霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一三章 悪酔怪(あくすゐくわい)〔一四六三〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第57巻 真善美愛 申の巻 篇:第2篇 顕幽両通 よみ(新仮名遣い):けんゆうりょうつう
章:第13章 悪酔怪 よみ(新仮名遣い):あくすいかい 通し章番号:1463
口述日:1923(大正12)年03月25日(旧02月9日) 口述場所:皆生温泉 浜屋 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年5月24日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
ワックスは、悪友のエキスとヘルマンや、三五教の三千彦、また水平会なる団体を敵視し、これらに対抗するために悪酔怪なる団体を考え出した。弱きをくじき強気に従うという奇妙奇天烈な結社である。
ワックスは創立委員長としてテルモン山の議事堂に集まり、オークスに開会の辞を朗読せしめた。そして一条の演説を試み、三五教の三千彦、エキス、ヘルマンらは弱者なるがゆえに、悪酔怪設立の趣旨にしたがって彼らを除くべく会員たちに協力を願いたてた。
群衆の中からエキスが怒って現れ、我々に六百両を脅し取られたワックスこそ弱者だと述べ立てた。そして宮町の家々の宝が盗まれたのはワックスの仕業だと暴露した。
ワックスは経緯を詳しく知っているエキスこそ犯人に違いないと言い返した。群衆はこのやり取りを聞いて、ワックスとエキスをなぐり殺せと猛り狂った。ワックス、エキス、オークス、ビルマは細くなって抜け出し、テルモン山の山奥に逃げて行ってしまった。
エルが演壇に登って大声で演説を始め、ワックスとエキスは皆の肝玉を試そうとわざと活劇を演じて見せたのだ、と群衆を抑えにかかった。そして三五教の宣伝使こそが我々の共通の敵だとなだめた。
そして悪酔怪の設立を祝して酒宴を開くことを提案した。集まった荒くれ男たちは歓呼の声とともに踊り狂い、議事堂はたちまち床が墜落し、数百の鼠がおどろいて戸外に飛び出し、草むらに逃げて行く。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2025-11-13 16:26:45 文字数:4564 OBC :rm5713
愛善世界社版:171頁 八幡書店版:第10輯 322頁 修補版: 校定版:179頁 普及版:83頁 初版: ページ備考:
001 ワックスは父(ちち)の病(やまひ)旦夕(たんせき)に迫(せま)り、002嬉(うれ)しうもあり悲(かな)しうもあり、003大事(だいじ)の嬶(かか)を死(し)なして同時(どうじ)に美人(びじん)の芸者(げいしや)を後連(あとづ)れに貰(もら)うたやうな、004悲喜(ひき)交々(こもごも)の体(てい)であつた。005其処(そこ)へ、006エキス、007ヘルマンの二人(ふたり)が幾度(いくど)となくやつて来(き)て、008金(かね)をむしり取(と)り、009今(いま)又(また)大枚(たいまい)六百(ろくぴやく)両(りやう)強奪(がうだつ)して立(た)ち去(さ)り、010三十(さんじふ)日(にち)の後(のち)には再(ふたた)び無心(むしん)に来(く)ると下駄(げた)を預(あづ)けて帰(かへ)つたので、011心(こころ)も心(こころ)ならず、012何(なん)とかして強力(きやうりよく)なる団体(だんたい)を造(つく)り、013二人(ふたり)の害(がい)を免(まぬが)れむものと苦心(くしん)惨憺(さんたん)の結果(けつくわ)、014無(な)い智恵(ちゑ)を搾(しぼ)り出(だ)して悪酔怪(あくすゐくわい)なるものを編(あ)み出(だ)したのである。