑ)(いま)(まで)(いへ)(ござ)つたデビス(ひめ)(さま)(まで)行方(ゆくへ)(わか)らぬ(やう)になり、054(この)町中(まちぢう)大切(たいせつ)()神具(しんぐ)(のこ)らず(ぬす)まれ、055大変(たいへん)大騒動(おほさうどう)(ござ)います。056こんな(こと)町民(ちやうみん)(わか)らうものなら、057(それ)こそ貴女(あなた)(おん)()大事(だいじ)058(おほ)きな(かほ)して(この)(やかた)には()られますまい。059そつと早馬(はやうま)でハルナの(みやこ)報告(はうこく)でもしようものなら、060旦那(だんな)(さま)病気(びやうき)()くなられたとした(ところ)で、061(まへ)さまは逆磔刑(さかはりつけ)にあはされるでせう。062大変(たいへん)(こと)をして(くだ)さつた。063(わたし)貴女(あなた)境遇(きやうぐう)()同情(どうじやう)をすると(とも)に、064貴女(あなた)()処置(しよち)(うら)んで()ます。065もし()んな(こと)大黒主(おほくろぬし)(さま)のお(みみ)(はい)らうものなら、066吾々(われわれ)もどんな刑罰(けいばつ)()はされるかも()れませぬ。067今後(こんご)はちつとオークスの()(こと)()いて(もら)()いものです』
068小国姫(をくにひめ)『あの三千彦(みちひこ)さまに(かぎ)つてそんな悪党(あくたう)(かた)では()りませぬぞや、069(それ)(なに)かの間違(まちが)ひでせう。070金剛(こんがう)不壊(ふえ)如意(によい)宝珠(ほつしゆ)(かく)したのは(けつ)して三千彦(みちひこ)さまぢやない、071家令(かれい)(せがれ)のワックスに間違(まちが)ひないのだ。072あれが(わが)(むすめ)デビス(ひめ)無理(むり)往生(わうじやう)(めと)らむとして種々(しゆじゆ)とエキス、073ヘルマンなどを使(つか)(たく)んだと()(こと)明瞭(はつき)(わか)つて()るのだよ。074勿体(もつたい)ない、075(まこと)宣伝使(せんでんし)にそんな(つみ)()せるものぢやありませぬ』
076オークス『奥様(おくさま)077(それ)第一(だいいち)貴女(あなた)のお(かんが)(ちが)ひです。078ワックスさまは(なに)()うても家令(かれい)(せがれ)079このお(やかた)()()かねば自分(じぶん)(いへ)()()かないのですから、080よう(かんが)へて御覧(ごらん)なさい、081そんな不利益(ふりえき)(こと)をなさいますか。082そこが三五教(あななひけう)魔法使(まはふつかひ)(うま)(ところ)で……ワックスさまは(ひと)がよいから、083()りつけられたのですよ。084(おく)(おく)(かんが)へて(もら)はねば(まこと)にワックスさまに()(どく)(ござ)いますワ。085よく(かんが)へて御覧(ごらん)なさいませ。086三千彦(みちひこ)()魔法使(まはふつかひ)は、087町民(ちやうみん)(とき)(こゑ)(おどろ)かされて(くも)(かすみ)()()せ、088旦那(だんな)(さま)はどう贔屓目(ひいきめ)()ても()養生(やうじやう)(かな)ひますまい。089そして家令(かれい)のオールスチンさまも()本復(ほんぷく)(むつかし)いこの場合(ばあひ)090(この)(やかた)のお(ちから)になる(もの)(たれ)だと思召(おぼしめ)す。091ワックスさまより(ほか)()いぢやありませぬか。092貴女(あなた)はワックスさまをお(うたが)ひなさると、093これ(ほど)人気(にんき)()るワックスさまの(ため)町民(ちやうみん)承知(しようち)(いた)しませぬぞや。094よく(むね)()()ててお(かんが)へにならないと、095(やかた)一大事(いちだいじ)(ござ)います』
096小国姫(をくにひめ)『ハテ合点(がつてん)のゆかぬ(こと)だなア、097ビルマ其方(そなた)(なん)(おも)ふか』
