霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第二〇章 犬闘(けんとう)〔一四七〇〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第57巻 真善美愛 申の巻 篇:第3篇 天上天下 よみ(新仮名遣い):てんじょうてんか
章:第20章 犬闘 よみ(新仮名遣い):けんとう 通し章番号:1470
口述日:1923(大正12)年03月26日(旧02月10日) 口述場所:皆生温泉 浜屋 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年5月24日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
悪酔怪員はあちらこちらに三々五々集まり、犬に噛まれた無念話の花を咲かせており、中には怒る者もあり、酒をあおって蛮声を張り上げ、自暴自棄的にさざめいている。
そこへワックスが、包帯を腕に巻き付けて驢馬にまたがり、オークスとビルマをしたがえてやってきた。ワックスは十字街頭に立ち、豆太鼓と摺り鉦をはやし立て、馬上に立って大喝し、悪酔怪員を呼び集めた。
またたくうちに怒れる老若男女は数百人集まってきて鬨の声を上げた。オークスがまず大道演説を始め、三五教をやっつけよと群衆をたきつけた。群衆がオークスに賛同すると、ワックスは包帯をほどいて傷を見せ、自分の働きを語って鼓舞した。
ワックスはめいめい得物をもって館に押し寄せ、三千彦を捕えようと言葉巧みに説きたてた。群衆は竹槍や長剣をふるって、ワックス指揮のもとに列を正して館の門前に押し寄せた。
門前に押し寄せた群衆を前に、ワックスはふたたび馬上演説をなし、小国別、、小国姫、姫たちをはじめ、三千彦ら三五教徒を捕縛するよう下知した。群衆がわっと門内に乱入しようとするとき、スマートがいずこよりともなく現れて、山岳も揺れるばかりの唸り声を発した。
群衆がこの唸り声に辟易して進みかねていると、スマートは群衆の中に矢のように飛び入って縦横無尽に駆け回り、悪酔怪員のみを目がけて咬み倒した。
群衆は驚きあわてて色を失い、おのおの思い思いに命からがら逃げ散って行った。ワックスはオークス、ビルマ、エルをしたがえて自分の館に帰って行く。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2025-11-05 15:33:57 文字数:2634 OBC :rm5720
愛善世界社版:249頁 八幡書店版:第10輯 350頁 修補版: 校定版:259頁 普及版:117頁 初版: ページ備考:
001 空(そら)はドンヨリと曇(くも)り、002濃淡(のうたん)の雲片(うんぺん)雲塊(うんくわい)は所斑(ところまんだら)に満天(まんてん)を包(つつ)み、003少(すこ)し許(ばか)りの雲(くも)の破(やぶ)れから青雲(あをくも)の肌(はだへ)をチラチラと七八(ななや)箇所(かしよ)許(ばか)り見(み)せて居(を)る。004風(かぜ)もなく木(こ)の葉(は)のそよぎも止(と)まり、005体(からだ)一面(いちめん)に汗(あせ)が滲(にじ)り出(で)る。006湿(しめ)つぽい空気(くうき)が天地(てんち)を充塞(じうそく)して居(ゐ)る。007悪酔怪(あくすゐくわい)員(ゐん)は彼方(あちら)に三(さん)人(にん)、008此方(こちら)に五(ご)人(にん)と集(あつま)り犬(いぬ)に噛(か)まれた無念話(むねんばなし)の花(はな)を咲(さ)かし、009目(め)を釣(つ)り上(あ)げ額(ひたひ)に青筋(あをすぢ)を立(た)て、010中(なか)には歯(は)ぎしり噛(か)んで怒(いか)り狂(くる)ふ者(もの)もあつた。