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霊界物語
真善美愛(第49~60巻)
第57巻(申の巻)
序文
総説歌
第1篇 照門山颪
第1章 大山
第2章 煽動
第3章 野探
第4章 妖子
第5章 糞闘
第6章 強印
第7章 暗闇
第8章 愚摺
第2篇 顕幽両通
第9章 婆娑
第10章 転香
第11章 鳥逃し
第12章 三狂
第13章 悪酔怪
第14章 人畜
第15章 糸瓜
第16章 犬労
第3篇 天上天下
第17章 涼窓
第18章 翼琴
第19章 抱月
第20章 犬闘
第21章 言触
第22章 天葬
第23章 薬鑵
第24章 空縛
第25章 天声
余白歌
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第57巻(申の巻)
> 第2篇 顕幽両通 > 第14章 人畜
<<< 悪酔怪
(B)
(N)
糸瓜 >>>
第一四章
人畜
(
にんちく
)
〔一四六四〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第57巻 真善美愛 申の巻
篇:
第2篇 顕幽両通
よみ(新仮名遣い):
けんゆうりょうつう
章:
第14章 人畜
よみ(新仮名遣い):
にんちく
通し章番号:
1464
口述日:
1923(大正12)年03月25日(旧02月9日)
口述場所:
皆生温泉 浜屋
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1925(大正14)年5月24日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
テルモン山麓の楠の岩窟には、姉のデビス姫を悪孤の化け物として押し込めてあった。ワックスは夜ひそかに燈火を点じて訪れた。デビス姫は窟内に端座して述懐を歌っている。
ワックスは述懐の歌にデビス姫がどれだけ自分を恨んでいるかを知った。そこで悪事をすべてエキスとヘルマンに押し付けて、自分はさもデビス姫を助けに来た風を装って話しかけた。デビス姫はワックスと知ると聞く耳持たず、厳しく罵った。
ワックスは嘘の説明が通用しないと見てとると、あからさまに姫を脅してものにしようと本性を現してきた。デビス姫は怒って、岩片をワックスめがけて投げつけた。
ワックスは怒り、デビス姫を竹槍で突き殺そうとした。あわやというときに猛犬スマートが駆け来たり、ワックスの利き腕にかじりつき、ワックスはその場に倒れてしまった。スマートはうなりながら姿を隠した。
しばらくしてワックスは気が付き、腕の血をぬぐってあたりの草で応急処置をすると、ほうほうの態で館に帰って行った。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm5714
愛善世界社版:
182頁
八幡書店版:
第10輯 327頁
修補版:
校定版:
190頁
普及版:
90頁
初版:
ページ備考:
001
テルモン
山
(
ざん
)
の
山麓
(
さんろく
)
の
楠
(
くす
)
の
岩窟
(
いはや
)
には、
002
神館
(
かむやかた
)
の
姉娘
(
あねむすめ
)
デビス
姫
(
ひめ
)
を
悪狐
(
あくこ
)
の
化物
(
ばけもの
)
として
押込
(
おしこ
)
めてあつた。
003
宮町
(
みやまち
)
一般
(
いつぱん
)
の
老若
(
らうにやく
)
男女
(
なんによ
)
は
八九分
(
はちくぶ
)
通
(
どほ
)
りまで
実
(
まこと
)
の
姫
(
ひめ
)
とは
知
(
し
)
らず、
004
何
(
いづ
)
れも
妖怪
(
えうくわい
)
の
変化
(
へんげ
)
とのみ
信
(
しん
)
じ、
005
恐
(
おそ
)
れて
近
(
ちか
)
づく
者
(
もの
)
が
無
(
な
)
かつた。
006
ワックスは
夜
(
よる
)
密
(
ひそ
)
かに
燈火
(
あかり
)
を
点
(
てん
)
じ、
007
親切
(
しんせつ
)
らしく
窟内
(
くつない
)
の
姫
(
ひめ
)
を
訪
(
と
)
うた。
008
姫
(
ひめ
)
は
暗
(
くら
)
がりの
窟内
(
くつない
)
に
端坐
(
たんざ
)
し、
009
述懐
(
じゆつくわい
)
を
歌
(
うた
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
010
デビス
姫
(
ひめ
)
『
世
(
よ
)
は
常暗
(
とこやみ
)
となり
果
(
は
)
てて
011
月日
(
つきひ
)
の
影
(
かげ
)
も
薄
(
うす
)
らぎつ
012
悪魔
(
あくま
)
は
四方
(
よも
)
に
横行
(
わうかう
)
し
013
善
(
ぜん
)
を
損
(
そこな
)
ひ
悪
(
あく
)
を
助
(
たす
)
け
014
所在
(