098ビルマ『ハイ(わたし)町内(ちやうない)(うはさ)調(しら)べて()ましたが、099ワックスさまは本当(ほんたう)(えら)(ひと)ですよ。100三五教(あななひけう)魔法使(まはふつかひ)(かく)して()いた如意(によい)宝珠(ほつしゆ)をも、101(うま)自分(じぶん)(つみ)()ふと()うて()()させなさつたので(ござ)います。102真実(ほんとう)忠臣(ちうしん)義士(ぎし)()ふのは、103あのワックスさまで(ござ)います。104あの(たから)()かつたらお(やかた)勿論(もちろん)105宮町(みやまち)一同(いちどう)大黒主(おほくろぬし)(さま)から所刑(おしおき)()はねばならぬ(ところ)(たす)けて(くだ)さつたのだから、106テルモン(こく)救世主(きうせいしゆ)だと()つて()ます。107どうしてもデビス(ひめ)(さま)()養子(やうし)になさつて(この)(くに)(をさ)めねば町民(ちやうみん)承知(しようち)しませぬ。108(わたし)(べつ)にワックスさまがお世継(よつぎ)にならうとなるまいと利害(りがい)関係(くわんけい)はないのですから、109ワックスさまの(ため)弁護(べんご)(いた)しませぬ。110中立(ちうりつ)地帯(ちたい)()()いて、111自分(じぶん)所信(しよしん)(つつ)まず(かく)さず申上(まをしあ)げます』
112小国姫(をくにひめ)町民(ちやうみん)(まで)がさう(しん)じて()以上(いじやう)は、113どうも仕方(しかた)がない。114()(かく)今日(こんにち)場合(ばあひ)115養子(やうし)にするせぬは(あと)(こと)として、116一度(いちど)ワックスさまに()(もら)()いものだなア』
117オークス『それは結構(けつこう)(ござ)いますが、118ワックスさまは(かみ)(さま)()め、119(やかた)(ため)120町民(ちやうみん)()め、121(いのち)がけの(げふ)をすると()うて()かけられましたから、122行衛(ゆくゑ)(わか)らず、123何時(いつ)(かへ)らるるとも見当(けんたう)()きませぬ。124(つい)ては家事(かじ)万端(ばんたん)処理(しより)する役員(やくゐん)()ければ不都合(ふつがふ)(ござ)いませう。125家令(かれい)はあの(とほ)胸板(むないた)()まれ、126恢復(くわいふく)見込(みこ)みは()ちませぬ、127二人(ふたり)(ひめ)(さま)行方(ゆくへ)(わか)らず、128旦那(だんな)(さま)()重病(ぢゆうびやう)129(たれ)家令(かれい)(あらた)にお(めい)じなさらなくては、130(いち)(にち)(やかた)事務(じむ)()れますまい。131(わたし)門番(もんばん)(くらゐ)(つと)めて()つては大奥(おほおく)御用(ごよう)出来(でき)ませぬしなア』
132小国姫(をくにひめ)『アアそんなら、133順々(じゆんじゆん)抜擢(ばつてき)してお世話(せわ)にならう。134受付(うけつけ)のエルを臨時(りんじ)家令(かれい)となし、135(まへ)受付(うけつけ)になつて(もら)はう、136さうすれば万事(ばんじ)万端(ばんたん)都合(つがふ)よく(はこ)ぶであらう』
137オークス『成程(なるほど)それは順当(じゆんたう)至極(しごく)結構(けつこう)でせう。138(しか)(なが)ら、139エルさまの慌者(あわてもの)140旦那(だんな)(さま)が、141まだ(いのち)のある(うち)から()帰幽(きいう)になつたと()うて町中(まちぢう)()(ある)き、142大勢(おほぜい)(さわ)がし、143(まけ)(うし)(しり)()(あた)睾丸(きんたま)()(つぶ)され、144綿屋(わたや)離室(はなれ)()らむ(かぎ)りの(くる)しみをして()ります。145さうして道端(みちばた)(つな)いであるあれ(ほど)(おほ)きな(うし)()()かないやうな(こと)では門番(もんばん)出来(でき)ないと()うて、146町中(まちぢう)(わら)はれ(もの)になつて()りますよ。147あんな慌者(あわてもの)家令(かれい)にでもならうものなら、148(やかた)威勢(ゐせい)(まを)すに(およ)ばず、149(かみ)(さま)()威勢(ゐせい)(まで)()ちると()つて、150町中(まちぢう)大反対(だいはんたい)(ござ)います。151(それ)はおよしになつた(はう)がお(ため)(ござ)いませう』