015そして一方(いつぱう)にはアンブラック川(がは)に投(な)げ込(こ)んだる、016三五教(あななひけう)の三千彦(みちひこ)が、017スマートに助(たす)けられ、018何処(どこ)かに姿(すがた)を隠(かく)したと云(い)ふ事(こと)を聞(き)いて心(こころ)も心(こころ)ならず、019今(いま)の中(うち)に強力(きようりよく)なる団体(だんたい)を組織(そしき)し、020三千彦(みちひこ)を威喝(ゐかつ)し又(また)自分(じぶん)の悪事(あくじ)の暴露(ばくろ)したる時(とき)は、021この団体(だんたい)の力(ちから)を以(もつ)て防(ふせ)がむと千思(せんし)万慮(ばんりよ)の結果(けつくわ)、022同志(どうし)を糾合(きうがふ)して本会(ほんくわい)を設立(せつりつ)したのである。023本会(ほんくわい)の敵(てき)とする所(ところ)は三千彦(みちひこ)のみならず、024水平会(すいへいくわい)をも唯一(ゆゐいつ)の敵(てき)と見做(みな)し、025弱(よわ)きを挫(くじ)き強(つよ)きに従(したが)ふと云(い)ふ、026奇妙(きめう)奇天烈(きてれつ)な結社(けつしや)である。
027 ワックスは創立(さうりつ)委員長(ゐゐんちやう)としてテルモン山(ざん)の議事堂(ぎじだう)に集(あつ)まり、028オークスを臨時(りんじ)痴爺(ちぢ)として開怪(かいくわい)の辞(じ)を朗読(らうどく)せしめたのである。029今(いま)左(さ)に開怪(かいくわい)の辞(じ)と縮辞(しゆくじ)、030並(ならび)に挨拶(あいさつ)を摘記(てきき)する事(こと)にした。031アア叶(かな)はぬから霊(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)。
 
032  弱(よわ)きを挫(くじ)き強(つよ)きを助(たす)く、033天晴男(てんせいだん)の悪酔怪(あくすゐくわい)
034      痴爺(ちぢ)の縮辞(しゆくじ)と怪長(くわいちやう)の瞹擦(あいさつ)
035 大(だい)テルモン国(ごく)、036悪酔怪(あくすゐくわい)、037スマネーケン凡夫(ほんぶ)発怪色(はつくわいしき)は、038鬼報(きはう)の通(とほ)り、039二重惨(にぢうさん)日(にち)午後(ごご)一(いち)爺(ぢ)より待合(まちあひ)に於(おい)て開催(かいさい)されたが、040尾皮(をがは)怪長(くわいちやう)の辞(じ)、041並(ならび)に痴爺(ちぢ)の縮辞(しゆくじ)は左(さ)の通(とほ)りであつた。
 
042      開怪(かいくわい)の辞(じ)
043隔靴(かくくわ)、044並(ならび)に頭掻位(あたまかくゐ)の臨場(りんぢやう)を忝(かたじけ)なふし、045怪員(くわいゐん)笑死(しよし)の出席(しゆつせき)を得(え)、046茲(ここ)に大(だい)テルモン国(ごく)、047悪酔怪(あくすゐくわい)スマネーケン凡夫(ほんぶ)発怪式(はつくわいしき)を狂行(きよかう)するに至(いた)りたるは金睾(きんかう)とする所(ところ)也(なり)。048思(おも)ふに我(わが)テルモン国(ごく)は一大(いちだい)蚊属(かぞく)国(こく)にして、049バラモン神祖(しんそ)以来(いらい)歴代(れきだい)盗(たう)を垂(た)れ蛮民(ばんみん)を撫育(ぶいく)し、050化身(けんしん)哀哭(あいこく)の心情(しんじやう)を発露(はつろ)し上下(しやうか)不和(ふわ)もつて辛(から)うじて国家(こくか)を支持(しぢ)し国威(こくゐ)を中外(ちうぐわい)に失墜(しつつゐ)し、051烈国(れつこく)平和(へいわ)の攪乱(かくらん)をなす。052これ我国(わがくに)の情弊(じやうへい)にして、053宇内(うだい)に冠絶(くわんぜつ)する所以(ゆゑん)なり。