あらゆる
)
手段
(
しゆだん
)
を
廻
(
めぐ
)
らして
015
テルモン
山
(
ざん
)
の
神館
(
かむやかた
)
016
狙
(
ねら
)
ひ
居
(
ゐ
)
るこそ
嘆
(
うた
)
てけれ
017
家令
(
かれい
)
の
倅
(
せがれ
)
ワックスは
018
表
(
おもて
)
に
善
(
ぜん
)
を
標榜
(
へうぼう
)
し
019
甘
(
あま
)
き
言葉
(
ことば
)
を
並
(
なら
)
べつつ
020
尻
(
しり
)
に
剣
(
けん
)
持
(
も
)
つ
蜜蜂
(
みつばち
)
の
021
空
(
そら
)
恐
(
おそ
)
ろしき
悪漢
(
しれもの
)
ぞ
022
妾
(
わらは
)
を
日頃
(
ひごろ
)
恋
(
こ
)
ひ
慕
(
した
)
ひ
023
目尻
(
めじり
)
を
下
(
さ
)
げて
寄
(
よ
)
り
来
(
きた
)
る
024
そのスタイルの
嫌
(
いや
)
らしさ
025
妾
(
わらは
)
はもとより
女
(
をんな
)
の
身
(
み
)
026
何
(
いづ
)
れは
夫
(
をつと
)
を
持
(
も
)
つ
身
(
み
)
なれど
027
せめて
男
(
をとこ
)
らしき
益良夫
(
ますらを
)
を
028
吾
(
わが
)
背
(
せ
)
の
君
(
きみ
)
と
崇
(
あが
)
めつつ
029
父
(
ちち
)
の
家
(
いへ
)
をば
克
(
よ
)
く
守
(
まも
)
り
030
母
(
はは
)
の
心
(
こころ
)
を
慰
(
なぐさ
)
めて
031
神
(
かみ
)
の
御
(
おん
)
為
(
ため
)
世
(
よ
)
の
為
(
ため
)
に
032
誠
(
まこと
)
一
(
ひと
)
つを
立通
(
たてとほ
)
し
033
此
(
この
)
世
(
よ
)
の
鑑
(
かがみ
)
と
謳
(
うた
)
はれて
034
恵
(
めぐ
)
みの
露
(
つゆ
)
を
民草
(
たみぐさ
)
の
035
上
(
うへ
)
に
浸
(
ひた
)
しつ
神
(
かみ
)
の
子
(
こ
)
と
036
生
(
うま
)
れ
出
(
い
)
でたる
務
(
つと
)
めをば
037
尽
(
つく
)
さむものと
朝夕
(
あさゆふ
)
に
038
神
(
かみ
)
の
御前
(
みまへ
)
に
祈
(
いの
)
りしが
039
如何
(
いか
)
なる
悪魔
(
あくま
)
のさやりしか
040
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
開
(
ひら
)
きたる
041
珍
(
うづ
)
の
聖地
(
せいち
)
も
何日
(
いつ
)
しかに
042
魔神
(
まがみ
)
の
棲処
(
すみか
)
となり
果
(
は
)
てて
043
吾
(
わが
)
家
(
や
)
の
為
(
ため
)
に
力
(
ちから
)
をば
044
尽
(
つく
)
して
仕
(
つか
)
へ
奉
(
まつ
)
るべき
045
家令
(
かれい
)
の
倅
(
せがれ
)
ワックスは
046
恋
(
こひ
)
の
虜
(
とりこ
)
と
成
(
な
)
り
果
(
は
)
てて
047
日毎
(
ひごと
)
夜毎
(
よごと
)
の
悪企
(
わるだく
)
み
048
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
残
(
のこ
)
されし
049
如意
(
によい
)
の
宝珠
(
ほつしゆ
)
を
盗
(
ぬす
)
み
出
(
だ
)
し
050
妾
(
わらは
)
が
家
(
いへ
)
に
仇
(
あだ
)
をなし
051
父
(
ちち
)
と
母
(
はは
)
とを
苦
(
くる
)
しめて
052
往生
(
わうじやう
)
づくめに
妾
(
わらは
)
をば
053
妻
(
つま
)
となさむと
企
(
たく
)
らみつ
054
振舞
(
ふるま
)
ひたるぞ
憎
(
にく
)
らしき
055
父
(
ちち
)
は
心
(
こころ
)
を
苦
(
くる
)
しめて
056
重
(
おも
)
き
病
(
やまひ
)
に
臥
(
ふ
)
し
玉
(
たま
)
ひ
057
命
(
いのち
)
の
程
(
ほど
)
も
計
(
はか
)
られぬ
058
御
(
おん
)
身
(
み
)
とこそはなり
玉
(
たま
)
ひ
059
悲嘆
(
ひたん
)
の
涙
(
なみだ
)
は
神館
(
かむやかた
)
060
時
(
とき
)
じく
降
(
ふ
)
りて
晴
(
は
)
れ
間
(
ま
)
なく
061
苦
(
くる
)
しみ
悶
(
もだ
)
ゆる
親娘
(
おやこ
)
の
心
(
こころ
)
062
憐
(
あは
)
れみ
玉
(
たま
)
へ
物凄
(
ものすご
)
き
063
深山
(
みやま
)
の
奥
(
おく
)
に
只
(
ただ
)