152小国姫(をくにひめ)『ハテ(こま)つた(こと)だなア。153そんならワックスが(かへ)つて()たら、154(しば)親父(おやぢ)代理(だいり)(つと)めさす(こと)(いた)しませう。155(それ)(まで)(まへ)臨時(りんじ)家令(かれい)(やく)をやつて(もら)()い』
156オークス『(わたし)のやうな不都合(ふつがふ)(もの)は、157到底(たうてい)臨時(りんじ)家令(かれい)のやうな(こと)出来(でき)ませぬ。158(ひら)にお(ことわ)(まを)します、159(かへつ)てお(やかた)不都合(ふつがふ)(こと)仕出(しで)かすといけませぬから。160(すべ)臨時(りんじ)()ふものは水臭(みづくさ)文字(もじ)で、161本気(ほんき)にお(やかた)(ため)(つく)すと()()()()ませぬワ』
162ビルマ『一層(いつそう)(こと)163ドツと()()んで、164オークスさまを家令(かれい)任命(にんめい)なさつたらどうでせう、165屹度(きつと)それ(だけ)腕前(うでまへ)(ござ)いますよ。166貴女(あなた)(おく)にばかり(ござ)るから(そと)事情(じじやう)(わか)りますまいが、167(わたし)証明(しようめい)(いた)します。168町民(ちやうみん)一同(いちどう)希望(きばう)はワックス(さま)()養子(やうし)となし、169オークスさまを家令(かれい)(あそ)ばし、170さうして○○を家扶(かふ)にお(めい)じになれば、171嬢様(ぢやうさま)(かへ)られ、172妹御(いもうとご)のケリナさまも無事(ぶじ)(かへ)られると()(うはさ)(ござ)います。173世間(せけん)(うはさ)()ふものは(あんま)馬鹿(ばか)にはならぬもので(ござ)いますよ。174(かみ)(さま)()め、175(やかた)()め、176それが最善(さいぜん)方法(はうはふ)(わたし)(かんが)へます』
177小国姫(をくにひめ)『○○を家扶(かふ)にせいとは(たれ)(こと)だい、178もつと明瞭(はつき)りと()うて(もら)はなくては(わか)らぬぢやないか』
179ビルマ『ヘイ、180到底(たうてい)(まを)()げた(ところ)門番(もんばん)(ぐらゐ)家扶(かふ)には()れますまい。181()はぬが(はな)(ござ)いませう』
182小国姫(をくにひめ)『ホホホホホ、183ビルマ、184自分(じぶん)推薦(すゐせん)して()るのだらう。185(まへ)抜目(ぬけめ)()(をとこ)だなア』
186ビルマ『(この)(ごろ)()(なか)盲人(めくら)(ばか)りで(ござ)いますから、187自分(じぶん)から自分(じぶん)技能(ぎのう)発表(はつぺう)しなくては、188何時(いつ)になつても金槌(かなづち)(かは)(なが)れ、189栄達(えいだつ)(みち)はつきませぬ。190正真(しやうしん)正銘(しやうめい)のネットプライスの技量(ぎりやう)()()して、191それをお(みと)めになる()器量(きりやう)があればよし、192()ければ時節(じせつ)(いた)らぬと覚悟(かくご)するより(ほか)(ござ)いませぬ。193(わたし)()採用(さいよう)なければオークスだつて(けつ)して家令(かれい)(しよく)()きませぬ。194(この)(をとこ)今度(こんど)事件(じけん)については、195チと弱点(じやくてん)……いや弱点(じやくてん)()いのです。196貴女(あなた)がそつと魔法使(まはふつかひ)()()れなさつたのが弱点(じやくてん)ですから、197吾々(われわれ)二人(ふたり)()()運動(うんどう)をやつたので、198町内(ちやうない)(さわ)ぎがやつと(をさ)まつたので(ござ)いますからなア』
199小国姫(をくにひめ)『そんなら仕方(しかた)がありませぬ。200(まへ)臨時(りんじ)家扶(かふ)(めい)じませう』
201ビルマ『モシ奥様(おくさま)202臨時(りんじ)家扶(かふ)()ふのは釜焚(かまた)きとは(ちが)ひますよ。203家令(かれい)(つぎ)(しよく)204重職(ぢうしよく)(ござ)いますよ。205(ねん)()一寸(ちよつと)申上(まをしあ)げて()きます』