054然(しか)るにバラモン軍(ぐん)と、055三五軍(あななひぐん)との大戦(たいせん)以来(いらい)、056死葬怪(しさうくわい)悪化(あくくわ)の影響(えいきやう)を受(う)け、057仁義(じんぎ)道徳(だうとく)漸(やうや)く廃(すた)れ、058盛(さか)んに弱肉(じやくにく)強食(きやうしよく)行(おこな)はれ、059社会(しやくわい)の秩序(ちつじよ)全(まつた)く紊乱(ぶんらん)せむとす。060加(くは)ふるに物質(ぶつしつ)的(てき)卑吝(ひりん)の発達(はつたつ)と学研(がくけん)的(てき)陋説(ろうせつ)の横行(わうかう)とは正(まさ)にテルモン国(ごく)の人民(じんみん)を犯(をか)して今(いま)や正(まさ)に解乱(かいらん)せむとす。061外(そと)に国際(こくさい)状態(じやうたい)を案(あん)ずるに、062其(その)実力(じつりよく)的(てき)圧迫(あつぱく)の過重(くわぢゆう)に堪(た)へ得(う)るやの疑惧(ぎぐ)あり。063内憂(ないいう)外患(ぐわいくわん)交々(こもごも)至(いた)る現状(げんじやう)は上下(しやうか)三十五万(さんじふごまん)年(ねん)未(いま)だ嘗(かつ)て見(み)ざる鬼期(きき)を目睫(もくせふ)の間(あひだ)に控(ひか)へたるものと言(い)ふべし。064吾(われ)、065徳(とく)、066学(がく)あり、067智(ち)あり、068財(ざい)あるなし。069併(しか)し栄位(えいゐ)を有(いう)すと雖(いへど)も、070バラモン神祖(しんそ)より享受(きやうじゆ)せるバラモン魂(だましひ)は茫漠(ばうばく)として存(そん)す。071此(この)発露(はつろ)によりて、072金権(きんけん)に屈(くつ)するの気骨(きこつ)を有(いう)す。073同情(どうじやう)に泣(な)く涙(なみだ)を有(いう)せず。074時勢(じせい)を慨(がい)する熱血(ねつけつ)なく、075献身(けんしん)奉公(ほうこう)の仁侠(じんけふ)を有(いう)せず、076斯(かく)の如(ごと)き不正意(ふせいい)をもつて立(た)つて時患(じくわん)を救済(きうさい)すべからざる時(とき)の来(きた)れるものと覚悟(かくご)す。077これ大(だい)テルモン国(ごく)、078悪酔怪(あくすゐくわい)の生(うま)れたる所以(ゆゑん)なり。079スマネーケン同志(どうし)之(これ)に狂鳴(きやうめい)し、080力(ちから)を分(わか)ち、081心(こころ)を二(ふた)つにして奉公(ほうこう)の実(じつ)を上(あ)げざらむとす。082幸(さいはひ)に隔靴(かくくわ)並(ならび)に頭掻位(あたまかくゐ)の御(ご)援助(ゑんじよ)と会員(くわいいん)一同(いちどう)の御(ご)賛助(さんじよ)を得(え)て、083呱々(ここ)の声(こゑ)を上(あ)ぐるを得(え)たるは、084金塊(きんくわい)禁(きん)ずる能(あた)はざる所(ところ)なり。085希(こひねが)はくは怪員(くわいゐん)諸氏(しよし)は一層(いつそう)自製(じせい)発糞(はつぷん)もつて凡怪(ほんくわい)の臭意(しゆい)、086目的(もくてき)の貫徹(くわんてつ)に務(つと)められむ事(こと)を鬼望(きばう)す。087敢(あへ)て心情(しんじやう)を披瀝(ひれき)して謝辞(しやじ)を述(の)べ、088開怪(かいくわい)の爺(ぢ)とす。
089  バラモン始終苦(しじうく)念(ねん)惨(さん)喝(かつ)惨重惨(さんぢうさん)日(にち)  拙立(せつりつ)異淫長(いいんちやう)ワックス
 
090      痴爺(ちぢ)縮辞(しゆくじ)