一人
(
ひとり
)
064
夜
(
よ
)
な
夜
(
よ
)
な
通
(
かよ
)
ひて
水垢離
(
みづごうり
)
065
三七
(
さんしち
)
日
(
にち
)
の
其
(
その
)
揚句
(
あげく
)
066
さも
恐
(
おそ
)
ろしき
盗人
(
ぬすびと
)
に
067
途中
(
とちう
)
に
出会
(
であ
)
ひ
玉
(
たま
)
の
緒
(
を
)
の
068
命
(
いのち
)
絶
(
た
)
えむとする
時
(
とき
)
ゆ
069
三五教
(
あななひけう
)
の
神司
(
かむづかさ
)
070
求道
(
きうだう
)
居士
(
こじ
)
が
妹
(
いもうと
)
の
071
ケリナを
伴
(
ともな
)
ひ
来
(
きた
)
りまし
072
妾
(
わらは
)
の
命
(
いのち
)
を
救
(
すく
)
ひつつ
073
仁慈
(
じんじ
)
無限
(
むげん
)
の
心
(
こころ
)
もて
074
ベルとヘルとの
二人
(
ふたり
)
まで
075
救
(
すく
)
はせ
玉
(
たま
)
ひし
健気
(
けなげ
)
さよ
076
妾
(
わらは
)
は
居士
(
こじ
)
に
従
(
したが
)
ひて
077
露
(
つゆ
)
おく
野路
(
のぢ
)
をスタスタと
078
パインの
森
(
もり
)
に
立向
(
たちむか
)
ひ
079
少時
(
しばし
)
休
(
やす
)
らふ
折
(
を
)
りもあれ
080
鉦
(
かね
)
や
太鼓
(
たいこ
)
でドンチヤンと
081
旗指物
(
はたさしもの
)
を
押立
(
おした
)
てて
082
進
(
すす
)
み
来
(
きた
)
りしワックスが
083
数多
(
あまた
)
の
町人
(
ちやうにん
)
使嗾
(
しそう
)
して
084
妾
(
わらは
)
を
狐
(
きつね
)
の
化身
(
けしん
)
ぞと
085
云
(
い
)
ひくるめつつ
手足
(
てあし
)
をば
086
固
(
かた
)
く
縛
(
しば
)
つて
岩窟
(
がんくつ
)
に
087
投
(
な
)
げ
込
(
こ
)
みたるぞ
恐
(
おそ
)
ろしき
088
如意
(
によい
)
の
宝珠
(
ほつしゆ
)
は
今
(
いま
)
何処
(
いづこ
)
089
父
(
ちち
)
の
命
(
いのち
)
は
今
(
いま
)
もまだ
090
つづかせ
玉
(
たま
)
ふか
雁
(
かりがね
)
の
091
便
(
たよ
)
りもがなと
思
(
おも
)
へども
092
尋
(
たづ
)
ねむ
由
(
よし
)
もなく
斗
(
ばか
)
り
093
求道
(
きうだう
)
居士
(
こじ
)
や
妹
(
いもうと
)
の
094
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
如何
(
いか
)
になりしかと
095
思
(
おも
)
へば
胸
(
むね
)
も
張
(
は
)
り
裂
(
さ
)
くる
096
此
(
この
)
苦
(
くるし
)
みを
如何
(
いか
)
にして
097
癒
(
い
)
やさむ
術
(
すべ
)
もなき
倒
(
たふ
)
れ
098
舌
(
した
)
噛
(
か
)
み
切
(
き
)
つて
死
(
し
)
なむかと
099
思
(
おも
)
ひしことも
幾度
(
いくたび
)
か
100
さはさり
乍
(
なが
)
ら
待
(
ま
)
てしばし
101
年
(
とし
)
老
(
お
)
い
玉
(
たま
)
ひし
父母
(
ちちはは
)
の
102
此
(
この
)
世
(
よ
)
に
居
(
ゐ
)
ますその
限
(
かぎ
)
り
103
短気
(
たんき
)
を
起
(
おこ
)
し
身
(
み
)
失
(
う
)
せなば
104
不孝
(
ふかう
)
の
罪
(
つみ
)
の
重
(
かさ
)
なりて
105
未来
(
みらい
)
の
程
(
ほど
)
も
恐
(
おそ
)
ろしと
106
又
(
また
)
とり
直
(
なほ
)
す
心
(
こころ
)
の
弓
(
ゆみ
)
107
矢竹心
(
やたけごころ
)
の
何処
(
どこ
)
までも
108
通
(
とほ
)
さにやおかぬ
吾
(
わが
)
思
(
おも
)
ひ
109
三五教
(
あななひけう
)
を
守
(
まも
)
ります
110
国治立
(
くにはるたち
)
の
大御神
(
おほみかみ
)
111
豊国主
(
とよくにぬし
)
の
大御神
(
おほみかみ
)
112
果敢
(
はか
)
なき
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
が
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
を
113
守
(
まも
)
らせ
玉
(
たま
)
へ
惟神
(
かむながら
)
114
御前
(