206小国姫(をくにひめ)門番(もんばん)家扶(かふ)出世(しゆつせ)したら結構(けつこう)ぢやないか。207(この)(やかた)大黒主(おほくろぬし)(さま)命令(めいれい)家令(かれい)一人(ひとり)(きま)つて()るが、208家扶(かふ)()(こと)出来(でき)ないのだから、209()(どく)(なが)らお(まへ)門番頭(もんばんがしら)辛抱(しんばう)して(くだ)さい』
210 かかる(ところ)一人(ひとり)看護婦(かんごふ)(あわただ)しく()(きた)り、
211奥様(おくさま)(はや)()(くだ)さいませ、212旦那(だんな)(さま)()臨終(りんじう)()えまして、213大変(たいへん)()様子(やうす)(かは)つて(まゐ)りました』
214心配(しんぱい)さうに()ふ。215小国姫(をくにひめ)(むね)()でながら(あわただ)しく主人(しゆじん)病室(びやうしつ)()けり()く。216オークスはビルマと(とも)小国姫(をくにひめ)(あと)(したが)病室(びやうしつ)()る。217小国別(をくにわけ)(にはか)にムクムクと()(あが)り、218(やせ)こけた(かほ)(くぼ)んだ()(ひか)らせ(なが)ら、
219小国別(をくにわけ)女房(にようばう)(まへ)何処(どこ)()つて()た。220最前(さいぜん)から大変(たいへん)()()ねて()たぞよ、221さうして二人(ふたり)(むすめ)はまだ(かへ)つて()ぬかノウ』
222小国姫(をくにひめ)『ハイもう(やが)(かへ)るで(ござ)いませう。223まだ(なん)とも便(たよ)りが(ござ)いませぬ』
224小国別(をくにわけ)『ハテ(こま)つた(こと)だなア、225(この)()ではもう(むすめ)()(こと)出来(でき)んのかなア。226エエ残念(ざんねん)ぢや』
227小国姫(をくにひめ)旦那(だんな)(さま)228何卒(どうぞ)()(おと)さないやうにして(くだ)さい、229屹度(きつと)(かみ)(さま)のお(かげ)()はして(くだ)さるでせう』
230小国別(をくにわけ)三千彦(みちひこ)宣伝使(せんでんし)(さま)家令(かれい)何処(どこ)()つたかなア、231(はや)()ひたいものだ』
232小国姫(をくにひめ)三千彦(みちひこ)(さま)(にはか)にお行衛(ゆくゑ)(わか)らぬやうになりました。233屹度(きつと)(むすめ)二人(ふたり)(むか)ひに()つて(くだ)さつたのでせう』
234小国別(をくにわけ)『ウン()れは()苦労(くらう)だなア。235屹度(きつと)()はして(くだ)さるだらう。236家令(かれい)のオールスチンはまだ()ぬか、237(なに)をして()るのだらう』
238小国姫(をくにひめ)『ハイ、239一寸(ちよつと)(よう)(ござ)いますので、240つひ(おく)れて()ます、241やがて(まゐ)るで(ござ)いませう』
242オークス『モシ旦那(だんな)(さま)243家令(かれい)のオールスチンは町民(ちやうみん)胸板(むないた)()()られ、244九死(きうし)一生(いつしやう)(くる)しみを()自館(やかた)(かへ)つて()られます。245そして町中(まちぢう)三五教(あななひけう)魔法使(まはふつかひ)をお(やかた)へお()れなさつたと()うて、246(かなへ)()くやうな(さわ)ぎで(ござ)います。247そこを(わたし)(たち)二人(ふたり)鎮定(ちんてい)(いた)し、248(いま)奥様(おくさま)()相談(さうだん)(うへ)249(わたし)がたつた(いま)家令(かれい)となりましたから、250何分(なにぶん)宜敷(よろし)くお(ねが)(まを)します。251今後(こんご)粉骨(ふんこつ)砕身(さいしん)252十二分(じふにぶん)成績(せいせき)()げてお()にかけますから()安心(あんしん)(くだ)さいませ』
253小国別(をくにわけ)『お(まへ)門番(もんばん)のオークスぢやないか。254何程(なにほど)人望(じんばう)があると()つても、255さう一足飛(いつそくと)びに門番(もんばん)家令(かれい)になると()(わけ)にはゆくまい。256(おく)257(まへ)はそんな(こと)(ゆる)したのか』
258小国姫(をくにひめ)『ハイ、259……イイエ』
260とモジモジして()る。