091茲(ここ)に悪酔怪(あくすゐくわい)はスマネーケン凡夫(ほんぶ)拙立(せつりつ)成(な)り、092凡日(ほんじつ)をもつて発怪式(はつくわいしき)を挙(あ)げられたり。093余(よ)も此(この)発怪式(はつくわいしき)に列(れつ)し、094一言(いちごん)縮意(しゆくい)を表(へう)し、095併(あは)せて諸怪(しよくわい)を述(の)べる鬼怪(きくわい)を得(え)たるは最(もつと)も欣鬼(きんき)に堪(た)へざる所(ところ)なり。096思(おも)ふに吾(わが)テルモン国(ごく)は大自在天(だいじざいてん)、097大国彦(おほくにひこの)命(みこと)建国(けんこく)以来(いらい)三十五万(さんじふごまん)年(ねん)連綿(れんめん)として万古(ばんこ)不易(ふえき)ならず。098世界(せかい)無比(むひ)の動乱国(どうらんこく)として国光(こくくわう)を宇内(うだい)に失墜(しつつゐ)し、099国辱(こくじよく)を海外(かいぐわい)に発揚(はつやう)し今(いま)や世界(せかい)最小(さいせう)弱国(じやくこく)の班(はん)に列(れつ)するに至(いた)る。100是(これ)素(もと)より大自在天(だいじざいてん)神祖(しんそ)の守護(しゆご)の厚(あつ)からざる所(ところ)にして、101国民(こくみん)上下(しやうか)不一致(ふいつち)の哀哭(あいこく)の死状(しじやう)と偽勇(ぎゆう)彷徨(はうくわう)、102死誠(しせい)とを以(もつ)て我(わが)民族(みんぞく)精神(せいしん)となし、103不誠意(ふせいい)哭家(こくか)の隆盛(りうせい)に貢献(こうけん)せざりしもの与(あづか)りて力(ちから)ありと云(い)はざるべからず。104然(しか)るに今回(こんくわい)、105河鹿(かじか)峠(たうげ)の戦闘(せんとう)の結果(けつくわ)として彼我(ひが)共(とも)に異常(いじやう)の変革(へんかく)を呈(てい)し、106死想怪(しさうくわい)又(また)著(いちぢる)しく混乱(こんらん)し甚(はなはだ)しきは過劇(くわげき)なる死想(しさう)を助長(じよちやう)し、107我(わが)国(くに)も亦(また)此(この)死想(しさう)の大根元(だいこんげん)となれり。108事(こと)の理非(りひ)曲直(きよくちよく)物(もの)の正邪(せいじや)善悪(ぜんあく)を極(きは)めずして附和(ふわ)雷同(らいどう)し、109この国体(こくたい)と相容(あひいる)る所(ところ)の不完全(ふくわんぜん)なる死想(しさう)に感染(かんせん)し、110以(もつ)て国家(こくか)社会(しやくわい)の秩序(ちつじよ)を乱(みだ)し、111バラモン国家(こくか)の本義(ほんぎ)を忘(わす)るべからず。112殊(こと)に経済(けいざい)的(てき)の変動(へんどう)は労働(らうどう)問題(もんだい)を惹起(じやくき)し、113労資(らうし)の関係(くわんけい)を紛糾(ふんきう)せしめ、114其(その)協調(けふてう)を破(やぶ)り、115従(したが)つて人心(じんしん)を不安(ふあん)に陥(おとしい)れむとする情勢(じやうせい)を呈(てい)するに至(いた)りしは、116誠(まこと)に偉観(ゐくわん)とする所(ところ)なり。117此(この)時(とき)に災(さい)し憂国(いうこく)の士(し)相計(あひはか)り、118バラモン国(こく)悪酔怪(あくすゐくわい)を組織(そしき)し、119正義(せいぎ)公道(こうだう)を経(たて)とし、120仁侠(じんけふ)死誠(しせい)を緯(ぬき)とし、121同身(どうしん)一体(いつたい)結束(けつそく)を固(かた)くし、122以(もつ)て時弊(じへい)を救急(きうきふ)し、123万邦(ばんぱう)無比(むひ)の動乱(どうらん)、124国(くに)を毀損(きそん)する如(ごと)き、125失態(しつたい)あるべからず。