みまへ
)
に
慎
(
つつし
)
み
願
(
ね
)
ぎ
奉
(
まつ
)
る
115
朝日
(
あさひ
)
は
照
(
て
)
るとも
曇
(
くも
)
るとも
116
月
(
つき
)
は
盈
(
み
)
つとも
虧
(
か
)
くるとも
117
仮令
(
たとへ
)
大地
(
だいち
)
は
沈
(
しづ
)
むとも
118
誠
(
まこと
)
一
(
ひと
)
つの
三五
(
あななひ
)
の
119
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
は
世
(
よ
)
を
救
(
すく
)
ふ
120
救
(
すく
)
ひの
神
(
かみ
)
を
頼
(
たの
)
めよと
121
宣
(
の
)
らせ
玉
(
たま
)
ひし
師
(
し
)
の
君
(
きみ
)
の
122
言葉
(
ことば
)
は
今
(
いま
)
に
忘
(
わす
)
られず
123
いと
懐
(
なつか
)
しき
求道
(
きうだう
)
居士
(
こじ
)
124
健
(
まめ
)
で
居
(
ゐ
)
ませや
妹
(
いもうと
)
よ
125
それにつけてもヘル
司
(
つかさ
)
126
一日
(
ひとひ
)
も
早
(
はや
)
く
大神
(
おほかみ
)
の
127
恵
(
めぐ
)
みの
露
(
つゆ
)
を
身
(
み
)
に
浴
(
あ
)
びて
128
岩窟
(
いはや
)
の
中
(
なか
)
の
苦
(
くる
)
しみを
129
免
(
のが
)
れ
出
(
い
)
でませ
惟神
(
かむながら
)
130
神
(
かみ
)
かけ
祈
(
いの
)
り
奉
(
たてまつ
)
る
131
三千
(
さんぜん
)
世界
(
せかい
)
の
梅
(
うめ
)
の
花
(
はな
)
132
一度
(
いちど
)
に
開
(
ひら
)
く
例
(
ためし
)
もあるに
133
梅
(
うめ
)
と
桜
(
さくら
)
に
譬
(
たと
)
ふべき
134
吾
(
わが
)
姉妹
(
おとどひ
)
は
如何
(
いか
)
にして
135
蕾
(
つぼみ
)
の
花
(
はな
)
の
開
(
ひら
)
かざる
136
早
(
はや
)
く
岩戸
(
いはと
)
を
何人
(
なにびと
)
か
137
情
(
なさけ
)
の
深
(
ふか
)
き
武士
(
もののふ
)
の
138
尋
(
たづ
)
ね
来
(
きた
)
りて
開
(
ひら
)
きませ
139
心
(
こころ
)
の
空
(
そら
)
に
日月
(
じつげつ
)
は
140
伊照
(
いて
)
り
渡
(
わた
)
れど
現身
(
うつそみ
)
の
141
儘
(
まま
)
ならぬ
身
(
み
)
は
如何
(
いか
)
にせむ
142
鋼
(
はがね
)
の
壁
(
かべ
)
に
隔
(
へだ
)
てられ
143
曇
(
くも
)
り
果
(
は
)
てたる
現世
(
うつしよ
)
の
144
光
(
ひかり
)
さへ
見
(
み
)
ぬ
浅間
(
あさま
)
しさ
145
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
造
(
つく
)
りし
神直日
(
かむなほひ
)
146
心
(
こころ
)
も
広
(
ひろ
)
き
大直日
(
おほなほひ
)
147
只
(
ただ
)
何事
(
なにごと
)
も
人
(
ひと
)
の
世
(
よ
)
は
148
直日
(
なほひ
)
に
見直
(
みなほ
)
し
聞直
(
ききなほ
)
し
149
身
(
み
)
の
禍
(
わざはひ
)
は
宣
(
の
)
り
直
(
なほ
)
し
150
救
(
すく
)
はせ
玉
(
たま
)
ふ
大神
(
おほかみ
)
の
151
御袖
(
みそで
)
に
縋
(
すが
)
り
奉
(
たてまつ
)
る
152
妾
(
わらは
)
の
生命
(
いのち
)
は
惜
(
をし
)
まねど
153
父
(
ちち
)
と
母
(
はは
)
との
御
(
お
)
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
154
如意
(
によい
)
の
宝珠
(
ほつしゆ
)
の
宝
(
たから
)
をば
155
救
(
すく
)
はせ
玉
(
たま
)
へ
大御神
(
おほみかみ
)
156
心
(
こころ
)
も
乱
(
みだ
)
れ
気
(
き
)
も
狂
(
くる
)
ひ
157
前後
(
ぜんご
)
も
知
(
し
)
らぬ
乙女子
(
をとめご
)
の
158
後
(
あと
)
や
前
(
さき
)
なる
口説
(
くど
)
き
言
(
ごと
)
159
許
(
ゆる
)
させ
玉
(
たま
)
へ
素盞嗚
(
すさのを
)
の
160
瑞
(
みづ
)
の
御霊
(
みたま
)
の
御
(
おん
)
前
(
まへ
)
に
161
慎
(
つつし
)
み
敬
(
ゐやま