261小国別(をくにわけ)家令(かれい)任命(にんめい)するには()うしてもオールスチンの承諾(しようだく)()262(かれ)辞表(じへう)()した(うへ)でハルナの(みやこ)(うかが)ひを()て、263(その)(うへ)でなくてはならぬ。264さう勝手(かつて)()める(わけ)にはいけぬ。265この(やかた)特別(とくべつ)だから何事(なにごと)大黒主(おほくろぬし)(さま)(うかが)はねばならぬ。266よもや真実(ほんとう)ではあるまい。267(おく)268(まへ)当座(たうざ)冗談(てんご)()ふたのであらう』
269 小国姫(をくにひめ)はモジモジしながら(かす)かな(こゑ)で『ハイ』と一言(ひとこと)270俯向(うつむ)いて()る。
271オークス『(いやし)くも(やかた)主人(あるじ)奥様(おくさま)とも()らう(かた)が、272冗談(てんご)仰有(おつしや)らう(はず)はありますまい。273奥様(おくさま)のお言葉(ことば)金鉄(きんてつ)よりも(おも)いものと(しん)じて()ります。274(なん)仰有(おつしや)つてもオークスは当家(たうけ)家令(かれい)(ござ)います。275万事(ばんじ)万端(ばんたん)(やかた)事務(じむ)取調(とりしら)べ、276ハルナの(みやこ)報告(はうこく)(いた)さねばなりませぬ。277何処(どこ)(まで)(この)オークスを排斥(はいせき)なさるならば、278三五教(あななひけう)魔法使(まはふつかひ)をお(やかた)へお()れなさつた(こと)大黒主(おほくろぬし)(さま)注進(ちゆうしん)(いた)しませうか、279それでも(くる)しうは(ござ)いませぬか』
280(めい)旦夕(たんせき)(せま)つて()るのにつけ()んで無理(むり)やりに頑張(ぐわんば)つて()極悪(ごくあく)無道(ぶだう)曲者(くせもの)である。
281小国別(をくにわけ)『これ(おく)282(わし)はお(まへ)()(とほ)り、283今度(こんど)はどうも本復(ほんぷく)せないやうだ。284()うか(いち)()(はや)三千彦(みちひこ)さまを(たづ)()し、285(この)(やかた)のお(ちから)となつて(いただ)け。286あの()神力(しんりき)をもつて(まも)つて(いただ)けば、287如何(いか)大黒主(おほくろぬし)(かみ)288数万(すうまん)軍勢(ぐんぜい)をもつて()()(きた)るとも(おそ)るる(こと)()らぬ、289かやうな悪人(あくにん)(けつ)して(わが)死後(しご)(もち)ひてはならぬ。290今日(けふ)から門番(もんばん)免職(めんしよく)して()れ。291エエ(けが)らはしい』
292衰弱(すゐじやく)身心(しんしん)怒気(どき)(ふく)み、293呶鳴(どな)()てた。294それつきり(また)もやグタリと(よわ)り、295(たちま)昏睡(こんすゐ)状態(じやうたい)(おちい)つた。
296 小国姫(をくにひめ)は、297()()もあらぬ(かな)しみに(ひた)されながら、298故意(わざ)とに(なみだ)(かく)(かたち)(あらた)め、299両人(りやうにん)(むか)ひ、
300『オークス、301ビルマの両人(りやうにん)302(その)(はう)()主人(しゆじん)(さま)命令(めいれい)だから、303()(どく)(なが)只今(ただいま)(かぎ)(この)(やかた)(かへ)つて(くだ)さい。304仮令(たとへ)どうならうとも(その)(はう)のやうな傲慢(がうまん)無礼(ぶれい)(しもべ)厄介(やくかい)にならうとは(おも)はないから、305……モシ旦那(だんな)(さま)何卒(どうぞ)()安心(あんしん)(くだ)さいませ』
306(みみ)(くち)()せて(こゑ)(かぎ)りに涙交(なみだまじ)りに()()てた。307小国別(をくにわけ)(かす)かにこの(こゑ)(みみ)(はい)つたと()え、308力無(ちからな)げにニタリと(わら)ふ。309オークスは横柄面(わうへいづら)(さら)(なが)威猛高(ゐたけだか)になり、