126狐狗狸(こくり)眠副(みんぷく)の増進(ぞうしん)を計(はか)る事(こと)に努力(どりよく)せざらむ事(こと)を期(き)し、127既(すで)に死想(しさう)団体(だんたい)として無力(むりよく)なる地歩(ちほ)を占(し)むるに至(いた)りしはバラモン国(ごく)の為(た)め慶賀(けいが)に堪(た)へざる所(ところ)なり。128由来(ゆらい)我(わが)スマネーケンたる、129神代(かみよ)に於(おい)てバラモン神(しん)の世(よ)を統治(とうち)し、130悪政(あくせい)を布(し)き給(たま)ひし以来(いらい)邪智(じやち)の念(ねん)深(ふか)く、131加之(しかのみならず)テルモン山麓(さんろく)の一角(いつかく)に僻在(へきざい)するを以(もつ)て一般(いつぱん)の民風(みんぷう)質素(しつそ)剛健(がうけん)ならず、132軽挙(けいきよ)妄動(もうどう)の風(ふう)あり。133産業怪(さんげふくわい)の葬儀(さうぎ)の如(ごと)き又(また)多(おほ)く顕現(けんげん)し、134勃発(ぼつぱつ)し、135動(やや)もすれば近時(きんじ)世(よ)の風潮(ふうてう)に逆(さか)らひ、136頓幸(とんかう)微風(びふう)、137道義(だうぎ)観念(くわんねん)等(とう)漸次(ぜんじ)廃頽(はいたい)の傾向(けいかう)を示(しめ)したるは実(じつ)に我(わが)国体(こくたい)の為(ため)に金睾(きんかう)とする所(ところ)なり。138今(いま)や同憂(どういう)の士(し)を相鳩合(あひきうがふ)しバラモン国(ごく)、139悪酔怪(あくすゐくわい)スマネーケン凡夫(ほんぶ)を葬説(さうせつ)して天下(てんか)惑乱(わくらん)の主義(しゆぎ)綱領(かうりやう)を体(たい)し、140大(おほい)に濁世(ぢよくせ)害民(がいみん)の実(じつ)をあげむとす。141誠(まこと)に時期(じき)に適(てき)したる愚挙(ぐきよ)にして、142其(その)効果(かうくわ)蓋(けだ)し甚大(じんだい)なるものあるべしと信(しん)ず。143希(こひねが)はくは怪淫(くわいいん)妾窘(しよくん)其(その)責任(せきにん)の重(ぢう)且(か)つ大(だい)なるを思(おも)ひ、144自重(じちよう)自愛(じあい)、145苟(いやし)くも本怪(ほんくわい)の臭意(しゆい)に反(はん)する事(こと)なく、146不同心(ふどうしん)、147不協力(ふけふりよく)、148不確乎(ふかくこ)、149不不抜(ふふばつ)の精神(せいしん)をもつて凡怪(ほんくわい)の目的(もくてき)を達成(たつせい)し、150幽醜(いうしう)の鼻下(びか)を上(あ)ぐる事(こと)に災前(さいぜん)の努力(どりよく)を致(いた)し、151もつて国家(こくか)に貢献(こうけん)せざらむ事(こと)を望(のぞ)む。152終(をは)りに凡怪(ほんくわい)不健全(ふけんぜん)なる不発達(ふはつたつ)と怪淫(くわいいん)妾窘(しよくん)の不健康(ふけんかう)を祈(いの)る。153聊(いささ)か蕪辞(ぶじ)を述(の)べて縮辞(しゆくじ)となす。
154      バラモン国(こく)始終苦(しじふく)念(ねん)惨(さん)喝(かつ)惨重惨(さんぢうさん)日(にち)
155      スマネーケン痴爺(ちぢ) 重死位(ぢうしゐ)窘惨倒(くんさんたふ) 田柄屁(たからべ)唸(うなる)
 
156 ワックスは、157式(しき)を無事(ぶじ)に終(をは)り一場(いちぢやう)の演説(えんぜつ)を試(こころ)みた。