)
ひ
願
(
ね
)
ぎ
奉
(
まつ
)
る
162
アア
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
163
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はひましませよ』
164
ワックスは
鉄
(
てつ
)
の
門扉
(
もんぴ
)
を
隔
(
へだ
)
てて
此
(
この
)
歌
(
うた
)
をスツカリ
聞
(
き
)
いて
了
(
しま
)
ひ、
165
双手
(
もろて
)
を
組
(
く
)
んで
吐息
(
といき
)
をつき
乍
(
なが
)
ら
独言
(
ひとりごと
)
、
166
ワックス『アア
今
(
いま
)
の
歌
(
うた
)
の
様子
(
やうす
)
ではデビス
姫
(
ひめ
)
は
余程
(
よほど
)
俺
(
おれ
)
を
怨
(
うら
)
めてゐる
様
(
やう
)
だ。
167
こりや
一通
(
ひととほ
)
りでは
靡
(
なび
)
くまい。
168
何
(
なん
)
とかうまく
言葉
(
ことば
)
を
設
(
まう
)
けて
姫
(
ひめ
)
の
歓心
(
くわんしん
)
を
買
(
か
)
ひ、
169
ワックスに
怨
(
うらみ
)
がないものだと
思
(
おも
)
はしめねばならぬ。
170
ハテ
困
(
こま
)
つた
事
(
こと
)
だな。
171
……ウン、
172
ヨシヨシ
此奴
(
こいつ
)
あエキスに、
173
にじりつけてやらう。
174
さうすりや、
175
屹度
(
きつと
)
デビス
姫
(
ひめ
)
が
疑
(
うたがひ
)
を
晴
(
は
)
らし
自分
(
じぶん
)
を
信用
(
しんよう
)
するに
違
(
ちが
)
ひない。
176
万一
(
まんいち
)
三千彦
(
みちひこ
)
の
奴
(
やつ
)
、
177
こんな
処
(
ところ
)
へ
隠
(
かく
)
してある
事
(
こと
)
を
探
(
さぐ
)
り、
178
救
(
すく
)
ひ
出
(
だ
)
さうものなら、
179
それこそ
大変
(
たいへん
)
だ。
180
何
(
なん
)
でも
今晩
(
こんばん
)
の
間
(
うち
)
に、
181
巧
(
うま
)
くやつつけねば
六菖
(
ろくしやう
)
十菊
(
じつきく
)
の
悔
(
くい
)
を
貽
(
のこ
)
さねばなるまい。
182
だと
云
(
い
)
つて
俄
(
にはか
)
に
良
(
よ
)
い
知恵
(
ちゑ
)
も
出
(
で
)
ない、
183
困
(
こま
)
つたものだ』
184
と
独語
(
ひとりご
)
ちつつ
半時
(
はんとき
)
ばかり
考
(
かんが
)
へて
居
(
ゐ
)
た。
185
ワックスは
何
(
なに
)
か
良
(
よ
)
い
思案
(
しあん
)
が
浮
(
うか
)
んだと
見
(
み
)
え、
186
嫌
(
いや
)
らしい
笑
(
ゑみ
)
を
浮
(
う
)
かべ
乍
(
なが
)
ら、
187
月
(
つき
)
西山
(
せいざん
)
に
没
(
かく
)
れたのを
幸
(
さいは
)
ひ、
188
入口
(
いりぐち
)
に
進
(
すす
)
み
寄
(
よ
)
つて、
189
『ヤアヤア、
190
これなる
岩窟
(
がんくつ
)
に
押込
(
おしこ
)
められ
玉
(
たま
)
ふ
御
(
おん
)
方
(
かた
)
は
如何
(
いか
)
なる
御仁
(
ごじん
)
で
厶
(
ござ
)
るか。
191
道聴
(
だうちやう
)
途説
(
とせつ
)
によれば
三五教
(
あななひけう
)
の
悪狐
(
あくこ
)
高倉
(
たかくら
)
稲荷
(
いなり
)
の
化身
(
けしん
)
との
事
(
こと
)
、
192
拙者
(
せつしや
)
は
大悪人
(
だいあくにん
)
のエキスに
誤
(
あやま
)
られ
大切
(
たいせつ
)
なる
姫君
(
ひめぎみ
)
様
(
さま
)
を
高倉
(
たかくら
)
稲荷
(
いなり
)
が
取
(
と
)
り
喰
(
く
)
らひ、
193
その
御
(
お
)
姿
(
すがた
)
に
巧
(
うま
)
く
化
(
ば
)
け
居
(
を
)
るものと
信
(
しん
)
じ、
194
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
の
敵
(
かたき
)
を
討
(
う
)
たむものと、
195
畏
(
おそ
)
れ
多
(
おほ
)
くも
此
(
この
)
岩窟内
(
がんくつない
)
に
閉
(
と
)
ぢ
込
(
こ
)
めたり。
196
これ
全
(
まつた
)
くワックスの
心
(
こころ
)
より
出
(
い
)
でしものに
非
(
あら
)
ず、
197
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