011余(あま)り腹立(はらだ)たしさに何(いづ)れも酒(さけ)をあふり苦痛(くつう)を紛(まぎ)らす為(ため)とて銅羅(どら)の様(やう)な蛮声(ばんせい)を張(は)り上(あ)げ、012自暴(じばう)自棄(じき)的(てき)にさざめいて居(を)る。013そこへ白(しろ)き繃帯(はうたい)を腕(うで)に巻(ま)きつけ驢馬(ろば)に跨(またが)りオークス、014ビルマを従(したが)へてやつて来(き)たのはワックスであつた。015ワックスは十字(じふじ)街頭(がいとう)に立(た)ち、016薄(うす)つぺらな豆太鼓(まめだいこ)を誓願寺(せいぐわんじ)の遍歴者(へんれきしや)が叩(たた)く様(やう)に、017「ドンドン、018ドンドンドン、019チヤンチキ チヤンチキ チヤンチキチン」と、020擦鉦(すりがね)と共(とも)に囃(はや)し立(た)て乍(なが)ら現(あら)はれ来(きた)り、021馬上(ばじやう)にツツと立(た)ち乍(なが)ら、
022ワックス『一大事(いちだいじ)突発(とつぱつ)せり。023悪酔怪(あくすゐくわい)員(ゐん)は申(まを)すに及(およ)ばず脛腰(すねこし)の立(た)つ者(もの)は何(いづ)れも鐘路(しようろ)に集(あつ)まれ』
024と大喝(だいかつ)するや、025怒(いか)り立(た)つたる老若(らうにやく)男女(なんによ)は瞬(またた)く間(うち)に数百(すうひやく)人(にん)集(あつ)まり来(きた)り、026「ワーイ ワーイ」と鬨(とき)の声(こゑ)を挙(あ)げ、027ワックスの演説(えんぜつ)を聞(き)かむと囃(はや)し立(た)ててゐる。028オークスは太鼓(たいこ)の手(て)をやめて馬上(ばじやう)に衝(つ)ツ立(た)ち乍(なが)ら、029大手(おほて)を左右(さいう)に振(ふ)り、030鰐口(わにぐち)をあけて大道(だいだう)演説(えんぜつ)を始(はじ)め出(だ)した。
031オークス『皆(みな)さま、032神館(かむやかた)の門番頭(もんばんがしら)、033未来(みらい)の家令職(かれいしよく)オークスで厶(ござ)る、034今(いま)ここへ現(あら)はれ玉(たま)うたワックス先生(せんせい)は、035御覧(ごらん)の如(ごと)く三五教(あななひけう)の魔法使(まはふづかひ)が使役(しえき)する狂犬(きやうけん)に腕(うで)を咬(か)まれ、036又(また)吾々(われわれ)は此(この)通(とほ)り足(あし)を噛(か)み切(き)られ、037散々(さんざん)の目(め)に合(あ)はされました。038否(い)や吾々(われわれ)のみならず悪酔怪(あくすゐくわい)員(ゐん)の大部分(だいぶぶん)は皆(みな)彼(か)の狂犬(きやうけん)に傷(きず)つけられたでは厶(ござ)らぬか。039吾々(われわれ)テルモン山(ざん)の霊地(れいち)に住居(すまゐ)致(いた)す神(かみ)の選民(せんみん)が、040どうして之(これ)を不問(ふもん)に附(ふ)する事(こと)が出来(でき)ませうか。041悪酔怪(あくすゐくわい)員(ゐん)は申(まを)すに及(およ)ばず、042水平会(すいへいくわい)員(ゐん)並(ならび)に本町(ほんちやう)の老若(らうにやく)男女(なんによ)は此(この)霊地(れいち)を守(まも)るべく身(み)を挺(てい)して館(やかた)につめよせ、043魔法使(まはふづかひ)の三千彦(みちひこ)、044求道(きうだう)居士(こじ)を召捕(めしと)り彼(か)の狂犬(きやうけん)を撲殺(ぼくさつ)し、045霊地(れいち)を清(きよ)むる御(ご)所存(しよぞん)は厶(ござ)いませぬか。