158ワックス『皆(みな)さま今日(こんにち)は御(ご)多忙中(たばうちう)に関(かか)はらず賑々(にぎにぎ)しく御(ご)来会(らいくわい)下(くだ)さいまして、159発起者(ほつきしや)身(み)に取(と)り恐悦(きようえつ)至極(しごく)に存(ぞん)じます。160就(つい)ては、161開怪(かいくわい)の辞(じ)に述(の)べました通(とほ)り、162大(だい)バラモン国(ごく)の主義(しゆぎ)主張(しゆちやう)に則(のつと)り、163弱肉(じやくにく)強食(きやうしよく)を真理(しんり)と認(みと)め、164弱(よわ)きを挫(くじ)き、165強(つよ)きに従(したが)ふ時代(じだい)思想(しさう)を遺憾(ゐかん)なく発揮(はつき)したもので厶(ござ)います。166例(たと)へば此処(ここ)に三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)が一人(ひとり)現(あら)はれたと致(いた)しますれば、167それは果(はた)して強者(きやうしや)で厶(ござ)いませうか。168何事(なにごと)も多数決(たすうけつ)を尊(たふと)ぶ世(よ)の中(なか)、169吾々(われわれ)会員(くわいゐん)は無慮(むりよ)数百(すうひやく)名(めい)、170敵(てき)は唯(ただ)一人(ひとり)で厶(ござ)います。171如何(いか)に強(つよ)いと云(い)うても多数(たすう)には勝(か)てませぬ。172夫(それ)故(ゆゑ)三千彦(みちひこ)の宣伝使(せんでんし)は弱者(じやくしや)で厶(ござ)います。173故(ゆゑ)に宮町(みやまち)町民(ちやうみん)の為(ため)に手足(てあし)を縛(しば)られ、174アンブラック川(がは)に投(な)げ込(こ)まれたのはバラモン国(ごく)の伝統(でんとう)の教義(けうぎ)として最(もつと)も尊(たふと)ぶべき行為(かうゐ)と思(おも)ひます。175然(しか)るに又(また)彼(かれ)三千彦(みちひこ)は四足(よつあし)に命(いのち)を救(すく)はれ、176此(この)テルモン山(ざん)の何(いづ)れにか潜伏(せんぷく)致(いた)して居(ゐ)る形跡(けいせき)がありますれば、177本会(ほんくわい)の規則(きそく)により、178見(み)つけ次第(しだい)容赦(ようしや)なく縛(しば)りつけ、179今回(こんくわい)は石(いし)を括(くく)りつけ放(ほ)り込(こ)まれたいもので厶(ござ)います。180拙者(せつしや)の如(ごと)きはテルモン山(ざん)の神館(かむやかた)に於(おい)ては家令(かれい)の倅(せがれ)として最(もつと)も強(つよ)きもので厶(ござ)います。181その最(もつと)も強(つよ)き者(もの)に対(たい)してエキス、182ヘルマンなどの弱者(じやくしや)が折々(をりをり)金(かね)の無心(むしん)に参(まゐ)り、183駄々(だだ)を捏(こ)ねまする故(ゆゑ)、184もし今後(こんご)そんな事(こと)を致(いた)した時(とき)には会長(くわいちやう)の私(わたし)から、185会員(くわいゐん)諸君(しよくん)に通知(つうち)を発(はつ)しますから皆(みな)さま悪酔怪(あくすゐくわい)設立(せつりつ)の趣旨(しゆし)に従(したが)つて速(すみやか)にお駆(かけ)つけ下(くだ)さらむ事(こと)を悪酔怪(あくすゐくわい)の規則(きそく)によつてお願(ねが)ひして置(お)きます』
186 エキスは此(この)時(とき)群衆(ぐんしう)の中(なか)より、187怒髪(どはつ)天(てん)を衝(つ)いて現(あら)はれ来(きた)り反(そ)り身(み)になつて、
188エキス『皆(みな)さま、189今(いま)ワックス殿(どの)が述(の)べられました通(とほ)り、190弱(よわ)きを挫(くじ)き強(つよ)きに従(したが)ふが本会(ほんくわい)の趣旨(しゆし)たる事(こと)は御存(ごぞん)じでせう。191一人(ひとり)の男(をとこ)が二人(ふたり)の男(をとこ)に脅迫(けふはく)され、192命(いのち)よりも大事(だいじ)な六百(ろくぴやく)両(りやう)の金(かね)をおつ放(ぽ)り出(だ)し、193命(いのち)を助(たす)けて貰(もら)うたものがありとすれば、194皆(みな)さまどちらが強(つよ)いと思(おも)はれますか、195又(また)二人(ふたり)と一人(ひとり)とは、196何方(どちら)が強(つよ)いと思(おも)ひますか。