の
仇
(
あだ
)
を
報
(
むく
)
はむとの
真心
(
まごころ
)
は
矢
(
や
)
も
楯
(
たて
)
も
堪
(
たま
)
らず
無慚
(
むざん
)
にも
白狐
(
びやくこ
)
の
化身
(
けしん
)
と
思
(
おも
)
ひ
誤
(
あやま
)
り
押込
(
おしこ
)
め
参
(
まゐ
)
らせたり。
198
昨晩
(
さくばん
)
のバラモン
大神
(
おほかみ
)
の
夢
(
ゆめ
)
のお
告
(
つ
)
げに、
199
此
(
この
)
岩窟
(
がんくつ
)
に
入
(
はい
)
られ
玉
(
たま
)
ふ
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
は
実
(
まこと
)
のお
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
との
事
(
こと
)
、
200
直様
(
すぐさま
)
罷
(
まか
)
り
出
(
い
)
で、
201
お
助
(
たす
)
け
申
(
まを
)
さむと
心
(
こころ
)
は
矢竹
(
やたけ
)
に
逸
(
はや
)
れども、
202
悪人
(
あくにん
)
エキス、
203
ヘルマン、
204
吾
(
わが
)
身辺
(
しんぺん
)
を
看守
(
みまも
)
り
居
(
を
)
れば、
205
無念
(
むねん
)
乍
(
なが
)
ら
夜陰
(
やいん
)
を
待
(
ま
)
ち、
206
只今
(
ただいま
)
お
迎
(
むか
)
への
為
(
ため
)
参上
(
さんじやう
)
仕
(
つかまつ
)
つたり。
207
姫君
(
ひめぎみ
)
様
(
さま
)
、
208
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
のお
玉
(
たま
)
もエキス、
209
ヘルマンの
両人
(
りやうにん
)
盗
(
ぬす
)
み
居
(
ゐ
)
たりしを
此
(
この
)
ワックス
慧眼
(
けいがん
)
を
以
(
もつ
)
て
看破
(
かんぱ
)
し、
210
直
(
ただ
)
ちに
小国別
(
をくにわけ
)
様
(
さま
)
に
返附
(
へんぷ
)
させたれば
此
(
この
)
事
(
こと
)
は
御
(
ご
)
安心
(
あんしん
)
あれ。
211
又
(
また
)
御
(
お
)
父上
(
ちちうへ
)
様
(
さま
)
は
未
(
ま
)
だ
御
(
ご
)
壮健
(
さうけん
)
に
在
(
ま
)
しませば
必
(
かなら
)
ず
心慮
(
しんりよ
)
を
悩
(
なや
)
ませ
玉
(
たま
)
ふ
事
(
こと
)
勿
(
なか
)
れ。
212
御
(
ご
)
両親
(
りやうしん
)
は
此
(
この
)
ワックスの
忠誠
(
ちうせい
)
を
御
(
ご
)
称讃
(
しようさん
)
遊
(
あそ
)
ばされ、
213
今
(
いま
)
やデビス
姫
(
ひめ
)
の
御
(
おん
)
夫
(
をつと
)
と
御
(
お
)
定
(
さだ
)
めの
上
(
うへ
)
、
214
神館
(
かむやかた
)
の
御
(
ご
)
相続人
(
さうぞくにん
)
とお
定
(
さだ
)
めありし
上
(
うへ
)
は、
215
今日
(
こんにち
)
只今
(
ただいま
)
より
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
は
拙者
(
せつしや
)
の
女房
(
にようばう
)
、
216
妻
(
つま
)
の
為
(
ため
)
には
身命
(
しんめい
)
も
惜
(
をし
)
まぬ
此
(
この
)
ワックス、
217
御
(
ご
)
安心
(
あんしん
)
なされませ。
218
又
(
また
)
御
(
おん
)
妹君
(
いもうとぎみ
)
ケリナ
様
(
さま
)
も
御
(
ご
)
無事
(
ぶじ
)
で
居
(
ゐ
)
られますれば、
219
お
喜
(
よろこ
)
びなされませ。
220
これ
全
(
まつた
)
くワックスが
尽力
(
じんりよく
)
の
致
(
いた
)
す
所
(
ところ
)
、
221
必
(
かなら
)
ずお
疑
(
うたが
)
ひ
下
(
くだ
)
さいますな。
222
ワックス、
223
只今
(
ただいま
)
人目
(
ひとめ
)
を
忍
(
しの
)
びお
迎
(
むか
)
へに
参上
(
さんじやう
)
仕
(
つかまつ
)
りました』
224
と
大音声
(
だいおんじやう
)
に
呼
(
よば
)
はつた。
225
中
(
なか
)
よりデビス
姫
(
ひめ
)
は
細
(
ほそ
)
き
声
(
こゑ
)
にて、
226
デビス
姫
(
ひめ
)
『
夜陰
(
やいん
)
にも
拘
(
かかは
)
らず
此
(
この
)
恐
(
おそ
)
ろしき