046誠(まこと)に残念(ざんねん)至極(しごく)で厶(ござ)います。047これが何(なん)ともない様(やう)な人間(にんげん)なら、048それは木石(ぼくせき)に等(ひと)しきもので厶(ござ)いませう。049人(ひと)は感情(かんじやう)の動物(どうぶつ)です。050どうか皆(みな)さま、051バラモン魂(だましひ)を発揮(はつき)し、052吾々(われわれ)の後(あと)に跟(つ)いて此(この)壮挙(さうきよ)に賛同(さんどう)あらむ事(こと)を希望(きばう)致(いた)します』
053 悪酔怪(あくすゐくわい)員(ゐん)の中(うち)より、054へべれけに酔(よ)うた男(をとこ)、055繃帯(はうたい)し乍(なが)ら現(あら)はれ来(きた)り、
056男(をとこ)『ヤア門番(もんばん)、057オークス、058御(ご)苦労(くらう)御(ご)苦労(くらう)、059お前(まへ)がそんな事(こと)云(い)はずとも此(この)トンクさまが一人(ひとり)でも敵(かたき)を討(う)たなくちや悪酔怪(あくすゐくわい)員(ゐん)の顔(かほ)が立(た)たねーだ。060然(しか)し乍(なが)ら暫(しばら)く足(あし)の癒(なほ)る迄(まで)此(この)攻撃(こうげき)は待(ま)つて呉(く)れ。061此(この)トンク一人(ひとり)の力(ちから)でも美(み)ん事(ごと)、062やつつけて見(み)せる。063本当(ほんたう)に怪体(けつたい)の悪(わる)い、064これが黙(だま)つて居(を)られやうかい』
065 群衆(ぐんしう)の中(なか)より、
066群衆の一人『尤(もつと)もだ尤(もつと)もだ。067猶予(いうよ)はならぬ。068やつつけよ やつつけよ』
069と口々(くちぐち)に叫(さけ)び罵(ののし)る。070ワックスは潮時(しほどき)を見(み)すまし繃帯(はうたい)を解(ほど)き傷所(きずしよ)を現(あら)はし乍(なが)ら、
071ワックス『皆(みな)さま、072私(わたし)は魔法使(まはふづかひ)の為(た)めに此(この)通(とほ)り惨(むご)い目(め)に会(あ)ひました。073私(わたし)が舎身(しやしん)的(てき)活動(くわつどう)を致(いた)し、074斯様(かやう)な負傷(ふしやう)をしたのも皆(みな)さまを思(おも)ふ為(ため)で厶(ござ)いますぞ。075苟(いやし)くも悪酔怪(あくすゐくわい)の統率者(とうそつしや)たるもの、076仮令(たとへ)貴重(きちよう)なる生命(せいめい)を捨(す)つるとも諸君(しよくん)の為(た)め犠牲(ぎせい)となつて弱(よわ)きを挫(くじ)き、077強(つよ)きを助(たす)けねばなりますまい、078サア時(とき)遅(おく)れては却(かへ)つて敵(てき)に逃(に)げられるかも知(し)れませぬから、079皆(みな)さまは此(この)ワックスに従(したが)ひ脛腰(すねこし)の立(た)つ方(かた)は館(やかた)に押(お)し寄(よ)せ敵(てき)を捕縛(ほばく)して下(くだ)さい。080さうして負傷(ふしやう)した方(かた)は是非(ぜひ)に及(およ)ばぬとしてお休(やす)みになつても宜(よろ)しい。081然(しか)し乍(なが)ら人間(にんげん)は心(こころ)の持(も)ち方(かた)が肝腎(かんじん)です、082此(この)通(とほ)り腕(うで)を噛(か)まれ足(あし)を咬(か)まれて激痛(げきつう)を忍(しの)び乍(なが)ら、083漸(やうや)く驢馬(ろば)に跨(またが)り活動(くわつどう)を致(いた)して居(を)る私(わたし)の苦心(くしん)をお察(さつ)し下(くだ)さらば、084少々(せうせう)の怪我(けが)位(ぐらゐ)は憂(うれ)ふるに及(およ)びますまい。085千騎(せんき)一騎(いつき)の此(この)場合(ばあひ)、086協心(けふしん)戮力(りくりよく)的(てき)大活動(だいくわつどう)を祈(いの)ります』