197本会(ほんくわい)の主義(しゆぎ)精神(せいしん)に基(もとづ)いて拙者(せつしや)等(ら)両人(りやうにん)が強者(きやうしや)なる事(こと)を認(みと)め、198拙者(せつしや)等(ら)二人(ふたり)がワックスの館(やかた)に押寄(おしよ)せたる時(とき)は、199何卒(なにとぞ)御(ご)援助(ゑんじよ)を願(ねが)ひます。200此(こ)のワックスと云(い)ふ奴(やつ)は、201宮町(みやまち)の町民(ちやうみん)を馬鹿(ばか)に致(いた)して居(ゐ)る人犬(にんげん)で厶(ござ)いますから、202皆(みな)さま御(ご)用心(ようじん)なさいませ。203家々(いへいへ)の大切(たいせつ)な宝(たから)をあの騒動(さうだう)に紛(まぎ)れ盗(ぬす)ませたのはワックスで厶(ござ)いますよ。204其(その)窃盗(せつとう)の衝(しよう)に当(あた)つた強者(きやうしや)は此処(ここ)に二人(ふたり)許(ばか)り顔(かほ)を並(なら)べて居(ゐ)られます。205これは皆様(みなさま)の御(ご)判断(はんだん)に任(まか)す事(こと)に致(いた)しませう』
206 聴衆(ちやうしう)の中(なか)より、
207聴衆の一人『オイ、208エキス、209それや本当(ほんたう)か、210よもや嘘(うそ)ではあるまいな』
211エキス『滅相(めつさう)な、212何程(なにほど)悪酔怪(あくすゐくわい)だと云(い)つて、213そんな見(み)え透(す)いた嘘(うそ)が申(まを)されませうか。214宝(たから)の泥坊(どろばう)は全(まつた)くワックス以下(いか)両人(りやうにん)の仕事(しごと)で厶(ござ)います。215そして其(その)盗(ぬす)まれた品(しな)はテルモン山(ざん)の鳩(はと)の岩窟(いはや)にすつかり隠(かく)して厶(ござ)いますから、216嘘(うそ)と思(おも)はれるなら皆(みな)さま行(い)つて調(しら)べて御覧(ごらん)なさい』
217 ワックスは二(ふた)つ三(みつ)つ咳払(せきばら)ひをしながら、
218ワックス『皆(みな)さま、219エキスの言葉(ことば)に誑(だま)されてはなりませぬ。220現在(げんざい)宝(たから)の隠(かく)し場所(ばしよ)を知(し)つて居(ゐ)る以上(いじやう)、221御(ご)本人(ほんにん)が盗(ぬす)んだに相違(さうゐ)厶(ござ)いませぬ。222本人(ほんにん)が盗(ぬす)まぬのに知(し)つて居(ゐ)る筈(はず)がありますまい』
223 悪酔怪(あくすゐくわい)と称(しよう)する一同(いちどう)は忽(たちま)ち総立(さうだち)となり、
224一同(いちどう)『ワックスを撲(なぐ)れ、225エキスを殺(ころ)せ』
226と猛(たけ)り狂(くる)うた。
227 此(この)騒(さわ)ぎにワックス、228エキス、229オークス、230ビルマは細(ほそ)くなつて、231テルモン山(ざん)の山奥(やまおく)指(さ)して一散(いつさん)に駆出(かけだ)した。232そこへ、233エルが睾丸(きんたま)を押(おさ)へ乍(なが)らエチエチと演壇(えんだん)に登(のぼ)り来(きた)り大喝(たいかつ)一声(いつせい)、