山奥
(
やまおく
)
に
妾
(
わらは
)
を
訪
(
たづ
)
ね
来
(
きた
)
るは
何者
(
なにもの
)
ぞ。
227
狐狸
(
こり
)
か、
228
妖怪
(
えうくわい
)
か、
229
速
(
すみやか
)
にここを
立去
(
たちさ
)
れ。
230
左様
(
さやう
)
な
世迷言
(
よまいごと
)
は
聞
(
き
)
く
耳
(
みみ
)
持
(
も
)
たぬ。
231
エー
汚
(
けが
)
らはしい』
232
ワックス『これはしたり、
233
デビス
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
、
234
拙者
(
せつしや
)
は
狐狸
(
こり
)
でも
妖怪
(
えうくわい
)
でも
厶
(
ござ
)
らぬ。
235
正真
(
しやうしん
)
正銘
(
しやうめい
)
の
家令
(
かれい
)
の
倅
(
せがれ
)
ワックスで
厶
(
ござ
)
います。
236
貴女
(
あなた
)
を
助
(
たす
)
けむために
何
(
ど
)
れ
丈
(
だ
)
け
苦労
(
くらう
)
を
致
(
いた
)
したか
分
(
わか
)
りませぬ。
237
御
(
ご
)
推量
(
すゐりやう
)
下
(
くだ
)
さいませ』
238
デビス
姫
(
ひめ
)
『
人間
(
にんげん
)
か、
239
怪物
(
くわいぶつ
)
か
知
(
し
)
らないが
其方
(
そなた
)
は
人
(
ひと
)
の
面
(
めん
)
を
被
(
かぶ
)
つた
古狐
(
ふるぎつね
)
古狸
(
ふるだぬき
)
だ。
240
否
(
い
)
や
大妖怪
(
だいえうくわい
)
だ。
241
悪逆
(
あくぎやく
)
無道
(
ぶだう
)
の
邪鬼
(
じやき
)
、
242
羅刹
(
らせつ
)
、
243
汝
(
なんぢ
)
の
言葉
(
ことば
)
を
聞
(
き
)
くも
汚
(
けが
)
らわしい。
244
又
(
また
)
仮令
(
たとへ
)
真
(
しん
)
のワックスにもせよ。
245
決
(
けつ
)
して
言葉
(
ことば
)
を
交
(
かは
)
す
所存
(
しよぞん
)
はない。
246
卑劣
(
ひれつ
)
極
(
きは
)
まる
根性
(
こんじやう
)
を
提
(
ひつさ
)
げて
夜中
(
やちう
)
に
忍
(
しの
)
び
忍
(
しの
)
び
岩窟
(
がんくつ
)
に
来
(
きた
)
るとは
腹黒
(
はらぐろ
)
き
曲者
(
くせもの
)
、
247
最早
(
もはや
)
妾
(
わらは
)
は
此
(
この
)
岩窟
(
がんくつ
)
の
女王
(
ぢよわう
)
となり
数多
(
あまた
)
のエンゼルに
救
(
すく
)
はれ、
248
食物
(
しよくもつ
)
にも
不自由
(
ふじゆう
)
なく
安心
(
あんしん
)
に
暮
(
くら
)
して
居
(
ゐ
)
る。
249
汝
(
なんぢ
)
が
如
(
ごと
)
き
犬畜生
(
いぬちくしやう
)
輩
(
ばら
)
には
死
(
し
)
んでも
御
(
お
)
世話
(
せわ
)
にならない。
250
及
(
およ
)
ばぬ
望
(
のぞ
)
みを
起
(
おこ
)
すよりも、
251
トツトと
尾
(
を
)
を
掉
(
ふ
)
つて
帰
(
かへ
)
れ、
252
人畜生
(
にんちくしやう
)
奴
(
め
)
』
253
と
言葉
(
ことば
)
厳
(
きび
)
しく
罵
(
ののし
)
つた。
254
ワックスはクワツと
怒
(
いか
)
り、
255
鉄門
(
かなど
)
を
石
(
いし
)
にてガンガンと
力
(
ちから
)
限
(
かぎ
)
りに
打
(
う
)
ち
続
(
つづ
)
け
脅喝
(
けふかつ
)
し
乍
(
なが
)
ら、
256
ワックス『コレ、
257
姫
(
ひめ
)
さま、
258
そんな
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
つた
所
(
ところ
)
で
岩窟内
(
がんくつない
)
に
食物
(
しよくもつ
)
がある
筈
(
はず
)
もなし、
259
名代
(
なだい
)
の
魔窟
(
まくつ
)
にエンゼルのお
降
(
くだ
)
り
遊
(
あそ
)
ばす
道理
(
だうり
)
はない。
260
痩我慢
(
やせがまん
)
を
張
(
は
)
るよりも
因果腰
(
いんぐわごし
)
を
定
(
き
)
めて
此
(
この
)
ワックスの
恋
(
こひ
)
をお
聞
(
き
)
き
下
(
くだ
)
さい。
261
魚心
(
うをごころ
)
あれば
水心
(
みづごころ
)
あり、
262
テルモン
山
(
ざん
)
の
神館
(
かむやかた
)
を
初
(
はじ
)
め
御
(
ご
)
両親
(
りやうしん
)
のお