087と言葉(ことば)巧(たくみ)に述(の)べ終(をは)るや、088慌者(あわてもの)の弥次馬(やじうま)は各自(てんで)に棍棒(こんぼう)を携(たづさ)へ、089或(あるひ)は竹槍(たけやり)、090長剣(ちやうけん)を揮(ふる)つてワックスが指揮(しき)の下(もと)に潮(うしほ)の如(ごと)く館(やかた)の門前(もんぜん)さして、091列(れつ)を正(ただ)し旗(はた)を押(お)し立(た)て、092太鼓(たいこ)を叩(たた)き擦鉦(すりがね)を鳴(な)らし乍(なが)ら進(すす)み行(ゆ)く。093ワックスは先(さき)に立(た)ち進軍歌(しんぐんか)を歌(うた)ひ初(はじ)めた。
094ドーン ドーン ドーン
095チヤンチキチヤンチキ チヤンチキチン
096ワックス『皆(みな)さま皆(みな)さま確(しつか)りと
097鉢巻(はちまき)締(し)めて帯(おび)締(し)めて
098草鞋(わらぢ)の紐(ひも)をよく結(むす)び
099手(て)に手(て)に柄物(えもの)を携(たづさ)へて
100テルモン山(ざん)の聖場(せいぢやう)を
101覆(くつが)へさむと企(たく)む奴(やつ)
102ドーン ドーン ドーン
103チヤンチキ チヤンチキ チヤンチキチン
104三五教(あななひけう)の魔法使(まはふづかひ)
105みち三千彦(みちひこ)や求道(きうだう)居士(こじ)
106それに従(したが)ふ小盗人(こぬすびと)
107狂犬(きやうけん)スマート諸共(もろとも)に
108只(ただ)一匹(いつぴき)も残(のこ)さずに
109命(いのち)を的(まと)に立向(たちむか)ひ
110往生(わうじやう)さしてやりませう
111ドーン ドーン ドーン
112チヤンチキ チヤンチキ チヤンチキチン
113人(ひと)は心(こころ)が第一(だいいち)だ
114弱(よわ)き奴(やつ)にはドツと行(ゆ)け
115強(つよ)い奴(やつ)にはドツと逃(に)げ
116もしも先方(むかふ)が強(つよ)ければ
117暫(しばら)く予定(よてい)の退却(たいきやく)し
118再(ふたた)び戦備(せんび)を整(ととの)へて
119捲土(けんど)重来(ぢゆうらい)進(すす)み行(ゆ)く
120ドーン ドーン ドーン
121チヤンチキ チヤンチキ チヤンチキチン
122凡(すべ)て軍(いくさ)の駆引(かけひき)は
123潮(しほ)の満干(さしひき)ある様(やう)に
124千変(せんぺん)万化(ばんくわ)の秘術(ひじゆつ)をば
125尽(つく)して敵(てき)に向(むか)ふのが
126誠(まこと)の兵法(へいはふ)と云(い)ふものだ
127仮令(たとへ)三(さん)年(ねん)かかるとも
128此(この)残念(ざんねん)を晴(は)らさねば
129悪酔怪(あくすゐくわい)や水平会(すいへいくわい)
130霊地(れいち)に住(す)まへる人々(ひとびと)の
131男(をとこ)の顔(かほ)は丸潰(まるつぶ)れ
132女(をんな)の顔(かほ)も台(だい)なしに
133なつて天地(てんち)に恥(はぢ)曝(さら)し
134末代(まつだい)迄(まで)も笑(わら)はれる