234エル『皆様(みなさま)お静(しづ)まりなさいませ、235貴方(あなた)方(がた)は悪酔怪(あくすゐくわい)員(ゐん)ぢやありませぬか。236ワックス様(さま)を初(はじ)め其(その)外(ほか)の方々(かたがた)がどうしてそんな事(こと)をなさいませう。237発会式(はつくわいしき)の余興(よきよう)に皆(みな)さま方(がた)の肝玉(きもだま)を試(ため)さむと思(おも)ひ故意(わざ)とにあんな事(こと)を云(い)うて喧嘩(けんくわ)をして見(み)せられたのです。238皆(みな)さまこれから鉢巻(はちまき)をして腹帯(はらおび)を締(し)め、239弱(よわ)きを挫(くじ)き強(つよ)きに従(したが)ふの大精神(だいせいしん)になつて貰(もら)はなくてはなりませぬ。240今(いま)のワックス、241エキスの争(あらそ)ひは八百長(やほちやう)ですから、242本当(ほんたう)にしてはなりませぬ。243それよりもバラモン教(けう)の聖地(せいち)に、244幾度(いくたび)となく入(い)り込(こ)み来(きた)る三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)を防(ふせ)ぐために、245貴方(あなた)方(がた)のお力(ちから)を頼(たの)まねばなりませぬ。246其(その)為(ため)に本会(ほんくわい)を組織(そしき)したので厶(ござ)います。247水平会(すゐへいくわい)などを相手(あひて)にするのが目的(もくてき)ぢやありませぬ。248皆(みな)さまは非常(ひじやう)な特権(とくけん)を与(あた)へられて居(ゐ)る事(こと)を知(し)つて居(ゐ)ますか』
249 群衆(ぐんしう)の中(なか)より、
250群衆の一人『その特権(とくけん)とは何(なん)だ。251詳細(しやうさい)に説明(せつめい)を願(ねが)ふ』
252エル『其(その)特権(とくけん)と申(まを)すのは表面(へうめん)には申(まを)されませぬが、253月(つき)の国(くに)、254ハルナの都(みやこ)の大黒主(おほくろぬし)様(さま)より、255烏鷺(うろ)の勝負(しようぶ)の黙認(もくにん)を得(え)て居(ゐ)るので厶(ござ)います。256それ故(ゆゑ)昼間(ひるま)褞袍(どてら)を着(き)てウロウロ致(いた)し、257ウロをうつて居(ゐ)ても見(み)て見(み)ぬ風(ふう)をするから夫(それ)が第一(だいいち)の特権(とくけん)です。258皆(みな)さま是(これ)から悪酔怪(あくすゐくわい)の万歳(ばんざい)を三唱(さんしやう)し、259悪酔踊(あくすゐをど)りでも盛(さか)んにやつて本会(ほんくわい)の創立(さうりつ)を心(こころ)から祝(しゆく)して下(くだ)さいませ。260酒(さけ)は弱者(じやくしや)から徴発(ちようはつ)して来(き)たのが沢山(たくさん)に厶(ござ)いますから』
261一同(いちどう)『ウロー、262ウロー』
263と云(い)ひ乍(なが)ら、264荒(あら)くれ男(をとこ)が、265毛脛(けずね)を出(だ)して縦横(たてよこ)十文字(じふもんじ)に踊(をど)り狂(くる)ひ、266議事堂(ぎじだう)は忽(たちま)ち床(ゆか)墜落(つゐらく)し、267数百(すうひやく)の鼠(ねずみ)が驚(おどろ)いて一生(いつしやう)懸命(けんめい)に戸外(こぐわい)に逃(に)げ出(だ)し、
268『クウクウクウ チウチウチウチウ』
269と云(い)ひ乍(なが)ら強者(きやうしや)に敵(てき)し難(がた)く弱(よわ)り切(き)つて叢(くさむら)の中(なか)へ命(いのち)からがら逃(に)げて行(ゆ)く。270嗚呼(ああ)叶(かな)はぬから霊(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)。
271弱(よわ)きをば扶(たす)け強(つよ)きを挫(くじ)くとは
272表面(へうめん)ばかり鬼(おに)の念仏(ねんぶつ)。
273その実(じつ)は弱身(よわみ)につけ込(こ)む風(かぜ)の神(かみ)
274強(つよ)い奴(やつ)等(ら)に尾(を)を掉(ふ)る偽侠(ぎけふ)よ。
275(大正一二・三・二五 旧二・九 於皆生温泉浜屋 加藤明子録)
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