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
を
守
(
まも
)
るは
此
(
この
)
ワックスより
外
(
ほか
)
には
厶
(
ござ
)
いませぬぞ。
263
左様
(
さやう
)
な
無分別
(
むふんべつ
)
な
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
はずに
諾
(
うん
)
と
云
(
い
)
ひなされ。
264
どこ
迄
(
まで
)
も
頑張
(
ぐわんば
)
つて
肯
(
き
)
かなければ
此方
(
こちら
)
にも
覚悟
(
かくご
)
が
厶
(
ござ
)
る。
265
恋
(
こひ
)
の
叶
(
かな
)
はぬ
意趣返
(
いしゆがへ
)
し、
266
嬲殺
(
なぶりごろ
)
しに
致
(
いた
)
しても
恐
(
おそ
)
ろしうは
厶
(
ござ
)
らぬか』
267
デビス
姫
(
ひめ
)
『エー、
268
汚
(
けが
)
らはしや、
269
悪党者
(
あくたうもの
)
、
270
主人
(
しゆじん
)
に
向
(
むか
)
つて
無礼
(
ぶれい
)
の
罪
(
つみ
)
、
271
赦
(
ゆる
)
しは
致
(
いた
)
さぬぞ、
272
覚悟
(
かくご
)
しや』
273
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
岩片
(
がんぺん
)
を
拾
(
ひろ
)
ふより
早
(
はや
)
く
鉄
(
てつ
)
の
格子窓
(
こうしまど
)
の
間
(
あひだ
)
よりワックスに
向
(
むか
)
つて
投
(
な
)
げつけた。
274
ワックスは
烈火
(
れつくわ
)
の
如
(
ごと
)
く
憤
(
いきどほ
)
り
竹槍
(
たけやり
)
を
扱
(
しご
)
いて
垣越
(
かきご
)
しに
骨
(
ほね
)
も
通
(
とほ
)
れよと、
275
デビス
姫
(
ひめ
)
目蒐
(
めが
)
けて
突
(
つ
)
き
出
(
だ
)
した。
276
狭
(
せま
)
き
岩窟
(
がんくつ
)
に
隔
(
へだ
)
てられ、
277
デビス
姫
(
ひめ
)
は
身
(
み
)
を
避
(
さ
)
くる
余地
(
よち
)
が
無
(
な
)
い。
278
あわや
突殺
(
つきころ
)
されむとする
一刹那
(
いちせつな
)
、
279
何処
(
いづく
)
ともなく
宙
(
ちう
)
を
飛
(
と
)
んで
駆
(
か
)
け
来
(
きた
)
る
猛犬
(
まうけん
)
、
280
『ウーウー、
281
ウワッウワッ』と
威喝
(
ゐかつ
)
し
乍
(
なが
)
らワックスの
利腕
(
ききうで
)
に
噛
(
かじ
)
り
付
(
つ
)
いた。
282
ワックスはアツと
云
(
い
)
うた
儘
(
まま
)
、
283
其
(
その
)
場
(
ば
)
に
脆
(
もろ
)
くも
倒
(
たふ
)
れた。
284
猛犬
(
まうけん
)
スマートは
後
(
あと
)
振
(
ふ
)
り
返
(
かへ
)
り
振
(
ふ
)
り
返
(
かへ
)
り『ウーウーウー』と
叱
(
しか
)
りつけ
乍
(
なが
)
ら、
285
何処
(
いづく
)
ともなく
姿
(
すがた
)
を
隠
(
かく
)
した。
286
暫
(
しば
)
らくあつてワックスは
気
(
き
)
がつき、
287
腕
(
うで
)
の
血
(
ち
)
を
拭
(
ぬぐ
)
ひ
四辺
(
あたり
)
の
草
(
くさ
)
にて
括
(
くく
)
り
乍
(
なが
)
ら
這々
(
はふばふ
)
の
態
(
てい
)
にて
一先
(
ひとま
)
づ
吾
(
わが
)
館
(
やかた
)
へスゴスゴと
帰
(
かへ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
288
四辺
(
あたり
)
の
木
(
き
)
の
茂
(
しげ
)
みから
梟
(
ふくろふ
)
の
声
(
こゑ
)
『アホーアホー、
289
ゴロツトカヘセ、
290
ヤラレタナー、
291
バカバカ』と
啼
(
な
)
いて
居
(
ゐ
)
る。
292
俄
(
にはか
)
に
山柿
(
やまがき
)
の
枝
(
えだ
)
から
蝉
(
せみ
)
の
声
(
こゑ
)
『ザマ ザマ ザマ、
293
ミーン ミーン ミーン ミーン』、
294
蟋蟀
(
きりぎりす
)
の
声
(
こゑ
)
『ケラ ケラ ケラ』。
295
(
大正一二・三・二五
旧二・九
於皆生温泉浜屋
北村隆光
録)
Δこのページの一番上に戻るΔ
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(B)
(N)
糸瓜 >>>
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