135それを防(ふせ)ぐは今(いま)だぞや』
136ドンドコ ドンドコ ドコドコドン
137チヤンチキ チヤンチキ チヤンチキチン
138と太鼓(たいこ)擦鉦(すりがね)の忙(せは)しき鳴(な)り音(おと)につれて足並(あしなみ)早(はや)く忽(たちま)ち門前(もんぜん)に進(すす)み寄(よ)り、139ワックスは後(あと)振(ふ)り返(かへ)り、140又(また)もや馬上(ばじやう)演説(えんぜつ)を始(はじ)め出(だ)した。
141ワックス『三五教(あななひけう)の魔法使(まはふづかひ)、142悪逆(あくぎやく)無道(ぶだう)の三千彦(みちひこ)を初(はじ)め求道(きうだう)居士(こじ)の堕落僧(だらくそう)、143並(ならび)に小盗人(こぬすと)のヘルの三(さん)人(にん)、144狂犬(きやうけん)スマートと諸共(もろとも)に正(まさ)に此(この)館(やかた)にあり。145国家(こくか)の興亡(こうばう)、146旦夕(たんせき)に迫(せま)る。147汝(なんぢ)等(ら)一同(いちどう)の勇士(ゆうし)諸君(しよくん)、148獅子(しし)奮迅(ふんじん)の勢(いきほひ)を以(もつ)て武備(ぶび)なき此(この)館(やかた)、149前(まへ)と後(うしろ)より乱入(らんにふ)し、150先(ま)づ悪人輩(あくにんばら)を捕縛(ほばく)し、151魔法使(まはふづかひ)に魂(たましひ)を抜(ぬ)かれたる小国別(をくにわけ)夫婦(ふうふ)、152並(ならび)に悪狐(あくこ)の変化(へんげ)なる二人(ふたり)の姫(ひめ)を虜(とりこ)にし、153此(この)馬場(ばば)の物干竿(ものほしざを)に縛(しば)りつけ、154懲(こら)しめられ度(た)し。155時(とき)遅(おく)れては遁走(とんそう)の虞(おそれ)あり。156早(はや)く早(はや)く』
157と下知(げち)すれば逸(はや)りきつたる群衆(ぐんしう)は『ワツワツ』と鬨(とき)を作(つく)り雪崩(なだれ)をうつて門内(もんない)に乱入(らんにふ)せむとする其(その)勢(いきほ)ひ物凄(ものすご)く、158狂瀾(きやうらん)怒濤(どたう)の岸(きし)に噛(か)み付(つ)く如(ごと)き光景(くわうけい)となつて来(き)た。159何処(いづこ)よりともなく現(あら)はれ来(きた)りしスマートは、160ここを先途(せんと)と唸(うな)り出(だ)し、161山岳(さんがく)も揺(ゆ)るぐ許(ばか)りの声(こゑ)を発(はつ)した。162流石(さすが)の群衆(ぐんしう)もワックスも此(この)唸(うな)り声(ごゑ)に辟易(へきえき)し、163進(すす)み兼(か)ねたる折(をり)もあれ、164スマートは群衆(ぐんしう)の中(なか)に矢(や)の如(ごと)く飛(と)び入(い)り、165縦横(じうわう)無尽(むじん)に駆(か)け廻(まは)り、166悪酔怪(あくすゐくわい)員(ゐん)のみを目蒐(めが)けてバタリバタリと咬(か)み倒(たふ)した。167群集(ぐんしふ)は驚(おどろ)き慌(あわ)てて色(いろ)を失(うしな)ひ、168各(おのおの)思(おも)ひ思(おも)ひに生命(いのち)からがら逃(に)げ散(ち)つた。169ワックスはオークス、170ビルマ、171エルを従(したが)へ己(おの)が館(やかた)をさして一目散(いちもくさん)に驢馬(ろば)に鞭(むち)打(う)ち帰(かへ)り行(ゆ)く。
172(大正一二・三・二六 旧二・一〇 於皆生温泉浜屋 北村隆光録)
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