310『モシ奥様(おくさま)311旦那(だんな)(さま)大病(たいびやう)(なや)(ほう)けて()らつしやいます。312(けつ)して仰有(おつしや)(こと)(まこと)ぢやありませぬ。313(ねつ)(うか)されたお言葉(ことば)314左様(さやう)(こと)本当(ほんたう)になさるやうでは(この)(やかた)大騒動(おほさうどう)(おこ)りますよ。315今日(こんにち)(この)(やかた)双肩(さうけん)(にな)うて()つものは、316ワックスや吾々(われわれ)二人(ふたり)(ほか)(たれ)がありませうか。317()くお(かんが)へなされませ。318門番(もんばん)家令(かれい)になれないと仰有(おつしや)いましたが、319(なん)()階級(かいきふ)(てき)(かんが)へに(とら)はれて()らつしやるのですか。320(むかし)常世城(とこよじやう)門番(もんばん)は、321(ただち)抜擢(ばつてき)されて右守(うもり)(かみ)になつたぢやありませぬか。322それも失敗(しつぱい)結果(けつくわ)でせう。323吾々(われわれ)はお(やかた)危急(ききふ)(すく)つた殊勲者(しゆくんしや)です。324()しお()()らねば仕方(しかた)はありませぬ、325吾々(われわれ)吾々(われわれ)としての(ひと)つの(かんが)へが(ござ)います、326(あと)後悔(こうくわい)なさいますなよ。327町民(ちやうみん)一般(いつぱん)大切(たいせつ)(たから)(ぬす)まれたのも、328みんな三千彦(みちひこ)魔法使(まはふつかひ)によつて大勢(おほぜい)(もの)難儀(なんぎ)をして()るので(ござ)います。329()はば三千彦(みちひこ)町民(ちやうみん)(てき)(ござ)います。330(その)(てき)何時(いつ)(まで)もお(かま)ひなさるのならば、331矢張(やはり)貴方(あなた)(がた)()夫婦(ふうふ)国敵(こくてき)(みと)めます。332大黒主(おほくろぬし)のお(ひら)きなされた(この)霊場(れいぢやう)を、333みすみす三五教(あななひけう)(やつ)蹂躙(じうりん)せられるとは、334町民(ちやうみん)一般(いつぱん)(しの)(がた)(ところ)でせう。335(わたし)家令(かれい)にお使(つか)ひなさらぬなら、336たつては(たの)みませぬ。337(この)始末(しまつ)町民(ちやうみん)報告(はうこく)(いた)します。338さうすれば町民(ちやうみん)は、339貴方(あなた)(がた)をバラモン(けう)(あだ)340(かみ)(さま)(てき)として()()せて(まゐ)ります。341覚悟(かくご)なさいませ』
342()(はな)ち、343(いきほひ)(するど)(おもて)()()す。344睾丸(きんたま)(うし)()(つぶ)され、345綿屋(わたや)離室(はなれ)養生(やうじやう)して()たエルは(やうや)二三(にさん)(にん)子供(こども)(おく)られて玄関(げんくわん)(かへ)つて()た。346オークス、347ビルマの二人(ふたり)玄関(げんくわん)にてふと出会(であ)うた。348エルは二人(ふたり)相好(さうがう)唯事(ただごと)ならぬに不審(ふしん)(おこ)し、
349エル『オイ、350両人(りやうにん)351血相(けつさう)()へて何処(どこ)()くのだ。352(これ)には(なに)様子(やうす)があるであらう、353まづ(おれ)()かして()れ。354(なん)とか仲裁(ちうさい)してやるから』
355 オークス、356ビルマの両人(りやうにん)脅迫(けふはく)(てき)此処(ここ)(まで)()たのだが、357うつかり町民(ちやうみん)(めう)(こと)(しやべ)つて、358(あと)取纒(とりまと)めに(こま)つてはならぬと(おも)つて()矢先(やさき)359エルに()められたので、360これ(さいはひ)二人(ふたり)受付(うけつけ)にドツカと()し、361密々話(ひそびそばなし)(ふけ)つて()る。
362大正一二・三・二四 旧二・八 於皆生温泉浜屋 加藤明子録)

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10/22【霊界物語ネット】王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)』をテキスト化しました。
5/8【霊界物語ネット】霊界物語ネットに出口王仁三郎の第六歌集『霧の海』を掲載しました。
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